JP3687329B2 - 高熱伝導性強靭鋳鉄の製造方法及び高熱伝導性強靭鋳鉄 - Google Patents

高熱伝導性強靭鋳鉄の製造方法及び高熱伝導性強靭鋳鉄 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高熱伝導性強靭鋳鉄の製造方法及び高熱伝導性強靭鋳鉄に係り、特に、シリンダーヘッドに用いられる高熱伝導性強靭鋳鉄の製造方法及び高熱伝導性強靭鋳鉄に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの高出力化に伴い、例えば、シリンダーヘッド下面の熱疲労寿命の向上が求められている。熱疲労強度を高める方法の一つとして、ねずみ鋳鉄のC含有量を多くし、熱伝導率を高める方法が挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した方法を用いて熱疲労強度を高めた場合、鋳鉄強度が大幅に低下するという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、上記課題を解決し、強度および熱伝導率に優れた高熱伝導性強靭鋳鉄の製造方法及び高熱伝導性強靭鋳鉄を提供することにある。
【0005】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、Cを3.6〜4.0wt%、Sを0.02〜0.2wt%含有した鋳鉄を溶解した溶湯中に、Mnを1.5〜1.8wt%、Crを0.2〜0.4wt%、Moを0〜0.3wt%、希土類元素またはミッシュメタルをS量の倍量添加し、基地全面をパーライト組織にするものである。
【0006】
請求項2の発明は、化学組成が、
C :3.6〜4.0wt%、
Mn:1.5〜1.8wt%、
Cr:0.2〜0.4wt%、
Mo:0〜0.3wt%、
S :0.02〜0.2wt%、
希土類元素またはミッシュメタル:S量の倍量、
残部:Feおよび不可避不純物であり、
かつ、基地全面がパーライト組織であるものである。
【0007】
請求項3の発明は、引張強さが200MPa以上、熱伝導率が少なくとも40W/m・K以上である請求項2記載の高熱伝導性強靭鋳鉄である。
【0008】
請求項4の発明は、上記基地組織中に、いも虫状の片状黒鉛が分布している請求項2記載の高熱伝導性強靭鋳鉄である。
【0009】
以上の構成によれば、Cを3.6〜4.0wt%、Sを0.02〜0.2wt%含有した鋳鉄を溶解した溶湯中に、Mnを1.5〜1.8wt%、Crを0.2〜0.4wt%、Moを0〜0.3wt%、希土類元素またはミッシュメタルをS量の倍量添加し、基地全面をパーライト組織にするため、強度および熱伝導率に優れた高熱伝導性強靭鋳鉄を得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
SAE(Society of Automotive Engineers ) paperから引用した一般的なねずみ鋳鉄材(サンプルa〜g)の諸元(C量(wt%)、熱伝導率(W/m・K)、引張強度(MPa)、炭素当量(CE;wt%))を表1に示す。
【0012】
【表1】
Figure 0003687329
【0013】
この表1を基に、炭素当量と熱伝導率及び引張強度との関係を図2に示す。ここで、図中の黒丸印は熱伝導率(W/m・K)を示し、黒四角印は引張強度(MPa)を示している。
【0014】
一般に、構造用材として用いられるねずみ鋳鉄の引張強度範囲は、200MPa以上、かつ、切削性に悪影響を及ぼさない400MPa以下である。図2に示すように、この引張強度範囲(200〜400MPa)におけるねずみ鋳鉄の炭素当量は3.62〜4.40wt%であり、また、熱伝導率は25〜44W/m・Kである。
【0015】
ここで、図2中の2種類の直線(右上がりの直線が熱伝導率を、右下がりの直線が引張強度を示す)は次式で表される。
【0016】
a=24.528x−63.931
(x:炭素当量(wt%)、a:熱伝導率、重相関係数:0.976) b=−258.033x+1334.696
(x:炭素当量(wt%)、b:引張強度、重相関係数:0.886) 本発明者らは高い熱疲労強度を有した高熱伝導性強靭鋳鉄(ねずみ鋳鉄)を得るために、特に、熱伝導率を重視した。すなわち、25〜44W/m・Kの熱伝導率範囲を少なくとも20%向上させる(30〜52.8W/m・K)と共に、下限値を大幅に向上させ、少なくとも40W/m・K以上の熱伝導率を有する高熱伝導性強靭鋳鉄の開発を目標とした。
