JP3670044B2 - 有機被覆物の剥離方法及びそれに用いる装置 - Google Patents

有機被覆物の剥離方法及びそれに用いる装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は有機被覆物の剥離方法及びそれに用いる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば塗装用の治具は何回か使用すると塗料が付着、堆積して原形を維持しなくなり、そのままでは繰り返し使用できなくなるので、そのような付着、堆積した塗料等の有機物時々剥離して治具を使用可能な状態にすることが行なわれている。
【0003】
即ち例えば、静電塗装等に用いられる塗装用の治具には焼き網の如き網目状をしているものがあり、これは該治具の上面に載置した被塗装物に塗装を施す際、余分の塗料は該網目を通して下方へ通過させることができるようになっているが、このような治具は、何回か使用するとこの網目が塞がってしまう程塗料が堆積し、その結果、余分の塗料を下方へ通過させられなくなる。すると余分の塗料が加速度的に治具上に厚く堆積する。また、針金のような引っ掛け部分を有し、該引っ掛け部分に被塗装物を引っ掛けて塗装できるようになっている治具もあり、このような治具は上記のように網目の中に塗料が堆積するという問題はないが、それとは別に、何回か使用すると引っ掛け部分の先端、或いは根元等に塗料が堆積して寸法が太ってしまい、その結果、被塗装物を引っ掛けることができなくなる。
【0004】
ここで、塗装工程のサイクルタイムが短く(乾燥時間が短く)塗料が充分に乾燥していなかったり、或いは一回の塗装量そのものが多かったりして一度に厚く塗料が堆積させられて充分に乾燥(硬化)していない場合、未硬化のベタつきの残った状態の塗料が治具に付着していることになる。従ってこのような治具上に被塗装物を載置すれば、未硬化の塗料が被塗装物の底面に付着する。通常、被塗装物において治具に接する面は塗装してはならない面であるから、上記の如く、被塗装物の底面に塗料が付着することは好ましくない。またこのようにして付着した塗料は、塗装すべくして塗装されたものではないので付着していない部分も存在しまた厚みも不均一でしかも塗料の物性自体にも変性をきたしている可能性があって、被塗装物の外観だけでなく塗膜(付着膜)の物性にも問題であるから、かかる問題を未然に防止するため、これら堆積した塗料等の有機物を、堆積量があまり多くならないうちに定期的に剥離していた。
【0005】
治具等に付着した塗料等の有機被覆物を剥離する方法としては、従来、有機被覆物を有する治具等をシンナー等の有機溶剤に浸漬しておき有機被覆物を溶解剥離させる等の化学的方法や、有機被覆物を有する治具等をショットブラスト加工する、或いは有機被覆物を有する治具等をそのまま燃焼炉等に入れて有機被覆物を燃焼させる等の物理的方法等が用いられていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シンナー等の有機溶剤に漬けおく方法は、有機被覆物が溶解剥離するまでに相当な長時間を要するので効率が悪い。また有機溶剤はそれが発生する蒸気を吸引することによって人体に悪影響を及ぼしたり、また引火性のものが多く安全上好ましくない。このような危険を回避するためには、防曝設備や密閉設備が必要となって設備費の高騰を招くという問題がある。
【0007】
また、ショットブラスト加工を用いた場合は、有機被覆物を完全に剥離することが困難な場合がある。即ち、有機被覆物の膜が非常に薄いと完全に剥離させることができる場合もあるが、該膜が厚い場合は有機被覆物を完全に剥離させることは極めて困難であり、全く不可能かあるいは相当な長時間を要することとなる。これは、該膜の弾性が作用してショットブラスト加工におけるショット(研掃材:通常は鋼製の粒状体)の衝撃が充分に作用しないためと思われる。
【0008】
また、有機被覆物を燃焼させる方法は、有機被覆物を燃焼させる際に、通常、有毒ガスが発生するため、環境破壊に繋がるという問題がある。
【0009】
