JP3727921B2 - マイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法 - Google Patents

マイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光透過窓取り付け開口を有する窓取り付け部材には前記開口を光透過窓で封止するためのOリングを具えた光透過窓を収納する空間と、放電管を内包する空間から成っているマイクロ波励起水素紫外光ランプにおける光学特性回復方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明が適用されるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成およびその動作について図8に基づいて説明する。この装置は、文献「James A. R. Samson著、Techniques of VACUUM ULTRAVIOLET SPECTROSCOPY、Pied Publications, Lincoln, Nebraska, 1967、p. 159、Fig. 5.56」(刊行物1)に記載されている。
マイクロ波共振器4は円筒形状の導体の両端を同じ材質の導体で封じた構造を有する。円筒の内径と長さはマイクロ波の周波数、マイクロ波共振器内部に励起したい電磁界分布によって決める。
【0003】
マイクロ波共振器内部のマイクロ波電磁界分布を調整するためのマイクロ波共振器の構成要素の一つであるマイクロ波共振器チューナ18は円筒形状であり、放電管1を内包できる内径を有する。更に、マイクロ波共振器4の端面から中心軸を一致させて軸方向に挿入されていて、マイクロ波共振器4と電気的導通を保ちながら軸方向に摺動可能な構造となっている。チューナ18の材質はマイクロ波共振器4と同じで銅若しくは真鍮によって形成されている。該チューナ18の有するマイクロ波電磁界分布を調整する機能は、放電プラズマ7を生成させながら挿入深さを調整して、マイクロ波集中部6を目的の位置に生成させるということにある。
【0004】
そして前記マイクロ波共振器4の両端面を貫通するように、放電管1が設置されている。一般的には、電界が最も大きくなるマイクロ波共振器4の中心軸上に放電管1の中心軸を一致させるが、これに限ることはない。放電管1の断面形状は丸形、角形等特に問わない。
放電管1の機能は真空境界であること、放電ガスの流路であること、放電プラズマを生成する空間であることであり、図8の例では、放電プラズマを生成させる空間を限定するために、放電管1に沿ってマイクロ波共振器4端面からマイクロ波共振器内部に向けて導体の内筒を伸ばしている。従って、マイクロ波共振器チューナ18の端と前記内筒の端に挟まれた空間で放電プラズマ7が生成される。
【0005】
マイクロ波共振器4にはマイクロ波を供給するマイクロ波供給コネクタ5が接続されている。コネクタ形状は同軸型、導波管型何れでも構わない。同軸型コネクタへの供給伝送路は同軸ケーブル、同軸管どちらを用いても構わない。
【0006】
マイクロ波共振器チューナー18側の放電管1端には、当該ランプを利用する箇所に固定するためのフランジ17がOリング13を介して取り付けられている。前記フランジ17の中心には、放電管1の内径相当の開口が設けられており、放電プラズマ7からの発光を放電管1軸方向に取り出すことができるようになっている。
前記フランジ17の開口部には光透過窓8が設けられていて、2つの機能を有する。一つ目は放電管1内と大気の真空境界であり、二つ目は放電プラズマ7からの発光を真空外へ取出すことである。
以上のようなマイクロ波共振器についてはE.L.Ginzton著 「Microwave Measurements", McGraw−Hill, New York 1957」(刊行物2)にも詳しく述べられている。
【0007】
このような放電ランプにおいては、次のような問題点があるが、その前にここで本発明で説明する用語の定義を確認しておく。
真空紫外域とは0.2〜200nmの波長範囲とし、この波長範囲の光を、紫外光、特に真空紫外光と呼ぶことにする。普通紫外域とは200〜380nmの波長範囲とする。(「物理学辞典」培風館、「理科年表」国立天文台)。
【0008】
図8において、光透過窓の面について、ランプの放電プラズマ7に向いた面、これを内側表面10と呼び、反対側の面、これを外側表面11と呼んで区別することにする。
放電プラズマ7で発生した光、特に紫外光、さらに真空紫外光は光透過窓の内側表面10から透過窓8に入射し、透過窓8の内部を通過して、光透過窓8の外側表面11から出射し、目的とする用途に使用される。
ここで、紫外光、特に真空紫外光の使用を目的とする場合、大気中においては、酸素、二酸化炭素、水蒸気等による吸収が著しいため、通常は、図8のフランジ17の左側の領域は真空状態に保つ機構とするのが一般的である。この真空に保つ領域を真空領域14と以後呼ぶ。
【0009】
真空状態に保つ機構としては、各種の真空ポンプを使用するのが一般的である。真空ポンプは、ドライポンプのようにオイルフリー(有機ガスの放出がほとんどないと見なせる)な種類もあるが、最も一般的なロータリーポンプなどは、使用しているオイルの蒸気圧の有機ガスの雰囲気で真空領域14を満たしてしまう。
【0010】
また、真空領域14は、ステンレス容器やアルミ容器などの金属製部品および、Oリングなどのゴム製のシール材料で密閉された空間となっており、真空領域14の内部には、それぞれ目的に応じて、分光用途であれば、サンプル、レンズ、回折素子、ミラー、フィルター、透過窓、位置調整用のステージ類といった光学素子が配置されていたり、紫外光照射による表面処理のような用途であれば、処理対象であるワークおよびステージ等の調整機構、保持機構が配置されている。理想的には、以上述べた真空領域14に接する部材、すなわち、ステンレス容器、アルミ容器、Oリングなどシール材料、光学素子や、ワーク、調整機構等は、オイルフリー(自ら有機ガスを放出することがほとんどないと見なせる)であることが望ましい。
【0011】 削除
【0012】
しかし、例えば、駆動機構を有する物品の潤滑油、ワーク自体の汚染、Oリングからの脱ガス、樹脂物品からの脱ガス、物品の脱脂洗浄が不充分であるとか、さらに人為的なミスによる物品の汚染等に起因する真空領域14への有機ガスの放出現象が実際には避け難いものである。
従って、現実には、前記真空領域14には有機ガスの雰囲気が存在すると考えなければならない。
【0013】
真空領域14に存在する有機ガスは、ある確率で、光透過窓8の外側表面11に吸着する。これは光透過窓の材質や、有機ガス種により、吸着の確率はさまざまであるが、吸着する現象が生じること自体は不可避である。
有機ガスが表面11に吸着した際に、同時に、プラズマで発生した紫外光、特に真空紫外光が有機ガスに照射されると、有機ガス分子は直接励起されて、活性な状態となり、有機ガスの構成元素である水素が引き抜かれる反応、すなわち脱水素化反応が生じ、最後には、吸着していた有機ガスはカーボン(グラファイト)にまで変化する。この状態に到ると、もはやガスではなく、固体であるため、光透過窓8の表面11に堆積された状況で固定化されてしまう。堆積されたカーボンにはさらに新たな有機ガスが吸着し、紫外光、特に真空紫外光の照射により、やはりカーボンに変質して、堆積していく。このような過程が進行すると、次第に、光透過窓8の表面11にはカーボンの被膜が形成されていくことになる。カーボンは黒色であり、あらゆる波長の光に対して吸収を有するため、カーボンが表面11に堆積していく現象が進行することは、すなわち光透過窓8の光透過率が次第に減少していくことを意味している。
【0014】
