JP3660220B2 - 消弧装置、同装置を備えた開閉器及び消弧方法 - Google Patents

消弧装置、同装置を備えた開閉器及び消弧方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、開路時、電極間に発生するアークを消弧する消弧装置、同装置を備えた開閉器及び消弧方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の消弧装置としては、例えば実公昭63−33460号公報に示されるような構造が知られている。即ち、図11(a)〜(c)に示すように、消弧装置91は、一対の消弧室本体92,93を備えており、両消弧室本体92,93内にはそれぞれ消弧部材94,95が互いに対向して傾動可能に支持されている。両消弧部材94,95は、それぞれの外面と両消弧室本体92,93内面との間に介装されたスプリング96の弾性力により、互いに近接する方向に付勢されている。両消弧部材94,95間にはスプリングの弾性力に抗して可動電極97が進入可能になっている。
【0003】
11(a)に示す閉路状態において、可動電極97は両消弧部材94,95間に介在しており、両消弧室本体92,93の下方に設けられた固定電極(図示略)に対して接触している。この閉路状態から開路する場合、図11(b)に示すように、可動電極97が両消弧部材94,95間から抜け出すのに伴って、両消弧部材94,95はスプリング96の弾性力により可動電極97が位置していた空間を固定電極側から順次閉塞するように移動する。そして、図11(c)に示すように、可動電極97が両消弧部材94,95間から完全に抜け出すと、固定電極と可動電極97との間に発生したアークは両消弧部材94,95の内面同士が密着することにより押し切られ消弧される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来の消弧装置91においては、開路時、両消弧部材94,95の内面同士が完全に密着せず、隙間が形成される場合があった。このため、アークが完全には押し切られず、再点弧のおそれがあった。従って、固定電極と可動電極97との間には両電極間の絶縁を保持するために一定以上の絶縁距離を設ける必要があり、両電極間の距離の短縮には限界があった。
【0005】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、固定電極と可動電極との間の距離を短縮することができる消弧装置、同装置を備えた開閉器及び消弧方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、開路時において、固定電極と可動電極との間に発生するアークを固定電極側に固定された消弧室内において消弧するようにした開閉器の消弧方法において、可動電極の開路動作に連動して、アークの発生部位に対し、アークが引き延ばされる方向に対してほぼ直交するように前記固定電極側に回動可能に支持した隔壁部材を消弧室内へ進入させると共に前記消弧室内においてアーク熱により発生する消弧性ガスを可動電極の軌道から遠ざける方向に放出することをその要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、開路時において、固定電極と可動電極との間に発生するアークを消弧する消弧装置において、前記固定電極側に消弧室を固定配置し、その室内を、開路時において固定電極と可動電極との間に発生するアークの発生部位とすると共に、同じく固定電極側に隔壁部材を回動可能に支持し、可動電極の開路動作に連動して、前記隔壁部材をアークの発生している消弧室内へ進入させるリンク機構を設けたことをその要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記消弧室の固定電極直近部位を切り欠いて、隔壁部材進入用のスリットを形成し、閉路状態において、このスリットを外方から閉鎖する閉鎖部材を隔壁部材に突設したことをその要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記隔壁部材は円弧板状に形成されると共に、前記消弧室の両側を覆う扇状の側壁を有し、同側壁に設けた軸着部を介して固定電極側へ軸着されると共に、前記側壁に設けた支持軸に対し、可動電極を外部から操作可能にしたリンク機構を作動連結し、開路時に、前記隔壁部材を消弧室のアーク発生部位に進入可能にしたことをその要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、開閉器の本体ケースを貫通する一方のブッシングの内端に突設された導電棒に対し、固定電極及びこれを覆う消弧室を固着し、同消弧室の収容部側面には隔壁部材を軸着すると共に、同じく消弧室の細隙消弧室基端部には前記隔壁部材を進入可能としたスリットを形成し、さらにもう一方のブッシング内端に突設された導電棒には、可動電極を、その接触刃が前記固定電極に対して接離可能に軸着すると共に、外部操作に連動して回動される支持軸からリンク機構を介して、同接触刃を回動可能に連動し、同じくリンク機構を介して前記隔壁部材を前記スリットへ進入可能に連動したことをその要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記消弧室は、導電棒に固着された固定電極の収容部と、その上面に対して、斜状に形成された細隙消弧室とからなり、固定電極の直近であって細隙消弧室基端には、開路時、隔壁部材が進入するスリットを形成したことをその要旨とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の発明において、前記収