JP3664484B2 - 多重伝送装置および多重分離装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディジタル伝送装置の構成およびこれを用いた通信網の構成に係わり、特に高速同期ディジタルハイアラキーで使用するに好適な伝送装置の構成およびこれを用いた通信網の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日のディジタル伝送網は、同期化の技術が発達して光伝送を用いるより高速な伝送装置と通信網も同期化されつつある。このディジタル同期伝送網および伝送装置の機能や構成は、世界的な規格が制定されており、この規格に従って伝送装置や通信網を導入することにより高品質な伝送がどことでも可能となる。具体的な規格の例を示すと、国際電気通信連合(以下、ITU−Tと称する)が勧告G.707等で定めたエスディーエイチ(SDH:Synchronous Digital Hierarchy)と呼ばれる伝送システムに関する規格(1988年制定)、およびアメリカ標準化委員会(以下、ANSIと称する)が規格T1.105で定めたソネット(SONET:Synchronous Optical Network)と呼ばれる伝送システムに関する規格(1991年制定)が挙げられ、どちらも光同期通信システムの構成と伝送装置の機能を定めたものである。
【0003】
上記SDHあるいはSONETは、ディジタル化された主信号を多重化したペイロードと呼ばれる主信号部に伝送装置や通信網の監視保守運用を行うためのオーバヘッドと呼ばれる信号を付加した同期多重化信号(フレーム)を処理(伝送や多重分離)するもので、オーバヘッドにはポインタを備え、このポインタを用いてフレーム位相同期や周波数調整のスタッフ制御を行うことで、従来のディジタル同期伝送装置より伝送遅延が少なく監視保守運用能力に優れた伝送システムを提供するものである。図1および図2は、SONETで規定された多重化信号のフレーム構成を示したフレーム構成図であり、それぞれOC−12(622.08MHz)とOC−192(9953.28Mhz)の多重化信号の構成を示している。また、図3は、多重化信号に含まれる各オーバヘッドバイトの機能を示す説明図である。これらの図において、1〜36コラム(OC−12)あるいは1〜576コラム(OC−192)の信号がオーバヘッド(各バイトの要とは、図3参照。また、未使用(未定義)バイトは、図1と図2において×で示してある。)であり、残りの部分が主信号を多重化したペイロード部である。図4は、SDHあるいはSONETを用いた伝送網の構成とオーバヘッドの伝送区間を説明する網構成図である。図1や図2で示した多重化信号のオーバヘッドの内、1〜3行がセクションオーバヘッドと呼ばれ、伝送装置や中継器の間の伝送路区間(セクションと定義されている)毎の監視保守運用を行うオーバヘッドであり、ある装置(中継器を含む)で生成されたオーバヘッドは、伝送路を介して送信されると次の装置で終端される(図4(A)の細い矢印参照)。また、オーバヘッドの内、5〜9行がラインオーバヘッドと呼ばれ、多重化された主信号を処理する伝送装置間の伝送区間(ラインと定義されている)毎の監視保守運用を行うオーバヘッドであり、ある伝送装置で生成されたオーバヘッドは、伝送路や中継器を介して送信されて次の伝送装置で終端される(図4(A)の太い矢印参照)。尚、オーバヘッドの内、4行目のバイトはポインタである。このようなフレーム構成と機能は、いづれも上記の規格に規定されたものである。
【0004】
そして、上記SDHあるいはSONETを用いた伝送装置や網の構成の例としては、特開平4−79628号公報や特開平5−114892号公報に示されたものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図4(A)で示した伝送網において、多重化装置B(2001)と多重化装置C(2004)との間は、リピータ2002と2003を中継してOC−12伝送路で接続されている。この多重化装置B(2001)およびC(2004)の間で監視保守運用のために、例えばデータコミュニケーションチャネルと呼ばれるDバイトやオーダワイヤと呼ばれるEバイトを送受信したい場合には、一方の多重化装置(例えばB)でラインオーバヘッドのD4〜12バイトやE2バイトに関し保守運用に必要なデータや音声信号を挿入してOC−12伝送路に送信する。これらのラインオーバヘッドは、OC−12伝送路とリピータを経由して対局側の多重化装置(同図ではC)で終端されるので多重化装置B(2001)およびC(2004)の間で監視保守運用が実施される。
【0006】
しかし、上記伝送網において網の加入者が増えたり送受信する信号の量が増える場合、これに対応するために多重化装置を増設したり途中の伝送路をより高速な伝送路に交換したりする伝送網の増設や変更が実施される。この一例を示したものが図4(B)であり、通信量の増加に伴い多重化装置B(2001)やC(2004)に相当する多重化装置を増設する一方で(同図では簡略化のために、それぞれ1つだけ示した)、リーピタ2002と2003の代わりにこれらの複数個の多重化装置を収容して信号の処理を行う更に高速大規模な多重化装置E(2008)とF(2009)を導入して高速伝送路OC−192で接続した伝送網に変更した伝送網の構成を示している。
【0007】
通信量の増加に伴い伝送網が図4(A)から(B)に変更された場合、上述したようにSDHやSONETの規格ではラインオーバヘッドを伝送装置毎に終端する構成となっているため、多重化装置E(2008)とF(2009)の増設後(B)は、多重化装置B(2001)からのオーバヘッドが多重化装置E(2008)で終端され、多重化装置C(2004)からのオーバヘッドが多重化装置F(2009)で終端されてしまい、このままでは多重化装置増設前(A)に多重化装置B(2001)とC(2004)との間でオーバヘッドを用いて行っていた監視保守運用ができなくなってしまう。すなわち、伝送網の構成変更により主信号の伝送能力は向上するが、今まで実施していた伝送装置間での監視保守運用ができなくなる等の伝送網の監視保守運用能力変更が発生するので、伝送網の保守者にとって今まで知り得た監視保守運用情報が入手できなくなるような状況が発生して保守者にとって不都合な場合が生じてしまう。
【0008】
本発明の課題は、上述したような伝送網の構成変更に伴う監視保守運用能力の変化を防ぐことにあり、伝送網を変更しても監視保守運用能力が変わらない、あるいは、よりフレキシブルで性能に優れた監視保守運用が可能となる伝送装置および伝送網を簡単な構成で提供することにある。
【0009】
具体的には、SDHやSONETで規格化されたオーバヘッド処理の他に、オーバヘッドを通過させる機能も備えた伝送装置を提供することにある。また、このような伝送装置を用いて、伝送網における任意の伝送装置間で任意のオーバヘッドを送受信することが可能な、フレキシブルで監視保守運用性能に優れた伝送網とその構成運用方法を提供することにある。