ここでは、説明を容易にするために、有機ガスとして、炭化水素ガスを念頭に置き、脱水素化反応によりグラファイトに変化する反応だけを述べたが、実際の有機ガスには炭化水素ガス以外にも、酸素、窒素、イオウ、フッ素、塩素など炭素と水素以外の元素を含んだ有機ガスも含まれていて、炭化水素ガスと同様に、光透過窓8の表面11に吸着し、紫外光、特に真空紫外光の照射により脱水素化反応が生じて、変化していくが、ガス化しないで残留する成分も残るので、厳密にはグラファイトには到らずに、炭素を主成分としたアモルファス状の不定形の固体になる。本発明においては、これらの炭素を主成分とした固体もカーボンと表記して、説明を続けることにする。
【0015】
このカーボンの堆積現象は、要因として、有機ガスの吸着と、紫外光、特に真空紫外光の照射が同時に存在する必要がある。カーボンの堆積が進行して、表面11に堆積したカーボンの表面から出射される紫外光、特に真空紫外光の強度が充分に低下して、実質的に強度がないような状況にまで、カーボンの堆積が進行すると、もはや新たな脱水素化反応は生じることがないため、カーボン被膜の堆積はストップする。したがって、この現象は無限に厚くカーボン被膜が成長するのではなく、有限厚みで止まる現象である。
【0016】
前記光透過窓の表面11におけるカーボン堆積現象は通常急峻に進行するものではないが、長い期間で見れば、光透過窓の透過率の低下という問題があり、分光用途であれば、光源光量の低下、ドリフトという精度に影響を与える要因となるし、紫外光照射による表面処理のような用途であれば、照射強度の低下に伴う処理不足という問題が発生する。
このようなカーボン堆積現象に対する対策としては、真空領域14のオイルレス化を計ることであるが、一旦、有機物質で汚染してしまった真空領域14のクリーニングは極めて困難な作業である。したがって、通常の対策としては、透過率が低下した光透過窓8の表面11に堆積しているカーボンを何らかの洗浄方法や研磨などの方法によって除去して、光透過窓8の透過率を初期状態に回復させるか、あるいは、新しい光透過窓8に交換することが行なわれている。
【0017】
従来は、このような光透過窓8の透過率の低下、すなわち劣化がランプの寿命を決めていた。寿命が来たランプの光透過窓8は、表面11に堆積したカーボン被膜を除去したり、光透過窓8を交換して透過率を回復させる必要があったが、光透過窓8のクリーニングや交換には真空領域14やランプの真空を破る必要があり、これには数時間の手作業が必要で、その間ランプが利用できないという問題があった。
【0018】
次にカーボン付着による透過窓の劣化の対策についての公知例を以下に述べる。
特開2001−319618号公報(特許文献1)に開示されている技術内容について説明する。
この例では光源は水銀ランプである。水銀を放電管内部に導入する際に、ランプ寿命を長くする目的でハロゲンも封入するが、ハロゲンは有機ハロゲン化物として封入されている。したがって、有機物質が放電間内部に持ち込まれてしまう。次にランプ動作中に、有機物質は、分解されて、炭素を主とする有機物の薄膜が放電管の内壁に付着する。内壁は光透過窓の機能も有しているため、内壁付着物はランプ光量の低下を招くという問題がある。その対策として、当該公報においては、あらかじめ光透過窓として機能させない領域、すなわちランプ周辺部のデッドスペースに、動作中に付着するであろう炭素薄膜を強制的に付着させ、その後の通常動作の際には、炭素薄膜の付着が発生しないような出荷前の処理を施している。この技術によれば、有機物質の発生量が有限であり、ランプ使用中には新たに発生しない環境であれば、有効な対策と考えられる。
しかしながら、前述の真空領域14のように、大気開放と真空排気を繰り返して使用するような装置(例えば、分光用途であれば、サンプルの交換、光学素子の調整、表面処理ならばワークの交換などの作業には、大気開放が必要)に対して、組み立て調整後にいっさい有機汚染を発生させないというスペックを設定しても、実際に成立することは稀であり、光透過窓8の劣化は避け難いであろうと思われる。
【0019】
更に特開2001−293442号公報(特許文献2)において、(1)光学素子を有機溶剤で洗浄する工程と、(2)該光学素子を酸素を含む雰囲気中で紫外光を照射して洗浄する工程と、(3)該光学素子を加熱して洗浄する工程とを少なくとも有する光学素子の洗浄方法が提案されているが、かかる技術も光学素子表面の吸着有機物を除去する洗浄方法に関するもので、表面に堆積したカーボン被膜を除去するものでなく、目的が異なるのみならず、真空下におかれている光透過窓等の光学素子のクリーニングには真空を破る必要があるという問題解決にはつながらない。
【0020】
更に本発明に類似する技術として特開2002−219429公報(特許文献3)があげられる。
かかる技術は、ガラス基板、合成樹脂基板、セラミック基板、金属基板、それらの1または複数の複合基板において基板の表面における洗浄等の処理精度及び処理効率を向上させることを目的として、水蒸気を含んだ加湿化ガス雰囲気中で基板の表面を湿潤化させ、次いで不活性ガスと水蒸気とを混合した加湿化ガスよりも水蒸気濃度の低い加湿化不活性ガス雰囲気下で前記基板表面に紫外光を照射して、前記基板の表面に付着する有機物を分解させ、かつ還元性の活性種[H・]及び酸化性の活性種[・OH]を生成させ、これら活性種[H・],活性種[・OH]を有機物の分解生成物と反応させることを特徴とするものである。
【0021】
かかる先行技術も表面に堆積したカーボン被膜を除去するものでなく、基板の表面に付着する有機物を分解させて低分子化を図るもので、特に基板表面に紫外光を照射して、洗浄,エッチング等の処理を行う紫外光照射による基板処理装置を対象としているために、目的が異なるのみならず、基板の表面を湿潤化させるという条件があるために、水が反応条件下で液体であるという条件が前提となっており、結果として常圧に近い雰囲気でしか対応できず、真空下におかれている光透過窓等の光学素子のクリーニングは出来ず、真空を破る必要があるという問題解決にはつながらない。
【0022】
【特許文献1】
特開2001−319618号公報
【特許文献1】
特開2001−293442号公報
【特許文献3】
特開2002−219429公報
【非特許文献1】
James A. R. Samson著、Techniques of VACUUM ULTRAVIOLET SPECTROSCOPY、Pied Publications, Lincoln, Nebraska, 1967、p. 159、Fig. 5.56」
【非特許文献2】
E.L.Ginzton著 「Microwave Measurements", McGraw−Hill, New York 1957」
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
ここまでの説明は光透過窓8の表面11に限定して現象の説明を試みてきたが、このようなカーボン堆積現象は光透過窓8の表面11にだけ発生する現象ではない。
真空領域14に配置され、光透過窓8からの出力光である紫外光、特に真空紫外光が照射される物品の表面には、常にこのカーボン堆積現象が発生し得る。これは、有機ガスの存在と紫外光、特に真空紫外光の照射という2つの要因が成立している環境であれば、避けられない現象であるからである。ここで説明する物品としては、例えば、分光用途であれば、光路を切り替えるミラーであったり、分光手段であるフィルターや回折素子、集光するためのレンズなど、表面処理用途であれば、集光するためのレンズや、分光するためのフィルターなど、あらゆる光学素子が該当する。以後、これらの物品を総称して光学素子と呼ぶことにする。これらの光学素子にカーボンが堆積すると、光透過率の低下や光反射率の低下といった重大な問題を招き、事実上、真空領域14において目的としていた装置機能が低下、あるいは失われてしまう。
このような状況に対する対策としては、光透過率や光反射率の低下した光学素子の交換といった手作業が必要になるが、これはメンテナンスコストがかかる問題と、メンテナンスの期間は装置が使用できないという問題が発生する。
【0024】
