JP3702932B2 - 配電系統の損失最小化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば配電営業所における制御用コンピュータ等に付加される機能であって、配電系統の構成、機器のインピーダンス、負荷や電源の容量などが与えられたときに、遺伝的アルゴリズム(以下、必要に応じてGAと略称する)を利用して、対象系統の有効電力損失を最小化する放射状の系統構成を三相回路計算により開閉手段(区分開閉器など)の入切として求めるようにした配電系統の損失最小化方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、この種の損失最小化方法では、発見的なアルゴリズムに基づいた探索により有効電力損失を最小化する系統構成を求めており、その際の有効電力損失は定電流負荷を仮定した単相回路計算により算出していた。
しかるに、このように発見的なアルゴリズムを用いる場合には、系統ごとに発見的な規則を見つけ出す必要がある。従って、系統ごとにプログラムを変更しなくてはならず、多くの労力やコストを必要としていた。また、系統ごとの規則を見つけても、最適化が十分である保証はなかった。
【0003】
更に、最近ではインバータに代表されるような定電力負荷が増加傾向にあるため、従来のように定電流負荷を仮定した計算では対応できず、様々な負荷特性を考慮する必要が生じている。
また、負荷の不平衡度は次第に増してきており、平衡回路を仮定した単相回路計算では実系統の現状にはそぐわなくなってきている。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、各種の系統や負荷特性に対し大幅なプログラムの変更を伴うことなく汎用のプログラムによって適用可能であり、また、不平衡回路や不平衡負荷への適用も可能にした配電系統の損失最小化方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、配電系統の構成、各機器インピーダンス、各負荷容量及び各電源並びに電源容量が与えられた時に、遺伝的アルゴリズムにより、対象系統の有効電力損失を最小化する放射状の系統構成を開閉手段の入切として求める配電系統の損失最小化方法において、
前記有効電力損失を三相回路計算(三相不平衡回路計算)により求めるとともに、
前記遺伝的アルゴリズムは、
開閉手段により区分される複数のセクションに対して供給予備力が大きい電源から給電されるように、放射状制約及び輸送経路制約を考慮しながら各セクションを確率的に徐々に決定していき、各セクションについて電源が決定した放射状の系統構成をストリング表現に変換して初期ストリングを生成する初期ストリング生成ステップと、
対象系統の全損失を用いた適応度関数に基づいてストリングを評価し、各ストリングの適応度に応じて各ストリングの増殖及び淘汰を行うストリング評価・選択ステップと、
ストリング表現における隣接セクションの境を交差位置として交差を行い、放射状の系統構成の一部を他の構成と入れ替える交差ステップと、
ストリング表現におけるストリング位置の1ビットを変換して唯一のセクションの供給電源方向を変更する突然変異ステップと、
前記交差ステップ及び突然変異ステップによるストリング操作後に、三相回路計算により各セクションに対する電源容量制約、各ノードの電圧制約、各フィーダ及び開閉器の容量制約を満たすか否かを判断し、これらの制約条件に違反するストリングについてはその違反した制約条件の数に応じて前記適応度関数を修正する終了条件判断ステップと、を有し、
前記終了条件判断ステップにおける制約条件の充足判断に当たり、いくつかの制約条件についてはある世代以降につき違反するか否かの判断対象とし、適応度関数のペナルティとして制約条件を取り込む際に、いくつかの制約条件については、初期世代からではなく、ある世代以降から取り込むこととしたものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1における前記ストリング評価・選択ステップが、Roulette Wheel Selection 手法を用いたストリング選択ステップを有するものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1における前記ストリング評価・選択ステップが、Remainder Stochastic Sampling without Replacement 手法を用いたストリング選択ステップを有するものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1における前記ストリング評価・選択ステップが、Remainder Stochastic Sampling with Replacement 手法を用いたストリング選択ステップを有するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
