JP3668120B2 - 試料油特性測定装置および試料油特性測定方法 - Google Patents
試料油特性測定装置および試料油特性測定方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑油などの試料油の特性(特に、粘度などに関連した特性)を測定して評価解析するための試料油特性測定装置および試料油特性測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
潤滑油などの試料油の重要な特性として、粘度や粘度特性(粘度の温度依存性)があるが、これらの値は毛細管粘度計で測定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この毛細管粘度計は、測定時の剪断速度が100/sec程度であり、実使用条件である約106/sec に比べて著しく低く、実使用状態の特性値を示すものとは限らない。また、実使用状態では、粘度特性は、被潤滑物体の固体表面と潤滑油とが接する界面近傍の剪断場における潤滑油構造(油分子の配列構造および、基油と添加剤との混合状態)に強く依存するが、これまで前記界面近傍における潤滑油の構造を動的に解析する方法がなかった。
【0004】
そこで本発明は、高い剪断速度における試料油の特性を測定することができる試料油特性測定装置および試料油特性測定方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明が採用した課題解決手段は、
試料油膜が表面に形成されこの表面に形成された試料油膜を搬送する搬送手段と、搬送手段の表面に対して間隔を有するとともに前記試料油膜に接すべく配置されるプリズムと、このプリズムに光線を入射する発光装置およびプリズムから反射された光線を受光する受光装置を具備するエリプソメータとを備えたことを特徴とする試料油特性測定装置であり、
試料油を溜めた試料油溜に一部が浸漬されるとともに外周面に試料油膜を形成すべく回転駆動されるローターと、このローターの外周面に対して間隔を有するとともにこのローターの外周面の試料油膜に接すべく配置されるプリズムと、このプリズムに光線を入射する発光装置およびプリズムから反射された光線を受光する受光装置を具備するエリプソメータとを備えたことを特徴とする試料油特性測定装置であり、
試料油が潤滑油であることを特徴とする試料油特性測定装置であり、
発光装置からプリズムへの入射角が変更可能であることを特徴とする試料油特性測定装置であり、
搬送装置の表面に対して間隔を有してプリズムを配置し、このプリズムと搬送装置の表面との間の隙間に試料油膜を前記プリズムおよび前記搬送装置の表面とに接する状態で形成するとともに、前記搬送装置の表面を移動させることにより前記試料油膜を搬送し、エリプソメータの発光装置から前記プリズムに光線を入射するとともに、プリズムから反射された光線をエリプソメータの受光装置で受光して、試料油の特性を測定していることを特徴とする試料油特性測定方法であり、
試料油を溜めた試料油溜に一部が浸漬されたローターの外周面に対して間隔を有してプリズムを配置し、ローターを回転させて、このローターの外周面と前記プリズムとの間の隙間に試料油膜を前記プリズムおよび前記ローターの外周面とに接する状態で形成し、エリプソメータの発光装置から前記プリズムに光線を入射するとともに、プリズムから反射された光線をエリプソメータの受光装置で受光して、試料油の特性を測定していることを特徴とする試料油特性測定方法であり、
試料油が潤滑油であることを特徴とする試料油特性測定方法であり、
潤滑油に添加する添加剤の量または種類を異ならしめて複数の潤滑油の特性を測定していることを特徴とする試料油特性測定方法であり、
発光装置からプリズムへの入射角を変更して、試料油の特性を測定していることを特徴とする試料油特性測定方法である。
【0006】
【実施の形態】
次に、本発明における試料油特性測定装置および試料油特性測定方法の実施の一形態を図1ないし図7を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態の試料油特性測定装置の概略図である。図2はローターおよびプリズムの説明図で、(a)が斜視図、(b)が(a)の要部平面図である。図3はプリズムおよび試料油膜の説明図である。図4は入射角と潜り込み深さとの関係を示すグラフである。図5は液晶および基油のタイムチャートで、(a)が液晶のタイムチャート、(b)が基油のタイムチャートである。図6は各種剪断速度wにおけるPAO40のタイムチャートである。図7は添加剤が添加された場合における基油のタイムチャートである。
