JP3679858B2 - 圧縮機の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスパイプラインやアンモニアプラントなどに適用されるガスを昇圧する圧縮機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
アンモニアプラントの例により従来技術を説明する。図4は従来のアンモニアプラントの圧縮工程を示すブロック図である。この図4においては、上流工程から送られてきたガスを低圧側圧縮機1及び高圧側圧縮機2によって昇圧する構造を示している。すなわち、図4にて配管4、低圧側しゃ断弁5、配管6を通って来たガスはサクションタンク7に入り、サクションタンク7から圧縮のための低圧側圧縮機1、配管9、冷却のためのクーラ10に入り、冷されたガスは更に配管14、サクションタンク15に入り、更に圧縮のための高圧側圧縮機2、配管17、21、高圧側しゃ断弁22、配管23を通って下流工程へと流れる。この場合、低圧側圧縮機1及び高圧側圧縮機2は、例えばガスタービンや蒸気タービンなどの駆動機3により駆動される。
【0003】
更に、各圧縮機1、2からは、帰還ガス流路が設けられており、圧縮機1ではクーラ10の出口から配管11、調節弁12、配管13を通ってサクションタンク7にガスが循環できるように構成され、低圧側圧縮機1の流入流量がある値以下にならないように流量検出器8につながる流量調節計24にて調節弁12を操作している。このようにして圧縮機1のサージング現象を防止している。
【0004】
また、圧縮機2ではこの高圧側圧縮機2の出口から配管18、調節弁19、配管20を通って、クーラ10にガスが循環できるようになっており、高圧側圧縮機2の流入流量がある値以下にならないように流量検出器16につながる流量調節計27にて調節弁19を操作している。この場合も、高圧側圧縮機2のサージング現象を防止している。
【0005】
ここで、高圧側圧縮機2の運転がサージング方向に変化したときの挙動について説明する。まず、図5にて横軸に時間、縦軸に圧力、流量、弁開度などの状態量を示している。図5中、B点までは圧縮機1、2は運転中であり、各圧縮機1、2の入口圧力、出口圧力、流量、及び回転数は定格にある。このとき、各圧縮機1、2の流量は設定値よりも大きいので流量調節弁12、19の開度は全閉となっている。
今、B点において、高圧側圧縮機2の出口圧力が図5(a) の如く急速に上昇したとする。この原因としては、例えば高圧側圧縮機2の下流側のプロセスが停止したために、プロセスの消費流量が急速に減少したにもかかわらず、圧縮機1、2の回転数が定格一定であるために高圧側圧縮機2の出口圧力が急速に上昇し、昇圧比も上昇した場合などがあげられる。
このとき、高圧側圧縮機2への流入流量は図5(c) の如く急速に減少し、図5C点にて流量調節計27の設定値よりも小さくなり、これ以後、流量調節計27により調節弁19の弁開度が図5(e) の如く徐々に大きくなり、帰還流量が大きくなり、流量を設定値に保持しようとする。高圧側の帰還ガス流量が増加してくるので、D点にて高圧側圧縮機2の出口圧力がピークとなってそれ以後、徐々に減少する。このとき、過渡的にサージング領域に入るが、やがてサージング領域から離れることになる。
【0006】
一方、低圧側圧縮機1側は、高圧側帰還ガス流量の増加に伴い、図5(b) の如く低圧側圧縮機1の出口圧力が徐々に上昇し、流量も図5(d) の如く徐々に減少する。そして、図5E点にて低圧側の流量が流量調節計24の設定値よりも小さくなったとき、流量調節計24によって調節弁12の開度が図5(f) の如く徐々に大きくなり、低圧側帰還ガス量が増加する。そして、F点にて低圧側圧縮機1の出口圧力が図5(b) の如くピークとなり以後徐々に減少する。このとき、過渡的にサージングに入り、やがてサージング領域から離れていく。
こうして、流量の増加により高圧側・低圧側ともG点にて流量調節計24、27の各設定値に保持される。
【0007】
