JP3677289B2 - 強化されたタービンエンジンオイルの冷却方法 - Google Patents
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Description
本発明は、ガスタービンエンジン動力装置の運転方法に関する。特に、翼の保守時間が短縮される運転方法に関する。
背景技術
大型の航空機用動力装置は、一般に、ターボファン、ガスタービンエンジン、及びエンジン用ナセルを含んでいる。ナセルはエンジンの周りに円周状に延在し、エンジンを保護するとともに、動力装置によって推力が生成されるとき、動力装置に働く空力抵抗を低減する空力面を形成する。
ターボファンエンジンは、圧縮部、燃焼部、及びタービン部を含む。作動媒体ガスの一次流路はこれらのエンジン各部を通って軸方向に延在する。エンジンのケーシングは、一次作動媒体流路を画定するように流路の周りに円周状に、エンジンを通って軸方向に延在する。
一次流路の作動媒体ガスは圧縮部内に引き込まれ、そこでいくつかの圧縮ステージを通り、それによってガスの温度及び圧力が上昇する。温度及び圧力の上昇したガスは、燃焼部に於いて燃料と混合されて燃焼し、高温の圧縮ガスが生成される。これらのガスはエンジンのエネルギー源であり、タービン部へと膨張して仕事をする。
作動媒体ガスの二次流路が、一次流路の外側に設けられている。二次流路の形状は環状である。エンジンは、一次流路と二次流路を径方向外向きに横切るように延在する複数のファンブレードを有する。これらのファンブレードは、エンジンの両流路に流入する作動媒体ガスを加圧する働きをする。
ナセルには、ファンナセル(fan nacelle)とコアナセル(core nacelle)が含まれる。ファンナセルはファンブレードの外側に延在する。コアナセルはファンナセルから内側に離隔して配置され、それらの間に作動媒体ガスの二次流路が形成される。コアナセルはエンジンから径方向外向きに離隔されており、それらの間にはガスタービンエンジンの周りに延在するコアナセルコンパートメント(core nacelle compartment)が形成される。
コアナセルコンパートメントは、エンジンの外部に設置される部品(通常エンジンアクセサリと呼ばれる)を囲んで保護するシェルタとして働く。これらのアクセサリには、燃焼部へと燃料を送るための燃料ライン、エンジン及び航空機に電力を供給するための発電機、エンジンの圧縮ガスの一部をナセルを通して及びストラット(strut)を通して航空機へと送るための空気ダクト、航空機内に配置された補助動力装置(通常“APU”と呼ばれている)から始動時にエンジンへ圧縮ガスを送るための第2空気ダクトが含まれ得る。他の部品として、加圧された油圧油を油圧ベーンアクチュエータ(hydraulic vane actuator)へ供給するための油圧ポンプや、エンジン潤滑流体、燃料などような高温の流体から熱を取り除くための熱交換器がある。
これらの部品は全て、それらの温度が許容可能な限界内に保たれるよう冷却される。理解されるように、主たる熱源は、温度が1370℃(2,500°F)を越える燃焼プロセスが行われるエンジンである。その結果、エンジンのアクセサリのある部分は93℃(200°F)程度の低い温度にすることができるが、エンジンの他の外側部分やアクセサリ538℃(1000°F)を越える温度となる。そのためナセルコンパートメントは、エンジンの運転中、二次流路からナセル内部へと冷たい加圧された空気の一部を流す冷却通路によって換気され冷却される。
冷却通路の一例は、ナセルの側面またはナセルの上面に於いて軸方向に延在するスプレーバー(spray bar)である。スプレーバーは、エンジンの運転中コアナセルコンパートメントの換気をするべく、冷却空気をナセルの上側領域または側面領域へと流す。ガスタービンエンジンナセルで使用される冷却及び換気系統の別の例が、“External Gas Turbine Cooling for Clearance Control”というタイトルの米国特許第4,019,320号明細書、“Clearance Control for Gas Turbine Engine”というタイトルの米国特許第4,069,662号明細書に示されている。これらの特許は両方ともRedingerらに付与された。これらの構成では、冷たい空気はファン吐出しダクトから導かれ、エンジンケースの外部から、ガスタービンエンジンのタービン部に於けるシール近傍の領域へと送られる。スプレーバーはエンジンケースに冷却空気を当て、エンジンケースの位置に関連するエンジンの運転内部間隙及びケースの直径を制御する。エンジンケースに衝当した後、冷却空気はエンジンコンパートメントを通って流れ、コンパートメントを換気する。
