JP3706003B2 - 超臨界水反応システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難分解性物質や有害物質を完全分解処理するのに適した、超臨界水酸化分解反応システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題の観点から、有害物質の処理は重要な社会的課題になっている。特に、ダイオキシンを分析した後のサンプル瓶は、廃棄物処理業者に処理・処分を委託できず、これらを生成した分析実施場所、実験所、研究所等に保管されていた。また、ダイオキシンを分析する際には、典型的には、ダイオキシンを溶媒に溶解して溶液にしており、この溶液がサンプル瓶中に保管されている。そして、サンプル瓶を保管をしている間に、その内部のダイオキシン溶液から溶媒が除々に揮発し、サンプル瓶の内面に付着したり、乾固したりする場合があった。そこで、サンプル瓶に付着したダイオキシン等の分解対象物を溶解した後、その溶液を無害化することが所望される。
【0003】
一方で、超臨界水による有機化合物の酸化分解反応が知られている。図4は、純粋な水の状態図を示す。固相、液相、気相は、それぞれ、S、L、Gで示される。曲線OAは蒸気圧曲線であり、液体の蒸気圧の温度変化を表す。曲線OAは臨界点Aで終わり、臨界点の温度、圧力、モル体積をそれぞれ、臨界温度、臨界圧、臨界体積という。これらを総称して、臨界定数(critical constant)といい、臨界定数は、物質に固有の定数である。なお、臨界点では、気体と液体のモル体積は一致する。
【0004】
臨界温度より高い温度、かつ、臨界圧力を越えた圧力の下は、気体、液体の区別ができない流体となり、かかる流体は、超臨界流体(supercritical fluid)という。例えば、純粋な水の臨界温度は374℃であり、臨界圧は218atmである。
【0005】
超臨界とは、臨界温度より高い温度、かつ、臨界圧力を越えた圧力をいう。超臨界では、物質は、通常の気相又は液相とは異なる性質を示し、また、その反応性も異なる。そこで、超臨界条件を分解反応に応用することが研究されている。
【0006】
例えば、超臨界水、即ち、374℃以上、かつ、22MPa以上の水を分解反応の媒体として利用することが提案されている。水と油というように、水は、通常は油のような有機物を溶解しない。しかし、超臨界水は、油のような有機物をも溶解する、優れた溶媒である。
【0007】
そして、超臨界水が存在するような高温では、有機物等は容易に熱分解する。特に、酸素等の酸化剤が存在する場合には、超臨界水を用いることにより、ほとんどの有機物を水と二酸化炭素にほぼ完全に分解することができる。このように、超臨界水を用いることにより、上記のような有害物質、廃棄物も分解することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、超臨界水を用いて、有害物質を有する容器を洗浄する場合、有害な化合物を扱うため、洗浄処理を完全に自動化させ、有害物質を含む廃液を超臨界水反応装置まで人手を介さずに導入することが必要である。
【0009】
本発明は、超臨界水反応システムに関し、有害物質を有する容器を、完全自動洗浄処理することができるシステムを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の一側面では、注入装置(30)及び超臨界水反応装置(10)を含む超臨界水反応システムであって、前記超臨界水反応装置は、チャンバーを確定する反応器(1)と、前記反応器中の前記チャンバーに流体接続する超臨界水用ノズル(2)とを有し、前記注入装置は、容器を洗浄するための洗浄装置(40)を有し、前記注入装置は、前記超臨界水用ノズルに流体接続されることを特徴とする超臨界水反応システムが提供される。
【0011】