図5A点からG点までの以上の現象を圧縮機の性能曲線上でみると、図6のようになる。すなわち、この従来の運転方法では、一方の圧縮機がサージング領域に入るような急速な流量変化があった場合、他の一方の圧縮機もサージング領域の運転となってしまうことが起こる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述の高圧圧縮機2の出口圧力が上昇した場合などでは、流量調節計24、27のゲインを大きくとることができないので、流量の急速な減少に対応できず、一台の圧縮機がサージング領域に近づく運転となった場合、それに連動して他の圧縮機もサージング領域に近づく運転となってしまう。この場合、サージング領域での運転は、圧縮機の重大な破損につながるという問題があり、できるだけサージング領域の運転は避けたいのであるがそれができないこと、複数の圧縮機が連動してサージング領域に入るような運転になると、プロセスの運転が非常に難しくなる。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑み、サージング領域での運転をできるだけ防止するようにした圧縮機の制御装置の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成する本発明は次の発明特定事項を有する。
(1) 複数の圧縮機を直列又は並列に配置してガスを昇圧し、上記各圧縮機につき帰還ガス流路を備えて調節弁にて帰還流量を各々調節する圧縮機の制御装置において、上記各圧縮機の入口流量を各々検出する流量検出器と、上記各流量検出器で検出された上記各圧縮機の入口流量が設定値より小さいときは、弁開度を大きくするように各々出力し、上記各圧縮機の入口流量が設定値より大きいときは、弁開度を全閉となるように各々出力する調節計と、上記各調節計の出力に定数を乗じて各々出力する比例演算器と、上記調節計の一方の出力と上記比例演算器にて上記定数を乗じられた上記調節計の他方の出力とを入力して何れかを最大値として選択して出力する最大値選択演算器と、上記調節計の他方の出力と上記比例演算器にて上記定数を乗じられた上記調節計の一方の出力とを入力して何れかを最大値として選択して出力する最大値選択演算器と、上記各最大値選択演算器の出力を操作量として各々操作される上記調節弁と、を有することを特徴とする。
【0011】
サージング領域への運転となる圧縮機に係る圧力や流量に基づいて、他の圧縮機の帰還ガス流路の流量をも制御することにより他の圧縮機のサージング領域の運転を防止できるようにした。
【0012】
【発明の実施の形態】
ここで、図1〜図3を参照して本発明の実施の形態の一例を説明する。なお、図1にて図4と同一部分には、同符号を付し、重複する説明は省略する。
本例においては、流量調節計24、27の出力をそれぞれ2方向に分岐させ、分岐の一方は自己の帰還ガス流路に介在させた流量調節弁12、19を制御する最大値選択演算器26、29の一入力とし、分岐の他方は他方の最大値選択演算器29、26の他の入力であり、比例演算器28、25を介して作成したものである。ここで、最大値選択演算器26、29は二入力のうち入力信号の最大値を選択し選択した信号にて流量調節弁12、19を制御するものであり、また比例演算器28、25は入力信号に定数を乗した信号を作成するものである。
【0013】
図1の例では、流量調節計24の出力は、比例演算器28に送られる。比例演算器28では、入力された信号に定数K2を乗じた信号を出力する。また、流量調節計27の出力は、比例演算器25に送られる。比例演算器27では、入力された信号に定数K1を乗じた信号を出力する。流量調節計24の出力信号と比例演算器25の出力信号は、最大値選択演算器26に送られる。最大値選択演算器26では、入力された信号の中で最大値を選択し、選択した信号が配管11、13に設置された流量調節弁12へ送られ、これを制御する。また、流量調節計27の出力信号と、比例演算器28の出力信号は、最大値選択演算器29に送られる。最大値選択演算器29では、入力された信号の中で最大値を選択し、選択した信号が配管18、20に配置された流量調節弁19へ送られ、これを制御する。
【0014】
ここで、図2、図3にて圧縮機2の運転がサージング方向に変化したときの挙動について説明する。なお、図2は図5と同様、横軸に時間、縦軸に圧力、流量、弁開度、制御信号の状態量を示している。今、圧縮機1、2は運転中であり、図2中B点に到るまでは、圧縮機1、2ともに入口圧力、出口圧力、流量、及び回転数は定格にある。このとき、圧縮機1、2の流量は図2(b)(c)の如く流量調節計24、27にて設定値よりも大きいので、流量調節弁12、19の開度は全閉となっている。
【0015】
