JP3733516B2 - 高分子化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機溶媒に可溶で耐熱性、発光性を有し、光・電子機能を有し炭素化原料となりうるポリフェニレン系高分子材料に関する。
【0002】
【従来技術】
従来式1
【0003】
【化1】
【0004】
(nは繰り返し単位数)の構造を有するポリパラフェニレンは、耐熱性を有し、酸化剤(電子受容体)および還元剤(電子供与体)を添加することにより導電性を示す物質であることの記載〔Synthetic Metals,Vol.1.p307(1979)、共立出版「導電性ポリマー」4ページ、(1987)、共立出版「ポリマーバッテリー」15ページ(1990)〕がある。また、J.Phys.Chem.Vol.100,p12631(1996)、Advanced Materials,Vol.4,p36(1992)などには発光性(photoluminescence)を示す物質としての記述があり、更に、エレクトロクロミズムを示すなどの電気化学的な活性な物質としての報告〔J.Phys.Chem.Vol.100,p12631(1996)〕、焼成による炭化により炭化材料を得る材料としての報告〔J.Mater.Res.Vol.13,p2023(1998)〕など多くの報告がなされている。
式2
【0005】
【化2】
【0006】
(mは繰り返し単位数)の構造を有するポリメタフェニレンについても合成例が報告され〔Bull.Chem.Soc.Jpn.,Vol.51,p2091(1973)〕、蛍光などの発光性を示すことなどの報告がされている。
【0007】
ここで、従来のポリフェニレン類の製法について述べる。
前記ポリパラフェニレン、ポリメタフェニレンを得る方法としては、1,4−2置換ベンゼン、1,3−2置換ベンゼンを原料として用いる合成法の報告がある〔a.特開昭52−154900号公報、b.Bull,Chem,Soc.Jpn.,Vol.51,p2091(1978),c.Macromol,Chem.Rapid Commun.Vol6,p761(1987),d.Macromolecules,Vol.25,p1214(1992),e.Makromol.Chem.Phys.,Vol.198,p341(1997)〕。
上記方法の一例は、
【0008】
【化3】
【0009】
【化4】
【0010】
(ここで、Xはハロゲン、MはMg、Zn、ゼロ価ニッケル錯体など還元性金属又は金属化合物を表す、n、mは式1、2と同様の意味)の反応による。この反応は、原料をMにより脱ハロゲン化重縮合する方法であり(この時に例えば、MgX2が同時に生成する。)、必要に応じてニッケル、パラジュウム、鉄の化合物等が触媒として用いられる(前記文献a.およびb.参照)。また、NaHやヒドラジン等の還元剤を用い、ニッケル化合物やパラジュウム化合物等を触媒として、還元剤との反応により生成するニッケルやパラジュウム等の低原子価金属錯体を前記Mとして用いた反応についても報告されている〔前記文献e.およびf.Bull,Chem,Soc.Jpn.,Vol.72,p621(1999)参照〕。
【0011】
上記Mによる脱ハロゲン化重合においては、重合末端に
【0012】
【化5】
【0013】
のようにハロゲンが残存する場合があり、また、
【0014】
【化6】
【0015】
のような末端基は高分子化合物の処理中にメタノールや水等との反応により
【0016】
【化7】
【0017】
に変換されると考えられるとの報告もある(前記文献b.参照)。また、この様な重合反応をテトラヒドロフラン中で行った場合は、テトラヒドロフランの開列反応により生成するオキソテトラメチレン基が高分子鎖中に取り込まれることもあるとの報告もある(前記文献b.参照)。
これらの末端基、オキソテトラメチレン基等の存在は得られた高分子化合物の耐熱性、発光性等の物性および炭素化等の利用に大きな悪影響を与えない場合には、特に後処理により除く必要はない。オキソテトラメチレン基の少量の存在は、むしろ高分子化合物の溶解性を高める良い効果を持つ場合もあると考えられる。
また、ホウ素化合物、スズ化合物等カップリング反応がポリパラフェニレン類を含むポリ(アリーレン)類の合成法として適用可能なことも報告されている(前記文献f.参照)。この重合法は、例えば下記反応式による高分子合成法として用いうる。
【0018】
【化8】
【0019】