上記のような光透過窓8の劣化によるランプ寿命の問題は、本例で示したマイクロ波励起水素紫外光ランプだけでなく、放電ガスがHe、Ne、Ar、Kr、Xe、O、N、D(重水素分子)、Hgなどのランプや、放電形態が高周波放電、アーク放電、グロー放電、誘電体バリヤ放電、フラッシュ放電のランプや、発光形態が放電でなくフィラメントに電流を流して加熱し発光させるハロゲンランプやカーボンランプなど各種のランプでも同様に生じている。
【0025】
本発明は、かかる従来技術の欠点に鑑み、光透過窓取り付け開口を有する窓取り付け部材には前記開口を光透過窓で封止するためのOリングを具えた光透過窓を収納する空間と、放電管を内包する空間から成っているマイクロ波励起水素紫外光ランプにおける光学特性回復方法とその装置に係り、特に前記装置の寿命を決めていた光透過窓の劣化を防止、あるいは抑制し、これにより窓交換等のメインテナンス作業頻度や作業コストの低減を図った発明の提供を目的とする。
より具体的には、光透過窓の表面に堆積するカーボンによる透過率の低下を防止あるいは抑制することで、該光透過窓の劣化を防止、あるいは抑制し、これにより光透過窓の交換等のメインテナンス作業頻度や作業コストの低減を図ったマイクロ波励起水素紫外光ランプおよびその使用方法の提供を目的とする。
さらに、真空領域の光路上における光透過窓におけるカーボンの堆積を防止、あるいは抑制することで、後段の装置の寿命を伸ばしたり、装置の信頼度を向上させることが可能な発明の提供を目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者は次のような検討を重ねた。
先ず光透過窓8の劣化について詳細な分析を行なった。
実験に用いた装置は、図8に示した装置において、光透過窓8をOリングを介して、フランジ17のプラズマに曝される面に取り付けたものである。分析は、光透過窓8の表面11、すなわち、真空領域14に面し、紫外光が出射する面について実施した。反対側の表面10には、特に堆積物は認められなかったので、詳細な分析は行なっていない。
光透過窓8としては、MgF(フッ化マグネシウム)単結晶を用い、結晶軸(c軸)が透過窓の面に垂直な方向とした。結晶サイズは、0.5インチΦ×1mmtである。結晶は、応用光研工業株式会社のUVグレード品を用いた。結晶は同一ロット品を複数用意し、結晶品質、表面状態が揃った結晶を用いて、ランプ使用前後の結晶の分析に供し、ロットのバラツキによる誤差要因を極力排除するようにした。
【0027】
実験過程は、まず、光学顕微鏡により光透過窓8の表面11の観察を行なったところ、紫外光が透過していた中央Φ8mmの領域内に、膜状の物質が付着している様子が観察された。プラスチック製のピンセットで表面11を擦ったところ、付着物質を削り取ることができ、弱い結合力で膜状の物質が表面11に付着していることが分った。
【0028】
そこで、次に付着物質の元素分析を行なった。
EPMA(電子線プローブX線マイクロアナライザ)を用いて、光透過窓8の表面11の元素分析を行なった。(使用装置;日本電子 JXA−8200、分析条件;加速電圧15kV、照射電流5E−8A、測定法;定性分析、ライン分析、マッピング分析)
EPMA分析の結果、光透過窓8の表面11において、紫外光が透過している中央Φ8mmの領域において、有意のカーボンが検出された。光透過窓の中央Φ8mmの外側の円環状の領域は、フランジ17の影になっていて、紫外光が透過していない領域であるが、この円環状の領域においては、EPMA分析におけるコンタミレベルのカーボンが検出されるのみであり、実質的には有意のカーボンが付着していないことが分った。ここでEPMA分析におけるコンタミレベルとは、完全に清浄な表面を分析する際にも、カーボンとして検出されてしまう微弱な信号レベルを指し、清浄な表面に電子線を照射する行為で、不可避にカーボンを付着させてしまい、その付着したカーボンに基づく信号レベルのことである。従って、EPMA分析におけるカーボンに関する測定限界はその分析装置のコンタミレベルで決まる。紫外光が透過している中央Φ8mmの領域におけるカーボンの信号レベルはコンタミレベルと較べて有意なレベルであり、光透過窓の表面11には、カーボンが膜状に堆積していることが確認できた。
【0029】
カーボンが付着するメカニズムについては、すでに述べたとおりであり、図8に示す実験装置において、真空領域14には有機ガスが存在していて、光透過窓8の表面11に有機ガスが吸着した際に、光透過窓8を透過してきた真空紫外光が照射され、有機ガスが脱水素化反応によって、カーボンに変化し、表面11上にカーボンが堆積する。
光透過窓8を前述の環境で使用し続けると、カーボンの堆積が進行し、透過率が経時的に減少し続けることになる。
したがって、光透過窓8の透過率を初期状態から低下させないためには、表面11に堆積するカーボンを、除去する機構が必要であることが分った。
光透過窓の劣化の主因が表面11に堆積する膜状のカーボンであることが分ったので、発明者はその対策について研究を行い、下記に記載される本発明を完成させた。
【0030】
発明者は以下のように考え、実験的に確かめた。
カーボンの原料に相当するのは有機ガスであるが、この物質を根絶することは実質上は不可能である。次に真空紫外光が照射されなければ、脱水素化反応は生じないが、それではマイクロ波励起水素紫外光ランプとしての機能が果たせない。カーボンが付着する部位は真空紫外光が照射されている部位と完全に一致する。真空紫外光は有機ガスを直接励起して、脱水素反応を生じさせるが、この高いフォトンエネルギーは有機ガスに限らず、多くの分子を直接励起して活性な状態にすることができる。
例えば図1を参照して、本実施例で述べるマイクロ波励起水素紫外光ランプは水素の発光線である波長122nmの真空紫外光を出力できるが、この真空紫外光のフォトンエネルギーは10.2eVである。このフォトンエネルギーは、酸素ガスやHOガス(水蒸気)を励起して、強い酸化力を有するラジカルを生成することができる。真空領域14を真空に保つ理由は、大気成分である酸素、二酸化炭素、水蒸気などが真空紫外光を吸収し、減衰させてしまうからである。したがって、吸収媒質である大気成分を真空ポンプ等で系外に排出して、真空領域14を実現している。
【0031】
しかしながら、大気成分といえども、O若しくは水蒸気等を含有している為、その濃度を適切に調整(減圧)することにより、真空紫外光を極端に減衰させることなく、酸化力を有するラジカルを発生させることができることが分った。このような濃度を調整した大気成分の共存下で、マイクロ波励起水素紫外光ランプを運転し、後段である真空領域14の機能を稼動させた場合、従来問題となっていた光透過窓8の表面11に付着するカーボンは除去することができた。したがって、光透過窓の透過率が低下するという劣化を防止できたことになる。さらに、真空領域14に配置される光学素子の表面に付着するカーボンも除去することができた。カーボンが除去されたことは、EPMA分析を用いて確認できた。このようにカーボンが除去できるのは、光透過窓8の表面11上では、カーボンの付着とラジカルによるカーボンの分解除去が同時に進行していて、ラジカルによる分解除去速度がカーボン付着速度を上回っているためである。
ラジカルによる分解反応によってカーボンは二酸化炭素、水蒸気といった揮発性の分子に変化するため、真空ポンプによって速やかに系外に排出されている。なお、ここで生成するラジカルとは、酸素分子が励起されて生成する原子状酸素、およびオゾン、水蒸気が励起されて生成するOHラジカルなどを指す。
【0032】
さらに、このような濃度を調整した大気成分の共存下で、光透過窓8の表面11にあらかじめカーボンが堆積している状態で、マイクロ波励起水素紫外光ランプを運転したところ、次第にカーボンの分解除去が進行し、最終的には完全にカーボンが除去された状態、透過率が初期状態に回復した光透過窓8が実現できた。このとき、併せて、後段である真空領域14の機能を稼動させないで、すでにカーボンが付着している光学素子を配置したまま、マイクロ波励起水素紫外光ランプを運転したところ、真空領域14に配置された光学素子の表面に付着していたカーボンも除去することができた。
【0033】