【0010】
さらに詳細には、ディジタル伝送装置において、受信したオーバヘッドを選択編集して他のディジタル伝送装置に送信する手段を簡単な構成で提供することにある。また、オーバヘッドを単純に通過させるだけでは相手側装置に情報を伝えることのできないオーバヘッドについては、オーバヘッドを相手側装置で利用できる情報に変換して伝える手段を簡単な構成で提供することにある。特に、オーバヘッドを送受信する伝送区間で発生した伝送誤りについては、誤り数を確実に伝えて伝送品質の管理を可能とする手段を簡単な構成で提供することにある。
【0011】
そして、ディジタル伝送網において、選択された伝送装置間でオーバヘッドを選択編集して送受信する方法や伝送区間中で発生した伝送誤りを検出して伝える方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明による多重化伝送装置は、複数個の主信号を多重化したペイロードと複数個の監視保守運用に関する保守情報を含むオーバヘッドバイトとからなる多重化信号を受信して保守情報の終端処理とペイロードの主信号の伝送処理を実施後、伝送処理された主信号を多重化したペイロードに複数個の監視保守運用に関する保守情報を含むオーバヘッドバイトを付加して送信する多重化伝送装置に、受信した多重化信号に含まれる複数個の保守情報から所定の保守情報を選択して送信側多重化信号のオーバヘッドバイトに挿入しすることで通過させる手段を備えた。
【0013】
具体的には、上記多重化伝送装置に受信した多重化信号に含まれる複数個の保守情報から所定の保守情報を抽出する手段と抽出された保守情報を送信側多重化信号のオーバヘッドバイトの所定の位置に挿入する挿入手段とからなる保守情報を通過させるオーバヘッド通過手段を備えた。尚、この通過手段に抽出された保守情報を編集する編集手段を備えても良い。
【0014】
また、上記多重化伝送装置は、ペイロードと複数個の監視保守運用に関する保守情報を含むオーバヘッドバイトとからなる多重化信号を複数本受信して複数個の保守情報の終端処理と複数のペイロードをさらに多重度の大きいペイロードへの多重化を行い、この大きなペイロードに複数個の監視保守運用に関する保守情報を含む送信側より大きなサイズのオーバヘッドバイトを付加した多重化信号に変換して送信するもので、複数個の保守情報から所定の保守情報を抽出する手段と抽出手段で抽出した情報を編集する編集手段と編集手段の出力をオーバヘッドバイトの所定の位置に挿入する挿入手段とからなる保守情報を通過させるオーバヘッド通過手段を備え、複数個の伝送路から受信される保守情報をまとめて転送通過させる多重化伝送装置とした。また、この多重化伝送装置の逆方向のものは、同様に、複数個の保守情報から所定の保守情報を抽出する手段と抽出手段で抽出した情報を編集する編集手段と編集手段の出力をオーバヘッドバイトの所定の位置に挿入する挿入手段とからなる保守情報を通過させるオーバヘッド通過手段を備え、保守情報がまとまり転送通過してきた信号を受信すると、これらの信号を抽出編集して複数個の伝送路のオーバヘッドバイトの規定の位置に挿入して送信する多重化伝送装置とした。
【0015】
ここで、上述した各多重化伝送装置は、国際電気通信連合の勧告G.707あるいは米国標準化委員会の規格T.105に定めた多重化信号を扱うものであり、通過させる保守情報はセクションオーバヘッドとラインオーバヘッドに含まれるもので、これらの情報を多重化信号のラインオーバヘッドに入れて転送する構成とした。しかも、このような多重化装置を直結する場合には、セクションオーバヘッドも用いてより多くの保守情報を通過転送する構成とした。尚、上記規格で定められたEバイト、Fバイト、DバイトKバイト、Zバイトを保守情報として通過させる場合、これらのバイトをそのまま選択して通過させる構成とした。
【0016】
一方、上記規格で定められたBバイトのような伝送路の誤りに関する情報を通過させる構成として、受信伝送路での誤り発生数を検出すると、この誤り発生数を多重化信号のオーバヘッドバイトに挿入して伝送路誤り数を転送する手段を備えた。そして、転送された保守情報を受信する多重化伝送装置では、伝送路誤り数を抽出する手段と、抽出された伝送路誤り数とこの装置で検出された伝送路誤り数を加算する手段と、この加算結果をさらにオーバヘッドに挿入して転送する、あるいは、本多重化伝送装置で送信する他の伝送装置の誤り検出用信号に加算結果だけ予め伝送路誤りを付加して送信する伝送路誤り送信手段とを備えた。尚、途中の多重化伝送装置は、上記抽出する手段で抽出した伝送路誤り数をそのまま転送する構成として、最終段の多重化装置に上記誤りに関する情報を転送する伝送区間で発生した伝送誤り数を検出手段と伝送路誤り数を抽出する手段と抽出された伝送路誤り数と検出手段で検出された伝送路誤り数を加算する手段と本多重化伝送装置で送信する他の伝送装置の誤り検出用信号に加算結果だけ予め伝送路誤りを付加して送信する伝送路誤り送信手段とを備える構成としても良い。
【0017】
さらに課題を解決するために、本発明による多重化伝送網は、多重化伝送装置に上述のような装置を用い、任意の多重伝送装置間の途中の多重化装置で任意の保守情報を通過させ、前記任意の多重化伝送装置同士で任意の保守情報を送受信する構成の多重化伝送網とした。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明による伝送装置の実施形態および伝送装置を用いた伝送システムあるいはネットワークの実施形態について、以下、図面を用いながら詳細に説明する。本発明の実施の形態では、主にSONETで使用される伝送装置と伝送システムを例に挙げて説明するが、SDHを用いる伝送装置や伝送システムの場合も同じであり、従来の伝送システムでは装置毎に伝送フレームのオーバヘッドが終端されてしまうものに対して、伝送装置にオーバヘッドを通過させる機能を備えて伝送システム内の所望の装置間でオーバーヘッドの送受信を可能とすることで、伝送システムの監視保守運用能力を向上させることができる伝送装置の実施形態とその多重化装置を用いた伝送システムの実施形態について説明するものである。
【0019】
図5は、本発明による多重化装置の実施形態を示すブロック構成図である。本発明の多重化装置は、複数個のオーバヘッドと多重化された主信号からなる低速の多重化信号と1個のオーバヘッドと多重化された主信号からなる高速の多重化信号を収容し、各多重化信号のオーバーヘッドの終端や付け替え等の処理を行うとともに複数個の低速の多重化された主信号と1個の高速の多重化された主信号間の多重分離を実施する装置であり、例えば、低速多重化信号として16本のOC−12(622.08MHz:図1参照)を収容し、高速多重化信号OC−192(9953.28MHz:図2参照)との間でSONETで規定された主信号の多重分離とオーバーヘッドの処理を実施する一方で、本発明による装置に入力された多重化信号のオーバーヘッドを他の多重化装置で使用するために通過させるものである。もちろん、上記説明は一例であり、収容する多重化信号の速度が、OC−0〜192あるいはSDHで規定された速度等の他の速度であっても構わないし、収容する多重化信号の数は、収容する多重化信号の種類により変えることができるものである。