(nは繰り返し単位数)上記重合法においては、必要に応じてパラジュウム化合物等を触媒として加える。この他、一般反応で脱離可能な置換基を有する1,4−置換ベンゼンを用いてポリパラフェニレンを得ることができる。また同様に、1,3−置換ベンゼンを用いてポリメタフェニレンを得ることができる。また、必要に応じて、2,5−ジブロモピリジンや1,3,5−トリブロモベンゼンが少量共存する条件下で重合し、これらのハロゲン化合物に由来する単位を一部含んでも良い。
【0020】
しかし、前記ポリフェニレン重合体は、剛直直線構造のため不溶・不融性であり、成形性、賦形成に乏しいために光・電子機能材料への応用が困難であるという不都合があった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の成形性に劣る不都合を解決したフェニレン系のポリマーを得ることを目的とするものである。
前記目的を達成すべく、種々の試みの中で、従来のフェニレン系ポリマーの基本材料をいろいろな配合量で共縮合することを試みる中で、メタフェニレン単位を40〜95モル%含むポリマー、好ましくメタフェニレン単位を60〜90モル%含むポリマー、より好ましくは80〜90モル%含むポリマーは、意外にもホモポリマーから予想できない、有機溶媒に溶ける特性があることを発見し、上記目的を達成したものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、非置換のパラフェニレン基と非置換のメタフェニレン基から成る高分子化合物であって、メタフェニレン基の割合が40〜95%の間にある高分子化合物である。好ましくは、クロロホルム又はテトラヒドロフランのような有機溶媒に可溶な前記高分子化合物であり、更に好ましくは分子量が600〜40000の間にある前記高分子化合物である。
【0023】
【本発明の実施の態様】
本発明を詳細に説明する。
A.本発明の高分子化合物の合成
本発明の高分子化合物は、前記ポリパラフェニレンとポリメタフェニレンの合成方法に利用されている方法を応用することにより、1,4−置換ベンゼンと1,3−置換ベンゼンを原料として共縮合することにより得ることができる。
具体的には、例えば、触媒の存在下に下記反応式により得られる。
【0024】
【化9】
【0025】
(ここで、Xはハロゲン、Rはアルキル基、n、mは繰り返し単位数である。)前記反応は、両モノマーの添加の順序を工夫すること等によりブロック性を有する共重合体を得ることもできる。
このようにして得られる高分子化合物中のパラフェニレン基とメタフェニレン基の配列には制限はないが、溶解性を高めるためには結晶性の低い高分子化合物の方が有利であると考えられるためにランダム性の高い共重合体であることが望ましい。その具体的な方法は、モノマーの添加順序、反応温度および触媒等の条件を選択することによっ実現できる。
B.本発明の高分子化合物の多くは有機溶剤に可溶であるので、従来の高分子溶液を用いる成型方法、例えばキャスト方、また溶液を非溶媒から成る、いわゆる凝固浴中に押し出すことによってフイルムなど種々の成形物を製造する方法に用いることができる。
【0026】
C.従来、炭素材料、特に付加価値の高いフイルム状の炭素材料を得るには、炭化に供するフイルムの性状から制御しなければならないといわれている。
また、炭素化の工程において失われる成分が少なく、かつ炭化に好ましくない作用をする酸素、イオウなどが存在しない素材からなるものが好ましいことが知られている。このようなものとして、従来石油、石炭からのピッチやポリアクリロニトリルから成形されたフイルム材料を用いることが知られている。
本発明の高分子化合物は素材の特性として前記要求に合致するものであり、本発明の高分子化合物は炭素化効率が良く、また、溶液からの成形が可能であり、成形が容易なことから、得られるフイルムの性状も良く、これを炭化することにより性状の良いフイルム状炭素材料が得られることが期待できるものである。
フイルム状炭素材料は、2次電池電極材料等として有用である。
【0027】
D.本発明の高分子化合物の分子量については特に制限はないが、高分子材料としての強度を得るためには分子量が600以上であることが望ましい。
E.本発明の高分子化合物は、電荷移動錯体を構成する電子供与体としての導電性有機高分子としての特性を持つポリパラフェニレンやポリメタフェニレンと同様に、電荷移動錯体を形成するポリマーとして有用であり、種々の電子受容体、例えばテトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、ヨウ素などと組み合わせて、有機半導体、有機電荷移送材料などをうる材料として利用できる。
【0028】