尚、前記有機溶剤以外の無機系や有機系の、有機被覆物を酸化分解させることのできる薬液等を用いて分解剥離することも考えられるが、このような薬液(薬剤)は、通常、金属製である治具そのものまで侵してしまうので、一般的には使用不可能である。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、上記従来技術の欠点を解消し、公害等の問題を発生することなく、また人体に悪影響を及ぼすことなく、有機被覆物を完全にしかも迅速に剥離することができて、有機被覆物に被覆されている芯材の再利用を経済的に図ることができる有機被覆物の剥離方法及びそれに用いる装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)有機被覆物を有する材料を密閉容器に収容した後、該密閉容器を加熱して内部の材料における有機被覆物を不完全燃焼させることによって炭化させ(但し、不活性ガスを密閉容器内に導入して加熱し有機被覆物を不完全燃焼させることを除く。)、次いで前記材料をショットブラスト加工して前記炭化した有機被覆物を前記材料の芯材から剥離することを特徴とする有機被覆物の剥離方法、(2)有機被覆物を有する材料を密閉容器内に収納して加熱し、該材料の有機被覆物を不完全燃焼させることによって炭化させるための炭化炉(但し、炭化炉自体が被処理物を酸素の非接触下或いは微量接触下で高温で処理して非処理物における有機被覆物を不完全燃焼させることのできるものを除く。)と、該炭化炉によって炭化させられた有機被覆物をショットブラスト加工によって上記材料の芯材から剥離するショットブラスト装置と、前記材料を少なくとも前記炭化炉から前記ショットブラスト装置へ移送するための移送機構とを備えてなることを特徴とする有機被覆物の剥離装置を要旨とする。
【0012】
本発明でいう有機被覆物とは、塗装用塗料、ゴム(硬化状態のものでも未硬化のものでもよい)、プラスチック等の、炭化させることができるものをいう。具体的には、酸素の非存在下又は微量存在下で不完全燃焼させることによって炭化するものをいう。更に詳しくは、有機被覆物を有する材料における芯材が溶融或いは分解等によって破壊しない温度で、酸素の非存在下又は微量存在下で不完全燃焼させた時、炭化するものをいう。
【0013】
また本発明でいう、有機被覆物を有する材料(以下、被処理物という)とは、前記有機被覆物によって芯材の表面が被覆された材料をいい、該芯材としては、塗装用治具、被覆電線における銅製等の芯線等が挙げられ、前記有機被覆物を炭化した時にその際の温度で溶融したり分解したりしないような、例えば磁器、陶器、金属等の材質でできているものをいう。尚、その他有機溶剤や有機、無機の薬品等によって破損するか否かについては、本発明においては問題としない。
【0014】
上記塗装用治具としては、具体的には例えば、前記したような金属製の網目状の板状の如きものが挙げられるが、本発明においては芯材の形態としては何ら制約を受けるものではない。
【0015】
有機被覆物の炭化に当たっては、有機被覆物を有する材料(被処理物)、即ち例えば、塗料の付着した塗装用治具等を、例えば炭化炉に入れて該炭化炉内で酸素の非存在下、又は微量存在下で不完全燃焼させることによって炭化させる。酸素非存在下、又は微量存在下とは、被処理物が酸素に接触しないか或いは接触してもその量が限られた少量であるような状態をいい、ここでいう少量とは、被処理物における有機被覆物を完全燃焼させるに充分な量に満たない量をいう。尚、以後は、酸素非存在下、又は微量存在下を、酸素非接触下、又は微量接触下ということもある。
【0016】
ここで、上記炭化炉とは、その中で被処理物における有機被覆物を炭化させるための装置をいうものであって、該装置内部で有機被覆物が炭化されるという処理が行なわれれば良く、該装置としては、単に有機被覆物を燃焼させるに充分な高温で被処理物を処理することのできる機能を有するだけのものが挙げられる。
【0018】
上記炭化炉としては、焼却炉等の従来公知の燃焼炉等が挙げられる。上記炭化炉を用いる場合、有機被覆物を不完全燃焼させるためには、具体的には例えば、被処理物を密閉容器中に収容し、該密閉容器を炭化炉内で、通常、300〜500℃の高温に加熱し、内部の被処理物における有機被覆物を炭化させる。尚、加熱温度としては必ずしも上記温度に限られない。
【0019】
密閉容器は、上記有機被覆物炭化時の温度で溶融や燃焼等によって破損しないものであれば如何なるものであってもよい。密閉容器内の酸素は、炭化時までに予め抜気しておく必要はないが、任意の手段で抜気しておいてもよい。
【0020】
密閉容器内の酸素を炭化時までに予め抜気しておかない場合、有機被覆物が炭化する際、その表面には密閉容器内に残存する分の酸素を消費するに相当する厚みの酸化皮膜が形成されるが、密閉容器の容積がかなり大きく相当量の残存酸素が存在していても、この量は限られた量であって有機被覆物を完全燃焼させるに充分な量に比べると少量であるから、上記酸化皮膜が、後のショットブラスト加工によって破壊され得ないほどに厚く形成されるようなことはない。それは、容器が密閉されており外部から新しい酸素が供給されないからである。
