JP3732191B2 - 腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具 - Google Patents
腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、腹腔鏡を使用する手術に使用される腹腔拡開器具に関し、とくに、手術時に腹壁を吊り上げ、あるいは内蔵を押圧して腹腔を拡開する腹腔拡開器具に関する。
【0002】
【従来の技術】
腹壁吊り上げ手術は、腹壁を小さく切開して内臓を摘出する等の手術に採用される。この手術は、通常の手術のように腹壁を大きく切開しない。腹壁に数箇所の小孔を切開する。切開した小孔から、腹控鏡や手術器具を腹控に挿入して手術する。腹控を拡開するために、腹壁の複数点を吊り上げ、内蔵を押圧して腹壁と内臓との間を広くする。このとき、腹控を広く拡開することが大切である。腹控が狭いと、体内に挿入した腹控鏡で、手術する部分を十分に見ることができない。また、手術器具を最適な位置に挿入することができなくなる。肥満の患者は、腹壁が厚く、また腹壁を吊り上げると、腸等の内臓が腹壁と一緒に上がってくるので腹腔を広く拡開するのが難しい。
【0003】
本発明者は、腹腔を充分に拡開するための腹腔拡開器具を開発した。(特許文献1〜5参照)
【0004】
【特許文献1】
特開平9−299374号公報
【特許文献2】
特開平8−33631号公報
【特許文献3】
特開平8−33630号公報
【特許文献4】
特開平8−33629号公報
【特許文献5】
特開平6−285075号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これ等の腹腔拡開器具は、腹壁を切開した小孔から挿入して腹壁を吊り上げ、あるいは内臓を押圧して、内臓と腹壁との間の腹腔を拡開する複数本の拡開アームを備えている。拡開アームの中間は、ピンを介して、開閉できるように連結している。また、拡開アームは、後端を体外から操作して先端を開閉できるように、後端の握りに指孔を設け、先端部には内臓を押圧する押圧部を設けている。
【0006】
この構造の腹腔拡開器具は、先端部分を閉じた状態で、腹壁の小孔から腹腔に拡開アームを挿入する。先端部分を腹腔に挿入した状態で、拡開アーム先端の押圧部を拡開する。このように拡開した押圧部で、腹壁の内面や腸等の内臓を押圧して腹腔を拡開する。
【0007】
これ等の腹腔拡開器具は、安全に大きく腹腔を開くのが難しい。それは、拡開アームの先端が、腹壁や内蔵に損傷を与えやすいからである。とくに、腹腔を大きく開くために、拡開アームで強く腹壁や内蔵を押圧すると、拡開アームの先端が患者の腹壁や内蔵に損傷を与えやすくなってしまう。
【0008】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、安全に患者の腹腔を大きく拡開できる腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の腹腔拡開器具は、腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引して腹腔を拡開する一対の吊上アーム10を備える。この吊上アーム10は、先端を開閉できるように中間を連結しており、腹腔内で拡開されて、腹腔を拡開するように腹壁の内面を押圧する。一対の吊上アーム10の先端には、吊上アーム10が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム18を連結してなる折曲アーム16を連結している。この腹腔拡開器具は、吊上アーム10を拡開する状態で、吊上アーム10の先端に連結している折曲アーム16と吊上アーム10の両方で腹壁の内面を押圧して腹腔を拡開する。
【0010】
本発明の請求項2の腹腔拡開器具は、腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、内蔵を押圧して腹腔を拡開する押圧アーム20を備える。この押圧アーム20は、先端に一対の拡開アーム22を開閉できるように備えており、拡開アーム22が腹腔内で拡開されて、腹腔を拡開するように内蔵を押圧する。一対の拡開アーム22の先端には、拡開アーム22が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム28を連結してなる折曲アーム26を連結している。この腹腔拡開器具は、拡開アーム22を拡開する状態で、拡開アーム22の先端に連結している折曲アーム26と拡開アーム22の両方で内蔵を押圧して腹腔を拡開する。
【0011】
さらに、本発明の請求項3の腹腔拡開器具は、腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引して腹腔を拡開する一対の吊上アーム10と、腹壁の小孔から腹腔内に挿入されて、内蔵を押圧して腹腔を拡開する押圧アーム20を備える。吊上アーム10は、先端を開閉できるように中間を連結しており、腹腔内で拡開されて腹腔を拡開する。押圧アーム20は、先端に一対の拡開アーム22を開閉できるように備えており、拡開アーム22が腹腔内で拡開されて腹腔を拡開する。一対の吊上アーム10の先端には、吊上アーム10が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム18を連結してなる折曲アーム16を連結しており、この吊上アーム10を拡開する状態で、吊上アーム10の先端に連結している折曲アーム16と吊上アーム10の両方で腹壁の内面を押圧して腹腔を拡開する。さらに、一対の拡開アーム22の先端にも、拡開アーム22が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム28を連結してなる折曲アーム26を連結しており、拡開アーム22を拡開する状態で、拡開アーム22の先端に連結している折曲アーム26と拡開アーム22の両方で内蔵を押圧する。この腹腔拡開器具は、吊上アーム10で腹壁の内面を押圧し、押圧アーム20で内蔵を押圧し、これらの両方で腹腔を拡開する。
【0012】
さらに、本発明の請求項4の腹腔拡開器具は、吊上アーム10が先端から突出するように伸縮できる構造としている。さらに、本発明の請求項5の腹腔拡開器具は、吊上アーム10が、本体アーム11と、この本体アーム11の先端に伸縮するように連結してなる伸縮アーム12と、この伸縮アーム12に連結されると共に、本体アーム11に摺動できるように挿入されてなる可撓性線材13と、この可撓性線材13に連結されて本体アーム11の後端に出入りできるように挿入してなる押出ロッド14とを備える。この腹腔拡開器具は、押出ロッド14を本体アーム11に押し込んで可撓性線材13を介して伸縮アーム12を本体アーム11から突出させて伸長し、また押出ロッド14を本体アーム11から抜いて可撓性線材13を介して伸縮アーム12を本体アーム11に収縮する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための腹腔拡開器具を例示するものであって、本発明は腹腔拡開器具を下記のものに特定しない。
【0014】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0015】
図1と図2に示す腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具は、腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引して腹腔を拡開する一対の吊上アーム10と、腹壁の小孔から腹腔内に挿入されて、内蔵を押圧して腹腔を拡開する一対の押圧アーム20を備えている。吊上アーム10と押圧アーム20は、先端を開閉できる構造としており、腹腔内で拡開されて、腹腔を拡開する。
【0016】
吊上アーム10は、先端を開閉できるように中間を連結部30に連結している。この連結部30は、固定ネジ33を介して本体部40に連結して固定している。図の吊上アーム10は、ステンレス等の金属製で全体をL字状に折曲する形状としている。吊上アーム10は、金属パイプをL字状に折曲している本体アーム11と、この本体アーム11の先端に伸縮するように連結している伸縮アーム12と、この伸縮アーム12に連結されると共に、本体アーム11に摺動できるように挿入している可撓性線材13と、この可撓性線材13に連結されて本体アーム11の後端に出入りできるように挿入している押出ロッド14とを備える。