【0020】
図5において、本発明の多重化装置は、M組の低速の多重化信号を入出力してオーバヘッドと主信号の処理を行う低速信号送信/受信ユニット10−1〜10−Mと、高速の多重化信号を入出力してオーバヘッドと主信号の処理を行う1組の高速側送信/受信ユニット11と、低速多重化信号の主信号と高速多重化信号の主信号との多重分離変換を行う主信号多重分離変換部100と、低速多重化信号と高速多重化信号との間で各信号に含まれるオーバーヘッドを他の多重化装置で使用できるように編集して通過させる本発明によるオーバヘッド処理部300(300−1、300−2)と、本多重化装置全体の制御を行う制御部400とから構成し、信号の多重分離変換とオーバヘッド処理を行うものである。
【0021】
より詳細には、低速信号送信/受信ユニット10−1〜10−Mのそれぞれには、低速信号の受信と受信セクションオーバヘッドの処理を行い、かつ、一部のセクションオーバヘッドバイトを通過させ他の伝送装置や多重化信号の送受信ユニットに送信するためにセクションオーバヘッドバイトを抜き取るSOH(セクションオーバヘッド)終端部20−1〜Mと、受信ラインオーバヘッドの処理を行い、かつ、一部のラインオーバヘッドバイトをラインオーバヘッドと同様に抜き取るLOH(ラインオーバヘッド)終端部30−1〜Mと、送信ラインオーバヘッドバイトの付与を行い、かつ、一部の他の伝送装置や多重化信号の送受信ユニットから送信されてきたラインオーバヘッドバイトの挿入を行うLOH挿入部80−1〜Mと、送信セクションオーバヘッドバイトの付与を行い、かつ、一部の他の伝送装置や多重化信号の送受信ユニットから送信されてきたセクションオーバヘッドバイトの挿入と低速信号の送信を行うSOH挿入部90−1〜Mとを備え、高速側送信/受信ユニット11には、低速信号送信/受信ユニットと同様な、高速信号のSOH終端部60と、LOH終端部70と、LOH挿入部40と、SOH挿入部50とを備える構成とした。また、オーバヘッド処理部300−1と300−2のそれぞれは、各多重化信号の送信/受信ユニット(10−1〜10−M、11)から抜き取られたオーバヘッドを収集するオーバヘッド多重化部110,130と、収集されたオーバヘッドを他の伝送装置や多重化信号の送受信ユニットに送るために所定の規則で編集する空間スイッチ部200,210と、編集されたオーバヘッドを各多重化信号の送信/受信ユニット(10−1〜10−M、11)のLOH挿入部とSOH挿入部に振り分けるオーバヘッド分離部120,140とから構成した。この構成により、低速多重化信号と高速多重化信号を収容して主信号の多重分離を行うとともに、本多重化装置を使用する伝送システムで予め定めたオーバヘッドを通過させたり処理(終端/付与)したりすることで、所望の伝送装置間でのオーバヘッドの使用可能として監視保守運用能力に優れた、使い勝手の良いシステム構成に柔軟性を持たせることが可能な多重化装置を提供するものである。
【0022】
以下、高速多重化信号をOC−192、低速多重化信号をOC−12(16本)を収容する多重化装置において、低速信号の内15本の多重化信号のオーバヘッド(オーダーワイヤE1,E2、データチャネルD1〜D12、伝送路切替制御バイトK1,K2、ライン間(装置間)誤り監視バイトB2)を通過させ、低速多重化信号を使用する15対の伝送装置間(図4(B)で示した多重装置B−C間)で使用する場合を例に挙げ、本発明の多重化装置の構成と動作および伝送システムの動作について説明する。
【0023】
図6と図7は、本実施形態の多重化装置で用いる低速信号のオーバヘッドを通過させる高速信号のオーバヘッドの構成を示すオーバヘッド構成図であり、図6にオーバーヘッドの全体構成と一部詳細構成を示し、図7に残りの詳細構成を示したものである。
【0024】
先ず、低速多重化信号を受信して高速多重化信号に変換後、この高速多重化信号を送信する多重化側の動作を説明する。
【0025】
低速信号送信/受信ユニット10−1〜MのそれぞれのSOH終端部20−1〜MとLOH終端部30−1〜Mは、受信した多重化信号のオーバーヘッドを通常の多重化装置と同様に終端処理して主信号を主信号多重分離変換部100に送出する。ここで通常の終端処理とは、本多重化装置と対向する多重化信号送信側の伝送装置との間のセクションやライン間の正常性をチェックしたりするもので、Aバイトで多重化信号の同期を取ったり、B1バイトで信号の誤りをチェックしたりするもので、例えばANSI T.105で定められたオーバヘッドにより装置間あるいは伝送線路間の監視保守運用に関する処理を行うものである。また、主信号は、主信号多重分離変換部100で予め定められた多重化則(例えは、図1から図2へのマッピング)により高速信号の主信号に多重化される。一方、本発明の多重化装置では、これらのオーバヘッドの一部を所望の伝送装置間で使用するために通過させるので、SOH終端部20−1〜MとLOH終端部30−1〜Mは、受信したオーバヘッド(B2バイト以外)をそのまま分岐するようにしてオーバヘッド処理部300−1に送信する。また、B2バイトについては、後述するように単純には通過させることができないので、LOH終端部30−1〜Mのそれそれで通常のB2バイト終端処理として検出されたライン区間での誤り数を符号化した信号をオーバヘッド処理部300−1に送信する。
【0026】
オーバヘッド処理部300−1は、本多重化装置で受信したオーバヘッドの一部を通過させ他の伝送装置に送信するために、オーバヘッドを選択して送信する多重化信号のオーバヘッドの未使用領域に挿入する編集と処理を行うもので、オーバヘッド多重化部110は、低速信号送信/受信ユニット10−1〜Mのそれぞれから送信されるオーバヘッドを収集するものである。具体的には、低速多重化信号がOC−12で16本収容される場合であれば、各低速信号送信/受信ユニット10−1〜Mのそれぞれから図1で示したフォーマットでオーバヘッドが送られてくるので、マルチプレクサを用いて各ユニットに順次アクセスすることで、各ユニットからの通過させるオーバーヘッドを選択してオーバヘッドの種類ごとに纏めてしまうような多重化を行う。一例を挙げれば、各低速多重化信号の6行1コラムにあるD4バイト(図1参照)を纏めて高速多重化信号の6行5コラムから61コラムにいれて(図6、1000、1002参照)通過させるように、低速多重化信号のオーバヘッドを種類毎に纏めて高速多重化バイトの未使用バイトの中に挿入するので、各ユニットを順次アクセスしてオーバヘッドを種類毎に集めてしまう。すなわち、上記例なら、各低速多重化信号のD4バイトだけを纏めてしまうような多重化を行うものである。尚、各低速多重化信号の位相が異なっても多重化できるようにマルチプレクサの入力側にバッファを備えても良いし、各ユニットでこのオーバヘッド多重化部110に送出する信号の位相をそろえても良い。また、B2バイトに関しては、LOH終端部で処理後の信号を受信するように説明したが、B2バイトそのものをLOH終端部から受信して上記処理をこのオーバヘッド多重化部110で実施する構成としても良い。