【0021】
密閉容器内の酸素を炭化時までに予め抜気しておかない場合は、密閉容器としてはその容積が被処理物の体積に近い大きさのものを用いるのが好ましい。このような密閉容器を用いると、密閉容器内の酸素残存量を少なくでき、その結果、被処理物の炭化に当たって被処理物の表面に形成される酸化皮膜をより薄くできるので、後のショットブラスト加工によって、表面に酸化被膜を有する炭化した有機被覆物でも容易に破壊することができる。
【0022】
被処理物における有機被覆物を炭化した後、被処理物をショットブラスト加工し、炭化した有機被覆物を研掃、除去して芯材を得る。ショットブラスト加工を行なうに当たっては、通常、従来公知のショットブラスト装置のチャンバー内に上記被処理物を入れ、該装置を稼働させて研掃加工を行なう。これによって炭化した有機被覆物だけが破壊されて芯材から剥離、除去される。尚、炭化処理の後であってショットブラスト加工の前に、手作業を介在させて移送するのに支障のない温度となるように被処理物を冷却してもよい。こうすると被処理物の移送に手作業を介在させることもできる。上記冷却は自然冷却でも或いは送風機や熱交換器等の冷却装置等を用いた強制冷却でもよい。
【0023】
炭化した有機被覆物は脆くなっているため、ショット(研掃材)の当たる投射強度は強くなくても容易に破壊される。そのため、比較的硬度の小さいZn製ショット(亜鉛製研掃材)を用いることができる。Zn製ショットを用いると、被処理物の下地である芯材を傷付けることがないので好ましい。また、ショットの発射速度を遅くすることができるので、装置の稼働に当たって低エネルギーで済み従って電力費等のランニングコストを低減できる。
【0024】
本発明を実施するに当たっては、前記した如く、従来公知の燃焼炉等からなる炭化炉、及びショットブラスト装置を用いることができるが、後述の専用装置を用いると、炭化炉からショットブラスト装置への被処理物の移送の手間が不要となり、且つ特定サイクルでの連続処理を可能とすることができて、有機被覆物の剥離の処理効率を向上できる利点がある。
【0025】
次に、本発明の有機被覆物の剥離装置について図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の有機被覆物の剥離装置の一例を示す平面概念図であり、図中1は本発明装置、2は炭化炉、3はショットブラスト装置、4は移送機構である。
【0026】
本発明装置は1は、有機被覆物を有する材料(被処理物)をその中で酸素非接触下、又は微量接触下で高温で処理して、該被処理物における有機被覆物を炭化させるための炭化炉2と、該炭化炉2によって処理された被処理物をショットブラスト加工して該被処理物における炭化した有機被覆物を芯材から剥離するショットブラスト装置3と、少なくとも前記炭化炉2内からショットブラスト装置3内へ被処理物を移送することができる移送機構4とを備えている。
【0027】
炭化炉2は、その中で被処理物における有機被覆物を炭化させるための装置をいうものであって、該装置内部で有機被覆物が炭化されるという処理が行なわれれば良く、該装置としては、その中で被処理物における有機被覆物、即ち硬化或いは未硬化状態の塗料の付着した塗装用治具や、被覆電線等の、有機被覆物を有する材料における有機被覆物の炭化が行なわれるものであればよい。炭化炉2としては少なくとも被処理材を高温で処理して被処理材における有機被覆物を燃焼させることのできる機能を有するものであればよく、高温状態を作る熱源は電気、ガス、軽油、重油、バーナー等如何なる熱源でもよい。上記高温とは通常、300〜500℃であるが、これに限られるものではない。
【0029】
また炭化炉2として、それ自体は単に有機被覆物を燃焼させることのできる機能しか有さず、炭化させることができない、即ち有機被覆物が燃焼するに充分な高温に被処理物を加熱することはできるが処理中に外部からの酸素の供給を遮断する機能を有しないものとしては、例えば焼却炉等の従来公知の燃焼炉等が挙げられる。
【0030】
被処理物を酸素非接触下、又は微量接触下で処理して有機被覆物を不完全燃焼させるために、被処理物は密閉容器内に収容されてその状態で炭化炉2内で高温で処理される。
【0031】
上記密閉容器としては、前記したように、上記炭化炉2内の温度で溶融、分解等して破損しないものであれば如何なる材質からなるものが用いられてもよい。またその大きさとしては内容積が被処理物の体積に近いものほど好ましく、被処理物を収容した状態の密閉容器において、該密閉容器内の残存酸素量が少ないので、被処理物における有機被覆物表面に形成される酸化被膜を薄くできるので、後のショットブラスト加工において該被膜を破壊し易い。
