JP3711578B2 - プール水の消毒方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はプール水の消毒方法に関する。更に詳細に説明するとプール水の殺菌消毒に塩素ガス、塩素化イソシアヌル酸及びクロロブロモジメチルヒダントを用いてプール水の消毒を行う方法において、プール水のpHを6〜8に制御する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プール水の消毒方法としては、直接プール水中に高度晒粉、塩素化イソシアヌル酸等を投入したり、或いは高度晒粉、塩素化イソシアヌル酸等を入れた薬剤容器内にプール循環水を流入させ薬剤の一部を溶解させるとか、塩素ガス或いは次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、プール水中に注入し、プール水中の残留塩素濃度を一定濃度に維持する方法が行われている。
【0003】
近年、プールの普及に伴って、プール水の殺菌消毒剤として従来から使用されていた次亜塩素酸ナトリウム水溶液や高度晒粉に代わって塩素化イソシアヌル酸の顆粒や錠剤が製品の安定性、使用上の簡易さ、遊泳者の快適さなどの点から、広く使用されるようになってきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来の方法で塩素化イソシアヌル酸等を用いてプール水中の残留塩素濃度を一定にするには使用可能であるが、プール水の原水がpHの緩衝効果の小さい(M−アルカリ度が低い)水の場合、或いはプール水の入替え(換水)が少ない場合には、塩素化イソシアヌル酸を殺菌消毒剤として使用していると、プール水のpHが低下する問題がある。
【0005】
これに対して、従来の対応技術は、毎日、塩素化イソシアヌル酸相当量の炭酸ナトリウム(ソーダ灰)等の中和剤を投入したり、定期的にpHを測定して中和したり方法で対処されている。
これらの方法では、中和剤を投入する方法は面倒であり、投入を忘れる事もあり、また、定期的にpHを測定し中和する方法も、pHの測定が困難であり中和剤を入れた後のpHの測定が同様に困難である。
【0006】
又、本出願人は、残留塩素とpHの自動制御方法を特開平4−200791号及び特開平5−214413号として出願しているが、これらの方法は、確実の制御出来るが装置コストが高いという問題がある。
本発明者等は上記のプール水の消毒方法における問題を種々研究の結果、カルシウムまたはマグネシウムの酸化物、水酸化物及び炭酸塩、カルシウムおよび/またはマグネシウムの酸化物または珪酸塩を主成分とするスラグ並びにカルシウムおよび/またはマグネシウムの珪酸塩を主成分とする無機鉱物から選ばれる少なくとも1種の化合物を中和剤とし、プール水の循環ろ過系に用いることで、上述の問題が解決できることを見出し本発明を完成した。
【0007】
本発明の目的は、塩素ガス、塩素化イソシアヌル酸及びクロロブロモジメチルヒダントを用いてプール水の消毒方法において、プール水のpH低下を防止するプール水の消毒方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明はプール水の殺菌消毒に塩素ガス、塩素化イソシアヌル酸及びクロロブロモジメチルヒダントを用いてプール水の消毒を行う方法において、プール水の循環ろ過系に、珪酸性スラグからのみなる中和剤を充填した容器を設け、該容器内でプール水と中和剤を接触せしめ、該中和剤をプール水の循環水に溶解させる事により、プール水のpHを6〜8に制御する事を特徴とするプール水の消毒方法に関する。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いる消毒剤としての塩素化イソシアヌル酸とはトリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びジクロロイシシアヌル酸ナトリウムの2水塩等が挙げられる。
本発明で中和剤として用いるカルシウムおよび/またはマグネシウムの酸化物を主成分とするスラグは非珪酸性スラグとも呼ばれ、カルシウムおよび/またはマグネシウムの珪酸塩を主成分とするスラグは珪酸性スラグと呼ばれる。これらのスラグの中で珪酸塩を主成分とする珪酸性スラグの方が、製鉄溶鉱炉からでるスラグとして入手が容易で、またプール水のpHを6〜8に制御する効果も優れており好ましい。
【0010】
また、本発明で中和剤として用いるカルシウムおよび/またはマグネシウムの珪酸塩の無機鉱物としては具体的には、ワラストナイト、ランキナイト及びハルトライト等の結晶系を持つ無機鉱物が好ましい。尚、珪酸性スラグもワラストナイトの結晶系を持つものが入手可能である。
上記した中和剤以外に、カルシウムまたはマグネシウムの酸化物、水酸化物及び炭酸塩も中和剤として好ましい。
【0011】