【0017】
ここで、40W/m・K以上の熱伝導率を確保するためには炭素当量で約4.3〜4.7wt%(例えば、Si量を2.1wt%とすると、C量は3.6〜4.0wt%)必要になるが、この時の最低引張強度は約106.5MPaである。
【0018】
したがって、本発明者らは、少なくとも40W/m・K以上の熱伝導率を有し、かつ、200MPa以上の引張強度を有する高熱伝導性強靭鋳鉄の開発を目標とした。
【0019】
先ず、本発明者らは、先願の発明(特願平8−333058号、発明の名称:高強度鋳鉄の製造方法及び高強度鋳鉄)において良好な引張強度およびブリネル硬さが得られたMn添加量(1.5〜2.0wt%)を基にして、C量、Cr量、及びMo量をそれぞれ変えた時の機械的特性の変化について試験を行った。
【0020】
試験は、Mn量を1.8wt%およびREを0.2wt%に固定し、C量、Cr量、及びMo量が異なる9種類の試料を用いて行った。
【0021】
(試料1−1)
Cを3.3wt%、Mnを1.8wt%、Crを0wt%、Moを0wt%、REを0.2wt%含有した鋳鉄材を作製する。
【0022】
(試料1−2)
Cを3.3wt%、Mnを1.8wt%、Crを0.4wt%、Moを0.4wt%、REを0.2wt%含有した鋳鉄材を作製する。
【0023】
(試料1−3)
Cを3.3wt%、Mnを1.8wt%、Crを0.6wt%、Moを0.6wt%、REを0.2wt%含有した鋳鉄材を作製する。
【0024】
(試料1−4)
Cを3.6wt%、Mnを1.8wt%、Crを0wt%、Moを0.6wt%、REを0.2wt%含有した鋳鉄材を作製する。
【0025】
(試料1−5)
Cを3.6wt%、Mnを1.8wt%、Crを0.4wt%、Moを0wt%、REを0.2wt%含有した鋳鉄材を作製する。
【0026】
(試料1−6)
Cを3.6wt%、Mnを1.8wt%、Crを0.6wt%、Moを0.4wt%、REを0.2wt%含有した鋳鉄材を作製する。
【0027】
(試料1−7)
Cを3.9wt%、Mnを1.8wt%、Crを0wt%、Moを0.4wt%、REを0.2wt%含有した鋳鉄材を作製する。
【0028】
(試料1−8)
Cを3.9wt%、Mnを1.8wt%、Crを0.4wt%、Moを0.6wt%、REを0.2wt%含有した鋳鉄材を作製する。
【0029】
(試料1−9)
Cを3.9wt%、Mnを1.8wt%、Crを0.6wt%、Moを0wt%、REを0.2wt%含有した鋳鉄材を作製する。
【0030】
尚、試料1−1〜1−9の鋳鉄材は、表記していないが、それぞれSを0.1wt%ずつ含有している。
【0031】
試料1−1〜1−9の鋳鉄材の化学組成を表2に、機械的特性(引張強度(MPa)、ブリネル硬さ(HB )、熱伝導率(W/m・K;室温)、黒鉛面積率(%)、マトリックス)を表3に示す。
【0032】
【表2】
Figure 0003687329
【0033】
【表3】
Figure 0003687329
【0034】
表3に示すように、高引張強度(200MPa以上)、中硬度(約200〜230HB )、高熱伝導率(40W/m・K以上)、良好な黒鉛面積率(8%以上)を満たす試料は試料1−5のみであり(引張強度が252MPa、ブリネル硬さが226HB 、熱伝導率が48.0W/m・K、黒鉛面積率が11.2%)、また、その基地(マトリックス)はパーライト組織であった。
【0035】
表3を基にした黒鉛面積率及びC量と熱伝導率との関係を図3、4に示す。
【0036】
図3、4に示すように、黒鉛面積率が8%以上、C量が3.6wt%以上であれば40W/m・K以上の熱伝導率が得られる傾向にあることが伺える。
【0037】
表3を基にしたCr量およびMo量と基地組織との関係を図5に示す。
【0038】
図5に示すように、Crの添加量が0.4wt%以上だとセメンタイト(cementite)が析出してチル組織(冷硬組織;パーライトとセメンタイトの混合組織)になってしまう。また、Moの添加量が0.4wt%以上だとベイナイト(bainite)が析出してしまう。すなわち、基地全面をパーライト組織にするためのCrおよびMoの添加量は0〜0.4wt%である。しかし、Crの添加量が0wt%だと(試料1−1、1−7)、良好な機械的特性が得られない。また、CrおよびMoを同時に0.4wt%ずつ添加すると(試料1−2)、基地がチル組織になってしまう。このため、Crの添加量は0.2〜0.4wt%、Moの添加量は0〜0.3wt%としなければならないことが伺える。 したがって、本発明の高熱伝導性強靭鋳鉄の化学組成は、