F.また、本発明の高分子化合物は、紫外線の照射によりソフト紫外線〜短波長の可視光(ブルー領域)に蛍光特性を観察することができ、蛍光材料としての有用性を持つ。
【0029】
【実施例】
実施例1
アルゴンガス下で、無水テトラヒドロフラン(35mL)中にて、パラジブロモベンゼンとメタジブロモベンゼン(合計量は5.9g,25mmol)の混合物とマグネシウム(0.61g,25mmol)の反応を室温で行わせた。
このテトラヒドロフラン中の反応を2時間行うとマグネシウムは消失した。
この時、Br-C6H4MgBr-p,Br-C6H4MgBr-m,p-C6H4(MgBr)2,m-C6H4(MgBr)2等が生成したものと考えられる(前記文献b.参照)。
この後、このテトラヒドロフラン溶液に重合触媒としてジクロロ(2,2’−ビピリジン)ニッケル(II)(25mg,0.087mmol)を加えて、アルゴンガス下室温にて1時間、さらに75℃において重合し高分子化合物を含む反応液を得た。この反応を250mLのエタノール中に撹拌しながら加え、沈殿物をろ過により回収した。
得られた粉末を希塩酸、水、エタノールで洗浄した後に真空乾燥して共重合体を得た。
上記重合法はすでに報告されているポリパラフェニレンの合成法(前記文献a.およびb.参照。)に準ずるものである。
上記方法により表1に記載の共重合体を得た。比較例として、同様の方法によって得られたポリパラフェニレン(PPP)およびポリメタフェニレン(PMP)についても表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1において、
ポリマー物性:
前記文献b.記載の方法により得られてPPPの赤外スペクトルでは、パラフェニレン基に由来する約1000cm-1に強い吸収(主として面内変角振動によるものと考えられる。)を持つ。
前記文献b.記載の方法により得られてPMPの赤外スペクトルでは、メタフェニレン基に特徴的な約1595cm-1に強い吸収(主として環振動によるものと考えられる。)を持つ。また、吸収の強さから、約1000cm-1のパラフェニレン基による吸収と約1595cm-1のメタフェニレン基による吸収のモル吸収係数(各フェニレン基のモル数基準)の比は、ほぼ1:1であることが分かった。
本発明表1に記載の共重合体の赤外線スペクトルは、いずれも約1595cm-1、約1000cm-1のメタフェニレン基、パラフェニレン基に特徴的な両吸収を示し、高分子化合物が共重合体であることを示している。
前記PPP、PMPのメタフェニレン基、パラフェニレン基によるモル吸収係数の比が共重合体にも適用可能と仮定して、表1におけるP5/5、およびP3/7の共重合体の赤外線スペクトル(図、1、2)から得られるメタフェニレン基:パラフェニレン基の値は、55:45と65:35である。このことから、IR分析法の精度を考えればパラジブロモベンゼンとメタジブロモベンゼンは重合にいてほぼ同じ反応性を示すことが分かった。
なお、図2に示した赤外線スペクトル用サンプルは一部シリコーングリースを含み、1260cm-1に吸収を示す。
【0032】
図3、4に表1のP3/7、P1/9の1H−NMR(CDCl3中、400MHz)スペクトルを示す。δ7.26の鋭い吸収はCDCl3中のCHCl3不純物に基づくものである。δ7.3〜8.0にメタフェニレン基やパラフェニレン基等の基を2種以上含有する芳香族炭化水素化合物に特徴的な(例えばSadler社の1H−NMRスデータブックの番号206M,1613M,5083M,661Mのスペクトル)吸収パターンを示した。種々の芳香族炭化水素化合物の1H−NMRスペクトル(例えば上記1H−NMRデータブック中のスペクトル)との比較から、略δ7.7〜8.0の吸収はメタフェニレン基の孤立C−Hによるものと予想されるが、吸収パターンが複雑であり十分な組成解析はできなかった。
【0033】
表1のいずれの高分子化合物も窒素ガス下の熱重量分析において300℃まで安定であった。また、850℃において、約50%の残存重量を示した。また、850℃において黒変しており炭化していることが観察された。
図5にP1/9、P2/8−3、P3/7(a,b,c)紫外可視吸収スペクトルを示す。パラフェニレン基の割合はa,b,c順に増加し、有効π共役鎖の大きい単位が増え、約280〜320nmの吸収が増大していることが分かる。
【0034】
実施例2
合成共重合体の種々の溶剤に対する溶解性を以下に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
P2/8−1〜P2/8−4はいずれも同じ溶解性を示す。