【0017】
本体アーム11は、連結部30に固定している回転筒31に回転できるが軸方向には移動しないように挿通して連結している。本体アーム11は、これを回転筒31から外側に突出する部分に回転アーム15を固定している。回転アーム15は、本体アーム11を回転筒31の内部で回転させて、吊上アーム10を拡開し、あるいは拡開した状態から平行な姿勢に閉じる。
【0018】
図の腹腔拡開器具は、回転アーム15のストッパ32を連結部30に設けている。ストッパ32は、図3の鎖線で示す一対の吊上アーム10を開く位置で、回転アーム15を停止させる。図のストッパ32は、一対の回転アーム15の後端を係止するストッパ溝32aのあるストッパ本体32Aと、このストッパ本体32Aを回転アーム15の後端を停止する位置に移動させる移動機構32Bとを備える。移動機構32Bは、連結部30に傾動できるように連結している傾動ロッド32bである。この傾動ロッド32bの後端にストッパ本体32Aを固定している。このストッパ32は、一対の回転アーム15の後端を接近させる状態で、ストッパ本体32Aのストッパ溝32aに回転アーム15の後端を案内し、回転アーム15が移動するのを停止する。この腹腔拡開器具は、ストッパ32で吊上アーム10を拡開位置に停止できるので、腹腔内で開かれた姿勢の吊上アーム10が閉じることがない。ただ、ストッパは必ずしも必要ない。それは、吊上アーム10を摩擦抵抗でもって、開いた位置に停止することもできるからである。
【0019】
伸縮アーム12は、本体アーム11に連結する後端部を円筒状として、ここに本体アーム11の先端部分を軸方向に移動できるように挿入している。ただし、伸縮アームは、本体アーム先端部の内側に軸方向に移動できるように挿入して連結することもできる。伸縮アーム12は、折曲アーム16を先端に連結している。
【0020】
可撓性線材13は折曲できるワイヤーである。ただし、可撓性線材13は、折曲された本体アーム11の内部を摺動して移動でき、押出ロッド14で駆動されて、かつ伸縮アーム12を押し出したり、また引き込むことができる全ての線材を使用できる。可撓性線材13は、一端を伸縮アーム12に連結して、他端を押出ロッド14に連結している。押出ロッド14の動きで伸縮アーム12を伸縮させるためである。
【0021】
押出ロッド14は、本体アーム11の後端に摺動できるように挿入されて、その上端には手で押圧できるようにツマミ17を設けている。ツマミ17のある押出ロッド14は手で操作しやすい。ただ、押出ロッドの後端を折曲してツマミのように手で操作しやすい形状とすることもできる。
【0022】
以上の吊上アーム10は、回転アーム15を回動させて開閉し、押出ロッド14で伸縮アーム12を伸縮させる。押出ロッド14が本体アーム11に押し込まれると、これが可撓性線材13を介して伸縮アーム12を本体アーム11から押し出し、伸縮アーム12を伸長させる。また、押出ロッド14を本体アーム11から引き上げると、可撓性線材13が伸縮アーム12を本体アーム11に引き込んで収縮させる。この吊上アーム10は、押出ロッド14を操作して伸縮できるので、腹腔に入れる状態で押圧する面積と部分を変更できる。
【0023】
一対の吊上アーム10は、その先端を折曲アーム16で連結している。吊上アーム10は、伸縮アームを伸長して開いた状態で、その幅が7〜20cm、好ましくは8〜15cm、さらに好ましくは10〜15cmとなるようにする。この吊上アーム10は、折曲アーム16を含む水平方向の長さを8〜20cm、好ましくは10〜15cm、さらに好ましくは12〜15cmとする。折曲アーム16は、吊上アーム10を開いて腹壁を吊り上げするために、開かれた吊上アーム10の面内でのみ折曲できるように、複数の小片アーム18を連結している。図の吊上アーム10は、6本の小片アーム18を連結しているが、小片アーム18は4〜12本とすることもできる。小片アーム18の長さは1〜10cm、好ましくは2〜8cmとする。図の吊上アーム10は、先端を伸縮アーム12とするので、折曲アーム16を伸縮アーム12の先端に連結している。小片アーム18の連結部を図4ないし図6に示している。互いに隣接する小片アーム18は、開いた吊上アーム10を含む面内で折曲できるように、一方に、間にスリット18aのある平行プレート18Aを、他方に、このスリット18aに入れられて摺動する連結プレート18Bを設けている。平行プレート18Aと連結プレート18Bに回転軸19を貫通して、回転軸19で平行プレート18Aと連結プレート18Bとを、スリット18aを含む面内でのみ折曲できるように連結している。図の折曲アーム16は、6本の小片アーム18を折曲できるように連結しているが、5本以下の小片アームを連結し、あるいは7本以上の小片アームを連結して折曲アームとすることもできる。
【0024】
腹腔拡開器具は、吊上アーム10を切開された腹壁の小孔から腹腔に挿入するとき、図5に示すように、吊上アーム10を平行な姿勢とし、さらに折曲アーム16も平行な姿勢とする。図の腹腔拡開器具は、折曲アーム16の小片アーム18を平行な姿勢に折り畳みできるように、一対の吊上アーム10に、左右対称の折曲アーム16を連結している。腹腔に挿入された吊上アーム10が図6に示すように開かれると、これに連結している折曲アーム16も開かれる。
【0025】
さらに、図に示す折曲アーム16は、平行な姿勢で腹腔に挿入されて腹腔内で開かれるときに、所定の形状に拡開される構造としている。それは、折曲アーム16が腹腔内で自由に折曲されて種々の形状に拡開されると、腹壁を理想的に吊り上げできなくなるからである。さらにまた、腹腔内で拡開された折曲アーム16は、吊上アーム10を閉じて腹腔から取り出すときには、もとの平行な姿勢に折り畳まれる構造としている。すなわち、折曲アーム16は、互いに隣接する小片アーム18が所定の範囲内でのみ折曲できるように複数の小片アーム18を連結して、所定の形状に開閉できるようにしている。
【0026】
折曲アーム16は、図5と図6に示すように、互いに隣接する小片アーム18の連結部分に折曲制限機構38を設けており、この折曲制限機構38によって小片アーム18が折曲される角度を制限している。図の折曲アーム16は、平行の姿勢に折り畳まれるときに折り返される連結部分である中央連結部16Aには折曲制限機構を設けておらず、この中央連結部16Aを除く連結部分には折曲制限機構38を設けて小片アーム18が折曲される角度を制限している。中央連結部16Aで連結される小片アーム18は、回転軸19を中心として自由に折曲できる構造としている。
【0027】
折曲制限機構38は、小片アーム18の連結プレート18Bの先端に設けられた爪38Bと、この爪38Bを当接させて小片アーム18が所定の角度以上回動するのを阻止する回動阻止部38Aとを備える。連結プレート18Bの爪38Bは、先端に向かって次第に幅が狭くなる形状としており、側面を回動阻止部38Aに当接させて小片アーム18の回動を阻止するようにしている。回動阻止部38Aは、爪38Bの側面を当接させる凸部や壁で、爪38Bの回転面内に突出して設けている。図に示す折曲制限機構38は、平行アーム18Aのスリット18aの側部に、支柱38aあるいは位置決壁38cを設けて回動阻止部38Aとしている。さらに、図5と図6に示す折曲制限機構38は、スリット18aの両側に回動阻止部38Aを設けており、小片アーム18が内折れと外折れの両方向に折曲されるのを制限している。
【0028】
この折曲制限機構38は、連結プレート18Bに設けた爪38Bの側面を、平行アーム18Aに設けた回動阻止部38Aに当接させて、互いに隣接する小片アーム18を所定の角度だけ折曲させる。図の折曲制限機構38は、折曲アーム16の内周側に位置する回動阻止部38Aとして、すなわち小片アーム18の外折れを制限する回動阻止部38Aとして支柱38aを設け、外周側に位置する回動阻止部38Aとして、すなわち小片アーム18の内折れを制限する回動阻止部38Aとして支柱38aや位置決壁38cを設けている。図の支柱38aは円柱状で、この支柱38aが当接する爪38Bの側面には、支柱38aを案内する切欠部38bを設けている。爪38Bの切欠部38bに支柱38aである回動阻止部38Aを案内する構造は、図5に示すように、隣接する小片アーム18を直線状に延ばした姿勢に位置決めできる。さらに、折曲アーム16の外周側に設けた位置決壁38cである回動阻止部38Aは、爪38Bの側面を広い面積で当接させて所定の姿勢に位置決めできる。