【0027】
空間スイッチ部200は、オーバヘッド多重化部110から送られてくるオーバヘッドバイトをさらに並べかえるように編集するものである。本実施形態では空間スイッチを用いたが、時間スイッチであってももちろん構わない。いずれのスイッチであっても各低速多重化信号から受信したオーバヘッドを高速多重化信号の未使用バイトの予め定められたバイトに挿入できるように、オーバヘッドを選択したり順序を入れ替えたりする編集ができるものであれば良い。具体的には、本実施形態は、16本の低速多重化信号OC−12から15本の多重化信号(1〜15)のオーバヘッドを通過させるものであり、空間スイッチ200は、オーバヘッド多重化部110出力のなかから多重化信号(1〜15)の通過させるオーバヘッドだけ(オーダーワイヤE1,E2、データチャネルD1〜D12、伝送路切替制御バイトK1,K2、ライン間(装置間)誤り監視バイトB2)を選択して通過させる(図6、図7の1000〜1004、1100〜1107、1200〜1208参照)。また、図1で示したように、低速多重化信号ではD4バイトより先頭フレーム側にあったD1バイトが多重化装置通過後の高速多重化信号においてはD4バイトより後に挿入される(図6の1000、1001、1004参照)。すなわち、空間スイッチ200は、オーバヘッド領域の未使用バイトの予め指定されたバイトに指定された種類のオーバヘッドが挿入できるように通過させるオーバヘッドの順序の入れ替えも行う。
【0028】
オーバヘッド分離部120は、空間スイッチ部200からオーバヘッドバイトが送られてくるので、デマルチプレクサを用いてこのオーバヘッドをセクションオーバヘッドとラインオーバヘッドに分離したり、図6と図7で示した高速多重化信号のオーバヘッド領域で予め定められたバイトに挿入されるように分離して高速信号送信/受信ユニット11に転送する。一例として低速信号のD4バイトを挙げると、図6の1000と1002で示したように、各低速多重化信号のD4バイトが高速多重化信号のオーバヘッド領域の6行5コラムから4コラムごとに61コラムまでに挿入されるように各低速多重化信号のD4バイトを分離するものである。
【0029】
高速信号送信/受信ユニット11は、SOH挿入部50とLOH挿入部40により通常の多重装置と同様に送信側伝送路のセクション区間とライン区間で使用するオーバヘッドバイトを生成する一方で、オーバヘッド分離部120から受信した低速信号受信部で抜き取られたオーバヘッドを図6と図7に示すように高速信号のラインオーバヘッドの予め定められた未使用バイトに挿入して送信すべきオーバヘッドを作成し、主信号多重分離変換部100で多重化された高速信号の主信号に付加した高速多重化信号を送信する。尚、本実施形態では、途中の伝送路に中継器があると、この中継器でセクションオーバヘッドが終端されてしまうので、ラインオーバヘッド領域だけに前記低速信号受信部から抜き取られたオーバヘッドを挿入してある。もちろん、途中の伝送路に中継器等がなくてセクションオーバヘッドが送信先の伝送装置まで終端されない場合であれば、このセクションオーバヘッド領域の未使用バイトを使用して良い。この場合、更に多数の低速多重化信号のオーバヘッドを通過させることができる。
【0030】
次に、高速多重化信号を受信して低速多重化信号に変換後、この低速多重化信号を送信する分離化側の動作を説明する。
【0031】
高速信号送信/受信ユニット11のSOH終端部60とLOH終端部70は、低速信号送信/受信ユニット10と同様に、受信した多重化信号のオーバーヘッドを通常の分離化装置と同様に終端処理して主信号を主信号多重分離変換部100に送出する。この主信号は、主信号多重分離変換部100で低速信号の主信号に分離化される。一方、受信したオーバヘッドには、送信側の伝送装置から送信された所望の伝送装置間で使用するために通過させるオーバヘッドが挿入されているので、SOH終端部60とLOH終端部70は、受信したオーバヘッドをそのまま分岐するようにしてオーバヘッド処理部300−2に送信する。
【0032】
オーバヘッド処理部300−2は、受信したオーバヘッドの一部を通過させ他の伝送装置に送信するために、オーバヘッドを選択して送信する各低速多重化信号のオーバヘッドの規定の位置に挿入する編集と処理を行うもので、多重化側のオーバヘッド処理部300−1と同様な処理を、処理方向を逆にして分離化側で行うものである。すなわち、オーバヘッド多重化部130は、高速信号送信/受信ユニット11で受信した他の伝送装置を通過したオーバヘッドを収集し、空間スイッチ部210は、オーバヘッド多重化部130から送られてくるオーバヘッドバイトをさらに並べかえるように編集する。また、オーバヘッド分離部140は、空間スイッチ部210から送られたオーバヘッドをセクションオーバヘッドとラインオーバヘッドに分離したり、図1で示した低速多重化信号のオーバヘッド領域の規定バイトに挿入されるように分離して各低速信号送信/受信ユニット10−1〜Mに転送する。
【0033】
M組の低速信号送信/受信ユニット10−1〜M低速信号送信/受信ユニットのそれぞれは、SOH挿入部80−1〜MとLOH挿入部90−1〜Mにより通常の多重装置と同様に送信側伝送路のセクション区間とライン区間で使用するオーバヘッドバイトを生成する一方で、オーバヘッド分離部140から受信した高速信号受信部で抜き取られたオーバヘッドを図1に示すように低速信号のラインオーバヘッドの規定に挿入して送信すべきオーバヘッドを作成し、主信号多重分離変換部100で分離された低速信号の主信号に付加した低速多重化信号を低速側伝送路に送信する。
【0034】
ここで、本発明による受信したオーバーヘッドを他の伝送装置に通過させることが可能な伝送装置におけるB2バイトの通過処理について、上記実施形態で用いた多重化装置を用いて説明する。
【0035】
図8は、SONETあるいはSDHで使用される伝送装置におけるライン区間の伝送誤りを検出するB2バイトの計算領域を説明する動作説明図である。SONETあるいはSDHで使用される伝送装置は、多重化信号の遅延を小さくするために図1に示したようなオーバヘッド領域にあるポインタ(4行目のHバイト)を用いて多重化信号の位相を識別して多重分離等の信号処理を行う装置で、各伝送装置では、多重化信号を形成するフレームに対してポインタを付け替えてフレームの再識別を行うだけで従来の伝送装置のような装置毎のフレーム位相調整を行わない。このため、図8に示したように、ポインタ付け替えにより受信した多重化信号のB2計算領域と送信する多重化信号のB2計算領域がずれてしまうので、受信したB2バイトを他のオーバヘッドバイトと同様に通過させても、オーバヘッドを受信する伝送装置では受信B2バイトによる誤りを正しく検出できない。
【0036】