はじめに、GAは、自然界における淘汰や遺伝情報の伝達に着目して生物の増殖メカニズムを模擬する最適化手法の一種であり、世代を構成する個体の集合の中で環境に対する適応度の低いものは自然淘汰され、適応度の高いものが次世代に多く生き残ると共に、遺伝子操作としての交差や突然変異等を経て次世代を形成していく過程を模擬したものである。
このGAは、最適化において評価関数の勾配を用いる必要がなく、並列処理による高速化等のメリットにより組み合わせ最適化問題に有効なものとして注目され、電力分野においても電源計画問題や系統電圧の適正化等、様々な分野に応用され始めている。
【0011】
配電系統の損失最小化問題は、後述する種々の制約条件の下で、対象系統における損失が最小になるような放射状の系統構成を区分開閉器等の入切として求める問題であり、一種の組み合わせ最適化問題としてGAの適用が可能である。
【0012】
以下、請求項1及び2記載の発明の実施形態を述べる。
(1)ネットワーク表現
損失最小化の対象となる配電系統の例を、図1に示す。
図1において、10は配電線、VS・ASは区分開閉器、20は負荷であり、配電線10及び区分開閉器をブランチとし、各負荷20をノードとして表現した詳細モデルを示している。
【0013】
GAの適用においては、区分開閉器単位で区切られた区間をセクションと呼び、配電系統は区分開閉器とセクションとからなると考える。つまり、図2に示すように区分開閉器VS・AS及びセクションS1〜S3からなる簡略モデルを基本とする。
開閉器AS,VSの両方が制御対象である場合には、開閉器AS,VS間をセクションとするが、開閉器VSのみが制御対象である場合には開閉器VSと開放された開閉器ASとの間をセクションとする。
【0014】
この実施形態では、有効電力損失を求める三相回路計算については図1の詳細モデルを用い、GAによる最適化においては図2の簡略モデルを用いることとし、計算手法に応じてモデルを使い分けている。
なお、開閉器VSのみが制御対象となった場合、内部系統で開閉器ASが切れている場合があるため、後述する初期ストリングの生成、交差・突然変異において注意する必要がある。
【0015】
(2)配電損失最小化問題の定式化
a.最適化問題としての定式化
配電損失最小化問題はグラフ分割問題として定式化できるが、ここでは以下のように定式化する。
すなわち、対象系統の全系送電損失の総和の最小化を目的とする数式1のような目的関数を用いる。なお、数式1において、nはノード数、Lossiはノードiの損失分を示す。
【0016】
【数1】
fc=min(ΣLossi)
【0017】
次に、制約条件として以下の制約をおく。
・放射状制約
分割された部分グラフは電源を根とする木となっていなければならないため、各負荷への供給電源は一つでなくてはならない。
・輸送経路制約
分割された部分グラフは電源を根とする木となっていなければならないため、ある負荷ノードの電源とその一つ上流の電源とは同一でなくてはならない。
・電源容量制約
分割された部分グラフに属する負荷ノードの負荷量の総和は、電源の容量を超えてはならない。
・電圧制約
損失を最小にする最適な系統構成を決定する際は、電源端から電圧が徐々に降下していく電圧降下を考慮する必要があり、各負荷は規定値以上の電圧でなくてはならない。また、この規定値の考え方は電力会社によって異なってくる。
・ブランチ容量制約(フィーダ・開閉器容量制約)
各フィーダ・開閉器は流すことができる最大電流が決まっており、これ以上の電流を流すと事故の原因になってしまう。
【0018】
b.回路状態及び送電損失の計算方法(三相回路計算)
ここでは、三相回路計算を用いて送電損失(有効電力損失)の計算を行う。この計算では定電流負荷を扱う。
【0019】
(3)GAによる定式化
a.ストリング表現方法
GAでは、できるだけストリング長が短く、ストリング操作によって死滅ストリング(制約違反ストリング)が生成されにくい表現方法が求められる。
この条件を考慮し、ここでは以下に示すストリング表現方法を用いた。
〔ストリング表現方法〕
セクション数の長さのストリングとし、各ストリング位置は各セクションの上流電源・セクションの番号を示す。
【0020】
