JP3686046B2 - リーク探知方法及びリーク探知装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大型真空容器内に設置した水冷機器、例えば核融合炉等の水リーク探知方法及び水リーク探知装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1に核融合炉の水冷式真空容器の例を示す。この場合、真空容器を2重壁にしてその間に冷却水を流す構造となっている。また、真空容器は20分割してセクタ構造となっている。
【0003】
図2はこの真空容器セクタ1を抜き出した図であり、水に探索物質を溶解させ、その探索物質を検出し、その検出時間遅れから極微量の水リークの箇所を探知する水冷式真空機器のリーク探知装置の従来技術による例を示す。核融合炉等のプラズマ保持用真空容器内水冷配管は複雑な構造をしており、図2のように配管途中で流路1(4)や流路2(5)と枝分れしているような構造の場合には、リーク探知作業の際に配管領域を限定するため、流路の開閉操作のための弁を挿入する必要があった。
【0004】
しかしながら、核融合炉のプラズマ保持用真空容器は超伝導コイル(10)に取り囲まれて、かつ、クライオスタット(11)と呼ばれる断熱用真空容器に入れられており、この弁の開閉駆動を真空中で行う必要があるため、構造が複雑となって信頼性が低くなり、この弁を挿入することが困難だった。また、流路内の弁シール材等を定期的に交換する必要があるが、高放射線場で超伝導コイルの内側にある水冷配管の保守作業は遠隔操作となるためコストがかさみ、実際上はこの弁を取り付けても保守が困難で挿入不可能だった。
【0005】
このため、図2の従来技術における探索物質注入ユニット(7)から冷却水に探索物質を溶解させ、水リーク箇所(2)から水と一緒に真空中に流入する探索物質を質量分析計(14)で検出して、その検出時間遅れから極微量の水リークの箇所を探知する水冷式真空容器のリーク探知で、配管途中で枝分れしているような構造の水冷配管をリーク探知する場合には、該探索物質が枝分れした流路1(4)と流路2(5)の配管に同時に流れ込み、該探索物質を検出してもどちらの配管からリークしているかを判別することができなかった。
【0006】
本発明は、水に探索物質を溶解させ、その探索物質を検出してその検出時間遅れから極微量の水リークの箇所を探知する水冷式真空容器のリーク探知において、枝分れした水冷配管のリーク探知を確実、かつ低コストで迅速に行うことを目的になされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するべく、リーク探知用流路開閉弁として従来の物理的な遮蔽板の開閉操作に代わり、水を配管の外側から冷却または加熱して氷の生成及び融解により、弁の開閉と同等の機能を持たせる。
【0008】
そのために、1気圧での沸点が摂氏零度(273.15K)以下となるガス、例えば、ヘリウムー4(沸点4.2K)、窒素(沸点77.3K)等を使い、水冷配管の外部冷却時には速やかに水が凍る程度の温度にこれらのガスを冷却して冷媒として使い、また、外部加熱時には速やかに氷が解ける程度の温度に、これらのガスを加熱して加熱媒体とする。
【0009】
別の当該解決手段としては、P型ーN型半導体の接合対を有する電子冷却素子を水冷配管の外部冷却/加熱部分に貼付け、この素子に流す電流の方向を変えて、いわゆるペルチェ効果により冷却または加熱作用を行わせる。
【0010】
【実施例】
(実施例1)
以下、図3をもとに本発明の一実施例を説明する。核融合炉の通常運転時には、プラズマ保持用真空容器内の水冷配管の冷却水入口温度100℃、圧力10気圧に設定した。そして、リーク探知時には、入口温度100℃を保ちながら入口圧力を2気圧に下げた。
【0011】
流路1(4)と流路2(5)の配管枝分れ部直後にそれぞれ、冷却/加熱用配管1(16)及び冷却/加熱用配管2(17)を形成しておく。この配管に、冷却時には80Kのヘリウムを、加熱時には700Kのヘリウムを流せる構造にしておく。しかる後、流路1(4)の水リーク箇所(2)に突然、水リークが発生した場合、質量分析計(14)で水(H20−質量数18)の残留ガス成分が増え、かつ、圧力計(18)で真空容器内の圧力が上昇した。
【0012】
しかる後、冷却/加熱用配管2(17)に80Kのヘリウムを流したところ、氷が形成されて流路2(5)の冷却水の流れが完全に止まった。そこで探索物質にクリプトン(Kr)を使い、探索物質注入ユニット(7)からKrを冷却水に溶解させたところ、図4の実施データの例に示すように、10-2 Pa・m3/s台の水リーク量に対し、質量分析計(14)において約280秒後にKr(質量数84)の増加を検出した。
【0013】
探索物質注入ユニット(7)から流路1(4)にかけての冷却水の平均流速から逆算すると、水リーク箇所(2)は探索物質注入ユニット(7)の位置から5m下流に位置することになり、実際の水リーク位置と5%の誤差で一致した。
【0014】
一方、冷却/加熱用配管2(17)に700Kのヘリウムを流して氷を溶かし、流路2(5)に冷却水を流すと同時に、冷却/加熱用配管1(16)に80Kのヘリウムを流して流路1(4)の冷却水の流れを完全に止め、探索物質注入ユニット(7)からKrを溶解させたが、Krの増加は検出されなかった。これにより、流路1(4)にのみ、水リークの箇所が存在することが容易にわかる。
【0015】
