JP3735717B2 - Mo−Si−B合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発電用ガスタービン、航空機用ジェットエンジン、及びロケットエンジンなどの耐熱性部材として好適に使用することのできるMo−Si−B合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
現行ガスタービンエンジンに用いられるタービンブレードの表面には、高温酸化を防ぐことを目的として、Ni、Co、Cr、Al及びYを主成分とする金属層がコーティングされている。しかし、これらの合金の耐酸化性は1200℃程度までしかない。一方、発電効率やエンジン出力はガス燃焼温度が上昇するにつれて向上するが、上述した合金からなる現行のガスタービンエンジンでは、1200℃を超えた高い温度領域では使用することができないため、前述した発電効率の向上などは実現することができないでいた。
【0003】
また、ジェットエンジンなどはNi基超合金などから形成されており、燃焼温度上昇の観点から、前記Ni基超合金に代えて高融点金属基複合材料が用いられるようになってきている。これらの合金は高温強度に優れ、室温において高い靭性を有する。しかしながら、高温での耐酸化性が十分でなく、上記材料を用いた場合の前記ジェットエンジンなどにおける燃焼温度の向上には限界があった。
【0004】
本発明は、高温強度に優れるとともに、高温において高い耐酸化性を示す新規な材料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、所定の基板上においてプラズマ溶射法を用いて形成され、Mo、Si及びBを構成元素とすることを特徴とする、Mo−Si−B合金に関する。
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を実施した。その結果、Mo、Si及びBを構成元素とする合金が比較的高い高温強度及び高温耐酸化性を示すことに着目した。しかしながら、前述した合金を単に溶解鋳造法などを用いて形成した場合は、上述したガスタービンエンジンやジェットエンジンなどの燃焼温度上昇に十分耐えるようなものを得ることができず、さらなる鋭意検討を実施した。その結果、プラズマ溶射法を用いることを想到し、前記プラズマ溶射法を用いて作製したMo−Si−B合金は高い高温強度及び高温耐酸化性を示すことを見出し、本発明をするに至ったものである。
【0007】
したがって、本発明のMo−Si−B合金から耐熱性部材を構成し、これを発電用ガスタービン、航空機用ジェットエンジン、及びロケットエンジンなどに用いることにより、これらの燃焼温度を上昇させて、発電効率及びエンジン出力などを向上させることができるようになる。
【0008】
なお、本発明の好ましい態様においては、前記Mo−Si−B合金中に、Mo3Si相、Mo5Si3相及びMo5SiB2相の三相を共存させる。これによって、前記Mo−Si−B合金の高温耐酸化性をさらに向上させることができる。
本発明のその他の特徴及び利点については、以下において詳述する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に則して詳細に説明する。
図1は、本発明のMo−Si−B合金を作製する際に用いるプラズマ溶射装置の構成を概略的に示す図である。図1に示すプラズマ溶射装置においては、真空槽1内においてプラズマガン2が設けられ、さらに真空槽1の右方側において、マニュピュレータ3が設けられている。マニュピュレータ3の走査部3Aの先端にはプラズマガン2と対向するようにして基板Sが配置されている。
【0010】
また、真空槽1の外部には、プラズマガン2の後方において原料供給のためのフィーダ4が設けられるとともに、プラズマガス供給のためのガスコントローラ5が設けられている。さらに、プラズマ形成のためDC電源6及び高周波電源7が設けられている。また、真空槽1にはフィルタ8を介してメカニカルポンプ9及びロータリーポンプ10が接続されて、真空槽1内の初期真空度及び操作中に真空度を所定の値に維持するように構成されている。なお、真空槽1の周囲には冷却水供給装置11から冷却水を供給して、その温度上昇を抑制するようにしている。
【0011】
次いで、図1に示す装置を用いた本発明のMo−Si−B合金の製造方法について説明する。最初に、メカニカルポンプ9及びロータリーポンプ10を駆動させることによって、真空槽1内を真空度が例えば0.1Torrとなるまで排気する。次いで、ガスコントローラ5を介して例えばアルゴンガスを50L/minで流し、窒素ガスを6L/minで流すとともに、メカニカルポンプ9及びロータリーポンプ10を用いて真空槽1内の圧力を例えば20Torrに保持する。
【0012】
次いで、DC電源6より例えば34V、750Aの電力を供給するとともに、高周波電源7よりトリガー電圧を負荷することによってプラズマガン2の先端部にプラズマフレームPを形成する。
【0013】
なお、プラズマフレーム形成ガスとして、アルゴンガスなどの不活性ガス及び窒素ガスを用いることにより、目的とする本発明のMo−Si−B合金の高温耐酸化性をより向上させることができる。
【0014】
次いで、フィーダ4中に前記Mo−Si−B合金の原料粉末を供給する。前記原料粉末は配管内を通ってプラズマガン2に導入され、溶融した原料粉末がプラズマガン2より基板Sへ向けて射出され、プラズマ溶射が実行される。このとき、基板S上には溶融した前記原料粉末が堆積され、目的とする本発明のMo−Si−B合金が形成される。