したがって、本発明の知見を用いることで、マイクロ波励起水素紫外光ランプの透過窓の劣化を防止して、マイクロ波励起水素紫外光ランプの出力光強度を低下させないようにすることができ、光透過窓の交換に伴うメンテナンスコストや装置稼働率低下を改善することができるばかりでなく、すでにカーボンが付着してしまっている光透過窓8をマイクロ波励起水素紫外光ランプを運転することで、カーボンを除去して初期状態に回復させることができ、真空領域14の機能を回復させることができるので、真空領域14の機能を維持するためのメンテナンスコストの低減や、メンテナンス頻度を低くすることができる。
【0034】
次に、真空領域14を大気成分の雰囲気で濃度調節する方法について以下説明する。
供給するガスは、酸素ボンベに充填された純酸素ガスが利用できる。大気を吸引して供給してもよい。あるいは、工場に敷設済のエアラインを用いてもよい。乾燥空気を充填したガスボンベを用いてもよい。酸素と不活性ガス、例えば、アルゴン、ヘリウムなどのガスとの混合ガスを充填したガスボンベを用いてもよい。供給するガスの圧力と後述の実施例で説明するバルブの開度、ポンプの排気能力によって真空領域14におけるガスの分圧を制御することができる。
【0035】
上記で説明したガスにさらに水蒸気を加えたガスを用いても良いし、水蒸気だけを用いてもよい。水蒸気の加え方としては、水を封入した容器を用意して、容器の一部を飽和水蒸気で満たし、この水蒸気を、上記で説明したガスと混ぜるか、単独で、真空領域14に導けばよい。水の温度は室温でもよいし、冷却、あるいは加温してもよい。水の温度に依存して飽和水蒸気圧が変わるが、この値と後述の実施例で説明するバルブの開度、ポンプの排気能力によって真空領域14における水蒸気の分圧を制御することができる。
【0036】
真空領域14における上記のガスの分圧は、以下の条件で決めることができる。
ガスの分圧の上限値は、そのガスによる真空紫外光の吸収が目的とする機能を著しく阻害しない分圧で決まる。例えば、具体的には、酸素ガスならば、10mtorrのオーダー(20mtorr未満)が実質的な上限値になる。この分圧レベルを超えると、酸素ガスによる真空紫外光の吸収が無視できないレベルになり、真空領域14で目的としている機能に障害を与えるからである。しかしながら、真空領域14における光路の長さが充分に短ければ、酸素ガスによる吸収が無視できるようになるので、上限値は大きくなる。この上限値の正確な設定は、実際に真空領域14を所定の分圧のガスで満たし、目的とする機能の障害になっているかどうかを調べればよい。具体的には、光路における真空紫外光の光量を計測し、減衰のレベルを調べればよい。
【0037】
ガスの分圧の下限値は、負荷に対して、処理能力が上回るように設定すればよい。
ここで、負荷とは、真空領域14に存在する有機ガスの種類および濃度と、光透過窓8を透過する真空紫外光9の波長および強度で決まる光透過窓8の表面11に堆積するカーボンの堆積速度を指す。
処理能力とは、ガスが真空紫外光によって励起されて生成するラジカルによるカーボンの分解除去速度を指す。
【0038】
本発明者の実験によると、あらゆる真空領域14で想定されるケースについては不可知ではあるが、例えば、通常のターボ分子ポンプとドライポンプの排気系により実現させた真空領域14であれば、例えば、酸素ガスの場合で、0.02〜0.1mtorrが実質的な下限値である。このレベルの酸素ガスがあれば、負荷に対して充分な処理能力を発揮することができる。水蒸気については、酸素ガスよりも処理能力が相対的に高いことが分り、実質的な下限値は0.005〜0.01mtorrのオーダーとしてよい。
この下限値の正確な設定は、実際に真空領域14を所定の分圧のガスで満たして、マイクロ波励起水素紫外光ランプを運転し、光透過窓8の表面11の付着物を分析すればよい。分析の方法としては、光学顕微鏡による観察、およびEPMAによるカーボンの分析が好適である。分析の結果、有意のカーボンの付着が認められなければ、そのときのガス分圧で、充分にカーボンの分解除去処理が行なわれていたことを確認することができる。
【0039】
そこで、本発明はかかる着目点に基づいて、下記のごとき技術手段を提案する。
即ち、本発明は光透過窓取り付け開口を有する窓取り付け部材には前記開口を光透過窓で封止するためのOリングを具えた光透過窓を収納する空間と、放電管を内包する空間から成っているマイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法であって、
前記光透過窓を収納する空間を、カーボンの酸化反応が励起される活性エネルギ存在下の略真空空間を生成し、該略真空空間にマイナスイオンまたはラジカルを発生させ、該マイナスイオンまたはラジカルとカーボンの反応により前記光射面に付着若しくは堆積したカーボンの除去若しくは低減を行うことを特徴とし、具体的には前記略真空空間に水性ガス若しくは酸化ガス等の酸素原子含有ガスを流しながら、活性エネルギを供給し、前記光射面に付着若しくは堆積したカーボンの除去若しくは低減を行うことを特徴とする。
【0040】
ここで略真空空間とは、炭化水素等の有機成分より水素が脱離して分解されたカーボンが活性エネルギ存在下で酸化反応が励起される真空空間をさし、前記活性エネルギの強度や前記酸素原子含有ガスの酸化力によって変動し、必ずしも具体的な数値を引き出すのは難しいが、数十mtorr(ミリトール)以下の真空空間であることは間違いがない。
【0041】 削除
【0042】 削除
【0043】
又前記光路を形成するビームは、380nm以下の波長を有する普通紫外光若しくは200nm以下の波長を有する真空紫外光の場合に効果的に適用され、この場合紫外光を出力若しくはその光路上に配設してなる光透過窓が、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化アルミニウム、クライオライト、チオライト等のフッ化物、フッ化ランタン、フッ化ガドリニウム、フッ化ネオジミウム、フッ化イットリウム等の金属フッ化物、また、合成石英ガラスやサファイア等の高純度酸化物若しくはこれらを組み合わせた複合体で形成する光学材料に有効である。
【0044】
又前記光透過窓と対面する略真空空間に有機成分より分解されたカーボンが増殖中である場合に、前記略真空空間に供給される酸素原子含有ガスの分圧の下限値は、前記光射面へのカーボンの堆積速度以上に設定するのがよく、更に前記光透過窓に真空紫外光が照射若しくは該光透過窓より真空紫外光が照射されている状態で、前記光透過窓の光学特性を回復させる場合に、前記略真空空間に供給される酸素原子含有ガスの分圧の上限値を、該酸素原子含有ガスによる真空紫外光の吸収が、真空領域での目的としている機能に無視できないレベル以下に設定するのがよい。
そしてこのような酸素原子含有ガスの分圧の上限値の設定は、実際に前記真空領域を所定の分圧の酸素原子含有ガスで満たし、前記光路における真空紫外光の光量を計測し、減衰のレベルを調べて設定するのがよい。
即ち請求項3記載の発明は、有機成分が分解可能なほぼ真空領域にある出力光若しくはその光路上に配設してなる光透過窓の、前記真空領域と対面する光入射面、光反射面、光出射面(これらを含めて光射面という)上に付着若しくは堆積されたカーボンに起因して生じる前記光透過窓の光学特性の劣化防止、抑制あるいは向上させて前記光学特性の信頼度若しくは寿命を向上させる光学特性回復方法であって、
前記光透過窓の光射面と対面する側に、カーボンの酸化反応が励起される活性エネルギ存在下の略真空空間を生成し、該略真空空間に水性ガス若しくは酸化ガス等の酸素原子含有ガスを流しながら、活性エネルギを供給し、前記光射面に付着若しくは堆積したカーボンの除去若しくは低減を行う際に、前記略真空空間に供給される酸素原子含有ガスの分圧の下限値が、前記光射面へのカーボンの堆積速度以上であり且つ前記略真空空間に供給される酸素原子含有ガスの分圧の上限値を、該酸素原子含有ガスによる真空紫外光の吸収が、前記真空領域での目的としている機能に無視できないレベル以下に設定したことを特徴とし、具体的には前記酸素原子含有ガスの分圧の上限値の設定が、実際に前記真空領域を所定の分圧の酸素原子含有ガスで満たし、前記光路における真空紫外光の光量を計測し、減衰のレベルを調べて設定することを特徴とする。