【0032】
ショットブラスト装置3としては、従来公知のものを用いることができる。勿論、被処理物のショットの投射方向に対する向きを任意の特定の向きに固定できる機構を備えたものや、或いはショットブラスト加工中、被処理物を任意の特定スピードで連続的或いは断続的に回転させたり平行移動させたり揺動させたりして被処理物のショットの投射方向に対する向きを所定のサイクルパターンに則って自動的に変更するような機構を備えたものや、また或いはそれ自体が被処理物を装置入口から内部を通して装置出口へ連続的に移送するような移送機構を備えたもの等、種々の機能を備えたものも本発明におけるショットブラスト装置3として用いることができる。
【0033】
移送機構4は、少なくとも前記炭化炉2内からショットブラスト装置3内へ被処理物を移送することができるものであればよい。図1に示す実施例では、該移送機構4としては、炭化炉2内を通り、ショットブラスト装置3内を通らず炭化炉2の入口側へ戻ってループ状をなすエンドレスに繋がれたローラー式又はチェーン式等のコンベヤー41と、該コンベヤー41における炭化炉2の出口側部位5を始点としてショットブラスト装置3のチャンバー内を通過して開放端6に至るローラー式又はチェーン式等のコンベヤー42とから構成されている。勿論、移送機構4としては炭化炉2内を通過しているものであるため、炭化炉2内の温度で溶融したり分解したり或いは変形したりしてその機能を損なうようなことのない材質で構成されるが、従来公知の鉄等を用いた金属製のもので充分である。
【0034】
上記コンベヤー41、42は単にそれに載置される密閉容器に収容された被処理物を手動で押して移送できるように構成されているものであってもよいし、また或いは任意の駆動装置に必要に応じて動力伝達機構を介在して連結されて、例えば予め任意に設定された所定のサイクルに従って駆動、停止を繰り返し行なわせるプログラムパターンに従って自動で稼働して密閉容器に収容された被処理物を移送できるように構成されたものであってもよい。
【0035】
上記において、移送機構4が被処理物を自動的に移送できるように構成されている場合について、移送のプロセスの一例を図1を用いて以下に説明する。コンベヤー41は、被処理物を収容した密閉容器を炭化炉2内に移送し、該炭化炉2内に被処理物を収容した密閉容器が入った状態において所定時間停止し、その後再び稼働して密閉容器を炭化炉2外へ移送する。尚、炭化炉2の入口側及び出口側にはそれぞれ密閉扉21及び22が設けられており、炭化炉2内で炭化処理が行なわれる時には該密閉扉21、22が閉鎖されることによって炭化炉2内は外部とは空間的にできるだけ完全に隔絶されるようになっている。炭化炉2内には2つ以上の密閉容器に収容された被処理物が入れられるようになっていてもよい。
【0036】
その後密閉容器は通常、所定時間コンベヤー41上を移送されながらその間に冷却され、次いで被処理物は密閉容器から出されコンベヤー42へ移される。尚、冷却は特に必須ではなく、また冷却を行なう場合は冷却装置等を用いた強制冷却でも自然冷却でもいずれでもよいが、通常、室温程度にまで冷却するのが好ましい。冷却されると次に密閉容器内に新しい被処理物を収容する際、これを人手によって行なう場合に支障がない。また、コンベヤー41上の上記以外の部位に冷却装置を設けて専ら密閉容器を冷却するようにしてもよい。尚、被処理物をショットブラスト加工するに当たっては冷却されていなくとも何ら支障はない。また被処理物のコンベヤー42への移動は人手によっても或いはロボット等を用いて自動で行なってもよい。
【0037】
被処理物が取り出された後の空の密閉容器はコンベヤー41上をそのまま移送され、再び炭化炉2の入口付近へ戻ってきて、次に処理される新しい被処理物がその中に収容される。炭化炉2の入口付近においては、新しい被処理物が収容された密閉容器は、電磁クラッチ方式等を用いたストッパー7によって、炭化炉2の内部が空き状態になるまで所定時間待機させられる。
【0038】
一方、コンベヤー42に載せられた被処理物はショットブラスト装置3のチャンバー内に移送され、そこで移動させられながら、或いは停止させられて、ショットブラスト加工され、被処理物における炭化した有機被覆物が芯材から剥離させられる。ショットブラスト加工が終了した被処理物は有機被覆物が剥離させられた後の芯材の状態となってショットブラスト装置3のチャンバー出口側から外へ移送させられ、上記芯材が得られる。このショットブラスト装置3内にも2つ以上の被処理物乃至は被処理物を収容した密閉容器を入れられるようになっていてもよい。