本発明の一実施形態では、前記洗浄装置(40)が、洗浄液を容器(42)内に導入し、かつ、廃液を排出する吐出吸引針(44)を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明の一実施形態では、吐出吸引針(44)は、洗浄液を容器(42)内に供給し、かつ廃液を容器(42)から排出するための、先端が針になっている内筒(46)と、前記内筒の外側に配置され、前記容器内に気体を導入し、又は前記容器から気体を排出するための外筒(48)とを有することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本願を実施形態及び図面に基づいて更に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る注入装置の全体図である。図2は、本発明の実施形態に用いる超臨界水反応装置の全体図である。図3は、本発明の実施形態に係る吐出吸引針の主要部詳細図である。
【0014】
まず、図1を用いて、注入装置について詳細に説明する。
【0015】
図1に示すのは、超臨界水反応装置に廃液を注入する、本発明の一実施形態に用いる注入装置30であり、洗浄カップ50と、洗浄カップ50に接続された洗浄液貯蔵容器52と、洗浄液貯蔵容器52に接続された分注器54と、分注器54に接続された洗浄装置40と、洗浄装置40に接続された減圧廃液瓶56とを有する。
【0016】
洗浄カップ50は、洗浄液を入れるための容器を有しており、洗浄ポンプ58を介して洗浄液貯蔵容器52に接続される。一般的に洗浄液貯蔵容器52よりも大きく、洗浄液を大量に貯蔵するためのものである。
【0017】
洗浄液は、超臨界水反応装置にて分解する物質(以下、「分解対象物」という)によって適宜決めることができ、特に制限されない。ヘキサン、イソプロピルアルコール等の有機溶媒であってもよいし、洗剤等の界面活性剤を含む溶液であってもよいし、後の処理で超臨界水となることから、水を含むものであってもよい。有機溶媒である場合、分解対象物を溶解可能な溶媒であることが好ましい。また、超臨界水装置内で分解対象物を燃焼させる場合は、低級アルコール、アセトン、ヘキサンなどの発火しやすい有機溶媒であることが好ましい。発火しやすい目安として、例えば、1気圧での沸点が200℃以下の有機溶媒が好ましく、100℃以下の有機溶媒が好ましい。また、1気圧、0℃にて液体である有機溶媒が好ましい。有機溶媒が気体である場合には、高圧を維持することが困難だからである。例えば、炭素数が10以下の低級アルコール、ヘキサン等の極性の低い有機溶媒が用いられる。例えば、分解対象物がダイオキシン類の場合には、ヘキサン等の極性の低い有機溶媒が用いられる。
【0018】
洗浄液貯蔵容器52は、洗浄液を入れるための容器を有し、3方電磁弁60を介して分注器54と接続される。洗浄カップ50から洗浄ポンプ58によって導入された洗浄液を一時的に貯蔵するためのものである。
【0019】
3方電磁弁60は、電気的に制御され、独立して開閉可能な3つの弁60a,60b,60cを有する。弁60aと弁60bとを開け、弁60cを閉じることにより、洗浄液貯蔵容器52と分注器54とを接続する。一方、弁60bと弁60cとを開け、弁60aを閉じることにより、分注器54と洗浄装置40とを接続する。
【0020】
分注器54は、モータ等の駆動装置54aと、洗浄液を一定量保持する保持部を有し、3方切換バルブ64を介して洗浄装置40に接続される。分注器54には、駆動装置54aにより洗浄液貯蔵容器52から設定量の洗浄液が導入される。この設定量は、分解対象物を有する容器42の容量に合わせて予め決められる。分注器54の保持部に洗浄液が導入されるときは、上述したように、3方電磁弁60のうち、弁60aと弁60bとが開いており、弁60cが閉じられる。設定量の洗浄液の導入が終了すると、弁60aが閉じられ、弁60cが開く。分注器54の保持部に保持された設定量の洗浄液は、駆動装置54aにより、洗浄装置40側へ押し出される。
【0021】