すなわち、上述したように、B2バイトを直接通過させることはできないので、本多重化装置の多重化側では、低速信号送信/受信ユニットのLOH終端部30−1〜MのそれぞれでB2バイトを読み取りエラー検出数を求め(終端して)、このエラー検出数(以下の説明でjとする)をコード化した信号を通過させて相手側の伝送装置に伝える構成としたものである。具体的には、各低速多重化信号のB2バイト(図1:5行1〜12コラム)を終端して作成した信号(誤り数j)を高速多重化信号のオーバヘッド領域の未使用バイト(図7、1103)に挿入して送信する構成とした。
【0037】
一方、本多重化装置の分離化側では、送信側から送られてきた誤り数jを他のオーバヘッドバイトと同様にそのまま相手側の装置に送ったのでは、本来規定されたB2バイトの構成とは異なる信号が送信されるので、相手側の装置では誤り数を検出できない。さらに、送受信したいのは、所望の伝送装置間(図4(B)の伝送装置B−C間)の伝送路で発生した誤り数であり、jの値には、本多重化装置間の伝送路で発生した誤り数は含まれていないので補正も必要となる。従って、本実施形態の多重化装置の分離化側では、B2バイトの処理に関して上述した説明の他に以下の処理を行う構成とした。
【0038】
先ず、高速信号送信/受信ユニット11のLOH終端部70は、本多重化装置間の伝送誤りを検出するB2バイト(これは、もともとの高速多重化信号に規定されたものであり、図2と図6の構成図において5行1〜192コラムにあるB2バイト)を読み取りエラー検出数iを求める(終端する)。また、LOH終端部70は、高速信号のラインオーバヘッド(図6、1103)からコード化されたエラー検出数jを分離してiとjの和kを計算する。
【0039】
次に、オーバヘッド処理部300−2のオーバヘッド多重化部130は、このk値を多重化して空間スイッチ部210に転送する。空間スイッチ部210は、これらのオーバヘッドバイトを低速信号送信/受信ユニット単位で並べかえる。オーバヘッド分離部140は、空間スイッチ部210から送られたオーバヘッドバイトをセクションオーバヘッドとラインオーバヘッドに分離して、各々 M組の低速信号送信/受信ユニット10−1〜Mに転送する。
【0040】
そして、LOH挿入部80−1〜Mは、ここで送信する1フレームのB2パリティを生成した後、kの値に相当する分だけビット反転させ、低速信号のオーバヘッドとしてB2バイトを挿入して低速側伝送路に伝送することで、相手側の伝送装置で誤りの検出を可能とさせる。もちろん、これら分離化側でのB2バイト操作も多重化側と同様に、上記kの演算をオーバヘッド多重化部130で行う構成としても、あるいは、LOH挿入部80−1〜Mで纏めて演算とビット反転を行う構成としても良い。
【0041】
上述した本発明の伝送装置の実施形態である多重化装置においては、図示しない網管理装置等からシステム構成に関する情報を受信すると、制御部400がオーバヘッド処理部300や多重化信号送信/受信ユニット10−1〜Mや11等の設定を行うことにより、通過させる本装置を通過させるオーバヘッドの種類やオーバヘッドを挿入する未使用バイトの位置を選択できる構成とした。
【0042】
図9は、本発明の多重化装置を用いた伝送ネットワークの構成例を示す網構成図であり、図4(B)で示した網構成図の増設多重化装置E、Fとして、図5で示した上述の多重化装置を用いた場合の網構成を詳細に示したものである。尚、同図は、多重化装置Bから多重化装置Cへのオーバヘッド送信を例にしたもので、本発明の多重化装置は、それぞれ各多重化装置に必要な多重化側と分離化側だけを示してある。
【0043】
本発明の多重化装置を用いた伝送ネットワークは、主信号を多重化して低速伝送路500に低速多重化信号を送信する多重化装置B2001と、低速多重化信号をさらに多重化して高速信号伝送路501に高速多重化信号を送信する多重化装置E2006と、高速信号伝送路501から受信した高速多重化信号を分離化して低速信号伝送路502に低速多重化信号を送信する多重化装置F2007と、低速多重化信号をさらに低速の主信号に分離化する多重化装置C2004からなり、多重化装置B2001で処理する主信号を多重化装置C2004に伝送するとともに、多重化装置B2001とC2004との間で低速多重化信号のオーバヘッドも伝送して伝送システムの監視保守運用を行うものである。
【0044】
より詳細には、多重化装置B2001が主信号を多重化してオーバヘッドを付加した低速多重化信号を低速信号伝送路500に送信すると、多重化装置E2006は、低速多重化信号のオーバヘッドの終端と主信号の多重化と高速多重化信号のオーバヘッドの生成を行う一方で、本発明の特徴であるオーバーヘッド通過処理を行う。この通過処理は、図5〜図7を用いて先に説明したように、低速信号のSOH終端部20およびLOH終端部30と、オーバヘッド多重化部110と空間スイッチ200とオーバヘッド分離部120からなるオーバヘッド処理部300−1と、高速信号のLOH挿入部40およびSOH挿入部50とにより、制御部400で指定された低速多重化信号のオーバヘッドを選択編集して高速多重化信号のオーバヘッドの指定された位置に挿入(図6、図7参照)することで行われる。指定されたオーバヘッドにB2バイトが含まれる場合は、上述したようなB2バイト処理も行われる。
【0045】
通過させるオーバヘッドを含んだ高速多重化信号を高速伝送路501を介して多重化装置E2006から受信した多重化装置F2007は、高速多重化信号のオーバヘッドの終端と主信号の分離化と低速多重化信号のオーバヘッドの生成を行う一方で、本発明の特徴であるオーバーヘッド通過処理を行う。この通過処理は、先に説明したように多重化装置E2006の通過処理と逆の処理を行うものであり、高速信号のSOH終端部60およびLOH終端部70と、オーバヘッド多重化部130と空間スイッチ210とオーバヘッド分離部140からなるオーバヘッド処理部300−2と、低速信号のLOH挿入部80およびSOH挿入部90とにより、制御部400で指定された高速多重化信号に含まれる通過させる低速多重化信号のオーバヘッドを選択編集して低速多重化信号のオーバヘッドの規定された位置に挿入することで行われる。指定されたオーバヘッドにB2バイトが含まれる場合は、上述したようなB2バイト処理も行われる。
【0046】
以上の構成と動作により、多重化装置B−C間に他の多重化装置E,Fが挿入されている伝送ネットワークであっても、多重化装置BーC間において、主信号の伝送の他に、低速多重化信号のオーバヘッド伝送が多重化装置E,Fで終端されることなく伝送される。
【0047】
本発明の伝送装置は、以上の実施形態で説明した構成と動作により多重化信号の任意のオーバヘッドを通過させることができる。すなわち、図4(A)で示したような伝送システムを図4(B)で示したような新システムに変更する場合でも、新しく追加する多重化装置に本実施形態で示した多重化装置を用いれば、システム変更前に多重化装置B−C間で使用していたオーバヘッドは、新たな多重化装置で終端されることなく通過するので、変更後のシステムの多重化装置B−C間でも使用できる。したがって、システム構成の変更による多重化装置間の監視保守運用能力変化は生じない。また、所望の伝送装置間でのオーバヘッドの使用可能となるので、監視保守運用能力に優れた使い勝手の良い、システム構成に柔軟性を持たせることが可能な多重化装置を提供できる。
