しかし、上述の、輪郭を人がなぞる前者の方法においては、ライトペン等による軌跡が輪郭から外れないよう注意深くなぞる必要がある。しかもその輪郭を得ようとする組織が、心臓の左心室の場合、その心臓の動き1拍分の全ての多数の断層像についてそのような作業を繰り返す必要が考えられ、その場合手間がかかるにも拘らず客観性に欠けた不正確なデータとなりやすく、実用にはほど遠いという問題がある。
また、概略の領域3を指定してその領域内の画像データを2値化することにより輪郭を抽出する後者の方法においても、心臓は絶えず鼓動し伸縮を繰り返しているため、領域の指定は各断層像毎にかなり慎重に行なう必要があり、例えば図46(A)に示すように領域3の内部に左心室4だけでなく左心房ないし右心室等が含まれてしまったり、図46(B)に示すように左心室4の一部が領域3から外れてしまうと、左心室4の面積ないし体積として、いずれの場合も誤った面積ないし体積が求められてしまうことになる。これを避けるためには手作業でかなり注意深く、左心室4のみを、かつ左心室4の全体を取り囲む必要があり、輪郭そのものをなぞるほどではないにしろ、手間がかかるという問題は解決されていない。また、概略の領域3内の画像データを2値化することにより輪郭を抽出する方法においては、ノイズ等の影響や、また場所によって輝度(画像データの大きさ)に差があることなどから、2次元画像としてのつながりに欠けた輪郭線、すなわち閉曲面を形成しない輪郭線を抽出してしまうこともある。
本発明は、上記事情に鑑み、手作業なしで、もしくは簡単な手作業で、組織の輪郭を客観的に抽出することのできる機能を備えた超音波診断装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、手作業なしで、あるいは高々少数のフレームについて輪郭を入力するだけで多数のフレームについての輪郭を抽出することのできる機能を供えた超音波診断装置を提供することも目的の1つとする。
本発明の第1の超音波診断装置は、被検体内で反射した超音波を受信することにより、被検体内に広がる断層面内の各点に対応する画像データを得る超音波診断装置において、
(1)画像データのグラジェントを、断層面内の複数の点について求めるグラジェント演算手段
(2)上記グラジェントに対応するスカラ量を、断層面内の複数の点について求めるスカラ量演算手段
(3)上記スカラ量が極大となる、断層面内の複数の極大点を求める極大点演算手段
(4)上記複数の極大点に基づいて、被検体内の所定の組織の輪郭を求める輪郭抽出手段
を備えたことを特徴とする。
ここで、上記本発明の第1の超音波診断装置において、上記(3)の極大点演算手段は、
(5)断層面内に延びる複数の指定線それぞれに沿う方向のスカラ量の変化に基づいて、その指定線上に上記極大点を求めるものであることが好ましく、
さらには、上記極大点演算手段は、上記複数の指定線として、断層面内の所定の中心点を起点にして断層面内に放射状に延びる複数の指定線を用いるものであることが好ましい。
また、上記極大点演算手段が、上記(5)に記載した、断層面内に延びる指定線に沿って極大点を求めるものである場合に、
(6)その極大点演算手段が、指定線に沿って隣接する複数の点のスカラ量どうしの差分を順次演算することによりその差分の符号が変化する変化点を検出する手段と、その変化点近傍の点のスカラ量に基づいてその変化点のスカラ量を補正する手段と、その変化点について補正されたスカラ量を用いたときのその変化点の差分の符号に基づいてその変化点を上記極大点として抽出するか否かを判定する手段とを備えたものであることが好ましい。
また、上記本発明の第1の超音波診断装置において、上記(1)のグラジェント演算手段として、例えば、
(7)断層面内の互いに異なる2方向に微分する手段
を採用することができる。
(8)また、このグラジェント演算手段は、断層面上に現われた、抽出しようとする輪郭に接する2つの組織それぞれの微分方向の各幅のうち狹い方の幅の0.5倍以上2倍以下の幅の微分フィルタを用いて、2次元的な微分演算を行なうものであることが好ましい。
さらに、上記本発明の第1の超音波診断装置において、
(9)上記(2)の上記スカラ量演算手段は、上記スカラ量として、上記グラジェントの絶対値、その絶対値を変数とする関数、上記グラジェントの断層面上の互いに異なる2方向の各成分それぞれの絶対値の和、その和を変数とする関数からなる群の中から選択される少なくとも1つを求めるものであることが好ましい。
また、上記本発明の第1の超音波診断装置において、上記(4)の輪郭抽出手段で輪郭を求めるにあたっては、この輪郭抽出手段が、
(4−1)上記極大点が輪郭上の点である蓋然性を表わす特徴量を求める特徴量演算手段
を備え、その特徴量に基づいて、上記極大点の中から輪郭上の点を抽出し、これら輪郭上の点を結ぶことにより輪郭を求めるものであることが好ましい。
上記特徴量としては、上記(3)の極大点演算手段が上記(5)の要件を満たすものである場合、即ち断層面内に延びる複数の指定線それぞれに沿う方向のスカラ量の変化に基づいて、指定線上に上記極大点を求めるものである場合に、上記特徴量として、
(a)上記極大点の上記スカラ量、ないしそのスカラ量を変数とする関数
(b)上記極大点に対応する点を含む所定領域内に対応する画像データの平均的な値、ないしその平均的な値を変数とする関数
(c)上記指定線に沿うベクトルとその指定線上の極大点のグラジェントとのスカラ積の符号、ないしその符号を表わす数値
(d)互いに異なる第1および第2の指定線上にそれぞれ位置する第1および第2の極大点それぞれのグラジェントどうしの成す角度、ないしその角度を変数とする関数
(e)互いに異なる第1および第2の指定線のうち第1の指定線上に位置する極大点を通りその極大点のグラジェントの方向と直交する方向に延びる直線と第2の指定線との交点と、その第2の指定線上に位置する極大点との距離、ないしその距離を変数とする関数
からなる群の中から選択される少なくとも1つもしくは複数の組合せを含む特徴量を採用することが好ましい。
また、上記本発明の第1の超音波診断装置において、上記(4)の輪郭抽出手段が上記(4−1)の特徴量演算手段を備えた場合に、その輪郭抽出手段が、さらに、
(4−2A)上記特徴量に基づいて、上記極大点の中から、輪郭上に存在する蓋然性を有する輪郭候補点を求める候補点抽出手段
(4−3A)候補点抽出手段で求められた輪郭候補点と、その輪郭候補点に隣接する輪郭上の点との間の距離が所定距離以内の距離である場合に、その輪郭候補点を、輪郭上の点として採用する輪郭点抽出手段
を備えることが好ましい。
もしくは、上記(4)の輪郭抽出手段が上記(4−1)の特徴量演算手段を備えた場合に、その輪郭抽出手段が、さらに、
(4−2B)異なる時刻における同一の断層面を表わす複数のフレームのうちの所定のフレームについて求められた上記特徴量に基づいて、その所定のフレーム内の極大点の中から、輪郭上に存在する蓋然性を有する輪郭候補点を求める候補点抽出手段
(4−3B)候補点抽出手段で求められた上記所定のフレームにおける輪郭候補点と、その輪郭候補点に対応する、上記複数のフレームのうち上記所定のフレームとは異なるフレームにおける輪郭上の点との間の距離が所定距離以内の距離である場合に、その輪郭候補点を、上記所定のフレームにおける輪郭上の点として採用する輪郭点抽出手段
を備えることも好ましい態様である。
さらに、上記本発明の第1の超音波診断装置を用いて人体の心臓を被検体とし左心室の輪郭を求める場合に、
(10)断層面上に表われた、左心室と左心房との間に存在する2つの弁それぞれと左心室の隔壁との境界点を検出する弁根元検出手段を備えるとともに、
上記(4)輪郭抽出手段が、上記(4−1)の特徴量演算手段を備え、特徴量に基づいて、その断層面上の、上記境界点どうしを結ぶ領域を除く領域上に輪郭上の点を抽出するものであることも好ましい態様である。
上記(10)の弁根元検出手段は、具体的には、例えば、上記(4)の輪郭抽出手段が、上記(4−1)の特徴量演算手段、上記(4−2A)の候補点抽出手段、および上記(4−3A)の輪郭点抽出手段を備えたものである場合に、上記(10)の弁根元検出手段を、上記(4−2A)の候補点抽出手段で求められた第1の輪郭候補点と、その第1の輪郭候補点に隣接する輪郭上の点との間の距離が所定距離以内の距離であるとともに、該第1の輪郭候補点と該第1の輪郭候補点に隣接する第2の輪郭候補点との距離が所定距離以上離れた距離であることを判定基準の少なくとも1つとして、その第1の輪郭候補点を上記境界点として抽出する構成とすることができる。
ここで、この弁根元検出手段にいう「所定距離」は上記(4−3A)の輪郭抽出手段にいう「所定距離」とは異なる距離であってもよい。
あるいは、上記(4)の輪郭抽出手段が、上記(4−1)の特徴量演算手段、上記(4−2B)の候補点抽出手段、および上記(4−3B)の輪郭点抽出手段を備えたものである場合に、上記(10)の弁根元検出手段を、上記(4−3A)の候補点抽出手段で求められた所定のフレームにおける輪郭候補点と、その輪郭候補点に対応する、上記複数のフレームのうち上記所定のフレームとは異なるフレームにおける輪郭上の点との間の距離が所定距離以上離れた距離であることを判定基準の少なくとも1つとして、その輪郭候補点を、上記所定のフレームにおける上記境界点として抽出する構成とすることができる。
この弁根元検出手段にいう「所定距離」は上記(4−3B)の輪郭点抽出手段にいう「所定距離」とは異なる距離であってもよい。
さらに、上記本発明の第1の超音波診断装置は、上記輪郭上の点を直線もしくは曲線でつないだ輪郭線、およびその輪郭の内部と外部を色、輝度もしくは模様で区別した画面のうちの少なくとも一方を表示する輪郭表示手段を備えたものであることが好ましい。
また、上記本発明の第1の超音波診断装置は、上記(4)の輪郭抽出手段で抽出された輪郭の内部の面積を求める面積演算手段と、その面積演算手段で求められた面積を表示する面積表示手段とを備えた構成とすることが好ましい。この場合に、上記面積表示手段は、上記面積を、その面積を表わす数字、およびその面積の時間変化を示すグラフのうちの少なくとも一方で表示するものであることが好ましい。
