JP3740402B2 - 分注ノズル、ノズルチップ、及び分注装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノズルチップを取付けて用いる分注ノズル、その分注ノズルを備えた分注装置、及びその分注ノズルに取付けられるノズルチップに関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は従来の自動分注装置に用いられる分注用ノズル51を表わす図である。
【0003】
分注用ノズル51は、例えば樹脂等で形成された中空のノズルチップ52と、ノズルチップ52を取付けるためのノズル基部53とからなる。このノズルチップ52にて必要な検体を吸引し、ラック(図示せず)に起立保持された複数の試験管(図示せず)等に吸引した検体を吐出することで分注を行う。
【0004】
ノズル基部53は、ほぼ円筒状であって、先端に向かうに従ってその径が小さくなる先細の形状で側方に傾斜面55を備える。ノズルチップ52は細長の円錐形状であってその内壁に傾斜面56を備える。基端側には、ノズル基部53が挿入される開口57を備え、先端側には、検体を吸引、吐出するための開口58を備える。
【0005】
ノズル基部53にノズルチップ52を取付ける作業は以下の手順で行われる。ノズルチップ52は、あらかじめノズルチップ用のラック(図示せず)に装填されている。アクチュエータ等の駆動機構54により、ノズルチップ52の上方の位置までノズル基部53が搬送される。次に、ノズル基部53を垂直下方に移動した後、駆動機構54は、ノズル基部53がノズルチップ52と嵌合してそれを十分保持できるようになるまで、ノズル基部53を垂直方向に押圧する。
【0006】
前述した駆動機構54により垂直方向にノズル基部53が押圧されると、上記ノズル基部53側方に設けられた傾斜面55とノズルチップ52の傾斜面56とが当接する。さらに、ノズル基部53の傾斜面55がノズルチップ52の傾斜面56を押圧して、ノズルチップ52内の気密性が保たれた状態でノズルチップ52が保持される。また、当接面(傾斜面55,56)が傾斜しているので、ノズル基部53に対するノズルチップ52の水平、及び垂直方向の位置決めがなされる。当接面の面積を比較的大きく取れば、その分位置決めの精度を確保できる。ここで、ノズル基部53の挿入深さは、ノズルチップ52の種類によっても異なるが、2mm〜5mm程度である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、当接面の面積を大きくすれば、それだけノズルチップ52の装着に伴う摩擦力も大きくなり、必要な駆動機構54もパワーの大きなものが必要となって、分注装置が大規模になるという問題があった。そこで、当接面の面積を小さくすれば、駆動機構54を小型化できるが、上述したように当接面が小さいと位置決め精度を確保するのが難しいといった問題があった。
【0008】
さらに、ノズルチップ52の内壁の形状は、成形不良によるばらつきがある。場合によっては、そのばらつきによってノズルチップ52の嵌合深さが異なってしまい、ノズルチップ52の取付ごとに位置調整を行う必要がある。そうすると取付作業が煩雑となるといった問題があった。
【0009】
また、上述したようにノズルチップ52をノズル基部53に取付ける場合においてノズルチップ52をラックに起立保持させる作業は自動化されており、複数のノズルチップ52をひとつの収容容器(図示せず)に収容しておいてその収容容器から各ノズルチップ52を取り出してラックに自動装填する。しかしながら、ノズルチップ52が図示のような円錐形状をしていると、収容容器内でノズルチップ52の先端が他のノズルチップ52の基端側の開口57に入り込んでしまい、ノズルチップ52を取り出す前に、両ノズルチップ52を分離する必要があり効率よく自動装填作業を行えない問題があった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、比較的小さな力でノズルチップを取付けることができ、且つ当該ノズルチップの精度の高い位置決めを可能とする分注ノズル、当該分注ノズルに取付けられるノズルチップ、及び当該分注ノズルを備えた分注装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、ノズルチップの先端が他のノズルチップの基端側の開口に入り込んでしまうことのないノズルチップを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