冷却通路の別の例が、Schulzeに付与された“Auxiliary Air System for Gas Turbine Engine”というタイトルの米国特許第4,351,150号明細書に示されている。それによると、例えば電子エンジンコントローラのような熱を生成する部品に冷却空気を送りその部品を冷却するのにエアダクトパイプが用いられる。コントローラを冷却した後、空気はナセルコンパートメント内へと吐き出され、コンパートメントを換気する。
ナセル用冷却系統の別の例が、Reamらに付与された“Buffer Region for the Nacelle of a Gas Turbine Engine”というタイトルの米国特許第5,127,222号明細書に開示されている。それによると、冷却空気はエンジン停止後ナセル内のバッファ領域へと流される。冷却空気はエンジン停止後油圧油の温度が許容範囲内に保たれるように、コンパートメント内部の高温ガスから部品へと熱が伝達されるのを阻止するべく部品を取り囲む。
運転中のエンジンによって生成される熱によって生じる付随的な問題がある。部品が故障した場合、その部品を翼上で且つ短期間に交換する必要がある。このことは、その部品が出発に不可欠の部品である場合特に問題である。航空機の飛行中に出発に不可欠の部品が故障した場合、その部品を交換または修理しなければ、航空機が正規に予定されたスケジュールを続けることは許可されない。このことは、たとえバックアップ検知システムが完全に機能していても同様であり、航空機は、主要検知システムが修復される(例えば、主油圧検知システムが完全に機能している)まで離陸することはできない。
このように、出発に不可欠の部品は、航空機の出発前に修復または交換されなければならないが、これは通常1乃至2時間である。電気的なコネクタ、圧力隔壁センサなどの部品、油圧アクチュエータ、発電機、熱交換器のような装置は、航空機が予定された出発時間を守ることができるよう、30分以内に交換可能なように設計されている。例えば、パーツは重ならないように配置されアクセスし易くなっているとともに、パーツ間に間隔が設けられ容易にアクセスできるようになっている。バックアップワイヤは空気が流れる導管から除去されており、エンジン保守員によるこれらの部品の交換の高速化が図られている。多くの箇所にヒンジクランプが採用されており、エンジンに装置を取り付ける他のデザインによって、これらの部品の取り外し及び交換にかかる時間の短縮が図られている。
エンジン保守員には保護用作業着が与えられるが、その中には故障した部品の取り外し及び交換のあいだ高温の部品から保守員を保護するグローブが含まれる。これらの保護用具によって、保守員は最も高温となる部品に対しても、その部品が保護用作業着が有効な温度にまで低下すればすぐに作業することができる。
上述したような技術はあるが、本出願人の指導の下で働く科学者及び技術者は、エンジンの外部の部品の取り外し及び交換に必要な時間を短縮し、そのような部品の修復に要するターンタイム(turn time)を1乃至2時間未満とし、予定された航空機の出発時間が確実に守られるように努力してきた。
発明の開示
本発明は部分的に次のような認識に基づいている。即ち、航空機の飛行中にナセルコンパートメント内部の温度が通常以下になるようにコンパートメント内部を冷却することにより保守時間が短縮され、出発時間に間に合わないことによる飛行取り消し回数が低減されるが、内部の過度な冷却は航空機の性能低下を引き起こす。
本発明によると、独立請求項に画定されているように、飛行運転中に故障した部品を有するガスタービンエンジン動力装置の運転方法は、故障を検知する過程と、航空会社の保守員が故障した部品に対し作業することができるようになる前の冷却時間を短縮するべく降下中にエンジンに対し付加的な冷却を行う過程とを含む。
