JP3728239B2 - 耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板、およびその製造方法 - Google Patents

耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板、およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品、特に、足回り部品と呼ばれるメンバー類やアーム類などには高強度熱延鋼板が広く用いられている。これらの部品に要求される鋼板の特性としては、強度、延性の他に穴広げ試験で評価される伸びフランジ性がある。これは、こうした部品が他の部品とボルト接合などの方法で組み合わされることが多く、その際のボルト穴が、打ち抜き穴のせり出し加工(穴広げ加工)によって形成されるのが一般的であるからである。
【0003】
更に具体的に述べれば、打ち抜き穴のせり出し加工時に、鋼板断面を貫通する亀裂が発生しないことが必要とされ、貫通亀裂を発生させることなく、より大きく穴径を広げられることがその優劣の指標となる。
【0004】
伸びフランジ性に優れる鋼板については多くの提案がなされている。例えば特開平6−172924号公報、同7−11382号公報、および、同7−70696号公報などがそれである。これらは、鋼板の化学成分や製造方法の検討を通して、強度と伸びフランジ性を両立させる方法を見出したものであり、穴広げ加工時の亀裂の基点となり得る介在物を抑制するとともに、ベーナイト組織、あるいはベイニティック・フェライト組織を主相とする鋼板の提案を要旨とするものである。
【0005】
本発明者らも伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板の研究開発に取り組み、上記提案と同様に、介在物制御と鋼板組織のベーナイト相化、あるいはベイニティック・フェライト相化が基本的には優れた鋼板を得る手段であるとの結論に達し、さらに改良を試みているところであった。
【0006】
中でも当該組織の鋼板を得るのに最も重要である圧延後の冷却条件の制御に腐心を払い、通常の圧延方法では冷却条件が不安定と成り易い、鋼板の先端部と後端部の、鋼板が仕上圧延機を出てから巻き取られるまでの部分も含めた材質作りこみのためにエンドレス圧延法の適用検討も進めていた。なお、ここで言うエンドレス圧延法とは、粗圧延した熱延材(以下、粗バーと言う)を仕上圧延前に次々と接合して複数の粗バーを連続的に仕上圧延し、適宜切断して熱延コイルを製造する方法のことである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一方、最近、自動車の平均的な使用期間が長くなる傾向が明確になり、それに合わせて自動車メーカーも従来以上に高耐久性を各部材に求めるようになった。足回り部品についても例外ではなく、従来それほど厳しく求められていなかった耐食性が求められるようになった。
【0008】
足回り部品は、外板パネルなどに比べてはるかに厚肉であること、また、ステンレス鋼などとは異なり、局部的な激しい腐食の心配は少ないことから、さび代を考慮して部品設計を行うことによって耐食性を確保することが行われて来たが、車体の軽量化に対する要求が一段と強まる中にあっては、こうした思想も変更を余儀なくされてきており、耐食性に対する要求も回避できないものとなった。
【0009】
こうした情勢から、従来の足回り用高強度熱延鋼板が有していた強度、延性、伸びフランジ性に加えて耐食性が求められることとなったが、こうした視点に立った鋼板に関する提案は皆無に近い。
【0010】
一般的に、Si含有量の高い鋼板では、塗料密着性確保の目的で行われる化成皮膜の形成が難しく、耐食性確保の観点からは望ましくないとの指摘があるが、Siは伸びフランジ性を劣化させることなく強度を高めるのに有効な元素であるからむやみに少なくすることは好ましくない。そこでSi量の抑制に頼ることなく優れた化成処理性、ひいては耐食性を確保し、併せて伸びフランジ性にも優れた高強度熱延鋼板を提供することが、本発明が解決しようとする課題である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