【0048】
さらに、本発明による伝送装置の別の実施形態および伝送装置を用いた伝送システムあるいはネットワークの実施形態について、以下、図面を用いながら詳細に説明する。
【0049】
図10は、本発明による伝送装置であるアッドドロップ多重化装置(以下、ADMと称する)の実施形態を示すブロック構成図である。また、図11は、本発明のADMを用いた伝送ネットワークの構成例を示す網構成図である。
【0050】
本発明のADMは、複数個のオーバヘッドと多重化された主信号からなる低速の多重化信号と2個のオーバヘッドと多重化された主信号からなる高速の多重化信号を収容し、各多重化信号のオーバーヘッドの終端や付け替え等の処理を行うとともに複数個の低速の多重化された主信号を高速の多重化された主信号に挿入(アッド)したり高速の多重化された主信号から複数個の低速の多重化された主信号を分岐(ドロップ)したり高速の多重化された主信号同士の入れ替え(クロスコネクト)や通過(スルー)を実施する多重分離装置であり、先の実施形態と同様に、例えば、低速多重化信号をOC−12、高速多重化信号をOC−192として、SONETで規定された上記主信号の処理とオーバーヘッドの処理を実施する一方で、本発明による装置に入力された多重化信号のオーバーヘッドを他の伝送装置で使用するために通過させるものである。そして、本ADMを用いる伝送ネットワークは、図11で示したように、ADM同士を高速伝送路(OC−192)で階段状(図11(A))あるいはループ状(図11(B))に接続するとともに、ADMの低速伝送路(OC−12)多重化装置等の伝送装置を接続するように構成して、ADMで上記のような主信号の処理を行うことで伝送装置間の主信号送受信を行う他に本発明によるオーバヘッドの通過処理により任意の伝送装置間で任意の低速多重化信号のオーバヘッド送受信も行うことで、オーバヘッドを主信号と同様に網内の伝送装置間で自在に送受信させる、監視保守運用能力に優れた柔軟性のある伝送システムを構築する。
【0051】
本ADMの構成は、先に説明した多重化装置とほぼ同じであり、主信号に対して上記アッド・ドロップ・クロスコネクト・スルーを行うための主信号挿入分離部105を加え、他の機能ブロックは、先の多重化装置と同じもの(図10で図6と同じ機能ブロックは同一参照番号を付与してある)を用いてその配置と数をADM用に変化させた構成である。以下の説明では、先の多重化装置と異なる箇所についてのみ説明する。
【0052】
高速信号送信/受信ユニット11は、本ADMが高速伝送路でADM同士を接続するように用いられるので(図11参照)、両側のADMに接続するようWEST側11−1とEAST側11−2の2個の高速信号送信/受信ユニット11を備えた。そして、上記主信号処理を行うために、これらの高速信号送信/受信ユニット11−1および11−2と低速信号送信/受信ユニット10−1〜M1とを接続したり高速信号送信/受信ユニット11−1および11−2同士を接続できるように、高速信号送信/受信ユニット11−1および11−2と主信号多重分離変換部100との間に主信号挿入分離部105を付加した。
【0053】
また、本ADMでは、高速多重化信号のオーバヘッド同士も通過させるように、オーバヘッド処理部300の空間スイッチ部200で、一方(例えばEAST側)高速信号送信/受信ユニットからオーバヘッド多重部130経由で受信した通過すべきオーバヘッドを選択編集してオーバヘッド分離部120を介して他方の(例えばWEST側)高速信号送信/受信ユニットに送信して、高速多重化信号のオーバヘッドの指定されたバイトに挿入する構成とした。
【0054】
さらに、高速多重化信号間で通過させるオーバヘッドにB2バイトに関する情報が含まれる場合、高速信号送信/受信ユニット11のLOH挿入部40では、先の多重化装置の低速信号送信/受信ユニット10のLOH挿入部80で行っていたようなB2バイトのビット反転操作を行わずに受信高速伝送路で発生した誤り数i(B2バイト終端結果)を受信した誤り数jに加算した誤り数kをそのまま送る構成にした。また、このオーバヘッド送受信区間での伝送誤りの検出を行う構成としては、後で説明するタンデムコネクションを利用する構成を採用しても良い。
【0055】
尚、本ADMにおいても、制御部400が各機能ブロックに対して通過させるべきオーバヘッドの種類や挿入する位置を指示して、各機能ブロックがこれらのオーバヘッドの編集・選択・挿入を行う構成である。また、制御装置は、図11で示した網管理装置2017から上記制御情報を受ける構成とした。すなわち、網管理装置2017が、各ADMに対して通過させるオーバヘッドの種類や挿入すべき位置を衝突や矛盾が起こらないように適当に指示すれことでオーバヘッドを主信号と同様に網内の伝送装置間で自在に送受信させる構成とした。
【0056】
上述のように、本実施形態で示したADMとそれを用いた伝送ネットワークあるいは伝送システムでも、本発明によれば、オーバヘッドを任意の伝送装置で通過させ、任意の伝送装置間で使用できる。したがって、システム構成の変更による監視保守運用能力変化が生じない、すなわち、監視保守運用能力に優れた柔軟性のある使い勝手の良い伝送システムを提供できる。
【0057】
以下では、オーバヘッドを送受信する伝送装置間の伝送区間で発生した伝送誤りを検出する構成について、上記実施形態で説明した構成とは異なる他の実施形態について説明する。これは、SONETやSDHを用いる伝送システムの構成でANSIやITU−Tで規格化されたタンデムコネクションを利用してオーバヘッド送信伝送装置から受信伝送装置で発生した伝送誤りを通知するもの、すなわち途中の伝送装置においてB2バイトを通過させるのと等価なものである。従って、上述した多重化装置やADMにおいては、いずれの構成を用いても良い。
【0058】
図12は、タンデムコネクションを利用して伝送誤りを検出する構成を説明する動作説明図である。尚、同図(A)が本構成であり、同図(B)には、先の多重化装置やADMで説明した伝送誤りを検出する構成を示してある。また、図13は、タンデムコネクションを用いる伝送網の構成を示す網構成図である。以下、これらの図面を用いて、今までに説明した実施形態と比較しながら、本発明によるタンデムコネクションを利用して伝送誤りを検出する構成を説明する。
【0059】
今までに説明した実施形態は、図12(B)に示したように、ある伝送装置でB2バイトを通過させて他の伝送装置間でB2バイトを用いた伝送区間の誤り検出を行うために、B2バイトを通過させる伝送装置においては、ライン区間のB2バイトの終端と誤り数iの検出と送信元伝送装置から通知された誤り数jの加算と加算された誤り数kの送信を伝送装置毎に行う構成とし、オーバヘッドを通過させる最終伝送装置で最終的に加算された誤り数(同図ではk‘とした)だけ最終伝送装置で生成したB2バイトのビットを反転させることにより、オーバヘッド送信伝送装置から受信伝送装置で発生した伝送誤りを通知する構成としていたものである。
