JP3748456B2 - 耐酸耐熱性のキャスタブル材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は耐酸耐熱性のキャスタブル材(ライニング材としての利用も含む)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種産業用の反応炉、化学装置、煙突或は煙道などには耐酸性とともに、耐熱性(高温に対する耐熱性と、急激な温度差に対する耐スポーリング性の両方の意味に使用する。以下耐熱性と称する。)を要求されるキャスタブル材(またはライニング材)が使われる場合がある。
【0003】
従来、このような要求に対して、例えば、特公昭58−11387号公報、特公昭56−52864号公報、特開昭56−5380号公報、特開昭55−116679号公報、特開昭50−51110号公報、特開昭49−106524号公報などに、ケイ酸アルカリ(主にソーダ)を主体にし、骨材とケイフッ化ソーダなどよりなる組成物に水硬性セメントを混合したキャスタブル材が報告されている。
【0004】
しかし、これらは何れも、耐酸性とともに、耐熱性が十分に満足されるものではなかった。また、特公昭58−44634号公報には、カチオン交換能を有する雲母及び/又は水膨潤性人造雲母を使用した、ハケ塗り、スプレーなどにより施工できる塗布材又は接着材用の組成物が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、施工性に優れ、耐酸性とともに、耐熱性が十分に満足されるキャスタブル材を提供するものであり、また同様な特性を有するライニング材を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は従来の技術を改良するため鋭意研究した結果、薄片或は鱗片状の非膨潤性層状粘土鉱物(なお、本発明で言う“非膨潤性”とは水に分散時、膨潤しないという意味である)を原材料の1つに用いることにより、課題を解決することができることを見出し、本発明を成すに至った。
【0007】
即ち、本発明は、薄片状或は燐片状の非膨潤性層状粘土鉱物、ケイ酸分の多いケイ酸質粉末、ケイ酸アルカリを主成分とする材であって、ケイ酸分の多いケイ酸質粉末の含有割合(重量比)が全体に対して1/9〜1/3である耐酸耐熱性のキャスタブル材に関するものである。
【0008】
本発明で用いられる薄片或は鱗片状の非膨潤性層状粘土鉱物として好ましいものは、天然又は合成の非膨潤性雲母類及び非膨潤性バーミキュライトの範疇に入る化合物であるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
なお、本発明で用いられる薄片或は鱗片状の非膨潤性層状粘土鉱物は、カチオン交換能を有しないか、仮にカチオン交換能を有していても数ミリ当量/100g以下で実際上はカチオン交換能を有しない範疇に属するもので、カチオン交換反応が無視し得るものである。具体的にはカチオン交換能は3ミリ当量/100g以下のものであり、好ましくは1ミリ当量/100g以下のものである。
また、本発明で用いられる層状粘土鉱物は非膨潤性層状粘土鉱物であるので、水膨潤性層状粘土鉱物は本発明の対象外である。
【0010】
このように、本発明で用いる粘土鉱物は層間のカチオン交換反応が事実上無視でき、また、層間に結合材や水を取り込まないで最初の形態(形状を含めて)を維持していることが極めて重要な点である。このような条件が満足されれば、天然の非膨潤性雲母類として白雲母、黒雲母、絹雲母、金雲母、イライトなども本発明の対象となる。
【0011】
しかし、そのような条件がより満足される高純度の合成非膨潤性雲母であるカリウムタイプの合成フッ素四ケイ素雲母、カリウムタイプの合成テニオライト、合成の金雲母など、及びタルクを主原料としたインターカレーション法でつくられるカリウムタイプの非膨潤性層状ケイ酸塩(雲母の範疇に入る化合物とバーミキュライトの範疇に入る化合物などを含む)がより好ましい。
【0012】
なお、本発明で用いられるこれらの非膨潤性層状粘土鉱物の平均粒径は、耐酸性(酸に対する非浸透性)及び、急激な温度差に対する耐スポーリング性の点より、10μmより大きく300μmより小さいものが好ましい。
【0013】