【0029】
以上の構造の折曲アーム16は、図6に示すように、吊上アーム10が開かれる状態では、互いに隣接する小片アーム18がその連結部分で内折れする。複数の小片アーム18は、折曲制限機構38を設けた連結部分において、連結プレート18Bの爪38Bの外側面が、折曲アーム16の外周側に位置する回動阻止部38Aに当接して所定の角度折曲される。爪38Bの外側面は、位置決壁38cである回動阻止部38Aに面で当接し、あるいは支柱38aである回動阻止部38Aに点で当接して所定の角度だけ折曲される。このように、折曲アーム16は、互いに隣接する小片アーム18の折曲角度が折曲制限機構38で制限されることにより、所定の形状に拡開される。折曲アーム16と吊上アーム10は、図6に示すように、吊上アーム10が開かれた状態では、折曲された折曲アーム16と吊上アーム10とで略扇形を形成するように拡開される。
【0030】
さらに、折曲アーム16は、図5に示すように、吊上アーム10が閉じられる状態では、互いに隣接する小片アーム18同士が、中央連結部16Aでは内折れし、中央連結部16Aを除く連結部分では外折れして、互いに平行な姿勢に折り畳まれる。中央連結部16Aで折曲される小片アーム18は、回転軸19を中心として略直線状に折曲される。折曲制限機構38を設けた連結部分で折曲される小片アーム18は、爪38Bの内側面が、折曲アーム16の内周側に位置する回動阻止部38Aに当接して直線状に配置される。この状態で、2本の吊上アーム10と折り畳まれた折曲アーム16が平行な姿勢となる。吊上アーム10と折曲アーム16は、平行な姿勢に折り畳まれた状態で、腹壁の小孔から腹腔内に挿入され、あるいは腹腔から取り出される。
【0031】
さらに、図1と図2の腹腔拡開器具は、本体部40の下端に中間アーム41を備える。中間アーム41は、吊上アーム10と同じようにL字状に折曲されたアームである。中間アーム41は、本体部40に連結部30を連結した状態では、開かれた吊上アーム10の中間に位置する。この腹腔拡開器具は、開かれた吊上アーム10と折曲アーム16と中間アーム41とで腹壁を吊り上げできる。連結部30は、互いに平行な姿勢に畳まれた吊上アーム10と中間アーム41とが平行な姿勢となるように、本体部40に連結されて固定される。
【0032】
さらに、図に示す腹腔拡開器具は、ベッド手術台の所定の位置に固定するために、本体部40に固定アーム42を設けている。腹腔拡開器具は、ベッド手術台に取り付けられた支持器(図示せず)に連結して固定される。図1と図2に示す本体部40は、水平方向に突出する固定アーム42を設けており、この固定アーム42を介して支持器に連結される。固定アーム42は、先端部に円筒状の連結部42Aを有し、この連結部42Aの外周に雄ネジを設けている。この連結部42Aに固定ビス43がねじ込まれて、腹腔拡開器具は支持器に動かないように固定される。
【0033】
さらに、図に示す腹腔拡開器具は、連結部30に連結機構34を介して押圧アーム20を連結している。押圧アーム20は、連結機構34で連結部30に連結しているL字アーム21と、このL字アーム21の先端に開閉できるように連結している拡開アーム22と、L字アーム21に挿通されて拡開アーム22を開閉する可撓性のある開閉線材23と、この開閉線材23を駆動して拡開アーム22を開閉させる開閉ロッド24とを備える。
【0034】
L字アーム21は、開閉線材23を挿通できるステンレス等の金属パイプで、連結機構34の連結筒35に回転できるように挿通している。連結筒35は、軸方向に2分割されており、分割された挟着片35Aを開閉してL字アーム21を挟着できるように連結している。さらに、分割された挟着片35Aは、開閉端縁に設けた連結片35Bに止ネジ36をねじ込んでいる。止ネジ36は、連結片35Bにねじ込まれて、分割された挟着片35AでL字アーム21を挟着して固定する。さらに、止ネジ36を緩めて、L字アーム21を回転させ、あるいは軸方向に移動できる状態とする。図の連結機構34は、連結筒35とこれを連結部30に連結するリンク機構37を備える。リンク機構37は、連結筒35の上下を連結部30に連結しており、連結筒35と連結部30との距離を変更し、さらに、連結筒35の連結部30に対する角度を調整できるように連結筒35を連結部30に連結する。図のリンク機構37は、2本のリンク37Aを折曲できるように連結したものである。2本のリンク37Aは、連結部分に固定ネジ37Bをねじ込んでいる。このリンク機構37は、固定ネジ37Bをねじ込んでリンク37Aを折曲できないように固定して、連結筒35の位置を特定する。
【0035】
拡開アーム22は、L字アーム21の先端に、ピン25を介して開閉できるように連結している。拡開アーム22は、互いに閉じた状態で内部に開閉線材23を内蔵できるように、横断面の形状を溝形として、溝内に開閉線材23を収納できるようにしている。
【0036】
一対の拡開アーム22は、その先端を折曲アーム26で連結している。折曲アーム26は、押圧アーム20の拡開アーム22を開いて内蔵を押圧するために、開かれた拡開アーム22の面内でのみ折曲できるように、複数の小片アーム28を連結している。図の押圧アーム20は、先端を拡開アーム22とするので、折曲アーム26を拡開アーム22の先端に連結している。小片アーム28の連結部は、前述の吊上アーム10の折曲アーム16と同じ構造である。すなわち、図3に示すように、互いに隣接する小片アーム28は、開いた拡開アーム22を含む面内で折曲できるように、一方に、間にスリット28aのある平行プレート28Aを、他方に、このスリット28aに入れられて摺動する連結プレート28Bを設けている。平行プレート28Aと連結プレート28Bに回転軸29を貫通して、回転軸29で平行プレート28Aと連結プレート28Bとを、スリット28aを含む面内でのみ折曲できるように連結している。図2の折曲アーム26は、6本の小片アーム28を折曲できるように連結しているが、5本以下の小片アームを連結し、あるいは7本以上の小片アームを連結して折曲アームとすることもできる。
【0037】
この構造の押圧アーム20も、前述の吊上アーム10と同様に、切開された腹壁の小孔から腹腔に挿入するとき、平行な姿勢とし、さらに折曲アーム26も平行な姿勢とする。したがって、図の腹腔拡開器具は、折曲アーム26の小片アーム28を平行な姿勢に折り畳みできるように、一対の拡開アーム22に、左右対称の折曲アーム26を連結している。腹腔に挿入された押圧アーム20が開かれると、これに連結している折曲アーム26も開かれる。さらに、この折曲アーム26も、前述の折曲アーム16と同様に、所定の形状に拡開されると共に、平行な姿勢に折り畳まれる構造としている。すなわち、折曲アーム26は、互いに隣接する小片アーム28が所定の範囲内でのみ折曲できるように複数の小片アーム28を連結して、所定の形状に開閉できるようにしている。この構造は、複数の小片アーム28の連結部分に、前述の折曲制限機構を設けて実現できる。
【0038】
開閉線材23は、折曲されたL字アーム21の内部を摺動できるように折曲できる弾性金属線である。この開閉線材23には、折曲されたL字アーム21の内部を摺動して移動でき、開閉ロッド24で駆動されて、かつ拡開アーム22を開閉できる線材を使用できる。開閉線材23は一端を折曲アーム26の中央に連結して、他端を開閉ロッド24に連結している。開閉ロッド24の動きで拡開アーム22を開閉するためであ。
【0039】
開閉ロッド24は、L字アーム21の後端に摺動できるように挿入されて、その上端には手で押圧できるようにツマミ27を設けている。ツマミのある開閉ロッド24は手で操作しやすい。ただ、開閉ロッドの後端を折曲してツマミのように手で操作しやすい形状とすることもできる。
【0040】
