JP3680080B2 - 反応装置およびその使用方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は固形の基質に対する生物反応または生化学反応等の反応を行わせるための反応装置およびその使用方法に関し、特に食品、生物試料、薬品等の基質の調理過程、消化過程等の解析を行うための溶出試験装置に適した反応装置およびそれを用いた反応方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
固形の基質に対する生物反応あるいは生化学反応により液体成分を溶出させる溶出試験装置には、基本構造として静置型、振盪型あるいはしごき型のものなどが用いられている。
静置型としては三角コルベン等に攪拌子を入れて、水平方向の回転運動により酵素あるいは微生物などを含む緩衝液中で基質を攪拌し、反応速度を高める反応系が一般的である。この系は低廉な経費で反応を行えるが、通常は攪拌子をマグネティックスターラーで高速回転させてトルクを高めるため、基質が急激に磨砕されてしまい、農産物の調理、加工あるいは消化過程における緩慢な反応の動力学的解析ができない。また基質の比重が溶媒と異なる場合には、浮遊あるいは沈澱し、均一な反応が困難になる。
【0003】
振盪型およびその変形の回転型の溶出試験装置は、内部で反応を穏やかに進行させる場合に適している。しかし、両者とも基質の比重が溶媒と異なる場合には基質が浮遊あるいは沈降してしまう。
密閉したラミネート袋の上をローラーで回転する方式も提案されているが、基質全体を均一に磨砕して反応させることは困難である。
また従来は酵素などと反応して生成する分子量の小さな代謝産物を透析する機能を有する装置は、いまだ開発されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような問題点を解決するため、生物または生化学反応等の反応において、基質が固体で比重が溶質と異なる場合でも、基質を均一に磨砕して反応液中に徐々に分散、混合し、均一に反応させることができる反応装置および反応方法を提案することである。
【0005】
本発明の他の目的は、上記のほかさらに低分子の化合物を透析して系外に排出でき、これにより食品などの調理あるいは消化過程などの変化の動態を連続的に解析して溶出試験を行うことが可能な反応装置および反応方法を提案することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の反応装置および反応方法である。
(1)生物または化学物質の存在下に基質に対する生物および/または生化学反応を行う筒状の反応槽と、
反応槽の中間部に形成された反応部と、
反応槽の両端部に設けられて基質を反応部側に移動させるように回転するスクリューと、
反応部に設けられた攪拌器と
を備えていることを特徴とする反応装置。
(2)反応液中の低分子量画分を分画する透析器をさらに備えていることを特徴とする上記(1)記載の反応装置。
(3)反応槽の一端部に反応液を導入する反応液導入路と、
反応槽の他端部から反応液を取出す反応液取出路と、
反応部に基質を供給する基質供給路と、
を備えていることを特徴とする上記(1)または(2)記載の反応装置。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の反応装置を用い、
反応槽両端部のスクリューを回転させて基質を反応部に閉じ込め、
攪拌器により反応部の基質を攪拌して磨砕、混合を行いながら生物および/または生化学反応を行う
ことを特徴とする反応方法。
【0007】
本発明の反応装置において、反応槽、スクリュー、攪拌器などの反応液に接触する部品は、テトラフルオルエチレン、アクリル樹脂、ポリエステルガラス等、生物反応毒または酵素反応の触媒毒にならないように生物および化学的に不活性で毒性を持たない素材で構成されているのが好ましい。
【0008】
反応槽は筒状のものが用いられ、通常は上下方向に配置して用いられるが、配置の方向は必ずしもこれに限らない。反応槽の両端部にはスクリューが設けられ、その中間部に反応部が形成されている。この反応部は固形の基質を導入し、生物または酵素等の化学物質の存在下に生物および/または生化学反応を行うように構成される。
【0009】