ここでは、10進法による表現を用いた。この表現方法を用いると、図3に示す放射状系統は以下のようなストリングで表現することができる。
( 9 1 4 5 10 3 8 11 )
なお、図3において、1〜8はセクション、9〜11は電源を示し、セクションのそばに記した( )内の数字はセクション群に対する供給電源を示している。つまり、セクション1,2が電源9から、セクション3〜6が電源10から、セクション7,8が電源11からそれぞれ給電されている。
【0021】
この表現方法を使用した場合には、各ストリング位置の数字は隣の電源またはセクションの番号となる。従って、各ストリング位置が利用可能な数値は限られており、交差及び突然変異の際の制約となる。
【0022】
b.初期ストリングの生成方法
初期ストリングの生成においては、できるだけ最適解に近いストリングにすると収束が早くなる。しかし、あまり最適解に近過ぎるとストリングの多様性が失われ、局所解への落ち込みから抜けられなくなる。
従って、最適解に近い解であり、かつばらつきのある初期解を生成する必要がある。
【0023】
配電損失最小化問題では、制約を満たす解に注力すると各セクションの供給方向は以下の規範から決定することが良いと思われる。
▲1▼各セクションは、供給予備力が大きい電源から供給するようにする。
▲2▼各セクションは、末端までの電圧制約を考慮すると、できるだけ電圧が高いノードに接続するのがよい。
このうち、▲2▼については三相回路計算を何回も行う必要があるため、本実施形態では簡略化のために▲1▼のみを考慮するものとする。
【0024】
この考え方に基づくと、以下のような手順によって初期ストリングを生成することができる。
(手順1)当該電源フィーダにより給電することが決定しているセクション群の隣接セクションで、給電される電源が決定されていないものの中からセクションをランダムに選択する。
(手順2)電源がセクションに電源を供給するか否かは、以下の数式2によって示される確率Pconnectに従う。なお、各セクションの電圧が規定値以下の場合は、確率を0にする。
【0025】
【数2】
Pconnect=(RESG+CAPG)/2CAPG×(PMAX-PMIN)+PMIN
【0026】
数式2において、RESGは電源の供給予備力、CAPGは電源の電源容量、
PMAXは最大確率(=0.9)、PMINは最小確率(=0.1)である。
また、Pconnectの下限はPMINとする。つまり、供給予備力が正の場合には、セクションを接続する確率を0.5よりも大きくし、更に、予備力の大きさにより最大確率まで均等に高くなるようにした。供給予備力が負の場合も同様な考えとなる。
【0027】
(手順3)
供給する電源が決定していないセクションがなくなるまで、手順1に戻って上記処理を繰り返す。
(手順4)
最終的な系統構成状態をストリングに変換する。上記初期ストリングの生成概念を図4に示す。この方法は、電源Gが供給するセクションSを放射状に徐々に確率的に決定していくアルゴリズムとなっており、制約をできる限り満たすように多様な初期ストリングを確率的に求めることが可能である。
【0028】
c.ストリングの評価・選択(自然淘汰)
1)ストリング評価
ストリングの評価は、対象系統の全損失を用いた以下の数式3による。なお、数式3において、fは適応度、nはブランチ数、Lossiはブランチiの損失分を示す。
【0029】
【数3】
f=1/ΣLossi
【0030】
シミュレーションの初期段階では、ある特定のストリングが優勢になり過ぎる場合がある。このような場合は、適応度に応じた増殖によりこのストリングが集団において加速度的に支配的になってしまう。
GAによる最適化において重要な特性は、ストリング集団のばらつきである。ここでは、数式4に示すリニアスケーリングにより適応度関数を修正し、集団のばらつきを保つこととした。
【0031】
【数4】
f’=αf+β
【0032】
数式4において、f’はスケーリングされた適応度、fは原適応度、α,βは係数である。
係数α,βは、原適応度とスケーリングされた適応度との平均が等しくなり、かつ、スケーリングされた適応度の最大値が適応度の平均値のある特定の倍数(γ)になるように決定する。
【0033】
2)ストリング選択
ストリング選択には、Roulette Wheel Selection (RWS)という手法を用いる。この手法は、以下の処理からなる。
・各ストリングの適応度を足し込む(Σfi)。
・各ストリングの適応度(fi)の割合により求めた数式5の確率Pselect iを用いて、各ストリングを増殖する。