THF:テトラヒドロフラン DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
P2/8−1の赤外線スペクトルを図6に示す。
【0037】
メタフェニレン単位を40〜91モル%含むポリマー、更に、80〜90モル%含むポリマーが溶解性が優れていることが理解される。
フイルムの製造は、THF溶液、またはクロロホルム溶液をガラス基板上にキャストした後THFを自然乾燥することにより行った。このフイルムは平滑な透明フイルムであった。
なお、実施例1の重合により得られる高分子化合物は、そのままでは末端にパラブロモフェニル基、メタブロモフェニル基が残っている可能性があるので(前記文献a.およびb.参照、同様のことが、Macromolecules 28巻,p4577(1995)でも報告されている。)、テトラヒドロフラン中で分散状態でLiAlH4で処理し、臭素のない高分子化合物を得た。
【0038】
得られたポリマーの末端処理と得られたポリマーの特性。
例えば、P2/8−2とP2/8−4についてLiAlH4との下記反応
【0039】
【化10】
【0040】
を行い脱臭素されたポリマー(P2/8−2−H、P2/8−4−Hと表示する)が得られた。
また、P2/8−2−Hの元素分析値は、炭素89.87%、水素5.75%であり、P2/8−4−Hの元素分析値は、炭素93.02%、水素5.75%であった。いずれの高分子化合物においても炭素と水素のモル比はポリフェニレンとしての計算値にほぼ一致した。P2/8−2−Hにおいて炭素の分析値が無限鎖長ポリフェニレンを仮定した時の計算値(炭素94.70%、水素5.30)よりもいく分低いのは、難燃性、水の部分的含有、一部の無機化合物の混入などによるものと考えられる。このようにして得られたP2/8−2−H、P2/8−4−Hは元の高分子化合物P2/8−2、P2/8−4と各々同じ溶解性を示し、末端臭素は溶解性にほとんど影響しないことが分かった。
【0041】
実施例3
ポリマーの分子量。
DMFに可溶性を示す高分子化合物について、ゲルパミエーションクロマトグラフ法(GPC)により数平均分子量(以下、Mn)及び重量平均分子量(以下、Mw)を測定した。測定は東ソー(株)製HLC−8120GPCを用い、検出部はUV−8020(検出波長300nm)を用い、展開溶媒には0.006MのLiBrを含むDMFを用いた。その結果ポリスチレン換算で表3のMn、Mwを得た。
【0042】
【表3】
【0043】
P2/8−1及びP2/8−4のGPCカーブは各々分子量230〜17500及び660〜7310までの分布を示しており、この領域にある該高分子化合物がいずれもDMFに可溶であることを示している。
【0044】
実施例4
高分子共重合体の蛍光特性
共重合体P2/8−3をクロロホルムに溶かして無蛍光性のガラス板上にキャストして溶媒を除き、P2/8−3のフイルムを得た。このフイルムの蛍光を測定したところ432nmに発光極大を有する強い蛍光を示すことが分かった(図7)。また、その励起スペクトルは350nmにピーク示すことが分かった。また、表1の高分子共重合体は紫外線照射下に固体及び溶液の状態において蛍光を示すことが分かった。
P3/7のTHF溶液中での蛍光スペクトルは約370nmに蛍光ピークを持ち、励起スペクトルは約250nm〜300nmにピークを示した。
真空蒸着膜の蛍光特性
PPP、P6/4、P5/5、P4/6、P2/8−1およびPMPを真空加熱して石英ガラス板上に蒸着し薄膜を形成した。
これらの薄膜について蛍光強度を比較したところ、その相対強度比は1:5.5:7:7:1:0.5であった。このことから、パラフェニレンとメタフェニレンのほぼ等量共重合体が強い蛍光を示す、すなわち共重合体特有の特性を示すことが分かった。
【0045】
実施例5
アルゴンガス下で無水テトラヒドロフラン(10mL)とジブチルエーテル(50mL)の混合溶媒中にて、パラジブロモベンゼン(1.18g,5.0mmol)とメタジブロモベンゼン(4.72g,20mmol)を0.61g(25mmol)のマグネシウムと反応させた。還流下にて12時間反応させ、マグネシュウムが消失した後に、触媒としてジクロロ(2,2−ビピリジン)ニッケル(II)(25mg)を加え、還流条件下、アルゴン気流中で5時間重合反応を行った後に、生成高分子化合物を実施例1と同様にして回収した。収量は720mg(収率38%)であった。収率が低いのは、一部の高分子が一部の高分子がエタノールに可溶性であるためと考えられる。この高分子化合物はN,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、テトラヒドロフラン可溶であり、0.2g/dLのN,N−ジメチルホルムアミド溶液は0.10dLg-1のηsp/c(ηsp=比粘度)を示した。また、高分子化合物のクロロホルム溶液は260nmの紫外照射時に356nmと372nmにピークを持つ蛍光を示し、その収率は16%であった。