【0007】
偏平な円柱状のローター1の軸には、回転駆動手段としてのモータ2が連結されており、ローター1は、その軸を中心としてモータ2で回転駆動される。ローター1は一部が図示しない試料油溜に浸漬される。この試料油溜には、潤滑油や液晶などの試料油が溜められており、ローター1が回転すると、ローター1の外周面に試料油膜3が形成される。このローター1の外周面に対して間隔hを有してプリズム6が配置されている。この全反射型のプリズム6は三角柱または台形柱であり、光線11が入射される入射面7、光線11が反射される反射面8および反射された光線11が出射される出射面9を有している。入射面7と反射面8とのなす角度α1は、出射面9と反射面8とのなす角度α2と略同じである。入射光線11は入射面7に対して略直角に入射しており、入射光線11とプリズム6の中心線12とのなす角度φ(以下、「入射角φ」と呼ぶ)は、角度α1および角度α2と略同じである。なお、プリズム6の中心線12は反射面8に対して直角である。
【0008】
エリプソメータ21は市販されており、発光装置22および受光装置23を具備している。発光装置22はHe−Ne(ヘリウム−ネオン)レーザーで構成され、発光装置22からレーザー光線11がプリズム6に向かって照射される。この光線11がプリズム6の入射面7に入射され、反射面8および試料油膜3で反射されて、この反射光線11が出射面9から出射される。そして、反射光線11が受光装置23で受光される。ところで、試料表面(試料油表面)でのp成分(反射面8に平行に振動する成分)および、s成分(反射面8に垂直に振動する成分)の各振幅反射率をγp,γsで、また、p成分およびs成分の各位相のとびをδp,δsで表現している。この時、tanΨ(=γp/γs)は試料表面のp成分とs成分との振幅反射比を、また、Δ(=δp−δs)はp成分とs成分との位相差を表しており、このΔおよびΨが偏向解析パラメータと呼ばれており、反射光線11の偏向の状態を示している。エリプソメータ21には、図示しないマイコンなどの演算装置が設けられており、この演算装置が発光装置22および受光装置23からのデータに基づいて、前述の偏向解析パラメータΔおよびΨを算出して出力する。
【0009】
この様に構成されている試料油特性測定装置で、潤滑油や液晶などの試料油の特性を測定する。測定した試料油の代表例の名称および物性値を〔表1〕に示す。測定した液晶は、4−ペンチル−4′−シアノビフェニル(略称5CB)であり、また、測定した基油は、ポリαオレフィンの2種(PAO10,PAO40)、およびポリブテンの2種(PB10,PB30)である。
【0010】
【表1】
【0011】
試料油の特性を測定する際には、試料油溜に測定する潤滑油や液晶などの試料油を溜める。ローター1の外周面とプリズム6との隙間hが、計測する試料油膜3の厚みh(以下、「油膜厚さh」と呼ぶ)となるので、ローター1とプリズム6との間隔を、たとえば、約10〜500μmに調整する。そして、モータ2を稼働してローター1を回転させる。その際のローター1の外周面の速度vは、たとえば、約0.06〜12.2m/sである。このローター1の回転により、ローター1の外周面には、潤滑油膜や液晶膜などの試料油膜3が形成される。この試料油膜3は、ローター1の外周面およびプリズム6の反射面8に接触し、その剪断速度w(=v/h)は約1.2×102 〜1.2×106 /sである。試験温度は適宜選択可能であるが、23±3℃で行った。また、エリプソメータ21の発光装置22から光線11をプリズム6に照射し、その反射光線11を受光装置23で受光する。そして、エリプソメータ21は、偏向解析パラメータΔおよびΨのデータを出力する。
【0012】
光線11の潜り込み深さdは数十〜数百nmであるが、図4に図示するように、試料油の屈折率nや入射角φに依存する。屈折率nが小さい程、潜り込み深さdは小さくなる。また、入射角φが大きい程、潜り込み深さdが小さくなる。なお、入射角φを変更する際には、それに対応したプリズム6(すなわち、前記角度α1および角度α2が略入射角φであるプリズム6)に交換するとともに、発光装置22や受光装置23の配置位置を変更する。この様にして潜り込み深さdを変更することにより、分析する深さを変更することができる。また、エリプソメータ21から偏向解析パラメータΔおよびΨが得られるが、偏向解析パラメータΔを用いて試料油の剪断の状態の動的挙動を解析した。
【0013】