【0034】
【数5】
Pselect i=fi/(Σfi)
【0035】
d.ストリング操作
ここでは、上記配電損失最小化問題に特化したストリング表現を用いた場合の交差及び突然変異操作について述べる。
1)交差
本実施形態では、一点交差を用いることとする。これは、後述のように多点交差によると死滅ストリングが生成される確率が大きくなるためである。
交差は、交差位置のセクションと隣接するセクションを境として、放射状系統を部分的に他の系統構成に入れ替えることを示している。
例えば、図3の放射状系統と図5の放射状系統との間での交差を考えてみる。
ここで、図5の放射状系統は以下のようなストリング表現が可能である。
( 9 1 2 5 10 3 6 11 )
【0036】
いま、上位から3桁目と4桁目との間のストリング位置で一点交差が行われたとすると、図3、図5の各ストリング表現は各々次のように変化する。
この一点交差の結果、各放射状系統は図6(a),(b)のようになる。
図から明らかなように、交差位置であるセクション3の上流方向を交差によって入れ替えたことがわかる。
【0037】
更に、隣り合うセクションの上流方向を→または←で表すと、交差前の隣接するセクションについては以下の三つの場合が考えられる。
(a)←→ (b)→→ (c)←←
ここで、(a)は隣り合うセクションで電源がお互いに異なる、つまりこの位置で開閉器を切ることを示し、(b)は右側のセクションの更に上流に電源があることを示し、(c)は左側のセクションの更に上流に電源があることを示している。
【0038】
これが、交差後には、隣り合うセクションの上流方向の関係としては次の四つの場合が考えられる。
(a)←→ (b)→→ (c)←← (d)→←
追加された(d)の場合は、隣接セクション同士が両方から上流方向を示し合っており、この場合には、これらのセクションの更に下流のセクションまで電源がなくなってしまうことになる(輸送制約違反)。つまり、上記ストリング表現方法を用いた場合にも、このような死滅ストリングを生成するおそれがある。
【0039】
例えば、図7(a),(b)のような放射状系統を考える。各ストリング位置の番号は図3と同様であり、この図7では、上流がよくわかるように矢印で示してある。
いま、上位から3桁目と4桁目との間のストリング位置で一点交差が行われたとすると、図7(a),(b)は図8(a),(b)のような放射状系統となり、各ストリング表現は各々次のように変化する。
図8(b)のストリング位置3と4はお互いを上流方向としており、セクション3,4,6の電源がなくなっている。
【0040】
このような死滅ストリングの生成は、上述のように隣り合うセクション同士がお互いに上流方向を示すかどうかでチェックすることができる。
従って、交差を行った後にストリングの各セクションについて隣接セクションの上流計算をチェックし、死滅ストリングになっていたらもう一度別な場所で交差を行うという方法を採る。
このようなストリング表現を用いたため、系統全体の接続をチェックしなくても良くなり、高速化が可能になる。
【0041】
2)突然変異
突然変異は、各ストリングの1ビットの変換である。これは配電損失最小化問題においてはただ一つのセクションの供給電源方向を変更することを意味する。あるセクションとその上流セクションの電源が同一であることを必要とする放射状制約及び輸送経路制約を満たしながら一つのセクションの上流の方向を変更するには、異なる電源フィーダから供給されているセクションに隣接するセクションのみが対象となり得る。
【0042】
つまり、突然変異が可能なセクションは限られており、この中から選択するようにストリング操作を行えば、輸送経路制約を満たすことが可能である。
例えば、図8(a)の放射状系統に対しては、ストリング位置3,4の間、7,8の間で電源方向が別れており、この位置でのみ突然変異が可能になる。
【0043】
(4)電源容量制約、電圧制約、ブランチ容量制約の考慮
a.電源容量制約の考慮
各電源が担当するセクションの総容量は各電源の容量以下でなくてはならない。これは、系統が確定した後にチェックできるため、ストリング操作後、上述の三相回路計算を用いて制約チェックを行う。
【0044】
b.電圧制約の考慮
各ノードの電圧は下限値が決まっており(例えば、変電所二次側電圧から4%降下まで)、これも変電所二次側から電圧降下を計算することにより各ノード電圧が確定できるため、ストリング操作後、上述の三相回路計算を用いて制約チェックを行う。
【0045】
c.ブランチ容量制約(フィーダ・開閉器容量制約)の考慮