(1)上記第1の目的を達成するために、本発明に係る分注ノズルは、中空のノズルチップと、当該ノズルチップが取付けられるノズル基部とを有する分注ノズルであって、前記ノズル基部は、当該ノズル基部の先端に設けられ、前記ノズルチップの内壁を押圧して当該ノズルチップを保持するチップ保持部と、前記チップ保持部の上方に設けられ、前記ノズルチップの基端側の開口の周縁部と係合し当該ノズルチップの位置決めをおこなうチップ位置決め部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記のように、ノズルチップを保持する部分と、ノズルチップの位置決めを行う部分とを独立して設けたので、従来のように、精度よくノズルチップの位置決めを行うために分注ノズルの側方及びノズルの内壁に広い当接面を設ける必要が無く、比較的小さな力でノズルチップをノズル基部に取付けることができる。
【0014】
望ましくは、前記ノズルチップは、基端側の開口の周縁部に、前記チップ位置決め部と係合する係合部を有することを特徴とする。ノズルチップ側にチップ位置決め部と係合する係合部を設けることで、ノズルチップの位置決め精度を高めることができる。
【0015】
ノズルチップ位置決め部と係合部が係合する形態は、嵌合、当接等様々な態様を取り得る。例えば、両者のうちいずれか一方が凸状部材を備え、他方が凹状部材を備え、両部材が嵌合することによりノズルチップの位置決めを行うようにしてもよい。また、両者とも水平面を備え、両水平面が当接することにより位置決めを行うようにしてもよい。
【0016】
また、前記チップ位置決め部は、テーパ面を備え、前記係合部は、前記チップ位置決め部のテーパ面と当接するテーパ面を基端側の開口の周縁部に備えることを特徴とする。このようにすれば、簡単な構成で、ノズルチップの水平及び垂直方向の位置決めが行える。
【0017】
前記ノズル基部は、前記チップ保持部と前記チップ位置決め部との間の部分がくびれた形状であることを特徴とする。ノズルチップをノズル基部に取付ける際に、ノズルチップがノズル基部に対して通常の取付姿勢から傾いている場合がある。このような場合、取付時にノズルチップの姿勢を通常のものに戻す必要がある。ノズル基部は、チップ保持部とチップ位置決め部との間の部分がくびれており、それゆえ、ノズルチップの取付時にノズル基部とノズルチップとの間の隙間部分の空間を大きく取ることができる。したがって、この空間を利用してノズルチップの姿勢の矯正をスムーズに行うことができる。
【0018】
(2)上記第2の目的を達成するために、本発明に係るノズルチップは、その先端に前記基端側の開口の内径よりも大きい外径を有するストッパ部を備えることを特徴とする。上記構成によれば、前記ストッパ部は、別のノズルチップの基端側の開口から前記ノズルチップの先端が侵入することを阻止することができる。例えば複数のノズルチップを収容容器に収容しておいた場合でも、ノズルチップの先端が別のノズルチップの基端側の開口から入り込んでしまうことを防ぐことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る分注装置10の主要な構成を示す図である。
【0021】
分注装置10は、分注ノズル12、分注ポンプ14、分注ノズル12の駆動機構16、制御部17を含んで構成される。
【0022】
分注ノズル12は、ノズル基部18と、ノズルチップ20とからなる。ノズル基部18内には、エアの流路19が形成されている。分注ノズル12には、エアチューブ22を介して分注ポンプ14が接続される。この分注ポンプ14は、シリンダ及びピストンからなり、分注ノズル12はこのピストンの進退動作によるエアの圧力変化により、検体や試薬等の吸引動作及び吐出動作を行う。駆動機構16は、分注ノズル12を3次元方向に搬送することができる。駆動機構16の構成自体は周知であるので、詳細な説明は省略する。制御部17は、分注ポンプ14、及び駆動機構16の動作を制御すると共に分注装置10全体を制御するマイクロコンピュータ等で実現される。
【0023】
ノズル基部18は、円筒形状であって、金属たとえば、ステンレスで構成される。
【0024】
ノズル基部18の基端部24には、ノズルチップ20の垂直方向及び水平方向の位置決めを行うための環状のテーパ面26が形成される。テーパ面26の傾斜角度は例えば45度である。ノズルチップ20の基端側の開口27の周縁部28にもテーパ面26と同じ傾斜角度の環状のテーパ面29が形成されており、テーパ面26とテーパ面29を当接させることにより、ノズル基部18に対するノズルチップ20の位置決めを行う。ここで、傾斜角度は本実施形態のものに限られず、適宜好適な傾斜角度が採用される。
【0025】