【0039】
ショットブラスト装置3には、被処理物の搬送機構が設けられているものがある。即ち概念図として図2に示すように、入口側31から出口側32に向かって搬送機構8によって被処理物を搬送しつつ、ショットブラスト加工を行なうように構成されているものがある。このようなショットブラスト装置をそのまま用い、これに上記態様からなる移送機構4を組み合わせて本発明の構成とする場合は、同図に示すように、前記コンベヤー42は、一端を始点5として他端が前記搬送機構8におけるショットブラスト装置3の入口側端部81に隣接されられたコンベヤー421と、一端が前記搬送機構8におけるショットブラスト装置3の出口側端部82に隣接させられたコンベヤー422とで構成される。尚、本発明においては移送機構4としては、被処理物を少なくとも炭化炉2とショットブラスト装置3の間を移送できればよいので、上記コンベヤー421のみで構成されていてもよい。
【0040】
また上記の如きショットブラスト装置をそのまま本発明に適用することをせず、搬送機構8に相当する部分を撤去して前記コンベヤー42を新たに設置するか、又は搬送機構8に相当する部分を改造することにより、ショットブラスト装置部分の移送機構としては前記図1に基づいて説明したようなコンベヤー42から構成してもよい。
【0041】
また、ショットブラスト装置3として、上記の如き、被処理物の搬送機構8を備えていないもの、即ち、被処理物を入口側から出口側に移送しないタイプのショットブラスト装置であるもののうち、例えばショットブラスト装置3内の所定位置に位置固定され且つ姿勢も固定された被処理物載置台に被処理物を載置してショットブラスト加工を行なうタイプのもの等を本発明に適用する場合、被処理物載置台を撤去して前記コンベヤー42を新たに設置するか、又は被処理物載置台に相当する部分を改造することにより、ショットブラスト装置部分の移送機構としては前記図1に基づいて説明したようなコンベヤー42から構成し、必要に応じて被処理物をショットブラスト装置3のチャンバー内に停止させるようにすればよい。
【0042】
移送機構4が手動式である場合は被処理物を必要な時に上記チャンバー内に押込み、また必要な時に被処理物をチャンバー外へ押し出す(又は引き出す)だけでよい。また移送機構4が自動式である場合は、被処理物を収容した密閉容器がチャンバー内の所定位置に到達した時にそれを感知するセンサーと、センサーからの信号を受けてコンベヤー42を停止させ、且つ所定時間チャンバー内でショットブラスト加工が行なわれるようにし、必要時間の処理が終了したら再びコンベヤーを駆動させるような、任意の特定サイクルで駆動、停止を繰り返すパターンに応じたプログラムに従って駆動するように構成しておけばよい。その他稼働に支障が生じる場合を考慮してそれに対応できるような機能を持たせておくこともできる。
【0043】
また、ショットブラスト装置3として、前記の如き、被処理物の搬送機構8を備えていないもののうち、例えばショットブラスト装置3内の所定位置に位置固定はされているが、例えば載置台が回転したり、揺動したりして、その上に載置された被処理物の姿勢を変えることができるように構成されているものを本発明に適用する場合は、移送機構4としては図2に示すように構成してもよいが、後述するように、軌道と、該軌道に沿って移動する運搬用具等とから構成されているのが好ましい。
【0044】
上記した移送機構4の構成の一例について説明すると、例えば平面概略図として図3に示すように、炭化炉2内とショットブラスト装置3内を通過し、且つエンドレスに構成された軌道9と、該軌道9の上を該軌道に沿って移動できる運搬台車10から構成されたものである。
【0045】
軌道9は炭化炉2の入口側を始点として炭化炉2内を通過し、そのままショットブラスト装置3のチャンバー内を通過して、炭化炉2の入口の上記始点に戻るエンドレスのループ状に構成されている。軌道9は1本で構成されていてもよいしまたは互いに平行な2本以上からなるものでもよい。また運搬台車10は上記軌道9上を手動、或いは自動で移動でき、炭化炉2及びショットブラスト装置3のチャンバー内に入る大きさであって且つ被処理物を収容できる容積を有するものであればよい。但し前記したように、炭化炉2内の温度で溶融したり分解したり或いは変形したりしない材質で構成されている必要がある。
【0046】