さらに、本発明の腹腔拡開器具は、図示しないが、複数の押圧アームを備えることもできる。この腹腔拡開器具は、1本の押圧アームで腹腔を十分に拡開できないときに、複数の押圧アームを腹腔内に挿入して、拡開された拡開アームと折曲アームとで内蔵の別の部分を押圧して腹腔を拡開する。複数の押圧アームは、たとえば、複数の連結機構を介して連結部に連結することができる。
【0041】
以上の腹腔拡開器具は、以下のようにして使用する。
(1) 本体部40と吊上アーム10と押圧アーム20とを互いに分離した状態とする。吊上アーム10と押圧アーム20は、図5に示すように閉じた状態とする。
(2) 患者の腹部の腹壁を切開して小孔を開け、本体部40の中間アーム41を小孔から腹腔に挿入する。本体部40の固定アーム42を、ベッド手術台に固定された支持器(図示せず)に連結する。このとき、本体部40を手で持ち上げて、腹腔に少しの空間を作り、腹腔内に癒着等がないか安全を確認する。
(3) 平行の姿勢に閉じた状態の吊上アーム10と折曲アーム16を、腹壁の小孔から腹腔内へ挿入する。吊上アーム10の連結部30を本体部40に連結して固定する。
(4) 回転アーム15を操作して吊上アーム10を回動させて、吊上アーム10と折曲アーム16とを図6に示すように拡開する。腹腔内の奥行きが狭いときは、ツマミ17を操作して吊上アーム10の伸縮アーム12を伸長する。拡開された吊上アーム10と折曲アーム16と、中間アーム41とで腹壁を吊り上げ、腹腔内の術野が確保できれば支持器の固定ビス43を固定アーム42にねじ込んで完全に動かないように固定する。
(5) 腹腔内の内蔵の浮遊が確認されれば、押圧アーム20と折曲アーム26を腹壁の小孔から腹腔内へ挿入する。押圧アーム20の拡開アーム22と、折曲アーム26は、平行の姿勢に閉じた状態で腹腔内に挿入される。押圧アーム20のL字アーム21を連結筒35に取り付ける。
(6) ツマミ27を操作して開閉ロッド24を引っ張り、拡開アーム22と折曲アーム26とを拡開して内蔵を押圧できる状態とする。押圧アーム20を移動させて、拡開された拡開アーム22と折曲アーム26とで内蔵を上下左右に押圧し、手術の視野が確保された状態で、押圧アーム20をその位置に停止させる。連結筒35の止ネジ36とリンク機構37の固定ネジ37Bを締め付けて押圧アーム20が動かないように固定する。この状態で、押圧アーム20は、その拡開アーム22と折曲アーム26の両方で内蔵を押圧して腹腔を拡開する。
(7) 1本の押圧アーム20で腹腔が十分に拡開されないときには、さらに、別の押圧アームを腹腔内に挿入し、拡開された拡開アームと折曲アームとで内蔵の別の部分を押圧して腹腔を拡開する。
【0042】
以上の腹腔拡開器具は、吊上アーム10と押圧アーム20とを備えており、吊上アーム10で腹壁を吊り上げ、押圧アーム20で内蔵を押圧するので、腹腔をもっとも広く拡開できる。ただ、本発明の腹腔拡開器具は、かならずしも吊上アームと押圧アームの両方を装備する必要はなく、たとえば吊上アームのみ、あるいは押圧アームのみとすることもできる。
【0043】
【発明の効果】
本発明の腹腔拡開器具は、安全に患者の腹腔を大きく拡開できる特長がある。それは、本発明の腹腔拡開器具が、腹壁の小孔から腹腔内に挿入されて腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引して腹腔を拡開する一対の吊上アームと、腹壁の小孔から腹腔内に挿入されて内蔵を押圧して腹腔を拡開する押圧アームのいずれか一方または両方を備えており、一対の吊上アームの先端と、押圧アームに設けた一対の拡開アームの先端には、複数の小片アームを連結してなる折曲アームを連結しているからである。このように、先端に複数の小片アームを連結してなる折曲アームを連結している吊上アームや押圧アームは、アームの先端部とこれらの先端に連結された折曲アームの全体で腹壁や内蔵を押圧する。このため、従来の腹腔拡開器具のように開閉されるアームの先端で腹壁や内蔵を局部的に押圧することなく、アームの先端部と折曲アームの広い面積で押圧して腹壁や内蔵にかかる圧力を小さくできる。したがって、腹腔を大きく開くために、吊上アームや押圧アームで強く腹壁や内蔵を押圧しても、患者の腹壁や内蔵を損傷することなく、安全に腹腔を大きく拡開できる。
【0044】
とくに、本発明の請求項3の腹腔拡開器具は、吊上アームと押圧アームの両方を備えているので、吊上アームで腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引すると共に、押圧アームで内蔵を押圧してより効果的に腹腔を拡開できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかる腹腔拡開器具の斜視図
【図2】図1に示す腹腔拡開器具の側面図
【図3】吊上アームの回転アームのストッパを示す平面図
【図4】折曲アームの小片アームの連結構造を示す拡大断面図
【図5】吊上アームと折曲アームを平行な姿勢に折り畳んだ状態を示す断面図
【図6】図4に示す吊上アームと折曲アームを拡開した状態を示す断面図
【符号の説明】
10…吊上アーム
11…本体アーム
12…伸縮アーム
13…可撓性線材
14…押出ロッド
15…回転アーム
16…折曲アーム 16A…中央連結部
17…ツマミ
18…小片アーム 18A…平行プレート 18B…連結プレート
18a…スリット
19…回転軸
20…押圧アーム
21…L字アーム
22…拡開アーム
23…開閉線材
24…開閉ロッド
25…ピン
26…折曲アーム
27…ツマミ
28…小片アーム 28A…平行プレート 28B…連結プレート
28a…スリット
29…回転軸
30…連結部
31…回転筒
32…ストッパ 32A…ストッパ本体 32B…移動機構
32a…ストッパ溝 32b…傾動ロッド
33…固定ネジ
34…連結機構
35…連結筒 35A…挟着片 35B…連結片
36…止ネジ
37…リンク機構 37A…リンク 37B…固定ネジ
38…折曲制限機構 38A…回動阻止部 38B…爪
38a…支柱 38b…切欠部
38c…位置決壁
40…本体部
41…中間アーム
42…固定アーム 42A…連結部
43…固定ビス
【発明の属する技術分野】
この発明は、腹腔鏡を使用する手術に使用される腹腔拡開器具に関し、とくに、手術時に腹壁を吊り上げ、あるいは内蔵を押圧して腹腔を拡開する腹腔拡開器具に関する。
【0002】
【従来の技術】
腹壁吊り上げ手術は、腹壁を小さく切開して内臓を摘出する等の手術に採用される。この手術は、通常の手術のように腹壁を大きく切開しない。腹壁に数箇所の小孔を切開する。切開した小孔から、腹控鏡や手術器具を腹控に挿入して手術する。腹控を拡開するために、腹壁の複数点を吊り上げ、内蔵を押圧して腹壁と内臓との間を広くする。このとき、腹控を広く拡開することが大切である。腹控が狭いと、体内に挿入した腹控鏡で、手術する部分を十分に見ることができない。また、手術器具を最適な位置に挿入することができなくなる。肥満の患者は、腹壁が厚く、また腹壁を吊り上げると、腸等の内臓が腹壁と一緒に上がってくるので腹腔を広く拡開するのが難しい。
【0003】
本発明者は、腹腔を充分に拡開するための腹腔拡開器具を開発した。(特許文献1〜5参照)
【0004】
【特許文献1】
特開平9−299374号公報
【特許文献2】
特開平8−33631号公報
【特許文献3】
特開平8−33630号公報
【特許文献4】
特開平8−33629号公報
【特許文献5】
特開平6−285075号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これ等の腹腔拡開器具は、腹壁を切開した小孔から挿入して腹壁を吊り上げ、あるいは内臓を押圧して、内臓と腹壁との間の腹腔を拡開する複数本の拡開アームを備えている。拡開アームの中間は、ピンを介して、開閉できるように連結している。また、拡開アームは、後端を体外から操作して先端を開閉できるように、後端の握りに指孔を設け、先端部には内臓を押圧する押圧部を設けている。
【0006】
この構造の腹腔拡開器具は、先端部分を閉じた状態で、腹壁の小孔から腹腔に拡開アームを挿入する。先端部分を腹腔に挿入した状態で、拡開アーム先端の押圧部を拡開する。このように拡開した押圧部で、腹壁の内面や腸等の内臓を押圧して腹腔を拡開する。
【0007】