図5(a)に、ローター1の外周面の速度vが0.8〜0.9m/sで、油膜厚さhが10μmの状態における液晶(5CB)の偏向解析パラメータΔの経時的変化が示されている。液晶における偏向解析パラメータΔは、剪断に対して矩形的な応答を示した。この偏向解析パラメータΔの低下は、液晶分子が剪断方向に配列したことを示している。
【0014】
また、図5(b)に、潤滑油の基油であるPB30およびPAO40の偏向解析パラメータΔの経時的変化が示されている。この場合には、ローター1の外周面の速度vが0.8〜0.9m/sで、油膜厚さhが100μmの状態で行われた。この図5(b)における偏向解析パラメータΔの変化は、基油の分子が剪断方向に配列したためと思われる。しかし、液晶の場合と異なり、偏向解析パラメータΔに緩和現象が見られる。この緩和現象は、剪断による温度上昇または圧力上昇の影響、特に温度上昇の影響を受けたためと考えられる。
【0015】
次に、剪断速度wの依存性を検討した。図6には、油膜厚さhが100μmである基油PAO40のタイムチャートが示されており、この図6において、剪断中において定常状態に達したΔeから剪断前のΔoを減じた定常変化量で比較すると、剪断速度wが増大するに伴って定常変化量が増加する。このことから偏向解析パラメータΔによって示される固液界面付近の構造変化は剪断速度wが上昇することによって大きくなると考えられる。また、グラフは添付していないが、分子構造が類似し動粘度の異なるPAO10とPAO40との比較、および、PB10とPB30との比較では、動粘度の高いPAO40およびPB30が、動粘度の低いPAO10およびPB10よりも定常変化量が大きいことが分かった。この様に、粘度が偏向解析パラメータΔの変化に関係しており、偏向解析パラメータΔの変化を検討することにより、剪断場における粘度を考察することができる。
また、偏向解析パラメータΔのピーク値Δmax(図6参照)と、剪断中において定常状態に達したΔeとの差は、試料油の種類により異なっており、試料油の分子構造に依存すると考えられる。そして、この差が大きいものは、粘度の温度依存性が高く、温度による粘度の変化が大きくなる。
【0016】
さらに、潤滑油の基油(PAO40)に添加剤(たとえば、オートマトランスミッションで使用されるPBSI)を添加した場合を検討した。試料油として、基油だけの場合と、基油に添加剤を10wt%加えた場合と、基油に添加剤を30wt%加えた場合との3個の場合において、上記試料油特性測定装置で試験を行った。試験結果は、図7に図示するように、添加剤の量が多い程、偏向解析パラメータΔの立ち上がりが大きくなる。この現象は、添加剤がプリズム6の表面に吸着し、潤滑特性を発揮しているためと考えられる。
【0017】
この様に、実施の形態の試料油特性測定装置を用いて、種々の試料油に対して各種条件で試験を行い、エリプソメータ21から偏向解析パラメータΔおよびΨを得て、試料油の特性を検証することができる。そして、ローター1の回転速度を大きくすることにより、試料油に加わる剪断速度wを簡単に大きくすることができる。また、入射角φを変更することにより、潜り込み深さdを変更して、固液界面付近の構造変化をより細かく検証することができる。
【0018】
前述の実施の形態では、偏向解析パラメータΔを用いて、試料油の特性を検証しているが、偏向解析パラメータΨを用いて検証することも可能である。また、試料油膜を搬送することができるならば、ローター1に代えて種々の搬送装置を採用することができ、たとえば、ベルトコンベア式にすることも可能である。さらに、エリプソメータ21は偏向解析パラメータΔおよびΨを出力しているが、偏向解析パラメータΔまたはΨの少なくとも何れか一方を出力することができれば良い。そして、試料油の温度を検出する試料油温度検出装置を設けることも可能である。また、試料油を加熱または冷却して温度調整する試料油温度調整装置を設けることも可能であり、たとえば、この試料油温度調整装置を試料油溜に設置することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内で種々の形態を実施することが可能である。
【0019】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明によれば、ローターなどの搬送装置とプリズムとの間に試料油膜が形成され、この試料油膜の特性をエリプソメータで測定するので、試料油の搬送速度を増大することにより、試料油膜に高い剪断速度を与えることができるとともに、試料油の動的挙動を解析することができる。また、エリプソメータの発光装置からプリズムへの光線の入射角を変更することにより、試料油膜を分析する分析深さを変更することができ、固液界面付近の試料油膜の構造変化をより細かく検証することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の試料油特性測定装置の概略図である。
