JP3696205B2 - 簡単に衛星を追尾できる非静止衛星コンステレーションの実施システム及び実施方法 - Google Patents

簡単に衛星を追尾できる非静止衛星コンステレーションの実施システム及び実施方法 Download PDF

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Description

本発明は、概して衛星通信システムに関し、さらに詳細には、グローバルな通信衛星の容量を著しく増大させるように配置及び利用でき、現行の静止衛星リングに干渉せずに、簡単に衛星を追尾できる非静止衛星のコンステレーション(constellation)に関する。
遠距離通信用の静止衛星は、何年も前に、作家アーサー・C・クラークによって最初に提起された。現在では、電話やデータ中継、テレビジョン放映、自宅直送放送及び移動体通信のような種々の用途のための静止衛星を用いた多数の通信システムが存在する。静止衛星は、赤道上の適切な高度の円形軌道にある衛星が地球の回転と同じ角速度で軌道を周回するという物理的原理に基づいて稼動する。従って、これらの衛星は、地球上の一点に関して固定されているように見える。静止衛星のこの特性によって、地球上の通信端末はアンテナを空のほぼ一箇所に指向させるだけでよいため、静止衛星は通信に利用しやすい。
しかしながら、静止衛星システムには多数の顕著な欠点が存在する。重大な欠点の一つは、衛星を静止衛星軌道に打ち上げるのに多大なコストを要することである。静止衛星軌道は、地球の中心から約36、000kmの半径を有する。典型的には、まず静止衛星を、静止衛星高度に遠地点を有する楕円トランスファー軌道に打ち上げ、次にキックモータを用いて遠地点にある衛星に必要な追加推進力を加えてその軌道を周回させる。発射前のこのアポジモータは、典型的には衛星自体と同じ重量を有しており、すなわちこのことは、打ち上げ機が最終軌道における衛星重量の2倍のペイロードを最初に打ち上げねばならないことを意味する。従って、衛星を静止衛星稼動に必要な高い高度の円形軌道に配置するためのコストは、非静止衛星に必要なコストと比べて極めて大きい。衛星の配置に伴うコストは一般に衛星の使用期間全体にわたって償却されるので、このことは静止衛星の使用料をさらに高くする。静止衛星軌道の高度が高いこともまた、衛星の大きさと重さに影響する。パスロス、すなわちフリースペースを走行するラジオ信号の減衰は、発信源と受信位置との間の距離の2乗に比例する。このことは、同等の通信リンクを達成するには、静止衛星のアンテナサイズと送信力は、高度の低い軌道にある衛星の場合に比べて大きくなければならないことを意味する。移動体通信や他のユーザ直送通信において、特にこのことが言える。なぜならば、これらの場合、ユーザ端末のサイズ及び電力は実際的問題により制約されるし、また受容できる通信リンクの働きが得られるかどうかは衛星に大きく左右されるからである。一般に、サイズが大きく重量の大きい静止衛星は、高度の低い軌道で稼動させる衛星に比べて、打ち上げコストが高くなる。
静止衛星軌道の高度が高いことに伴う他の問題は、衛星への及び衛星からの往復伝送が遅延することである。カバレージ地域内に位置する1対の異なる通信端末の場合、端末〜衛星〜端末のパス長さは、少なくとも70、000kmである。信号が送信端末から衛星を介して受信端末へ至る時、平均的な伝送遅延時間は約0.25秒である。声を使う衛星通信では、ユーザがこの遅延に気付くことがあり、エコー抑制のための特別回路の使用を必要とする場合がある。データ通信では、この遅延は、地上回路の特性に基づいたプロトコルの使用を複雑にする。
静止衛星システムのカバレージについての幾何学から、他の問題が生じる。「グローバルな」サービスを目的とする静止衛星システムは、赤道弧に沿って120度ずつ等間隔に離れた3個の静止衛星を含む。これらの各衛星のカバレージ地域は、赤道上に中心を有する地表上の円を描く。赤道では、2個の隣り合う静止衛星の受信範囲は経度約40度にわたって重なり合う。しかしながら、緯度が増すにつれてこの重なりは減少し、カバレージ地域の南及び北においてどの静止衛星も見えない地点が存在する。例えば、アラスカ、カナダ及びスカンジナビアの多くの地点では、これらの静止衛星は可視水平線の下にあるため静止衛星を見ることができない。
衛星が赤道上の軌道にある静止衛星システムの場合、赤道地域の地球局は、一般に水平線上に高仰角で衛星を「見る」。しかしながら、地球局の緯度が増すにつれて、地球局から静止衛星への仰角は小さくなる。たとえば、米国内の地球局から静止衛星への仰角は、20〜50度の範囲である。低仰角は、さまざまな方法で衛星通信リンクを低下させる。低仰角で大気中のパス長さが大きく増大すると、降雨減衰、大気吸収及びシンチレーションのような現象が激化する。特に移動体通信システムの場合、低仰角は、ブロックやマルチパス現象により、リンクの質を低下させる。静止衛星軌道独特の幾何学によって生じる他の多分さらに重大な問題は、静止衛星軌道弧に沿った軌道位置(すなわち「スロット」)の有効性が限定されることである。時の経過とともに成長した静止衛星リングは、一般に、2度の間隔を置いて配置され経度位置で確認される多数のスロットを使用している。同一周波数帯で稼動している隣接衛星間の干渉を最小にするために、この配置が国際的に採用されている。2度の間隔は、衛星にアクセスする地球局において高利得指向性アンテナを用いて達成される。このようにして、赤道の周囲の静止衛星リングは、合計180個のスロット(360度/2度 のスロット)を占有する。ほとんどの静止衛星スロットが使用されており、これ以上の静止衛星のための場所を見つけることが困難である。容量を増やすために、周波数、分極及びビームの多様性が用いられてきたが、静止衛星弧における容量は依然として限られている。さらに、静止衛星軌道の全ての位置が種々の用途にとって等しく有用または魅力があるとは限らない。
静止衛星の欠点のいくつかを克服するために、過去において種々の非静止衛星が実施されてきた。初期の例として、ロシアのモルニヤシステムがあり、このシステムはソ連の北緯地域で受信可能にするために楕円形の12時間軌道を用いた。イリジウムシステム及びグローバルスターシステムは低い円形軌道の衛星を用いて、伝送遅延を著しく減少させ、極めて小さいユーザ端末を用いての受容できるリンクの働きを可能にした。しかしながら、非静止衛星システムは傾斜軌道で稼動するため、それらが静止衛星リングと交差する時、同一周波数で稼動している静止衛星に干渉する恐れがある。
1999年1月、バーチュアル ジオサテライト LLC により、グローバルな衛星通信システムの構造が、アメリカ連邦通信委員会(FCC)に対して出願された。この出願は、1998年12月21日と1999年9月28日とにそれぞれ本発明の発明者と他の2名の個人とに許可された米国特許第5、845、206号と第5、957、409号との教えに基づいたものである。このFCC出願において提案されたシステムは、3つのアレイの楕円軌道衛星を用いており、このうち2アレイが北半球をカバーし、1アレイが南半球をカバーしており、各アレイは、静止衛星の特性の多くをエミュレートした5個の8時間衛星を有している。遠地点またはその近くにおけるこれらの衛星の角速度は地球の回転速度に近いため、これらの衛星は空に「掛かっている」ように見える。衛星軌道の遠地点に位置する中心によって、9個のいわゆる「能動弧」(active arcs)が生じる。3つのうちの各アレイの衛星は、1個の能動弧から次の能動弧へ反復するグラウンドトラックを移動するので、各能動弧には、常に1個の使用できる能動衛星が存在する。衛星は、能動弧において、地上アンテナに対して平均して1時間に僅か約8度という極めて遅い速度で移動する。弧と弧の間では、衛星は非能動化されている。能動弧は赤道近くに位置する静止衛星とは異なる位置を占める。その結果、これらのバーチャル静止衛星は北半球及び南半球のほとんどの位置から見ることができるが、静止衛星に干渉しない。
上記先行技術のバーチャル静止衛星コンステレーションは、静止衛星の欠点の多くに対処しているが、地上端末は、衛星がゆっくりと能動弧を横断するのを追尾しなければならない。さらに、1個の衛星が能動弧の端部を離れて非能動化されると、地球局のアンテナは迅速に40〜50度再指向すなわち回動して能動弧の先頭部に到着したばかりの衛星を指しこの第1衛星の位置を捉えなねればならない。大きいアンテナにとってこのような急激な回動は実行不可能であり、実際的には各サイトで2個のアンテナを使用する必要がある。位相配列アンテナであれば迅速な再指向が可能であるが、特に消費者市場で可能な設計のものを商業的に入手できるかどうかは不明確である。なんらかの形のデータバッファリングによって機能休止期間をカバーできると考えられるが、複雑でコストがかかるであろう。
従って、本発明の目的は、追尾要件を極めて単純化し衛星地球局コストを減らすことのできる非静止衛星システムを提供することである。