スクリューは反応槽の両端部に設けられ、両端部の基質を反応部側に移行させるように回転させられるが、両方のスクリューは1個の軸に形成されたものでもよく、独立したものでもよい。1個の軸に形成する場合は、スクリューのねじ方向を逆にし、同一方向に回転させられる。独立に設ける場合は、同一ねじ方向のスクリューを逆方向に回転させてもよく、また逆ねじ方向のスクリューを同一方向に回転させてもよい。これらのスクリューは固形の基質の沈降、浮上あるいは反応液に同伴する流出を阻止して、基質を反応部に閉じ込めるように設けられる。このようなスクリューは、フィンが反応槽の内壁に近接して回転するものが好ましい。
【0010】
反応部に設ける攪拌器は、攪拌により固形の基質を磨砕して分散、混合し、反応を促進するように設けられる。攪拌器としてはスクリュー型、羽根車型、スプライン型、ビータ型など任意の形式、構造のものが使用できるが、スクリュー型のものは攪拌と移動を同時に行えるので好ましい。スクリュー型の場合は、両端部に設けるスクリューよりもフィンが短く、内壁との間隙に基質の収容空間を形成するものを選ぶ。他の形式のものも、反応部内の基質が擦れ合って磨砕、分散、混合が行われるように配置する。
【0011】
本発明では、反応液中の低分子量画分を分画する透析器を反応装置に設けることにより、低分子量成分の解析が可能になる。分画に用いる透析膜は分画分子量に応じて任意のポアサイズのものを選択することができる。透析装置は反応槽とは別に設けることもできるが、反応槽の側壁に開口部を設けて組込むことにより、装置を簡単な構成にすることができる。
【0012】
上記の反応装置では、反応槽の一端部例えば下端部に反応液導入路を連絡し、他端部例えば上端部に反応液取出路を連絡することにより、反応槽に反応液を供給して反応を行うことができる。この場合両流路を連絡することにより循環系路を形成することができる。
また反応部に基質を供給する基質供給路を設けることができるが、この基質供給路は反応部に直接連絡してもよく、また両端部に連絡し、スクリューを介して反応部に基質を供給してもよい。
【0013】
【作用】
上記の反応装置による反応方法は、反応槽の反応部に固形の基質を導入し、生物または酵素等の化学物質の存在下に生物および/または生化学反応を行う。このとき反応槽の両端部のスクリューを回転させて基質を反応部に閉じ込め、攪拌器により反応部の基質を攪拌することにより基質を擦り合わせて磨砕、混合を行いながら反応を行う。これにより固形の基質は反応部において磨砕を受けながら反応が行われ、比重が溶質と異なる場合でも反応部に閉じ込められた状態で均一に反応が行われる。
【0014】
反応液導入路から反応液を導入し、反応液取出路から反応液を取出す場合は、基質と反応液を均一に接触させて反応を行うことができる。この場合取出す反応液中の固形の基質はスクリューにより反応部に戻されるため、基質の篩別を行った状態で反応液を取出すことができる。この反応液は反応液導入路に循環することにより循環流路を形成することができる。この場合循環路より反応液を分取することにより、反応生成物を採取することができる。また酵素等の化学物質および緩衝液、培地等の反応液は循環路に供給することもできる。
【0015】
透析器を設ける場合は、ここで低分子画分を分画することにより、酵素などの化学物質と反応して生成する代謝産物その他の低分子量の物質を採取して解析を行うことができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を図面の実施例に基づいて説明する。実施例は溶出試験装置に適用した例を示す。
図1は実施例の反応装置を示す垂直断面図である。
図1において、1は反応槽で、縦長の円筒状に形成され、恒温水槽2内に上下方向に配置されている。反応槽1内の下部および上部両端部にはスクリュー3、4が設けられており、その中間部には反応部5が形成され、別のスクリューからなる攪拌器6が設けられている。
【0017】
スクリュー3、4と攪拌器6は反応槽1内の中心部を通して設けられる回転軸9に一体的に設けられている。スクリュー3、4は反応槽1の内壁に近接する大径のラセン状のフィンからなり、それぞれ逆ねじ方向に形成されている。攪拌器6はスクリュー3、4よりは小径のフィンからなり、下端側のスクリュー3と同ねじ方向に形成されており、反応槽1の内壁との間に基質7を収容する基質収容空間8が形成されている。
【0018】
反応槽1の下端部には反応液導入路11、上端部のスクリュー4の上端部付近には反応液取出路12が設けられ、ポンプ13、三方弁14を有する循環路15により連絡している。反応槽1の中間部の反応部5の下端部付近には基質導入路16が設けられて、フィーダー17を有する基質供給路18が連絡している。