【図2】ローターおよびプリズムの説明図で、(a)が斜視図、(b)が(a)の要部平面図である。
【図3】プリズムおよび試料油膜の説明図である。
【図4】入射角と潜り込み深さとの関係を示すグラフである。
【図5】液晶および基油のタイムチャートで、(a)が液晶のタイムチャート、(b)が基油のタイムチャートである。
【図6】各種剪断速度wにおけるPAO40のタイムチャートである。
【図7】添加剤が添加された場合における基油のタイムチャートである。
【符号の説明】
φ 入射角
h プリズムとローターとの間の隙間
1 ローター(搬送装置)
3 試料油膜
6 プリズム
11 光線
21 エリプソメータ
22 発光装置
23 受光装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑油などの試料油の特性(特に、粘度などに関連した特性)を測定して評価解析するための試料油特性測定装置および試料油特性測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
潤滑油などの試料油の重要な特性として、粘度や粘度特性(粘度の温度依存性)があるが、これらの値は毛細管粘度計で測定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この毛細管粘度計は、測定時の剪断速度が100/sec程度であり、実使用条件である約106/sec に比べて著しく低く、実使用状態の特性値を示すものとは限らない。また、実使用状態では、粘度特性は、被潤滑物体の固体表面と潤滑油とが接する界面近傍の剪断場における潤滑油構造(油分子の配列構造および、基油と添加剤との混合状態)に強く依存するが、これまで前記界面近傍における潤滑油の構造を動的に解析する方法がなかった。
【0004】
そこで本発明は、高い剪断速度における試料油の特性を測定することができる試料油特性測定装置および試料油特性測定方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明が採用した課題解決手段は、
試料油膜が表面に形成されこの表面に形成された試料油膜を搬送する搬送手段と、搬送手段の表面に対して間隔を有するとともに前記試料油膜に接すべく配置されるプリズムと、このプリズムに光線を入射する発光装置およびプリズムから反射された光線を受光する受光装置を具備するエリプソメータとを備えたことを特徴とする試料油特性測定装置であり、
試料油を溜めた試料油溜に一部が浸漬されるとともに外周面に試料油膜を形成すべく回転駆動されるローターと、このローターの外周面に対して間隔を有するとともにこのローターの外周面の試料油膜に接すべく配置されるプリズムと、このプリズムに光線を入射する発光装置およびプリズムから反射された光線を受光する受光装置を具備するエリプソメータとを備えたことを特徴とする試料油特性測定装置であり、
試料油が潤滑油であることを特徴とする試料油特性測定装置であり、
発光装置からプリズムへの入射角が変更可能であることを特徴とする試料油特性測定装置であり、
搬送装置の表面に対して間隔を有してプリズムを配置し、このプリズムと搬送装置の表面との間の隙間に試料油膜を前記プリズムおよび前記搬送装置の表面とに接する状態で形成するとともに、前記搬送装置の表面を移動させることにより前記試料油膜を搬送し、エリプソメータの発光装置から前記プリズムに光線を入射するとともに、プリズムから反射された光線をエリプソメータの受光装置で受光して、試料油の特性を測定していることを特徴とする試料油特性測定方法であり、
試料油を溜めた試料油溜に一部が浸漬されたローターの外周面に対して間隔を有してプリズムを配置し、ローターを回転させて、このローターの外周面と前記プリズムとの間の隙間に試料油膜を前記プリズムおよび前記ローターの外周面とに接する状態で形成し、エリプソメータの発光装置から前記プリズムに光線を入射するとともに、プリズムから反射された光線をエリプソメータの受光装置で受光して、試料油の特性を測定していることを特徴とする試料油特性測定方法であり、
試料油が潤滑油であることを特徴とする試料油特性測定方法であり、
潤滑油に添加する添加剤の量または種類を異ならしめて複数の潤滑油の特性を測定していることを特徴とする試料油特性測定方法であり、