本発明の他の目的は、現行の静止衛星リングに干渉することなしにグローバルな通信衛星の容量を著しく増大させる衛星システムを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、現行の静止衛星の場合よりも平均仰角が高く且つ伝送遅延度が低い、グローバルな通信衛星システムを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、現行の静止衛星システムの場合よりも建設及び実施コストが低い衛星のトータルでグローバルな衛星通信システムと地上設備とを提供することである。
本発明の上記の目的及び他の目的、特徴、利点は、添付図面を参照して行なわれる下記の詳細な説明から容易に理解されるであろう。
本発明は、グローバルな通信衛星容量を著しく増大させるように配置及び利用でき、現行の静止衛星リングに干渉せずに、簡単に衛星追尾できる非静止衛星のコンステレーションの提供を目的とする。
このシステムの一実施形態は、それぞれ傾斜楕円軌道に配置された第1及び第2の複数衛星を含み、各複数衛星は、これらの衛星を毎日地球上の複数個の同じ地点上に配置する、反復グラウンドトラックを形成している。好ましい実施形態において、衛星の平均運動は3であり、これは1日に3回地球の周囲の軌道を周ることを意味しているが、例えば2や4など、他の整数値の平均運動でも構わない。
軌道を周る各衛星は、地球局と通信する通信装置を搭載している。コンステレーションの各衛星に搭載された通信装置は、軌道の1部分すなわちその衛星が遠地点に近い位置にある時にのみ能動状態になり、すなわち稼動される(電力を加えられる)。遠地点とは、軌道上で衛星高度が最も高く且つ地球局から見て衛星の移動速度が最も遅い点である。衛星が能動状態にある軌道の部分は、軌道の遠地点に関して対称に配置されていることが好ましい。好ましい実施形態において、平均運動3で、各衛星は遠地点付近において4時間連続して駆動されるが、これは全軌道時間の50パーセントである。衛星のグラウンドトラックの各々は、衛星軌道の部分に対応する多数の能動弧を有し、この能動弧において衛星上の通信装置は通信できる。第1の複数衛星の軌道は、第1グラウンドトラックの各能動弧の始端及び終端が同一経線上に存在するように構成されている。これは、衛星軌道を赤道に向かって傾斜させる近地点引数を選択し、衛星の遠地点を緯度約40度に置くことにより達成される。「近地点引数」(argument of perigee)は軌道のパラメータであり、それは近地点が生じる軌道面における角位置を示す。近地点引数が0度と180度との間にあれば、近地点は北半球に位置し、従って衛星のカバレージは南半球に集中する。逆に、近地点引数が180度と360度との間にあれば、近地点は南半球に位置し、従って衛星のカバレージは北半球に集中する。
同時に、第2の複数衛星軌道の近地点引数は、第1の複数衛星の近地点引数と補角を成しており、第2の複数衛星の軌道を同角度だけ反対方向に傾斜させる。第2の複数衛星の軌道は、さらに、次のように構成されている。すなわち、第2グラウンドトラックの各能動弧の始点は、第1グラウンドトラックの1能動弧の終点と一致し、第2グラウンドトラックの各能動弧の終点は、同じ第1能動弧の始点と一致する。その結果、地球局から見ると、第1グラウンドトラックの1能動弧とそれに対応する第2グラウンドトラックの能動弧とでクローズドパスが形成される。平均運動3の好ましい実施形態において、クローズドパスは、地球の周囲で等しく120度の間隔を置いて3度繰り返される。
衛星のコンステレーションに加えて、本発明のシステムの実施形態は、典型的には複数個の地球局を含む。各地球局は、第1及び第2の複数衛星に搭載した通信装置と通信できる通信装置を有しており、且つ、第1能動弧の1つにおける衛星と、前記能動弧と始点と終点とが一致する第2能動弧の1つにおける衛星とを追尾できる地上位置に配置されている。
本発明の他の局面において、第1及び第2の複数衛星の軌道は、常時第1のグラウンドトラックの各能動弧または第2のグラウンドトラックの各能動弧に少なくとも1個の衛星が存在するように構成されている。好ましくは、2つのグラウンドトラックに同数の衛星が存在し、1個の衛星が1つのグラウンドトラックにおける能動弧の終端にあって非能動化されつつある時、他の衛星が他のグラウンドトラックにおける対応能動弧の始端にあるかまたはその近くにあって再び能動化されつつあるように、衛星の軌道が構成されている。衛星の切り換えが起こるときに、地球局がロックを外して新しい位置に回動する必要なしに上空のクローズドパスにおける1個の能動衛星を追尾できるように、切り換え点において2個の衛星は充分近づかなければならない。しかしながら、グラウンドトラックが交差する点において、衛星が実際に衝突しないように空中で互いに充分離れているように、第1及び第2のグラウンドトラックにおける衛星の軌道パラメータが選択されることが好ましい。
各グラウンドトラックにおける衛星は、最大数の衛星を同時に能動状態にできるように、平均近点角において等間隔にあることが好ましい。平均近点角とは、衛星が近地点を通過してから経過した軌道期間の分数を度数で表わしたものである。例えば、8時間軌道の衛星の2時間は、90度(期間の4分の1)である。
好ましい50パーセントの負荷サイクルで連続的に通信を行なうには、各グラウンドトラックに少なくとも3個の等間隔に配置された衛星を必要とする。2個のグラウンドトラックにさらに6個の衛星の基本的なグループを加えると、さらに軌道容量が増す。好ましい実施形態において、その軌道パラメータによって、衛星間に少なくとも2度の最小角度間隔を維持しながら12個の衛星をグラウンドトラックの能動弧に配置することができる。
本発明の他の局面において、コンステレーション中の各衛星は、静止衛星軌道に必要な高度よりも低い軌道高度を有する。本発明のこの局面は、一定の通信容量に対して衛星のサイズと重量とを減らすことができ、打ち上げに必要な物を減らすことができ、また衛星の伝送遅延を減らすことができるという利点を有する。同様に、楕円軌道への打ち上げは、円軌道に比べて必要エネルギーが少なくて済み、打ち上げ機のコストを減らすことができる。
地球の形によって生じる摂動を最小にするために、本発明はまた、63.4度の臨界軌道傾斜角を用いるのが好ましい。これは軌道面の傾斜角であり、それによって、遠地点が常に同じ半球の同じ高度に留まる安定した楕円軌道が得られる。
本発明の他の局面において、衛星軌道の形は、通信装置が能動状態にある衛星軌道の部分が少なくとも一定量だけ地球の赤道面から離れるように構成されている。この特徴によって、静止衛星リングに存在する衛星への干渉を避けることができ、静止衛星に割り当てられた通信周波数を本発明の非静止衛星コンステレーションに再利用することができる。
本発明のさらに他の局面において、各衛星は電力システムを有しており、この電力システムは、衛星上の通信装置が能動状態にある時に必要な電力よりも小さい量で且つ通信装置が非能動状態にある時に必要な電力よりも大きい量の電力を発生する。この電力システムは、通信装置が非能動状態の時に発生した余剰電力を保存して、通信装置が能動状態にある時に必要な電力に見合うように保存電力から補って使用することができる。50パーセントの負荷サイクルを有するこの好ましい実施形態の場合、この電力保存機能により衛星の重量を減らせることは重要である。
本発明のさらに他の局面において、複数個の衛星をコンステレーションに加えて、第1及び第2グラウンドトラックと同じ形状を有するが経度において所定量だけ変位した追加グラウンドトラックペアを形成する。追加グラウンドトラックペアの能動弧にある各衛星が、他のグラウンドトラックペアのどの能動衛星からも少なくとも所定角度だけ常に離れているように、上記の経度における変位量は選択される。平均運動3で50パーセントの負荷係数で稼動する軌道上の衛星を有する好ましい実施形態は、各半球に24個の能動弧(すなわち12個のクローズドパス)、すなわち全世界に48個の能動弧を有する4対のグラウンドトラックを含む。各弧に最大12個の能動衛星を配置すると、本発明がサポートできる同等の非静止衛星スロットの合計数は576であり、すなわち、衛星の間隔を最小2度とすると、現行の静止衛星リングの場合の3倍以上である。
本発明は、地球局と楕円軌道の衛星コンステレーションとを含む通信システムを目的とし、前記地球局と前記衛星コンステレーションは、地球上の地球局の観点から静止衛星の特性の多くをエミュレートしたものである。下記にさらに詳細に説明するように、本発明の衛星は、先行技術システムと同様に楕円軌道にあって軌道の遠地点に近い部分で稼動する。これらの能動弧が赤道地域の外側の北半球及び南半球に存在するように、衛星の軌道パラメータが調整される。先行技術システムにおいては、能動弧の終端で衛星の稼動が停止されると、それに代わって前記能動弧の始端で他の衛星が始動されていた。従って、能動弧をゆっくり移動する衛星を追尾していた地球局は、代わりの衛星が能動弧の始端に来ると、急いでアンテナビームを再指向しなければならなかった。