ノズル基部18の先端部30の側面には、ノズルチップ20を保持するための保持面32が設けられている。保持面32は、ノズルチップ20の内壁33に当接しそれを押圧することで、押圧により生じる摩擦力にて当該ノズルチップ20を保持する。保持面32及び内壁33の内面は、傾斜面であってもよい。また、先端部30の先端には丸みを帯びた案内面34が形成されており、ノズルチップ20にノズル基部18を挿入する際、案内面34はノズルチップ20のテーパ面29により案内される。
【0026】
ノズル基部18において、基端部24と先端部30の間に挟まれた中央のボディ部35は、くびれた形状を備える。
【0027】
ノズル基部18において、保持面32は、ノズルチップ20を保持する機能を、テーパ面26は、ノズルチップ20の位置決め機能をそれぞれ独立に有している。従来は、ノズルチップの内壁に当接する当接面に両機能を持たせていたので、当接面の面積を大きく取る必要があった。本実施形態においては、保持面32の垂直方向の高さは例えば1mm程度であり、その面積は比較的小さく、それゆえ、ノズル基部18をノズルチップ20に挿入する際、その圧入に要する力は比較的小さくてよい。上述した従来例と比較した場合、その圧入に要する力は1/2〜1/5倍程度に軽減される。
【0028】
ノズルチップ20は、中空のチューブ状であって、例えば樹脂等で構成される。ノズルチップ20の先端には、検体等を吸引及び吐出するための開口36が設けられており、基端側にはノズル基部18が挿入される開口27が設けられる。
【0029】
基端側の開口27の周縁部28には、前述したようにノズル基部18のテーパ面26に当接してノズルチップ20の位置決めを行うテーパ面29を備える。また、周縁部28には、ノズルチップ20をノズルチップ用のラックに装填する場合に、ラックに設けられた挿入溝の開口の周縁部分と係合するフック部38が形成される。
【0030】
ノズルチップ20の先端側には軸太のストッパ部39が形成される。例えばストッパ部39の設けられる位置は、ノズルチップ20の全長が約100mmの場合に、先端から18mmの位置である。ストッパ部39の外径は例えば8mmで、開口27の内径6mmよりも大きく形成される。こうすれば、ノズルチップ20の先端が同一形状の別のノズルチップ20の基端側開口に入り込んでしまうことを防ぐことができる(図4参照)。
【0031】
図2は、ノズルチップ20をノズル基部18に取付ける工程を表わす図である。
【0032】
ノズルチップ20は、フック部38と挿入溝41の周縁部42とが係合した状態で、あらかじめラック40に装填されている。ノズル基部18は、駆動機構16によりノズルチップ20の上方の位置に搬送される。その後、駆動機構16は当該ノズル基部18を垂直下方に移動させる(図中、(A)参照)。ノズル基部18の先端の案内面34がテーパ面29に案内されながら、ノズル基部18はノズルチップ20内に挿入される(図中、(B)参照)。次に、保持面32が内壁33を摺動しながら、駆動機構16によりノズル基部18はノズルチップ20に圧入される(図中、(C)参照)。ノズル基部18は、テーパ面26がノズルチップ20側のテーパ面29に当接するまで圧入される。駆動機構16は、テーパ面26,29が当接した状態でノズル基部18の圧入を解除する(図中、(D)参照)。
【0033】
図3は、取付時にノズルチップ20の軸中心がノズル基部18の軸中心に対して傾いている場合の取付工程を表わす図である。
【0034】
まず、ノズル基部18は、駆動機構16によりノズルチップ20の上方の位置に搬送される。ノズルチップ20は、通常の起立保持の姿勢から少し傾いた状態でラック40の挿入溝41に装填されている。この状態で、ノズル基部18を垂直下方に移動させた場合、最初のうちは、ノズルチップ20の軸中心がノズル基部18の軸中心に対して傾いた状態で、ノズル基部18が挿入される(図中、(A)参照)。さらにノズル基部18を圧入すると、テーパ面26とテーパ面29とが当接しない状態でノズル基部18とノズルチップ20とが係合する(図中、(B)参照)。この状態から、さらにノズル基部18を圧入すると、ノズルチップ20は、ノズル基部18と係合している部分、及び挿入溝41に当接する位置を変化させ、挿入溝41に挿入されつつその姿勢は通常の起立した姿勢に矯正される。ここで、ノズル基部18のボディ部35がくびれているので、ノズル基部18とノズルチップ20との間の隙間部分の空間を大きくとることができ、それゆえ、ノズルチップ20の姿勢の矯正をスムーズに行うことができる。さらに、ノズル基部18を圧入すると、テーパ面26とテーパ面29とが当接して、ノズルチップ20は起立した姿勢に戻る。駆動機構16は、フック部38と挿入溝41の周縁部42とが係合し、且つノズルチップ20の軸中心がノズル基部18の軸中心と一致した状態でノズル基部18の圧入を解除する(図中、(C)参照)。