これ等の腹腔拡開器具は、安全に大きく腹腔を開くのが難しい。それは、拡開アームの先端が、腹壁や内蔵に損傷を与えやすいからである。とくに、腹腔を大きく開くために、拡開アームで強く腹壁や内蔵を押圧すると、拡開アームの先端が患者の腹壁や内蔵に損傷を与えやすくなってしまう。
【0008】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、安全に患者の腹腔を大きく拡開できる腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の腹腔拡開器具は、腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引して腹腔を拡開する一対の吊上アーム10を備える。この吊上アーム10は、先端を開閉できるように中間を連結しており、腹腔内で拡開されて、腹腔を拡開するように腹壁の内面を押圧する。一対の吊上アーム10の先端には、吊上アーム10が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム18を連結してなる折曲アーム16を連結している。この腹腔拡開器具は、吊上アーム10を拡開する状態で、吊上アーム10の先端に連結している折曲アーム16と吊上アーム10の両方で腹壁の内面を押圧して腹腔を拡開する。
【0010】
本発明の請求項2の腹腔拡開器具は、腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、内蔵を押圧して腹腔を拡開する押圧アーム20を備える。この押圧アーム20は、先端に一対の拡開アーム22を開閉できるように備えており、拡開アーム22が腹腔内で拡開されて、腹腔を拡開するように内蔵を押圧する。一対の拡開アーム22の先端には、拡開アーム22が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム28を連結してなる折曲アーム26を連結している。この腹腔拡開器具は、拡開アーム22を拡開する状態で、拡開アーム22の先端に連結している折曲アーム26と拡開アーム22の両方で内蔵を押圧して腹腔を拡開する。
【0011】
さらに、本発明の請求項3の腹腔拡開器具は、腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引して腹腔を拡開する一対の吊上アーム10と、腹壁の小孔から腹腔内に挿入されて、内蔵を押圧して腹腔を拡開する押圧アーム20を備える。吊上アーム10は、先端を開閉できるように中間を連結しており、腹腔内で拡開されて腹腔を拡開する。押圧アーム20は、先端に一対の拡開アーム22を開閉できるように備えており、拡開アーム22が腹腔内で拡開されて腹腔を拡開する。一対の吊上アーム10の先端には、吊上アーム10が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム18を連結してなる折曲アーム16を連結しており、この吊上アーム10を拡開する状態で、吊上アーム10の先端に連結している折曲アーム16と吊上アーム10の両方で腹壁の内面を押圧して腹腔を拡開する。さらに、一対の拡開アーム22の先端にも、拡開アーム22が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム28を連結してなる折曲アーム26を連結しており、拡開アーム22を拡開する状態で、拡開アーム22の先端に連結している折曲アーム26と拡開アーム22の両方で内蔵を押圧する。この腹腔拡開器具は、吊上アーム10で腹壁の内面を押圧し、押圧アーム20で内蔵を押圧し、これらの両方で腹腔を拡開する。
【0012】
さらに、本発明の請求項4の腹腔拡開器具は、吊上アーム10が先端から突出するように伸縮できる構造としている。さらに、本発明の請求項5の腹腔拡開器具は、吊上アーム10が、本体アーム11と、この本体アーム11の先端に伸縮するように連結してなる伸縮アーム12と、この伸縮アーム12に連結されると共に、本体アーム11に摺動できるように挿入されてなる可撓性線材13と、この可撓性線材13に連結されて本体アーム11の後端に出入りできるように挿入してなる押出ロッド14とを備える。この腹腔拡開器具は、押出ロッド14を本体アーム11に押し込んで可撓性線材13を介して伸縮アーム12を本体アーム11から突出させて伸長し、また押出ロッド14を本体アーム11から抜いて可撓性線材13を介して伸縮アーム12を本体アーム11に収縮する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための腹腔拡開器具を例示するものであって、本発明は腹腔拡開器具を下記のものに特定しない。
【0014】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0015】
図1と図2に示す腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具は、腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引して腹腔を拡開する一対の吊上アーム10と、腹壁の小孔から腹腔内に挿入されて、内蔵を押圧して腹腔を拡開する一対の押圧アーム20を備えている。吊上アーム10と押圧アーム20は、先端を開閉できる構造としており、腹腔内で拡開されて、腹腔を拡開する。
【0016】
吊上アーム10は、先端を開閉できるように中間を連結部30に連結している。この連結部30は、固定ネジ33を介して本体部40に連結して固定している。図の吊上アーム10は、ステンレス等の金属製で全体をL字状に折曲する形状としている。吊上アーム10は、金属パイプをL字状に折曲している本体アーム11と、この本体アーム11の先端に伸縮するように連結している伸縮アーム12と、この伸縮アーム12に連結されると共に、本体アーム11に摺動できるように挿入している可撓性線材13と、この可撓性線材13に連結されて本体アーム11の後端に出入りできるように挿入している押出ロッド14とを備える。
【0017】
本体アーム11は、連結部30に固定している回転筒31に回転できるが軸方向には移動しないように挿通して連結している。本体アーム11は、これを回転筒31から外側に突出する部分に回転アーム15を固定している。回転アーム15は、本体アーム11を回転筒31の内部で回転させて、吊上アーム10を拡開し、あるいは拡開した状態から平行な姿勢に閉じる。
【0018】
図の腹腔拡開器具は、回転アーム15のストッパ32を連結部30に設けている。ストッパ32は、図3の鎖線で示す一対の吊上アーム10を開く位置で、回転アーム15を停止させる。図のストッパ32は、一対の回転アーム15の後端を係止するストッパ溝32aのあるストッパ本体32Aと、このストッパ本体32Aを回転アーム15の後端を停止する位置に移動させる移動機構32Bとを備える。移動機構32Bは、連結部30に傾動できるように連結している傾動ロッド32bである。この傾動ロッド32bの後端にストッパ本体32Aを固定している。このストッパ32は、一対の回転アーム15の後端を接近させる状態で、ストッパ本体32Aのストッパ溝32aに回転アーム15の後端を案内し、回転アーム15が移動するのを停止する。この腹腔拡開器具は、ストッパ32で吊上アーム10を拡開位置に停止できるので、腹腔内で開かれた姿勢の吊上アーム10が閉じることがない。ただ、ストッパは必ずしも必要ない。それは、吊上アーム10を摩擦抵抗でもって、開いた位置に停止することもできるからである。
【0019】
伸縮アーム12は、本体アーム11に連結する後端部を円筒状として、ここに本体アーム11の先端部分を軸方向に移動できるように挿入している。ただし、伸縮アームは、本体アーム先端部の内側に軸方向に移動できるように挿入して連結することもできる。伸縮アーム12は、折曲アーム16を先端に連結している。
【0020】
可撓性線材13は折曲できるワイヤーである。ただし、可撓性線材13は、折曲された本体アーム11の内部を摺動して移動でき、押出ロッド14で駆動されて、かつ伸縮アーム12を押し出したり、また引き込むことができる全ての線材を使用できる。可撓性線材13は、一端を伸縮アーム12に連結して、他端を押出ロッド14に連結している。押出ロッド14の動きで伸縮アーム12を伸縮させるためである。