発光装置からプリズムへの入射角を変更して、試料油の特性を測定していることを特徴とする試料油特性測定方法である。
【0006】
【実施の形態】
次に、本発明における試料油特性測定装置および試料油特性測定方法の実施の一形態を図1ないし図7を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態の試料油特性測定装置の概略図である。図2はローターおよびプリズムの説明図で、(a)が斜視図、(b)が(a)の要部平面図である。図3はプリズムおよび試料油膜の説明図である。図4は入射角と潜り込み深さとの関係を示すグラフである。図5は液晶および基油のタイムチャートで、(a)が液晶のタイムチャート、(b)が基油のタイムチャートである。図6は各種剪断速度wにおけるPAO40のタイムチャートである。図7は添加剤が添加された場合における基油のタイムチャートである。
【0007】
偏平な円柱状のローター1の軸には、回転駆動手段としてのモータ2が連結されており、ローター1は、その軸を中心としてモータ2で回転駆動される。ローター1は一部が図示しない試料油溜に浸漬される。この試料油溜には、潤滑油や液晶などの試料油が溜められており、ローター1が回転すると、ローター1の外周面に試料油膜3が形成される。このローター1の外周面に対して間隔hを有してプリズム6が配置されている。この全反射型のプリズム6は三角柱または台形柱であり、光線11が入射される入射面7、光線11が反射される反射面8および反射された光線11が出射される出射面9を有している。入射面7と反射面8とのなす角度α1は、出射面9と反射面8とのなす角度α2と略同じである。入射光線11は入射面7に対して略直角に入射しており、入射光線11とプリズム6の中心線12とのなす角度φ(以下、「入射角φ」と呼ぶ)は、角度α1および角度α2と略同じである。なお、プリズム6の中心線12は反射面8に対して直角である。
【0008】
エリプソメータ21は市販されており、発光装置22および受光装置23を具備している。発光装置22はHe−Ne(ヘリウム−ネオン)レーザーで構成され、発光装置22からレーザー光線11がプリズム6に向かって照射される。この光線11がプリズム6の入射面7に入射され、反射面8および試料油膜3で反射されて、この反射光線11が出射面9から出射される。そして、反射光線11が受光装置23で受光される。ところで、試料表面(試料油表面)でのp成分(反射面8に平行に振動する成分)および、s成分(反射面8に垂直に振動する成分)の各振幅反射率をγp,γsで、また、p成分およびs成分の各位相のとびをδp,δsで表現している。この時、tanΨ(=γp/γs)は試料表面のp成分とs成分との振幅反射比を、また、Δ(=δp−δs)はp成分とs成分との位相差を表しており、このΔおよびΨが偏向解析パラメータと呼ばれており、反射光線11の偏向の状態を示している。エリプソメータ21には、図示しないマイコンなどの演算装置が設けられており、この演算装置が発光装置22および受光装置23からのデータに基づいて、前述の偏向解析パラメータΔおよびΨを算出して出力する。
【0009】
この様に構成されている試料油特性測定装置で、潤滑油や液晶などの試料油の特性を測定する。測定した試料油の代表例の名称および物性値を〔表1〕に示す。測定した液晶は、4−ペンチル−4′−シアノビフェニル(略称5CB)であり、また、測定した基油は、ポリαオレフィンの2種(PAO10,PAO40)、およびポリブテンの2種(PB10,PB30)である。
【0010】
【表1】
【0011】
試料油の特性を測定する際には、試料油溜に測定する潤滑油や液晶などの試料油を溜める。ローター1の外周面とプリズム6との隙間hが、計測する試料油膜3の厚みh(以下、「油膜厚さh」と呼ぶ)となるので、ローター1とプリズム6との間隔を、たとえば、約10〜500μmに調整する。そして、モータ2を稼働してローター1を回転させる。その際のローター1の外周面の速度vは、たとえば、約0.06〜12.2m/sである。このローター1の回転により、ローター1の外周面には、潤滑油膜や液晶膜などの試料油膜3が形成される。この試料油膜3は、ローター1の外周面およびプリズム6の反射面8に接触し、その剪断速度w(=v/h)は約1.2×102 〜1.2×106 /sである。試験温度は適宜選択可能であるが、23±3℃で行った。また、エリプソメータ21の発光装置22から光線11をプリズム6に照射し、その反射光線11を受光装置23で受光する。そして、エリプソメータ21は、偏向解析パラメータΔおよびΨのデータを出力する。
【0012】