【0046】
実施例6
パラジブロモベンゼン(1.18g,5.0mmol)、メタジブロモベンゼン(4.72g,20mmol)の他に更に1,3,5-トリブロモベンゼン(1.25mmol)を加える他は、実施例1中のP2/8−3を合成するのと同様の条件下(但し、重合時間は20時間)で重合を行い70%に収率で高分子化合物を得た。この高分子化合物もN,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、テトラヒドロフラン可溶であった。このポリマーの分子量は、光散乱法により(N,N−ジメチルホルムアミド溶液中にて測定)、21000であることが分かった。
【0047】
実施例7
実施例5で得られた高分子化合物10mgを5mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶かし、この溶液の20μLを取り、1cm×1cmの白金電極上に塗布乾燥させた。このようにして得た白金電極上の黄色高分子薄膜を、0.10Mの〔NEt4〕BF4を含むアセトニトリル中に浸し、酸化側の電圧を印加した。この時Ag+/Agに対して1.6Vにポリマーの酸化ピークが見られ、この後ポリマーフイルムは溶媒に不溶となった。芳香族化合物は電極酸化によりカップリング反応(式1)を起こすことが知られている〔例えば、新高分子実験学3巻「高分子の合成・反応」334頁(共立出版、1996年)参照〕。
【0048】
【化11】
【0049】
化11の架橋反応により不溶化が起こる。この不溶化によりポリマーフイルムの色は黒変した。この黒色フイルムに還元側電圧を印加するとAg+/Agに対して0.85V、−1.4Vに還元ピークが現れ、各々の段階でポリマーフイルムの色は茶褐色、黄色へと変化した。すなわち、エレクトロクロミック素子として利用できる。
【0050】
実施例8:フイルム状炭素材料
P1/9およびP2/8−3のポリマーをテトラヒドロフランに溶解して、該溶液を約14mm×14mmガラス状炭素基板上に4回に分けて滴下してキャスト膜を作成した。得られて膜をデシケーター内で減圧し、室温で乾燥した。重量増加から求めたP1/9およびP2/8−3ポリマーの膜は、それぞれ29.7mgおよび23.1mgであった。
この膜を、アルゴン気流中で、昇温速度1℃/分で1000℃まで昇温し、1000℃に1時間保持した後、2℃/分で室温まで降温して仮焼した。本焼は、アルゴン気流中で、1200℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、その後5℃/分で3000℃まで昇温し30分この温度に保持した。その後10℃/分で1200℃まで降温し、以降は自然冷却した。いずれについても黒鉛化した炭素薄膜が得られた。
【0051】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のポリフェニレン共縮合体は、溶液から成形が可能であり、蛍光体の電極(エレクトロクロミック)の形成、炭化フイルム状材料の形成素材として、また、青色発光蛍光材料として、期待される作用・効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 P5/5の赤外線スペクトル(透過度%)
【図2】 P3/7の赤外線スペクトル(透過度%)
【図3】 P3/7の1H−NMR(CDCl3中、400MHz)スペクトル
【図4】 P1/9の1H−NMR(CDCl3中、400MHz)スペクトル
【図5】 P1/9、P2/8−3、P3/7(a,b,c)紫外可視吸収スペクトル
【図6】 P2/8−1の赤外線スペクトル
【図7】 P2/8−3の蛍光特性
Claims (3)
- 非置換のパラフェニレン基と非置換のメタフェニレン基から成る高分子化合物であって、メタフェニレン基の割合が60〜95%の間にある高分子化合物。
- 有機溶媒であるクロロホルム又はテトラヒドロフランに可溶な請求項1の高分子化合物。
- 分子量が600〜40000の間にある請求項1又は2の高分子化合物。
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