【0021】
押出ロッド14は、本体アーム11の後端に摺動できるように挿入されて、その上端には手で押圧できるようにツマミ17を設けている。ツマミ17のある押出ロッド14は手で操作しやすい。ただ、押出ロッドの後端を折曲してツマミのように手で操作しやすい形状とすることもできる。
【0022】
以上の吊上アーム10は、回転アーム15を回動させて開閉し、押出ロッド14で伸縮アーム12を伸縮させる。押出ロッド14が本体アーム11に押し込まれると、これが可撓性線材13を介して伸縮アーム12を本体アーム11から押し出し、伸縮アーム12を伸長させる。また、押出ロッド14を本体アーム11から引き上げると、可撓性線材13が伸縮アーム12を本体アーム11に引き込んで収縮させる。この吊上アーム10は、押出ロッド14を操作して伸縮できるので、腹腔に入れる状態で押圧する面積と部分を変更できる。
【0023】
一対の吊上アーム10は、その先端を折曲アーム16で連結している。吊上アーム10は、伸縮アームを伸長して開いた状態で、その幅が7〜20cm、好ましくは8〜15cm、さらに好ましくは10〜15cmとなるようにする。この吊上アーム10は、折曲アーム16を含む水平方向の長さを8〜20cm、好ましくは10〜15cm、さらに好ましくは12〜15cmとする。折曲アーム16は、吊上アーム10を開いて腹壁を吊り上げするために、開かれた吊上アーム10の面内でのみ折曲できるように、複数の小片アーム18を連結している。図の吊上アーム10は、6本の小片アーム18を連結しているが、小片アーム18は4〜12本とすることもできる。小片アーム18の長さは1〜10cm、好ましくは2〜8cmとする。図の吊上アーム10は、先端を伸縮アーム12とするので、折曲アーム16を伸縮アーム12の先端に連結している。小片アーム18の連結部を図4ないし図6に示している。互いに隣接する小片アーム18は、開いた吊上アーム10を含む面内で折曲できるように、一方に、間にスリット18aのある平行プレート18Aを、他方に、このスリット18aに入れられて摺動する連結プレート18Bを設けている。平行プレート18Aと連結プレート18Bに回転軸19を貫通して、回転軸19で平行プレート18Aと連結プレート18Bとを、スリット18aを含む面内でのみ折曲できるように連結している。図の折曲アーム16は、6本の小片アーム18を折曲できるように連結しているが、5本以下の小片アームを連結し、あるいは7本以上の小片アームを連結して折曲アームとすることもできる。
【0024】
腹腔拡開器具は、吊上アーム10を切開された腹壁の小孔から腹腔に挿入するとき、図5に示すように、吊上アーム10を平行な姿勢とし、さらに折曲アーム16も平行な姿勢とする。図の腹腔拡開器具は、折曲アーム16の小片アーム18を平行な姿勢に折り畳みできるように、一対の吊上アーム10に、左右対称の折曲アーム16を連結している。腹腔に挿入された吊上アーム10が図6に示すように開かれると、これに連結している折曲アーム16も開かれる。
【0025】
さらに、図に示す折曲アーム16は、平行な姿勢で腹腔に挿入されて腹腔内で開かれるときに、所定の形状に拡開される構造としている。それは、折曲アーム16が腹腔内で自由に折曲されて種々の形状に拡開されると、腹壁を理想的に吊り上げできなくなるからである。さらにまた、腹腔内で拡開された折曲アーム16は、吊上アーム10を閉じて腹腔から取り出すときには、もとの平行な姿勢に折り畳まれる構造としている。すなわち、折曲アーム16は、互いに隣接する小片アーム18が所定の範囲内でのみ折曲できるように複数の小片アーム18を連結して、所定の形状に開閉できるようにしている。
【0026】
折曲アーム16は、図5と図6に示すように、互いに隣接する小片アーム18の連結部分に折曲制限機構38を設けており、この折曲制限機構38によって小片アーム18が折曲される角度を制限している。図の折曲アーム16は、平行の姿勢に折り畳まれるときに折り返される連結部分である中央連結部16Aには折曲制限機構を設けておらず、この中央連結部16Aを除く連結部分には折曲制限機構38を設けて小片アーム18が折曲される角度を制限している。中央連結部16Aで連結される小片アーム18は、回転軸19を中心として自由に折曲できる構造としている。
【0027】
折曲制限機構38は、小片アーム18の連結プレート18Bの先端に設けられた爪38Bと、この爪38Bを当接させて小片アーム18が所定の角度以上回動するのを阻止する回動阻止部38Aとを備える。連結プレート18Bの爪38Bは、先端に向かって次第に幅が狭くなる形状としており、側面を回動阻止部38Aに当接させて小片アーム18の回動を阻止するようにしている。回動阻止部38Aは、爪38Bの側面を当接させる凸部や壁で、爪38Bの回転面内に突出して設けている。図に示す折曲制限機構38は、平行アーム18Aのスリット18aの側部に、支柱38aあるいは位置決壁38cを設けて回動阻止部38Aとしている。さらに、図5と図6に示す折曲制限機構38は、スリット18aの両側に回動阻止部38Aを設けており、小片アーム18が内折れと外折れの両方向に折曲されるのを制限している。
【0028】
この折曲制限機構38は、連結プレート18Bに設けた爪38Bの側面を、平行アーム18Aに設けた回動阻止部38Aに当接させて、互いに隣接する小片アーム18を所定の角度だけ折曲させる。図の折曲制限機構38は、折曲アーム16の内周側に位置する回動阻止部38Aとして、すなわち小片アーム18の外折れを制限する回動阻止部38Aとして支柱38aを設け、外周側に位置する回動阻止部38Aとして、すなわち小片アーム18の内折れを制限する回動阻止部38Aとして支柱38aや位置決壁38cを設けている。図の支柱38aは円柱状で、この支柱38aが当接する爪38Bの側面には、支柱38aを案内する切欠部38bを設けている。爪38Bの切欠部38bに支柱38aである回動阻止部38Aを案内する構造は、図5に示すように、隣接する小片アーム18を直線状に延ばした姿勢に位置決めできる。さらに、折曲アーム16の外周側に設けた位置決壁38cである回動阻止部38Aは、爪38Bの側面を広い面積で当接させて所定の姿勢に位置決めできる。
【0029】
以上の構造の折曲アーム16は、図6に示すように、吊上アーム10が開かれる状態では、互いに隣接する小片アーム18がその連結部分で内折れする。複数の小片アーム18は、折曲制限機構38を設けた連結部分において、連結プレート18Bの爪38Bの外側面が、折曲アーム16の外周側に位置する回動阻止部38Aに当接して所定の角度折曲される。爪38Bの外側面は、位置決壁38cである回動阻止部38Aに面で当接し、あるいは支柱38aである回動阻止部38Aに点で当接して所定の角度だけ折曲される。このように、折曲アーム16は、互いに隣接する小片アーム18の折曲角度が折曲制限機構38で制限されることにより、所定の形状に拡開される。折曲アーム16と吊上アーム10は、図6に示すように、吊上アーム10が開かれた状態では、折曲された折曲アーム16と吊上アーム10とで略扇形を形成するように拡開される。
【0030】
さらに、折曲アーム16は、図5に示すように、吊上アーム10が閉じられる状態では、互いに隣接する小片アーム18同士が、中央連結部16Aでは内折れし、中央連結部16Aを除く連結部分では外折れして、互いに平行な姿勢に折り畳まれる。中央連結部16Aで折曲される小片アーム18は、回転軸19を中心として略直線状に折曲される。折曲制限機構38を設けた連結部分で折曲される小片アーム18は、爪38Bの内側面が、折曲アーム16の内周側に位置する回動阻止部38Aに当接して直線状に配置される。この状態で、2本の吊上アーム10と折り畳まれた折曲アーム16が平行な姿勢となる。吊上アーム10と折曲アーム16は、平行な姿勢に折り畳まれた状態で、腹壁の小孔から腹腔内に挿入され、あるいは腹腔から取り出される。
【0031】
さらに、図1と図2の腹腔拡開器具は、本体部40の下端に中間アーム41を備える。中間アーム41は、吊上アーム10と同じようにL字状に折曲されたアームである。中間アーム41は、本体部40に連結部30を連結した状態では、開かれた吊上アーム10の中間に位置する。この腹腔拡開器具は、開かれた吊上アーム10と折曲アーム16と中間アーム41とで腹壁を吊り上げできる。連結部30は、互いに平行な姿勢に畳まれた吊上アーム10と中間アーム41とが平行な姿勢となるように、本体部40に連結されて固定される。