B点において図2(a) の如く圧縮機2の出口圧力が前述の如く急速に上昇したとする。この急速な圧力上昇により図2(c) のように流量が急速に減少する。このため、C点では図2(c) のように流量調節計27の設定値よりも圧縮機2の流量が小さくなる。このとき、流量調節計27は、圧縮機2の流量を増やすべく調節弁19の開度を大きくする信号を出力する。このとき低圧側では、圧縮機1の流量が流量調節計24の設定値よりも大きいために流量調節計24は、調節弁12に対し全閉信号を出力している。しかし、比例演算器25では、流量調節計27の出力を入力とし、これに定数K1を乗じて出力する。このため、最大値選択演算器26は、流量調節計24の出力と比例演算器25の出力を入力として、その最大値を選択する。流量調節計24の出力は全閉信号であるために、最大値選択演算器26は、比例演算器25の出力を選択し、その出力信号により調節弁12の弁開度は徐々に大きくなる。
【0016】
他方、比例演算器28は、流量調節計24の出力を入力とし、これに定数K2を乗じて出力するが、流量調節計24の出力が全閉信号であるため、比例演算器28の出力信号は全閉信号となる。最大値選択演算器29は、流量調節計27の出力と比例演算器28の出力を入力として、その最大値を選択する。比例演算器28の出力は、全閉信号であるために、最大値選択演算器29は、流量調節計27の出力を選択し、その出力信号により調節弁19の弁開度は徐々に大きくなる。
この結果、圧縮機2の出力圧力が急速に上昇すると、その値に応じて低圧側、高圧側双方の最大値選択演算器26、29からは、流量調節計27による図2(c) に基づく信号にて図2(g)(h)の制御信号が出力され、調節弁12、19にて図2(e)(f)の弁開度となる。したがって、図2(a) に示す圧縮機2の圧力上昇や図2(c) に示す圧縮機2の流量の各変化に伴い、図1(b)(d)の如く圧縮機1の変化
をもたらす。
【0017】
その後、図2D点では圧縮機2の出口圧力がピークとなり、サージング領域に入るが、やがて、出口圧力が小さくなりサージングから遠ざかり、流量調節計27の出力信号により流量が設定値に保持されるように調節弁19が開度を調節する。また、圧縮機2とほぼ同時に圧縮機1の出口圧力もピークとなり、やがて小さくなっていく。このため、圧縮機1はサージング領域に入ることなく運転されることとなる。
さらに、図2E点にて定常となったときには、調節弁19は流量調節計27の出力信号Xにて弁開度一定となり、調節弁12は、流量調節計27の出力信号Xに比例演算器での定数K1を乗じたK1×Xにて弁開度一定となる。
A点からE点に到る圧縮機1、2の運転状態を圧縮機の性能曲線上に示したのが図3である。図3から判明するよう圧縮機2は、サージング領域に入るが、圧縮機1は、サージング領域を避けて運転されている。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように本発明においては、1台の圧縮機がサージング領域に入ったとしても、この圧縮機の圧力上昇、流量減少の信号にて他の圧縮機をも帰還流量制御を行っているので、1台の圧縮機に連動して他の圧縮機がサージング領域に入ることなく圧縮機を運転することができ、重大な破損や運転の困難性を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施の形態の一例のブロック図。
【図2】図1の各部波形図。
【図3】図1の構造での圧縮機の性能曲線図。
【図4】従来例のブロック図。
【図5】図4の各部波形図。
【図6】図4の構造での圧縮機の性能曲線図。
【符号の説明】
1 低圧側圧縮機
2 高圧側圧縮機
8、16 流量検出器
12、19 流量調節弁
24、27 流量調節計
25、28 比例演算器
26、29 最大値選択演算器

Claims (1)

  1. 複数の圧縮機を直列又は並列に配置してガスを昇圧し、上記各圧縮機につき帰還ガス流路を備えて調節弁にて帰還流量を各々調節する圧縮機の制御装置において、
    上記各圧縮機の入口流量を各々検出する流量検出器と、
    上記各流量検出器で検出された上記各圧縮機の入口流量が設定値より小さいときは、弁開度を大きくするように各々出力し、上記各圧縮機の入口流量が設定値より大きいときは、弁開度を全閉となるように各々出力する調節計と、
    上記各調節計の出力に定数を乗じて各々出力する比例演算器と、
    上記調節計の一方の出力と上記比例演算器にて上記定数を乗じられた上記調節計の他方の出力とを入力して何れかを最大値として選択して出力する最大値選択演算器と、
    上記調節計の他方の出力と上記比例演算器にて上記定数を乗じられた上記調節計の一方の出力とを入力して何れかを最大値として選択して出力する最大値選択演算器と、
    上記各最大値選択演算器の出力を操作量として各々操作される上記調節弁と、
    を有することを特徴とする圧縮機の制御装置。
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