上記運搬台車10は単にそれに載置される密閉容器に収容された被処理物を手動で押して移送できるように構成されているものであってもよいし、また或いは任意の駆動装置に必要に応じて動力伝達機構を介在して連結されて、例えば予め任意に設定された所定のサイクルに従って駆動、停止を繰り返して行なわせるプログラムパターンに従って自走し密閉容器に収容された被処理物を移送できるように構成されたものであってもよい。尚、運搬台車10は図に示すように軌道上に2台以上設けられていてもよい。
【0047】
上記において、運搬台車10が被処理物を自動的に移送できるように構成されている場合としては、具体的には例えば、運搬台車10は自走して、被処理物を収容した密閉容器を炭化炉2内に移送し、該炭化炉2内に被処理物を収容した密閉容器が入った状態において所定時間停止し、その後再び自走して密閉容器を炭化炉2外へ移送する。尚、この場合も前記と同様、炭化炉2内で炭化処理が行なわれる時には密閉扉21、22が閉鎖される。勿論、炭化炉2内には2つ以上の被処理物を収容した密閉容器が同時に入れられるようになっていてもよい。
【0048】
その後、前記と同様にして密閉容器は運搬台車10で移送されながら通常、所定時間冷却される。次に、被処理物はショットブラスト装置3に入れられるが、ここにおいて被処理物は密閉容器内に収容されたままでよい。但し、密閉容器の蓋は取り外される。蓋の取り外しは人手によってもまた或いはロボット等を用いて自動で行なってもよい。尚、本発明においてはショットブラスト装置3内に入れられる際に被処理物が密閉容器から出されてそれ単独でショットブラスト装置内に入れられてもよいが、その場合は前記運搬台車10はショットブラスト装置3内へは入らないので、従って軌道9はショットブラスト装置3内を通過しないように構成される。
【0049】
ショットブラスト装置3内へ移送された、蓋を取り外された密閉容器内に収容されたままの被処理物は、そこで移動させられながら、或いは停止させられて、ショットブラスト加工され、被処理物における炭化した有機被覆物が芯材から剥離させられる。ショットブラスト加工が終了した被処理物は有機被覆物が剥離させられた後の芯材の状態となって蓋を取り外された密閉容器に収容されたままの状態でショットブラスト装置3のチャンバー出口側から外へ移送させられる。
【0050】
ショットブラスト装置3の外に移送させられてきた、芯材が収容された密閉容器から芯材が取り出され、密閉容器は運搬台車10に載置されたまま再び炭化炉2の入口付近へ戻ってきて、次に処理される新しい被処理物がその中に収容される。炭化炉2の入口付近においては、新しい被処理物が収容された密閉容器を載置した運搬台車10は、電磁クラッチ方式等を用いたストッパー7によって、炭化炉2の内部が空き状態になるまで所定時間待機させられる。
【0051】
更に本発明の装置における移送機構4の別の例について説明する。移送機構4としてはまた、例えば図4に示すように、炭化炉2内とショットブラスト装置3内を通過し、且つエンドレスに構成された軌道9と、該軌道9に吊り下げられて軌道9に沿って移動できるチャッキング装置11から構成されたものであってもよい。
【0052】
軌道9は炭化炉2の入口側を始点として炭化炉2内を通過し、そのままショットブラスト装置3のチャンバー内を通過して、炭化炉2の入口の上記始点に戻るエンドレスのループ状に構成されている。軌道9は1本で構成されていてもよいしまたは互いに平行な2本以上からなるものでもよい。またチャッキング装置11は上記軌道9に吊り下げられて該軌道9に沿って手動、或いは自動で移動でき、炭化炉2及びショットブラスト装置3のチャンバー内に入る大きさであって且つ被処理物を収容できる容積を有するものであればよい。但し前記したように、炭化炉2内の温度で溶融したり分解したり或いは変形したりしない材質で構成されている必要がある。
【0053】
上記チャッキング装置11は単にそれに保持される密閉容器に収容された被処理物を手動で押して移送できるように構成されているものであってもよいし、また或いは任意の駆動装置に必要に応じてケーブル等の動力伝達機構を介在して連結されて、例えば予め任意に設定された所定のサイクルに従って駆動、停止を繰り返し行なわせるプログラムパターンに従って自走し密閉容器に収容された被処理物を移送できるように構成されたものであってもよい。またチャッキング(保持)及びアンチャッキング(解放)の機構としては、チャッキング装置それ自体がロボットで構成されたような機械式でも、或いはエアー圧を用いたものでもまた或いは油圧を用いたものでもよく、いずれの場合も手動式でも或いは自動式でもよい。
【0054】