【0032】
さらに、図に示す腹腔拡開器具は、ベッド手術台の所定の位置に固定するために、本体部40に固定アーム42を設けている。腹腔拡開器具は、ベッド手術台に取り付けられた支持器(図示せず)に連結して固定される。図1と図2に示す本体部40は、水平方向に突出する固定アーム42を設けており、この固定アーム42を介して支持器に連結される。固定アーム42は、先端部に円筒状の連結部42Aを有し、この連結部42Aの外周に雄ネジを設けている。この連結部42Aに固定ビス43がねじ込まれて、腹腔拡開器具は支持器に動かないように固定される。
【0033】
さらに、図に示す腹腔拡開器具は、連結部30に連結機構34を介して押圧アーム20を連結している。押圧アーム20は、連結機構34で連結部30に連結しているL字アーム21と、このL字アーム21の先端に開閉できるように連結している拡開アーム22と、L字アーム21に挿通されて拡開アーム22を開閉する可撓性のある開閉線材23と、この開閉線材23を駆動して拡開アーム22を開閉させる開閉ロッド24とを備える。
【0034】
L字アーム21は、開閉線材23を挿通できるステンレス等の金属パイプで、連結機構34の連結筒35に回転できるように挿通している。連結筒35は、軸方向に2分割されており、分割された挟着片35Aを開閉してL字アーム21を挟着できるように連結している。さらに、分割された挟着片35Aは、開閉端縁に設けた連結片35Bに止ネジ36をねじ込んでいる。止ネジ36は、連結片35Bにねじ込まれて、分割された挟着片35AでL字アーム21を挟着して固定する。さらに、止ネジ36を緩めて、L字アーム21を回転させ、あるいは軸方向に移動できる状態とする。図の連結機構34は、連結筒35とこれを連結部30に連結するリンク機構37を備える。リンク機構37は、連結筒35の上下を連結部30に連結しており、連結筒35と連結部30との距離を変更し、さらに、連結筒35の連結部30に対する角度を調整できるように連結筒35を連結部30に連結する。図のリンク機構37は、2本のリンク37Aを折曲できるように連結したものである。2本のリンク37Aは、連結部分に固定ネジ37Bをねじ込んでいる。このリンク機構37は、固定ネジ37Bをねじ込んでリンク37Aを折曲できないように固定して、連結筒35の位置を特定する。
【0035】
拡開アーム22は、L字アーム21の先端に、ピン25を介して開閉できるように連結している。拡開アーム22は、互いに閉じた状態で内部に開閉線材23を内蔵できるように、横断面の形状を溝形として、溝内に開閉線材23を収納できるようにしている。
【0036】
一対の拡開アーム22は、その先端を折曲アーム26で連結している。折曲アーム26は、押圧アーム20の拡開アーム22を開いて内蔵を押圧するために、開かれた拡開アーム22の面内でのみ折曲できるように、複数の小片アーム28を連結している。図の押圧アーム20は、先端を拡開アーム22とするので、折曲アーム26を拡開アーム22の先端に連結している。小片アーム28の連結部は、前述の吊上アーム10の折曲アーム16と同じ構造である。すなわち、図3に示すように、互いに隣接する小片アーム28は、開いた拡開アーム22を含む面内で折曲できるように、一方に、間にスリット28aのある平行プレート28Aを、他方に、このスリット28aに入れられて摺動する連結プレート28Bを設けている。平行プレート28Aと連結プレート28Bに回転軸29を貫通して、回転軸29で平行プレート28Aと連結プレート28Bとを、スリット28aを含む面内でのみ折曲できるように連結している。図2の折曲アーム26は、6本の小片アーム28を折曲できるように連結しているが、5本以下の小片アームを連結し、あるいは7本以上の小片アームを連結して折曲アームとすることもできる。
【0037】
この構造の押圧アーム20も、前述の吊上アーム10と同様に、切開された腹壁の小孔から腹腔に挿入するとき、平行な姿勢とし、さらに折曲アーム26も平行な姿勢とする。したがって、図の腹腔拡開器具は、折曲アーム26の小片アーム28を平行な姿勢に折り畳みできるように、一対の拡開アーム22に、左右対称の折曲アーム26を連結している。腹腔に挿入された押圧アーム20が開かれると、これに連結している折曲アーム26も開かれる。さらに、この折曲アーム26も、前述の折曲アーム16と同様に、所定の形状に拡開されると共に、平行な姿勢に折り畳まれる構造としている。すなわち、折曲アーム26は、互いに隣接する小片アーム28が所定の範囲内でのみ折曲できるように複数の小片アーム28を連結して、所定の形状に開閉できるようにしている。この構造は、複数の小片アーム28の連結部分に、前述の折曲制限機構を設けて実現できる。
【0038】
開閉線材23は、折曲されたL字アーム21の内部を摺動できるように折曲できる弾性金属線である。この開閉線材23には、折曲されたL字アーム21の内部を摺動して移動でき、開閉ロッド24で駆動されて、かつ拡開アーム22を開閉できる線材を使用できる。開閉線材23は一端を折曲アーム26の中央に連結して、他端を開閉ロッド24に連結している。開閉ロッド24の動きで拡開アーム22を開閉するためであ。
【0039】
開閉ロッド24は、L字アーム21の後端に摺動できるように挿入されて、その上端には手で押圧できるようにツマミ27を設けている。ツマミのある開閉ロッド24は手で操作しやすい。ただ、開閉ロッドの後端を折曲してツマミのように手で操作しやすい形状とすることもできる。
【0040】
さらに、本発明の腹腔拡開器具は、図示しないが、複数の押圧アームを備えることもできる。この腹腔拡開器具は、1本の押圧アームで腹腔を十分に拡開できないときに、複数の押圧アームを腹腔内に挿入して、拡開された拡開アームと折曲アームとで内蔵の別の部分を押圧して腹腔を拡開する。複数の押圧アームは、たとえば、複数の連結機構を介して連結部に連結することができる。
【0041】
以上の腹腔拡開器具は、以下のようにして使用する。
(1) 本体部40と吊上アーム10と押圧アーム20とを互いに分離した状態とする。吊上アーム10と押圧アーム20は、図5に示すように閉じた状態とする。
(2) 患者の腹部の腹壁を切開して小孔を開け、本体部40の中間アーム41を小孔から腹腔に挿入する。本体部40の固定アーム42を、ベッド手術台に固定された支持器(図示せず)に連結する。このとき、本体部40を手で持ち上げて、腹腔に少しの空間を作り、腹腔内に癒着等がないか安全を確認する。
(3) 平行の姿勢に閉じた状態の吊上アーム10と折曲アーム16を、腹壁の小孔から腹腔内へ挿入する。吊上アーム10の連結部30を本体部40に連結して固定する。
(4) 回転アーム15を操作して吊上アーム10を回動させて、吊上アーム10と折曲アーム16とを図6に示すように拡開する。腹腔内の奥行きが狭いときは、ツマミ17を操作して吊上アーム10の伸縮アーム12を伸長する。拡開された吊上アーム10と折曲アーム16と、中間アーム41とで腹壁を吊り上げ、腹腔内の術野が確保できれば支持器の固定ビス43を固定アーム42にねじ込んで完全に動かないように固定する。
(5) 腹腔内の内蔵の浮遊が確認されれば、押圧アーム20と折曲アーム26を腹壁の小孔から腹腔内へ挿入する。押圧アーム20の拡開アーム22と、折曲アーム26は、平行の姿勢に閉じた状態で腹腔内に挿入される。押圧アーム20のL字アーム21を連結筒35に取り付ける。
(6) ツマミ27を操作して開閉ロッド24を引っ張り、拡開アーム22と折曲アーム26とを拡開して内蔵を押圧できる状態とする。押圧アーム20を移動させて、拡開された拡開アーム22と折曲アーム26とで内蔵を上下左右に押圧し、手術の視野が確保された状態で、押圧アーム20をその位置に停止させる。連結筒35の止ネジ36とリンク機構37の固定ネジ37Bを締め付けて押圧アーム20が動かないように固定する。この状態で、押圧アーム20は、その拡開アーム22と折曲アーム26の両方で内蔵を押圧して腹腔を拡開する。