既に述べたように、本発明者らは、目標とする鋼板の製造方法にエンドレス圧延を適用すべく検討を進めていた。この方法を用いることによって従来にはない特性を更に付加出来ないか研究を行っていた。本発明はこのような過程で見出だされ、詳細な検討を経て完成されたものであり、その要旨は、
(1)質量%にて、
C :0.03〜0.10%、 Si:0.05〜1.2%、
Mn:1.0 〜2.0%、 P :0.05%以下、
S :0.0 1%以下、 N :0.005%以下、
Al:0.01〜0.05%を含有し、更に
Ti,Nbの一方あるいは双方を -0.05≦{Ti+(48/93)×Nb-(48/12)×C -(48/14)×N-(48/32)×S}≦0.2 となるように含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、表面のFe2 SiO4 を含む酸化膜の厚さが5μm未満であり、かつ断面組織におけるベイニティック・フェライト相の面積率が80〜100%であることを特徴とする耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
【0012】
(2)更に、質量%で、
Cu:0.5〜1.5%、 Ni:0.2〜0.7%
を含有することを特徴とする上記(1)記載の耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
【0013】
(3)更に、質量%で、Ca:0.0005〜0.0025%を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の化学成分を有する鋼材を1150〜1250℃に加熱して粗圧延した後、1150℃以下の温度においてコイル状に巻取り、巻戻しつつAr3 点〜Ar3 点+100℃で仕上圧延を完了し、更に40℃/秒以上の平均冷却速度で300〜500℃まで冷却し、300〜500℃で巻き取ることを特徴とする耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
である。
【0015】
【発明の実施の形態】
まず、本発明を完成するに至った実験について以下に説明する。
本発明者らはまず、鋼板のSi含有量と化成処理性について研究を行った。Si含有量の異なる鋼を常法(エンドレス圧延ではない熱延方法)によって熱延、酸洗し、次いで同一条件で化成処理を施した。それらの単位面積当たりの化成皮膜形成量(質量)を調べたところ、鋼板のSi含有量が増えるにつれて化成皮膜形成量が減少する傾向が認められた。
【0016】
更に詳細に調査したところ、Si含有量の少ない鋼板の化成処理皮膜は緻密なリン酸塩の結晶で構成されているのに対して、Si含有量の多い鋼板ではリン酸塩の結晶が粗大であるばかりでなく、皮膜が全く形成されていない箇所すらあることがわかった。またこうした場所にはFe2 SiO4 を主要成分とする物質(以下、Fe−Si系スピネルという)が鋼板表面と平行に厚く存在していることも明らかとなった。このことから、何らかの方法でFe−Si系スピネル層の厚さを抑制できればSi含有量に関わらず優れた化成処理性が確保できるものと考えて更に検討を進めた。
【0017】
なお、単にFe−Si系スピネル層を薄くすること(完全に無くすことも含む)を目的とするのであれば、熱延後の酸洗時間を長くする、酸洗液中の酸の濃度を高くする、酸洗液の温度を高くする、あるいは、研削などの方法で機械的に除去することなどの選択も考えられるが、そうした方法は製造コストを押し上げ、熱延鋼板本来のコストパフォーマンスを損ねるだけであるので本発明者らは、熱延スケールの除去は一般的な酸洗(例えば、80℃の5%HClに30秒程度浸漬する)によって行うことを前提にした。
【0018】
一方、エンドレス圧延法適用検討の一環として、粗バーに粗圧延後のコイル巻取りを模擬した加工を施した試験片を仕上圧延、酸洗後、化成処理したところ、同じSi含有量であるにも関わらず、仕上圧延前に該加工を施した鋼板の化成処理性は該加工を行っていないものより優れていることを見出した。また、そうした相違が鋼板表面のFe−Si系スピネル層の厚さの違いによってもたらされていることも見出した。