【0045】
そしてこのようなガスの分圧の下限〜上限の範囲は、前記酸素原子含有ガスが酸素ガスである場合に、0.02mtorr〜20mtorr(好ましくは0.02mtorr〜10mtorr)の範囲に、又水蒸気である場合には0.01mtorr〜10mtorr(好ましくは0.01mtorr〜1mtorr)の範囲に設定するのがよい。
【0046】
又前記光路を形成するビームはフォトンエネルギーが高く且つ安定している真空紫外光波長域における特定波長ビームの場合に本発明は有効である。
即ち、前記活性エネルギがフォトンエネルギーの高い真空紫外光であれば酸素原子含有ガスよりマイナスイオンまたはラジカルを生成させるための別異(例えば発熱エネルギ、プラズマエネルギ、電気エネルギ等)のエネルギが不要である。又特許文献3でもOH、O等の活性種を用いているが[0021]で記載したようにクリーニング対象で条件圧も異なる。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好適な実施形態として、光透過窓8の表面11へのカーボン付着の抑制、あるいは除去をガスの供給と真空紫外光の照射により行なった好適な実施例について図面に基づいて説明する。さらに、真空領域14に配置される光学素子へのカーボン付着の抑制、あるいは除去をガスの供給と真空紫外光の照射により行なった好適な実施例について図面に基づいて説明する
【0048】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成を示す説明図である。
光透過窓8の窓取り付け部材(フランジ)17は、円盤形状であり、その中心は放電管1の中心軸と一致し、その径が放電管内径以上である開口を有する。窓取り付け部材17には前記開口を光透過窓8で封止するためのOリング溝と、窓取り付け部材17を真空を保ちながら放電管1に接続するための中空蓋状の冶具20を固定するボルト穴及びOリング溝が設けられている。
冶具20の内面構造は同心中空円2段構造になっており、光透過窓8を収納する空間と、放電管1を内包する空間から成っている。放電管1を内包する側の端面は、Oリング13を収めるようにOリング13を押圧するリング径相当の面取りが斜めカット状に施されている。更に、この端部の外周面には不図示のネジが切ってあり、円筒開口状のキャップ21を締め込むことによってOリング13を圧着し、放電管1に繋がる真空境界を形成している。窓取り付け部材17、冶具20、キャップ21の材質は金属であり、一般的には汚染要因の少ないステンレス、アルミニウムを用いるが、これに限らない。
【0049】
以上のように構成されたマイクロ波励起水素紫外光ランプの発光動作について説明する。まず、放電管1に放電ガス供給口2から、ヘリウムで1/100に希釈した水素の放電ガスを20SCCM供給する。放電ガスは放電ガス排出口3から、真空ポンプ(不図示)で排気する。放電ガス排出口3と真空ポンプの間にあるバルブ(不図示)の開度調整によって排気コンダクタンスを調整し、放電管1内を5torr(665Pa)程度に保つ。光透過窓8側から放電管1側へ放電ガスを流す理由は、放電プラズマ7によって放電管1内で生成した物質を該窓8とは反対側へ排気して、該窓8の汚染要因を極力減らすためである。
【0050】
次に、マイクロ波共振器4にマイクロ波供給コネクタ5から2.45GHz、50Wのマイクロ波を供給する。マイクロ波の供給は連続的でも間欠的でも構わない。マイクロ波電源とマイクロ波共振器4を接続する電力伝送路の途中に組み込む整合器(図示せず)を調整することにより、電源と負荷(放電プラズマ)間のマイクロ波電力整合を取りながら、放電管1内に放電プラズマ7を生じさせる。放電プラズマ7によって励起された水素原子からは真空紫外域の波長103nmと122nmとの輝線が放射される。光透過窓8の材質としては、後述するMgFを用いたため、波長103nmの輝線はMgFに吸収され、波長122nmの真空紫外光のみが、ランプ出射光(真空紫外線)9として、真空領域14に出力される。
ここで、フランジ17の光透過窓8の取り付け部の開口はΦ8mmとなっており、ランプ出射光9は、Φ8mmの光束として、真空領域14に出力されている。
【0051】
光透過窓8としては、MgF(フッ化マグネシウム)単結晶を用い、結晶軸(c軸)が透過窓の面に垂直な方向とした。結晶サイズは、0.5インチΦ(12.7mmΦ)×1mmtである。結晶は、応用光研工業株式会社のUVグレード品を用いた。結晶は同一ロット品を複数用意し、結晶品質、表面状態が揃った結晶を用いて、保護膜の効果だけを検証できるように、ロットのバラツキによる誤差要因を極力排除するようにした。
又、該ランプの出力光量をモニターするためにランプ出射光9を受光するようにフォトダイオード12を設置した。
【0052】
真空領域14には、以下の方法により酸素ガスを供給し、所定のガス分圧となるように調整した。
純酸素(純度4N)を充填した酸素ガスボンベ23(日本酸素株式会社製)にレギュレータ22を接続して、ガス圧を0.1kg/cmに調整した後、配管16cを経由して、バリアブルリークバルブ19で開度を調節後に、大気側の配管16b、さらに、シール機構(図示せず)を経由して、真空領域14内の配管16aから酸素ガスを真空領域14に供給した。供給量はおおよそ1sccm程度である。真空領域14は、ターボ分子ポンプ(排気速度50L/min;三菱重工業製TP−50、図示せず)、後段にドライポンプ(図示せず)を接続して排気しており、この場合、真空領域の酸素ガス分圧は1mtorr(1ミリトール)でバランスした。したがって、真空領域14の酸素ガスの分圧は少なくとも1mtorrオーダ(10mtorr未満)という条件である。
酸素ガスについては、バルブの開度の調節により、5mtorr、2mtorr、0.1mtorrの場合も実験したが、後述するカーボン除去効果は同等であった。
ここで説明したバリアブルリークバルブは、特別な仕様ではなく、バルブの開度を微調整できる機構であればどのような名称のバルブを使用しても構わない。
【0053】
次に、このように構成したマイクロ波励起水素紫外光ランプの出力光量の経時変化をフォトダイオード12を用いて計測した。
まず、放電プラズマ7によって水素原子を励起し、真空紫外光を90時間(約4日間)発光させた。次にブランクとして、酸素ガスを供給しない条件、すなわち前述のターボ分子ポンプの排気による到達圧力(0.001mtorr)の環境下で同様の試験を実施し、結果を比較した。
この結果、酸素ガスを供給してランプを運転した場合、カーボンの付着に起因する光透過窓8の透過率の低下は観測されなかった。一方、ブランクにおいては、カーボンの付着に起因する光透過窓8の透過率の低下は初期値を100%とすると、透過率は35%低下した。
図1に示すカーボン15は、ブランクにおいて観察されたカーボンの付着の様子を模式的に表しており、酸素ガスを供給してランプを運転した場合には、図1に示すカーボン15は光透過窓8には付着していない。
使用後の光透過窓8の表面11を光学顕微鏡で観察したところ、酸素ガスを供給してランプを運転した場合には、付着物は認められなかったのに対して、ブランクにおいては、真空紫外光が透過していた中央Φ8mmの領域内に、膜状の物質が付着している様子が観察された。プラスチック製のピンセットで表面11を擦ったところ、付着物質を削り取ることができ、弱い結合力で膜状の物質が表面11に付着していることが分った。
【0054】
そこで、次に付着物質の元素分析を行なった。