本発明によれば、地球局は、去っていく衛星の稼動終了位置と到着する衛星の始動位置との間で地球局アンテナビームを回動させる必要なしに、能動衛星を連続的に追尾できる。下記に詳述するように、これは、「左に傾いた」楕円グラウンドトラック能動弧と「右に傾いた」楕円グラウンドトラック能動弧とを用いることにより達成できる。2つの能動弧の端部が一致するように、すなわち一方の能動弧の稼動終了点と他方の能動弧の始動点とが同一であるように、衛星軌道のパラメータが調整される。下記に詳述するように、2個の能動弧の組み合わせによって、北半球では倒立ティアドロップ形のクローズドパターンが形成され、南半球では正立ティアドロップパターンが形成される。左に傾いた衛星トラックの能動弧は北半球における衛星の南から北への運動を示し、右に傾いた弧は北から南へ移動する能動衛星を有している。これらのグラウンドトラックにおける衛星によって通信する北半球地域の地上の観察者は、一般に高仰角で空を見上げて反時計回りにゆっくりと移動する能動衛星を見る。好ましい実施形態の8時間軌道衛星の場合には約4時間ごとに生じる切り換え点において、地球局アンテナは、実質的に同一方位角及び仰角位置に2個の衛星を「見る」ので、一方の稼動終了するグラウンドトラックの衛星から他方の始動するグラウンドトラックの衛星へ切り換える時にアンテナを「回動させる」必要がない。能動衛星の位置すなわちアンテナビーム指向方向の不連続は地上アンテナには観察されない。一方のグラウンドトラックから他方のグラウンドトラックへ切り換えられる時、地球局アンテナは、方位角及び仰角における追尾速度においてのみ変化を経験する。好ましい実施形態において、この切り換えはマスター地球制御局により実施できる。
楕円軌道における衛星は、近地点の近くよりも地球から遠い位置にある遠地点の近くにおいてより長い時間を過ごすという事実を、本発明は利用している。図1は、2つの焦点11及び12を有する典型的な楕円軌道10を示す。衛星は、楕円10に沿って周回するが、この場合、地球の中心は焦点位置12(占有焦点)にある。軌道の遠地点14と近地点16とは、それぞれ軌道上の占有焦点から最も遠い点と最も近い点である。楕円の長軸18は、楕円の2つの焦点を通って遠地点14から近地点16まで伸びている。長軸の2分の1は半長軸と呼ばれ、このパラメータから軌道期間が独特の方法で決定される。半長軸に沿った2つの長さ、すなわち遠地点14から占有焦点12までの長さと近地点16から占有焦点12までの長さは、それぞれ「遠地点半径」及び「近地点半径」と呼ばれる。これらの距離の差は、楕円の離心率を決定する。半長軸aと離心率eと遠地点半径raと近地点半径rpの間に次の式が成り立つ。
ra = a ・(1 + e) 及び (1)
rp = a ・(1- e) (2)

離心率が大きいほど、楕円は円から遠ざかる。
楕円軌道における衛星の位置はケプラーの第2法則に従うが、この法則は、軌道を周回する衛星は、同一時間に軌道の同一面積を掃引することを述べている。従って、衛星は、近地点かその近くにある時は速く移動し、遠地点かその近くにある時はゆっくりと移動する。例えば8時間軌道の場合、衛星は遠地点の近くに4時間以上滞在する。図2の楕円上の円は、衛星の軌道周回運動における均等な時間間隔を区切っており、衛星がいかに遠地点近くで速度を遅くして長時間滞在するかを明確に示している。
本発明は、地球上の所望地点において遠地点またはその近くの衛星を常に追尾しその衛星と常に通信できるように稼動する衛星コンステレーションを用いたシステムを形成する。プログレード軌道、すなわち衛星が地球と同じ方向に回転している軌道を使用することにより、遠地点における衛星は空で極めてゆっくりと動いているように見え、また瞬間的に静止しているようにさえ見える。
本発明の衛星は、それらが遠地点またはその近くで実質的に静止しているように見える点で静止衛星に似ているが、各衛星は典型的には時速8度より遅い速度で移動しており、やがてその能動弧を離れ、下記に詳述するように、同時に同一地球局の視野内の相補能動弧に入って来た他の衛星に置き換えられる。この特性は、静止衛星とは異なり、本発明の各衛星は時間の100パーセントにおいて稼動しないことを意味する。本発明の衛星は、能動弧の外側では典型的にはそれらの送信及び受信容量を使用していず、従ってそれらの電力容量の大部分を使用していない。
各衛星は、部分的な時間においてのみ完全に電力を供給されるので、衛星は稼動していない期間に電力を発生及び保存することができ、能動弧に存在する時にその電力を使用できる。従って、衛星の電源は、典型的にはソーラーアレイであるが、稼動中に必要な電力の一部分のみを供給する大きさにすることができ、足りない分は軌道の非能動部分にある間に典型的には再充電可能な電池に保存したエネルギーを使用する。たとえば、好ましい実施形態の衛星は時間の50パーセントの間だけ稼動するので、その電力システムは原則的にそのソーラーアレイからのフルロード電力の50パーセント(それに加えてハウスキーピング機能を維持するのに必要な電力)を発電するように設計できる。この稼動形態により、衛星の重量及び大きさを著しく減らすことができる。
本発明の好ましい衛星構造について詳述する前に、衛星軌道の特性を説明するためにここで使用する術語を先ず定義しておく。
「平均運動(mean motion)」nという語は、衛星が1日に行なう完全な回転の数を示す値である。この数が整数であれば、衛星のグラウンドトラックは毎日反復され、その日の各グラウンドトラックは前日のトラックをなぞる。平均運動は、従来から1日の時間数(24時間)を衛星が1つの軌道を完全に周回するのにかかる時間数で割った数として決められている。例えば、8時間ごとに1軌道を完全に周回する衛星(8時間衛星)の平均運動は3である。整数の平均運動2、3及び4は、特に使用しやすいが、本発明は、これよりも大きい平均運動値を排除しない。下記にさらに詳述するように、平均運動の正確な整数値からの小さなずれは、地球が完全な球形でないために起こる摂動現象、すなわち「交点線の後退」と呼ばれる現象を補うのに通常必要である。
「仰角(elevation angle)」δは、観察者の水平面から衛星を見上げた角度である。水平面上の衛星の仰角は0度であり、真上にある衛星の仰角は90度である。静止衛星は赤道付近の軌道を移動しており、米国の地点からの仰角は通常20〜50度である。
「傾斜角(inclination)」Iまたはi は、衛星の軌道面と赤道面との間の角度である。プログレード軌道衛星は、地球と同じ軌道方向(時計回りまたは反時計回り)の軌道を移動する。プログレード軌道の場合、傾斜角は0度から90度の間にある。衛星リトログレード軌道は、地球と反対の軌道方向に回転するので、リトログレード軌道の傾斜角は、90度と180度との間である。
楕円軌道の「臨界傾斜角(critical inclination)」は、特別の面傾斜角であって、それによって近地点回転速度が0になる。この傾斜角によって、遠地点が常に同一半球の同一高度にある安定した楕円軌道となる。2つの傾斜角値がこの条件を満たす。すなわちプログレード軌道の場合の63.435度とリトログレード軌道の場合のその補角である116.565度である。
「昇交点(ascending node)」は、衛星が南半球から北半球へ移動するとき通る赤道上の点である。昇交点の赤経(「RAAN」)は、宇宙の固定慣性軸(春分点)から昇交点まで赤道面において東方向へ測定した角度である。本発明においては、コンステレーション内の異なる衛星の昇交点間の経度間隔は「S」で表わし、好ましい実施形態において均一である。
「近地点引数(argument of perigee)」は、近地点が生じる軌道面の角位置を示す値である。0度〜180度の間の近地点引数であれば、近地点の位置は北半球に存在し、従って衛星のカバレージが南半球に集中する。逆に、180度〜360度の間の近地点引数であれば、近地点の位置は南半球に存在し、従って衛星のカバレージが北半球に集中する。
「平均近点角(mean anomaly)」Mは、衛星が近地点を通過してから経過した軌道期間の部分を度数で表わしたものである。例えば、8時間軌道における2時間の平均近点角は、90度(期間の4分の1)である。平均運動nである衛星の1日の期間にわたる全平均近点角は、単に360度のn倍である。
図2は、バーチャル・ジオサテライト LLC により1999年1月にアメリカ連邦通信委員会(FCC)に対し提出された出願が提案する先行技術システムの基本的楕円軌道衛星アレイ(全体として番号20を付す)を示す図である。この出願において提案された全システムは、衛星のこのようなアレイを3つ用いており、2つのアレイは北半球をカバーし1つは南半球をカバーしている。各アレイは、静止衛星の多くの特性をエミュレートした8時間衛星を5個有している。
図2において、バーチャル静止衛星22は、地球の周囲の楕円軌道24において示されている。衛星22に搭載された通信装置は、地球上の地球局26、28と通信する。別の楕円軌道34におけるバーチャル静止衛星32は、同時に地球局36、38と通信する。
