JP3708559B2 - 単一ポンプによる勾配溶出方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、高速液体クロマトグラフにおいて溶離液組成を連続的に変化させるための、単一ポンプによる勾配溶出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶離液の組成を連続的に変化させる勾配溶出方法は、段階的溶出方法に比べて勝っている点がある。段階的溶出方法は、クロマトグラム上に溶離液切替え時の極端な組成変化に起因するショックピークを出現さすことや、急激に組成差のある溶離液を混合するために、溶解熱が生じて泡が発生し、溶離液の流れを停止しやすいことが大きな欠点となっている。これらのことより最近では、勾配溶出方法が多く用いられている。勾配溶出方法には低圧勾配溶出方法(例えば星野、J.Chromatogr.318,415〜422,1984年)と高圧勾配溶出方法と呼ばれる2つの装置構成および方法がある。
【0003】
【従来技術の課題】
低圧勾配溶出方法は、溶離液切替えバルブ、混合槽、単一ポンプ、サンプラーをシリーズに装置構成して用いるもので、単一ポンプのため安価であるが、泡が発生しやすく組成差の大きな溶離液の勾配溶出には向かないことや、溶離液切替え部分がサンプラーから遠く、それらの間にポンプが介在ていることから溶出成分ピークの保持時間に誤差が生じることが大きな欠点となっている。
【0004】
一方、高圧勾配溶出方法では、溶離液の種類に応じた複数ポンプ、混合槽、サンプラーをシリーズに装置構成して用いるもので、溶出成分ピークの保持時間の再現性は良好であることや泡の発生が抑えられるなどの利点はあるが、複数ポンプを使用するため高価であることや大型化することが難点となっている。
【0005】
このように、従来方法では泡が発生したり、溶出成分ピークの保持時間の再現性が悪かったり、複数ポンプを使用するため、装置が大型化するなどの問題をかかえていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
単一ポンプでありながら高圧勾配溶出方法が達成でき、溶出成分ピークの保持時間の再現性が良好となる方法を提供することを目的として成された本発明の方法は、複数の溶媒液槽と、該溶媒液槽に応じた複数個の溶媒取り込み口と一個の溶媒出口とから構成され尚且つ取り込み口の各々は一種類の溶媒のみが前記溶媒出口に導入される溶媒切り替え装置と、異なった組成の溶媒を効率よく攪拌混合することができる溶媒混合槽と、前記一種類の溶媒のみを前記溶媒混合槽に送る単一のポンプと、サンプルを高速液体クロマトグラフの分離カラムへと注入するサンプラーとを用いて高速液体クロマトグラフにおいて勾配溶出を行う方法であって、
前記単一のポンプのストロークによって、複数種類の溶媒液槽のうちの一つの溶媒を予め前記溶媒混合槽に通液した後に、他の溶媒液槽に切り替えてこの他の溶媒を溶媒混合槽に特定のストローク数送って、送られた他の溶媒に応じて濃度勾配を変化させた混合溶離液を前記分離カラムに供給する。
【0007】
好ましくは、他の溶媒に応じて濃度勾配を変化させた混合溶離液を高速クロマトグラフの分離カラムに供給した後に、更に別の溶媒液槽に切り替えてこの別の溶媒を溶媒混合槽に別の特定のストローク数送って、送られた別の溶媒に応じて濃度勾配を更に変化させた混合溶離液を前記分離カラムに供給する。
【0008】
より好ましくは、複数の溶媒液槽と、該溶媒液槽に応じた複数個の溶媒取り込み口と一個の溶媒出口とから構成され尚且つ取り込み口の各々は一種類の溶媒のみが前記溶媒出口に導入される溶媒切り替え装置と、異なった組成の溶媒を効率よく攪拌混合することができる溶媒混合槽と、前記一種類の溶媒のみを前記溶媒混合槽に送る単一のポンプと、サンプルを高速液体クロマトグラフの分離カラムへと注入するサンプラーとを用いて高速液体クロマトグラフにおいて勾配溶出を行う方法であって、
前記単一のポンプに吸引されて、複数種類の溶媒液槽のうちの一つの溶媒Aが予め前記溶媒混合槽に送られた後に、他の溶媒液槽に切り替えてこの他の溶媒Bを溶媒混合槽に送って、送られた他の溶媒Bに応じた混合槽内のBの容積比による濃度勾配が変化された混合溶離液を前記分離カラムに注入し、
更に別の溶媒液槽に切り替えてこの別の溶媒Cを溶媒混合槽に送って、送られた別の溶媒Cに応じた混合槽内のBの容積比による濃度勾配を更に変化させた混合溶離液を前記分離カラムへと注入する。
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明で使用される溶媒切り替え装置は、複数個の溶媒取り込み口と、一個の溶媒出口から構成され、前記複数の取り込み口のそれぞれは一種類の溶媒のみが導入されるものである。
【0011】