EPMA(電子線プローブX線マイクロアナライザ)を用いて、光透過窓8の表面11の元素分析を行なった。(使用装置;日本電子 JXA−8200、分析条件;加速電圧15kV、照射電流5E−8A、測定法;定性分析、ライン分析、マッピング分析)ブランクをEPMAで分析した結果、光透過窓8の表面11において、紫外光が透過している中央Φ8mmの領域において、有意のカーボンが検出された。光透過窓の中央Φ8mmの外側の円環状の領域は、フランジ17の影になっていて、紫外光が透過していない領域であるが、この円環状の領域においては、EPMA分析におけるコンタミレベルのカーボンが検出されるのみであり、実質的には有意のカーボンが付着していないことが分った。ここでEPMA分析におけるコンタミレベルとは、完全に清浄な表面を分析する際にも、カーボンとして検出されてしまう微弱な信号レベルを指し、清浄な表面に電子線を照射する行為で、不可避にカーボンを付着させてしまい、その付着したカーボンに基づく信号レベルのことである。従って、EPMA分析におけるカーボンに関する測定限界はその分析装置のコンタミレベルで決まる。紫外光が透過している中央Φ8mmの領域におけるカーボンの信号レベルはコンタミレベルと較べて有意なレベルであり、光透過窓の表面11には、カーボンが膜状に堆積していることが確認できた。
【0055】
EPMAでブランクをライン分析した結果を図7に示す。
図7において、横軸は、単位mmであり、MgF結晶の直径上の分析位置を表し、当該結晶の端から端までをライン分析している。
縦軸は、分光結晶LDE2で検出したカーボンの信号強度を表しており、主な分析条件は図7のグラフの欄外に記載されている。
図7から、紫外光が透過している中央Φ8mmの領域でカーボンの信号強度が有意に高く、中央Φ8mmの領域に膜状に付着している様子がよく分る。
一方、酸素ガスを供給してランプを運転した場合の光透過窓の表面からは、コンタミレベルを超える有意のカーボンの信号を検出することはできなかった。
【0056】
以上、説明したように、酸素ガスを供給してランプを運転することにより、光透過窓8へのカーボンの付着を防止、あるいは抑制できることが確認できた。
この対策により、光透過窓の透過率低下を抑えることができ、窓交換に伴うメンテナンスコスト、メンテナンスによるランプの稼動率低下を抑えることができた。
【0057】 削除
【0058】
(実施の形態2)
図2は、この発明の実施の形態2にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成を示す説明図である。
ランプの構造、動作については、実施例1と同様につき説明を省く。
光透過窓8の仕様については、実施例1と同様につき説明を省く。
又、該ランプの出力光量をモニターするためにランプ出射光9を受光するようにフォトダイオード12を設置した。
【0059】
真空領域14には、以下の方法により水蒸気を供給し、所定のガス分圧となるように調整した。
1mLの水25(蒸留処理とイオン交換処理とフィルター濾過処理を施した純水)を充填したガラス管24(管径Φ6mm)をアダプタ26を介して配管16dに接続する。アダプタ26はガラス管を大気からシールできるようにOリングを内蔵した構造となっている。ガラス管24の内空間は水25の飽和蒸気で満たされるように、あらかじめ大気成分を排気してある。水25は常温(25℃)の環境下にあり、内空間の蒸気圧は24torr(計算値)となっている。この蒸気圧を一次圧として水蒸気は、配管16dを経由して、バリアブルリークバルブ19で開度を調節後に、大気側の配管16b、さらに、シール機構(図示せず)を経由して、真空領域14内の配管16aから真空領域14に供給される。供給量はおおよそ0.1sccm程度である。真空領域14は、ターボ分子ポンプ(排気速度50L/min;三菱重工業製TP−50、図示せず)、後段にドライポンプ(図示せず)を接続して排気しており、この場合、真空領域の水蒸気分圧は0.1mtorr(0.1ミリトール)でバランスした。したがって、真空領域14の水蒸気の分圧は少なくとも0.1mtorrオーダ(1mtorr未満)という条件である。
水蒸気の分圧については、バルブの開度の調節により、1mtorr、0.01mtorrの場合も実験したが、後述するカーボン除去効果は同等であった。
【0060】
次に、このように構成したマイクロ波励起水素紫外光ランプの出力光量の経時変化をフォトダイオード12を用いて計測した。
まず、放電プラズマ7によって水素原子を励起し、真空紫外光を90時間(約4日間)発光させた。次にブランクとして、水蒸気を供給しない条件、すなわち前述のターボ分子ポンプの排気による到達圧力(0.001mtorr)の環境下で同様の試験を実施し、結果を比較した。
この結果、水蒸気を供給してランプを運転した場合、カーボンの付着に起因する光透過窓8の透過率の低下は観測されなかった。一方、ブランクにおいては、カーボンの付着に起因する光透過窓8の透過率の低下は初期値を100%とすると、透過率は35%低下した。
図2に示すカーボン15は、ブランクにおいて観察されたカーボンの付着の様子を模式的に表しており、水蒸気を供給してランプを運転した場合には、図2に示すカーボン15は光透過窓8には付着していない。
【0061】
使用後の光透過窓8の表面11を光学顕微鏡で観察したところ、水蒸気を供給してランプを運転した場合には、付着物は認められなかったのに対して、ブランクにおいては、真空紫外光が透過していた中央Φ8mmの領域内に、膜状の物質が付着している様子が観察された。プラスチック製のピンセットで表面11を擦ったところ、付着物質を削り取ることができ、弱い結合力で膜状の物質が表面11に付着していることが分った。
そこで、次に付着物質の元素分析を行なった。
EPMAによる元素分析の結果は、実施例1で説明した結果と同様であった。
【0062】
以上、説明したように、水蒸気を供給してランプを運転することにより、光透過窓8へのカーボンの付着を防止、あるいは抑制できることが確認できた。
この対策により、光透過窓の透過率低下を抑えることができ、窓交換に伴うメンテナンスコスト、メンテナンスによるランプの稼動率低下を抑えることができた。
【0063】
(実施の形態3)
図3は、この発明の実施の形態3にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成を示す説明図である。
ランプの構造、動作については、実施例1と同様につき説明を省く。
光透過窓8の仕様については、実施例1と同様につき説明を省く。
又、該ランプの出力光量をモニターするためにランプ出射光9を受光するようにフォトダイオード12を設置した。
【0064】
真空領域14には、以下の方法により大気成分を供給し、所定のガス分圧となるように調整した。
大気に対して開放している配管を、バリアブルリークバルブ19で開度を調節後に、大気側の配管16b、さらに、シール機構(図示せず)を経由して、真空領域14内の配管16aから真空領域14に大気成分が供給される。供給量はおおよそ1sccm程度である。真空領域14は、ターボ分子ポンプ(排気速度50L/min;三菱重工業製TP−50、図示せず)、後段にドライポンプ(図示せず)を接続して排気しており、この場合、真空領域の大気成分の分圧は1mtorr(1ミリトール)でバランスした。したがって、真空領域14の大気成分の分圧は1mtorrという条件である(酸素のみでみると0.2mtorr)。
大気成分の分圧については、バルブの開度の調節により、0.1mtorr(酸素のみでみると0.02mtorr)の場合も実験したが、後述するカーボン除去効果は同等であった。
【0065】
次に、このように構成したマイクロ波励起水素紫外光ランプの出力光量の経時変化をフォトダイオード12を用いて計測した。
まず、放電プラズマ7によって水素原子を励起し、真空紫外光を90時間(約4日間)発光させた。次にブランクとして、大気成分を供給しない条件、すなわち前述のターボ分子ポンプの排気による到達圧力(0.001mtorr)の環境下で同様の試験を実施し、結果を比較した。
この結果、大気成分を供給してランプを運転した場合、カーボンの付着に起因する光透過窓8の透過率の低下は観測されなかった。一方、ブランクにおいては、カーボンの付着に起因する光透過窓8の透過率の低下は初期値を100%とすると、透過率は35%低下した。
【0066】