即ち、図4の上段のグラフは、水リークが発生した際の真空容器内の圧力を圧力計8で測定した場合を示すものであり、図4の中段のグラフは、質量分析計14を使用して測定された、水リークが発生した場合の真空容器内のリーク水の水分子の他のリーク成分に対する相対量の増加を示すものであり、図4の下段のグラフは、質量分析計14を使用して測定された、水リークが発生した場合の注入された探索物質の他の成分に対する相対量の増加を示すものである。
【0016】
さらに、図5は真空容器セクタが20分割されている場合の、本発明による実施例を示したものである。冷却水が冷却水入口ヘッダ3から各真空容器セクタ1−20に導入され、冷却水出口ヘッダ8から排出される。セクタ内の冷却水流路に水リークが発生した際には、探索物質注入ユニット7から探索物質を冷却水に注入して溶解する。そのリーク箇所を検出するために、冷却水流路の冷却水入口の両側に設けられた冷却/加熱用配管16、17の一方に冷媒を流し、その流路の一方を冷却して氷の生成により閉塞し、その後、加熱媒体を流して生成された氷を融解する。次に、他方の冷却/加熱用配管においても同じ操作を行って氷を生成し、それを融解する。かかる操作により、注入された探索物質の検出を質量分析計を使用して注入時からその検出時との遅延時間に基づいて冷却水のリーク箇所が探知される。
【0017】
(実施例2)
本発明の他の実施例を説明する。探索物質にメタノール(CH3OH)を使用した。図4と同様に10-2 Pa・m3/s台の水リーク量に対し、水に対してモル比で1%のメタノールを溶解させたところ、質量分析計でメタノールに特有の開裂パターンである、質量数32/質量数31=67/100の信号強度比が得られ、水リーク探知が可能であった。
【0018】
なお、本発明においては、冷却水溶解用探索物質として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類が使用され、その他にアセトン、ベンゼン等も使用される。アルコールは一般的に水への溶解度が大きく、特にメタノールやエタノール等は溶解度が無限大である。溶解度が大きいと小さな水リーク量でも検出感度が高くとれる可能性がある。
【0019】
【発明の効果】
本発明により、枝分れした水冷配管でもリーク探知を確実、かつ低コストで迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 核融合炉の水冷式真空容器の例を示す図である。
【図2】 従来の核融合炉の水冷式真空容器のリーク探索の例を示す図である。
【図3】 本発明による核融合炉の水冷式真空容器のリーク探索の一実施例を示す図である。
【図4】 本発明による核融合炉の水冷式真空容器のリーク探索の実施データの例を示す図である。
【図5】 本発明による核融合炉の水冷式真空容器のリーク探索の別な実施例を示す図である。
【符号の説明】
1:真空容器セクタ
2:水リーク箇所
3:冷却水入口ヘッダ
4又は5:流路
7:探索物質注入ユニット
8:冷却水出口ヘッダ
12:排気ダクト
14:質量分析計
18:圧力計
Claims (6)
- 核融合炉のプラズマ保持用真空容器内の水流路配管における冷却水入口の枝分かれ部直後の各水流路配管にそれぞれ冷却/加熱用配管を設け、前記冷却/加熱用配管の冷却時には管内の冷却水を凍結させてその配管を閉塞させ、その加熱時には管内の冷却水の凍結を融解してその配管を開通させ、前記真空容器内のプラズマ領域から真空ポンプに連通する排気ダクトに質量分析計及び圧力計を設けることにより、水流路配管の水リーク発生箇所から漏れる水分を含んだ排気ガスを質量分析計及び圧力計に導入して水リークの発生を検知した際に、冷却水に探索物質を溶解させ、その探索物質を質量分析計で検出し、その探索物質の注入時からの検出時間遅れから極微量の水リーク箇所を探知し、且つ前記冷却/加熱用配管の凍結閉塞及び凍結融解を交互に行って前記水流路配管の各側における水リークを探知をすることを特徴とする、核融合炉のプラズマ保持用真空容器内の水流路配管における冷却水リークの探知方法。
- 前記冷却/加熱用配管の冷却及び加熱を1気圧での沸点が273.15°K以下となるガスを用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記冷却/加熱用配管の冷却及び加熱に電子冷却素子を用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 冷却水溶解用探索物質としてKrガスを使用することを特徴とする請求項1記載の方法。
- 冷却水溶解用探索物質としてアルコールを使用することを特徴とする請求項4記載の方法。
- 核融合炉のプラズマ保持用真空容器内の水流路配管にける冷却水入口の枝分かれ部直後の各水流路配管にそれぞれ冷却/加熱用配管を設け、前記真空容器内のプラズマ領域から真空ポンプに連通する排気ダクトを設け、そのダクトに質量分析計及び圧力計を設けた核融合炉の冷却水リーク探知装置において、
前記冷却/加熱用配管の冷却時には管内の冷却水を凍結させてその配管を閉塞させ、その加熱時には管内の冷却水の凍結を融解してその配管を開通させ、水流路配管の水リーク発生箇所から漏れる水分を含んだ排気ガスを質量分析計及び圧力計に導入して水リークの発生を検知した際に、水に探索物質を溶解させ、その探索物質を質量分析計で検出し、その探索物質の注入時から検出時間遅れから極微量の水リーク箇所を探知し、且つ前記冷却/加熱用配管の凍結閉塞及び凍結融解を交互に行って前記水流路配管の各側における水リークを探知をすることを特徴とする、前記装置。
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