C :3.6〜4.0wt%、
Mn:1.5〜1.8wt%、
Cr:0.2〜0.4wt%、
Mo:0〜0.3wt%、
S :0.02〜0.2wt%、
RE:S量の倍量、
残部:Feおよび不可避不純物であり、
かつ、基地全面がパーライト組織になったものである。
【0039】
各金属または合金元素の数値範囲を限定した理由を以下に説明する。
【0040】
C量とブリネル硬さとの関係を図6に示す。
【0041】
Cの含有量を3.6〜4.0wt%と限定したのは、含有量が3.6wt%よりも少ないと、図6に示すように、ブリネル硬さが適正範囲(約200〜230HB )より大きくなると共に、片状黒鉛が長く成長しないことにより黒鉛の面積率が低くなって高い熱伝導率が得られず、また、含有量が4.0wt%よりも多いと鋳造体に微小な鋳巣が発生し引張強度が大幅に低下するためである。
【0042】
Mn量とブリネル硬さとの関係を図7に示す。
【0043】
Mnの添加量を1.5〜1.8wt%と限定したのは、添加量が1.5wt%よりも少ないと、図7に示すように、ブリネル硬さが適正範囲(約200〜230HB )より小さくなってしまい引張強度向上の効果が低下し、また、添加量が1.8wt%よりも多いと基地(マトリックス)にチル組織が析出して材料に脆化が生じることによって引張強度が低下するためである。
【0044】
Cr量とブリネル硬さとの関係を図8に示す。
【0045】
Crの添加量を0.2〜0.4wt%と限定したのは、添加量が0.2wt%よりも少ないと、図8に示すように、ブリネル硬さが適正範囲(約200〜230HB )より小さくなってしまい引張強度向上の効果が低下し、また、添加量が0.4wt%よりも多いと基地にチル組織が析出して材料に脆化が生じることによって引張強度が低下するためである。
【0046】
Moの添加量を0〜0.3wt%と限定したのは、添加量が0.4wt%よりも多いと基地にベイナイト組織が析出して引張強度が低下する。ここで、図5に示したように、基地全面がパーライト組織であるためには、Crの添加量が0.2〜0.4wt%、Moの添加量が0.4wt%以下でなくてはならない(上述の下限値参照)が、CrおよびMoを共に0.4wt%添加するとチル組織が析出する。このため、CrおよびMoのどちらかの添加量を0.3wt%としなければならないが、以下に示す各添加金属元素がブリネル硬さに及ぼす影響を表す式から、CrよりMoの方がブリネル硬さの上昇に寄与する係数が大きいことが伺え、よって、Moの添加量の上限を0.3wt%とする。
【0047】
ブリネル硬さ(HB )=498.9 −91.1C+22.3Mn+27.6Cr+87.9Mo
(重相関係数:0.959)
Sの含有量を0.02〜0.2wt%と限定したのは、含有量が0.02wt%よりも少ないとMn及び希土類元素またはミッシュメタルの添加の効果が少なくなり、また、含有量が0.2wt%よりも多いと材料の脆化を招くためである。
【0048】
REの添加量をS量の倍量としたのは、RE/Sが2の時、引張強度が良好となるためである。
【0049】
本発明によれば、C、S、Mn、Cr、Mo、及びREの含有量についてそれぞれ規定しているため、基地全面がパーライト組織になり、少なくとも40W/m・K以上の熱伝導率を有し、かつ、200MPa以上の引張強度を有する高熱伝導性強靭鋳鉄を得ることができる。
【0050】
次に、本発明の高熱伝導性強靭鋳鉄の製造方法を説明する。
【0051】
先ず、Cを3.6〜4.0wt%、Sを0.02〜0.2wt%含有した原料鋳鉄を、例えば、高周波電気炉で溶解して鋳鉄溶湯とする。この鋳鉄溶湯中に、Mnを1.5〜1.8wt%、Crを0.2〜0.4wt%、Moを0〜0.3wt%の範囲内で添加する。
【0052】
次に、その鋳鉄溶湯中に、希土類元素またはミッシュメタル(以下、REと呼ぶ)をS量の倍量添加する。
【0053】
最後に、その鋳鉄溶湯を鋳型に流し込むと共に冷却し、基地全面がパーライト組織である高熱伝導性鋳鉄を作製する。
【0054】
