JP3687611B2 - Al/ステンレス鋼複合剛体トロリーバー - Google Patents

Al/ステンレス鋼複合剛体トロリーバー Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Al/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーに係り、特に、ステンレス鋼が摺動部の摺動部材を、アルミニウムが摺動部の導電材を構成するAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
剛体トロリーバーは、導体をパンタグラフによって集電するもので、大型クレーン、台車など大容量を必要とする移動電気機器用給電線として使用されている。また、最近では、モノレール、地下鉄など電車線用のものも開発され、広く使用されている。
【0003】
電車線用の剛体トロリーバーは、摺動面の耐摩耗性が要求されることから、図3に示すように、耐摩耗性の高いステンレス鋼からなる薄板ステンレス鋼条31と導電性の良好なアルミニウムからなる薄板Al条32とを圧接・クラッドして摺動部33を構成することで、摺動面の耐摩耗性を確保している。この摺動部33を、導電性が良好なアルミニウムからなる架台34の凹部35に嵌め込むと共にその凹部35の側壁部36をカシメて、摺動部33の薄板Al条32と架台34とをカシメ結合することで、Al/ステンレス鋼複合剛体トロリーバー37が得られる。ここでいうアルミニウムとは、純Al及びAl合金を示している。
【0004】
この剛体トロリーバー37の摺動部33は、薄板ステンレス鋼条31(摺動部材)と薄板Al条32(導電材)とを金属的に一体に形成しているため、耐食性に優れ、電気抵抗も小さく、安定した集電ができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の剛体トロリーバー37においては、摺動部33と架台34とをカシメ結合している。この剛体トロリーバー37は、摺動部33と架台34とのカシメ合わせ面は互いに平滑であるため、比較的小さな力で、摺動部33と架台34との間に軸方向の相対ズレが生じてしまう。カシメ合わせ面においては、輸送時の振動、曲げ加工時の曲げ応力、又はヒートサイクル(気温の変化(Alとステンレス鋼の線膨張係数が異なるため、気温の変化により伸縮差が生じる))等により、軸方向に相対ズレを生じさせる力が働くため、この力に抗することが可能な強度でカシメ結合を行う必要がある。
【0006】
しかし、カシメ結合の強度が高すぎると、剛体トロリーバー37の製造時に反りが発生したり、曲げ加工時にねじれが生じるという問題があった。よって、反り又はねじれが生じない範囲の強度でカシメ結合を行う必要があるが、この場合、輸送時の振動、曲げ加工時の曲げ応力、又は気温の変化等によって摺動部33と架台34との間に軸方向の相対ズレが生じることを防ぐことは困難であった。
【0007】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、カシメ結合の強度が十分に高く、かつ、製造時に反りや曲げ加工時にねじれが生じることがないAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係るAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーは、耐摩耗性の高いステンレス鋼からなる薄板ステンレス鋼条と導電性の良好なアルミニウムからなる薄板Al条とを圧接・クラッドした摺動部を、導電性が良好なアルミニウムからなる架台の凹部に嵌め込むと共にその凹部の側壁部をカシメて、摺動部の薄板Al条と架台とをカシメ結合したAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーにおいて、上記薄板Al条の、上記架台の凹部と接する部分に、少なくとも1本の溝部を形成したものである。
【0009】
また、本発明に係るAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーは、耐摩耗性の高いステンレス鋼からなる薄板ステンレス鋼条と導電性の良好なアルミニウムからなる薄板Al条とを圧接・クラッドした摺動部を、導電性が良好なアルミニウムからなる架台の凹部に嵌め込むと共にその凹部の側壁部をカシメて、摺動部の薄板Al条と架台とをカシメ結合したAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーにおいて、上記薄板Al条の幅方向両端部に、それぞれ少なくとも1本の溝部を形成したものである。
【0010】
上記溝部を、薄板Al条の長さ方向両端部近傍に形成してもよい。