静止衛星を基本とするシステムと同様に、前記先行技術に従って実施されたバーチャル静止衛星は、空において同一の全般的位置及び領域に実質的に存在し続ける。しかしながら、静止衛星を基本とするシステムとは異なり、この先行技術システムの地上の通信装置は、常に同一衛星と通信するわけではない。例えば図示した実施形態において、地球局26、28は、最初は衛星12と通信するが、後には楕円軌道34の衛星32と通信する。バーチャル静止衛星は遠地点及びその近くにおいて地球に対して僅かに移動する。しかしながら、例えば図では遠地点にあるバーチャル静止衛星22は、後に近地点に移動し、さらに後には、例えば地球局36、38を含む地球の他地域の上にある他の位置に移動する。この先行技術システムにより、優先権にカバーされた特定の地理的位置の上での稼動が可能になった。例えば大陸の広い土地は、大陸間の大洋のような他の地域を除外して、コンステレーションによりカバーすることができる。図示された先行技術の実施形態において、たとえば、米国、ヨーロッパ及びアジアとロシアの部分が、優先的にカバーされる。
静止衛星リングへの干渉を防ぐために、先行技術システムの衛星上の通信装置は、衛星が地球の赤道面から所定の距離30以内に入ると、稼動できなくなる。これによって、下記にさらに詳述するように、静止衛星と先行技術の衛星との間に地球から見て少なくとも40度の角度分離が行なわれる。
図2に示した5個の衛星は、同一値の遠地点半径、近地点半径、近地点引数、傾斜角及び平均運動を有している軌道にあるが、それらの衛星が全て共通のグラウンドトラックを追うようにRAANと平均近点角においてはそれぞれ離間している。図3は、図2の先行技術の5衛星アレイのための地球の等距離円筒投影図上に書かれたデカルト座標におけるグラウンドトラック50のプロットを示す。(単一グラウンドトラック38のプロットは、実際には世界地図の左端から右端へ続いていて多数のトレースがあるように見えることに留意すべきである)。この先行技術システムにおいて、衛星の平均運動は3であり、従って毎日軌道に沿って地球を3周する。軌道は、地軸の周囲に等間隔で配置されており、平均近点角において等間隔で配置されている。この5衛星の場合、経度における軌道間隔Sは、72度に等しく設定されている。5つの異なる軌道にある5衛星に全て同一のグラウンドトラックを追わせるために、平均近点角におけるそれらの間隔は、Sのn倍、すなわち216度である。図5から理解されるように、平均運動3の衛星は、全世界で3つのループを形成する。一般に、グラウンドトラック内のループの数は、平均運動の数と同じである。互いの間隔を維持しながらアレイの全軌道のRAANを調整することにより、異なるカバレージ地域を目指してループの位置を経度の東または西に移動させることができる。図示した先行技術システムにおいて、近地点引数は270度なので、ループは、軌道の遠地点に関して対称である。遠地点は北半球にあるので、図の先行技術システムは北半球のカバレージに有利である。図に見られるように、遠地点に近いループの頂部の各能動弧に1個の衛星40、44、46があり、能動弧間の位置に2個の非能動衛星42、48がある。この特別の場合、能動弧の両端部は北緯45.1度にあり、中央は北緯63.4度でこれは傾斜角の角度数に等しい。これによって、能動弧と静止衛星リングとを極めて大きく(約40度)分離できる。図4に示した衛星の負荷サイクルは60パーセントであり、これは各衛星が60パーセントの時間において遠地点の近くで稼動されることを意味する。能動衛星が能動弧の一端部を離れようとしている時、非能動衛星の1個が他端部に現れて交替して非能動状態から能動状態に切り換えられる。
この先行技術システムは、各能動弧にさらに衛星を加えて同数の衛星を有するグラウンドトラックを元のトラックのループ間に挿入する機会を与える。各能動弧における軌道位置は実際に軌道スロットを形成し、この先行技術システムにおいてこれは「Vスロット」と呼ばれている。しかしながら、何らかの軌道形状にとってのそのようなバーチャルスロットの可能な数は、各能動弧内の遠地点での衛星間隔と隣接グラウンドトラックの能動弧の交点に近い衛星間隔とによって決定的に限定される。先行技術のバーチャル静止衛星システムでは、最小2度の衛星間隔を保ちながら各能動弧に最大14個の衛星を収容できることが判明している。北半球及び南半球にさらに第2のグラウンドトラックを加えて能動弧の合計数を12に増すならば、バーチャルスロットの可能な最大数は14×12すなわち168個である。
先行技術システムにおいて全ての能動衛星はほぼ西から東への一方向に移動しているので、追尾している能動衛星が稼動停止点に近づいた時、各地球局のアンテナビームを能動弧の終端から始端へ回動させねばならない。本発明は、先行技術システムのこの欠点を克服し、またその容量を著しく改善させるものである。
先行技術システムとは違って、本発明の基本アレイは、1対の反復グラウンドトラックに配置された楕円軌道衛星を利用する。図4は、本発明の第1の基本的な24時間反復グラウンドトラック130を示している。その近地点引数は180度と270度の間であるので、軌道楕円は地軸と一直線にはならず、赤道に向かって傾いている。図の実施形態において、遠地点は緯度40度付近にある。このことは、このシステムが最もよく使用されがちな中緯度の高人口密度地域に近いという利点を有する。衛星軌道の平均運動は3であり、グラウンドトラックには3個のループが存在する。しかしながら、近地点引数が軌道を傾けているので、近地点引数が90度〜270度の場合と異なりグラウンドトラックのループは子午線に関して対称ではなく、図のように左に傾いて見える。黒色で強調した能動弧132、134、136は各ループの左側すなわち西側にあり、先行技術システムとは異なって主として北〜南方向に向いている。図の左に傾いたグラウンドトラックにおいて、衛星は南から北への方向に能動弧を横切る。
図の実施形態において、能動弧は、遠地点のいずれかの側の軌道期間の4分の1以内にある各衛星軌道の部分を表わしている。このことは、衛星が50パーセントの時間において能動状態にあり、残りの50パーセントの時間において非能動状態にあり、従って50パーセントの負荷サイクルを有することを意味する。これらの能動弧にある衛星は、能動弧の下端すなわち北緯約20度において能動状態に入り、北緯約61.5度の稼動停止点に達するまで北方向に移動する。北緯約20度の能動弧の下端は、赤道面の静止衛星から極めて充分な角度で離れている。グラウンドトラック130を形成する衛星の軌道パラメータは、各能動弧132、134、136の始点及び終点が同一子午線上にあるように、注意深く調整されていることに留意すべきである。
図5は、本発明の第2の基本的な24時間反復グラウンドトラック140を示しており、これは図4に示した第1の基本的グラウンドトラックの右に傾いたバージョンである。第2グラウンドトラックの北のループを右すなわち東に傾けるために、270度と360度の間の近地点引数が選択されている。好ましい実施形態において、左及び右に傾いたグラウンドトラックの衛星のために選択された近地点引数は補角であり、すなわちグラウンドトラックは右及び左に同じ量だけ傾いている。図5の能動弧142、144、146は、黒色で強調されている。この例において、能動弧はグラウンドトラックの北側ループの右側にあり、これらの能動弧における衛星は、南方向に移動している。前記の場合と同様に、衛星の軌道パラメータは、各能動弧の始点及び終点が同一経線に沿うように、注意深く調整されている。
図6は、図4及び図5の左及び右に傾いたグラウンドトラック130、140を結合した結果を示している。ここでもグラウンドトラックの能動弧の部分は、黒色で強調されている。能動弧は結合してクローズドパスを形成しているので、能動弧の始端及び終端が同一経度にある理由がいま明らかになった。クローズドパスの周囲の能動衛星を連続的に追尾するためには、北へ移動して左に傾いたグラウンドトラックの能動弧を終了しつつある衛星が、南へ移動して右に傾いたグラウンドトラックの能動弧を開始しつつある衛星と同じ位置で出会うように、システムにおける衛星の時間的調整を実施する必要がある。このようにして、マスター地球制御局が前の衛星の稼動終了と後の衛星の稼動開始とを同時に実施するように命令すると、前の衛星を追尾していた地球局のアンテナは、単に後の衛星からの信号受信を開始して、次の切り換えが起こるまでこの能動衛星の運動を追う。同様な切り換えは赤道により近い能動弧の終端においても起こり、この場合、去っていく右に傾いたトラックの衛星は、到着する左に傾いたトラックの衛星と入れ替わる。
図6に示した本発明の好ましい実施形態は平均運動3の衛星を有しており、経度120度離れた北半球の目立った3地域、すなわちこの場合、人口密度の高い日本と東アジア、北アメリカ大陸及びヨーロッパをカバーするティアドロップパターンを実際に形成する。勿論、これに似ているがこれらのティアドロップパターンを倒立させたパターンのセットを南半球に配置することも可能であり、それによって選択された地理的領域を同様にカバーできる。