【0019】
本発明者らは、この発見に立脚した研究を推し進め、強度、延性、伸びフランジ性に加えて耐食性にも優れる熱延鋼板を得るための化学成分、および製造条件を明らかとして本発明を完成させるに至った。
【0020】
以下に本発明の限定理由を述べる。
まず化学成分について述べる。成分の含有率は質量%である。
C:0.03〜0.10%。Cは鋼板の強度を確保するために必須の元素であり、高強度鋼板を得るためには少なくとも0.03%が必要である。しかし、過剰に含まれると、TiやNbによる炭化物生成や、冷却条件を駆使しても、伸びフランジ性に好ましくないセメンタイト相の生成が避けられなくなるので0.1%以下とする。
【0021】
Si:0.05〜1.2%。Siは伸びフランジ性を劣化させることなく強度を確保するのに有効な元素であるが、過剰に含まれると伸びフランジ性に好ましくないポリゴナル・フェライト相を生成しやすくなる。また、本発明の製造方法を用いても耐食性の劣化を抑制できなくなるのでその上限は1.2%とする。
【0022】
Mn:1.0〜2.0%。MnはC,Siとともに鋼板の高強度化に有効な元素であり、1.0%以上は含有させるべきであるが、2.0%を越えて含有させるとエンドレス圧延のための粗バー接合性に悪影響を及ぼすので上限を2.0%とする。
【0023】
P:0.05%以下。Pは固溶強化元素として有効であるが、偏析による加工性の劣化やMnと同様粗バーの接合性に悪影響を及ぼすので0.05%以下にする必要がある。
【0024】
S:0.01%以下。SはMnSなどの介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させる他、Cを炭化物とする目的で含有させるTiと結合してその歩留りを低下させるなどの有害な作用をする。従って出来るだけ抑制すべきであるが0.01%以下であれば許容される。
【0025】
N:0.005%以下。NはAlNなどの介在物を形成してのびフランジ性を劣化させる他、Cを炭化物とする目的で含有させるTiと結合してその歩留りを低下させる。従って出来るだけ抑制すべきであるが0.005%以下であれば許容される。
【0026】
Al:0.01〜0.05%。Alは溶鋼脱酸のために0.01%以上添加する必要があるが、0.05%を超えて含有すると生成物が凝集粗大化して連続鋳造ノズルの目詰まりを引き起こしたり、穴広げ加工時の割れ発生の起点となったりし易いので0.01〜0.05%の範囲とする。
【0027】
Ti,Nbの一方あるいは双方:
-0.05≦{Ti+(48/93)×Nb-(48/12)×C-(48/14)×N-(48/32)×S}≦0.2
TiおよびNbはC,SおよびNを析出物として固定することによって鋼板の加工性を向上させる(いわゆるscavenging効果)働きをする。一方、必要以上に添加された場合には、それらは固溶Tiや固溶Nbとして鋼中に存在し、再結晶を温度を上昇させ熱間加工組織が残存し易くなり延性を損ねる。そしてその最適な添加量の範囲は、実施例の中で示すように、各元素の化学当量を用いて記述される上記式の中辺を指標として用いると適切に表すことができる。すなわち、その値が−0.05未満では延性、穴広げ性が劣り、また0.2を超えると延性が劣化する。以上の理由から上記の式を満たすように限定されなければならない。
【0028】
Cu:0.5〜1.5%。Cuは、固溶強化元素または析出強化元素として鋼板の高強度化に利用できる。しかし、0.5%以上を添加しないとその効果は少ない。一方、1.5%を越えて含有されていると熱延中の鋼板表面性状を悪化させるので1.5%を上限とする。
【0029】
Ni:0.2〜0.7%。Niは上記Cuによる熱延表面性状悪化を緩和する効果があり、Cuの約半分である0.2%以上を添加することが望ましい。一方、0.7%を超えて添加してもその効果は飽和し、鋼材の価格を上げるだけなので、0.7%を上限とする。
【0030】
Ca:0.0005〜0.0025%。Caは0.0005%以上含有すると、生成される介在物を低融点化することによって球状化し、穴広げ時の割れの起点になるのを抑制する作用を有する。その作用は0.0025%でほぼ飽和するのでそれ以下の添加でよい。