【0011】
以上の構成によれば、摺動部と架台との間のカシメ結合の強度が十分に高くなり、かつ、製造時に反りや曲げ加工時にねじれが生じることがないAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーを得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0013】
第1の実施の形態に係るAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーの横断面図を図1に示す。
【0014】
図1に示すように、第1の実施の形態に係るAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバー17は、耐摩耗性の高いステンレス鋼からなる薄板ステンレス鋼条11と導電性の良好なアルミニウムからなる薄板Al条12とを圧接・クラッドした摺動部13を、導電性が良好なアルミニウムからなる架台14の凹部15に嵌め込み、その凹部15の側壁部16をカシメて、摺動部13の薄板Al条12と架台14とをカシメ結合したものである。
【0015】
薄板Al条12の、架台14の凹部15と接する部分には、少なくとも1本の溝部18が形成される。ここで、接する部分とは、薄板Al条12の下面12a又は幅方向(図1中では左右方向)の両端部12b,12cのいずれであってもよいが、両端部12b,12cの方がより好ましい。また、溝部18の、薄板Al条12の長手方向における形成位置は、両端部近傍に形成することが好ましい。
【0016】
溝部18の本数は特に限定するものではなく、1つの溝加工部における形成本数は1本でも十分な強度のカシメ結合が得られるが、好ましくは2本以上、より好ましくは3本とする。また、溝部18の形状は、図1に示した直線状に特に限定するものではなく、く字状、波線状等であってもよい。
【0017】
架台14と摺動部13とのカシメ合わせ面は同種金属同士の接触であるため、接触腐食が生じるおそれはないが、必要に応じて、適宜、導電性又は耐腐食性のコンパウンドを塗布してもよい。
【0018】
次に、本実施の形態の剛体トロリーバーの製造方法及び作用を説明する。
【0019】
剛体トロリーバーのカシメ加工工程における概略図を図2に示す。尚、図1と同様の部材には同じ符号を付している。
【0020】
先ず、耐摩耗性の高いステンレス鋼からなる薄板ステンレス鋼条11と、導電性の良好なアルミニウムからなる薄板Al条12とを積層すると共に、圧接・クラッドして摺動部13を形成する。ここで、薄板Al条12の、架台14の凹部15と接する部分には、予め少なくとも1本の溝部18を形成しておく。
【0021】
次に、この摺動部13を、導電性が良好なアルミニウムからなり、横断面略エ字状の架台14の上面に形成された凹部15に嵌め込む。この時、薄板Al条12の側が架台14側となるようにして嵌め込みを行う。
【0022】
次に、凹部15に摺動部13を嵌め込んだ架台14を、図2に示すように、カシメロール21a,21b間に供給する。この時、カシメロール21a,21bの上部案内板22a,22bが、摺動部13における薄板ステンレス鋼条11の摺動面(図2中では上面)を、また、カシメロール21a,21bの下部案内板23a,23bが、架台14の上部テーパ部14aを押さえ込み、摺動部13及び架台14が固定された状態でロール21a,21b間に供給される。
【0023】
摺動部13及び架台14をロール21a,21b間に供給することで、凹部15の側壁部16がロール面24a,24bによりカシメ加工を受けて、ロール21a,21bの中央部側に向かって曲げられ、摺動部13と架台14とがカシメ結合される。この時、架台14の側壁部16が塑性変形し、薄板Al条12の各溝部18に食い込むため、摺動部13と架台14(特に薄板Al条12)との間で高い結合強度が得られる。つまり、摺動部13と架台14との間で大きな滑り抵抗が生じることになる。
【0024】
本実施の形態に係る剛体トロリーバー17は、より好ましくは、薄板Al条12の長手方向における両端部近傍のみに各溝部18を形成することで、剛体トロリーバー17の長手方向両端部で、摺動部13と架台14とが十分に高い強度でカシメ結合されるため、輸送時の振動、曲げ加工時の曲げ応力、又は気温の変化等によって、摺動部13と架台14との間に軸方向の相対ズレが生じることはない。その結果、曲げ加工後又は剛体トロリーバー17同士を接続する時などに、それらの接続端面に再度の端面加工を施す必要がなくなる。また、各溝部18が形成されていない剛体トロリーバー17の長手方向中間部においては、摺動部13と架台14との間におけるカシメ結合の強度は比較的低い(緩やかである)ため、摺動部13と架台14との間において軸方向の相対ズレを生じさせることが可能である。このため、剛体トロリーバー17の製造時に反りが生じたり、剛体トロリーバー17の曲げ加工時にねじれが生じたりすることはない。