図7Aは、本発明による6個の衛星の最小ビルディングブロックシステムを示し、これは全体として符号60が付与されている。周囲の地理的領域における地上アンテナに1個の能動衛星が高仰角で常に見えるような、各クローズドパスティアドロップパターンを提供すべく、前記衛星は適切に時間的に調整されている。(図7Aは、地球を中心とした固定投影図であり、すなわち地球は回転していない状態の図であることに留意すべきである)。6個の衛星は、全て同一の遠地点半径、近地点半径、傾斜角及び平均運動を有する地球の周囲の楕円軌道にある。左に傾いたグラウンドトラックを形成する3個の衛星の軌道は、同一値の近地点引数と平均近点角とを有し、且つ120度の等間隔で配置されたRAANを有している。同様に、右に傾いたグラウンドトラックを形成する3個の衛星の軌道は、共通の近地点引数と平均近点角とを有しているが、これらは左に傾いた衛星の近地点引数と平均近点角とは異なる。2グループ間の平均近点角の差は180度であり、従って、例えば左に傾いた衛星が遠地点の近くにあると、右に傾いた衛星は近地点の近くにある。2グループの近地点引数は補角を成し、すなわち2つの近地点引数の和は180度である。このことは、下記の表1から理解することができる。表1は、図7Aに示した基本的な6衛星アレイの軌道要素を表にしたものである。これらの軌道要素は、反復により展開されたが、さらに厳密になるであろう。
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図7Aに示した基本的な6衛星システムにおいて、たとえば軌道64にある衛星62上の通信システムは、衛星62が遠地点の近くの能動弧にある時、地球の地球局72、74と通信する。別の楕円軌道68にある衛星66は、他方のグラウンドトラックにあって稼動していないが、軌道時間の半分が経過した後には、地球局72、74と通信する。図7Bは、図7Aと同じ6衛星アレイを南極から見上げた図である(図7Bは、慣性空間での投影図で、すなわち地球は回転している)。全ての楕円軌道は同じ基本形を有しているが、そのうちの3つが一方に傾き残りの3つが他方に傾いていることを、この斜視図はさらに明確に示している。
上記のように、好ましい実施形態において、1つのグラウンドトラックにおける能動弧の終端で稼動停止した衛星は、補完グラウンドトラックにおける能動弧の始端で稼動開始した衛星と宇宙で同じ位置にある。宇宙での衝突を避けるために、いかに遠くに見えても、グラウンドトラックの一つを形成している衛星アレイの赤経、近地点引数または平均近点角のいずれかに僅かな偏差を加えることができる。このように1つまたはそれ以上の軌道パラメータを僅かに変更することにより、軌道パスが互いに上または下を通るようになり、衝突の可能性が完全に無くなるので、好ましい。2つの衛星が空で交差する時、地球局アンテナの2つの衛星を同時に「見る」能力を損なうことなく所望の結果を得るには、明らかに極めて小さな偏差のみが必要である。
図8は、図7A及び図7Bの基本的な6衛星システムをデカルト座標で示したものである。この図において、左に傾いたグラウンドトラック130にある3個の衛星152、154、156は北緯約48度で稼動通信モードにあり、北方向へ移動している。残りの3個の衛星162、164、166は、北緯約24度に有り、軌道の非稼動部分にあって次の稼動開始位置へ移動しつつある。グラウンドトラックをトレースすることにより、各衛星は1日に一度、3個のクローズドループティアドロップパターンの各々を訪れ、そのティアドロップにおいて約4時間にわたる能動弧の持続時間の間、稼動状態にあることがわかる。この特徴によって、万一衛星事故が起こった時、いわゆる「グレイスフル・デグラデーション」が可能になる。静止衛星システムにおいては、ある地域にサービスを提供する1個の衛星が失われると、影響のある地域に対する通信全体が不可能になるが、一方、本発明システムにおいて1個の衛星が故障しても、各カバレージ地域で各1日24時間の僅か4時間の通信停止だけで済む。1日の間に、通信停止状態は、3つのティアドロップパターンを巡るので、カバレージ地域全体に同時に影響することはない。
図9は、図8の状態から時間が経過した後の図8と類似した図であり、ここにおいて南方向に移動する衛星162、164、166のグループは、能動状態になっている。この図において、3個の非能動衛星152、154、156は、実際には南半球の南緯32度にあり、図8における非能動衛星の場合よりも近地点により近づいている。
図10は、本発明による北半球をカバーする衛星コンステレーションを示している。このコンステレーションは、各ティアドロップパターンに4個の能動衛星を有しており、すなわち合計12個の衛星を有している。図の例において、北緯約42度にある6個の衛星は遠地点にある。各ティアドロップパターンの各端部において、実際には2個の衛星が同一位置または近い位置に存在する。1個は稼動開始したばかりであり、他方は稼動終了したばかりである。さらに、6個の衛星が南緯47度にあり、その位置はそれらの近地点である。近地点引数が270度に等しくないため、この近地点は南緯63.4度には無く、同じ理由で遠地点は北緯63.4度には無い。
図10は各ティアドロップパターンに4個の能動衛星を有するシステムを示しているが、さらに多数の上記の基本的な6衛星グループを1対の左及び右に傾いたグラウンドトラックに配置することができる。ティアドロップパターンにおいて、衛星相互の間隔に関する臨界領域は、先端すなわち能動弧が赤道に最も近くなる点にあるように見える。12個までの衛星が、北方向へ移動する衛星パスに支持されることが可能であり、それに加えて対応する12個の能動衛星が南方向に向かうパスに支持されることが可能であり、1個のティアドロップパターンに合計24個の能動衛星が支持されることが、反復により判明した。このティアドロップパターンごとの最大容量は、各グラウンドトラックにおける能動、非能動を含めた全衛星が平均近点角において等間隔に配置されることに基づいて得られた。
交差ドループティアドロップパターンの位置は、対を成すグラウンドトラックを形成する衛星のRAANを増すことにより、随意に経度を変えてよい。このようにして、これがグローバルなシステムであり、各システムは経度において120度ずつ離れた3つの同様な地域をカバーすることを認識して、選択されたマーケット地域を指示できる。緯度におけるカバレージパターンは変更できないが、このシステムは本来中緯度及び高緯度を静止衛星よりも効果的にカバーする。なぜならば、衛星がこれらの緯度のより真上にあるからである。
この発明の通信システム容量は、地球の周りの異なる経度の位置にグラウンドトラック対を加えることにより、増大させることができる。しかしながら、1つのティアドロップパターンが最も近い隣接パターンと2度よりも近づかないように、ティアドロップパターン間の間隔を保たねばならない。好ましい実施形態には、12個までのティアドロップパターンを互いに妨害することなしに北半球に配置することが可能であり、また同様に12個を倒立して南半球に配置できる。従って、このようなシステムには、合計24×24個すなわち576個の能動衛星を配置することができる。稼動位置すなわちスロットのこの数を静止衛星リングにおける可能なスロット数180と比較すると、本発明は、3.2倍(576/180)も大きい、可能なグローバル通信衛星容量を有する。
図11は、上記の北半球にある12個のティアドロップクローズドパス180と南半球にある12個のティアドロップパターンとを示すデカルト座標のプロットである。
図12Aは、慣性空間にある同じティアドロップパターンを地球の赤道面の僅か上方にある視野から描いた図である。この図は、静止衛星リングとティアドロップパターン180、182とが明確に角度的に分離していることを示している。図12Bは、慣性空間にあるティアドロップパターンを地球の北極上にいる観察者の視野から描いた図である。この透視図は、北極の上方130、000マイルの距離からのものであるので、ずっと離れた南半球のティアドロップは小さく見えるが、実際には北半球のティアドロップパターンと同一の大きさである。この図もまた、本発明による衛星の軌道高度が静止衛星軌道に必要な高度以下に充分存在することをさらに明確に示している。
図13は、北半球に収容することができる12個のティアドロップクローズドパターンの図であり、ティアドロップパターンの1個に24個の能動衛星が存在している。他のティアドロップパターンは、それぞれ1個の能動衛星を有している。
ここに述べた軌道も含めて全ての楕円軌道は長期の摂動効果の影響を受けるので、もしそれを償わなければ、衛星の所望のカバレージは、時の経過とともに失われてしまうことに留意すべきである。これらの摂動現象は、地球のJ2回転ハーモニックに起因するものであり、J2回転ハーモニックは、地球が完全な球形でなく実際には赤道で膨らんでいるという事実を反映している。2つの重要な影響は、ポジグレード軌道(I >90度)のための交点線の後退と、軌道極点線の回転である。傾斜角が臨界角よりも大きい場合(Iは、63.4度と116.6度との間)、各衛星の近地点と遠地点との間の線(軌道極点線)は後退し、他の傾斜角の場合(I <63.4度 または I >116.6度)、軌道極点線は前進する。ちょうど臨界角である63.4度または116.6度の場合は、軌道極点線は安定し、このことは極めて望ましい効果として、好ましい実施形態において遠地点を選択した高さに維持するために利用されてきた。傾斜楕円軌道の場合、交点線の後退が起こり、これは軌道時間において小さい調整で補わなければならない。一定のアレイ設計の全衛星は、同様に影響を受ける。この影響によって、北極から見下ろした時、軌道面が時計回りに回転する。もしこれが起こると、衛星は、毎日僅かに早い時間に選択された子午線を通過する。アレイにおける各衛星の期間を僅かに短くして、軌道グラウンドトラックを効果的に引き伸ばし、グラウンドトラックをちょうど衛星の寿命全体に渡って反復させることにより、上記の影響は幸運にも償うことができる。