各フィーダ・開閉器は流すことができる電流の上限値が決まっており、流れる電流はセクション端の末端からの電流の加算により求められるため、これもストリング操作後でないと制約チェックが不可能である。
従って、上述の三相回路計算によって求められた各ブランチ電流値を用いて、各フィーダ・開閉器の容量上限値を超えていないかどうかをチェックする。もし、上限値を超えるブランチが存在する場合には、容量制約を満たさないとする。
【0046】
d.適応度関数(評価関数)の修正
電圧制約及びブランチ容量制約のような事前に考慮できない制約について制約違反があった場合、ストリング操作をもう一度繰り返し、違反がなくなるまで乱数を変更して操作を繰り返すことが最善である。しかし、ここでは計算時間の削減に留意し、違反のあるストリングについては適応度関数を修正して対応することとした。
これにより、1回のストリング操作のみが行われることになり、計算時間の削減が可能になる。
【0047】
具体的には、その時点の適応度関数の最大値(fmax)、最小値(fmin)、違反する制約条件の数n、修正の度合いを決める係数(RATE)を用いて、数式6により適応度関数を修正する。
【0048】
【数6】
F=f−(fmax-fmin)×n×RATE
【0049】
以上により、GAによる損失最小化の処理の概略は図9のフローチャートのようになる。なお、図9における終了条件の判断ステップは、上述した各種制約の考慮や適応度関数の修正処理に相当する。
【0050】
次に、請求項3記載の発明の実施形態につき説明する。この実施形態が請求項1及び2の発明の実施形態と異なる点はストリング選択の手法のみであるため、この部分を以下に説明する。
本実施形態では、ストリングの選択に、Remainder Stochastic Sampling without Replacementという手法を用いる。
この手法では、前述した数式5により確率Pselect iを求めた後、以下の数式7により各ストリングの期待値eiを計算する。なお、数式7において、nsはストリング数である。
【0051】
【数7】
ei=Pselect i×ns
【0052】
eiの整数項により、各々のストリングを増殖させる。これだけでは、規定のストリング数(ns)分だけの増殖に不足するため、分数項を用いて以下の処理を行う。
eiの分数部を重み付けされたコイントス(ベルヌーイ試行)における確率として使用する。例えば、ei=2.4のストリングは、2つは整数部により既に増殖されているが、0.4の確率で更にもう一つを増殖する。
この処理を各ストリングに対して行い、全ストリング数がnsとなるまで行う。
【0053】
次いで、請求項4に記載した発明の実施形態を説明する。この実施形態についても、請求項1及び2の発明の実施形態と異なる点はストリング選択の手法のみである。
本実施形態では、ストリングの選択に、確定的手法と確率的手法とを組み合わせたRemainder Stochastic Sampling with Replacementという手法を用いる。
【0054】
この手法では、前述した数式7により求めた各ストリングの期待値eiの整数項により各ストリングを増殖させる。そして、eiの分数部は、各分数部の値をfとして数式5の確率を計算し、この確率を用いてストリング数nsに満たない分だけストリングを増殖する。
【0055】
ここで、図10に示す配電系統をモデルとして、各実施形態につきシミュレーションを行った。
図10において、FCBはフィーダ遮断器、10は配電線、20は負荷であり各配線線10のインピーダンスは一定とし、負荷値も一定とする。従って、各フィーダから直線的に末端まで放射状に延びる、つまり、縦方向の開閉器を切るような系統構成が最適解となる。
【0056】
GAのパラメータは、以下のように設定した。
交差確率:0.5
突然変異確率:0.01
ストリング数:50
これらの条件の下で三相不平衡回路計算を繰り返し実行した結果、上述の最適解を約3分(90MIPSワークステーション使用)で出力することが確認された。
【0057】
なお、遺伝的アルゴリズムは、その大域探索手法としての特徴を活かすため、本来的には制約条件なしで自由に探索させるのが望ましいが、現実の問題には大抵の場合、各種の制約条件があり、本発明でも上述のように電源容量制約、電圧制約、フィーダ・開閉器容量制約等の制約を終了条件判断ステップにおいて適応度関数のペナルティとして取り込んでいる。
しかるに、これらの制約条件のすべてを初期世代から取り込むと、制約を違反している解(遺伝子)は評価が低いため早い段階で消滅してしまう可能性が高く、そうなると遺伝子集団の多様性が失われることになり、あまり良い解が得られないおそれがある。