本発明の一詳細実施例によると、本方法は、巡航が終わってエンジンのアイドル降下(idle descent)運転状態が始まるときオイル冷却を強める過程と、航空機のアイドル降下運転モードの開始時にナセル換気空気を増加する過程とを含む。
本発明の一詳細実施例によると、本発明の航空機の運転方法は、故障した部品を有するエンジンを地上移動(タクシング)運転状態のあいだに停止し、エンジンを風車のように回転させ、着陸後人を降ろしているあいだ(降機運転状態)の冷却効果を高める過程と、風車状の回転を停止させる過程と、エンジンとは独立した補助動力装置または他の装置によって供給される冷却空気を用いてエンジンの所定の部品を冷却する過程とを含む。
本発明の主要な特徴は、部品の故障を検知し、航空機の着陸に先だって付加的な冷却を始めることにある。本発明の別の特徴は、航空機の降下モードに於いてエンジンの潤滑オイルに対し付加的な冷却を行うと同時にナセルの換気も強め、その後タクシングのあいだ風車状にエンジンを回転し、強制的に冷却空気がエンジン内部を通過しナセルコンパートメントを通るようにし、冷却を強める過程にある。本発明の一詳細実施例によると、主要な特徴は、航空機内部のための冷却空気の一部を振り分けてエンジンへと流し、エンジン部品の冷却を強めることにある。
本発明の主な利点は、故障した部品を修復または交換するのに必要なターンタイムの短縮にある。これは、航空機の降下及び着陸に於いてエンジン内部を過度に冷却し、エンジン内部の温度を低下させることによる。本発明の別の利点は、エンジンのいくつかの保守手順に対して保護用作業着が不要となることによる航空機エンジン保守員の作業速度の向上にある。別の利点は、航空機エンジン保守員が曝される部品温度の低下による航空機保守員のけがの減少にある。
上述した本発明の特徴及び利点は、以下の本発明の最適実施形態に関する詳細な説明と添付の図面により一層明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
第1図は、ターボファンガスタービンエンジンを有する航空機の正面図である。
第2図は、ナセルの一部が破断されて示されているガスタービンエンジン用動力装置の上面図であり、ハイバイパスタービンファンエンジン(high bypass turbine fan engine)及びこのエンジンのための電子エンジン制御装置、エンジンの他の部品、それらの部品の冷却系統、及び関連する航空機部品(例えば補助動力装置)を模式的に示している。
第3図は、第2図に示されているガスタービンエンジンの一部の模式的な図である。
第4図は、様々な強化された冷却系統がある場合と無い場合について、エンジンオイルの温度(ナセルコンパートメント温度を表す)をエンジンの様々な運転モードの時間の関数として表したグラフである。
発明の最適実施形態
第1図に軸流ターボファン型ガスタービンエンジン11を有する航空機10を示す。このエンジンはナセル12によって囲まれている。ナセルは、航空機の翼及びパイロン13のような支持構造体からエンジンを支持し所定の位置に配置するよう適合されている。第2図に示されているように、ナセルは、ナセルコアコンパートメント16及びナセルファンコンパートメント14のような補助装置を収容するためのコンパートメントを含む。
第2図に模式的に示されているように、コアコンパートメント16は、ナセルファンコンパートメント14から径方向内側に離隔して配置されており、それらの間にファンバイパスダクト18が形成されている。作動媒体ガスの二次流路20は、このバイパスダクトを通って延在する。作動媒体ガスの一次流路22は、エンジンを通って後方へと延在する。エンジンには、ファン部24、コンプレッサ部26、燃焼部28、及びタービン部30が含まれる。燃料供給系統32は燃焼部と連通している。