熟練者には明らかなように、本発明のシステムは、電話、ブロードバンドデータ、テレビジョン放映、直接放送及び移動体通信のような広く多様な衛星通信サービスと、気象学や地球資源モニタリングなどの通信以外のサービスに利用できる。図14A、14Bは、本発明によるテレビジョン配備及びデータ伝送サービスに使用できる衛星及び地球局の例のブロック線図である。このブロック線図は、例えば地球局62と、衛星42と図8の地球局64との間の通信を実施するのに使用できる要素を示している。
図14Bを参照すると、配信されるべきビデオ情報がビデオインプット200として受信され、デジタルコードのビデオ情報を加工するビデオコーダ202に入力される。このデジタルコードビデオは、ビデオマルチプレクサ204により、多数の他チャンネルのビデオ情報と共に多重送信される。得られた多重送信ビデオ206は、エレメント208により変調され適切にコード化された後、トランスミッタエレメント210によりアップ変換される。アップ変換された信号は、アンテナ212によりリンク「A」を介して送信される。アンテナ212は衛星42に向けられ、ポインティングサーボ213により制御される。
次に図14Aを参照すると、アンテナ212からの送信は、衛星42の位相配列アンテナ214により受信される。受信された信号はレシーバ216の1つにより検知されて、そこからマルチプレクサ218に入力される。マルチプレクサ218の出力はトランスポンダ250に送られ、そこで受け取られた信号は周波数に翻訳され、多数のトランスポンダチャンネル間で切り換えられるかまたはRF、IFかベースバンドにおいて何らかの方法で加工される。トランスポンダから、信号は典型的には電力増幅器252とマルチプレクサ254とを通って、ビームフォーマ256に入力される。ビームフォーマ256は送信用の操縦可能な位相配列アンテナ260を駆動し、位相配列アンテナ260は、 図14Bの遠方のユーザターミナル64における操縦可能なアンテナ262に、現行の静止衛星周波数帯で信号を送る。好ましくは、この信号は、そのようなサービスのために現行の静止衛星により使用されているのと同じ周波数を用いる。位相配列アンテナ260は、予めセットされた反復パスを追う衛星搭載コンピュータにより操縦されるかまたは地上から操縦される。図14のユーザターミナル64において、リンク「D」上の信号は、操縦可能なアンテナ262を介してレシーバ264により受信され、266で再変調され、267で逆多重化され、268でデコードされて、ビデオアウトプット270を生じる。
上記とは異なり、ユーザ端末64は、アンテナ222と、リンク「B」と「C」とで声とデータの双方向伝送が可能なトランスミッタ・レシーバ218とを含んでいてもよい。それに対応して、中央地球局62は、レシーバ・ダウンコンバータ214と双方向の声及びデータをサポートする装置とを含む。典型的なデータ利用は、マルチメディア及びインターネットサービスを含む。
通信機能に加えて、図14Aは搭載プロセッサ280を示しており、この搭載プロセッサ280は種々のパラメータから衛星の方向と衛星アンテナの操縦とを決定する。電源装置290は、電力が必要な種々の衛星サブシステムと部品との全てに電力を供給し調整する。電源装置290は、ここではソーラーアレイ292として示されている電源と、ここではバッテリアレイ294として示されているエネルギー貯蔵エレメントとを含んでいる。
本発明により、重要なことは、ソーラーアレイ292が、衛星の衛星通信機能に対し充分に電力供給するのに必要な量よりも少ない量の電力を供給するような規模を有することである。この割合をここでは衛星の電力供給率と呼ぶ。電力供給率は、衛星の軌道の種類と、衛星が楕円軌道においてどのくらいの間送信し続けるかによって決まる。本発明の好ましい実施形態は、0.5の名目的電力供給率を有しており、すなわち軌道時間の2分の1の時間に通信を行なう衛星に電力供給する。(衛星の通信装置が非能動状態でも、ハウスキーピング機能を維持するために少量の電力を生じさせねばならない)。残りの2分の1の時間には、衛星上のトランスミッタ及びレシーバは非能動状態にあり、ソーラーアレイ292は電力を充電バッテリ294に供給する。
図15は、衛星のこの電力消費方法を、全体として符号300を付したフローチャートフォーマットで示している。ステップ302は、衛星を追尾している地球局アンテナの1つまたはそれ以上からの衛星軌道データの受信を表わしている。ステップ304は、受信した軌道データから軌道における各衛星の位置を一定の時間に計算するステップを表わしている。これには、先述したマスター地球制御局のプロセッサが受け取った軌道データを記録し加工する必要がある。ステップ306において、プロセッサは、衛星のそれぞれがそれぞれの能動弧に存在するかどうかを判定する。ステップ308において、衛星が能動弧を離れたばかりであると判定されると、ステップ310において搭載衛星通信装置を非稼動状態にする命令が送られる。この場合、衛星の電源装置290もまた、ステップ312においてソーラーアレイ292により発電された電力をバッテリアレイ294に充電するように命令される。もしステップ314において衛星が能動弧に入ったばかりであると判定されると、ステップ316において衛星の搭載通信装置を稼動させる命令が送られ、ステップ318において、必要な電力が電源装置とバッテリアレイとから引き出される。衛星が能動弧に存在しない場合に衛星の通信装置を確実に非稼動状態にし、それによって静止衛星リング内の衛星に対する干渉を完全に防ぐために、プログラムドタイマのような独立搭載手段を衛星搭載プロセッサ内に設けておいてもよい。
上記のように、衛星を遠地点領域においてのみ稼動させることにより、静止衛星リング内の衛星に対する干渉を防ぐ。本発明においては、衛星がほとんどの時間を過ごす衛星遠地点を北半球及び南半球の高交通密度地域の上に配置するように、カバレージを最適化しているので、軌道の能動弧は、赤道から充分に離れている。本発明によれば、現行静止衛星周波数割り当てをさらに何度も再利用することが可能であり、乏しいスペクトラム資源に対する強力な世界的プレッシャを減らす助けとなる。
静止衛星リングに対する干渉の可能性を防ぐことに加えて、本発明は、能動弧にある衛星に対して高仰角を与える。仰角の最大化は、静止衛星との通信にしばしば悪影響を与える大気の影響、ブロッキング及びマルチパスを実質的に減らす。これらの利点は、大気による減衰が重大な問題になっている高周波数帯(例えば20〜100GHz)にとって特に有用である。
本発明の衛星システムは、多くの局面において静止衛星に似ているが、本発明システムの衛星は、極めて低い高度の軌道を移動する。静止衛星は36、000kmの高度の軌道を周るが、本発明の8時間衛星は、能動弧にある時、例えば約21、000〜26、000kmの高度の軌道を移動する。これらの楕円軌道の衛星に対するパスロスは、静止衛星軌道に対するパスロスに比べて極めて小さいので、それに応じて衛星上の通信パッケージの電力とアンテナサイズとの両方を縮小できる。軌道高度が低いことはまた、衛星打ち上げコストの観点からも有利である。静止衛星とは違って、楕円軌道衛星は、それらを最終軌道に押し上げるアポジモータを必要としない。このことだけでも、衛星1個当りの打ち上げ機による打ち上げコストの約半分を減らすことができる。さらに、上述のように衛星の電力及び通信システムのサイズと重量を減らせることは、打ち上げコストの観点から本発明の利益を大きく増す。
静止衛星リングにおける衛星とは異なり、本発明の好ましい実施形態の衛星は、世界中に等間隔に置かれた3個のティアドロップパターンに配置するために、6個ずつの増加量で加えねばならないことに留意すべきである。しかしながら、先述の理由から、基本アレイの6個の衛星を建設し打ち上げるのに必要なコストは、同等のグローバルサービスを提供する3個の静止衛星の建設及び打ち上げのコストと比べて、極めて有利である。
本発明を使用すると、非静止衛星の追尾を極めて簡素化できる。地球局アンテナは、衛星の切り換えが起こる時にロックを外して新しい位置に回動させる
必要なしに、上空のほぼ円形のクローズドパスにおいて1個の能動衛星と見えるものを追う。このことは、本発明衛星を、静止衛星に代わる一層魅力的な衛星とする。さらに、本発明は、種々の用途に使用できる世界的な通信の容量を増し、現行の静止衛星リングに干渉することなく、静止衛星よりも高い平均仰角を有し且つ伝送遅延の少ない通信衛星のグローバルシステムを提供し、また静止衛星システムに比べて全建設コスト及び打ち上げコストを下げることができる。