図3に示すカーボン15は、ブランクにおいて観察されたカーボンの付着の様子を模式的に表しており、大気成分を供給してランプを運転した場合には、図3に示すカーボン15は光透過窓8には付着していない。
使用後の光透過窓8の表面11を光学顕微鏡で観察したところ、大気成分を供給してランプを運転した場合には、付着物は認めれなかったのに対して、ブランクにおいては、真空紫外光が透過していた中央Φ8mmの領域内に、膜状の物質が付着している様子が観察された。プラスチック製のピンセットで表面11を擦ったところ、付着物質を削り取ることができ、弱い結合力で膜状の物質が表面11に付着していることが分った。
そこで、次に付着物質の元素分析を行なった。
EPMAによる元素分析の結果は、実施例1で説明した結果と同様であった。
【0067】
以上、説明したように、大気成分を供給してランプを運転することにより、光透過窓8へのカーボンの付着を防止、あるいは抑制できることが確認できた。
この対策により、光透過窓の透過率低下を抑えることができ、窓交換に伴うメンテナンスコスト、メンテナンスによるランプの稼動率低下を抑えることができた。
【0068】
(実施の形態4)
図4は、この発明の実施の形態4にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成および、ランプの出力光を利用して真空領域14に配置される光学素子へのカーボン付着を除去する方法を示す説明図である。
ランプの構造、動作については、実施例1と同様につき説明を省く。
光透過窓8の仕様については、実施例1と同様につき説明を省く。
【0069】
図4には、光学素子27がランプ出射光9が照射される位置に配置されている。光学素子27の両面には、すでにカーボン15が付着していて、これは真空領域14に存在する有機ガスと光学素子27に照射される真空紫外光9が原因である。カーボン15が付着しているため、光学素子27の透過率は低下しており、メンテナンスが必要な状況である。このような状況に光学素子27が到ったのは、真空排気状態で、ランプを運転したからである。
【0070】
光学素子27の一例として、ここでは、真空紫外光用の干渉フィルターを対象とし、カーボンを除去した例を開示する。真空紫外光用の干渉フィルターは、MgF結晶を基板とし、表面に多層の光学フィルムがコーティングされた構成となっている。このような干渉フィルターの構成は、光学部品としては、一般的である。干渉フィルターはこの場合、特定の帯域の波長の光のみを透過させるバンドパスフィルターの機能を有するが、表面にカーボン15が付着すると、干渉フィルターとしての透過率が低下するために、光学素子としての機能が劣化する。したがって、ある段階まで透過率が低下したら、カーボンを除去するクリーニングか、あるいは、新しい部品に交換するメンテナンスが必要になる。一般に、光学フィルムをコーティングした干渉フィルターのようなデリケートな光学素子は洗浄が大変難しいとされている。洗浄することによって、光学フィルムの特性変化や、キズが入る等の不具合が発生しやすいからである。したがって、有効な洗浄方法は実質的には存在せず、部品交換を選択せざる得ないのが実状である。しかしながら、一般に干渉フィルターは高価な部品であり、コストが問題になってくる。実施例4においては、本発明の効果を検証するために、ガスを供給しない状態でランプを運転して、干渉フィルターの透過率が50%に低下するまで待った。(初期値を100%とした)このような処理によって意図的に透過特性を半減させた光学素子27を真空領域14に配置した。
【0071】
真空領域14には、実施例1で説明した方法により、酸素ガスを供給した。
真空領域14の酸素ガスの分圧は1mtorrという条件である。
酸素ガスについては、バルブの開度の調節により、10mtorr、5mtorr、2mtorr、0.1mtorr、0.05mtorrの場合も実験したが、後述するカーボン除去効果は同等であった。
【0072】
次に、放電プラズマ7によって水素原子を励起し、真空紫外光を90時間(約4日間)発光させた。
酸素ガスを供給してランプを運転した場合、カーボン15が付着していた光学素子27の表面からカーボンが除去されて、光学素子27の透過率がほぼ初期状態に回復した。
光学素子27の表面を光学顕微鏡で観察したところ、付着物は認められなかった。
【0073】
以上、説明したように、酸素ガスを供給してランプを運転することにより、カーボン15が付着していた光学素子27をクリーニングすることができた。
この方法により、光学素子の劣化を回復させることができ、光学素子交換に伴うメンテナンスコスト、メンテナンスによるランプの稼動率低下を抑えることができた。
【0074】
(実施の形態5)
図5は、この発明の実施の形態5にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成および、ランプの出力光を利用して真空領域14に配置される光学素子へのカーボン付着を除去する方法を示す説明図である。
ランプの構造、動作については、実施例1と同様につき説明を省く。
光透過窓8の仕様については、実施例1と同様につき説明を省く。
【0075】
図5には、光学素子27がランプ出射光9が照射される位置に配置されている。
光学素子の説明は実施例4と同様につき省略する。
実施例5においては、本発明の効果を検証するために、ガスを供給しない状態でランプを運転して、干渉フィルターの透過率が50%に低下するまで待った。(初期値を100%とした)このような処理によって意図的に透過特性を半減させた光学素子27を真空領域14に配置した。
真空領域14には、実施例2で説明した方法により、水蒸気を供給した。
真空領域14の水蒸気の分圧は0.1mtorrという条件である。
水蒸気については、バルブの開度の調節により、5mtorr、2mtorr、0.01mtorr、0.005mtorrの場合も実験したが、後述するカーボン除去効果は同等であった。
【0076】
次に、放電プラズマ7によって水素原子を励起し、真空紫外光を90時間(約4日間)発光させた。
水蒸気を供給してランプを運転した場合、カーボン15が付着していた光学素子27の表面からカーボンが除去されて、光学素子27の透過率がほぼ初期状態に回復した。
光学素子27の表面を光学顕微鏡で観察したところ、付着物は認められなかった。
【0077】
以上、説明したように、水蒸気を供給してランプを運転することにより、カーボン15が付着していた光学素子27をクリーニングすることができた。
この方法により、光学素子の劣化を回復させることができ、光学素子交換に伴うメンテナンスコスト、メンテナンスによるランプの稼動率低下を抑えることができた。
【0078】
(実施の形態6)
図6は、この発明の実施の形態6にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成および、ランプの出力光を利用して真空領域14に配置される光学素子へのカーボン付着を除去する方法を示す説明図である。
ランプの構造、動作については、実施例1と同様につき説明を省く。
光透過窓8の仕様については、実施例1と同様につき説明を省く。
図6には、光学素子27がランプ出射光9が照射される位置に配置されている。
光学素子の説明は実施例4と同様につき省略する。
【0079】
実施例6においては、本発明の効果を検証するために、ガスを供給しない状態でランプを運転して、干渉フィルターの透過率が50%に低下するまで待った。(初期値を100%とした)このような処理によって意図的に透過特性を半減させた光学素子27を真空領域14に配置した。
真空領域14には、実施例3で説明した方法により、大気成分を供給した。
真空領域14の大気成分の分圧は1mtorrという条件である。
大気成分については、バルブの開度の調節により、2mtorr、0.1mtorrの場合も実験したが、後述するカーボン除去効果は同等であった。
【0080】
次に、放電プラズマ7によって水素原子を励起し、真空紫外光を90時間(約4日間)発光させた。