3方切換バルブ64は、分注器54、洗浄装置40及び減圧廃液瓶56に接続される。3方切換バルブ64は、切換え可能な2つのライン64a−64bと、64b−64cとを有しており、ライン64a−64bが有効なとき、ライン64b−64cは接続されておらず、分注器54と洗浄装置40との接続のみを可能にする。一方、ライン64b−64cが有効なとき、ライン64a−64bは接続されておらず、洗浄装置40と減圧廃液瓶56との接続のみを可能にする。
【0022】
分注器54から押し出された定量の洗浄液は、3方切換バルブ64のライン64a−64bを介して洗浄装置40に導入される。
【0023】
洗浄装置40は、駆動装置68と、この駆動装置68、及び、3方切換バルブ64に接続されたライン72を保持する保持部70と、ライン72と接続された吐出吸引針44と、分解対象物を有する容器42を保持するラック66とを有する。
【0024】
保持部70は、駆動装置68とライン72を保持し、ライン72及びライン72に接続される吐出吸引針44の位置を変化させる。駆動装置68は単一であっても、複数あってもよい。駆動装置68により、ライン72及び吐出吸引針44の位置を変化させ、吐出吸引針44をラック66内に保持された所定の容器42内に挿入させる。吐出吸引針44は、単一であっても、複数であってもよい。2以上有すると、同時に複数の容器を洗浄処理することが可能となる。
【0025】
ラック66には、1以上の容器42が配置されている。配置される容器42が複数である場合は、通常、一定の間隔をおいて配置される。吐出吸引針44をそれぞれの容器42に挿入しやすくするためである。ラック66は、ラック66を移動させるための駆動装置を有していてもよい。
【0026】
容器42は、分解対象物を有する容器である。
【0027】
分解対象物は、固体であっても、液体であってもよく、ゾル、ゲル、比重が高い場合は気体であってもよい。ダイオキシン等の有害物質、医療廃棄物、血液等の生体サンプル、微生物分離後の媒質等の廃棄物、実験後の廃棄溶液などを挙げることができる。一般的な有機物は勿論のこと、残留性有機汚染物質(POPs:PersistentOrganic Pollutants )或いは残留性有害生物蓄積物質(PTBs:PersistentToxic Bio-accumlatives )、環境基準において有害物質指定されているPCBs,トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、廃農薬等の有機塩素化合物等を挙げることができる。また、塩素のほかにもハロゲン化物は一般に難分解性であるが、例えば、有機臭素化合物等も挙げることができる。さらに、各種の工場における生産工程からは様々な硫黄化合物、窒素化合物、リン化合物等が排出され、これらの完全分解が求められる有機物を挙げることもできる。
【0028】
分解対象物は、例えば、サンプル瓶中のダイオキシン等の有害物溶液から溶媒が揮発した後の付着物又は乾固物であってもよい。
【0029】
容器としては、通常有害な物質を収納することができる容器であればよく、特には限定されない。例えば、ガラス製のサンプル瓶、試験管、フラスコ、シャーレ等を挙げることができる。
【0030】
「分解対象物を有する容器」とは、分解対象物を内部に有する容器のことであり、典型的には、分解対象物が内部に残留し、又は付着している容器や、分解対象物を内部に保持した容器を指し、例えば、分解対象物を分析、分離する際に使用したすべての容器、分解対象物が付着したすべての容器、分解対象物を保持した容器などを挙げることができる。
【0031】
内部に有する分解対象物を外界に露出させない観点から、容器42は、蓋42aを有していることが好ましい。蓋42aは、吐出吸引針44が挿入しやすい材質からできていることが好ましい。
【0032】
以下、図3を用いて、吐出吸引針44について詳細に説明する。
【0033】
吐出吸引針44は、洗浄液を容器42内に供給し、かつ廃液を容器42から排出するための、先端が針になっている内筒46と、内筒46の外側に配置され、容器42内に気体を導入し、又は容器42から気体を排出するための外筒48とを有する2重管構造を持つ。