【0019】
反応槽1の下部のスクリュー3が設けられている部分の側壁には通液孔20が形成され、これを覆うように透析器21が設けられている。透析器21は通液孔20に対向するように貼付けられたチューブ状の透析膜22と、この透析膜を支持する多孔性の支持材23と、この支持材23を収容するケーシング24と、シール用のO−リング25、26と、これらを押えるキャップ27、28からなる。ケーシング24には透析画分取出路29が設けられ、ポンプ31を有する透析画分取出管32がフラクションコレクター33に連絡している。
【0020】
反応槽1の頂部には蓋35が設けられ、回転軸9は蓋35を貫通して上方に突出し、カップリング36を介してパルスモータ37に連結している。38は反応槽1を固定するためのクランプである。
循環路15には弁41を有する分取路42が分岐し、さらに分取路42から弁43を有する採取路44が分岐して試料採取器45に連絡している。また循環路15にはポンプ46を有する反応液供給路47が連絡している。
51は三方弁14に連絡する排出路、52は恒温水槽2に設けられた加熱器である。56は制御装置であって、入出力装置55を有し、ポンプ13、31、46、フィーダー17、パルスモータ37、加熱器52等を制御するように構成されている。
【0021】
ポンプ13、31としてはペリスタポンプ、ポンプ46としてはシリンジポンプ、フィーダー17としてはスクリューフィーダーなどが用いられる。また三方弁14、弁41、43としては電磁切換、開閉式のものが用いられる。
【0022】
上記の反応装置による反応方法は次のようにして行われる。まず制御装置55のプログラムに従って、加熱器52で恒温水槽2内を加熱して所定温度に維持し、フィーダー17により基質供給路18から反応槽1の反応部5に基質7を供給し、パルスモータ37によりスクリュー3、4および攪拌器6を回転させ、ポンプ13により反応液を循環させ、ポンプ46により反応液供給路47から酵素、緩衝液等の反応液、微生物のイノキュラム、培養液などを供給して生物および/または生化学反応が行われる。
【0023】
スクリュー3の回転により沈降しようとする基質は上昇させられ、またスクリュー4の回転により浮上しようとする基質は下降させられ、基質7は反応部5に閉じ込められる。そして攪拌器6の回転により基質7は徐々に上昇しながら、擦れ合って緩慢に磨砕され、分散混合して徐々に反応が行われる。基質としては蒸煮した米粒等の食品、生物試料、薬品等任意のものが使用できる。
【0024】
反応液は反応槽1を上昇し、反応液取出路12から取出され、ポンプ13により循環路15を通り三方弁14、反応液導入路11から反応槽1に循環する。反応槽1を上昇する際、スクリュー4により固形の基質が下降させられるため、ここで篩別が行われる。このように基質は反応部5に閉じ込められて徐々に磨砕、分散、混合して反応が行われるため、均一な反応が行われる。
【0025】
反応液取出路12から取出された反応液の一部は、弁41を開くことにより分取路42から分取される。反応が製造を目的とする場合は、ここから製品が得られる。また分析目的のためには、弁43を開くことにより、採取路44から試料採取器45に試料を採取し、反応液全体の分析が行われる。
【0026】
反応により生成する低分子量の生成物、例えば分子量数千以下の糖類、ペプチド、アミノ酸等は、ポンプ31で吸引することにより透析器において分画されて取出される。この場合反応槽1の通液孔20から透析膜22を透過した低分子量物質は、支持材23を通ってケーシング24内に集められ、透析画分取出路29から取出され透析画分取出管32からフラクションコレクター33に集められ、分析が行われる。
【0027】
上記の反応は、制御プログラムによって従って行うことができ、所定の条件による基質の磨砕、反応等を長期にわたって行うことができる。
攪拌をコンピューターで制御することにより、穏やかな攪拌、磨砕が可能になり、食物の調理または消化過程等の解析も行うことができる。
上記の反応では、反応槽1内の上下に対向するスクリュー3、4により、浮遊あるいは沈降性の固形の基質の場合でも、これを反応液中に分散することができる。またこれらと一体化した攪拌器6により基質が軟質の固体の場合でも穏やかな物理的磨砕ができ、反応の経時変化を解析できる。
【0028】