以上本発明を図の実施形態を参照して説明してきたが、これらの説明は、発明を限定するものではない。これらの図示した実施形態の種々の変形と組み合わせ及び他の実施形態は、本発明を参照した熟練者には明らかであろう。従って、添付請求項は、そのような変形及び他の実施形態を含むものとする。
遠地点付近の一群の衛星を含む、楕円衛星軌道の基本的な特性を示す図である。 先行技術による、各軌道に1個の衛星を有する5つの楕円軌道の斜視図である。 先行技術による図2の楕円軌道のグラウンドトラックを示すデカルトプロットである。 本発明による左に傾いた反復グラウンドトラックを示すデカルトプロットである。 本発明による右に傾いた反復グラウンドトラックを示すデカルトプロットである。 本発明による図4及び図5の左及び右に傾いたグラウンドトラックを結合してクローズドティアドロップパターンを形成したデカルトプロットである。 本発明による、各軌道に1個の衛星を有する6つの楕円軌道の赤道斜視図である。 本発明による、各軌道に1個の衛星を有する6つの楕円軌道の極斜視図である。 図7A及び7Bの基本的な6衛星システムを示すデカルトプロットである。 後の時点における図8と同じ6衛星システムを示すデカルトプロットである。 各クローズドティアドロップパターンに4個の能動衛星を有する、本発明による24個の衛星のコンステレーションを示すデカルトプロットである。 本発明による、北半球の12個のティアドロップパターンと南半球の12個のティアドロップパターンとを示すデカルトプロットである。 図11の24個のティアドロップパターンの赤道斜視図である。 図11の24個のティアドロップパターンの極斜視図である。 北半球に12個のティアドロップパターンを有しており、その1つが24個の能動衛星を有している、本発明のよる衛星のコンステレーションを示すデカルトプロットである。 本発明により使用される典型的な衛星の通信装置のレイアウトを示す線図である。 本発明により使用される典型的な地球局の通信装置のレイアウトを示す線図である。 本発明による衛星の電力消費方法論を示すフローチャートである。

Claims (39)

  1. 遠地点と近地点を有する地球の周りの軌道上にある第1の複数衛星と、遠地点と近地点を有する地球の周りの軌道上にある第2の複数衛星とを有する衛星のコンステレーションであって、
    前記第1の複数衛星の各々は、その衛星の軌道の遠地点に近い所定部分にある間だけ能動状態にあるように構成されており、前記第1の複数衛星の軌道は第1近地点引数を有し且つ第1共通グラウンドトラックを形成するように構成されており、前記第1共通グラウンドトラックは毎日反復し且つ多数の第1能動弧を有しており、前記第1能動弧の各々は衛星が能動状態にある各衛星軌道の前記所定部分に対応しており、前記第1の複数衛星の軌道はさらに前記第1能動弧の各々が同一子午線の上の点で始まり且つ終わるように構成されており、
    前記第2の複数衛星の各々は、その衛星の軌道の遠地点に近い所定部分にある間だけ能動状態にあるように構成されており、前記第2の複数衛星の軌道は前記第1近地点引数の補角である第2近地点引数を有し且つ第2共通グラウンドトラックを形成するように構成されており、前記第2共通グラウンドトラックは毎日反復し且つ多数の第2能動弧を有しており、前記第2能動弧の各々は衛星が能動状態にある各衛星軌道の前記所定部分に対応しており、前記第2の複数衛星の軌道はさらに前記第2能動弧の各々が前記第1能動弧の1つの終点と一致する点で始まり且つ前記同一第1能動弧の始点と一致する点で終わるように構成されている衛星のコンステレーション。
  2. 前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星との軌道は、さらに、少なくとも1個の衛星が(i)第1能動弧の各々と(ii)第2能動弧の各々との少なくとも1つに常にあるように構成されている、請求項1に記載のコンステレーション。
  3. 前記第1の複数衛星は第1の数の衛星を有しており、前記第2の複数衛星は前記第1の数の衛星と等しい第2の数の衛星を有しており、前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星との軌道は、さらに、第1の複数衛星の1個が前記第1能動弧の1個の始点にある時は常に、同時に第2の複数衛星の1個が前記第2能動弧の1つの前記始点と一致する終点かその近くにあるように構成されている、請求項2に記載のコンステレーション。
  4. 前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星との軌道は、さらに、前記第1グラウンドトラックと前記第2グラウンドトラックとが交差する点において衛星が衝突しないように構成されている、請求項3に記載のコンステレーション。
  5. 前記第1グラウンドトラックと前記第2グラウンドトラックとの各々における衛星が平均近点角において等間隔に配置されている、請求項3に記載のコンステレーション。
  6. 前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星は、さらに、第1能動弧と第2能動弧のいずれか1つにある衛星の各々が、地球から見た時、同一能動弧にある互いの衛星から少なくとも所定の角度だけ常に離れているように構成されている、請求項3に記載のコンステレーション。
  7. 前記各複数衛星の各衛星軌道が、臨界傾斜角で傾斜している、請求項1に記載のコンステレーション。
  8. 前記各複数衛星の各衛星が、その軌道全体にわたって静止衛星軌道に必要な高度よりも低い軌道高度を有している、請求項1に記載のコンステレーション。
  9. 前記第1及び第2の複数衛星の軌道は全て2、3及び4のうちのいずれか1つの平均運動を有する、請求項1に記載のコンステレーション。
  10. 衛星が能動状態にある各衛星軌道の前記所定部分は、平均近点角において軌道の遠地点に関して対称に配置されている、請求項1に記載のコンステレーション。
  11. 前記各複数衛星の軌道は、さらに、衛星が能動状態にある軌道の前記部分が地球の赤道面の軌道を周る静止衛星から少なくとも所定角度だけ離れているように構成されている、請求項1に記載のコンステレーション。
  12. 前記複数衛星の各衛星は電力システムを有しており、前記電力システムは、衛星が能動状態にある時には第1の量の電力を生じ且つ衛星が非能動状態にある時には前記第1の量よりも大きい第2の量の電力を生じ、衛星が非能動状態にある時に生じた余剰電力を保存し、保存された余剰電力と生じた第1の量の電力とを用いて衛星を稼動させるように構成されている、請求項1に記載のコンステレーション。
  13. さらに地球の周りの軌道上にある第3の複数衛星と地球の周りの軌道上にある第4の複数衛星とを含み、
    前記第3の複数衛星の各々は、前記第1の複数衛星の各々の衛星軌道の前記所定部分と同じである衛星軌道の部分においてのみ能動状態にあるように構成されており、前記第3の複数衛星の軌道は第3能動弧を有する第3共通グラウンドトラックを形成するように構成されており、前記第3共通グラウンドトラックは前記第1共通グラウンドトラックと同じ形を有し且つ経度において前期第1グラウンドトラックから所定量だけ変位しており、
    前記第4の複数衛星の各々は、前記第2の複数衛星の各々の衛星軌道の前記所定部分と同じである衛星軌道の部分においてのみ能動状態にあるように構成されており、前記第4の複数衛星の軌道は第4能動弧を有する第4共通グラウンドトラックを形成するように構成されており、前記第4共通グラウンドトラックは前記第2共通グラウンドトラックと同じ形を有し且つ経度において前期第2グラウンドトラックから所定量だけ変位しており、
    前記所定量の経度における変位は、常に、(i)前記第3能動弧のいずれかにある衛星の各々が、地球から見た時、前記第2能動弧のいずれかにある衛星の各々から少なくとも所定の角度だけ離れており、また(ii)前記第4能動弧のいずれかにある衛星の各々が、地球から見た時、前記第1能動弧のいずれかにある衛星の各々から少なくとも所定の角度だけ離れているような変位である請求項1に記載のコンステレーション。
  14. 遠地点と近地点を有する地球の周りの軌道上にある第1の複数衛星と、遠地点と近地点を有する地球の周りの軌道上にある第2の複数衛星と、複数地球局とを有する衛星通信システムであって、
    前記第1の複数衛星の各々は、その衛星軌道の遠地点に近い所定部分においてのみ通信を行なうように構成された通信装置を搭載しており、前記第1の複数衛星の軌道は、第1近地点引数を有しており且つ第1共通グラウンドトラックを形成するように構成されており、前記第1共通グラウンドトラックは毎日反復し且つ多数の第1能動弧を有しており、前記第1能動弧の各々は衛星に搭載された通信装置が通信を行なうように構成された各衛星軌道の前記所定部分に対応しており、前記第1の複数衛星の軌道はさらに前記第1能動弧の各々が同一子午線の上の点で始まり且つ終わるように構成されており、