上記した本発明で用いる中和剤は、単品で用いてもよく、1種以上併せて使用しても良い。中和剤の形状は取扱上、粒状が好ましくその粒径は、同様に取扱上3〜20mmの範囲が好ましい。
本発明に用いる中和剤の使用方法としては、プール水の循環ろ過系に、中和剤を充填した容器を設け、該容器内にプール水の循環水を流入させ、該中和剤をプール水の循環水に溶解させる事によりプール水のpHを6〜8に制御する。より具体的には、循環水が流入するようにした筒状の容器に3〜20mmの大きさの粒状の中和剤を充填したり、或いは、穴の開いた例えば網み目状の袋に前記の粒径の粒状の中和剤を入れプールのバランシングタンクに沈める方法が適用される。好ましい、プール水のpHの制御方法は、プール水の循環ろ過ラインに中和剤専用の薬筒を設け、これに前記中和剤を充填し、プール水を通水する方法である。この際に薬筒に中和剤を入れる際に網み目状の袋で包装された中和剤を入れ、薬筒に設置する方法がより好ましい。
【0012】
薬筒は、循環ラインの中で、循環水を通すパイプと薬筒の流入口と排水口で接続できるようにした機構を持つものなら特に限定しない。用いる薬筒の材質は、薬剤およびその水溶液により腐蝕されないものであればよく、特に規定しないが、通常は塩化ビニール(塩ビ)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックが好ましい。
【0013】
プール水の原水がpHの緩衝効果の小さい(M−アルカリ度が低い)水の場合、或いはプール水の入替え(換水)が少ない場合には、本発明方法は特に有効である。また、本発明方法では、一度設置すると長期間pHを6〜8の範囲内に制御する事が可能であるばかりか、中和剤が溶けすぎてアルカリ性に傾く懸念は全くないのが特徴である。
【0014】
【実施例】
以下実施例と比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。
比較例1
一日の遊泳者数90〜147人が使用する350トンの循環式プールに於いて、プール水循環ラインに設けた薬剤溶解器によりトリクロロイソシアヌル酸の顆粒(錠剤)が1日当たり平均 1 kg溶解させて、pHの変化を観察した。
【0015】
尚、このプールで使用する水のM−アルカリ度は平均15度で、1日の水の入替え量は平均10トン(換水率2.9%)である。
プール開始日はpH7.2であったが、7日後には6.7、14日後には5.8に低下した。
【0016】
比較例2
比較例1と同様な条件でプールの管理を実施しながら、1週間に1度、プール水のpHを測定し数度に分けて無水炭酸ナトリウムを投入して中和を行った。その結果を表─1に示すが、この方法ではプール水が均一に中和されるのに時間がかかり中和作業が困難であった。
【0017】
実施例1
比較例1と同様な条件でプールで、中和剤として珪酸性スラグ(製鉄溶鉱炉スラグ、5〜20mmの粒 CaO43重量%、SiO2 52重量%、Fe2 30.4重量%、MgO0.4重量%、結晶系 ワラストナイト)を2mmの網(ポリエチレン製)の袋に10kgを入れ、これを専用の薬筒に入れプール水のろ過循環ラインに設置してpHを調整した。pHの変化を表1に示すが、1ケ月経過後も殆どpHの低下はなく中性を保っていた。
【0018】
実施例2
比較例1と同様な条件のプールで、中和剤として珪酸性スラグ(製鉄溶鉱炉スラグ)15kgを2mmの網(ポリエチレン製)の袋に入れプールのバランシングタンクに沈めておいて、pHを調整した。pHの変化を表1に示すが、1ケ月経過後も殆どpHの低下はなく中性を保っていた。
【0019】
実施例3
比較例1と同様な条件のプールで、中和剤として酸化マグネシウムの粒(4〜10mm)10kgを2mmの網(ポリエチレン製)の袋に入れプールのバランシングタンクに沈めておいて、pHを調整した。pHの変化を表1に示すが、1ケ月経過後も殆どpHの低下はなく中性を保っていた。
【0020】
【表1】
Figure 0003711578
【0021】
【効果】
表1に示すように、塩素化イソシアヌル酸を殺菌消毒剤として用いる際のpH低下を、本発明方法により容易にプール水のpHを長期間6〜8に制御することが出来る。

Claims (2)

  1. プール水の殺菌消毒に塩素ガス、塩素化イソシアヌル酸及びクロロブロモジメチルヒダントを用いてプール水の消毒を行う方法において、プール水の循環ろ過系に、珪酸性スラグからのみなる中和剤を充填した容器を設け、該容器内でプール水と中和剤を接触せしめ、該中和剤をプール水の循環水に溶解させる事により、プール水のpHを6〜8に制御する事を特徴とするプール水の消毒方法。
  2. 中和剤が粒状で、該粒径が3〜20mmの範囲である請求項1記載のプール水の消毒方法。
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