【0034】
内筒46は、洗浄液の導入、排出が可能になるように、両端が開口されている。一方の開口端は、容器42内への洗浄液の吐出を可能としている。また、この開口端は先端が針状になっており、容器42が蓋42aを有する場合も、吐出吸引針44の容器42への挿入を可能にする。もう一方の開口端は、ライン72に接続され、分注器54からの洗浄液の導入を可能にする。
【0035】
外筒48は、一端のみ開口されている。即ち、吐出吸引針44が容器42内に挿入された際に、容器42内に位置する一端は閉塞されているため、容器42内の洗浄液が外筒48を経て外界に排出されることがない。また、吐出吸引針44が容器42内に挿入された際に、容器42外に位置する他端は開口され、大気中にさらされている。
【0036】
外筒48の側面には、通気孔48aが形成され、容器42内の気体の通気を可能にしている。容器42が密封容器である場合に、吐出吸引針44に通気孔を設けることにより、容器42内への洗浄液の導入、廃液の排出が容易になる。この通気孔48aは、吐出吸引針44が完全に容器42内に挿入された状態で、容器42の蓋42aに近い位置にくるように設計されているため、洗浄液は通気孔48aを通じて排出されることがない。また、外筒48には図示しない弁が設けられているため、洗浄液は外筒48を経て大気中に排出されない。
【0037】
図1に示すように、容器42を洗浄する際は、駆動装置68により、吐出吸引針44を洗浄する容器42の上側まで移動させ、吐出吸引針44を容器42内に挿入させる。この際、ラック66を移動させてもよい。所定量の洗浄液は、ライン64a−64bが有効である3方切換バルブ64を介して、分注器54から導入され、内筒46を経て容器42内に導入される。この際、通気孔48aを経て容器42内の気体は排出される。
【0038】
容器42内に導入された洗浄液は、容器42内に有する分解対象物と混合され、または分解対象物を溶解し、廃液となる。例えば、分解対象物が容器42に付着又は乾固している有害物である場合には、洗浄液がこのような有害物を溶解して、廃液となる。
【0039】
所定量の洗浄液が容器42内に導入されると、3方切換バルブ64のラインが切り換わり、ライン64b−64cが有効となる。
【0040】
洗浄装置40は、3方切換バルブ64のライン64b−64cを介して減圧廃液瓶56に接続される。減圧廃液瓶56は、減圧ポンプ56aと、超臨界水反応装置10に接続されるライン56bとを有する。
【0041】
減圧ポンプ56aにより、容器42内の廃液は吸引され、減圧廃液瓶56内に排出される。この際、通気孔48aを経て、大気中から空気が容器42内に導入される。また、減圧ポンプ56aの排気は、蒸発した洗浄液を含むおそれがあるため、減圧ポンプ56aの排気側には活性炭等の吸着材を設けることが好ましい。
【0042】
廃液の排出が終了すると、駆動装置68により吐出吸引針44は容器42から抜き取られ、まだ洗浄されていない容器42がある場合は、その容器42の上側へ移動され、上記の操作が繰り返される。
【0043】
減圧廃液瓶56は、ライン56bを介して超臨界水反応装置10の供給系に接続される。
【0044】
以上のように形成された注入装置30では、まず、洗浄すべき容器42をラック66にセットし、洗浄すべき容器42の容量、内部に有する分解対象物の量から、洗浄に必要な洗浄液の量を設定する。
【0045】
次に、駆動装置54aを駆動させて、予め洗浄液が貯蔵されている洗浄液貯蔵容器52から、3方電磁弁60を介して設定量の洗浄液を分注器54に導入する。この際、3方電磁弁の弁60a及び弁60bが開かれ、弁60cが閉じられている。
【0046】