【0031】
なお、本発明において上記以外の成分はFeとなるが、スクラップなどの溶解原料から混入する不可避的不純物は許容される。
【0032】
次に加熱、圧延、冷却、および、巻取りの各条件について述べる。
加熱温度:1150〜1250℃。TiCやNbCなどを固溶させるためには加熱温度を1150℃以上とすることが必要である。これらを固溶させておくことにより、圧延後の冷却過程でポリゴナルなフェライトの生成が抑制され、伸びフランジ性にとって好ましいベイニティック・フェライト相を主体とする組織が得られる。
一方、加熱温度が1250℃を超えるとスラブ表面の酸化が著しくなり、特に粒界が選択的に酸化されたことに起因すると思われる楔状の表面欠陥がデスケーリング後に残り、それが圧延後の表面品位を損ねるので上限を1250℃とする。
【0033】
粗バーをコイル状に巻き取る温度:1150℃以下。本温度は本発明中最も重要な条件の一つである。実施例の中で後述するように、1150℃以下において粗バーを巻取ると、化成処理性が著しく向上する。そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、恐らく、適切な温度の範囲で粗バーを巻取ると、鋼板中のSiの、(粗圧延中に形成された熱延スケール直下の)地鉄表層への濃化が抑制され、その結果、仕上圧延中、および仕上圧延後に形成される熱延スケール下部(地鉄直上)にFe−Si系スピネルが生成しにくくなり、続く酸洗工程でそれらは完全に除去されるか、極めて少なくなるため、そのことが化成処理性の向上に関係しているものと思われる。
【0034】
また、粗バーを巻取る温度の下限は、圧延中の温度低下や加工発熱などを考慮して仕上圧延完了温度がAr3 点〜Ar3 点+100℃となるように設定されればよく、概ね950℃好ましくは980℃である。なお本発明は、エンドレス圧延によって目的とする鋼板を提供することを前提としているが、粗バーをコイル状に巻取るものの、他の粗バーと接合せず、単に巻戻して仕上圧延に供する圧延方法も当然のことながら含まれる。
【0035】
仕上圧延完了温度:Ar3 点〜Ar3 点+100℃。伸びフランジ性にとって好ましいベイニティック・フェライト相を主体とする組織を得るためには、γ域で圧延を行い冷却する必要がある。従って仕上圧延完了温度はAr3 点以上とする。
一方、仕上げ温度がAr3 点+100℃を超えるとポリゴナル・フェライト相が生成し易くなるので、上限をAr3 点+100℃とする。
【0036】
冷却:平均冷却速度40℃/秒以上で300〜500℃まで。伸びフランジ性に優れた鋼板を得るためには、ポリゴナル・フェライト相の生成を抑制する必要がある。そのためには40℃/秒以上の平均冷却速度で300〜500℃まで冷却する必要がある。
一方、組織制御の上では冷却速度に上限を設ける必要はないが、余りに速い冷却速度は鋼板の冷却を不均一にする恐れがあり、またそうした冷却を可能にするような設備の製造には多額の費用が必要になり、そのことで鋼板の価格の上昇を招くことが考えられる。そうした観点から冷却速度の上限は100℃/秒とするのが好ましい。
また、冷却停止温度が300℃より低くなると伸びフランジ性に好ましくないマルテンサイト相が生成されるので、下限を300℃とする。
【0037】
巻取り温度:300〜500℃。300℃を下回る温度まで急冷されるとマルテンサイト相が生成され伸びフランジ性を極端に悪化させる。そこで巻取り温度は300℃以上とする必要がある。
一方、ポリゴナル・フェライト相の生成抑制には500℃以下とする必要がある。また500℃以下で巻き取ることにより、その後の冷却過程でTiCやNbCが析出し、フェライト相中の固溶C量を大幅に減少させ、伸びフランジ性の向上をもたらす。
【0038】
次に、鋼板の表面と組織について説明する。
Fe2 SiO4 を含む酸化膜の厚さ:5μm未満(0を含む)。本発明者らは塩酸を用いて熱延スケールを除去した鋼板の表面を詳細に調査した。希薄塩酸水溶液中への浸漬時間を少しずつ変えた試験片を用意し、エリプソメトリーによる酸化膜厚さの測定と透過電子顕微鏡によるレプリカ観察による酸化物の同定を行った。