また、上記本発明の第1の超音波診断装置は、上記(4)の輪郭抽出手段で抽出された輪郭の内部の体積を求める体積演算手段と、その体積演算手段で求められた体積表示手段とを備えた構成とすることも好ましい態様である。この場合、上記体積表示手段は、上記面積表示手段と同様に、その体積を、その体積を表わす数字、およびその体積の時間変化を示すグラフのうちの少なくとも一方で表示するものであることが好ましい。
本発明の第2の超音波診断装置は、被検体内で反射した超音波を受信することにより、被検体内に広がる断層面内の各点に対応する画像データを得る超音波診断装置において、
(12)画像データに基づいて被検体内の所定の組織の輪郭を求める輪郭演算手段
(13)画像データのグラジェントを、前記断層面内の複数の点について求めるグラジェント演算手段
(14)上記グラジェントの方向に基づいて、上記断層面内に、前記所定の組織を内包する演算有効領域を定める演算有効領域検出手段
を備え、
上記(12)の輪郭演算手段が、上記演算有効領域内部に、上記所定の組織の輪郭を求めるものであることを特徴とする。
ここで、上記本発明の第2の超音波診断装置において、上記(14)の演算有効領域検出手段は、具体的には、例えば断層面内の所定の中心点から発し、その断層面内の、上記グラジェントを求めた点を通って延びる指定線の方向と、そのグラジェントを求めた点におけるグラジェントの方向との成す角度に基づいてその断層面内の各点に対応する画像データを二値化したときの、二値化された画像データの断層面内の分布に基づいて、上記演算有効領域を検出する構成とすることができる。
尚、本発明の第2の超音波診断装置は、本発明の第1の超音波診断装置をそのまま取り込んだ構成とすることができる。その場合の基本的態様としては、本発明の第2の超音波診断装置における上記(12)の輪郭演算手段が、
(12−1)上記グラジェントに対応するスカラ量を、前記断層面内の複数の点について求めるスカラ量演算手段
(12−2)上記スカラ量が極大となる、上記演算有効領域内の複数の極大点を求める極大点演算手段
(12−3)上記複数の極大点に基づいて、上記所定の組織の輪郭を求める輪郭抽出手段
を備えたことを特徴とする。
この(12−3)の輪郭抽出手段は、上記本発明の第1の超音波診断装置における上記(4)の輪郭抽出手段と同様に、上記極大点が輪郭上の点である蓋然性を表わす特徴量を求める特徴量演算手段を備え、その特徴量に基づいて、上記極大点の中から輪郭上の点を抽出し、これら輪郭上の点を結ぶことにより輪郭を求めるものであることが好ましい。
上記特徴量としては、これも上記本発明の第1の超音波診断装置の場合と同様、上記(12−2)の極大点演算手段が、断層面内に延びる複数の指定線それぞれに沿う方向のスカラ量の変化に基づいて、指定線上に上記極大点を求めるものであり、上記特徴量として、
(a)上記極大点の上記スカラ量、ないしそのスカラ量を変数とする関数
(b)上記極大点に対応する点を含む所定領域内に対応する画像データの平均的な値、ないしその平均的な値を変数とする関数
(c)上記指定線に沿うベクトルとその指定線上の極大点のグラジェントとのスカラ積の符号、ないしその符号を表わす数値
(d)互いに異なる第1および第2の指定線上にそれぞれ位置する第1および第2の極大点それぞれのグラジェントどうしの成す角度、ないしその角度を変数とする関数
(e)互いに異なる第1および第2の指定線のうち第1の指定線上に位置する極大点を通りその極大点のグラジェントの方向と直交する方向に延びる直線と第2の指定線との交点と、その第2の指定線上に位置する極大点との距離、ないしその距離を変数とする関数
からなる群の中から選択される少なくとも1つもしくは複数の組合せを含む特徴量を採用することが好ましい。
また、本発明の第2の超音波診断装置は、本発明の第1の超音波診断装置とは離れた構成とすることもできる。その場合、上記(12)の輪郭演算手段として、例えば、図46を参照して説明した画像データを2値化することにより輪郭を抽出する輪郭演算手段を採用することができる。
また、本発明の上記第2の超音波診断装置が、
(15)上記輪郭を表示する表示手段
を備えることが好ましい。
また、上記本発明の第2の超音波診断装置において、
(16)上記輪郭演算手段で求められた輪郭に基づいて算出される誘導量を求める誘導量算出手段
を備えることも好ましい。
この場合に、上記(16)の誘導量算出手段が、誘導量として、輪郭内部の面積、輪郭の重心位置、および輪郭内部の体積のうちの少なくとも1つの量を求めるものであることが好ましい。
さらに、上記本発明の第2の超音波診断装置において、上記(16)の誘導量算出手段を備えた場合に、
(17)誘導量、およびその誘導量の複数フレームに亘る変化量のうちの少なくとも一方の量を表示する表示手段を備えることが好ましい。
本発明の第3の超音波診断装置は、被検体内で反射した超音波を受信することにより、被検体内に広がる断層面内の各点に対応する画像データを得る超音波診断装置において、
(18)複数フレームの画像データに基づいて断層面内の複数点の動きを算出する動き算出手段
(19)画像データに基づいて被検体内の所定の組織の輪郭を求める輪郭演算手段
(20)動き算出手段で検出された動きに基づいて、輪郭演算手段で求められた輪郭から変形した輪郭を求める輪郭変形手段
を備えたことを特徴とする。
ここで、上記本発明の第3の超音波診断装置において、上記(18)の動き産出手段が、オプティカルフロー法および相互相関法のうちの何れか一方を用いて、上記動きとして、断層面内の2次元の動きベクトルおよび断層面内の所定方向の動きの大きさのうちのいずれか一方を算出するものであることが好ましい。この場合に、上記所定方向として、上記輪郭内部の所定の中心点を起点として断層面内に放射状に延びる複数の指定線の方向を選択することができる。
また、上記(18)の動き算出手段が、断層面内に設定された複数の領域それぞれについて各複数点の動きを算出し、それら複数の領域それぞれについて正確な動きを表わす蓋然性の高い、算出された動きを抽出して、抽出された動きの代表値を、上記複数の領域それぞれについて求めるものであることが好ましい。
また、上記本発明の第3の超音波診断装置が、
(21)画像データに平滑化処理および2値化処理のうちの一方の処理を施す前処理手段を備え、
上記(18)の動き算出手段が、前処理手段により上記一方の処理の施された画像データに基づいて動きを算出するものであることも好ましい態様である。
本発明の第3の超音波診断装置は、本発明の第1の超音波診断装置をそのまま取り込んだ構成、もしくは、本発明の第1の超音波診断装置と本発明の第2の超音波診断装置との双方をそのまま取り込んだ構成とすることができる。その場合の基本的態様としては、本発明の第3の超音波診断装置における上記(19)の輪郭演算手段が、
(19−1)画像データのグラジェントを、断層面内の複数の点について求めるグラジェント演算手段
(19−2)上記グラジェントに対応するスカラ量を、断層面内の複数の点について求めるスカラ量演算手段手段
(19−3)上記スカラ量が極大となる、断層面内の複数の極大点を求める極大点演算手段
(19−4)上記複数の極大点に基づいて、被検体内の所定の組織の輪郭を求める輪郭抽出手段を備えたことを特徴とする。
また、本発明の第3の超音波診断装置は、本発明の第1の超音波診断装置および本発明の第2の超音波診断装置とは離れた構成とすることもできる。その場合、例えば、本発明の第3の超音波診断装置が、
(22)所定の組織の輪郭上に位置する輪郭点を指定する輪郭点指定用操作子を備え、
上記(19)の輪郭演算手段が、上記輪郭点指定用操作子により指定された輪郭点に基づいて輪郭を求める構成とすることができる。
また、本発明の第3超音波診断装置が、
(23)被検体の心臓の鼓動に同期した鼓動同期信号を得る同期信号獲得手段を備え、
上記(19)の輪郭演算手段が、上記鼓動同期信号に基づいて指定されたフレームについて輪郭を求めるものであることも好ましい態様である。
さらに、本発明の第3の超音波診断装置が、
(24)複数フレームの画像データを上書き自在に記憶する記憶手段
(25)記憶手段への上書きを禁止するフリーズ手段
を備え、
上記(19)の輪郭演算手段が、上記(25)のフリーズ手段により上書きが禁止されたフリーズ状態における上記(24)の記憶手段に記憶された複数フレームのうちの少なくとも1枚の所定のフレームについて輪郭を求めるものであり、
上記(17)の動き検出手段が、上記フリーズ状態における上記(23)の記憶手段に記憶された複数フレームのうちの上記所定のフレームを除く他のフレームについて動きを算出するものであり、
上記(19)の輪郭変形手段が、上記他のフレームについて、上記輪郭演算手段で求められた輪郭から変形した輪郭を求めるものであることも好ましい態様である。
さらに、本発明の第2の超音波診断装置と同様、本発明の上記第3の超音波診断装置が
(25)上記輪郭を表示する表示手段
を備えることも好ましい態様である。
また、上記本発明の第3の超音波診断装置において、
(26)上記輪郭演算手段で求められた輪郭および上記輪郭変形手段で変形された輪郭のうちの少なくとも一方の輪郭に基づいて算出される誘導量を求める誘導量算出手段
を備えることも好ましい。
この場合に、上記(26)の誘導量算出手段が、誘導量として、輪郭内部の面積、輪郭の重心位置、および輪郭内部の体積のうちの少なくとも1つの量を求めるものであることが好ましい。
さらに、上記本発明の第3の超音波診断装置において、上記(26)の誘導量算出手段を備えた場合に、
(27)誘導量、およびその誘導量の複数フレームに亘る変化量のうちの少なくとも一方の量を表示する表示手段を備えることが好ましい。
本発明の第1の超音波診断装置は、上記(1)〜(4)の構成を備えているため、手作業なしで、もしくは例えば断層像表示画面上の一点ないし一本の線分を指定するというような極めて簡単な手作業のみで組織の輪郭の客観的な抽出が可能となる。