具体的にその構造は、例えばロータリーバルブでもよく、また複数の溶媒液槽と溶媒切り替え装置をつなぐ導管の各々に電磁弁を取り付けた構造のものでも良い。
【0012】
単一ポンプは通常の高速液体クロマトグラフに使用される往復運動ピストン型やシリンジ型を使用することができる。溶媒混合槽としては、例えば攪拌子が内臓され、外部から磁力を与えて連動させることで異なった組成の溶媒を効率よく攪拌混合することのできるものが好ましく例示できるが、前記文献星野らの文献で示された容量可変型の混合槽がより好ましい。
【0013】
サンプラーは通常の手動注入やオートサンプラーを使用することができる。
【0014】
本発明の装置を図1に示す。該装置は高速液体クロマトグラフを基本とし、溶媒切り替え装置、単一ポンプ、混合槽、サンプラーをシリーズに連結して本発明の勾配溶出装置としたものである。
【0015】
以下、図1により本発明を具体的に説明する、A、B、C又はDの4種類の溶媒(1)のうちの一種類が溶媒切り替え装置であるバルブ(2)にそれぞれの導管で導かれ、単一のポンプ(3)に吸引され、溶媒混合槽(4)に送られる。従って、溶媒混合槽(4)で4種類の溶媒が混合されることになる。サンプルはサンプラー(5)により、分離カラム(6)へと注入されていく。分離カラムで分離された成分は検出器(7)で検出し、定量される。
【0016】
ここで混合槽の容量をVc(ml)、用いるポンプシリンジの一往復での吐出量を、v´(ml)、流量をV(ml/min)とし、また用いる溶出液の種類A,B,C,D,・・・の、それぞれへの切替え時間から数え始めたポンプのストローク数をa,b,c,d,・・・とする。各ストローク吐出開始時の混合槽からサンプラーへ送液される溶媒中の容量比A:B:C:Dは次式に示される関係が成立している。
【0017】
(1−v´/Vc) b :(1−v´/Vc) c −(1−v´/Vc) b :
(1−v´/Vc) d −(1−v´/Vc) c :1−(1−v´/Vc) d
図2に勾配溶出で、v´=3/43ml、V=1ml/minとし、Aの送液開始後1分後にBに、2分後にCに切り替えたときのBの容積比を示す。溶媒の容積での置き変わり速度は送液速度に比例し、混合槽容量に反比例する。図2は混合槽の容量が2ml(a),1ml(b)、0.5ml(c)と減少すると溶媒の容積での置き変わり速度が大きくなることを示している。v´は溶媒の容積での置き変わり速度に関与せず、速度変化の滑らかさに関わる。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、溶離液の組成を連続的に変化させる勾配溶出操作を、簡単な構成で効率よく達成することができ、装置自体も、溶媒切り替え装置、単一のポンプ、溶媒混合槽、サンプラーをシリーズに配置するだけで高速液体クロマトグラフィー等の勾配溶出装置として使用することができる。
【0019】
従って、非常に安価で、単純な構成で、泡立ちを抑制しえる等の効果を発揮しえる、液体クロマトグラフィー等で好適な勾配溶出を提供できる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
実施例1
試料は、抗凝固剤としてヘパリンを添加して採血した新鮮血10ulに水40ulを加えよく混和し、溶血液とし−80℃で保存してあるものを、溶媒A(20mM MES−HEPES,0.13MNaCl,0.01%NaN3 (pH5.0))1.95mlを加えて、4℃、5分間、12,000回転で遠心分離し、上清10ulを高速液体クロマトグラフィーにて測定した。分離カラム(6)には、TSKgel SP−NPR 4.6idX35mm(東ソー製)を用い、25℃の分離温度とした。
【0022】
成分の分離は、流速1ml/minで、溶媒A(20mM MES−HEPES,0.13M NaCl,0.01%NaN3 (pH5.0))を通液しておき、1分後に試料を注入すると同時に溶媒B(20mM MES−HEPES,0.44M NaCl0.01%NaN3 (pH5.0))、2分後に溶媒C(20mM MES−HEPES,1.21M NaCl,0.01%NaN3 (pH5.0))、2.5分後に溶媒B(20mM MES−HEPES,0.44M NaCl0.01%NaN3 (pH5.0))、4.0分後に溶媒D(20mM MES−HEPES,0.007M NaCl,0.01%NaN3 (pH5.0))とする勾配溶出方法によった。尚、図4は試料注入時を起点としたグラフを示す。
【0023】
検出には紫外線検出器を用い415nmにて測定した。なお溶媒混合槽の容量は2.0mlで、マグネチックスターラーで攪拌できるものを用いた。
【0024】
得られた試料注入時を起点としたクロマトグラムを図3に示す。不安定型ヘモグロビンA1c(1)安定型ヘモグロビンA1c(2)、ヘモグロビンAo(3)が完全に分離され、かつ分析時間は4分以内と極めて短時間であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の勾配溶出装置を設けた測定装置の一実施態様例である。