光線11の潜り込み深さdは数十〜数百nmであるが、図4に図示するように、試料油の屈折率nや入射角φに依存する。屈折率nが小さい程、潜り込み深さdは小さくなる。また、入射角φが大きい程、潜り込み深さdが小さくなる。なお、入射角φを変更する際には、それに対応したプリズム6(すなわち、前記角度α1および角度α2が略入射角φであるプリズム6)に交換するとともに、発光装置22や受光装置23の配置位置を変更する。この様にして潜り込み深さdを変更することにより、分析する深さを変更することができる。また、エリプソメータ21から偏向解析パラメータΔおよびΨが得られるが、偏向解析パラメータΔを用いて試料油の剪断の状態の動的挙動を解析した。
【0013】
図5(a)に、ローター1の外周面の速度vが0.8〜0.9m/sで、油膜厚さhが10μmの状態における液晶(5CB)の偏向解析パラメータΔの経時的変化が示されている。液晶における偏向解析パラメータΔは、剪断に対して矩形的な応答を示した。この偏向解析パラメータΔの低下は、液晶分子が剪断方向に配列したことを示している。
【0014】
また、図5(b)に、潤滑油の基油であるPB30およびPAO40の偏向解析パラメータΔの経時的変化が示されている。この場合には、ローター1の外周面の速度vが0.8〜0.9m/sで、油膜厚さhが100μmの状態で行われた。この図5(b)における偏向解析パラメータΔの変化は、基油の分子が剪断方向に配列したためと思われる。しかし、液晶の場合と異なり、偏向解析パラメータΔに緩和現象が見られる。この緩和現象は、剪断による温度上昇または圧力上昇の影響、特に温度上昇の影響を受けたためと考えられる。
【0015】
次に、剪断速度wの依存性を検討した。図6には、油膜厚さhが100μmである基油PAO40のタイムチャートが示されており、この図6において、剪断中において定常状態に達したΔeから剪断前のΔoを減じた定常変化量で比較すると、剪断速度wが増大するに伴って定常変化量が増加する。このことから偏向解析パラメータΔによって示される固液界面付近の構造変化は剪断速度wが上昇することによって大きくなると考えられる。また、グラフは添付していないが、分子構造が類似し動粘度の異なるPAO10とPAO40との比較、および、PB10とPB30との比較では、動粘度の高いPAO40およびPB30が、動粘度の低いPAO10およびPB10よりも定常変化量が大きいことが分かった。この様に、粘度が偏向解析パラメータΔの変化に関係しており、偏向解析パラメータΔの変化を検討することにより、剪断場における粘度を考察することができる。
また、偏向解析パラメータΔのピーク値Δmax(図6参照)と、剪断中において定常状態に達したΔeとの差は、試料油の種類により異なっており、試料油の分子構造に依存すると考えられる。そして、この差が大きいものは、粘度の温度依存性が高く、温度による粘度の変化が大きくなる。
【0016】
さらに、潤滑油の基油(PAO40)に添加剤(たとえば、オートマトランスミッションで使用されるPBSI)を添加した場合を検討した。試料油として、基油だけの場合と、基油に添加剤を10wt%加えた場合と、基油に添加剤を30wt%加えた場合との3個の場合において、上記試料油特性測定装置で試験を行った。試験結果は、図7に図示するように、添加剤の量が多い程、偏向解析パラメータΔの立ち上がりが大きくなる。この現象は、添加剤がプリズム6の表面に吸着し、潤滑特性を発揮しているためと考えられる。
【0017】
この様に、実施の形態の試料油特性測定装置を用いて、種々の試料油に対して各種条件で試験を行い、エリプソメータ21から偏向解析パラメータΔおよびΨを得て、試料油の特性を検証することができる。そして、ローター1の回転速度を大きくすることにより、試料油に加わる剪断速度wを簡単に大きくすることができる。また、入射角φを変更することにより、潜り込み深さdを変更して、固液界面付近の構造変化をより細かく検証することができる。
【0018】
前述の実施の形態では、偏向解析パラメータΔを用いて、試料油の特性を検証しているが、偏向解析パラメータΨを用いて検証することも可能である。また、試料油膜を搬送することができるならば、ローター1に代えて種々の搬送装置を採用することができ、たとえば、ベルトコンベア式にすることも可能である。さらに、エリプソメータ21は偏向解析パラメータΔおよびΨを出力しているが、偏向解析パラメータΔまたはΨの少なくとも何れか一方を出力することができれば良い。そして、試料油の温度を検出する試料油温度検出装置を設けることも可能である。また、試料油を加熱または冷却して温度調整する試料油温度調整装置を設けることも可能であり、たとえば、この試料油温度調整装置を試料油溜に設置することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内で種々の形態を実施することが可能である。
