JP3745951B2 - 化学機械研磨方法および化学機械研磨装置 - Google Patents

化学機械研磨方法および化学機械研磨装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の製造工程において、特に詳しくは多層配線を設ける工程において用いられる化学機械研磨方法および化学機械研磨装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体装置の高集積化に伴い、多層配線構造が用いられている。多層配線構造を実現する上で重要な技術として化学機械研磨(以下、「CMP」という。)による平坦化工程が挙げられる。これは、フォトリソグラフィー法を用いて微細なパターンを形成する場合に下地となる絶縁性の層間膜の段差を緩和し、半導体装置の微細化と多層化とを両立する技術である。
【0003】
下地パターンには、代表的なデュアルダマシン法等で形成される埋込配線と、導電膜の形成後にドライエッチングにより形成される非埋込配線とがある。アルミニウムやアルミニウム合金といったアルミニウムを含有する材料からなる配線(以下、「アルミニウム系配線」という。)は後者に属する。
【0004】
アルミニウム系配線による多層構造は、最初にアルミニウム系配線による第一の配線層を形成し、その上に該配線層を被覆するように絶縁性の層間膜を形成し、更にこの層間膜をCMPにより研磨して平坦化し、この平坦化された層間膜の上に第二の配線層を形成することによって(更に層間膜形成、CMP、配線層形成を繰り返し行ってもよい)作製することができる。
【0005】
次に図を用いてCMPによる平坦化について説明する。図4は従来のCMPによって層間膜を平坦化する工程を示している。図4(a)はCMPによって平坦化される前の状態を示しており、下地パターン21となるアルミニウム系配線がプラズマTEOS膜等の絶縁性の層間膜20で被覆された状態を示している。下地パターン21は平坦な絶縁性の基板22の上に形成されており、層間膜20は下地パターン21の上に絶縁性の材料を堆積させて形成されている。また、下地パターン21が基板20から突起して形成されているため、層間膜20にはこれに対応した凸部20aが形成されている。上方から見たとき、この凸部20aは下地パターン21よりも大きく、そのため層間膜20の面積密度は下地パターン21の面積密度よりも大きくなっている。
【0006】
この凸部20aを有する層間膜20に対し、図4(b)に示すように凸部(20a、20b)が消失し、膜厚が目標値となるまでCMPによって研磨を行うことで、図4(c)に示すような層間膜20の平坦化が図られる。
【0007】
ところで、一般に目標の膜厚までCMPによって研磨を行う場合、凸部20aが占める割合に応じて凸部20aの研磨時間が変化するため、下地パターンのパターン密度に応じて研磨時間を設定する必要がある。例えば同じパターンのウエハを研磨する場合であれば、数枚のテスト研磨を行うことで予めそのパターンに最適な研磨時間を設定することができる。しかし、実際の量産の現場では種々のパターンを研磨する必要があるため、予めテスト研磨を行うことは非常に非効率的であるといえる。一方、残膜制御の精度を高めることができれば、テスト研磨を行わないで目標の膜厚とすることできる。そのため、研磨工程を二回に分割して残膜制御の精度を高めた(精度の高い研磨時間を求める)方法が採用されている。
【0008】
図5は従来の研磨工程を二回に分割して研磨を行う場合のプロセスフローを示している。図5に示すように、最初にロット内の全ウエハに対し一律にある特定の時間研磨を行って、アルミニウム配線の上に形成された凸部を消失させる(1st研磨:S50)。凸部の消失後洗浄を行い(S51)、残膜厚を測定する(S52)。凸部の消失後はシートウエハ(平坦な層間膜が一面に形成されたウエハ)を研磨する研磨レートと同じレートで研磨されるため、測定された残膜厚から2nd研磨に必要な研磨時間を計算することができる。このようにして、残膜厚の値から研磨終了までの時間を計算した上で(S52)、1st研磨を終了したウエハのうち数枚(先行ウエハ)を研磨する(2nd先行研磨:S53)。
【0009】