容部は、互いに組立可能とした底部収容部材と上部収容部材とからなり、固定電極を収容可能としたことをその要旨とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜請求項7のうちいずれか一項に記載の発明において、前記収容部には隔壁部材を軸着可能とした支持軸を設けたことをその要旨とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の発明において、前記底部収容部材と上部収容部材には、それぞれ互いに対応する半円柱状の突起を設け、両部材が組み立てられたとき、両突起によって、隔壁部材を回動可能に支持する支持軸が構成されるようにしたことをその要旨とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項7〜請求項9のうちいずれか一項に記載の発明において、アーク熱により発生する消弧性ガスの放出方向を可動電極の軌道から遠ざけるように前記隔壁部材が移動するようにしたことをその要旨とする。
【0016】
作用)
請求項1,2に記載の発明においては、可動電極の開路動作に連動して、隔壁部材がアークの発生している消弧室内へ進入する。
【0018】
請求項に記載の発明においては、請求項に記載の発明の作用に加えて、閉路状態において、スリットは閉鎖部材により外方から閉鎖される。
請求項に記載の発明においては、請求項又は請求項に記載の発明の作用に加えて、可動電極の開路操作に連動して、隔壁部材が消弧室内のアーク発生部位に進入する。
【0019】
請求項に記載の発明においては、外部操作による可動電極の回動に連動して隔壁部材がスリット内へ進入する。
請求項に記載の発明においては、請求項に記載の発明の作用に加えて、開路時、収容部と細隙消弧室との間には隔壁部材が進入し、アーク経路は隔壁部材を迂回するように屈曲される。
【0020】
請求項に記載の発明においては、請求項又は請求項に記載の発明の作用に加えて、固定電極は収容部内、即ち底部収容部材と上部収容部材とから形成される空間内に収容される。底部収容部材を固定電極に固定し、この固定された底部収容部材に対して上部収容部材が取り付けられる。
【0021】
請求項に記載の発明においては、請求項〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、前記収容部には隔壁部材が軸着される。
請求項に記載の発明においては、請求項又は請求項に記載の発明の作用に加えて、底部収容部材及び上部収容部材を組み立てたとき、それぞれに設けられた半円柱状の突起により円柱状の支持軸が構成される。
【0022】
請求項10に記載の発明においては、請求項〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、底部収容部材、消弧室及び隔壁部材を組み合わせたとき、任意の方向に消弧性ガスを放出するよう消弧室の内部が袋状に構成される。隔壁部材の移動により消弧性ガスの放出方向は可動電極の軌道から遠ざかる方向になる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、開閉器に具体化した一実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0024】
図1に示すように、開閉器11の本体ケース12の互いに対向する両側壁には電源側ブッシング13及び負荷側ブッシング14が3相各相毎(図1においては1相分のみ示す。)に互いに対向するように貫通支持されている。電源側ブッシング13の内端部には導電棒15が突設されており、同導電棒15の上面には固定電極16が固定されている(図3参照)。負荷側ブッシング14の内端部には導電棒17が突設されており、同導電棒17には軸18を介して可動電極19の基端部が回動可能に支持されている。可動電極19は一枚板状の接触刃19aから構成されている。
【0025】
一方、前記本体ケース12内の下部には、複数のリンク等からなる開閉機構部(図示略)を介して、本体ケース12外部の操作ハンドル(図示略)に作動連結された回動軸20が設けられており、同回動軸20にはレバー21が一体回動可能に固定されている。このレバー21の先端には駆動リンク22の一端が回動可能に連結されており、同駆動リンク22の他端は可動電極19のほぼ中央に回動可能に連結されている。また、前記レバー21の先端には作動リンク23の一端が回動可能に連結されている。
【0026】
従って、前記操作ハンドルが操作されると、可動電極19は前記開閉機構部、回動軸20、レバー21及び駆動リンク22を介して軸18を中心に図1に実線で示す投入位置と図1に二点鎖線で示す開放位置との間を移動する。前記開閉機構部、回動軸20、レバー21、駆動リンク22及び作動リンク23は、可動電極19を外部から操作可能とすると共に、後述の隔壁部材61aをアークの発生している後述の消弧室本体31内へ進入させるリンク機構Lを構成する。
(消弧装置)
図2に示すように、前記電源側ブッシング13の内端部には消弧装置30が設けられている。この消弧装置30は固定電極16を覆うように設けられた消弧室本体31と、同消弧室本体31に対して回動可能に設けられた可動隔壁部材32とを備えている。消弧室本体31及び可動隔壁部材32はそれぞれポリアセタール、ポリテトラフルオルエチレン、メラミン、ユリア及びナイロン等の絶縁性及び消弧性を有する合成樹脂により形成されている。
【0027】
図3に示すように、前記消弧室本体31は、導電棒15及び固定電極16を覆う収容部41と、同収容部41の上面に対して斜状に形成された細隙消弧室42とを備えている。この消弧室本体31の内部は開路時においてアークが発生するアーク発生部位となっている。図3及び図4(a), (b)に示すように、前記収容部41は互いに組み立て可能とした底部収容部材43及び上部収容部材44から構成されている。
