JP3747038B2 - 高圧高速切断火口 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造鋳片等の厚い鋼板のガス切断に用いて好適な高圧高速切断火口に関する。
【0002】
【従来の技術】
厚い鋼板のガス切断に使用される装置として、高圧高速切断火口(以下、火口と略称する。)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
実公平5−39293号公報(第3−5頁、第1図−第4図)
【0004】
この火口は、中央に位置する切断酸素噴出孔の周囲に、内側から、第一の酸素噴出孔群、第一の燃料ガス噴出孔群、第二の燃料ガス噴出孔群、及び、第二の酸素噴出孔群または酸素噴出口を、それぞれ切断酸素噴出孔と同軸をなす輪状に備えている。
【0005】
鋼材の切断に際しては、切断酸素噴出孔から高圧の切断酸素噴出流が高速で噴出され、その周囲を囲むよう噴出される酸素と燃料ガスにより加熱炎群が形成されるとともに、その周囲には更に加熱炎群が形成される。すると、これらの加熱炎群の相乗効果により、特に切断酸素噴出流の周囲を覆う内側の加熱炎群が伸長する。その結果、切断酸素噴出流の加熱力及び運動エネルギーが維持され、厚い鋼材に対しても、効率よくガス切断が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ガス切断で用いる混合ガスの点火によるガスの火炎は、訳3000℃の高温で、しかも高速で噴出されている。そのため、切断中、切断スラグ等により流路が詰まったりすると、火炎が火口及び吹管内に戻り、いわゆるバック・ファイヤ(逆火)やフラッシュ・バック(逆流)を起こす恐れがある。そこで、上記火口を始め、特に多量の燃料ガス及び酸素を消費する、厚い鋼材のガス切断に使用される火口では、この点を考慮し、燃料ガスと酸素の混合を火口外で行う、いわゆるアウトミキシングと呼ばれる混合方式が専ら採用されている。
【0007】
しかしながら、この方式の場合、燃料ガスと酸素との混合を火口外で行うため、火口の先端近傍では、加熱炎群による切断酸素噴出流の加熱及び保護効果が低下する。その結果、切断酸素噴出流の噴出力が低下するとともに切断酸素噴出流が周囲に拡散しやすくなり、切断効率が低下する傾向がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、燃料ガスと酸素の混合時における安全性を維持しつつ、切断酸素噴出流の噴出力の低下及び周囲への拡散を防止し、切断効率を向上させることをその目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、先端面に切断酸素噴出孔が開口し、切断酸素噴出孔を中心として内側から、燃料ガス噴出孔群と、酸素噴出口とが、前記切断酸素噴出孔と同軸をなす輪状に配設され、前記切断酸素噴出孔から噴出する高圧の気流により鋼材を切断する高圧高速切断火口において、前記燃料ガス噴出孔群に至る流路から分岐して先端側に延びる第一の分岐路の先端が、前記先端面から5mm以内の地点にて、前記酸素噴出口に至る流路の側面に開口するとともに、前記酸素噴出口に至る流路から分岐して先端側に延びる第二の分岐路の先端が、前記先端面から5mm以内の地点にて、前記燃料ガス噴出孔群に至る流路の側面に開口していることを特徴としている。
【0010】
この場合、前記第一及び第二の分岐路が、前記燃料ガス噴出孔群に至る流路と前記酸素噴出口に至る流路との間に、全体として前記切断酸素噴出孔と同軸をなす輪状を呈するよう、複数個交互に配設されていることが望ましい。
【0011】
また、前記酸素噴出口からの気流の噴出方向が、前記先端面から離間するに従い前記切断酸素噴出孔の軸線に漸次接近するよう傾斜していることが望ましい。
【0012】