【図2】 図2は、本発明方法による混合槽出口の溶離液組成と溶出容量の関係を、混合槽の容量を変化させてプロットしたグラフである。(a)は2mlの場合、(b)は1mlの場合、(c)は0.5mlの場合を示している。
【図3】 図3は、本発明の装置により不安定型ヘモグロビンA1c、安定型ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンAoを測定したクロマトグラムである。それぞれの成分が4分以内に分離できたことが分かる。
【図4】 図4は、本発明方法による不安定型ヘモグロビンA1c、安定型ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンAoを測定するために設定した溶離液組成と溶出容量の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
(1)溶媒
(2)溶媒切り替え装置(バルブ)
(3)ポンプ
(4)溶媒混合槽
(5)サンプラ−
(6)分離カラム
(7)検出器
Claims (3)
- 複数の溶媒液槽と、該溶媒液槽に応じた複数個の溶媒取り込み口と一個の溶媒出口とから構成され尚且つ取り込み口の各々は一種類の溶媒のみが前記溶媒出口に導入される溶媒切り替え装置と、異なった組成の溶媒を効率よく攪拌混合することができる溶媒混合槽と、前記一種類の溶媒のみを前記溶媒混合槽に送る単一のポンプと、サンプルを高速液体クロマトグラフの分離カラムへと注入するサンプラーとを用いて高速液体クロマトグラフにおいて勾配溶出を行う方法であって、
前記単一のポンプのストロークによって、複数種類の溶媒液槽のうちの一つの溶媒を予め前記溶媒混合槽に通液した後に、他の溶媒液槽に切り替えてこの他の溶媒を溶媒混合槽に特定のストローク数送って、送られた他の溶媒に応じて濃度勾配を変化させた混合溶離液を前記分離カラムに供給することを特徴とする単一ポンプによる勾配溶出方法。 - 請求項1に記載された勾配溶出方法において、
前記他の溶媒に応じて濃度勾配を変化させた混合溶離液を高速クロマトグラフの分離カラムに供給した後に、更に別の溶媒液槽に切り替えてこの別の溶媒を溶媒混合槽に別の特定のストローク数送って、送られた別の溶媒に応じて濃度勾配を更に変化させた混合溶離液を前記分離カラムに供給することを特徴とする単一ポンプによる勾配溶出方法。 - 複数の溶媒液槽と、該溶媒液槽に応じた複数個の溶媒取り込み口と一個の溶媒出口とから構成され尚且つ取り込み口の各々は一種類の溶媒のみが前記溶媒出口に導入される溶媒切り替え装置と、異なった組成の溶媒を効率よく攪拌混合することができる溶媒混合槽と、前記一種類の溶媒のみを前記溶媒混合槽に送る単一のポンプと、サンプルを高速液体クロマトグラフの分離カラムへと注入するサンプラーとを用いて高速液体クロマトグラフにおいて勾配溶出を行う方法であって、
前記単一のポンプに吸引されて、複数種類の溶媒液槽のうちの一つの溶媒Aが予め前記溶媒混合槽に送られた後に、他の溶媒液槽に切り替えてこの他の溶媒Bを溶媒混合槽に送って、送られた他の溶媒Bに応じた混合槽内のBの容積比による濃度勾配が変化された混合溶離液を前記分離カラムに注入し、
更に別の溶媒液槽に切り替えてこの別の溶媒Cを溶媒混合槽に送って、送られた別の溶媒Cに応じた混合槽内のBの容積比による濃度勾配を更に変化させた混合溶離液を前記分離カラムへと注入することを特徴とする単一ポンプによる勾配溶出方法。
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JP15883692A JP3708559B2 (ja) | 1992-05-27 | 1992-05-27 | 単一ポンプによる勾配溶出方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH06109714A JPH06109714A (ja) | 1994-04-22 |
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JP15883692A Expired - Lifetime JP3708559B2 (ja) | 1992-05-27 | 1992-05-27 | 単一ポンプによる勾配溶出方法 |
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1992
- 1992-05-27 JP JP15883692A patent/JP3708559B2/ja not_active Expired - Lifetime
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