【0039】
その結果、地鉄上にはSiO2 を主に含む層、Fe2 SiO4 を主に含む層、Fe34 とFe23 を主に含む層がこの順に積層して酸化膜を形成しており、Fe34 とFe23 を主に含む層は通常の熱延スケール除去酸洗でほぼ除去可能であること、SiO2 を主に含む層は化成処理性にほとんど影響しないこと、および、Fe2 SiO4 を主に含む層は酸洗除去されにくく、かつその厚さが5μm以上であると化成処理性を著しく損ねることを見出した。Fe2 SiO4 を含む酸化膜の厚さを5μm未満と限定したのはこのためであり、薄いほど好ましく、この酸化膜はないことが好ましい。
【0040】
なお、「Fe2 SiO4 を含む酸化膜の厚さ」とは地鉄上のSiO2 を主に含む層とFe2 SiO4 を主に含む層を合わせた厚さのことであり、また、熱延コイルのトップ、ミドル、ボトムから各々3個採取した鋼片について測定し、それらを平均した値を該膜厚とした。SiO2 を主に含む層とはSiO2 の含有量が50%以上であり、Fe2 SiO4 を主に含む層とはFe2 SiO4 の含有量が50%以上であり、Fe34 とFe23 を主に含む層とはこれら2つの酸化物の含有量の合計が50%以上であることと定義する。
【0041】
一方、Fe2 SiO4 を含む酸化膜の厚さが薄ければ薄いほど化成処理性は向上するのでFe2 SiO4 を含む酸化膜が存在しない状態(これを「Fe2 SiO4 を含む酸化膜の厚さが0(零)」と呼ぶ)も本発明に含まれる。
【0042】
ベイニティック・フェライト相の面積率:80〜100%。優れた伸びフランジ性を得るにはベイニティック・フェライトを主相とする組織にすることが必要であり、その面積率は実施例にて示すように80%以上、好ましくは90%以上であることが望ましい。また残部はベイナイト相、およびポリゴナル・フェライト相を20%以下含有することができ、マルテンサイト相が含まれることは極力避けることが望ましい。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
(実施例1)
表1に化学成分を示す鋼のスラブを複数製造した。これらのスラブを、同じ鋼を2本一組として用い、1250℃に再加熱後、粗圧延しエンドレス圧延に供した。粗バーはコイルボックスと呼ばれる装置にて巻き取られ、その後巻き戻され、先行粗バーの後端と後行粗バーの先端を剪断調整し、付き合わされた剪断面同士を入熱5.2kJ/cmのレーザーで接合し、仕上圧延機に供給した。仕上圧延機を出た鋼板は冷却帯で冷却され、巻取り機直前の剪断装置で粗バー接合部の前後を取り除くように切断され2本の熱延コイルとして巻き取られた。粗バー巻き取り温度、仕上圧延完了温度、仕上圧延後の冷却速度、および巻取り温度を表2に示す。
【0044】
このようにして得られた鋼板の強度、延性、穴広げ性、化成処理性、および断面組織を調べた。その結果を鋼と条件の組み合わせ毎に表3に示す。これらは同じ鋼の2本のコイルについて行った試験結果を平均したものである。強度と延性は、圧延方向と平行に採取したJIS5号試験片の引張試験により求めた。穴広げ性は、150×150mmの鋼板の中央に開けた直径10mmの打ち抜き穴を60°の円錐パンチで押し広げ、板厚貫通亀裂が生じた時点での穴径D(mm)を測定し、λ=(D−10)/10で求めたλで評価した。また、化成処理性は、鋼板表面に形成させることの出来たリン酸塩皮膜量W(g/m2)で評価した。なお、化成処理は、酸洗、脱脂、水洗した鋼板に懸濁液をスプレーし、余剰分を絞りロールで除去して付着量を一定にした後、ドライヤーで乾燥させる方法で行った。
【0045】
表3から明らかなように、本発明の方法を用いれば、強度、延性、穴広げ性、および化成処理性に優れた鋼板を得ることができる。
【0046】
【表1】
Figure 0003728239
【0047】
【表2】
Figure 0003728239
【0048】
【表3】
Figure 0003728239
【0049】
(実施例2)