【0035】
図4は、ノズルチップ20の先端に設けられたストッパ部39と基端部側の開口27との関係を表わす図である。前述したように、ストッパ部39の外径44は、開口27の内径46よりも大きく形成される。こうすれば、ノズルチップ20の先端が別のノズルチップ20の開口27に入り込んでしまうことを防ぐことができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明に係る分注ノズルは、ノズルチップを保持する部分と、ノズルチップの位置決めを行う部分とを独立して設けたので、比較的小さな力でノズルチップを取付けることができ、且つ当該ノズルチップの位置決めの精度の高い分注ノズル、当該分注ノズルに取付けられるノズルチップ、及び当該分注ノズルを備えた分注装置を提供することができる。
【0037】
また、本発明に係るノズルチップは、その先端に基端側の開口の内径よりも大きい外径を有するストッパ部を備えるので、ノズルチップの先端が他のノズルチップの基端側の開口から入り込んでしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る分注装置の図である。
【図2】 ノズル基部にノズルチップを取付ける図である。
【図3】 ノズル基部にノズルチップを取付ける図である。
【図4】 ノズルチップのストッパ部と基端部の開口との関係を表す図である。
【図5】 従来の分注用ノズル、及びノズルチップを表す図である。
【符号の説明】
12 分注ノズル、14 分注ポンプ、16 駆動機構、17 制御部、18ノズル基部、20 ノズルチップ、24 基端部、26,29 テーパ面、27,36 開口、28 周縁部、30 先端部、32 保持面、33 内壁、34 案内面、35 ボディ部、38 フック部、39 ストッパ部、40 ラック、41 挿入溝、42 周縁部。
Claims (10)
- 中空のノズルチップと、当該ノズルチップが取付けられるノズル基部とを有する分注ノズルであって、
前記ノズル基部は、
当該ノズル基部の先端に設けられ、前記ノズルチップの内壁を押圧して当該ノズルチップを保持するチップ保持部と、
前記チップ保持部の上方に設けられ、前記ノズルチップの基端側の開口の周縁部と係合し当該ノズルチップの位置決めをおこなうチップ位置決め部と、
を備え、
前記ノズル基部は、ノズルチップの軸中心がノズル基部の軸中心に対して傾いた状態でノズル基部がノズルチップに挿入される際にノズルチップの軸中心をノズル基部の軸中心と一致させるようにノズルチップの姿勢の矯正をスムーズに行うために、前記チップ保持部と前記チップ位置決め部との間の部分がくびれた形状である、
ことを特徴とする分注ノズル。 - 請求項1に記載の分注ノズルであって、
前記チップ位置決め部は、テーパ面を備えることを特徴とする分注ノズル。 - 請求項2に記載の分注ノズルであって、
前記ノズルチップは、その基端側の開口の周縁部に前記チップ位置決め部のテーパ面と当接するテーパ面を備えることを特徴とする分注ノズル。 - 請求項3に記載の分注ノズルであって、
前記ノズル基部の先端に丸みを帯びた案内面が形成され、これにより、ノズル基部の案内面がノズルチップの前記テーパ面に案内されながらノズル基部がノズルチップに挿入される、
ことを特徴とする分注ノズル。 - 請求項4に記載の分注ノズルであって、
前記ノズル基部は金属で構成され、
前記ノズルチップは樹脂で構成される、
ことを特徴とする分注ノズル。 - 請求項5に記載の分注ノズルであって、
前記ノズルチップは、その軸中心がノズル基部の軸中心に対して傾いてラックの挿入溝に装填されている状態でノズル基部がノズルチップに挿入される際に、ノズル基部と係合している部分及び挿入溝に当接する位置を変化させ、挿入溝に挿入されつつその姿勢が矯正される、
ことを特徴とする分注ノズル。 - 請求項1に記載のノズル基部に取付けられるノズルチップであって、
基端側の開口の周縁部に、前記チップ位置決め部と係合するテーパ面を備えることを特徴とするノズルチップ。 - 請求項7に記載のノズルチップであって、
その先端に前記基端側の開口の内径よりも大きい外径を有するストッパ部を備えることを特徴とするノズルチップ。 - 請求項8に記載のノズルチップであって、
樹脂で構成されることを特徴とするノズルチップ。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の分注ノズルを備えた分注装置。
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