また、前記切断酸素噴出孔と前記燃料ガス噴出孔群との間には、酸素噴出孔群が、前記切断酸素噴出孔と同軸をなす輪状に配設されている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態を図1ないし図3に示す。図中符号1は火口本体で、火口本体1は円筒状をなし、かつ火口本体1の基端側(図1中上端側)は、酸素及び燃料ガス供給用の吹管(図示せず。)に連結されるテーパ面1aとされている。また、テーパ面1aには、吹管からそれぞれ酸素、燃料ガス、及び酸素の供給を受ける凹部1b,1c,1dが形成されるとともに、凹部1bからは、火口本体1の内周側に向け流路1eが形成されている。一方、凹部1c,1dからは、火口本体1の先端側に延びる複数の流路1f,1gが、それぞれ火口本体1と同軸をなす輪状に配設されている。
【0014】
符号2は、基端側から火口本体1内に挿入された、円筒状をなすスリーブで、スリーブ2は、その基端側にて内側から火口本体1に螺合されたナット3により抜け止めされている。スリーブ2の中央部には、切断酸素供給用の流路2aが、スリーブ2と同軸をなすよう形成され、流路2aの先端部は、先端側に向け漸次拡径する切断酸素噴出孔2bとされている。また、スリーブ2の設置に伴い、火口本体1とスリーブ2との間には酸素供給用の流路4が形成され、流路4の基端は流路1eに連結されている。
【0015】
符号5は、火口本体1の先端に外側から螺合されてスリーブ2の周囲を覆う、円筒状をなす筒状体で、筒状体5の設置に伴い、スリーブ2と筒状体5との間には、酸素供給用の流路6が形成される。流路6の基端は流路4に連結されるとともに、流路6の先端は、火口本体1と同軸をなす輪状に配設された酸素噴出孔群6aとされている。また、筒状体5には、筒状体5の先端側に延びる複数の流路7が、火口本体1と同軸をなす輪状に配設されている。流路7の基端は流路1fに連結されるとともに、流路7の先端は、酸素噴出孔群6aの径方向外方にて、火口本体1と同軸をなす輪状に配設された燃料ガス噴出孔群7aとされている。また、筒状体5の先端部には、その外径を先端側に向け漸次縮径してなる傾斜面5aが形成されている。
【0016】
符号8は、筒状体5の周囲を覆うカバーで、カバー8の基端側外周面には、火口を吹管に装着するためのねじ8aが螺設されている。また、筒状体5とカバー8との間には、酸素供給用の流路9が形成されている。流路9の基端は流路1gに連結され、かつ流路9の先端は、燃料ガス噴出孔群7aの径方向外方にて、火口本体1と同軸をなす輪状に形成された酸素噴出口9aとされている。更に、カバー8の先端部には、その内径を、筒状体5に形成された傾斜面5aに対応して、先端側に向け漸次縮径してなる傾斜面8bが形成され、その結果、流路9の先端部は、先端側に向かうに従い漸次径方向内方に位置するよう傾斜している。
【0017】
符号7bは、筒状体5内にて流路7から分岐し、径方向外方に漸次傾斜しつつ先端側に向けて延びる分岐路(第一の分岐路)で、分岐路7bの先端は、火口本体1の先端近傍(火口本体1の先端面から5mm以内の地点A)にて、流路9に開口している。また、符号9bは、筒状体5内にて流路9から分岐し、径方向内方に漸次傾斜しつつ先端側に向けて延びる分岐路(第二の分岐路)で、分岐路9bの先端は、火口本体1の先端近傍(火口本体1の先端面から5mm以内の地点B)にて、流路7に開口している。更に、これらの分岐路7b,9bは、流路7,9間に、全体として火口本体1と同軸をなす輪状を呈するよう、筒状体5の周方向に沿って交互に配設されている。そして、上記火口本体1から分岐路9bに至る構成により、火口が形成されている。
【0018】
鋼材の切断に際しては、まず、火口を吹管に装着して吹管のバルブを開き、流路1fに燃料ガスを供給し、燃焼ガスを、流路1f,7を介して、燃料ガス噴出孔群7aから噴出させる。また、ほぼ同時に、流路1e,1gに酸素を供給し、酸素を、流路1e,4,6、及び流路1g,9を介して、酸素噴出孔群6a及び酸素噴出口9aからそれぞれ噴出させる。
【0019】
更に、本実施形態の火口では、流路7に供給された燃料ガスの一部が、分岐路7bを介して流路9に供給され、上記地点Aにて酸素と混合する。その結果、酸素噴出口9aから、燃料ガスと酸素の混合気体が噴出する。また、流路9に供給された酸素の一部が、流路9bを介して流路7に供給され、上記地点Bにて燃料ガスと混合する。その結果、燃料ガス噴出孔群7aから、燃料ガスと酸素の混合気体が噴出する。