【0060】
SONETやSDHを用いる伝送システムにおいては、パスの管理を送信元と受信先との間で行うのが基本であるが、図13で示したように、送信元の伝送装置4000−1と受信先伝送装置4000−2へのパスが複数の管理元が異なるネットワークにまたがる場合(本実施形態では、網管理領域1〜3にまたがっている)、管理領域毎にパスを管理して障害発生領域の特定を行う必要があり、ANSI規格のT1.150やITU−T規格のG.707で、管理領域の境界(両端)までの複数の伝送装置とラインで連続接続された区間をタンデムコネクションと定義して管理方法を規定したものである。具体的には、図1のフレーム構成図で示したペイロード内に含まれる複数個のパスオーバヘッドPOHの1つを用いるもので、伝送誤りについては、3行目にあるパスの誤りを検出するB3バイトと9行目にあるタンデムコネクションの管理バイトであるZ5バイトを用いて、タンデムコネクションの伝送誤りを管理する。一例として、管理領域1のタンデムコネクションの伝送誤り検出について説明すると、伝送装置4001でB3バイトにより送信元伝送装置4000−1から伝送装置4001までのパスで発生した誤り数lを監視し、この誤り数をZ5バイトに入れて伝送装置4002へ送信する。伝送装置4002では、再びB3バイトにより送信元伝送装置4000−1から伝送装置4002までのパスで発生した誤り数l‘を監視し、この誤り数l’からZ5バイトで受信した誤り数lを減算することで、タンデムコネクションで発生した誤り数を管理するものである。
【0061】
本実施形態で説明するオーバヘッドを送受信する伝送装置間の伝送区間で発生した伝送誤りを検出する構成は、図12(A)で示したように、低速多重化信号のオーバヘッドを通過させる最初の伝送装置2030を上記タンデムコネクションの入り口の伝送装置とみなし、低速多重化信号のオーバヘッドを通過させる最後の伝送装置2032を上記タンデムコネクションの終端伝送装置とみなして、上記のようなB3バイトとZ5バイトを用いたタンデムコネクションの管理方法を利用して誤り数を伝達する構成である。
【0062】
具体的には、伝送装置2030では、上述した実施形態と同様に低速多重化信号のB2バイトを終端後に検出した誤り数(j)を符号化して高速多重化信号のオーバヘッド領域の指定バイトに挿入して明いて伝送装置側の伝送路に送信する(3001、3002)。また、本伝送装置2030では、上記説明のようにB3バイトをチェックして本伝送装置に至るまでに発生したパスにおける誤り数(l)をZ5バイトに入れて送信する(3003)。
【0063】
オーバヘッドを通過させる途中の伝送装置2031では、受信した誤り数を通過させる(3004、3002)だけで、先の実施形態(図12(B)参照)のような伝送装置間のラインで検出したB2による誤り数(i)の加算処理は行わない。もちろん、B2バイトの終端処理(受信側における誤り検出と送信側におけるパリティ生成)は、通常(規格)どうり行われるが、本実施形態で説明するオーバヘッドの通過処理とは独立に処理される。また、B3バイトとZ5バイトは、パス間でチェックすれば良いものなので、本伝送装置では主信号として通過させるだけで他の処理(誤り数のチェック等)は不要である。
【0064】
伝送装置2032では、伝送装置2030から送られてきた誤り数(j)を抽出する(3004)。また、上記説明のようにB3バイトを再度チェックして本伝送装置に至るまでに発生したパスにおける誤り数(l‘)から受信したZ5バイトの値(l)を減算して伝送装置2030〜2032の伝送路(タンデムコネクション)で発生した伝送路誤り数(l’−l:図12(B)のi+i‘に等しい誤り数)求める(3005)。そして、上述した実施形態と同様に受信した誤り数(j)とと上記演算結果(l’−l)を加算して送信側伝送装置から本伝送装置までの伝送区間で発生した誤り数(k‘)を求め(3001)、生成したB2パリティビットをこのk’だけ反転させて受信側伝送装置2033に送信する(3006)。
【0065】
以上のような構成と方法でも、先の実施形態と同様に途中の伝送装置においてB2バイトを通過させたと同様になり、オーバヘッドを送受信する伝送装置間の伝送区間で発生した伝送誤りを相手装置に伝えることが可能となる。また、本構成によれば、オーバヘッドを通過させる途中の伝送装置における演算処理が不要となり、最初と最後の伝送装置だけが演算処理を行えば良いので、オーバヘッドを通過させる伝送装置が多くなる区間においてはハードウェアの量が減ることになる。上述した構成(図12(B))と本構成(図12(A))のいずれを用いるかは、ネットワークやシステムの規模に応じて選択すれば良い。
【0066】
上述したように、多重化装置やADMに本発明によるオーバヘッドを通過させる機能を備えて伝送網を構築することにより、従来の伝送システムのように網構成の変更により監視保守運用能力が変化することはない。そして、伝送網の任意の伝送装置間で任意のオーバヘッドを送受信することが可能となるので、監視保守運用能力に優れた柔軟性のある伝送網が簡単に実現できる。具体的には、任意の伝送装置間で、オーダワイヤE1やE2を送受信することで保守者の音声による通話ができる。また、データコミュニケーションチャネルD1〜12を送受信することで伝送装置の各種設定等が可能となり構成変更が容易にでき柔軟性のある伝送網が構築できる。特に、SONETにおいては、網管理装置等からD1〜12を送信して各伝送装置の設定を行う構成であるが、本発明のような途中の伝送装置を通過させる構成を用いれば、従来の装置では伝送装置毎に一旦終端してまた送信するというような伝送装置の制御部が介在する複雑な処理を行わなくても対象とする伝送装置まで設定に必要なデータを簡単に送れるようになり、伝送網の保守運用管理に極めて有効である。さらに、伝送路の切替制御バイトであるK1とK2を送受信することで、伝送装置間で矛盾のない伝送路選択が実行可能となるので、伝送路に障害が発生した場合の網構成を速やかに変更したり再構成できるようになり、伝送網の保守運用管理に有効である。そして、伝送誤りについては、伝送装置間でB2バイトを直接転送させることはできないが、発生した誤り数を検出して確実に通知する構成としたので、伝送装置間においては、途中に伝送装置がなく直結した場合にB2バイトを送受信した場合と等価な伝送区間における誤り率の管理が可能となる。尚、図3で示した他のオーバヘッドも上記説明したオーバヘッドと同様に転送することで伝送装置間の監視保守運用に利用できることはもちろんである。
【0067】