次に、洗浄工程(S54)の後、先行ウエハの残膜厚を測定し、2nd研磨時間の補正を行う(S55)。補正を行った2nd研磨時間を未だ2nd研磨を行っていない他のウエハ(本体ウエハ)の研磨(2nd本体研磨:S56)に適用する。研磨終了後、洗浄を行い(S57)、任意のウエハを取り出して残膜の測定を行う(S58)。残膜に異常がないことが確認されれば、ウエハは次行程に移行される。
【0010】
このように、従来の二回研磨プロセスにおいては、1st研磨は研磨時間を固定して層間膜の凸部が消失するまで行われ、次に1st研磨後の層間膜の残膜厚が測定され、この測定値とパターンのないシートウエハの研磨レートとから必要な研磨時間が算出され、この算出された研磨時間に基づいて2nd研磨が行われる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の方法では、一層の層間膜を平坦化するのに一旦研磨を中断し、研磨を二回に分ける必要があるため、工程が複雑なものとなる。そのため、装置の能力限界から製造量の拡大が困難であるという問題や、製造コストの上昇、さらにスループットの低下などの問題が生じている。このため、一層の層間膜の平坦化は、研磨を中断することなく一回のCMPによって行うことが望まれている。
【0012】
また、特開平9―8038号公報には、平坦性のシミュレーションを行ってある時間研磨したあとのチップ内の段差を計算し、平坦性の評価を行う方法が記載されている。具体的には、あるチップを多数のセルに分割し、層間膜を形成した後の凸部占有率をセルごとに求め、その値をもとに、一定時間経過毎のセル間の高さの違いをシミュレートするというものである。この方法を利用すれば研磨工程後の残膜の厚みをシミュレートでき、よって、残膜の測定を行うことなく研磨時間を設定できるので研磨工程を分割することなく残膜厚を所望の値とできる。
【0013】
しかしながら、特開平9―8038号公報に記載の方法では、研磨をある一定の時間で区切り、各区間の状態を常にフィードバックしてその時点での段差を予想するものであるため、複雑な計算が必要となる。そのため、この方法を利用しても所望の残膜厚に研磨するための研磨時間を求めるのは容易ではなく、複雑な計算を行うことなく研磨時間を求め得る方法が望まれている。
【0014】
本発明の課題は、複雑な計算を用いることなく研磨時間を求め得ることができ、且つ、面積密度の異なる種々の下地パターンに対し一回の研磨工程で平坦化を行い得る化学機械研磨方法及び化学機械研磨装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、下地パターンの面積密度により研磨開始から最終研磨までの時間(実際に研磨している時間を意味し、洗浄及び残膜測定等に要する時間は除く)が変動する点に着目し、このような変動が生じるのは、層間膜20の凸部20aを研磨する際の研磨レートが層間膜20の面積密度に依存するためであるとの考えに至った。また、凸部20aが消失し平坦化された後は、シートウエハを研磨するのと同じ研磨レートとなり、下地パターンに左右されず一定となるはずであるとの考えにも至った。
【0016】
即ち、上述の図4で示したように、研磨の初期段階において研磨パッドが接触する部分は層間膜20の凸部20a(図4(a))、20b(図4(b))のみであるが、凸部(20a、20b)が消失した後は研磨パッドは層間膜20の全表面と接触する。このことは、凸部(20a、20b)を研磨する際の研磨レートは下地パターン21の面積密度に依存するが、凸部(20a、20b)の消失後の研磨レートは下地パターン21に依存しないことを示している。
【0017】
そこで、上記考えに基づき、本発明の発明者らは面積密度の異なる種々の下地パターン上に層間膜を形成し、この層間膜に対しCMPによる研磨を行い、その際の研磨時間と層間膜の残膜厚との関係を調べた。結果を図6に示す。なお、ここでいう残膜厚とは下地パターン上面から層間膜上面までの厚みを測定して求めた値である。
【0018】
図6は、研磨時間を横軸、残膜厚を縦軸にとって作成している。なお、このときの下地パターンとしてはアルミニウム系配線が用いられており、層間膜としてはプラズマTEOS膜が用いられている。研磨対象としては(イ)、(ロ)、(ハ)の三つが用いられており、下地パターンの面積密度は(イ)、(ロ)、(ハ)の順に高くなっている。