また、本発明の第1の超音波診断装置において、上記(4)に記載した指定線という概念を取り入れると、スカラ量の極大点を求めるにあたり、その指定線の、上隣接する各点のスカラ量どうしの差分を演算すればよく、極大点を容易に求めることができる。また、これらの指定線として、所定の中心点から放射状に延びる指定線を採用すると、その中心点から放射状に輪郭上の点を捜すことになるため、その輪郭上の点を捜すにあたりどの方向(どの指定線)についても同一のアルゴリズムを採用することができる。
また、上記(6)の要件を満足する極大点演算手段を備えた場合は、画像データに含まれるノイズ等により極大点を誤検出してしまう可能性が低減される。
また、上記(1)のグラジェント演算手段は、例えば上記(7)に記載した、2次元的な微分を行なう手段をもって構成されるが、この場合、一般に知られている微分フィルタで断層像の例えば縦方向と横方向に微分すればよいため、このグラジェント演算手段が比較的簡単に構成される。
またその場合に、上記(8)に記載したように、狹い方の組織の幅の0.5倍以上2倍以下の幅の微分フィルタを採用することが好ましい。
微分フィルタの幅が0.5倍未満の場合、抽出しようとする輪郭上の点であっても微分値(グラジェントのその微分方向の成分)として小さい値が求められてしまい輪郭をうまく抽出できない場合があり、一方、微分フィルタの幅が2倍を越える場合、輪郭上の点の微分値とその周囲の点の微分値との差が小さく全体としてなだらかな微分値が求められ、輪郭がぼやけてしまうからである。
また、上記本発明の第1の超音波診断装置における上記(2)のスカラ量演算手段は、グラジェントを構成する方向と大きさ(グラジェントの絶対値)のうち、大きさに対応する量であればどのようなものであってもよく、例えば上記(9)に列挙した量のうちのいずれか1つを選択することができる。
また、本発明の第1の超音波診断装置は、上記(4)の輪郭抽出手段で輪郭を求めるにあたっては、上述したように、上記極大点が輪郭上の点である蓋然性を表わす特徴量を求める特徴量演算手段を備え、その特徴量に基づいて輪郭を求めるように構成することが好ましく、その場合に上述の(a)〜(e)のうちのいずれか1つもしくはそれらのうちの複数の組合せを、上記特徴量に含ませることが好ましい。上記(a)〜(e)のそれぞれを特徴量としたときの作用は以下のとおりである。
(a)極大点のスカラ量
このスカラ量は、上述したように、その極大点のグラジェントの大きさに対応する量であり、その極大点における画像データの変化の程度を表わしている。組織の輪郭では画像データが大きく変化しており、したがってこのスカラ量を特徴量として採用することができる。
(b)上記極大点に対応する点における画像データの平均的な値
輪郭を挟む2つの組織の画像データの平均的な値は通常大きく異なっている。したがって画像データの値そのものも特徴量として採用することができる。ただし、ここで対応する点とは、極大点から、極大点のグラジェント方向に、その対応する点が属する組織(例えば心筋)の幅の1/2程度離れた点である。平均をとるのは、一点のみの場合ノイズ等の影響により画像データの値が大きく変動する可能性があるからである。
(c)グラジェントどうしのスカラ積の符号
上述したように、輪郭を挟む2つの組織の画像データの平均的な値は通常大きく異なっている。したがってその輪郭部では、グラジェントのベクトル方向は、常に、ある一方の組織からもう一方の組織に向いている。したがって上記符号を特徴量として採用することができる。
(d)角度
輪郭は連続的なものである。したがって例えば近接する指定線上の輪郭点のグラジェントはほぼ同じ向きを向いている。すなわちそれらのグラジェントどうしの角度は小さいものと考えられる。したがってこの角度を特徴量として採用することができる。
(e)距離
上述したように輪郭は連続的なものである。したがって上述した距離が短い方が輪郭上の点である蓋然性が大きいことになる。したがってこの距離を特徴量として採用することができる。
また上記本発明の第1の超音波診断装置において、上記(4)の輪郭抽出手段が、上記(4−1)の特徴量演算手段に加え、上記(4−2A)の候補点抽出手段および上記(4−3A)の輪郭点抽出手段を備えた場合、あるいは、上記(4−1)の特徴量演算手段に加え、上記(4−2B)の候補点抽出手段および上記(4−3B)の輪郭点抽出手段を備えた場合、隣接する輪郭点が互いに大きく離れた位置に誤検出されてしまうことが防止され、より高精度な輪郭抽出が行なわれる。
また上記本発明の第1の超音波診断装置を用いて人体の心臓を被検体とし左心室の輪郭を求める場合に、上記(10)の弁根元検出手段を備え、断層上の、2つの弁の根本どうしを結ぶ領域を除く領域上に輪郭上の点を抽出すると、すなわち、換言すれば、2つの弁の根本どうしを結ぶ領域内にもし輪郭上の点と思われる点が抽出されてもその点は輪郭上の点とは見なさずに棄却するように構成すると、弁の動きによる誤った輪郭が抽出されることが防止され、より信頼性の高い輪郭抽出が可能となる。
上記(10)の弁根元検出手段としては、上記(4−2A)および(4−3A)、ないしは、上記(4−2B)および(4−3B)と同様に、隣接する輪郭候補点が所定距離を越えて離れているか否かを判定基準の少なくとも1つとして弁の根元に位置する境界点を抽出する手段を採用することができる。
また、上記本発明の第1の超音波診断装置は、上記輪郭表示手段を備えて、上記のようにして求めた輪郭を示す輪郭線や輪郭の内外を識別できるような画像を表示したり、その輪郭内部の面積や体積を求めて、その面積や体積を表示することにより、観察、診断に有効な情報をわかりやすい形で提供することができる。面積ないし体積を表示するにあたっては、その面積ないし体積を数字で表示してもよいが、その面積ないし体積の時間変化を示すグラフを表示すると、心臓の鼓動等による組織の伸縮の様子が一目でわかり、一層有効である。
本発明の第2の超音波診断装置は、上記(12)〜(14)の構成を備え、演算有効領域内部に輪郭を求めるものであるため、例えば図46を参照して説明した方法において、概略の領域3を人が指定する必要がなく、例えば心臓の拡張,収縮等により不要な領域が含まれた必要な領域が外れたりするような、人が概略の領域3を指定した場合の問題が解決され、輪郭が正確に求められる。
また、本発明の第2の超音波診断装置は、上記のように、演算有効領域内に輪郭を求めるものであるため、この第2の超音波診断装置を、グラジェントに対応するスカラ量の極大点に基づいて輪郭を検出する本発明の第1の超音波診断装置に適用した場合、演算有効領域から外れた位置に輪郭点と思われる点が検出されてもこれを輪郭点とは見なさずに棄却し、その演算有効領域内部にのみ輪郭点を求めることにより、より高精度な輪郭抽出が可能となる。
本発明の第2の超音波診断装置における上記(14)の演算有効領域検出手段としては、断層面内の所定の中心点から発し、その断層面内の、上記グラジェントを求めた点を通って延びる指定線の方向と、そのグラジェントを求めた点におけるグラジェントの方向との成す角度に基づいてその断層面内の各点に対応する画像データを二値化したときの、二値化された画像データの断層面内の分布に基づいて、上記演算有効領域を検出する手段を採用することができ、その場合、特に左心室の輪郭を抽出する場合に、その左心室を確実に取り込んだ演算有効領域が定められる。したがって左心室の輪郭が高精度に抽出される。
また、本発明の第3の超音波診断装置は、上記(18)〜(20)の構成を備えているため、各フレーム毎に初めから輪郭を求める演算を行うことなく、あるフレームについて求められた輪郭を断層面内の複数点の動きに応じて変形することにより、複数の一連のフレームについての各輪郭が求められる。尚、輪郭を変形するにあたっては、輪郭演算手段で求められた輪郭を直接変形してもよく、あるいはその輪郭が変形された輪郭をさらに変形してもよい。
この、断層面内の各点の動きは、例えばオプティカルフロー法ないし相互層間法を採用して求めることができる。
以下に、オプティカルフロー法、および相互相関法について説明する。
[オプティカルフロー法]
オプティカルフロー法は、動画像の見掛け上の速度場を算出する方法である。詳細は、古賀、三池編著「パソコンによる動画像処理」(森北出版)に詳しい。今、断層面上の空間座標を(x,y)、時間をtで表現し、画像上の輝度をP(
x,y,t)と表現すると、輝度変化の無い移動は、次式で表現される。
P(x,y,t)=P(x+δx,y+δy,t+δt) ……(1)
ここで、右辺をテーラー展開し、2次以降を無視すると、次式が成立する。
上式において、Px,Pyはx,y方向の空間的な勾配、Ptは時間的な勾配、u,vは算出したいオプティカルフロー速度である。(2)式を解くには、更に1つ以上の拘束条件が必要となる。拘束条件の与え方によって、算出される速度(u,v)の精度が決定されるが、この拘束条件の与え方自体は、本発明の根幹に直接関連しないので、代表的な方式を以下に示す。
画像が空間的に滑らか、即ち、空間的変化を最小にするには、
(∂u/∂x)2+(∂u/∂y)2+(∂v/∂x)2+(∂v/∂y)2
→min. ……(3)
という条件を加え、次式の誤差関数が最小になるようにオプティカルフローを決定する。
E=∬[{Px・u+Py・v+Pt}2
+α2{ux2+uy2+vx2+vy2}]dxdy ……(4)
但し、ux=∂u/∂x、uy=∂u/∂y、vx=∂v/∂x、
vy=∂v/∂yである。
(4)式を拘束条件とすることで、算出される速度(u,v)は空間的に十分滑らかであって、しかも、(2)式を満たす値となる。αは、(2)式と(3)式との相対的な重みを与えるものである。
変分法により、以下のような偏微分連立方程式を得る。
上式を解けば、オプティカルフロー速度(u,v)を得ることができる。
また、別の拘束条件として、局所領域S内で、オプティカルフローが略一定という条件を与え、領域S内に含まれる空間座標(i,j)内において、次式の最小化を考える。