【0015】
なお、図1に示すように、基板SはプラズマフレームP外、例えばプラズマフレームPの先端から20−25mmの位置に配置することが好ましい。同様に、前記プラズマ溶射中において、基板Sをマニュピュレータ3によって例えば565cm2/minの移動速度でジグザグ状に移動させることが好ましい。これによって、均一な厚さを有するとともに、均一な特性を有するMo−Si−B合金を簡易に得ることができるようになる。
【0016】
上述したように、前記Mo−Si−B合金は、その内部において、Mo3Si相、Mo5Si3相及びMo5SiB相の三相を共存していることが好ましい。これによって、前記Mo−Si−B合金の高温耐酸化性をさらに向上させることができる。
【0017】
また、前記原料粉末は、例えば以下のようにして作製する。最初に、Mo原料粉末、Si原料粉末及びB原料粉末を所定の割合で秤量し、アルゴン雰囲気などにおいてアーク溶解することにより、ボタン状のインゴットを作製する。次いで、このインゴットをハンドミルなどによって粉砕し、ふるいで粒径を調整することによって目的とする前記原料粉末を得る。なお、前記原料粉末の平均粒径は、例えば45μmとなるようにする。
【0018】
この際、前記インゴットはMo3Si相、Mo5Si3相、及びMo5SiB2相の三相を含むことが好ましい。これによって、前記インゴットを粉砕し、原料粉末としてプラズマ溶射法に供した場合において、前述したMo3Si相、Mo5Si3相及びMo5SiB相の三相を共存してなる本発明のMo−Si−B合金を簡易に得ることができるようになる。
【0019】
また、Mo原料粉末、Si原料粉末及びB原料粉末は、前記Si原料粉末及び前記B原料粉末の割合が、それぞれ25mol%及び8.4mol%となるように秤量することが好ましい。これによって、上述したMo3Si相、Mo5Si3相、及びMo5SiB2相の三相を含むインゴットを簡易に形成することができるようになる。
【0020】
以上のようにして得た本発明のMo−Si−B合金は、例えば酸素含有量が20mol%であり、温度が1400℃である環境雰囲気下における100時間の高温耐酸化性試験後における重量変化が5.0×10−3mg2/cm4・hと極めて小さく、極めて高い高温耐酸化性を示す。
【0021】
なお、目的とするMo−Si−B合金を形成すべき基板Sは如何なる材料からも形成することができるが、好ましくは軟鋼などから形成することができる。これによって、得られたMo−Si−B合金を基板Sから簡易に剥離することができ、耐熱性部材として種々の用途に供することができるようになる。
【0022】
図2は、上述のようにして形成したMo−Si−B合金及び従来の溶解鋳造法によって得たMo−Si−B合金に対して、1400℃、Ar−20mol%O2の環境雰囲気下で高温酸化試験を実施した時の、重量変化と試験時間との関係を示すグラフである。
【0023】
図2から明らかなように、溶解鋳造法で作製したMo−Si−B合金は、試験直後、すなわち酸化初期に急激な重量変化を示した後に、緩やかな重量減少に移行する。これは、Mo酸化物が酸化初期に引き続いて昇華されていることを示している。一方、本発明のMo−Si−B合金は酸化初期に重量減少を示すものの、後に重量増加に転じている。これは保護性の高い安定な酸化皮膜が形成され、安定に維持されていることを示している。したがって、本発明のMo−Si−B合金は、従来の溶解鋳造法で作製されたMo−Si−B合金と比較して、高い高温耐酸化性を示すことが分かる。
【0024】
以上、具体例を示しながら発明の実施の形態に則して本発明を説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲において、あらゆる変形や変更が可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高温において高い耐酸化性を示すとともに、高温強度に優れた、新規な材料であるMo−Si−B合金を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のMo−Si−B合金を作製する際に用いるプラズマ溶射装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】 Mo−Si−B合金の高温酸化試験下における、重量変化と試験時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 真空槽
2 プラズマガン
3 マニュピュレータ
4 フィーダ
5 ガスコントローラ
6 DC電源
7 高周波電源
8 フィルタ
9 メカニカルポンプ
10 ロータリーポンプ
11 冷却水供給装置
Claims (1)
- 所定の基板上においてプラズマ溶射法を用いて形成され、Mo、Si及びBを構成元素とし、Mo3Si相、Mo5Si3相及びMo5SiB2相の三相が共存し、Mo原料粉末、Si原料粉末及びB原料粉末を、Si原料粉末及びB原料粉末の割合が、それぞれ25mol%及び8.4mol%となるように秤量し、これら秤量した原料を不活性ガス雰囲気中で溶解してインゴットを作製し、このインゴットを粉砕して粉末とし、この粉末をプラズマ溶射装置内に供給してプラズマ溶射法に供して得られたことを特徴とする、Mo−Si−B合金。
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