【0019】
図6に示されたグラフを検討すると、凸部が消失するまでは下地パターンの面積密度に依存して直線の傾き、即ち研磨レートは異なっている。しかし、凸部が消失した後は(イ)、(ロ)、(ハ)全てにおいて略同一の研磨レートとなっている。この凸部消失後の研磨レートは、シートウエハを研磨する際の研磨レート(SRRs)と同一のレートとなっている。
【0020】
即ち、研磨時間は下地パターンの面積密度によりT(イ)〜T(ハ)の間で大きく変動するが、研磨レートは層間膜の凸部を研磨する際の研磨レート(SRRp)と、凸部が消失した後の研磨レート(SRRs)の大きく2つに分類できると言える。また、下地パターンに対して依存性を示すのは、SRRpのみであって、SRRsはパターン依存性がないと言える。更に、SRRpとSRRsとの両方を求めることができれば、研磨開始から最終研磨までの時間を、研磨開始前に計算で求めることができると言える。従って、研磨工程を分割しないで(即ち従来のように凸部を消失させた後に残膜を測定するといった工程を経ないで)一回の研磨で研磨工程を終了させるには、層間膜の凸部を研磨する際の研磨レートSRRpを求めることが重要である。
【0021】
しかし、SRRsはシートウエハ上に形成された平坦な層間膜から容易に知ることができるのに対し、SRRpは下地パターンの面積密度の関数となると考えられ、容易に知ることはできない。そのため、本発明の発明者らは更にSRRsからSRRpを求める計算方法についての検討を行った。
【0022】
CMPの研磨レートに関するプレストンの経験則によれば、研磨レートは圧力と相対速度の積に比例することが知られている。これを応用すると「層間膜の凸部の研磨レートは層間膜が被覆する下地パターンの面積密度に反比例する」と考えることができる。更に図4で示したように、層間膜の凸部の面積は層間膜が堆積されている分だけ下地パターンの面積よりも大きくなっており、また凸部上部の端は断面形状が円弧状になっている。従って、層間膜の凸部の面積密度は補正項をkとするとD(k)と表わすことができる。また、SRRpは下地パターンの面積密度Dの関数であるといえる。よって、式で表わすと下記式(5)が成り立つ。
SRRp(D)=SRRs/D(k) (5)
【0023】
次に、境界条件として、下地パターンの面積密度Dが100%の場合と0%の場合を考える。面積密度Dが100%の場合には、層間膜の凸部はウエハ表面全体を覆う(ウエハ表面全体に平坦な層間膜が形成されている)ことになり、その研磨レートはシートウエハの研磨レートと等しくなる。即ち、SRRp=SRRsである。一方、下地パターンの面積密度Dが0%に近づくと、研磨開始から極めて短い時間で凸部が消失すると考えることができる。即ち、この場合の研磨レートは無限に大きいことを意味し、SRRp=無限大となる。これらの境界条件を考慮すると、層間膜の凸部の面積密度D(k)は、下地パターンの面積密度Dを底とする指数関数Dkで表わすことができる。従って、上記式(5)から下記式(2)が成り立つ。
SRRp=SRRs/Dk (2)
なお、この場合の補正項kは後述するように実験データやロット処理のデータを用いてフィッティングにより求めることができる。
【0024】
以上より、本発明に係る化学機械研磨方法の第一の態様は、基板上の下地パターンを被覆するよう形成され且つ該下地パターンに対応した凸部を有する層間膜を、予め算出された研磨開始から終了までの時間tの間研磨して平坦化する化学機械研磨方法であって、研磨開始から終了までの時間tの算出は、研磨開始から該凸部が消失するまでの研磨レートSRRpの値を、凸部が消失してから層間膜の厚みが目標とする厚みTtとなるまでの研磨レートSRRsに比例し且つ下地パターンの面積密度が底である指数関数に反比例する値と仮定し、上記研磨レートSRRpと上記研磨レートSRRsとに基づいて行われることを特徴としている。
【0025】
このため、本発明の第一の態様を用いれば、層間膜の凸部を消失させるための研磨レートを容易に知ることができ、研磨開始から終了までの時間を簡単に算出できる。
【0026】