E=ΣΣ[Px(i,j,k)u+Py(i,j,k)v
+Pt(i,j,k)]2 ……(6)
この場合、∂E/∂u=0,∂E/∂v=0の条件により、速度成分は、次式のように算出される。
尚、ここでは、二次元的なオプティカルフロー速度を算出したが、断層面内の所定の一次元方向に関してのみ、オプティカルフロー速度を算出してもよい。
[相互相関法]
相互相関法に関しては、相互相関係数をr(m,n)としたとき、例えば、
を算出しても良いし、画像を予め2値化し、2値化した画像データQ(i,j,t)に関して以下のような値を算出してもよい。
r(m,n)=ΣΣQ(i,j,t)Q(i+m,j+n,t+Δt)
……(9)
相互相関関数r(m,n)の中で、最大値を検索すれば、その時のm,nが動きに対応する。また、所定方向のみの動きを求める場合は、上記の二次元相関関数を一次元にすれば、一次元的な動きを算出することができる。
尚、オプティカルフロー法、相互相関法のいずれにおいても、所定方向のみの動きを求める場合、輪郭内部の所定の中心点を起点として断層面内に放射状に延びる複数の指定線の各方向を採用すると、一次元の演算で、輪郭の動きを高精度に知ることができる。この場合において、上記「所定の中心点」は、オペレータが入力してもよく、あるいは既に輪郭が求められたフレームの、輪郭内部の重心等を求め、その重心等を上記所定の中心点として採用してもよい。
また、上記(18)の動き算出手段が、断層面内に設定された複数の領域それぞれについて各複数点の動きを算出し、それら複数の領域それぞれについて正確な動きを表わす蓋然性の高い、算出された動き抽出して、抽出された動きの代表値を、上記複数の領域それぞれについて求めるものである場合、断層面内の各領域の正確な動きが求められ、輪郭を正確に変形することができる。
また、上記本発明の第3の超音波診断装置において、上記(21)の前処理手段を備えると、上記(18)の動き算出手段において、より正確な、もしくはより簡単な演算で動きが求められる。この場合特に、動き算出手段がオプティカルフロー法により動きを求めるものである場合に、前処理手段として平滑化処理を施す前処理手段を採用することにより、より正確な動きが求められる。また、動き算出手段が、相互相関法により、動きを求めるものである場合に、二値化処理を施す前処理手段を採用することにより前述の(9)式に示すように、演算が簡単となり、動きがより高速に求められる。
また、上記本発明の第3の超音波診断装置において、上記(19)の輪郭演算手段が、上記(19−1)〜(19−4)の、グラジェント演算手段、スカラ量演算手段、極大点演算手段、輪郭抽出手段を備えたものである場合、これら(19−1)〜(19−4)の各手段は、本発明の第1の超音波診断装置の上記(1)〜(4)の各手段と同一であり、このように、本発明の第3の超音波診断装置は、本発明の第1の超音波診断装置をそのまま取り込んだ構成とすることができる。ただし、本発明の第3の超音波診断装置では、複数のフレームが存在する場合に、すべてのフレーム1つずつについて本発明の第1の超音波診断装置における手法と同様にして輪郭を求めるのではなく、あるフレームについて第1の超音波診断装置と同様にして輪郭を求め、他のフレームについては、その輪郭を変形することによりそのフレームについての輪郭を求めるように演算される。
尚、本発明の第1の超音波診断装置における手法と同様の手法を用いて輪郭を求める場合において、本発明の第2の超音波診断装置における手法と同様にして、輪郭を求める領域を演算有効領域内に限定してもよい。この場合、本発明の第3の超音波診断装置に、本発明の第1および第2の超音波診断装置の双方が取り込まれたことになる。
さらに、上記本発明の第3の超音波診断装置においては、上記第1の超音波診断装置および上記第2の超音波診断装置の構成とは離れた構成とし、例えば、上記(22)の輪郭点指定用操作子を備えた構成としてもよい。このとき、上記(19)の輪郭演算手段では、輪郭点指定用操作子の操作により入力された輪郭点どうしを例えばスプライン関数でなめらかに結ぶことにより輪郭を求めてもよく、入力された輪郭点の数が多いときは、輪郭演算手段は、特に実質的な演算なしに、例えばそれらの輪郭点を単純に折れ線で結ぶこと等により輪郭を求めてもよく、あるいは、それら手動,半手動的に入力された輪郭を、例えば上記(19−1)〜(19−4)からなる輪郭演算手段により求めた輪郭を加味して修正するように構成してもよい。本発明にいう輪郭演算手段は、これらの態様をすべて包含する概念を表わしている。
また、本発明の第3の超音波診断装置において、上記(23)の同期信号獲得手段を備え、上記(19)の輪郭演算手段が鼓動同期信号に基づいて指定されたフレームについて輪郭を求めるものである場合、鼓動に同期した、輪郭を正確に求めることのできるフレームを指定してそのフレームについて輪郭を求め、鼓動に同期した他のフレームについては、輪郭を求めたフレームの輪郭を変形してそのフレームの輪郭を求めるようにすることができ、初期値として正確な輪郭が求められることから、すべてのフレームについて一層正確な輪郭が求められる。
上記鼓動同期信号としては、例えば、心電図波形信号、ドプラ波形信号等を採用することができる。
さらに、本発明の第3の超音波診断装置において、上記(24),(25)の記憶手段,フリーズ手段を備え、フリーズ状態にある複数フレーム中の、あるフレームについて輪郭を求め、他のフレームについては輪郭を変形することによりそのフレーム輪郭を求めるようにしてもよい。このときには、輪郭が正しく求められなかった場合にその輪郭を手動で変更する等の細かな作業や、各フレームの輪郭をゆっくりとレビューする等の細かな観察が可能となる。
本発明の第2の超音波診断装置ないし本発明の第3の超音波診断装置では、上記第1の超音波診断装置と同様、例えば上記(15),(25)の表示手段で輪郭が表示され、あるいは、上記(16),(26)の誘導量、例えば輪郭内部の面積、輪郭の重心位置、輪郭内部の体積等、あるいはそれらの誘導量の複数フレームに亘る変化量が上記(17),(27)の表示手段で表示される。
尚、輪郭内部の体積の算出手法は特定の手法に限定されるものではないが、例えば、輪郭を円もしくは楕円で近似し、その円もしくは楕円を回転させたときの球もしくは回転楕円体の体積を求めてもよく、あるいは、輪郭を複数の直方体の積層で近似し、各立方体を回転させたときの各円板の体積の総和を求めてもよい。
以上説明したように、本発明によれば、オペレータによる手作業なしで、あるいは簡単な手作業のみで、組織の輪郭を客観的に抽出することができる。
また、本発明の第2の超音波診断装置によれば、演算有効領域を定めることにより、組織の輪郭を一層正確に抽出することができる。
また、本発明の第3の超音波診断装置によれば、あるフレームについて求められた輪郭を断層面内の複数点の動きに応じて変形することにより、各フレーム毎に輪郭を求める演算を初めから行なうことなく、一連の複数のフレームについての各輪郭が求められる。
以下、本発明の実施例について説明する。
先ず、本発明の第1の超音波診断装置の実施例について説明する。尚、超音波診断装置の基本構成については広く知られているため、ここでは、超音波診断装置の基本構成自体についての図示および説明は省略する。
図1は、本発明の第1の超音波診断装置の一実施例における、輪郭を抽出して表示するフローを示した図、図2は所定の中心点(X0,Y0)から放射状に延びる複数(この例では16本)の指定線を示す図である。
先ず被検体内に超音波を送信し被検体内で反射して戻ってきた超音波を受信することにより被検体内の断層像を表わす画像データを得る。以下、画像データと画像とを特に区別せずに、画像データを画像ないし断層像と称することがある。
次に超音波診断装置の画像メモリにある断層像を、画面の横方向、縦方向共に読み出して微分フィルタをかける。それらが、グラジェントのx,y成分である。これをグラジェント演算手段と称する。
グラジェントを求める際、微分フィルタの幅は、心筋厚みの半分以上2倍以内が望ましい。なぜなら、心筋の半分以下の幅だと弱い境界が強調できずに、グラジェントの大きさを表示すると切れ切れの画像になってしまい、また、心筋の2倍以上の幅だと、輪郭付近におけるグラジェントの大きさの変化がなだらかとなり、ピークが平たくなってしまう。その結果、いずれの場合も境界を特定するのが難しくなるからである。
次に、スカラ量演算手段において、スカラ量(グラジェントの大きさ)を求める。グラジェントの大きさとしては、グラジェントのx成分の2乗とy成分の2乗との和つまりグラジェントの絶対値、或いは、その和の平方根つまりグラジェントの絶対値、或いはx成分とy成分の絶対値の和などが考えられる。
次に、図2に示すように、手作業で入力した中心点(X0,Y0)、あるいは予め指定されている中心点(X0,Y0)から、各指定線に沿って放射線状に走査して、その各指定線上でグラジェントの大きさの差分をとることによりグラジェントの大きさの極大点を検出する(極大点演算手段)。その差分の符号がプラスからマイナスに変化した点が、極大点である。その際、グラジェントの大きさがなだらかな変化をしていると、ひとつの山で複数の極大点を抽出してしまう。そこで、差分の符号が変化したときに、その前後のデータの平均値で置き換えてもう一度符号を確かめてみることで、代表的な極大点を選ぶことができる。この詳細については後述する。
上記方法で抽出した極大点は、1本の線上で幾つも見つかるのが普通であるため、輪郭上の点として最適なものを選ぶ必要がある。そこで、輪郭抽出手段において、各極大点について、いくつかの特徴量を演算し、それらの特徴量を総合することにより各極大点毎に総合的な特徴量を演算し、その総合的な特徴量に基づいて極大点の中から輪郭上の点(輪郭点)を抽出する(輪郭抽出手段)。特徴量の例については後述する。
上記のようにして輪郭点が求まったら、それらを直線あるいは曲線で繋いで、輪郭を表示する(輪郭表示手段)。
上記輪郭点、直線、曲線、輪郭等から、面積を求める手段もいくつか考えられる。例えば、隣合う2つの輪郭点と中心点を結んだ3角形の面積を積和して、求める方法等である。