原料鋳鉄としては、通常の鋳鉄よりもCおよびS含有量の多い鋳鉄であれば特に限定するものではなく、高熱伝導性強靭鋳鉄の特性に悪影響を及ぼさない程度の量の不可避不純物を含んでいてもよい。
【0055】
原料鋳鉄の溶解方法は、高周波電気炉に限定するものではなく、用途・目的に応じて、適宜、変更してもよい。
【0056】
【実施例】
(実施例1)
Cを3.6wt%、Mnを1.5wt%、Crを0.2wt%、Moを0.2wt%、REを0.2wt%含有した高熱伝導性強靭鋳鉄材を作製する。
【0057】
(実施例2)
Cを3.6wt%、Mnを1.5wt%、Crを0.4wt%、Moを0.2wt%、REを0.2wt%含有した高熱伝導性強靭鋳鉄材を作製する。
【0058】
(実施例3)
Cを3.8wt%、Mnを1.5wt%、Crを0.2wt%、Moを0.2wt%、REを0.2wt%含有した高熱伝導性強靭鋳鉄材を作製する。
【0059】
(実施例4)
Cを3.8wt%、Mnを1.5wt%、Crを0.4wt%、Moを0.2wt%、REを0.2wt%含有した高熱伝導性強靭鋳鉄材を作製する。
【0060】
(比較例1)
Cを3.8wt%、Mnを1.8wt%、REを0.2wt%含有したねずみ鋳鉄材を作製する(CrおよびMoの含有は無し)。
【0061】
(比較例2)
Cを3.6wt%、Mnを1.5wt%、REを0.2wt%含有したねずみ鋳鉄材を作製する(CrおよびMoの含有は無し)。
【0062】
(比較例3)
Cを3.8wt%、Mnを1.5wt%、REを0.2wt%含有したねずみ鋳鉄材を作製する(CrおよびMoの含有は無し)。
【0063】
尚、実施例1〜4および比較例1〜3の各鋳鉄材は、表記していないが、それぞれSを0.1wt%ずつ含有していることは言うまでもない。
【0064】
実施例1〜4の高熱伝導性強靭鋳鉄材および比較例1〜3のねずみ鋳鉄材の化学組成を表4に、機械的特性(引張強度(MPa)、ブリネル硬さ(HB )、黒鉛面積率(%)、黒鉛平均粒径(μm)、マトリックス)を表5に、熱伝導率(W/m・K;室温)を表6に示す。
【0065】
【表4】
Figure 0003687329
【0066】
【表5】
Figure 0003687329
【0067】
【表6】
Figure 0003687329
【0068】
表5に示すように、実施例1〜4の高熱伝導性強靭鋳鉄材のマトリックスは全面がパーライト組織であり、チル組織およびベイナイト組織の析出が全くなく、引張強度はそれぞれ264MPa、286MPa、212MPa、245MPaと全て200MPa以上であった。また、ブリネル硬さはそれぞれ229HB 、226HB 、199HB 、220HB であり、切削性に大きな影響を及ぼす程の硬度ではない。
【0069】
黒鉛の面積率はそれぞれ8.5%、12.9%、13.3%、10.6%、黒鉛平均長さはそれぞれ182μm、217μm、210μm、250μmであり、片状黒鉛が長く、かつ、十分に成長していることが伺える。
【0070】
また、表6に示すように、実施例1〜4の高熱伝導性強靭鋳鉄材の熱伝導率はそれぞれ48.1%、48.2%、53.0%、52.2%であり、良好な熱伝導率が得られていることが伺える。
【0071】
これに対して、比較例1のねずみ鋳鉄材のマトリックスは全面がパーライト組織、ブリネル硬さは192HB 、黒鉛の面積率は9.7%、黒鉛平均長さは274μmであり、切削性に大きな影響がない硬度であると共に、片状黒鉛が長く、かつ、十分に成長していた。しかし、引張強度が191MPaと200MPaより小さく、強度が十分ではない。
【0072】
比較例2のねずみ鋳鉄材のマトリックスは全面がパーライト組織、引張強度は237MPa、ブリネル硬さは209HB であり、十分な強度および切削性に大きな影響がない硬度であった。しかし、黒鉛の面積率が7.1%、黒鉛平均長さは113μmであり、片状黒鉛が短く、かつ、成長も十分ではないため、熱伝導率が著しく低くなることが予想される。
【0073】
比較例3のねずみ鋳鉄材のマトリックスは全面がパーライト組織、ブリネル硬さは183HB 、黒鉛の面積率は11.4%、黒鉛平均長さは277μmであり、切削性に大きな影響がない硬度であると共に、片状黒鉛が長く、かつ、十分に成長していた。しかし、引張強度が178MPaと200MPaより小さく、強度が十分ではない。
【0074】