また、本発明に係る化学機械研磨方法の第二の態様は、基板上の面積密度Dの下地パターンを被覆するよう形成され且つ該下地パターンに対応した凸部を有する層間膜を、予め算出された研磨開始から終了までの時間tの間研磨して平坦化する化学機械研磨方法であって、研磨開始から終了までの時間tの算出は、下記式(1)に基づき、下地パターン上面から層間膜の凸部上面までの厚みをTi、層間膜の凸部以外の部分の上面から凸部上面までの厚みをHi、目標とする平坦化後の下地パターン上面から層間膜上面までの厚みをTt、下地パターン上面を基準とした層間膜の厚みがTiからTi−Hiとなるまでの研磨レートをSRRp、該層間膜の厚みがTi−HiからTtとなるまでの研磨レートをSRRsとし、且つ、SRRpを、研磨時間一定の場合の面積密度と研磨量との関係から算出した値をkとして下記式(2)から求めて行われることを特徴としている。
t=Hi/SRRp+(Ti−Hi−Tt)/SRRs (1)
SRRp=SRRs/Dk (2)
【0027】
この場合においても層間膜の凸部を消失させるための研磨時間を知ることができ、よって最終残膜精度の向上を図ることもできるので、残膜制御の精度をさらに高めることが可能となる。
【0028】
上記第一の態様または第二の態様においては、下地パターンは、平坦な膜又は平坦な基板上に形成された非埋込配線であるのが好ましく、更にこの非埋込配線はアルミニウムを含有する材料またはポリシリコンで形成されているのが特に好ましい。
【0029】
また、本発明に係る化学機械研磨方法の第三の態様は、上記第一の態様または第二の態様の化学機械研磨方法を用いて層間膜を研磨する工程と、研磨後における該層間膜の下地パターン上面から平坦化された層間膜上面までの厚みを測定する工程と、該測定された厚みと上記目標とする平坦化後の下地パターン上面から層間膜上面までの厚みTtとの差ΔTtを算出する工程と、前記差△Ttを用いて下記式(3)または(4)により上記時間tを補正して時間t2を算出する工程と、該層間膜が設けられた基板とは別の基板に設けられた凸部を有する層間膜を、時間t2の間研磨して平坦化する工程とを少なくとも有することを特徴としている。
t2=t+△Tt/SRRs (測定値>Tt) (3)
t2=t−△Tt/SRRs (測定値<Tt) (4)
【0030】
このように本態様では、上記第一の態様を用いて研磨を行い、この研磨の結果を踏まえて更に別の対象に対して研磨を行うことができる。そのため、より一層精度の高い研磨時間を知ることができ、よって研磨後の残膜精度の更なる向上を図ることができる。
【0031】
本発明に係る化学機械研磨装置は、基板上の下地パターンを被覆するよう形成され且つ該下地パターンに対応した凸部を有する層間膜を、予め算出された研磨開始から終了までの時間の間研磨して平坦化する化学機械研磨装置であって、研磨開始から該凸部が消失するまでの研磨レートSRRpの値を、凸部が消失してから層間膜の厚みが目標とする厚みTtとなるまでの研磨レートSRRsに比例し且つ下地パターンの面積密度が底である指数関数に反比例する値と仮定し、上記研磨レートSRRpと上記研磨レートSRRsとに基づいて研磨開始から終了までの時間を算出する演算手段を有することを特徴としている。
【0032】
かかる構成により、本発明の化学機械研磨装置を用いれば、精度の高い研磨時間を算出でき、よって開始から終了までの間において途中で中断することのない一回の研磨で層間膜の平坦化を図ることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化学機械研磨方法および化学機械研磨装置について図を用いて詳細に説明する。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る化学機械研磨方法および本発明に係る化学機械研磨装置によって行われる研磨工程を示す断面図である。図1(a)は研磨が行われる前の層間膜3の状態を示している。図1(b)、(c)は研磨過程を示している。図1(a)の例では、平坦な絶縁性の基板2上に形成された面積密度Dの下地パターン1の上に、プラズマTEOS膜等の絶縁性の層間膜3が形成されている。なお、本発明において下地パターン1は非埋込配線であるのが好ましく、非埋込配線はアルミニウムを含有する材料またはポリシリコンで形成されているのが好ましい。
【0035】