以下、上記の各手段の詳細について説明する。
図3(A),(B)は、グラジェント演算手段の各例を示す図、図4は微分フィルタを示す図である。
図4(A)は、横方向(これをX方向とする)の一次元微分フィルタの演算子であり、図4(B)は、その微分フィルタをグラフ化した図である。このような、幅dにわたって一定の傾きをもった微分演算子を断層像に作用させることにより、断層像を横方向(X方向)に微分した画像を得ることができる。
図3(A)に示すグラジェント演算手段では、図4(A),(B)に示す形状の横微分フィルタ、およびその横微分フィルタを90°回転させて縦向きにした形状の縦微分フィルタにより断層像全面が縦横にそれぞれ微分される。その各微分により得られた画像のうち、横方向(X方向)に微分した画像については縦方向(Y方向)に移動平均され、縦方向(Y方向)に微分した画像については横方向(X方向)に移動平均される。
これは、微分しただけでは断層像に含まれるノイズ等により微分値が大きく変動するため、移動平均を行うことにより、その変動を押さえるものである。このような演算により、断層像の各点のグラジェントの、X成分Gx ,Y成分Gy が求められる。
図3(B)に示すグラジェント演算手段は、移動平均を先に行い、その後微分演算を行うものであり、このように移動平均と微分演算は順序が逆になってもよい。
図4(C),(D)は、それぞれ、X方向に微分するとともにY方向に平均化操作を行う微分演算子、および、Y方向に微分するとともにX方向に平均化操作を行う微分演算子を示した図である。
微分演算と移動平均を分けて別々に行うことに代えて、このような微分平均化演算子を断層像に作用させてもよい。
図5は、断層像上の各点(X,Y)の画像データの値をグラフ化して示した模式図である。図5(A)は、微分演算前の画像データ、図5(B)〜(D)は微分演算後の画像データを示している。
図5(A)に示すようにX方向に値の変化した画像データをX方向に微分する場合を考える。このとき、図4(B)に示す微分フィルタの幅dが狭すぎると、図5(B)に示すように、左心室と心筋との輪郭の画像データがなだらかに変化している点では小さい値の微分データしか得られず、一方、幅dが広すぎると図5(D)のように微分のピークがはっきりしなくなってしまう。本発明者による実験では、微分フィルタの幅dを、ここで求めようとする輪郭を挾んで接する左心室と心筋とのうち幅の狭い心筋の幅の0.5倍以上2倍以下に選ぶことにより、図5(C)に示すような適切な微分データが得られることが判明した。
本実施例では、一例として断層像として640×480ドット、1ドットあたり8ビット(256階調)の画像が取り込まれ、図4に示す微分データの幅(ドット数2n+1)として、心筋の厚みとほぼ同じ21ドットが選択される。図4(C),(D)に示すように、本実施例では、移動平均の幅も2n+1=21(ドット)が選ばれている。
図6(A)〜(C)は、スカラ量演算手段の各例を示す図である。
図6(A)は、グラジェントのX成分Gx ,Y成分Gy がそれぞれ二乗されてGx2,Gy2が求められ、それらが加算されてさらに平方根が演算され、グラジェントの絶対値(Gx2+Gy2)1/2 が算出される。
図6(B)は、図6(A)と比べ平方根演算が省かれており、グラジェントの2乗、すなわちGx2+Gy2が算出される。
また図6(C)では、グラジェントのX成分Gx ,Y成分Gy それぞれの絶対値|Gx |,|Gy |が算出され、それらが互いに加算され、|Gx |+|Gy |が算出される。
ここに各例を示すように、本発明にいうスカラ量としては、グラジェントの大きさに対応する種々の演算量を採用することができる。
図7は、極大点演算手段におけるデータ処理を示すフローチャート、図8はその説明図である。
この極大点演算手段では、先ず、スカラ量演算手段で算出されたグラジェントの大きさを参照し、図2に示す各指定線に沿って放射状に差分をとり、差分値の正負の変化を見てグラジェントの大きさが極大となる位置、すなわち、グラジェントの大きさの差分の符号が正から負になる位置を検出し、これにより、左心室の輪郭上にあると考えられる極大点の候補点を抽出する。しかし、グラジェントの大きさがばらつくと、あきらかに輪郭上の点ではない点まで候補点として選ばれるという問題がある。そこで、グラジェントの大きさの差分値が正から負に変化したとき、その変化により抽出された候補点について、その前後の点のグラジェントの大きさの差分値の平均値をその候補点の新たな差分値として置き換えた上でもう一度正負の判定を行い、そのときにも再度符号の変化が検出された場合だけ、候補点として抽出する。
例えば、図8において、Anはグラジェントの大きさ、Sn=An+1−Anはグラジェントの大きさの差分である。A5は、S4とS5の符号が異なるので、極大点の候補点として一旦抽出されるが、S5’=(S4+S6)/2と置き換えると、S4とS5’は同符号となるため、この候補点は極大点としては抽出しない。一方、A8は、S7とS8の符号が異なり、S8=(S7+S9)/2としても、S7とS8’は異符号となるため極大点として抽出する。
図9は、輪郭抽出手段において求められる各種の特徴量を示す図である。
輪郭抽出手段では左心室の輪郭を抽出するにあたり、上記のようにして抽出した極大点それぞれについて、図示のように、『A:大きさ』、『B:平均値』、『C:内外判定』、『D:角度差』、『E:距離』の5つの個々の特徴量が求められ、それら特徴量どうしが乗算され、各極大点それぞれについての各総合的な特徴量が算出される。
特徴量『A:大きさ』は、グラジェントの大きさを言い、ここでは、例えば、図6(B)に示す演算子に従って演算された、グラジェントの絶対値の2乗Gx 2+Gy 2を採用する。
図10は、特徴量『B:平均値』を算出するための演算ブロック図である。
ここでは、断層像がX方向,Y方向双方について、微分フィルタの幅d(図4(B)参照)と同じ21ドット分について画像データが移動平均され、平均値Bが求められる。この移動平均の順序は、図10(A)に示すようにX方向について先に行ってもよく、図10(B)に示すようにY方向について先に行ってもよい。
即ち、各画素について、下記(10)式に示すようにその周囲のX方向±10ドット,Y方向±10ドット分の画像データが加算される。
尚、数学的には平均値は上式を画素数で割り算する必要があるが、演算を行う画素数が固定であることから、データ処理上は加算値は平均値と等価であり、ここでは計算量を下げるため、画素数での割り算は省略されている。
図11は、特徴量『C:内外判定』の演算の説明図である。
ここでは極大点のグラジェントベクトル(Gx,Gy)と、中心点(X0,Y0)(図2参照)から極大点の位置(X,Y)へ向う方向ベクトル(X−X0,Y−Y0)との内積(スカラ積)の正負により、中心点(X0,Y0)から見てグラジェントベクトルが内向きか外向きかの判定が行われる。
すなわち、
(内積)=(X−X0)・Gx+(Y−Y0)・Gy ……(11)
を算出し、
(内積)>0ならば図11(A)に示すように外向きなので、特徴量C=1とし、
(内積)≦0ならば図11(B)に示すように内向きなので、特徴量C=0とする。
最終的には、総合的な特徴量を求めるために個々の特徴量全てを掛け合せるので、内向きのグラジェントベクトルを持つ点は、棄却されることになる。これは、心筋の、左心室側の内壁のみを輪郭として抽出し、心筋の外壁を輪郭として抽出しないためである。
図12は、特徴量Cを求めるための演算ブロック図である。
極大点の座標(X,Y)と中心の座標(X0,Y0)との差分(X−X0,Y−Y0)が求められ、そのX成分X−X0,Y成分Y−Y0とグラジェントのX成分Gx ,Y成分Gy がそれぞれ乗算されて互いに加算され、その符号が判定され、その符号がプラスならばグラジェントは外向きなのでC=1,その符号がマイナスならばグラジェントは内向きなのでC=0が出力される。
図13は、特徴量『D:角度差』の演算の説明図である。
ここでは、図2に示す放射状の複数の指定線について順次演算を行っていくものとし、図13(A)に示すように、前回の指定線上の輪郭点のグラジェントベクトルG1=(Gx1,Gy1)と、今回の指定線上の各極大点#1〜#5のグラジェントベクトルG2=(Gx2,Gy2)との成す角度dθを計算する。輪郭線上の隣り合う2点の稜線の方向はほぼ同じであると考えられるため、ここでは角度差dθが小さいほど値の大きくなる特徴量Dを出力とする。
ここで、図13(B)に示すように、グラジェントの角度をそれぞれθ1とθ2とすると、グラジェントベクトルはそれぞれ、
G1=|G1|exp(jθ1)
G2=|G2|exp(jθ2)
となる。但しjは虚数単位を表わす。ここで、G1の複素共役をG2に掛け合せると、
G1*・G2=|G1|exp(−jθ1)×|G2|exp(jθ2)
=|G1||G2|exp(j(θ2−θ1)
したがって
となる。但し*は複素共役を表わす。
一方、グラジェントベクトルは、
G1=Gx1+jGy1
G2=Gx2+jGy2
であるから、
G1*・G2=(Gx1−jGy1)(Gx2+jGy2)
=Gx1・Gx2+Gy1・Gy2
+j(Gxl・Gy2−Gx2・Gy1)
となり、G1*・G2の実数成分と虚数成分は、それぞれ、
Real(G1*・G2)=Gx1・Gx2+Gy1・Gy2
Imag(G1*・G2)=Gx1・Gy2−Gx2・Gy1
であることが分かる。これより、求めたい角度dθは、
となる。
特徴量Dは、図13(C)に示すように角度差dθが0ならば最大値πをとり、角度差dθがπあるいは−πに近づくにしたがって0に近づくように次式で定義する。
D=π−|dθ| ……(14)
図14は、特徴量Dを求めるための演算ブロック図である。
X=Gx1×Gx2+Gy1×Gy2
Y=Gx1×Gy2−Gx2×Gy2
が演算され、
dθ=atan(Y/X)
が演算され、これにより(13)式に従った角度dθが求められる。
図15は、特徴量『E:距離』の演算の説明図である。