尚、チャッキング装置11は、軌道9に2つ以上吊り下げられていてもよく、また図4に示すように、例えば一本のケーブルに固着される等して所定の均等間隔を隔てて軌道9の長さ一杯に複数個設けられていてもよい。この場合、個々のチャッキング装置はそれ単独で軌道9上を動くのではなく、全チャッキング装置を繋ぐケーブルが動かされることにより全チャッキング装置が一斉に所定間隔を保ったまま軌道上を動くことになる。従って、炭化炉2内で処理できる被処理物の個数と、ショットブラスト装置3内で処理できる被処理物の個数とを同じ個数にしておくと処理時間の無駄がなくなり効率の良い処理が可能となる。
【0055】
上記において、チャッキング装置11が被処理物を自動的に移送できるように構成されている場合としては、具体的には例えば、チャッキング装置11は自走して、被処理物を収容した密閉容器を炭化炉2内に移送し、該炭化炉2内に被処理物を収容した密閉容器が入った状態において所定時間停止し、その後再び自走して密閉容器を炭化炉2外へ移送する。尚、この場合も前記と同様、炭化炉2内で炭化処理が行なわれる時には密閉扉21、22が閉鎖される。
【0056】
その後、前記と同様にして密閉容器はチャッキング装置11に保持されたままで移送されながら通常、所定時間冷却される。次に、被処理物はショットブラスト装置3に入れられるが、ここにおいて被処理物は密閉容器内に収容されたままでよい。但し、密閉容器の蓋は取り外される。蓋の取り外しは人手によってもまた或いはロボット等を用いて自動で行なってもよい。尚、本発明においてはショットブラスト装置3内に入れられる際に被処理物が密閉容器から出されてそれ単独でショットブラスト装置内に入れられてもよいが、その場合は前記チャッキング装置11はショットブラスト装置3内へは入らないので、従って軌道9はショットブラスト装置3内を通過しないように構成される。
【0057】
ショットブラスト装置3内へ移送された、蓋を取り外された密閉容器内に収容されたままの被処理物は、そこで移動させられながら、或いは停止させられて、ショットブラスト加工され、被処理物における炭化した有機被覆物が芯材から剥離させられる。ショットブラスト加工が終了した被処理物は有機被覆物が剥離させられた後の芯材の状態となって蓋を取り外された密閉容器に収容されたままの状態でショットブラスト装置3のチャンバー出口側から外へ移送させられる。
【0058】
ショットブラスト装置3の外に移送させられてきた、芯材が収容された密閉容器から芯材が取り出され、密閉容器はチャッキング装置11に保持されたまま再び炭化炉2の入口付近へ戻ってきて、次に処理される新しい被処理物がその中に収容される。炭化炉2の入口付近においては、新しい被処理物が収容された密閉容器を保持したチャッキング装置11は、電磁クラッチ方式等を用いたストッパー7によって、炭化炉2の内部が空き状態になるまで所定時間待機させられる。
【0059】
本発明において、移送機構として上記2者の様式の移送機構、即ち軌道と該軌道に沿って移動可能な運搬用具とから構成される移送機構が用いられる場合も、前記したいずれの様式のショットブラスト装置でも本発明に適用できる。即ち、前記図2に基づく説明(を含む)から、図3に基づく説明(を含む)までの説明において、コンベヤー421を軌道91及び運搬台車101(又はチャッキング装置111)と読替え、コンベヤー422を軌道92及び運搬台車102(又はチャッキング装置112)と読替えることによってこれらの説明と同様に説明される。
【0060】
特に、ショットブラスト装置3として、ショットブラスト装置3内の所定位置に位置固定はされているが、例えば載置台が回転したり、揺動したりして、その上に載置された被処理物の姿勢を変えることができるように構成されているものを本発明に適用する場合は、図4に基づいて説明したように、移送機構としては、軌道と、該軌道に吊り下げられて軌道に沿って移動可能なチャッキング装置とから構成される移送機構を採用するのが好ましい。この時、チャッキング装置としてはチャッキングされた密閉容器の姿勢を任意に変えられるよう、例えばチャッキング装置のいずれかの部位が回転、或いは屈折等自在に構成され、この回転或いは屈折等の動作は、従来の、被研掃物の姿勢を任意に変えられるように構成されたショットブラスト装置における載置台もしくはチャッキング装置の動作パターンと同様に行なわれ、通常、所定の動作パターンに則って機械的に行なわれる。
【0061】