本発明の実施の形態1に係る化学機械研磨方法においては、研磨開始から終了までの時間tを予め算出し、この時間の間、図1(b)〜(c)に示すように研磨を行うことによって層間膜3を平坦化し、更に層間膜の厚みを目標とする厚みTtとする。研磨開始から終了までの時間tは、開始から凸部3aが消失するまでの研磨レートSRRpの値を、凸部3aが消失してから層間膜3の厚みが目標とする厚みTtとなるまでの研磨レートSRRsに比例し且つ下地パターン1の面積密度Dが底である指数関数に反比例する値と仮定し、上記研磨レートSRRpと上記研磨レートSRRsとに基づいて算出することができる。
【0036】
具体的には研磨開始から終了までの時間tは以下に示すように算出することができる。先ず、図1に示すように、下地パターン1上面から層間膜3の凸部3a上面までの厚み(層間膜3の初期厚)Ti、層間膜3の凸部3a以外の部分の上面から凸部3a上面までの厚み(凸部3aの高さ)Hiを求める。初期厚Tiは予め測定しておくことで求めることができる。凸部3aの高さHiは下地パターン1の厚みと同一又は略同一となるので、プロセス設計時に決められた値として求めることができる。Ttは平坦化後の下地パターン1上面から層間膜3上面までの厚みであり、予め設定された目標値である。
【0037】
また、開始から凸部3aが消失するまで、即ち下地パターン1上面を基準とした層間膜3の厚みがTiからTi−Hiとなるまで(図1(b)の状態となるまで)の研磨レートSRRpと、凸部3aが消失してから層間膜3の厚みが目標とする厚みTtとなるまで、即ち層間膜3の厚みがTi−HiからTtとなるまで(図1(c)の状態となるまで)の研磨レートSRRsとを求める。研磨レートSRRpは上述の式(2)から求めることができる。研磨レートSRRsは凸部が消失した状態で研磨する際の研磨レートであることから、装置設定(研磨圧力等)が同じ場合のシートウエハの研磨レートから求めることができる。例えば図6中に示した凸部消失後の研磨レートを用いることができる。
【0038】
次に研磨レートごとの研磨に要する所用時間を求める。上述のように層間膜3の厚みがTiからTi−Hiとなるまでの間は研磨レートSRRpで研磨が行われるため、その所要時間はHi/SRRpとなる。一方、上述のように層間膜3の厚みがTi−HiからTtとなるまでの間は研磨レートSRRsで研磨が行われるため、その所用時間は(Ti−Hi−Tt)/SRRsとなる。研磨開始から終了までの時間tはこれら所要時間の和であるから、下記式(1)となる。
t=Hi/SRRp+(Ti−Hi−Tt)/SRRs (1)
また、SRRpは上述したように式(2)から求めることができるので式(1)は下記に示す式(6)に変形できる。
t=(Hi・Dk+Ti−Hi−Tt)/SRRs (6)
【0039】
ここで、指数関数Dkの底である面積密度Dは、ウエハに設けられた全ての下地パターン1の上方からの投影面積の和を、ウエハ面積で割って求めた値、即ちチップ全体の面積に占める下地パターンの占有率である。具体的には回路設計に用いられるCADデータから求めることができる。
【0040】
指数関数Dkの変数であるkは、研磨時間一定の場合の面積密度と研磨量との関係から算出される。変数kの値の求め方について図2に基づいて説明する。図2は研磨時間が一定の場合の下地パターンの面積密度Dと研磨量との関係を示すグラフである。図2に示すグラフは、面積密度D(30%〜60%)の異なる複数の下地パターンそれぞれの上に層間膜を形成し、形成された各層間膜(Hi:約800nm)ごとに、研磨時間を90秒に設定してCMPによる研磨を行って得られたものである。この90秒という時間は層間膜の凸部が完全に消失するような時間である。なお、このときの研磨装置の設定条件は、荷重140kgf、テーブル回転数61rpm、キャリア回転数43rpmである。研磨液としてはアンモニア系酸化膜用スラリーが用いられている。
【0041】
ここで研磨量とは研磨開始前の凸部上面から研磨終了時の層間膜上面までをいい、図1中のTi−Ttに相当する値である。研磨量をXとすると式(6)は下記式(7)のように書き換えられる。
X=Hi+t・SRRs−Hi・Dk (7)
【0042】