【0020】
そして、この状態で火口に点火して切断すべき鋼材を加熱した後、あるいは、上記した燃料ガス及び酸素の供給と同時に、流路2aに酸素を供給し、切断酸素噴出孔2bから高圧の酸素を噴出させる。すると、図2に示すように、切断酸素噴出孔2bから噴出した酸素により、高速の切断酸素噴出流F1が形成される。また、切断酸素噴出流F1の周囲には酸素と燃料ガスにより加熱炎群F2が形成され、その外周には更に加熱炎群F3が形成される。この際、内側の加熱炎群F2が、外側の加熱炎群F3との相乗効果で伸張し、切断酸素噴出流F1の周囲を覆うことにより、切断酸素噴出流F1における加熱力及び運動エネルギーの減衰が抑制され、切断酸素噴出流F1によるガス切断が、厚い鋼材に対しても効率よく行われる。
【0021】
特に、本発明の火口では、酸素の流路9に、予め分岐路7bから燃料ガスが供給されるとともに、燃料ガスの流路7に、予め分岐路9bから酸素が供給され、火口の先端近傍にてそれぞれ混合されている。従って、燃料ガス噴出孔群7a及び酸素噴出口9aからは、燃料ガスと酸素との混合気体がそれぞれ噴出し、この混合気体に、火口の先端にて酸素噴出孔群6aからの酸素が更に混合されてなる混合気体により、加熱炎群F2,F3が形成される。
【0022】
すなわち、本発明の火口では、燃料ガスと酸素の混合を火口先端のみで行う従来の火口に比べ、特に火口の先端近傍における燃料ガスと酸素との混合比率が向上する。従って、特に火口の先端近傍において強力な加熱炎群F2,F3が得られ、火口の先端近傍における、加熱炎群F2,F3による切断酸素噴出流F1の加熱及び保護効果が向上する。その結果、切断酸素噴出流F1の噴出力が維持強化されるとともに、切断酸素噴出流F1の運動エネルギーが維持強化されて切断酸素噴出流F1が周囲に拡散しにくくなり、切断効率が向上する。
【0023】
加えて、カバー8及び筒状体5の先端部にそれぞれ形成された傾斜面8b,5aにより、流路9の先端部が、火口の先端側に向かうに従いに漸次径方向内方に位置するよう傾斜している。従って、酸素噴出口9aからの燃料ガス酸素との混合気体の噴出方向が、図1に矢印Cで示すように、火口から離間するに従い漸次切断酸素噴出流F1に接近するよう傾斜する。その結果、切断酸素噴出流F1が先細り形状となる方向に整流され、切断酸素噴出流F1の周囲への拡散が、より確実に防止される。
【0024】
具体的には、本実施形態の火口によれば、鋼材の切断箇所をより迅速に加熱することが可能となり、鋼材の切断に要する時間が従来の20〜40%程度短縮する。また、本実施形態の火口の使用は、鋼材の切断時におけるノロ(特に上ノロ)の排除にも効果的である。
【0025】
また、燃料ガスと酸素とが、火口の先端に極めて近い地点で混合されるため、バック・ファイヤやフラッシュ・バック等の発生がなく、切断時の安全性が確保される。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、具体的な使用環境等に応じ、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。例えば、酸素噴出口9aを、燃料ガス噴出孔群7aと同様の、火口本体1と同軸をなす輪状に配設された複数の酸素噴出孔群としてもよい。同じく、酸素噴出孔6aを、スリーブ2の先端を周方向に沿って間欠的に切り欠いたものではなく、火口本体1と同軸をなす輪状に配設された複数の円孔としてもよい。
【0027】