上記の非膨潤性層状粘土鉱物の中で特に好ましくは、タルクを主原料としたインターカーション法でつくられるカリウムタイプの非膨潤性層状ケイ酸塩であり、これは層状構造を有するタルク結晶の層間にカリウムイオンをインターカレートさせて得られるものである。なお、その際、タルク中のOHイオンがFイオンに置換される。この方法で得られる非膨潤性層状ケイ酸塩は、鉱物の分類上において、雲母の範疇に入る化合物とバーミキュライトの範疇に入る化合物などを含むものである。
これらの化合物は次の一般式(1)で示すことができる。
【0014】
【化2】
【0015】
[式中、XはMg又は(Mg+Al)を表し、YはSi又は(Si+Mg)又は(Si+Al)又は(Si+Mg+Al)を表す。]
なお、上記の(Mg+Al)、(Si+Mg)、(Si+Al)および(Si+Mg+Al)はそれぞれ、(MgとAlの混合物)、(SiとMgの混合物)、(SiとAlの混合物)および(SiとMgとAlの混合物)を表す。
【0016】
なお、上記の一般式(1)で示される化合物は、2:1型の層状ケイ酸塩であり、式中のKはその層間に、Xは八面体シート中に、Yは四面体ート中に存在する。
【0017】
その製法としては、具体的には例えば、特公昭59−1215号公報又は特開平2−149415号公報などに記載されているが、ケイフッ化カリウム及び/又はフッ化カリウムと、タルクの混合物を(場合によりその混合物にさらにAl2 O3 を混合する)、700〜1200℃で加熱処理することにより得ることができる。
【0018】
本発明で用いられる耐酸セメントは通常の無機質耐酸セメントであり、耐酸性の粉末と、ケイ酸アルカリを主成分とする結合材との混合物からなるものである。
耐酸性の粉末としては、ケイ酸分の多いケイ酸質粉末、例えば、ケイ石、ケイ砂、磁器、石器、高ケイ酸質シャモットなどの粉末が好ましく、また、結合材としてはケイ酸ソーダ(一般に、その水溶液は水ガラスとして市販されている)を主成分にした水溶液が好ましい。両者は使用時に混合する。
【0019】
本発明で用いられる耐酸性骨材としては、ケイ酸分の多いケイ酸質物質、例えば、ケイ石、ケイ砂、磁器、石器、高ケイ酸質シャモットなどが使用できる。耐酸性骨材は仕上がり後の強度アップに有効であるが、表面状態の平滑性が失われる。耐酸性骨材は、本発明の必須成分ではなく、混合材として使用するかどうかは用途により決める必要がある。
【0020】
本発明の原材料の好ましい混合比(重量ベース)は、具体的に使用する原材料により大きく異なる。
【0021】
本発明のキャスタブル材を用いて実際に施工する場合、原材料を混合し、場合により加水して、混練する。混練後は流動性をもっている必要があるが、できるだけ少ない加水量で十分な流動性をもつように調製する。施工後は室温でも時間をかければ硬化するが、好ましくは50℃〜300℃、より好ましくは60℃〜150℃に加熱して硬化させる。
【0022】
【作用】
本発明は、従来使用されていた耐酸耐熱性のキャスタブル材に薄片或は鱗片状の非膨潤性層状粘土鉱物を混合した点に特徴がある。非膨潤性層状粘土鉱物は層状構造を有する点に特徴がある。
【0023】
雲母及びタルクを主原料としたインターカレーション法でつくられる上記一般式(1)で示される非膨潤性層状ケイ酸塩の場合は2:1型の層状構造をとり、その層間に陽イオン(例えばカリウム)がインターカレートしている。
【0024】
このような薄片或は鱗片状の非膨潤性層状粘土鉱物、好ましくは雲母及びタルクを主原料としたインターカレーション法でつくられる上記一般式(1)で示される非膨潤性層状ケイ酸塩は、熱による膨張収縮性が小さい。
また水を取り込まない性質があるため、これを混ぜて相対的な水分量を減らしても一定のスラリー状態を維持できる特徴がある。この結果として、これらの非膨潤性層状粘土鉱物を混合したキャスタブル材は内部の空隙を減らすことができる。
【0025】
また、形状が薄片或は鱗片状であるため、各々の粒子が一定の配向性をもって固化すると判断できる。
これらの相乗効果により、薄片或は鱗片状の非膨潤性層状粘土鉱物を混合すると、耐酸性(内部への酸の非浸透性)と急激な温度差に対する耐スポーリング性が大幅に改善されるものと考えられる。
【0026】
【実施例】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0027】
(合成例1) タルクを主原料としたインターカレーション法によるカリウムタイプの非膨潤性層状ケイ酸塩の製造