【0019】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明によれば、ローターなどの搬送装置とプリズムとの間に試料油膜が形成され、この試料油膜の特性をエリプソメータで測定するので、試料油の搬送速度を増大することにより、試料油膜に高い剪断速度を与えることができるとともに、試料油の動的挙動を解析することができる。また、エリプソメータの発光装置からプリズムへの光線の入射角を変更することにより、試料油膜を分析する分析深さを変更することができ、固液界面付近の試料油膜の構造変化をより細かく検証することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の試料油特性測定装置の概略図である。
【図2】ローターおよびプリズムの説明図で、(a)が斜視図、(b)が(a)の要部平面図である。
【図3】プリズムおよび試料油膜の説明図である。
【図4】入射角と潜り込み深さとの関係を示すグラフである。
【図5】液晶および基油のタイムチャートで、(a)が液晶のタイムチャート、(b)が基油のタイムチャートである。
【図6】各種剪断速度wにおけるPAO40のタイムチャートである。
【図7】添加剤が添加された場合における基油のタイムチャートである。
【符号の説明】
φ 入射角
h プリズムとローターとの間の隙間
1 ローター(搬送装置)
3 試料油膜
6 プリズム
11 光線
21 エリプソメータ
22 発光装置
23 受光装置
Claims (9)
- 試料油膜が表面に形成され、この表面に形成された試料油膜を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の表面に対して間隔を有するとともに前記試料油膜に接すべく配置されるプリズムと、
このプリズムに光線を入射する発光装置およびプリズムから反射された光線を受光する受光装置を具備するエリプソメータとを備えたことを特徴とする試料油特性測定装置。 - 試料油を溜めた試料油溜に一部が浸漬されるとともに、外周面に試料油膜を形成すべく回転駆動されるローターと、
このローターの外周面に対して間隔を有するとともに、このローターの外周面の試料油膜に接すべく配置されるプリズムと、
このプリズムに光線を入射する発光装置およびプリズムから反射された光線を受光する受光装置を具備するエリプソメータとを備えたことを特徴とする試料油特性測定装置。 - 前記試料油が潤滑油であることを特徴とする請求項1または2に記載の試料油特性測定装置。
- 前記発光装置からプリズムへの入射角が変更可能であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の試料油特性測定装置。
- 搬送装置の表面に対して間隔を有してプリズムを配置し、
このプリズムと搬送装置の表面との間の隙間に試料油膜を前記プリズムおよび前記搬送装置の表面とに接する状態で形成するとともに、前記搬送装置の表面を移動させることにより前記試料油膜を搬送し、
エリプソメータの発光装置から前記プリズムに光線を入射するとともに、プリズムから反射された光線をエリプソメータの受光装置で受光して、試料油の特性を測定していることを特徴とする試料油特性測定方法。 - 試料油を溜めた試料油溜に一部が浸漬されたローターの外周面に対して間隔を有してプリズムを配置し、
前記ローターを回転させて、このローターの外周面と前記プリズムとの間の隙間に試料油膜を前記プリズムおよび前記ローターの外周面とに接する状態で形成し、
エリプソメータの発光装置から前記プリズムに光線を入射するとともに、プリズムから反射された光線をエリプソメータの受光装置で受光して、試料油の特性を測定していることを特徴とする試料油特性測定方法。 - 前記試料油が潤滑油であることを特徴とする請求項5または6に記載の試料油特性測定方法。
- 前記潤滑油に添加する添加剤の量または種類を異ならしめて複数の潤滑油の特性を測定していることを特徴とする請求項7に記載の試料油特性測定方法。
- 前記発光装置からプリズムへの入射角を変更して、試料油の特性を測定していることを特徴とする請求項5,6,7または8に記載の試料油特性測定方法。
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