図15(A)に示すように、前回の指定線上の輪郭点の位置(X1,Y1)から、その輪郭点のグラジェントに対し直角方向に延ばした線と、今回の指定線との交点(Xr,Yr)から、今回の指定線上の各極大点の位置までの距離drをそれぞれ求め、距離drが短いほど値の大きくなる特徴量Eを出力とする。例えば図15(A)では#2の極大点の距離drが一番短いので、#2の極大点の特徴量Eが一番大きな値をとることになる。
まず、基準となる長さすなわち、中心点(X0,Y0)と交点(Xr,Yr)との距離rを求める。
図15(B)において、(X0,Y0)は放射状線分の中心点、(X1,Y1)は前回の指定線の輪郭点、(Gx,Gy)はその輪郭点のグラジェントベクトル、(Xr,Yr)は、今回の指定線と、前回の指定線上の輪郭点を通ってその輪郭点のグラジェントに直交する直線との交点、θは、X軸を基準としたときの今回の指定線の角度である。(Xr,Yr)から(X1,Y1)へ向う太線のベクトルのX成分とY成分の比Rを式で表わすと、
である。
この式を変形して、
−Gx(X1−X0−rcosθ)=Gy(Y1−Y0−rsinθ)
r(Gxcosθ−Gysinθ)=Gx(X1−X0)
+Gy(Y1−Y0)
したがって、
となる。基準となる交点の座標(Xr,Yr)は、
Xr=X0+rcosθ,
Yr=Y0+rsinθ ……(16)
と表わすことができる。
この座標からの距離drをそれぞれの極大点(X,Y)について求めると、
dr={(X−Xr)2+(Y−Yr)2}1/2 …… (17)
となる。この場合は#2の候補点が一番近い点と考えられる。
特徴量Eは、距離が所定ドット数dr0(例えばdr0=20(ドット))長くなる毎に、図15(C)に示すように出力値が半減するような指数関数とした。すなわち特徴量Eは、
図16は、距離rおよび交点の座標(Xr,Yr)を求めるための演算ブロック図、図17は、距離drを求めるための演算ブロック図である。
図16に示すように、ここには、中心点の座標(X0,Y0)、前回の指定線上の輪郭点の座標(X1,Y1)とその輪郭点のグラジェント(Gx,Gy)、および今回の指定線の角度θが入力され、
A=Gx(X1−X0)+Gy(Y1−Y0)
B=Gxcosθ−Gysinθ
が演算され、
r=A/B
が演算され、これにより(15)式に従う距離rが求められる。
さらに、この距離rにcosθ,sinθがそれぞれ乗算され、X0,Y0がそれぞれ加算されて、(16)式に示す、
Xr=X0+rcosθ
Yr=Y0+rsinθ
が求められる。
次に図17に示すように、上記のようにして求めた交点の座標(Xr,Yr)と今回の指定線上の極大点の座標(X,Y)とを入力して、(17)式に示す、
dr={(X−Xr)2+(Y−Yr)2}1/2
が求められる。この距離drは、さらに(18)式に従って変換され、特徴量Eが求められる。
上記のようにして求めた特徴量A〜Eは、図9に示すようにそれらの全てが乗算され、各極大点毎に総合的な特徴量Nが算出される。尚、総合的な特徴量Nを算出するに当り、上述の各特徴量A〜Eのいずれかを省いてもよく、もしくは、他の特徴量をも加味してもよい。
図18は、上記のようにして算出した総合的な特徴量Nに基づいて、各指定線毎に輪郭点を1つずつ抽出するための回路ブロック図である。
この図において、nは、各指定線毎に極大点に付した番号を示す。
ある1本の指定線について、極大点の座標(Xn,Yn)とその極大点の特徴量Nnが順次入力される。特徴量Nnは比較器11とセレクタ12の双方に入力される。この比較器11及びセレクタ12には、レジスタ13に格納された値も入力され、比較器11ではそれらが比較される。その比較結果はセレクタ12に制御信号として入力され、セレクタ12からは、比較器11で比較された2つの値のうち大きい値が通過し、レジスタ13に格納される。
また、極大点の座標(Xn,Yn)はセレクタ14に入力され、このセレクタ14にはレジスタ15に格納された座標値も入力され、比較器11における比較結果に応じてレジスタ15の内容が今回の座標(Xn,Yn)に更新され、あるいはレジスタ15の前回の内容が保持される。
このようにして1本の指定線上の極大点の座標(Xn,Yn)とその極大点の特徴量Nnを順次入力し終わると、レジスタ15にはその指定線上の複数の極大点のうち最大の特徴量を有する極大点の座標(X,Y)が格納され、その最大の特徴量を有する極大点が輪郭点として抽出される。
上記のようにして1本の指定線上に最大の特徴量を有する極大点を抽出した後、その抽出された極大点と、その1本の指定線に隣接する指定線上において、同様にして抽出され既に確定した輪郭点との距離を算出しその距離が所定距離以上離れた大きな距離である場合、すなわち、輪郭線は連続したものであるにも拘らず、その抽出された極大点が、それに隣接する指定線上の輪郭点に連続していると見なすことのできる距離を越えて離れている場合に、その抽出された極大点を輪郭点とすることを止め、その1本の指定線上において、特徴量がその抽出された極大点の次に大きい極大点をもう1度抽出し直し、上記と同様な判定を行ない、これを必要に応じて繰り返すことにより、所定距離以内の極大点を輪郭点として抽出するようにしてもよい。このように構成した場合、輪郭線をより高精度に抽出することができる。
尚、最初の1本の指定線上の輪郭点を求めるときは、その最初の1本の指定線上に、他の極大点と比べ突出した大きな値の特徴量を持つ極大点が存在する場合はその極大点を輪郭点として確定し、その後上記手法に従って順次隣接する指定線上の輪郭点を定めてもよく、あるいは、最初の1本の指定線については、特徴量が最大の極大点を表示画面上に表示してオペレータにその極大点が輪郭上に存在するか否かを判定させ、輪郭上に存在しない旨判定されたときは特徴量が次に大きい極大点を表示画面上に表示するシーケンスを繰り返してその最初の1本の指定線上の輪郭点を求めてもよく、あるいは、その最初の1本の指定線上の輪郭点は、上記のような特徴量の演算を行なうことなく、オペレータにその輪郭点を指定させてもよい。
また、異なる時刻における同一の断層面を表わす複数のフレームの間では、あるフレーム(前回のフレーム)について輪郭点が確定した後、次のフレーム(今回のフレーム)について、上記のようにして各極大点についての特徴量を求め、各指定線について最大の特徴量を有する極大点を求め、これら2つのフレームを重ねたときの同一の指定線上の、既に確定している前回のフレーム上の輪郭点と、今回のフレームについて求められた最大の特徴量を有する極大点との間の距離を求め、その距離が所定距離以内にあるか否かに応じて、それぞれ、その最大の特徴量を有する極大点を輪郭点として確定させ、あるいは、その最大の特徴量を有する極大点を棄却してその指定線上の、次に大きな値の特徴量を有する極大点を求めるシーケンスを繰り返すようにしてもよい。このように構成した場合も、輪郭線をより高精度に抽出することができる。尚、最初のフレームの輪郭点の確定のさせ方の手法については、上記と同様、種々の手法の中からその手法を選択することができる。
上記のようにして大きな特徴量を有する極大点を棄却していった結果、所定距離以内に適当な極大点が見い出せなかったときは、さらにその隣りの指定線上の輪郭点とを直線で結び、その直線とその極大点が見い出せなかった指定線との交点を見つけ、その交点をその指定線上の輪郭点として定めてもよく、あるいは、その指定線上には輪郭点は存在しないものとして、確定した輪郭点のみに基づいた輪郭を定めてもよい。
また、輪郭抽出の精度を低下させる原因の1つに、左心室と左心房との間の弁の存在を挙げることができる。この弁が存在することによる輪郭抽出の精度低下を防止する手法として、上記の距離の大小を判定する手法を用いることができる。
図19は、弁の存在による、輪郭抽出精度の低下を防止する手法の1つを示す図である。図19(A)〜(C)のそれぞれにおいて、+は中心点を示す。
先ず上述のようにして各指定線上に、図19(A)に示すような輪郭候補点が求められたものとし、隣接する候補点どうしの距離が所定距離以内にあるか否かを判定する。その結果、図19(B)に示すように、2つの弁のそれぞれの根元に対応する両端の候補点が求められ、それら両端の候補点に挟まれた領域の候補点は棄却され、その領域を除く領域に存在する候補点のみが有効とされる。そこで、図19(C)に示すように、本実施例では、その両端の候補点どうしの間を直線で結び、輪郭としての閉曲線を完成させる。
こうすることにより、弁の存在による、輪郭抽出の精度低下が防止される。
図20は、弁の存在による、輪郭抽出精度の低下を防止するもう1つの手法を示す図である。
ここでは、同一の指定線上における、前回のフレームの候補点(図20(A))と今回のフレームの候補点(図20(B))との間の距離を調べ、その距離が所定距離以内にあるか否かを判定し、所定距離以上離れた候補点は棄却される(図20(C))。このようにして、図19の場合と同様に、正しい輪郭が求められる(図20(D))。
図21は、上述のようにして求めた各指定線上の輪郭点を結ぶことにより求めた左心室の輪郭を示す図である。
概略的には図21(A)に示すように輪郭点どうしを直線で結んでもよく、もしくは、より正確には図21(B)に示すようにスプライン関数を用いて滑らかに結んでもよい。
図1に示す輪郭表示手段では、図21(A)又は図21(B)に示すような輪郭線が断層像に重畳されて表示される。もしくは輪郭線を表示することに代えて、図21(C)に示すようにその輪郭線の内外を色、輝度等により分けた表示を行なってもよい。
図22は、断層像に現れた左心室の面積の求め方の一例を示す図である。
三角形の面積は、22(A)に示すように2辺の長さa,bとその間の角度がわかれば求まるので、その三角形の面積を図22(B)に示すように一周加算することにより左心室の概略の面積が求められる。
輪郭線で囲まれた内部の面積を積分演算することにより内部(左心室)の面積を求めてもよいが、上記の演算方法であっても左心室の面積を十分な精度で、しかも高速に求めることができる。
図23は、左心室の体積の求め方の一例を示す図である。