ファン部とコンプレッサ部は、通常、まとめて圧縮部と呼ばれる。圧縮部及びタービン部は、ロータ部品34とステータ部品36を含む。ステータ部品は、作動媒体ガスの一次流路22を横切って延在する数が可変のステータベーン38を含む。これらのベーンには、ベーンの位置制御をするための油圧ベーンコントローラ40が連結されている。また、油圧力を供給するための燃料再循環系統42が油圧ベーンコントローラと連通しており、油圧ベーンコントローラは加圧された燃料に応答して油圧力を発する。エンジンオイル系統44は、ロータ部品を支持するベアリングのような部品を潤滑するべく設けられている。
一定の周波数で航空機に電力を供給するための発電機46のような過剰な熱を生成する部品も、コアコンパートメント16内に収容されている。発電機はガスタービンエンジンによって駆動される。発電機用の冷却系統48は、発電機と連通している。
航空機10の補助動力装置49は、航空機に空調用空気を、エンジンに空気ダクト50を介してステータ空気を、エンジン部品にダクト51を介して冷却空気をエンジンの所定の運転状態の下で供給する。
冷却系統48、燃料再循環系統42、及び燃料供給系統32を第3図により詳細に示す。燃料供給系統は、通常航空機の翼内に配置される燃料タンク(図示せず)、主燃料ポンプ(図示せず)、及び燃料コントローラ52を含む。燃料コントローラは、全統括デジタル電子エンジンコントローラ(FADEC)53に応答して動作する。この特別なエンジンコントローラは、“Hamilton Standard”によって製造されている“model EEC-170”電子エンジンコントローラである。燃料ノズル54は、燃料をエンジンの燃焼室に注入する手段を提供する。燃料を送るための燃料ライン56は、タンクから主燃料ポンプと燃料コントローラを通って燃料ノズルへと延在している。
燃料供給系統32は、第1熱交換器58のような、エンジンオイルから燃料へと熱を移送する手段を含む。第2熱交換器62のような第2の手段は、燃料ライン内の燃料と発電機用冷却系統48内の冷却流体との間で熱を移送するために設けられている。
燃料再循環系統42は、冷却系統48内の冷却流体から再循環系統内の燃料へと熱を移送する第3熱交換器64のような手段を含む。
発電機46用の冷却系統48は、発電機用冷却流体から冷却空気へと熱を移送する第4熱交換器66のような手段を含む。更に、エンジンオイル系統44のオイルは第4熱交換器66へ流れるとともに流路20内の第5熱交換器67へと流れ、エンジンの選択された運転状態に於いてエンジンオイル系統の付加的な冷却がなされる。導管68はファンダクト18と第4熱交換器66との間に延在し、第4熱交換器を冷却空気源と連通している。冷却空気は熱交換器66から吐き出され、ナセルコアコンパートメント16のようなナセルコンパートメント内へと排気される。スプレーバー71もナセルコンパートメント16に冷却空気を配布する働きをする。導管68を流れるファン空気流を制御するバルブ72とスプレーバー71内のバルブ(図示せず)は、コンパートメントの温度と、発電機からの吐出し点に於ける冷却系統48内の冷却流体の温度とに応じて動作する。これらのバルブは、エンジンの全統括デジタル電子コントローラ(full authority digital electronic control:FADEC)53にも応答する。例えば、FADECコントローラは、エンジンの様々な系統に於ける故障を示す温度、圧力、その他の限界値に応答し、そのような故障の後、特定の系統内の部品に対し付加的な冷却を行う手段とすることができる。
冷却系統48内の冷却流体を循環させるための手段75は、ポンプ(点線で図示)と、導管76として示されている導管を含む。理解されるように、このポンプは発電機の一体的な一部とすることができる。手段75は、冷却流体を、発電機、第4熱交換器66、第3熱交換器64、及び第2熱交換器62と連通させ熱伝達がなされるようにするのに用いられる。この冷却流体循環手段75は、燃料に熱が過剰に伝達されるのを防ぐため、第3熱交換器の入口と出口を結ぶバイパス管78を含む。燃料循環系統42内の燃料の温度またはFADECに応じて動作するバルブ82は、第3熱交換器を流れる冷却流体の流量を制御するのに用いられる。第2バイパス管84は、エンジン始動時程度の低温時に於いて冷却流体からの熱の損失を防ぐべく第2熱交換器の入口ポートと吐出しポートを結ぶ働きをする。バルブ86は、冷却系統内の冷却流体の温度及びFADECに応じて動作し、第2熱交換器の周りのバイパス管を通って流れる冷却流体の流量を制御する。