上記式(7)にグラフから得られたXとDの値を代入し(例えばX=850、D=60%)、更にHiの値とSRRsの値(450nm/s)を代入することによりkを求めることができる。具体的には図2の例ではk=0.46となる。なお、装置や研磨液等が変わるとグラフのカーブが変化し、kの値もそれに合わせて変化する。従って、装置や研磨液等の諸条件に合わせてkを算出する必要がある。逆に、装置や研磨液が同じであれば常に同じ値を用いることができる。
【0043】
従って、求められた各値を上記式(6)に代入すれば、研磨時間tを求めることができる。このように、本発明の実施の形態1に係る化学機械研磨方法によれば、凸部が消失するまでの研磨レートSRRpを容易に知ることができ、研磨時間tを簡単に算出できる。よって、連続した一回の研磨工程によって層間膜を平坦化して所望の厚みとでき、更に従来のように研磨工程を分割して行う必要はない。即ち、従来のように研磨工程の途中に残膜を測定する工程等の研磨を中断する工程を入れる必要はない。
【0044】
また、本発明に係る化学機械研磨装置(以下「本装置」という。)では、上記の研磨時間tの演算を行う演算手段を有している。即ち、演算手段は、研磨開始から凸部3aが消失するまでの研磨レートSRRの値を、凸部3a消失から層間膜3の厚みが目標とする厚みTtとなるまでの研磨レートSRRに比例し且つ下地パターン1の面積密度Dが底である指数関数に反比例する値と仮定し、研磨レートSRRpと研磨レートSRRsとに基づいて研磨開始から終了までの時間tを算出する機能を有している。更に、本発明において演算手段は上記式(1)に基づいて研磨開始から終了までの時間tを算出する機能をも有することができる。
【0045】
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2に係る化学機械研磨方法について図を用いて説明する。図3は本発明の実施の形態2に係る化学機械研磨方法をプロセスフローによって示している。図3の例に示すように、最初に数枚のウエハを先行ウエハとして本発明の実施の形態1に係る化学機械研磨方法を用いて層間膜の研磨が行われる。具体的には、最初に層間膜の初期厚Tiを測定し、これを基に研磨開始から終了までの時間(研磨時間)tが算出される(S30)。その後、先行ウエハに対し、CMPによる研磨が研磨時間tだけ行われ(S31)、更に洗浄が行われる(S32)。
【0046】
次に、この研磨終了後の先行ウエハに対し、層間膜の下地パターン上面から平坦化された層間膜上面までの厚み、即ち実際の残膜厚の測定が行われる(S33)。更に、この測定結果と目標とする平坦化後の下地パターン上面から層間膜上面までの厚み(目標残膜厚)Ttとの差ΔTtが算出される(S34)。
【0047】
その後、この算出された△Ttを用いて、先行ウエハを研磨したときの研磨時間tを下記式(3)または(4)により補正して、残りのウエハ(以下「本体ウエハ」という。)の層間膜を研磨する場合の研磨時間t2の算出が行われる(S35)。
t2=t+△Tt/SRRs (測定値>Tt) (3)
t2=t−△Tt/SRRs (測定値<Tt) (4)
【0048】
次に、本体ウエハに対し研磨時間t2の間研磨が行われる(S36)。その後、洗浄を行い(S37)、最後に任意の本体ウエハを取り出して残膜厚の測定を行い(S38)、残膜厚が異常でないことを確かめてから次行程に移行する。
【0049】
【発明の効果】
このように本発明に係る化学機械研磨方法または化学機械研磨装置を用いると、多品種の半導体装置を研磨する場合であっても、また、下地パターンが初めてのものであっても、その下地パターンの面積密度を予めCADデータなどから算出しておけば、層間膜の凸部を研磨する際の研磨レートを簡単に知ることができ、所望の残膜厚とするための研磨時間を算出できる。また、この算出された研磨時間の精度は高いものである。更に先行ウエハの研磨後の残膜厚を測定し、これをもとに研磨時間の補正を行えば、より精度の高い研磨時間を算出できる。即ち、本発明に係る化学機械研磨方法または化学機械研磨装置を用いれば、従来のように研磨工程を中断することなく一回の研磨で研磨を終了することができる。
【0050】
従って、本発明を用いることで、製造コストの削減、スループットの向上を図ることができ、さらに装置の稼働率の向上をも図ることができる。また、本発明の化学機械研磨方法および化学機械研磨装置は種々の下地パターンに対応できるため、特に、少量多品種の生産が求められる半導体装置の製造工程において極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る化学機械研磨方法および化学機械研磨装置によって行われる研磨工程を示す断面図である。