また、本発明では、上述したような規格で規定された多重化信号のオーバヘッド領域の未使用バイトを選択して、この選択された未使用バイトに伝送装置を通過させるオーバヘッドを挿入して送信する構成である。すなわち、伝送網やシステムにおいて予め使用するバイトを決めてから送受信したり、あるいは、先に説明したデータコミュニケーションチャネルを用いて使用するバイトの設定を変更して送受信することが可能であり、伝送装置の数や監視保守運用情報量に応じて空きバイトがある限り伝送網内で自由な設定ができるので、網構成や監視保守運用方法が変更、あるいは、今後の規格の変更が生じても、これらに柔軟に対応できる監視保守運用能力に優れた伝送装置および伝送網が提供できる。
【0068】
【発明の効果】
本発明の多重化伝送装置と伝送網によれば、従来の伝送装置では装置毎に終端されていた監視保守運用にかかわる情報を送受信するオーバヘッドを網内の所望の伝送装置間で送受信できるようになるので、網構成の変更や監視保守運用方法に依存しない監視保守運用能力に優れた伝送装置および伝送網が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】低速多重化信号(OC−12)の構成を示すフレーム構成図である。
【図2】高速多重化信号(OC−192)の構成を示すフレーム構成図である。
【図3】多重化信号のオーバヘッドの機能を示す機能説明図である。
【図4】伝送網の構成とオーバヘッド処理区間を説明する網構成図である。
【図5】本発明による伝送装置(多重化装置)の構成を示すブロック構成図である。
【図6】同じく、オーバヘッド通過の様子を説明するオーバヘッド構成図である。
【図7】同じく、オーバヘッド通過の様子を説明するオーバヘッド構成図である。
【図8】オーバヘッド(B2バイト)の計算領域を示す動作説明図である。
【図9】本発明による伝送装置を使用した伝送網の構成を示す網構成図である。
【図10】本発明による別の伝送装置(ADM)の構成を示すブロック構成図である。
【図11】同じく、別の伝送装置を使用した伝送網の構成を示す網構成図である。
【図12】本発明による伝送装置を使用した伝送網におけるタンデムコネクションを用いた伝送誤り検出の構成を説明する動作説明図である。
【図13】同じく、タンデムコネクションを用いる伝送網の構成を示す網構成図である。
【符号の説明】
10−1〜M・・・低速信号送信/受信処理ユニット、
11・・・高速信号送信/受信処理ユニット、
20−1〜M・・・低速信号セクションオーバヘッド終端部、
30−1〜M・・・低速信号ラインオーバヘッド終端部、
40・・・高速信号ラインオーバヘッド挿入部、
50・・・高速信号セクションオーバヘッド挿入部、
60・・・高速信号セクションオーバヘッド終端部、
70・・・高速側信号ラインオーバヘッド終端部、
80−1〜M・・・低速信号ラインオーバヘッド挿入部、
90−1〜M・・・低速信号セクションオーバヘッド挿入部、
100・・・主信号多重分離変換部、 105・・・主信号挿入分離部、
110、130・・・オーバヘッド多重化部、
120、140・・・オーバヘッド分離部、 200、210・・・スイッチ部
300・・・オーバヘッド処理部、 400・・・制御部
1000〜1004、1100〜1107・・・通過オーバヘッド、
1200〜1208・・・通過オーバヘッド、
2000〜2033・・・伝送装置、
3000〜3006・・・伝送誤り処理部、
OC−12、 OC−192・・・多重化伝送路。
Claims (8)
- 第 1 の保守情報をあらかじめ定められた規則により規定された第 1 の領域に格納する第1のオーバヘッド部および、複数の主信号を多重化してなる第1のペイロード部を含む第1の多重化信号を第1の伝送路から受信し、新たに生成した第 2 の保守情報を前記規則に従って第 1 の領域に格納する第2のオーバヘッド部および、前記第 1 のペイロード部に含まれる主信号の少なくとも一部を多重化した信号を有する第2のペイロード部を含む第2の多重化信号を第2の伝送路へ送信する多重分離伝送装置であって、
前記第 1 の領域の前記第 1 の保守情報を処理する受信手段と、
前記第1のオーバヘッド部から、前記第 1 の領域とは異なる第 2 の領域に格納された第 2 の保守情報を抽出する抽出手段と、
前記第 2 の保守情報を、前記規則により前記保守情報を格納するよう定められた前記第 2 のオーバヘッド部に含まれる領域に挿入する挿入手段とを有することを特徴とする多重分離伝送装置。 - 前記抽出手段により抽出された前記第2の保守情報を、前記規則により定められた領域に挿入できるように並べ替えるオーバヘッド処理手段を有することを特徴とする多重分離伝送装置。
- 請求項1に記載の多重分離伝送装置であって、
前記規則は国際電気通信連合の勧告G.707あるいは米国標準化委員会の規格T.105に従い、前記第 2 の領域は、ラインオーバヘッドに含まれる領域であることを特徴とする多重分離伝送装置。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載の多重分離伝送装置であって、
前記第1及び第2の保守情報は、国際電気通信連合の勧告G.707あるいは米国標準化委員会の規格T.105に定めた保守情報であるEバイト、Fバイト、Dバイト、Kバイト、Zバイトから選択された保守情報であることを特徴とする多重分離伝送装置。 - 第 1 の保守情報をあらかじめ定められた規則により規定された第 1 の領域に格納する第1のオーバヘッド部および、複数の主信号を多重化してなる第1のペイロード部を含む第1の多重化信号を第1の伝送路から受信し、新たに生成した第 2 の保守情報を前記規則に従って第 1 の領域に格納する第2のオーバヘッド部および、前記第 1 のペイロード部に含まれる主信号の少なくとも一部を多重化した信号を有する第2のペイロード部を含む第2の多重化信号を第2の伝送路へ送信する多重分離伝送装置であって、
前記第1の領域の第1の保守情報を用いて、前記第1の伝送路での第1の誤り数を検出し、
前記第 1 の領域とは異なる第 2 の領域に格納された第2の誤り数を抽出する抽出手段と、
前記第1の誤り数と前記第2の誤り数の和を第3の誤り数とし、
前記第3の誤り数を、前記保守情報を格納するよう前記規則で定められた前記第2のオーバヘッド部の領域に格納することを特徴とする多重分離伝送装置。 - 請求項5に記載の多重分離伝送装置において、
前記保守情報は、国際電気通信連合の勧告G.707あるいは米国標準化委員会の規格T.105に定めたB2バイトもしくはB3バイトで処理される伝送路誤りに対応した情報であることを特徴とする多重分離伝送装置。 - 請求項4乃至6のいずれかに記載の多重分離伝送装置において、
前記第3の誤り数を、前記保守情報を格納するよう前記規則で定められた前記第2のオーバヘッド部の領域に格納するために並べ替えることを特徴とする多重分離伝送装置。 - 請求項4乃至7のいずれかに記載の多重分離伝送装置において、
前記第2の領域は、ラインオーバヘッドに含まれる領域であることを特徴とする多重分離伝送装置。
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