ガスタービンエンジンの運転中、空気の形態の作動媒体ガスはガスタービンエンジン11内に引き込まれる。これらのガスはコンプレッサ部26で圧縮され、それによって作動媒体ガスの温度及び圧力が上昇する。温度及び圧力の上昇したガスは、燃焼部へと送られる。燃料タンクからの燃料は、燃料ノズル54により注入される。これらの燃料とガスは混合され燃焼し、作動媒体ガスの温度が上昇してエネルギーが付加される。この高温の作動媒体ガスはタービン部30を通るとき膨張し、エンジンが取り付けられている航空機に動力を与える。
エンジンの可動部品は、エンジンオイル系統44を通じてこれらの部品へと流れるエンジンオイルによって潤滑される。これによってエンジンオイルは加熱される。この熱は、エンジンオイルから燃料供給系統32を通って燃料ノズル54へと流れる燃料へと移送される。また、第3熱交換器66を介して、導管68を通ってエンジン内部を通過するガスへも熱が流れる。発電機46によって生成される熱も、冷却系統48を通って流れる冷却空気へ移され、熱交換器66へと送られる。
熱交換器66内の流体の冷却及びナセルコアコンパートメントの換気のため第2流路20から冷却空気を引き出すと、航空機の推力を生む流れの一部が取り去られることになる。そのため、許容可能な温度範囲内で部品が十分に動作するのに必要なレベルの冷却のみがなされる。
例えば、高出力運転では、単位時間当たりに大量の熱がエンジン部品によって生成され、これらのエンジン部品はエンジンオイル系統44を通じてエンジンを通って流れる潤滑オイルによって冷却される。例えば巡航から飛行アイドルまたは降下アイドルへと出力を低下させる場合のように、急な出力減少があると、第1熱交換器58及び第2熱交換器62を通って流れる燃料の流量が低下する。短時間の間、大量の熱が燃料の流量が低下した第1熱交換器58を通して除去される。熱はその後第2熱交換器62を介して発電機用冷却系統を流れる冷却流体へと移される。また熱は、エンジンから直接熱交換器66へと、或いはエンジンオイルと連通するよう配置された他の熱交換器(第5熱交換器67など)にも送られる。いったん熱伝達レベルが平衡すると、導管68を通って流される冷却空気は減少されるか無くされる。
第3図は、エンジンオイルの温度を表すグラフである。エンジンを通って流れるオイルの温度は、熱交換器及び他のオイルに接触する部品が遭遇する温度である。またオイルの温度は、エンジンの様々な運転モード(巡航、降下、進入、離陸など)に於いて、ナセルの部品や他の部品の温度を時間の関数として相対的に示す指標ともなる。これには、航空機を停止させるためのファンのリバース運転や乗客及び乗員を降機させる場所である停止場所への航空機のタクシングのような地上での運転も含まれる。エンジンの停止は、このエンジンに対しては、通常の運転に対してはポイントAで、出発に不可欠な部品が故障した場合はポイントBで行われている。
通常運転(エンジンの各運転状態に対し通常レベルの冷却がなされる)では、ある典型的に設置された航空機エンジンに対して、オイル温度は第3図に示すような実線をたどる。巡航から降下への遷移時の過渡的な温度状態(図示せず)を除くと、オイル温度は、降下の間及び進入を通して、高出力のエンジンのリバース運転が航空機を停止するのに使用されるまで下降する。オイル温度はタクシングのあいだ再び上昇し、ポイントAで示されているようにエンジンが停止されると低下し始める。
想像線は、航空機の飛行中に出発に不可欠な部品が故障した後に行われる冷却を表す。部品の不良動作モードの結果、FADECコントローラは、通常の運転状態に於いてなされる冷却レベルを越えてより一層の冷却を行う。例えば、熱交換器67へ流れるオイルの量を増加することによって、または第4熱交換器を通過する空気量をバルブ72を開くことにより増加することによって第4熱交換器66へと流れるオイルからより多くの熱が除去される。その結果、オイル温度は通常運転時の冷却と比較して大幅に低下する。更に、故障した部品のタイプに応じて、ナセル内の部品を一層冷却するべくより多量のナセル換気用空気を供給してもよい。このようにすると、主オイル温度は第3図に示した点線よりも更に低下する。この空気は、熱交換器66を通過させることにより導管68を通じて供給されるか、或いは独立したダクト(スプレーバー)71を通じて供給される。