溶出試験器として透析器21を備えることにより、基質の消化生理の解析において分子量の大きなデンプン、タンパク質などの消化管内部における消化過程の変化をシミュレートすることが可能になる。また反応槽1を筒状に構成し、特に反応部5を細長に構成することにより、腸管を模した試験を行うことができ、その消化過程を観察することが可能になる。
【0029】
試料の交換を行う場合は、三方弁14を切換えて反応槽1および循環路15内の内容物を排出路51から排出し、新しい試料について前記と同様の操作を繰り返す。
試験例として、上記装置により37℃における炊飯米のアミラーゼによる加水分解反応を解析した。ウルチ米、モチ米、半モチ米、インド産米などのアミロース、アミロペクチン含量の異なる米を比較検討した結果、本発明による加水分解速度はアミロペクチンの成分比とよく一致した。
【0030】
上記の試験例は酵素と基質の生化学反応に関するものであるが、生物反応その他の解析にも適用することができる。
また本発明は溶出試験に限らず、基質の反応生成物の製造、その他の目的の反応装置および方法に適用することが可能である。
【0031】
【発明の効果】
本発明の請求項1の反応装置は、反応槽の逆方向の両端部にスクリューを設け、中間部の反応部に攪拌器を設けたので、固形の基質を反応部に閉じ込めて生物および/または生化学反応を行うことができ、基質を均一に磨砕して、反応液中に徐々に分散、混合し、均一に反応させることができる。
【0032】
本発明の請求項2の反応装置は、さらに透析器を備えているため、低分子の化合物を分画して取出すことができ、これにより食品などの調理または消化過程などの変化を連続して解析することが可能である。
【0033】
本発明の請求項3の反応装置は反応液導入路、反応液取出路、基質供給路等を備えているため、反応液を導入して基質と反応させ、基質を篩別して反応液を取出すことができ、これにより上記の反応を連続して長期にわたって継続することができ、また液を循環させることも可能である。
【0034】
本発明の請求項4の反応方法は、上記の装置により生物および/または生化学反応を行うため、上記のような反応をそれぞれの目的に応じて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の反応装置の垂直断面図である。
【符号の説明】
1 反応槽
2 恒温水槽
3、4 スクリュー
5 反応部
6 攪拌器
7 基質
8 基質収容空間
9 回転軸
11 反応液導入路
12 反応液取出路
13、31、46 ポンプ
14 三方弁
15 循環路
16 基質導入路
17 フィーダー
18 基質供給路
20 通液孔
21 透析器
22 透析膜
23 支持材
24 ケーシング
25、26 O−リング
27、28 キャップ
29 透析画分取出路
32 透明画分取出管
33 フラクションコレクター
35 蓋
36 カップリング
37 パルスモータ
41、43 弁
42 分取路
44 採取路
45 試料採取器
47 反応液供給路
51 排出路

Claims (4)

  1. 生物または化学物質の存在下に基質に対する生物および/または生化学反応を行う筒状の反応槽と、
    反応槽の中間部に形成された反応部と、
    反応槽の両端部に設けられて基質を反応部側に移動させるように回転するスクリューと、
    反応部に設けられた攪拌器と
    を備えていることを特徴とする反応装置。
  2. 反応液中の低分子量画分を分画する透析器をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の反応装置。
  3. 反応槽の一端部に反応液を導入する反応液導入路と、
    反応槽の他端部から反応液を取出す反応液取出路と、
    反応部に基質を供給する基質供給路と、
    を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の反応装置。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の反応装置を用い、
    反応槽両端部のスクリューを回転させて基質を反応部に閉じ込め、
    攪拌器により反応部の基質を攪拌して磨砕、混合を行いながら生物および/または生化学反応を行う
    ことを特徴とする反応方法。
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