図示しないスタートボタンを押すと、弁60aが閉じられ、弁60cが開く。また、駆動装置68により、吐出吸引針44が洗浄しようとする容器42に挿入される。駆動装置54aが駆動し、注入器54内の洗浄液が、3方切換バルブ64のライン64a−64bを経て、吐出吸引針44を介して容器42に導入される。容器42内に導入された洗浄液は、容器42内に有する分解対象物と混合され、または分解対象物を溶解し、廃液となる。例えば、分解対象物が容器42に付着又は乾固している有害物である場合には、洗浄液がこのような有害物を溶解して、廃液となる。
【0047】
所定量の洗浄液の導入が終了すると、3方切換バルブ64のラインが、ライン64b−64cに切り替わり、減圧ポンプ56aに吸引されて、廃液は減圧廃液瓶56に導入される。
【0048】
必要があれば、以上の操作を繰り返し行い、分解対象物を有する容器42を洗浄する。
【0049】
このように、超臨界水用ノズルに廃液を注入する注入装置は、完全に機械化されているため、人手を介することなく、安全に、有害物質を有する容器を洗浄処理することができる。
【0050】
続いて、図2を用いて、超臨界水反応装置について詳細に説明する。
【0051】
図2に示すのは、反応器1と、その反応器1内へ超臨界水、酸化剤、分解対象物および燃料等の流体を吐出させる超臨界水用ノズル2とを備えた超臨界水反応装置10である。
【0052】
本発明の一実施形態に用いる超臨界水反応装置10は、チャンバー3を確定する反応器1を備える。
【0053】
反応器1は、温度及び圧力が水の臨界点以上の反応領域を形成することができる管式反応器である。本実施形態では、燃料を供給して燃焼させるので、その燃焼温度に耐えられることが必要である。
【0054】
もっとも、反応器1は管式反応器に限られず、温度及び圧力が水の臨界点以上の反応領域を形成することができるものであれば反応器の型式に限定されない。例えば、いわゆる管式反応器の他、ベッセル型反応器(縦型筒状反応器)などのいずれの反応器も採用することができる。「管式反応器」は、直線的に延びた筒状構造、曲線的に延びた筒状構造、これらを組み合わせた構造等のいずれのものであってもよく、その延設構造などによって限定されるものではない。「ベッセル型反応器」は、超臨界水酸化反応を行うための超臨界領域を器内上部に有し、かつ亜臨界領域を器内下部に有する縦型筒状構造のものをいう。下部の亜臨界領域に落下した塩を亜臨界水に溶解させて器外に排出できるので、超臨界酸化反応で生成する酸をアルカリで中和することが必要な反応に好適に用いられる。有機物分解の超臨界水酸化の条件は、一般的には、反応温度が400℃以上、好ましくは550℃〜650℃前後であり、反応圧力は22MPa〜60MPa、好ましくは22MPa〜30MPaである。反応時間は、例えば、1秒〜24時間であり、好ましくは、1分〜2時間であり、更に好ましくは1分〜10分、更になお好ましくは1分〜2分である。
【0055】
反応器1は、上流側がハウジング1aの内側に支持されている。反応器1の上流側には超臨界水用ノズル2が備えられており、チャンバー3と流体接続する吐出口16を有する。ノズル2には、3つの導入管2a、2b、2cが接続されており、それぞれハウジング1aに支持される。導入管2a,2b及び2cのいずれかは、注入装置30のライン56bと接続されており、分解対象物を含む廃液がノズル2に導入される。同様に、導入管2a,2b及び2cのいずれかから、超臨界水、酸化剤および燃料等の流体がノズル2に導入される。
【0056】
「超臨界水」とは、水の臨界点以上、すなわち374℃以上の温度かつ22MPa以上の圧力下に存在する水をいう。超臨界水は、分解対象物に対する溶媒としての役割を果たす。このため、超臨界水の量や温度は、分解対象物の反応温度、供給量、予熱の有無などに応じて決めるが、一般的には一気に昇温できるように、500℃〜650℃の超臨界水を供給するのが好ましい場合が多い。
【0057】
「酸化剤」とは、酸素、空気等のガス状酸化剤あるいは過酸化水素水等の液状酸化剤などがある。通常、費用の点から空気が選ばれることが多い。
【0058】
「分解対象物を含む廃液」とは、上述したように、注入装置30から排出される廃液を指す。分解対象物が容器42に付着又は乾固している有害物である場合には、洗浄液がこのような有害物を希釈、溶解又は再溶解して、廃液となる。