着陸地へと進入するのに必要とされる出力の増加により、オイル温度は上昇する。航空機が接地し着陸が始まるとき、温度は再度下降する。オイルの温度は、航空機を停止するためかなり高出力でなされるファンリバース運転の結果再度上昇する。降下運転状態に於けるコンパートメント16及びエンジンオイルの過度の冷却のため、オイル温度は、通常の運転状態のオイル温度と比べてより低く保たれている。
航空機が降機位置へとタクシングしているとき、故障した部品を有するエンジンを、タクシングのための出力の一部を生成するのに用いてもよい、示されている例では、エンジンは、タクシングが完了する前に、約80分の点に於いて停止されている(ポイントB)。通常の始動モードと同様に、補助動力装置49から導管50を介して、スタータ空気がスタータモータ(図示せず)へとギヤシステム(図示せず)を通して送られ、高圧ロータが回転軸を中心に駆動される(風車状態)。
エンジンを風車のように回転させるべくAPUによって供給されるスタータ空気を用いてエンジンが風車状態になっているとき、より一層の冷却空気が、エンジン内部を通して、ナセルコンパートメントを通して、及びオイルと連通した熱交換器を通してポンピングされる。これによってエンジン及びエンジンオイルの温度が更に大幅に低下し、オイルに接触するどの部品も冷却される。更に、換気空気及びエンジンを通過する流れによって、ナセルの内部が冷却されることにより、オイルと連通していない部品の温度も低下する。
APU49は、ベーンコントローラ40に空気を供給するダクト51で代表される予め選択された部品に冷たい空調用空気を供給するのにも用いることができる。別の方法として、航空機外部の電気動力によって駆動される持ち運び可能な空調装置のような特別な冷却装置から現場に於いて冷却空気を供給することもできる。
降下中に冷却を行う結果、部品の交換または修復のあいだ、オイル冷却のみがなされるとしてもまたは他の冷却と組合せて冷却がなされるとしても、オイル及び他の部品に接触する部品の温度は、部品の不良動作モードの検知に対しこのような付加的な冷却がなされない構造と比べて大幅に低くなっている。
部品がより速やかに許容可能な温度レベルに達するため、航空機エンジンの保守員は、通常よりも早く故障した部品に対し作業をすることができる。これによって、オイルまたはナセル内部に対し付加的な冷却を行わない構造と比較して、故障したパーツの交換に要する時間が短縮される。別の利点は、航空機の予定された次の出発に間に合うように故障した部品に対し作業しなければならないような状況に於いて、航空機保守員が高温の部品に曝されないことによる、航空機保守員の安全及び快適性にある。別の有利な点は、保護用作業着及び保護グローブが不要となる程度に冷却がなされる場合、保守員が部品を容易に取り扱うことができることである。
本発明をその詳細な実施態様について説明してきたが、当業者であれば本発明の形態及び細部に対し、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく変更可能であることを理解されたい。
Claims (10)
- 航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法であって、
前記動力装置はターボファンガスタービンエンジン(11)を含んでおり、前記エンジン(11)は潤滑流体を有する該エンジン(11)用の潤滑系統(44)を含むとともに前記潤滑流体用の冷却系統(48)を有しており、
前記動力装置は更に、1)前記エンジン(11)の周りに円周状に延在するとともに前記エンジン(11)から離隔して間にコアコンパートメント(16)を形成するナセル(12)と、2)前記コアコンパートメント(16)の外部にあり、前記潤滑流体用冷却系統(48)と連通した冷却空気源とを含んでおり、
前記航空機(10)は更にいくつかの運転状態を有し、各運転状態は通常運転に対応する潤滑流体及びコアコンパートメント(16)に対する第1冷却レベルを有しており、前記通常運転状態は、巡航運転状態、降下運転状態、着陸運転状態、ファンリバース運転状態、タクシング運転状態、及び降機運転状態を含んでおり、前記エンジン(11)は、動作中に故障を引き起こして不良動作モードを開始させ得る部品を有しているとともに、前記部品の不良動作モード検知及び前記潤滑流体の冷却レベル制御手段を有しており、