具体的には、例えば図5に示すように、ショットブラスト装置3として、上記した如き、被処理物の姿勢を変えることができるように、回転したり、揺動したりできるように構成された載置台もしくはチャッキング装置を備えた従来のショットブラスト装置から、該載置台もしくはチャッキング装置の部分を撤去したものを採用し、このショットブラスト装置3のチャンバー内を通過するように軌道9を設置し、該軌道に沿って移動可能であって且つそれにチャッキングされた密閉容器の姿勢を任意に変えられるように構成されたチャッキング装置11を軌道9に吊り下げて構成することができる。
【0062】
移送機構がこのように構成されていれば、被処理物を炭化炉の手前でチャッキングすればあとは有機被覆物の剥離処理が終わった被処理物がショットブラスト装置から出てきた後にこれをアンチャッキングするまでの間、被処理物を別の載置台や運搬台車や移送機構上に載せ変える必要がなく従ってチャッキングやアンチャッキング等が不要となる等、操作を簡素化できる利点がある。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の有機被覆物の剥離方法は、有機被覆物を有する材料を密閉容器内に収容した後、容器を加熱して内部の材料における有機被覆物を不完全燃焼させることによって炭化させた後、ショットブラスト加工するものであるので、公害等を発生する虞れなく安全であってしかも簡単且つ確実に、上記材料の芯材から有機被覆物を剥離することができ、従って治具や被覆電線における芯線等の再利用を安全、容易に図ることができる効果を奏する。従って上記の如き治具等を用いる産業分野においては経済的に有利となり、また資源の無駄をなくすことができるという効果を奏する。
【0064】
また、本発明方法は有機被覆物を有する材料を密閉容器に収容して容器を加熱し、容器内の材料における有機被覆物の炭化を行なうようにしたため、有機被覆物を不完全燃焼させることによって炭化させるための炭化炉として従来の燃焼炉を用いることができるので設備費もかからず簡便に実施できるという利点がある。
【0065】
また、本発明の有機被覆物の剥離装置は、有機被覆物を有する材料を密閉容器内に収納して加熱し、該材料の該有機被覆物を不完全燃焼させることによって炭化させるための炭化炉と、該炭化炉によって炭化させられた有機被覆物をショットブラスト加工によって上記材料の芯材から剥離するショットブラスト装置と、前記材料を少なくとも前記炭化炉から前記ショットブラスト装置へ移送するための移送機構とを備えてなるものであるので、本発明装置を用いれば、有機被覆物を有する材料である被処理物を炭化炉内で処理して有機被覆物を炭化させ、次いで該被処理物をショットブラスト加工して炭化した有機被覆物を剥離する処理が連続的に行なえるので、有機被覆物を有する材料から不要の有機被覆物が剥離された芯材を連続的に容易に得ることができ、従って塗装用の治具や被覆電線における芯線の再利用を経済的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の一例を示す平面概念図である。
【図2】本発明装置における移送機構の一例について説明するための概念図である。
【図3】移送機構の別の例について説明するための概念図である。
【図4】移送機構の更に別の例について説明するための概念図である。
【図5】図4の移送機構をショットブラスト装置の搬送機構として適用する場合の例について説明するための概念図である。
【符号の説明】
1 有機被覆物の剥離装置
2 炭化炉
3 ショットブラスト装置
4 移送機構
41,42 コンベヤー
8 搬送機構
9 軌道
10 運搬台車
11 チャッキング装置

Claims (2)

  1. 有機被覆物を有する材料を密閉容器に収容した後、該密閉容器を加熱して内部の材料における有機被覆物を不完全燃焼させることによって炭化させ(但し、不活性ガスを密閉容器内に導入して加熱し有機被覆物を不完全燃焼させることを除く。)、次いで前記材料をショットブラスト加工して前記炭化した有機被覆物を前記材料の芯材から剥離することを特徴とする有機被覆物の剥離方法。
  2. 有機被覆物を有する材料を密閉容器内に収納して加熱し、該材料の有機被覆物を不完全燃焼させることによって炭化させるための炭化炉(但し、炭化炉自体が被処理物を酸素の非接触下或いは微量接触下で高温で処理して非処理物における有機被覆物を不完全燃焼させることのできるものを除く。)と、該炭化炉によって炭化させられた有機被覆物をショットブラスト加工によって上記材料の芯材から剥離するショットブラスト装置と、前記材料を少なくとも前記炭化炉から前記ショットブラスト装置へ移送するための移送機構とを備えてなることを特徴とする有機被覆物の剥離装置。
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