【図2】研磨時間が一定の場合の下地パターンの面積密度Dと研磨量との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る化学機械研磨方法をプロセスフローによって示す図である。
【図4】従来のCMPによって層間膜を平坦化する工程を示す図である。
【図5】従来の研磨工程を二回に分割して研磨を行う場合のプロセスフローを示す図である。
【図6】面積密度の異なる下地パターン上に形成された層間膜を研磨した場合における研磨時間と層間膜の残膜厚との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 下地パターン
2 絶縁膜
3 層間膜
3a 層間膜の凸部

Claims (5)

  1. 基板上の面積密度Dの下地パターンを被覆するよう形成され且つ該下地パターンに対応した凸部を有する層間膜を、予め算出された研磨開始から終了までの時間tの間研磨して平坦化する化学機械研磨方法であって、
    研磨開始から終了までの時間tの算出は、下記式(1)に基づき、下地パターン上面から層間膜の凸部上面までの厚みをTi、層間膜の凸部以外の部分の上面から凸部上面までの厚みをHi、目標とする平坦化後の下地パターン上面から層間膜上面までの厚みをTt、下地パターン上面を基準とした層間膜の厚みがTiからTi−Hiとなるまでの研磨レートをSRRp、該層間膜の厚みがTi−HiからTtとなるまでの研磨レートをSRRsとし、且つ、SRRpを、研磨時間一定の場合の面積密度Dと研磨量との関係から算出した値をkとして下記式(2)から求めて行われることを特徴とする化学機械研磨方法。
    t=Hi/SRRp+(Ti−Hi−Tt)/SRRs (1)
    SRRp=SRRs/Dk (2)
  2. 下地パターンが、平坦な膜又は平坦な基板上に形成された非埋込配線である請求項1に記載の化学機械研磨方法。
  3. 非埋込配線が、アルミニウムを含有する材料またはポリシリコンで形成されている請求項に記載の化学機械研磨方法。
  4. 上記請求項1〜のいずれかに記載の化学機械研磨方法を用いて層間膜を研磨する工程と、
    研磨後における該層間膜の下地パターン上面から平坦化された層間膜上面までの厚みを測定する工程と、
    該測定された厚みと上記目標とする平坦化後の下地パターン上面から層間膜上面までの厚みTtとの差ΔTtを算出する工程と、
    前記差△Ttを用いて下記式(3)または(4)により上記時間tを補正して時間t2を算出する工程と、
    該層間膜が設けられた基板とは別の基板に設けられた凸部を有する層間膜を、時間t2の間研磨して平坦化する工程とを少なくとも有することを特徴とする化学機械研磨方法。
    t2=t+△Tt/SRRs (測定値>Tt) (3)
    t2=t−△Tt/SRRs (測定値<Tt) (4)
  5. 基板上の面積密度Dの下地パターンを被覆するよう形成され且つ該下地パターンに対応した凸部を有する層間膜を、予め算出された研磨開始から終了までの時間の間研磨して平坦化する化学機械研磨装置であって、
    演算手段を有し、
    前記演算手段は、下記式(1)に基づき、下地パターン上面から層間膜の凸部上面までの厚みをTi、層間膜の凸部以外の部分の上面から凸部上面までの厚みをHi、目標とする平坦化後の下地パターン上面から層間膜上面までの厚みをTt、下地パターン上面を基準とした層間膜の厚みがTiからTi−Hiとなるまでの研磨レートをSRRp、該層間膜の厚みがTi−HiからTtとなるまでの研磨レートをSRRsとし、且つ、SRRpを、研磨時間一定の場合の面積密度Dと研磨量との関係から算出した値をkとして下記式(2)から求めて、前記研磨開始から終了までの時間tを算出することを特徴とする化学機械研磨装置。
    t=Hi/SRRp+(Ti−Hi−Tt)/SRRs (1)
    SRRp=SRRs/D k (2)
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