実施例1〜4の高熱伝導性強靭鋳鉄材および比較例1〜3のねずみ鋳鉄材におけるブリネル硬さと引張強度との関係を図9に示す。ここで、図中の黒四角印はC量が3.6wt%を示し、黒丸印はC量が3.8wt%を示している。
【0075】
図9に示すように、3.6wt%および3.8wt%の各C量において、硬さが高い程、引張強度は高くなっており、200MPa以上の引張強度を確保するためには、切削性に大きな影響がない硬度(約200〜230HB )が必要であることが伺える。
【0076】
本発明(実施例2)の高熱伝導性強靭鋳鉄の組織観察写真を図1に示す。ここで、図1(a)は未腐食の高熱伝導性強靭鋳鉄の表面を、図1(b)は5%ナイタール液で腐食した各鋳鉄材の表面をそれぞれ顕微鏡で100倍に拡大したものを示している。
【0077】
図1(a)に示すように、基地には長く成長した“いも虫”状の片状黒鉛が析出しており、また、図1(b)に示すように、基地組織は全面パーライトであることが確認された。
【0078】
実施例2の高熱伝導性強靭鋳鉄およびFC230材の組織観察写真を図10に示す。ここで、図10(a)は5%ピクリン酸溶液で腐食した高熱伝導性強靭鋳鉄の表面を、図10(b)は5%ピクリン酸溶液で腐食したFC230材の表面をそれぞれ顕微鏡で2,800倍に拡大したものを示している。
【0079】
図10(a)、(b)に示すように、ビッカース硬さが341HV (試験条件;0.49N)である実施例2の高熱伝導性強靭鋳鉄およびビッカース硬さが320HV (試験条件;0.49N)であるFC230材(ねずみ鋳鉄品)は共にパーライト組織を呈しているが、パーライトのラメラー間隔は実施例2の高熱伝導性強靭鋳鉄の方が通常のFC230材よりも狭くなっている。また、実施例2の高熱伝導性強靭鋳鉄においては、良好な形状(いも虫状)の片状黒鉛が成長している様子が伺える。このことから、実施例2(本発明)の高熱伝導性強靭鋳鉄の方が通常のFC230材よりも高強度であることが伺える。
【0080】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、C、S、Mn、Cr、Mo、及びREの含有量についてそれぞれ規定することで、基地全面がパーライト組織になり、少なくとも40W/m・K以上の熱伝導率を有し、かつ、200MPa以上の引張強度を有する高熱伝導性強靭鋳鉄を得ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高熱伝導性強靭鋳鉄の組織観察写真である。
【図2】炭素当量と熱伝導率及び引張強度との関係を示す図である。
【図3】黒鉛面積率と熱伝導率との関係を示す図である。
【図4】C量と熱伝導率との関係を示す図である。
【図5】Cr量およびMo量と基地組織との関係を示す図である。
【図6】C量とブリネル硬さとの関係を示す図である。
【図7】Mn量とブリネル硬さとの関係を示す図である。
【図8】Cr量とブリネル硬さとの関係を示す図である。
【図9】実施例1〜4の高熱伝導性強靭鋳鉄材および比較例1〜3のねずみ鋳鉄材におけるブリネル硬さと引張強度との関係を示す図である。
【図10】実施例2の高熱伝導性強靭鋳鉄およびFC230材の組織観察写真である。

Claims (4)

  1. Cを3.6〜4.0wt%、Sを0.02〜0.2wt%含有した鋳鉄を溶解した溶湯中に、Mnを1.5〜1.8wt%、Crを0.2〜0.4wt%、Moを0〜0.3wt%、希土類元素またはミッシュメタルをS量の倍量添加し、基地全面をパーライト組織にすることを特徴とする高熱伝導性強靭鋳鉄の製造方法。
  2. 化学組成が、
    C :3.6〜4.0wt%、
    Mn:1.5〜1.8wt%、
    Cr:0.2〜0.4wt%、
    Mo:0〜0.3wt%、
    S :0.02〜0.2wt%、
    希土類元素またはミッシュメタル:S量の倍量、
    残部:Feおよび不可避不純物であり、
    かつ、基地全面がパーライト組織であることを特徴とする高熱伝導性強靭鋳鉄。
  3. 引張強さが200MPa以上、熱伝導率が少なくとも40W/m・K以上である請求項2記載の高熱伝導性強靭鋳鉄。
  4. 上記基地組織中に、いも虫状の片状黒鉛が分布している請求項2記載の高熱伝導性強靭鋳鉄。
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