質量%で、C:0.05%、Si:0.51%、Mn:1.50%、P:0.021%、S:0.0009%、N:0.0008%、Al:0.03%、Ti:0.3%、Nb:0.03%、Cu:0.94%、Ni:0.51%、Ca:0.0021%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物であるスラブを複数製造した。これらのスラブを1250℃に再加熱後、粗圧延してコイルボックスに供給した。その際、直前までのデスケーリング装置を活用して粗バーを冷却し、粗バー巻取り温度を980〜1200℃の範囲で変化させた。巻取った粗バーを巻戻しつつ仕上圧延機に通した。また比較のために、同様に冷却した後、コイルボックスで巻き取ることなく仕上圧延機に通す圧延も行った。仕上圧延終了温度は、850℃、冷却速度は50℃/秒、巻取り温度は450℃とした。
【0050】
このようにして得られた鋼板の強度、延性、穴広げ性、および化成処理性を調べた。評価方法は実施例1と同じである。その結果、ベイニティック・フェライト相の面積率は何れも80%以上であり、強度、延性、および穴広げ性は粗バー巻取り温度の影響をほとんど受けなかったが、化成処理性は強く影響を受けた。その結果を、粗バー巻取り温度を横軸に取ってFe2 SiO4 を含む酸化膜の厚さとともに図1に示す。図に示すように、粗バー巻取り温度が1150℃を上回る場合には粗バーの巻取り、巻戻しを行っても表面のFe2 SiO4 を含む酸化膜の厚さが5μm以上であり、化成処理性を改善する効果は認められない。
【0051】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、化成処理性、ひいては耐食性と、伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】粗バーの巻取り温度と化成処理性、およびFe2 SiO4 を含む酸化膜の厚さの関係を示すグラフである。粗バーの巻取りを行わずに仕上圧延を行った場合には粗バーがコイルボックス位置を通過する際の温度でプロットした。

Claims (4)

  1. 質量%にて、
    C :0.03〜0.10%、
    Si:0.05〜1.2%、
    Mn:1.0〜2.0%、
    P :0.05%以下、
    S :0.01%以下、
    N :0.005 %以下、
    Al:0.01〜0.05%
    を含有し、更に
    Ti,Nbの一方あるいは双方を
    -0.05≦{Ti+(48/93)×Nb-(48/12)×C-(48/14)×N-(48/32)×S}≦0.2
    となるように含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、表面のFe2 SiO4 を含む酸化膜の厚さが5μm未満であり、かつ断面組織におけるベイニティック・フェライト相の面積率が80〜100%であることを特徴とする耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. 更に、質量%で、
    Cu:0.5〜1.5%、
    Ni:0.2〜0.7%
    を含有することを特徴とする請求項1記載の耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. 更に、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.0025%
    を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、請求項1〜3の何れか1項に記載の化学成分を有する鋼材を1150〜1250℃に加熱して粗圧延した後、1150℃以下の温度においてコイル状に巻取り、巻戻しつつAr3 点〜Ar3 点+100℃で仕上圧延を完了し、更に40℃/秒以上の平均冷却速度で300〜500℃まで冷却し、300〜500℃で巻き取ることを特徴とする耐食性と伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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