前記部品の不良動作モードを検知する前記手段によって、前記部品の不良動作モードを検知する過程と、
前記部品の不良動作モードを検知した結果、少なくとも前記航空機(10)の降下運転状態の一部のあいだ、前記第1冷却レベルを達成するために必要な冷却の程度より強い第2の程度の冷却を前記潤滑流体に対し行う過程とを含み、
前記した付加的な冷却によって、前記コンパートメント(16)の内部及び前記故障を引き起こして不良動作モードを開始させ得る部品の温度が低下し、前記不良動作モード時に、前記通常運転状態に関連する前記第1レベルの冷却しかなされない場合と比べて、前記部品へのアクセス及び交換がより早くなされることを特徴とする航空機に動力を供給する動力装置の運転方法。 - 前記第2の程度の冷却を行う過程が、
前記エンジン(11)の降下運転状態に於いて、前記通常の第1冷却レベルを達成するのに必要な冷却空気量より多量の第2の量の冷却空気を前記コアコンパートメント(16)の外部の位置から流す過程と、
前記冷却空気を前記潤滑流体用冷却系統(48)へと流す過程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法。 - 前記動力装置が前記コアコンパートメント(16)を換気するための冷却系統を含んでおり、
前記コアコンパートメント(16)に第2の量の冷却空気を流す前記過程が、前記コアコンパートメントを換気するように前記コアコンパートメント(16)用冷却系統へ冷却空気を流す過程を含むことを特徴とする請求項2に記載の航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法。 - 前記動力装置が前記冷却空気源に連通した前記コアコンパートメント(16)内に配置されたスプレーバー(71)を含んでおり、
前記コアコンパートメント(16)に付加的な量の冷却空気を流す前記過程が、前記スプレーバー(71)を通じて冷却空気を流す過程を含むことを特徴とする請求項3に記載の航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法。 - 前記航空機が、冷却空気を生成するとともに前記エンジン(11)を風車状に回転させるべく加圧されたスタータ空気を供給するための補助動力装置(49)を有しており、
前記エンジン(11)のタクシング運転状態に於いて前記エンジン(11)を停止し、前記補助動力装置(49)から前記エンジン(11)にスタータ空気を流し前記エンジン(11)を風車状に回転させ、前記潤滑流体用冷却系統(48)に付加的な冷却空気を供給する過程を含むことを特徴とする請求項1に記載の航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法。 - 前記航空機(10)が、冷却空気を生成するための補助動力装置(49)を有しており、
前記航空機(10)の降機運転状態に於いて前記エンジン(11)を停止し、前記補助動力装置(49)が前記コアコンパートメント(16)と連通するように前記補助動力装置(49)から前記コンパートメント(16)へと冷却空気を流し、前記補助動力装置(49)から前記コアコンパートメント(16)へと付加的な冷却がなされるようにする過程を含むことを特徴とする請求項1に記載の航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法。 - 前記航空機(10)が、前記コアコンパートメント(16)の外部に前記コアコンパートメント(16)と連通する冷却空気を生成するための装置(49)を有しており、
前記航空機(10)の降機運転状態に於いて前記エンジン(11)を停止し、前記航空機(10)の降機運転状態に於いて前記装置(49)から前記コアコンパートメント(16)へと冷却空気を流す過程を含むことを特徴とする請求項1に記載の航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法。 - 航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法であって、