大気成分を供給してランプを運転した場合、カーボン15が付着していた光学素子27の表面からカーボンが除去されて、光学素子27の透過率がほぼ初期状態に回復した。
光学素子27の表面を光学顕微鏡で観察したところ、付着物は認められなかった。
【0081】
以上、説明したように、大気成分を供給してランプを運転することにより、カーボン15が付着していた光学素子27をクリーニングすることができた。
この方法により、光学素子の劣化を回復させることができ、光学素子交換に伴うメンテナンスコスト、メンテナンスによるランプの稼動率低下を抑えることができた。
【0082】
【発明の効果】
以上記載のごとく、本発明によれば、普通紫外光や真空紫外光のようにフォトンエネルギーの高い光を利用して光の透過、屈折、反射、分光、干渉作用を組み合わせて種々の効果を生じせしめる各種光透過窓利用装置、例えば前記光透過窓が有機成分が分解可能なほぼ真空領域の境界上に位置する光透過若しくは反射部材からなる光学素子、真空領域の光路上に位置する、屈折、回折、分光、透過、回析位置調整用光学素子、光照射による表面処理体からなる光学体、及びこれらの光学素子や光学体の位置調整機構や保持機構、容器、シール部材に加えて真空紫外が利用される半導体工業界の露光装置(ステッパ)や真空域で行われるガラス基板の処理等の各種光透過窓半導体システムにおいて、前記装置や素子の寿命を決めていた光透過窓の劣化を防止、あるいは抑制し、これにより窓交換等のメインテナンス作業頻度や作業コストの低減を図ることができる。
より具体的には、光透過窓の表面に堆積するカーボンによる透過率の低下を防止あるいは抑制することで、該光透過窓の劣化を防止、あるいは抑制し、これにより光透過窓の交換等のメインテナンス作業頻度や作業コストの低減を図ることができる。
さらに、真空領域の光路上における光学素子の入射面、出射面におけるカーボンの堆積を防止、あるいは抑制することで、後段の装置の寿命を伸ばしたり、装置の信頼度を向上させることが出来る。
【0083】
特に本発明によれば、光透過窓等にカーボンが堆積することによる該窓の光透過率の低下を防止、あるいは抑制することができるので、光透過窓等の洗浄や交換に要するメンテナンスの周期を長くすることができるため、装置稼働率の向上とメンテナンスコスト削減に寄与する。
さらに、マイクロ波励起水素紫外光ランプの出力光を利用する真空領域を有する装置の光学素子や光学体の入射面、出射面におけるカーボンの堆積を防止、あるいは抑制することで、後段の装置の寿命を延ばしたり、装置の信頼度を向上させることができる。さらに、既にカーボンが付着して劣化している光学素子や光学体に対しても、マイクロ波励起水素紫外光ランプの出力光を本発明の方法を用いて当該素子に照射することによって、劣化していた当該素子を初期状態に回復させることができる。
従って本発明を用いることで、前記真空領域を有する装置内の光学素子の洗浄や交換に要するメンテナンスの周期を長くすることができるため、装置稼働率の向上とメンテナンスコスト削減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成を示す説明図である。
【図2】 本発明の実施形態2にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成を示す説明図である。
【図3】 本発明の実施形態3にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成を示す説明図である。
【図4】 本発明の実施形態4にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成を示す説明図である。
【図5】 本発明の実施形態5にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成を示す説明図である。
【図6】 本発明の実施形態6にかかるマイクロ波励起水素紫外光ランプの構成を示す説明図である。
【図7】 光透過窓に付着したカーボンのEPMAによる分析結果である。
【図8】 マイクロ波励起水素紫外光ランプの従来技術を示す説明図である。
【符合の説明】
1 放電管
7 放電プラズマ
8 光透過窓
9 ランプ出射光
12 フォトダイオード
14 真空領域
15 カーボン
19 バリアブルリークバルブ
20 治具
21 キャップ
22 レギュレータ
23 ガスボンベ
24 ガラス管
25 水
26 アダプター
27 光学素子

Claims (6)

  1. 光透過窓取り付け開口を有する窓取り付け部材には前記開口を光透過窓で封止するためのOリングを具えた光透過窓を収納する空間と、放電管を内包する空間から成っているマイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法であって、
    前記光透過窓を収納する空間を、カーボンの酸化反応が励起される活性エネルギ存在下の略真空空間を生成し、該略真空空間にマイナスイオンまたはラジカルを発生させ、該マイナスイオンまたはラジカルとカーボンの反応により前記光射面に付着若しくは堆積したカーボンの除去若しくは低減を行うことを特徴とするマイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法
  2. 前記略真空空間に水性ガス若しくは酸化ガス等の酸素原子含有ガスを流しながら、活性エネルギを供給し、前記光射面に付着若しくは堆積したカーボンの除去若しくは低減を行うことを特徴とするマイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法。
  3. 有機成分が分解可能なほぼ真空領域にある出力光若しくはその光路上に配設してなる光透過窓の、前記真空領域と対面する光入射面、光反射面、光出射面(これらを含めて光射面という)上に付着若しくは堆積されたカーボンに起因して生じる前記光透過窓の光学特性の劣化防止、抑制あるいは向上させて前記光学特性の信頼度若しくは寿命を向上させるマイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法であって、
    前記光透過窓の光射面と対面する側に、カーボンの酸化反応が励起される活性エネルギ存在下の略真空空間を生成し、該略真空空間に水性ガス若しくは酸化ガス等の酸素原子含有ガスを流しながら、活性エネルギを供給し、前記光射面に付着若しくは堆積したカーボンの除去若しくは低減を行う際に、前記略真空空間に供給される酸素原子含有ガスの分圧の下限値が、前記光射面へのカーボンの堆積速度以上であり且つ前記略真空空間に供給される酸素原子含有ガスの分圧の上限値を、該酸素原子含有ガスによる真空紫外光の吸収が、前記真空領域での目的としている機能に無視できないレベル以下に設定したことを特徴とするマイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法
  4. 前記酸素原子含有ガスの分圧の上限値の設定が、実際に前記真空領域を所定の分圧の酸素原子含有ガスで満たし、前記光路における真空紫外光の光量を計測し、減衰のレベルを調べて設定することを特徴とする請求項3記載のマイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法。
  5. 前記略真空空間に供給される酸素原子含有ガスが酸素ガスである場合に、該酸素ガスの分圧の下限〜上限の範囲を0.02mtorr〜20mtorrの範囲に設定したことを特徴とする請求項3記載のマイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法。
  6. 前記略真空空間に供給される酸素原子含有ガスが水蒸気である場合に、該水蒸気の分圧の下限〜上限の範囲を0.005mtorr〜20mtorrの範囲に設定したことを特徴とする請求項記載のマイクロ波励起水素紫外光ランプの光学特性回復方法。
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