【0059】
燃焼に用いる「燃料」は、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、アセトン等の低級ケトン、ヘキサン等の低級アルカンなどの発火しやすい有機溶媒である。望ましくは低級アルコール又は低級アルカンであり、更に望ましくはイソプロピルアルコール又はヘキサンである。容器42を洗浄する際に使用した洗浄液であってもよい。
【0060】
「超臨界水用ノズル」とは、2つの流体を並流させる二流体ノズルであってもよいし、3つの流体を並流させる三流体ノズルであってもよいし、それ以上の多流体ノズルであってもよい。
【0061】
導入管2a,2b,2cにより導入された流体は、ノズル2の吐出口16から反応器1に向かって吐出され、噴出しながら超臨界水反応を起こし、炎を発生しながら燃焼する。
【0062】
「超臨界水反応」とは、超臨界水を使用して生じる反応のすべてをいい、典型的には分解対象物の分解反応をいう。
【0063】
反応器1は、高温かつ高圧に耐えられる材料で構成されており、例えば、インコネル、特に、インコネル625から構成される。例えば、600℃の温度、30MPaの圧力に耐えられる材料を用いる。なお、吐出口16の下、火炎そのものは700℃、800℃になったとしても、チャンバーの内壁では600℃の温度に耐えられればよいこともある。
【0064】
超臨界水反応装置は、反応器1の周囲には、チャンバーを加熱するため、電熱コイル等の加熱器4が設けられている。加熱器4の系方向に外側は、断熱材等の保温材5で被覆されている。加熱器4及び保温材5は、ハウジング5aの内側に支持される。
【0065】
超臨界水反応装置は、チャンバー3の下流に、熱交換機6を有しても良い。熱交換機6は、ハウジング6aと、その内部にほぼ平行に配置されている複数の管と、ハウジング6aに設けられた冷媒入口6bと、ハウジング6aに設けられた冷媒出口6cを有する。管の内側がチャンバー3に流体接続しており、これにより、チャンバー3内を通過した反応生成物が熱交換機6の管の内部を流れることができる。一方、それらの管の外側かつハウジング6aの内側を空気等の冷媒が、冷媒入口6bから冷媒出口6cに向かって、反応生成物と逆方向に流れることができる。
【0066】
次いで、熱交換機6の下流に更に熱交換機7を有することが好ましい。熱交換機7は、ハウジング7aと、その内部にほぼ平行に配置されている複数の管と、冷媒入口(図示せず)と、その上流側に冷媒出口7cとを有する。それらの管の内側が熱交換機6の管の内側に流体接続しており、これにより、熱交換機6の管の内部を通過した反応生成物が更に熱交換機7の管の内部を流れることができる。一方、その管の外側かつハウジング7aの内側を、冷媒入口(図示せず)から冷媒出口7cに向かって、水等の冷媒が反応生成物と逆方向に流れることができる。
【0067】
熱交換機6と熱交換機7とは、例えば、フランジ8a及びフランジ8bを介して接続される。
【0068】
例えば、熱交換機6では、冷媒として、空気等の気体が好ましく用いられる。一方、熱交換機7では、冷媒として、水等の液体が好ましく用いられる。熱交換機6の管としては、例えば、600℃の温度、かつ、30MPaの圧力に耐える部材、例えば、インコネル625が用いられる。熱交換機7の管としては、例えば、370℃の温度、かつ、30MPaの圧力に耐える部材、例えば、インコネル625が用いられる。
【0069】
本発明の一実施形態に用いる超臨界水反応装置は、以上のように構成される。
【0070】
導入管2a,2b,2cによりノズル2に導入された超臨界水、分解対象物を含む廃液、酸化物及び燃料等の流体は、ノズル2の吐出口16から反応器1へ向かって吐出され、噴出し、適宜設計したノズル構造や供給流量の設定により与えられる所定粒径の液滴となって反応器1内に噴出する。そしてこの際に、被処理流体は超臨界水との混合により一気に水の臨界温度以上に昇温され、酸化剤の存在により発熱反応し、酸化分解や加水分解等により水(この条件下では超臨界水)、二酸化炭素、窒素等の単純な化合物まで分解される反応が進行する。この際、反応器1に確定されるチャンバー3内は、超臨界水反応が生じる環境となるように、加熱器4により加熱され、それらは保温材5により保温される。