また、流路7,9間に、全体として火口本体1と同軸をなす輪状を呈するよう配設された分岐路7b,9bは、必ずしも筒状体5の周方向に沿って交互に配設されずともよく、分岐路7bの数が分岐路9bの数を上回っていても、あるいは、その逆であってもよい。更に、必ずしも全ての流路7,9間に分岐路7bまたは分岐路9bを設けずともよい。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明では、厚い鋼板のガス切断に用いて好適なアウトミキシング方式の切断火口において、加熱炎群を形成する酸素の流路に予め分岐路から燃料ガスが供給されるとともに、加熱炎群を形成する燃料ガスの流路に予め分岐路から酸素が供給され、火口の先端近傍にてそれぞれ混合されるという構成により、火口の先端近傍における燃料ガスと酸素との混合比率が一段と向上する。その結果、本発明によれば、燃料ガスと酸素の混合時における安全性を維持しつつ、切断酸素噴出流の加熱力の低下及び周囲への拡散を防止し、鋼材に対する切断効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の例を示す、火口の図3中I−I線に沿った半裁断面図である。
【図2】 本発明の実施形態の例を示す、火口先端部の図3中II−II線に沿った半裁断面図である。
【図3】 本発明の実施形態の例を示す、火口の図1中矢印IIIに沿った正面図である。
【符号の説明】
2b 切断酸素噴出孔
6a 酸素噴出孔群
7,9 流路
7a 燃料ガス噴出孔群
7b 第一の分岐路
9a 酸素噴出口
9b 第二の分岐路
Claims (4)
- 先端面に切断酸素噴出孔が開口し、切断酸素噴出孔を中心として内側から、燃料ガス噴出孔群と、酸素噴出口とが、前記切断酸素噴出孔と同軸をなす輪状に配設され、前記切断酸素噴出孔から噴出する高圧の気流により鋼材を切断する高圧高速切断火口において、
前記燃料ガス噴出孔群に至る流路から分岐して先端側に延びる第一の分岐路の先端が、前記先端面から5mm以内の地点にて、前記酸素噴出口に至る流路の側面に開口するとともに、
前記酸素噴出口に至る流路から分岐して先端側に延びる第二の分岐路の先端が、前記先端面から5mm以内の地点にて、前記燃料ガス噴出孔群に至る流路の側面に開口していることを特徴とする高圧高速切断火口。 - 前記第一及び第二の分岐路が、前記燃料ガス噴出孔群に至る流路と前記酸素噴出口に至る流路との間に、全体として前記切断酸素噴出孔と同軸をなす輪状を呈するよう、複数個交互に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の高圧高速切断火口。
- 前記酸素噴出口からの気流の噴出方向が、前記先端面から離間するに従い前記切断酸素噴出孔の軸線に漸次接近するよう傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧高速切断火口。
- 前記切断酸素噴出孔と前記燃料ガス噴出孔群との間に、酸素噴出孔群が、前記切断酸素噴出孔と同軸をなす輪状に配設されていることを特徴とする請求項1、2または3に記載の高圧高速切断火口。
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JP2003179928A JP3747038B2 (ja) | 2003-06-24 | 2003-06-24 | 高圧高速切断火口 |
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JP2003179928A JP3747038B2 (ja) | 2003-06-24 | 2003-06-24 | 高圧高速切断火口 |
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JP2003179928A Expired - Lifetime JP3747038B2 (ja) | 2003-06-24 | 2003-06-24 | 高圧高速切断火口 |
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- 2003-06-24 JP JP2003179928A patent/JP3747038B2/ja not_active Expired - Lifetime
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