上記のようにして輪郭線を求めた後、中心点(XO,YO)から互いに反対方向に延びる2本の指定線の、中心線(XO,YO)と輪郭点までの距離の和が最大となる2本の指定線を抽出し、それらの指定線を回転軸として輪郭線を回転させたときのその回転体の内部の体積が算出される。これは、左心室は全体としてほぼ楕円形であるという知見に基づくものであり、このようにして算出された体積が左心室の体積であるとみなされる。なお、体積の算出方法として、例えばTeichkolz法、Pombo法、Gibson法等が知られており、それらのいずれを採用してもよい。
図24は、上述のようにして求めた面積ないし体積の表示法の一例を示す図である。
断層像は時間経過に従って所定のフレームレートで順次得られるため、それらの断層像それぞれについて面積ないし体積を求め、図24に示すようにその面積ないし体積を時間の関数として表示すると、心臓の伸縮の度合いが一見してわかり、観察、診断に一層効果的である。もちろん、面積ないし体積を数値で表示してもよい。
図25は、指定線の他の例を示す図である。
上述した実施例においては、図2に示すように、中心線(XO,YO)から放射線に延びる指定線が採用されたが、本発明ではそのような放射状の指定線を採用することは必ずしも必要ではなく、例えば図25(A)に示すようなX方向に平行に延びる指定線や、図25(B)に示すようなY方向に平行に延びる指定線を採用してもよい。
これら図25(A),(B)に示すようにX方向ないしY方向に平行な指定線を採用すると図2に示すような放射状の指定線を採用した場合に比べ、指定線上の極大点の座標を求める演算が簡単になる。
また、図25(C)に示すように、オペレータが断層像の表示画面上で概略の長軸を指定し、その指定された長軸に直交する方向に延びる指定線を採用してもよい。
さらに、本発明の第1の超音波診断装置では指定線を採用することも必ずしも必要ではなく、例えば従来法ないし他の簡略法を採用して輪郭の概略位置を求め、その概略の輪郭に沿って断層像上に多数の小領域を設定し、それらの各小領域内で極大点、特徴量を求め、各小領域毎に特徴量が最大となる極大点を抽出し、その抽出した極大点を結ぶことにより輪郭を求めてもよい。
次に、本発明の第2の超音波診断装置の実施例について説明する。
図26は、本発明の第2の超音波診断装置の一実施例における、輪郭を抽出して表示するフローを示した図である。
このフロー中、図1に示す第1の超音波診断装置の実施例におけるフローとの相違点は、演算有効領域検出手段が備えられていることのみであり、以下、重複説明は省略し、演算有効領域検出手段を中心に説明する。
演算有効領域検出手段では、図11、図12を参照して説明したようにして、グラジェントの方向が中心点(X0,Y0)に近づく方向に向いている内向きか(図11(A))、それとも中心点(X0,Y0)から離れる方向に向いている外向きか(図11(B))が、断層面全面にわたる各画素について判定される。演算有効領域検出手段では、さらに、その判定結果に基づいて2値画像が作成され、その2値画像に基づいて演算有効領域が定められる。
図27は、演算有効領域の定め方を示す説明図である。
図27(A)は、上述のようにしてグラジェントの方向に基づいて作成された2値画像を表わしており、この2値画像に対し、以下のアルゴリズムに従ったラベリングによる連結処理を行なう。この2値画像中、×印はグラジェントの方向が内向きの画素を表わしている。
(1)ある画素に数値ラベルを付すにあたり、隣接画素中で同じ値を有する(グラジェントの方向が同じ)画素のうち、数値の最も小さいラベルが付されている画素と同一の数値のラベルを付す。
(2)隣接画素に同じ値を有する画素がない場合、あるいは隣接画素に同じ値を有する画素があってもその同じ値を有する隣接画素に未だラベルが付されていない場合は、新たな数値のラベルを付す。
(3)同じ値を有する複数の隣接画素に互いに異なる数値のラベルが付されていたときは、数値の小さい方のラベルに統一する。
図27(B)は、以上の(1)〜(3)のアルゴリズムに従って各画素にラベルの付されたラベリング画像を示している。このようにして作成されたラベリング画像中、中心点(+)を取り巻く、グラジェントの方向が内向きの連結部分(この例では「1」のラベルの付された部分)の外周が図27(C)に示すように演算有効領域の境界線として定められ、その境界線に囲まれた領域内部にグラジェントの方向が外向きの部分が存在していたとしても、その境界線に囲まれた領域全域が演算有効領域として定められる。
図28は、図26に示す輪郭演算手段における輪郭の求め方を示す説明図である。
図2に示す各指定線上に演算有効領域を一応無視して輪郭点(最大の特徴量を有する極大点)を求めたときに、図28(A)に示すように、演算有効領域を外れた点に輪郭点が求められた場合、その輪郭点は棄却され、図28(B)に示すように演算有効領域内部に新たに輪郭点が求められ、図28(C)に示すような輪郭が抽出される。
図26に示すフローによれば、上述のような演算有効領域検出手段を設けたことから、より精確な輪郭が求められる。
図29は、本発明の第2の超音波診断装置の実施例における、輪郭を抽出して表示する他のフローを示した図である。
このフロー中、図26に示すフローとの相違点は、図26に示すフローがスカラ量演算手段および極大点演算手段を備えていることに代わり、二値化手段が備えられていることである。この二値化手段では各画素毎の画像データ(輝度)が所定のしきい値と比較されて二値化され、その二値画像に基づいて輪郭が求められる。
図30は、二値画像に基づく輪郭の求め方を示す説明図である。
図30(A)に示すように、二値画像が示す血流部は演算有効領域の境界線の内外に広がっており、図30(B)に示すようにその血流部のうちの境界線の内側の部分だけが抽出され、その血流部の外周に沿うように輪郭が定められる(図30(C))。
このように、演算有効領域を定めることにより、図46を参照して説明したような、概略の領域3をオペレータが入力する必要がなくなり、したがって入力ミスによる輪郭の誤抽出が防止される。
次に、本発明の第3の超音波診断装置の実施例について説明する。
図31は、本発明の第2の超音波診断装置の一実施例の概略構成ブロック図である。
この超音波診断装置には、超音波を送受信する超音波プローブ101が備えられており、送信回路102から超音波プローブ101に向けて送信パルスが送信され、超音波プローブ101から被検体(図示せず)内に向けて超音波が送信される。被検体内で反射して戻ってきた超音波は超音波プローブ101で受信されて受信信号が受信回路103に入力され、受信回路103では、被検体内に走査線が形成されるように受信信号が遅延、加算される。受信回路103から出力された信号は信号処理回路104に入力される。信号処理回路104には、ログアンプ、検波回路、フィルタ処理回路、A/D変換器等が備えられており、必要な信号処理が施されると共にディジタル信号(画像データ)に変換されて出力され、ディジタルスキャンコンバータ(DSC)105に入力される。DSC105は、超音波の走査線方向のデータを、TV画面の走査線データに変換するものである。DSC105から出力された画像データは、CRTを備えた表示手段111に入力され、その表示画面上に断層像が表示される。またDSC105から出力された画像データは初期輪郭抽出手段107(本発明にいう輪郭演算手段の一例)にも入力される。この初期輪郭抽出手段107ではフレーム指定手段112で指定されたフレームについて、例えば、前述した本発明の第1の超音波診断装置における輪郭抽出手法と同様にして、例えば心臓の左心室の輪郭が求められる。フレーム指定手段112では、心電図あるいはドプラ波形に基づいてフレームが指定される。あるいは、表示画面をフリーズしてオペレータが直接フレームを指定してもよい。初期輪郭抽出手段107で求められたその輪郭は表示手段111に入力され、断層像に重畳して輪郭が表示される。また、初期輪郭抽出手段107で求められた輪郭は後述する輪郭変形手段109にも入力される。
DSC105から出力された画像データは、前処理手段106にも入力される。前処理手段106では、断層面内の被検体の各点の動きを求める動き検出手段108における動きを求める演算の前処理を行うものであり、動き検出手段108がオプティカルフロー法を用いて動きを求めるものである場合は、前処理手段106では平滑化処理が行われ、動き検出手段108が相互相関法を用いて動きを求めるものである場合は、前処理手段106では二値化処理が行われる。
前処理手段106で前処理の行われた画像データは動き検出手段108に入力されて、被検体の、断層面内の動きが求められる。この動きの情報は輪郭変形手段109に入力される。輪郭変形手段109には、上述したように、初期輪郭抽出手段107で求められた輪郭も入力され、その輪郭が、輪郭変形手段109で現在処理しているフレームの輪郭に適合するように変形される。尚、輪郭変形手段109では、各フレーム毎に初期輪郭抽出手段107で抽出された輪郭に戻ってその輪郭を変形するのではなく、輪郭変形手段109で一旦変形した輪郭をさらに順次変形することにより処理中のフレームの輪郭が求められる。輪郭変形手段109で変形された輪郭は、表示手段111に入力され、その表示画面上に、対応するフレームの断層線に重畳されて表示される。また、輪郭変形手段109から出力された輪郭は、誘導量算出手段110にも入力される。この誘導量算出手段110では、入力された輪郭に基づいて、その輪郭内部の面積、その輪郭の重心位置、その輪郭内部の体積等、輪郭から誘導される誘導量が求められる。また、必要に応じて、その誘導量の複数フレームに亘る差分値が求められる。それら誘導量、又は差分値は、表示手段111に入力され、表示手段111では、それら誘導量又は差分値が、例えば数値、グラフ等により表示される。