【0071】
反応生成物は、チャンバー3内を通過して下流側に流れ、チャンバー3の下流側に備えられた熱交換機6により冷却される。反応生成物の冷却は、冷媒入口6bから冷媒出口6cに向かって流れる冷媒が、熱交換機6を構成する複数の管の内側を下流に向かって流れる反応生成物の温度を奪うことによって行われる。
【0072】
熱交換機6によって、ある程度冷却された反応生成物は、熱交換機6の下流側に設けられた熱交換機7によって更に冷却される。この際、反応生成物の冷却は、同様に、冷媒入口(図示せず)から冷媒出口(図示せず)に向かって流れる冷媒が、熱交換機7を構成する複数の管の内側を下流に向かって流れる反応生成物の温度を奪うことによって行われる。
【0073】
以上のように冷却された反応生成物は、収集可能な状態になる。収集可能な状態になった反応生成物は、収集され、器外に排出される。
【0074】
超臨界水用ノズルに廃液を注入する注入装置、及び注入された廃液を分解処理する超臨界水反応装置を完全に機械化することにより、人手を介することなく、安全に、有害物質を有する容器を洗浄処理することができる。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、注入装置及び超臨界水反応装置が完全に自動化されているため、人手を介さずに簡便かつ安全に有害物質を分解処理することができ、有害物質を有する容器の自動洗浄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に用いる注入装置の全体図である。
【図2】本発明の実施形態に用いる超臨界水反応装置の全体図である。
【図3】本発明の実施形態に用いる吐出吸引針の主要部詳細図である。
【図4】純粋な水の状態図である。
【符号の説明】
1 反応器
1a,5a,6a,7a ハウジング
2 超臨界水用ノズル
2a,2b,2c 導入管
3 チャンバー
4 加熱器
5 保温材
6,7 熱交換機
6b 冷媒入口
6c 冷媒出口
8a,8b フランジ
10 超臨界水反応装置
16 吐出口
30 注入装置
40 洗浄装置
42 容器
42a 蓋
44 吐出吸引針
46 内筒
48 外筒
48a 通気孔
50 洗浄カップ
52 洗浄液貯蔵容器
54 分注器
54a 駆動装置
56 減圧廃液瓶
56a 減圧ポンプ
56b,72 ライン
58 洗浄ポンプ
60 3方電磁弁
60a,60b,60c 弁
64 3方切換バルブ
64a―64b,64b−64c ライン
66 ラック
68 駆動装置
70 保持部

Claims (3)

  1. 注入装置及び超臨界水反応装置を含む超臨界水反応システムであって、
    前記超臨界水反応装置は、内部にチャンバーを確定する反応器と、
    前記反応器内の前記チャンバーに流体接続する超臨界水用ノズルとを有し、
    前記注入装置は、容器を洗浄するための洗浄装置を有し、
    前記注入装置は、前記超臨界水用ノズルに流体接続されることを特徴とする超臨界水反応システム。
  2. 前記洗浄装置が、洗浄液を前記容器内に導入し、かつ、廃液を排出する吐出吸引針を有することを特徴とする請求項1に記載の超臨界水反応システム。
  3. 前記吐出吸引針が、
    前記洗浄液を前記容器内に供給し、かつ前記廃液を前記容器から排出するための、先端が針になっている内筒と、
    前記内筒の外側に配置され、前記容器内に気体を導入し、又は前記容器から気体を排出するための外筒とを有することを特徴とする請求項2に記載の超臨界水反応システム。
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