    前記第2の複数衛星の各々は、その衛星軌道の遠地点に近い所定部分においてのみ通信を行なうように構成された通信装置を搭載しており、前記第2の複数衛星の軌道は、前記第1近地点引数の補角である第2近地点引数を有しており且つ第2共通グラウンドトラックを形成するように構成されており、前記第2共通グラウンドトラックは毎日反復し且つ多数の第2能動弧を有しており、前記第2能動弧の各々は衛星に搭載された通信装置が通信を行なうように構成された各衛星軌道の前記所定部分に対応しており、前記第2の複数衛星の軌道はさらに前記第2能動弧の各々が前記第1能動弧の1つの終点と一致する点で始まり且つ前記同一第1能動弧の始点と一致する点で終わるように構成されており、
    前記複数地球局の各々は、前記第1及び第2の複数衛星の各々に搭載された通信装置と通信を行なう通信装置を有しており且つ地球上のある位置に配置されており、各地球局はその位置から、前記第1能動弧の1つにある衛星とこの第1能動弧と一致する始点及び終点を有する第2能動弧の1つにある衛星とを追尾できる衛星通信システム。
  15. 前記第1及び第2の複数衛星の軌道は、さらに、(i)前記第1の能動弧の各々と(ii)前記第2の能動弧の各々との少なくとも1つに少なくとも1個の衛星が常にあるように構成されている、請求項14に記載の衛星通信システム。
  16. 前記第1の複数衛星は第1の数の衛星を有しており、前記第2の複数衛星は前記第1の数の衛星と等しい第2の数の衛星を有しており、前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星との軌道は、さらに、第1の複数衛星の1個が前記第1能動弧の1個の始点にある時は常に、同時に第2の複数衛星の1個が前記第2能動弧の1つの前記始点と一致する終点かその近くにあるように構成されている、請求項15に記載の衛星通信システム。
  17. 前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星との軌道は、さらに、前記第1グラウンドトラックと前記第2グラウンドトラックとが交差する点において衛星が衝突しないように構成されている、請求項16に記載の衛星通信システム。
  18. 前記第1グラウンドトラックと前記第2グラウンドトラックとの各々における衛星が平均近点角において等間隔に配置されている、請求項16に記載の衛星通信システム。
  19. 前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星は、第1能動弧と第2能動弧のいずれか1つにある衛星の各々が、地球局のいずれか1つから見た時、同一能動弧にある互いの衛星から少なくとも所定の角度だけ常に離れているように構成されている、請求項16に記載の衛星通信システム。
  20. 前記各複数衛星の各衛星軌道が、臨界傾斜角で傾斜している、請求項14に記載の衛星通信システム。
  21. 前記各複数衛星の各衛星が、その軌道全体にわたって静止衛星軌道に必要な高度よりも低い軌道高度を有している、請求項14に記載の衛星通信システム。
  22. 前記第1及び第2の複数衛星の軌道は全て2、3及び4のうちのいずれか1つの平均運動を有する、請求項14に記載の衛星通信システム。
  23. 衛星に搭載した通信装置が通信を行なう各衛星軌道の前記所定部分は、平均近点角において軌道の遠地点に関して対称に配置されている、請求項14に記載の衛星通信システム。
  24. 前記各複数衛星の軌道は、さらに、衛星が能動状態にある軌道の前記部分が、地球の赤道面の軌道を周る静止衛星から少なくとも所定角度だけ離れているように構成されている、請求項14に記載の衛星通信システム。
  25. 前記複数衛星の各衛星は電力システムを有しており、前記電力システムは、衛星に搭載された前記通信装置が通信を行なう状態の時には第1の量の電力を生じ且つ衛星に搭載された前記通信装置が通信を行なわない状態の時には前記第1の量よりも大きい第2の量の電力を生じ、前記通信装置が通信を行なわない状態の時に生じた余剰電力を保存し、保存された余剰電力と生じた第1の量の電力とを用いて前記通信装置に通信を行なわせるように構成されている、請求項14に記載の衛星通信システム。
  26. 前記第1及び第2の複数衛星の各々に搭載された前記通信装置は、さらに、複数地球局の各々に他の地球局の1つまたはそれ以上と通信させるように構成されている、請求項14に記載の衛星通信システム。
  27. 前記第1及び第2の複数衛星の各々に搭載された前記通信装置は、さらに、静止衛星に割り当てられた周波数で通信を行なうように構成されている、請求項14に記載の衛星通信システム。
  28. 第1と第2との複数通信衛星を、地球の周りの遠地点と近地点とを有する軌道を周回させることと、
    前記第1及び第2の複数通信衛星の各々にその軌道の遠地点に近い所定部分にある間だけ通信を行なうようにさせることとを含む、衛星通信の方法であって、
    前記第1の複数衛星の軌道は、第1近地点引数を有しており且つ地球上に第1共通グラウンドトラックを形成しており、前記第1共通グラウンドトラックは毎日反復し且つ多数の第1能動弧を有しており、各第1能動弧は衛星に搭載された通信装置が通信を行なえる各衛星軌道の前記所定部分に対応しており、
    前記第2の複数衛星の軌道は、前記第1近地点引数の補角である第2近地点引数を有しており且つ地球上に第2共通グラウンドトラックを形成しており、前記第2共通グラウンドトラックは毎日反復し且つ多数の第2能動弧を有しており、各第2能動弧は衛星に搭載された通信装置が通信を行なえる各衛星軌道の前記所定部分に対応しており、
    前記第1の複数衛星の軌道は、前記第1能動弧の各々が同一子午線の上の点で始まり且つ終わるように構成されており、
    前記第2の複数衛星の軌道は、前記第2能動弧の各々が前記第1能動弧の1つの終点と一致する点で始まり且つ前記同一第1能動弧の始点と一致する点で終わるように構成されている衛星通信の方法。
  29. 前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星との軌道は、さらに、少なくとも1個の衛星が(i)第1能動弧の各々と(ii)第2能動弧の各々との少なくとも1つに常にあるように構成されている、請求項28に記載の衛星通信の方法。
  30. 前記第1の複数衛星は第1の数の衛星を有しており、前記第2の複数衛星は前記第1の数の衛星と等しい第2の数の衛星を有しており、
    前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星との軌道は、さらに、第1の複数衛星の1個が前記第1能動弧の1個の始点にある時は常に、同時に第2の複数衛星の1個が前記第2能動弧の1つの前記始点と一致する終点かその近くにあるように構成されている、請求項29に記載の衛星通信の方法。
  31. 前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星との軌道は、さらに、前記第1グラウンドトラックと前記第2グラウンドトラックとが交差する点において衛星が衝突しないように構成されている、請求項30に記載の衛星通信の方法。
  32. 前記第1グラウンドトラックと前記第2グラウンドトラックとの各々における衛星が平均近点角において等間隔に配置されている、請求項30に記載の衛星通信の方法。
  33. 前記第1の複数衛星と前記第2の複数衛星の軌道は、さらに、第1能動弧と第2能動弧のいずれか1つにある衛星の各々が、地球から見た時、同一能動弧にある互いの衛星から少なくとも所定の角度だけ常に離れているように構成されている、請求項30に記載の衛星通信の方法。
  34. 前記各複数衛星の各衛星軌道が、臨界傾斜角で傾斜している、請求項28に記載の衛星通信の方法。
  35. 前記各複数衛星の各衛星が、その軌道全体にわたって静止衛星軌道に必要な高度よりも低い軌道高度を有している、請求項28に記載の衛星通信の方法。
  36. 前記第1及び第2の複数衛星の軌道は全て2、3及び4のうちのいずれか1つの平均運動を有する、請求項28に記載の衛星通信の方法。
  37. 衛星に搭載された通信装置が通信できる状態にある各衛星軌道の前記所定部分は、平均近点角において軌道の遠地点に関して対称に配置されている、請求項28に記載の衛星通信の方法。
  38. さらに、前記第1及び第2の複数衛星と静止衛星に割り当てられた周波数で通信を行なうことを含む、請求項28に記載の衛星通信の方法。
  39. 前記第1及び第2の複数衛星の各々は電力システムを有しており、前記電力システムは、衛星に搭載された前記通信装置が通信を行なえる時には第1の量の電力を生じ且つ衛星に搭載された前記通信装置が通信を行なえない時には前記第1の量よりも大きい第2の量の電力を生じるように構成されており、
    さらに、前記通信装置が通信を行なえない時に生じた余剰電力を保存することと、
    保存された余剰電力と生じた第1の量の電力とを用いて前記通信装置に通信を行なわせることとを含む、請求項28に記載の衛星通信の方法。
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