前記動力装置はターボファンガスタービンエンジン(11)を含んでおり、前記エンジン(11)は潤滑流体を有する該エンジン(11)用の潤滑系統(44)を含むとともに前記潤滑流体用の冷却系統(48)を有しており、
前記動力装置は更に、1)前記エンジン(11)の周りに円周状に延在するとともに前記エンジンから離隔して間にコアコンパートメント(16)を形成するナセル(12)と、2)前記コアコンパートメント(16)用の冷却系統と、3)前記コアコンパートメント(16)の外部にあり、前記コアコンパートメント(16)用冷却系統及び前記潤滑流体用冷却系統(48)と連通した冷却空気源とを含んでおり、
前記航空機(10)は冷却空気を生成するとともに前記エンジン(11)を風車状に回転するべく加圧された空気を供給するための補助動力装置(49)を有しており
前記航空機(10)は更にいくつかの運転状態を有し、各運転状態は通常運転に対応する潤滑流体及びコアコンパートメント(16)に対する第1冷却レベルを有しており、前記通常運転状態は、巡航運転状態、降下運転状態、着陸運転状態、ファンリバース運転状態、タクシング運転状態、及び降機運転状態を含んでおり、前記エンジン(11)は、動作中に故障を引き起こして不良動作モードを開始させ得る部品を有しているとともに、前記部品の不良動作モード検知し前記コアコンパートメント(16)及び前記潤滑流体の冷却レベルを制御する全統括デジタル電子コントローラ(53)を有しており、
前記エンジン用の前記電子コントローラ(53)によって、前記部品からの不良信号を検出することにより、部品の不良動作モードを検知する過程と、
前記部品の不良動作モードを検知した結果、前記エンジン(11)の前記運転状態に於いて前記通常の第1冷却レベルを達成するのに必要な冷却空気量より多量の第2の量の冷却空気を前記コアコンパートメント(16)の外部の位置から流す過程であって、前記エンジンの降下、着陸、進入、及びファンリバース運転状態に於いて、前記ナセルコンパートメント(16)用冷却系統と前記潤滑流体用冷却系統(48)に前記冷却空気を流す過程を含む該過程と、
前記エンジン(11)のタクシング運転状態に於いて前記エンジン(11)を停止し、前記補助動力装置(49)から前記エンジン(11)にスタータ空気を流し前記エンジン(11)を風車状に回転させ、前記潤滑流体用冷却系統(48)及び前記ナセルコンパートメント用冷却系統に付加的な冷却空気を供給する過程と、
前記航空機(10)の降機運転状態に於いて、前記コアコンパートメント(16)へ前記コアコンパートメント(16)の外部の冷却空気を流す過程とを含み、
前記した付加的な冷却によって、前記コンパートメント(16)の内部及び前記故障を引き起こして不良動作モードを開始させ得る部品の温度が低下し、前記不良動作モード時に、前記通常運転状態に関連する前記第1レベルの冷却しかなされない場合と比べて、前記部品へのアクセス及び交換がより早くなされることを特徴とする航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法。 - 前記動力装置が前記冷却空気源に連通した前記コアコンパートメント(16)内に配置されたスプレーバー(71)を含んでおり、
前記コアコンパートメント(16)に付加的な量の冷却空気を流す前記過程が、前記スプレーバー(71)を通じて冷却空気を流す過程を含むことを特徴とする請求項8に記載の航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法。 - 前記補助動力装置(49)の前記冷却空気が前記コアコンパートメント(16)と連通しており、前記航空機(10)の降下運転状態に於いて前記コアコンパートメント(16)の外部の冷却空気を前記コアコンパートメント(16)へと流す前記過程が、前記補助動力装置(49)から前記コアコンパートメント(16)へと冷却空気を流す過程を含むことを特徴とする請求項8に記載の航空機(10)に動力を供給する動力装置の運転方法。
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