【0058】
そこで、請求項1に示すように、終了条件判断ステップにおける制約条件の充足判断に当たり、いくつかの制約条件については初期世代からではなくある世代以降から取り込むようにして、各ストリングがこれらの制約条件に違反するか否かを判断する。これにより、最初のうちは自由に大域的な探索を行わせて様々な解のバリエーションを生成しておき、その後、所定の制約条件を考慮することによって、実行可能でしかも評価の高い解に収束させることが可能になる。
【0059】
【発明の効果】
以上のように請求項1〜4に記載した発明によれば、汎用のプログラムにより、様々な系統を対象として有効電力損失を最小化するような系統構成を求めることができ、並列探索を用いた遺伝的アルゴリズムを利用して効率的に最適化を行うことが可能である。
また、有効電力損失を三相不平衡回路計算によって求めることにより、不平衡回路及び不平衡負荷を扱うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態が適用される配電系統の詳細モデルを示す図である。
【図2】本発明の実施形態が適用される配電系統の簡略モデルを示す図である。
【図3】放射状系統の説明図である。
【図4】初期ストリングの生成を示す概念図である。
【図5】放射状系統の説明図である。
【図6】放射状系統の説明図である。
【図7】放射状系統の説明図である。
【図8】放射状系統の説明図である。
【図9】各実施形態の処理の概略を示すフローチャートである。
【図10】シミュレーションに用いた系統モデルの説明図である。
【符号の説明】
VS・AS 区分開閉器
FCB フィーダ遮断器
S,S1,S2,S3 セクション
G 電源
10 配電線
20 負荷
Claims (4)
- 配電系統の構成、各機器インピーダンス、各負荷容量及び各電源並びに電源容量が与えられた時に、遺伝的アルゴリズムにより、対象系統の有効電力損失を最小化する放射状の系統構成を開閉手段の入切として求める配電系統の損失最小化方法において、
前記有効電力損失を三相回路計算により求めるとともに、
前記遺伝的アルゴリズムは、
開閉手段により区分される複数のセクションに対して供給予備力が大きい電源から給電されるように、放射状制約及び輸送経路制約を考慮しながら各セクションを確率的に徐々に決定していき、各セクションについて電源が決定した放射状の系統構成をストリング表現に変換して初期ストリングを生成する初期ストリング生成ステップと、
対象系統の全損失を用いた適応度関数に基づいてストリングを評価し、各ストリングの適応度に応じて各ストリングの増殖及び淘汰を行うストリング評価・選択ステップと、
ストリング表現における隣接セクションの境を交差位置として交差を行い、放射状の系統構成の一部を他の構成と入れ替える交差ステップと、
ストリング表現におけるストリング位置の1ビットを変換して唯一のセクションの供給電源方向を変更する突然変異ステップと、
前記交差ステップ及び突然変異ステップによるストリング操作後に、三相回路計算により各セクションに対する電源容量制約、各ノードの電圧制約、各フィーダ及び開閉器の容量制約を満たすか否かを判断し、これらの制約条件に違反するストリングについてはその違反した制約条件の数に応じて前記適応度関数を修正する終了条件判断ステップと、を有し、
前記終了条件判断ステップにおける制約条件の充足判断に当たり、いくつかの制約条件についてはある世代以降につき判断対象とすることを特徴とする配電系統の損失最小化方法。 - 請求項1記載の配電系統の損失最小化方法において、
前記ストリング評価・選択ステップは、Roulette Wheel Selection 手法を用いたストリング選択ステップを有することを特徴とする配電系統の損失最小化方法。 - 請求項1記載の配電系統の損失最小化方法において、
前記ストリング評価・選択ステップは、Remainder Stochastic Sampling without Replacement 手法を用いたストリング選択ステップを有することを特徴とする配電系統の損失最小化方法。 - 請求項1記載の配電系統の損失最小化方法において、
前記ストリング評価・選択ステップは、Remainder Stochastic Sampling with Replacement 手法を用いたストリング選択ステップを有することを特徴とする配電系統の損失最小化方法。
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