尚、図31に示す構成において、DSC105から出力され表示手段111に入力される断層像、初期輪郭抽出手段107から出力され、表示手段111に入力される輪郭、輪郭変形手段109から出力された表示手段111に入力される輪郭、および誘導量算出手段110から出力され表示手段111に入力される誘導量ないしその差分値は、同一のフレームに関する量が同時に表示手段111に入力されるようにタイミング調整がなされている。
図32は、図31に示す超音波診断装置の前処理手段106の具体例を示すブロック図である。
DSC105から出力された画像データは、前処理手段106の一例である二次元FIRフィルタ106aに入力されて平滑化される。動き検出手段108が二次元相互相関演算を行うことにより動きを検出するものである場合は、平滑化処理は必ずしも必要ではないが、動き検出手段108がオプティカルフロー演算を行うことにより動きを検出するものである場合は、オプティカルフロー法は入力画像が空間的に滑らかであることを仮定した手法であることから、二次元FIRフィルタ107a等により、前処理として平滑化処理を行うことが好ましい。
図33は、前処理手段106の他の具体例を示すブロック図である。
この図33に示す前処理手段196bは、二次元FIRフィルタ、ヒストグラム解析部、メモリ(MEM)、2値化処理部により構成されている。尚、二次元FIRフィルタは必ずしも必要ではない。
ヒストグラム解析部は、画像データのヒストグラムを作成することにより画像の輝度値がどのように分布しているかを解析し、輝度分布が所定範囲内に収まるようにデータを加工してメモリに格納するためのものである。2値化処理部では、このような処理の施された画像データを、所定のスレッシュホールドレベルで2値化する。このような2値化処理は、後段の動き検出手段108が相互相関演算により動きを検出するものである場合に、演算速度を向上させることができる点で有用である。
図34は、図31に示す超音波診断装置の一部分の詳細構成の一例を示すブロック図である。
DSC105は、前述したように、超音波走査線データをTV走査線データに変換するものであり、アドレス生成部、補間演算部、メモリ(MEM)から構成されている。アドレス生成部では補間演算に使用するデータの指定と、メモリ(MEM)のアドレスの指定を行う。補間演算部では入力された超音波走査線データに補間演算を施すことによりTV走査線データが生成される。その生成されたTV走査線データは、メモリに一旦格納される。このメモリは、例えば64フレーム分の画像データを格納することのできる容量を有しており、そのフレーム数を越えるデータが入力されると、順次上書きされ、古いデータから順次消去される。
前処理手段106では、適当な空間フィルタリング処理等が行われ、図31に示す動き検出手段108の一例である二次元動きベクトル算出部108aでは、時間的に隣接するフレームの画像データを用いて断層面内の複数の各点の二次元動きベクトルが算出される。
また、初期輪郭抽出手段107は、輝度勾配(グラジェント)算出部と輪郭抽出部とで構成されており、輝度勾配(グラジェント)算出部ではフレーム指定手段112で指定されたフレーム(これを、以後「初期フレーム」と称する)について、その初期フレーム内の各点の空間的な輝度勾配(グラジェント)が算出され、輪郭抽出部ではその算出されたグラジェントに基づいてその初期フレームにおける所定の組織、例えば左心室の輪郭が抽出される。尚、初期フレームにおける輪郭を、以後「初期輪郭」と称する。
輪郭変形手段109では、算出された初期輪郭と二次元動きベクトルとを用いて、初期フレームに順次隣接するフレームにおける輪郭が順次求められる。
図35は、図34に示す二次元動きベクトル算出部108aと、輪郭変形手段109における演算内容を図解するための、心臓の断層像を示す模式図である。
図35の太線で示される輪郭は、初期輪郭もしくは直前のフレームにおいて変形された輪郭である。黒丸印の点は二次元動きベクトル算出部108aによって二次元動きベクトルが算出される、輪郭近傍の心筋内部の点、その黒丸印の点から延びる矢印は算出された二次元動きベクトルを示している。また点線で示される輪郭は、算出された二次元動きベクトルに基づいて変形した輪郭を表わしている。図35には、白丸印も見られるが、この白丸印の点は、心筋から外れており、反射超音波の極めて弱い点であるので、この点に関して求めた二次元動きベクトルは正確な動きを表わしていない可能性が高いため、画像輝度情報に基づいて、輪郭の変形には関与させないようにしている。尚、変形後の輪郭は、スプライン関数等にフィットささることにより求めることが好ましい。
図36は、図31に示す超音波診断装置の一部分の詳細構成の他の例を示すブロック図、図37は、動きの検出方向を予め指定する方法の説明図である。
図36において、図34に示す構成と相違する点は、動き検出手段108bが、方向指定手段と指定方向動き算出部とで構成されている点である。
方向指定手段では図37に示すように輪郭内部の所定の中心点が指定される。この中心点の指定は、オペレータがマニュアルで行ってもよく、あるいは、既に求められている初期輪郭もしくは直前のフレームの輪郭の重心点を求め、その重心点を上記中心点として自動的に指定してもよい。
図36に示す指定方向動き算出部では、図37に示すように、指定された中心点に向かう方向の動きの大きさが求められる。この場合、図34に示す二次元動きベクトル算出部108aにおける二次元動きベクトルの算出とは異なり、中心点に向かう方向の一次元的な演算で済むことになる。輪郭の変形のし方は、前述と同様である。
図38は、図31に示す動き検出手段108のもう1つの例を示すブロック図、図39は、その説明図である。
図38に示す動き検出手段108cは、動き検出部、領域分割手段、領域平均処理部から構成されている。領域分割手段は、例えば、図39に示すように、輪郭近傍において放射方向に8分割するような指定を行う。動き検出部は各領域内それぞれについて複数点ずつ、隣接するフレームから動きベクトルを算出するものである。領域平均処理部では、前処理手段106から出力された画像データ(前処理手段106を通さず、DSC105から出力された画像データであってもよい。)を参照して、動きベクトルが算出された点における輝度値が所定値よりも大きい場合は、その点の動きベクトルが有効であると判定し(図39の黒丸点の点に相当する)、一方、その輝度値が所定値よりも小さい場合は、その点の動きベクトルは無効であると判定して(図39の白丸印の点に相当する)、有効な動きベクトルの平均的な動きベクトルが求められる(図39の矢印に相当する)。輪郭変形手段109では、それら平均的な動きベクトルに基づいて、初期輪郭ないし直前のフレームの輪郭が変形され、そのフレームに適合した輪郭が求められる。
図40は、図31に示す超音波診断装置に、患者(被検体)の心電図を入力する心電図手段が追加された構成を示す部分ブロック図、図41は、心電図波形の模式図である。
図40に示す心電図手段113では、図41に示すような心電図が入力されて表示手段111に送られ、その表示画面には、通常の超音波断層像と共に図41に示すような心電図が表示される。
また、心電図手段113で入力された心電図は、フレーム指定手段112に入力され、フレーム指定手段112では、心電図上のR波(図41参照)が検出され、R波から予め定められた時間経過したA点のフレームが指定される。初期輪郭抽出手段107では、前述したように、フレーム指定手段112で指定されたフレームの初期輪郭が求められる。
図42は、図31に示す超音波診断装置に、ドプラ解析部が追加された構成を示す部分ブロック図である。
超音波診断装置には、通常、ドプラ演算により例えば血流速度等を算出する機能(ドプラ解析部114)が付属しており、このドプラ解析部114からは、血流速度の時間変化を表す情報が出力される。この血流速度の時間変化は、心臓の鼓動に同期しており、この血流速度の情報がフレーム指定手段112に入力され、フレーム指定手段112では、図40における心電図に代わり、この血流速度情報に基づいて、初期輪郭を抽出すべきフレームの指定が行われる。
図43は、図31に示す超音波診断装置にフリーズ手段が追加され、かつ、初期輪郭抽出手段107の構成例をブロックで示したブロック図である。
DSC105には、前述したように、例えば64フレーム分の画像データを格納するためのメモリが備えられている(図34参照)。オペレータが所定の操作を行うと、フリーズ手段115は、DSC105に対し、そのメモリ内に現在格納されている画像データをそのまま保存し、新たな画像データの上書きを禁止するフリーズ命令を出力する。フレーム指定手段112は、オペレータの指示により、あるいは図40,図42を参照して説明した、心電図や血流速度情報に基づいて、初期輪郭を求めるべきフレームを指定する。DSC105からはその初期フレームの画像データが出力されて表示手段111に送られ、その表示画面上にその初期フレームの断層像が表示される。オペレータは、初期輪郭抽出手段107aを構成する輪郭入力手段を用いてその初期フレームにおける輪郭上の点(輪郭点)を入力する。
この入力された輪郭点は、輪郭生成手段に入力され、輪郭生成手段では、入力された輪郭点に基づいて、例えば折れ線、スプライン曲線等により初期輪郭が求められる。この求められた初期輪郭は、輪郭変形手段110に入力され、輪郭変形手段110では、DSC105から出力された、DSC105内に格納されている、例えば64フレームのうちの初期フレーム以外のフレームについての輪郭が求められる。
図44は、図31に示す超音波診断装置の誘導量算出手段110における、輪郭内部の体積の求め方の例を示す模式図である。
図44(A)は、左心室の輪郭を近似した楕円を示しており、その楕円を回転させることにより回転楕円体が求められ、その回転楕円体内部の体積が求められる。
図44(B)は、左心室の輪郭内部を多数の長方形で近似した例を示しており、各長方形を、各長方形の中心軸を中心にして回転させることにより、多数の円盤が求められ、それらの円盤内部の体積の総和が求められる。
例えば、ここに例を示すようにして、各フレーム毎に輪郭内部の体積が求められ、この体積の変化が、例えば図24に示すように、表示画面上に表示される。