【0025】
実際に、SUS430(JIS G 4304)からなり、幅35.5mm、厚さ6mmの薄板ステンレス鋼条11と、A6063S−T1(JIS H 4100)からなり、幅39.1mm、厚さ9mmの薄板Al条12と、A6063S−T5(JIS H 4100)からなる架台14とで構成される剛体トロリーバー17に対してカシメ把持力(相対ズレ抗力)の測定試験を行った結果、長手方向両端部の1cm当たりの軸方向の相対ズレ抗力は900〜1200Nであり、同じ材料構成で構成した従来の剛体トロリーバー37(図3参照)と比較して、3倍以上の値が得られた。また、この剛体トロリーバー17に対してR75mの曲げ加工試験を施した結果、長手方向両端部において軸方向の相対ズレが生じることはなく、また、曲げ加工によりねじれが生じることもなかった。
【0026】
また、本実施の形態に係る剛体トロリーバー17は、薄板Al条12の、架台14の凹部15と接する部分に、少なくとも1本の溝部18を形成することで、摺動部13と架台14との間の軸方向の相対ズレを防止している。つまり、軸方向の相対ズレを防止するために行うことは、少なくとも1本、好ましくは3本の溝部18を形成するだけであるため、図3に示した従来の剛体トロリーバー37と比較して、製造に要する作業・時間が大幅に増えるということはなく、生産性の悪化及び製造コストの上昇を防ぐことができる。また、溝部18は、薄板Al条12に形成するものであるため、架台14の凹部15に溝部18を形成する場合と比較して、その形成作業が容易である。
【0027】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0028】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、摺動部と架台との間のカシメ結合の強度が十分に高くなり、かつ、製造時に反りや曲げ加工時にねじれが生じることがないAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーを得ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係るAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーの横断面図である。
【図2】剛体トロリーバーのカシメ加工工程における概略図である。
【図3】従来のAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーの横断面図である。
【符号の説明】
11 薄板ステンレス鋼条
12 薄板Al条
13 摺動部
14 架台
15 凹部
16 側壁部(凹部)
17 剛体トロリーバー(Al/ステンレス鋼複合剛体トロリーバー)
18 溝部

Claims (3)

  1. 耐摩耗性の高いステンレス鋼からなる薄板ステンレス鋼条と導電性の良好なアルミニウムからなる薄板Al条とを圧接・クラッドした摺動部を、導電性が良好なアルミニウムからなる架台の凹部に嵌め込むと共にその凹部の側壁部をカシメて、摺動部の薄板Al条と架台とをカシメ結合したAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーにおいて、上記薄板Al条の、上記架台の凹部と接する部分に、少なくとも1本の溝部を形成したことを特徴とするAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバー。
  2. 耐摩耗性の高いステンレス鋼からなる薄板ステンレス鋼条と導電性の良好なアルミニウムからなる薄板Al条とを圧接・クラッドした摺動部を、導電性が良好なアルミニウムからなる架台の凹部に嵌め込むと共にその凹部の側壁部をカシメて、摺動部の薄板Al条と架台とをカシメ結合したAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバーにおいて、上記薄板Al条の幅方向両端部に、それぞれ少なくとも1本の溝部を形成したことを特徴とするAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバー。
  3. 上記溝部を、薄板Al条の長さ方向両端部近傍に形成した請求項1又は2記載のAl/ステンレス鋼複合剛体トロリーバー。
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