(7) 1本の押圧アーム20で腹腔が十分に拡開されないときには、さらに、別の押圧アームを腹腔内に挿入し、拡開された拡開アームと折曲アームとで内蔵の別の部分を押圧して腹腔を拡開する。
【0042】
以上の腹腔拡開器具は、吊上アーム10と押圧アーム20とを備えており、吊上アーム10で腹壁を吊り上げ、押圧アーム20で内蔵を押圧するので、腹腔をもっとも広く拡開できる。ただ、本発明の腹腔拡開器具は、かならずしも吊上アームと押圧アームの両方を装備する必要はなく、たとえば吊上アームのみ、あるいは押圧アームのみとすることもできる。
【0043】
【発明の効果】
本発明の腹腔拡開器具は、安全に患者の腹腔を大きく拡開できる特長がある。それは、本発明の腹腔拡開器具が、腹壁の小孔から腹腔内に挿入されて腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引して腹腔を拡開する一対の吊上アームと、腹壁の小孔から腹腔内に挿入されて内蔵を押圧して腹腔を拡開する押圧アームのいずれか一方または両方を備えており、一対の吊上アームの先端と、押圧アームに設けた一対の拡開アームの先端には、複数の小片アームを連結してなる折曲アームを連結しているからである。このように、先端に複数の小片アームを連結してなる折曲アームを連結している吊上アームや押圧アームは、アームの先端部とこれらの先端に連結された折曲アームの全体で腹壁や内蔵を押圧する。このため、従来の腹腔拡開器具のように開閉されるアームの先端で腹壁や内蔵を局部的に押圧することなく、アームの先端部と折曲アームの広い面積で押圧して腹壁や内蔵にかかる圧力を小さくできる。したがって、腹腔を大きく開くために、吊上アームや押圧アームで強く腹壁や内蔵を押圧しても、患者の腹壁や内蔵を損傷することなく、安全に腹腔を大きく拡開できる。
【0044】
とくに、本発明の請求項3の腹腔拡開器具は、吊上アームと押圧アームの両方を備えているので、吊上アームで腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引すると共に、押圧アームで内蔵を押圧してより効果的に腹腔を拡開できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかる腹腔拡開器具の斜視図
【図2】図1に示す腹腔拡開器具の側面図
【図3】吊上アームの回転アームのストッパを示す平面図
【図4】折曲アームの小片アームの連結構造を示す拡大断面図
【図5】吊上アームと折曲アームを平行な姿勢に折り畳んだ状態を示す断面図
【図6】図4に示す吊上アームと折曲アームを拡開した状態を示す断面図
【符号の説明】
10…吊上アーム
11…本体アーム
12…伸縮アーム
13…可撓性線材
14…押出ロッド
15…回転アーム
16…折曲アーム 16A…中央連結部
17…ツマミ
18…小片アーム 18A…平行プレート 18B…連結プレート
18a…スリット
19…回転軸
20…押圧アーム
21…L字アーム
22…拡開アーム
23…開閉線材
24…開閉ロッド
25…ピン
26…折曲アーム
27…ツマミ
28…小片アーム 28A…平行プレート 28B…連結プレート
28a…スリット
29…回転軸
30…連結部
31…回転筒
32…ストッパ 32A…ストッパ本体 32B…移動機構
32a…ストッパ溝 32b…傾動ロッド
33…固定ネジ
34…連結機構
35…連結筒 35A…挟着片 35B…連結片
36…止ネジ
37…リンク機構 37A…リンク 37B…固定ネジ
38…折曲制限機構 38A…回動阻止部 38B…爪
38a…支柱 38b…切欠部
38c…位置決壁
40…本体部
41…中間アーム
42…固定アーム 42A…連結部
43…固定ビス
Claims (5)
- 腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引して腹腔を拡開する一対の吊上アーム(10)を備えており、この吊上アーム(10)は先端を開閉できるように中間を連結しており、腹腔内で拡開されて、腹腔を拡開するように腹壁の内面を押圧する腹腔拡開器具であって、
一対の吊上アーム(10)の先端に、吊上アーム(10)が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム(18)を連結してなる折曲アーム(16)を連結しており、吊上アーム(10)を拡開する状態で、吊上アーム(10)の先端に連結している折曲アーム(16)と吊上アーム(10)の両方で腹壁の内面を押圧して腹腔を拡開するようにしてなる腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具。 - 腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、内蔵を押圧して腹腔を拡開する押圧アーム(20)を備えており、この押圧アーム(20)は、先端に一対の拡開アーム(22)を開閉できるように備えており、拡開アーム(22)が腹腔内で拡開されて、腹腔を拡開するように内蔵を押圧する腹腔拡開器具であって、
一対の拡開アーム(22)の先端に、拡開アーム(22)が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム(28)を連結してなる折曲アーム(26)を連結しており、拡開アーム(22)を拡開する状態で、拡開アーム(22)の先端に連結している折曲アーム(26)と拡開アーム(22)の両方で内蔵を押圧して腹腔を拡開するようにしてなる腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具。 - 腹壁を切開して開口された小孔から腹腔内に挿入されて、腹壁の内面を吊り上げ状態で牽引して腹腔を拡開する一対の吊上アーム(10)と、腹壁の小孔から腹腔内に挿入されて、内蔵を押圧して腹腔を拡開する押圧アーム(20)を備えており、吊上アーム(10)は先端を開閉できるように中間を連結しており、押圧アーム(20)は先端に一対の拡開アーム(22)を開閉できるように備えており、吊上アーム(20)と拡開アーム(22)が腹腔内で拡開されて、腹腔を拡開する腹腔拡開器具であって、
一対の吊上アーム(10)の先端に、吊上アーム(10)が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム(18)を連結してなる折曲アーム(16)を連結しており、吊上アーム(10)を拡開する状態で、吊上アーム(10)の先端に連結している折曲アーム(16)と吊上アーム(10)の両方で腹壁の内面を押圧して腹腔を拡開し、
さらに、一対の拡開アーム(22)の先端にも、拡開アーム(22)が拡開する面内で折曲できるように複数の小片アーム(28)を連結してなる折曲アーム(26)を連結しており、拡開アーム(22)を拡開する状態で、拡開アーム(22)の先端に連結している折曲アーム(26)と拡開アーム(22)の両方で内蔵を押圧して、吊上アーム(10)と押圧アーム(20)の両方で腹腔を拡開するようにしてなる腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具。 - 吊上アーム(10)が先端から突出するように伸縮できる請求項1または3に記載される腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具。
- 吊上アーム(10)が本体アーム(11)と、この本体アーム(11)の先端に伸縮するように連結してなる伸縮アーム(12)と、この伸縮アーム(12)に連結されると共に、本体アーム(11)に摺動できるように挿入されてなる可撓性線材(13)と、この可撓性線材(13)に連結されて本体アーム(11)の後端に出入りできるように挿入してなる押出ロッド(14)とを備えており、
押出ロッド(14)を本体アーム(11)に押し込んで可撓性線材(13)を介して伸縮アーム(12)を本体アーム(11)から突出させて伸長し、また押出ロッド(14)を本体アーム(11)から抜いて可撓性線材(13)を介して伸縮アーム(12)を本体アーム(11)に収縮するようにしてなる請求項4に記載される腹腔鏡を使用する手術に使用する腹腔拡開器具。
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