特開平2−149415号公報に記載された方法に準じて、タルク80とケイフッ化カリウム20の割合(重量ベース)で各々の微粉枠物を混合し、耐熱性容器に入れ、900℃で2時間保持して合成した。
得られた加熱生成物は、元素分析より、K0.9 Mg2.7 (Si3.9 Mg0.1 )O10F2.0 で示されたが、これは1つ1つの単位結晶の全てがこの組成で示されるとは考え難く各種の組成のものが混じりあった平均値と考えられる。従って、この生成物は雲母とバーミキュライトのどちらの範疇に属するか、はっきりしないものであり、多分その両者の範疇に属するものが混じりあっていると判断される。
またその形状は薄片状或は鱗片状であり、平均粒径は15μm、陽イオン交換容量は0.0ミリ当量/100g(ショーレンベルガー法で測定)であった。
【0028】
(実施例1〜5)
表1に示した配合組成のものを混練し、下記の2種類の方法で耐酸性及び破壊強度テスト用サンプル、および耐スポーリング性テスト用サンプルを作成し、硫酸の浸透性、破壊強度、耐スポーリング性などを下記の試験法によりテストし、その結果を表2にまとめて示した。
【0029】
(A)耐酸性(硫酸の浸透性)及び破壊強度テスト用サンプルの作成とテスト方法
内部に網入りの円筒容器(直径15mm、高さ50mm)に、各種配合組成の混練物を入れ、室温で1日間放置し、次に60℃で1日乾燥後、容器から取出し、105℃で24時間乾燥してテスト用サンプルを作成した。
【0030】
(A)−1 耐酸テスト
サンプルを120℃の濃硫酸中に1週間浸漬し、サンプルの表面から硫酸が浸透した最大深さ(浸透度、mm)を測定した。
【0031】
(A)−2 破壊強度テスト
サンプルをハンマーで叩き、定性的に破壊強度を下記の3段階で測定した。
(評価:最強…◎、強…○、弱…×)
【0032】
(B)耐スポーリング性テスト用サンプル作成とテスト方法
鉄板(縦×横×長さ=20mm×2mm×150mm)に各種配合組成の混練物を厚さ10mm程度になるようにライニングし、室温で1日間放置し、次に60℃で1日間乾燥、容器から取出し、105℃で24時間乾燥してテスト用サンプルを作成した。
そのサンプルを加熱炉に入れ1時間で室温から600℃まで昇温し、600℃で10時間保持した後、加熱炉より取出して室温まで冷却し、この操作を6回繰り返した後、ひび割れの程度を調べた(評価:ひび割れ有・無の2段階で評価した)。
【0033】
(比較例1〜5)
実施例1〜5と同様にして、表1に示した配合組成のものからテスト用サンプルを作成し、硫酸の浸透性、破壊強度、耐スポーリング性などをテストし、その結果を表2に合わせて示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表2より、本発明のキャスタブル材は、耐酸性(非浸透性)と耐熱性(高温に対する耐熱性と、急激な温度差に対する耐スポーリング性の両方の意)の両方が十分に満足されるものであることが判る。それに対して比較例1〜5のキャスタブル材は、耐酸性と耐熱性の両方が満足されない。
【0037】
【発明の効果】
従来使用されていた耐酸耐熱性のキャスタブル材は耐酸性と耐熱性の両方が十分に満足されるものではなかったが、本発明のキャスタブル材は、施工性に優れると共に、従来特に問題となっていた耐酸性(内部への酸の非浸透性)と急激な温度差に対する耐スポーリング性の両方の特性が大幅に改善されたので、今後耐酸耐熱性のキャスタブル材として有効に活用できる。
また、本発明の耐酸耐熱性のキャスタブル材は耐酸耐熱性のライニング材としても同様に有効に活用できるものである。
Claims (3)
- 薄片状或は燐片状の非膨潤性層状粘土鉱物、ケイ酸分の多いケイ酸質粉末、 ケイ酸アルカリを主成分とする材であって、ケイ酸分の多いケイ酸質粉末の含有割合(重量比)が全体に対して1/9〜1/3である耐酸耐熱性のキャスタブル材。
- 薄片状或は燐片状の非膨潤性層状粘土鉱物が、合成非膨潤性雲母である請求項1記載の耐酸耐熱性のキャスタブル材。
- 合成非膨潤性雲母が、タルクを主原料としたインターカレーション法でつくられる非膨潤性層状ケイ酸塩である請求項2記載の耐酸耐熱 性のキャスタブル材。
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