【0028】
図3に示すように、前記底部収容部材43は前記収容部41の底壁を構成する底壁部材45を備えている。この底壁部材45の上面には前記電源側ブッシング13側を開口した平面U字枠状の連結部46が突設されている。図3及び図4(a), (b)に示すように、連結部46のほぼ中央から電源側ブッシング13側の部分は前記収容部41の両側壁の一部を構成する一対の側壁部47, 47となっている。
【0029】
両側壁部47, 47の外面にはそれぞれ半円柱状の突起49が形成されており、同突起49の電源側ブッシング13側はフラット面49aとされている。また、前記連結部46の反電源側ブッシング13側は上部収容部材44の内部に進入可能とした嵌合部48とされている。図3に示すように、底部収容部材43は、固定電極16及び導電棒15を貫通して上方から挿通されたボルトBに対して下方からナットNを締め付けることにより、導電棒15の下面に対して固定されている。
【0030】
図3に示すように、前記上部収容部材44は底部を開口した箱体状に形成されている。上部収容部材44の両側壁部51,51にはそれぞれ切欠凹部52,52(図3では1つのみ図示する。)が形成されている。図4(a)に示すように、この切欠凹部52は前記底部収容部材43の側壁部47に対して凹凸関係をなすように設けられている。図3及び図4(b)に示すように、両側壁部51,51にはそれぞれ半円柱状の突起54, 54が形成されており、両突起54, 54の反電源側ブッシング13側はフラット面54aとされている。
【0031】
図2及び図3に示すように、前記上部収容部材44は導電棒15に固定された底部収容部材43に対して上方から嵌め込むことにより電源側ブッシング13の内端部に固定されている。図4(a)に示すように、前記底部収容部材43の側壁部47,47と前記上部収容部材44の側壁部51,51とは互いに突合わせ状態に保持されている。前記底部収容部材43の嵌合部48は上部収容部材44の内部に位置している。また、前記両突起49, 54のフラット面49a, 54aは互いに一致し、両突起49,54から円柱状の支持軸60が形成されている。図4(b)に示すように、前記上部収容部材44の上壁から負荷側ブッシング14側側壁に亘る中央部には溝55が連続的に形成されており、可動電極19はこの溝55を通過可能となっている。
【0032】
図3及び図4(a), (b)に示すように、前記細隙消弧室42は前記上部収容部材44の溝55を挟んで互いに対向する一対の細隙消弧部材56a, 56aを備えている。両細隙消弧部材56a, 56aは前記可動電極19が通過可能な程度に離間されている。両細隙消弧部材56a, 56aは上部収容部材44の上面に対して所定の角度をなすように、且つ上部収容部材44の上面から反電源側ブッシング13側側面の上部中央に亘って設けられている。両細隙消弧部材56a, 56aの先端は互いに離間する方向に拡開されている。
【0033】
図3及び図4(a)に示すように、固定電極16の直近である両細隙消弧部材56a, 56aの基端部には、所定の曲率半径を有する円弧状のスリット57が形成されている。図3及び図4(a)に示すように、前記両細隙消弧部材56a, 56aの外面には、それぞれ円弧板状の下部案内部材58がスリット57の下行部に沿うように突設されている。また、両細隙消弧部材56a, 56aの外面において、前記スリット57の上方には円弧板状の上部案内部材59が下部案内部材58の上面から所定距離だけ離間するように突設されている。
【0034】
(可動隔壁部材)
図2及び図3に示すように、前記可動隔壁部材32は前記収容部41の一部を覆う収容室61を備えている。収容室61の負荷側ブッシング14側の側壁は所定の曲率半径を有する円弧板状の隔壁部材61aとされている。この隔壁部材61aは前記スリット57内に進入可能となるように形成されている。
【0035】
図3及び図5(a), (b)に示すように、前記収容室61は互いに対向する一対の扇状の側壁部材61b, 61bを備えている。両側壁部材61b, 61bの電源側ブッシング13側には半円形状の軸着部62が突設されており、同軸着部62には挿通孔63が形成されている。両側壁部材61b, 61bにおける隔壁部材61a寄りの中央付近にはそれぞれ作動ピン64が突設されている。
【0036】
図2に示すように、軸着部62の挿通孔63には前記支持軸60が挿通されており、可動隔壁部材32が消弧室本体31に対して回動可能に軸着されている。また、両作動ピン64にはそれぞれ前記作動リンク23の他端が回動可能に連結されている。従って、可動隔壁部材32は、前記操作ハンドルの操作に伴って、開閉機構部(図示略)、回動軸20、レバー21、作動リンク23及び作動ピン64を介して、支持軸60を支点に図2に示す投入対応位置と図7に示す開放対応位置との間を移動する。
【0037】
図3及び図5(a), (b)に示すように、前記隔壁部材61aの外面上部には、一対の円弧板状の閉鎖部材65が隔壁部材61aに対して直交するように突設されている。両閉鎖部材65は所定距離だけ離間されており、前記下部案内部材58と上部案内部材59との間に進入可能、且つ両細隙消弧部材56a, 56aの外面に対してそれぞれ摺動可能になっている。図2に示す投入状態において、閉鎖部材65は前記スリット57を外方から閉鎖している。
【0038】
図3及び図5(a), (b)に示すように、両閉鎖部材65の隔壁部材61aからの突出部分における下行部には、それぞれ円弧板状の被案内部材66が両閉鎖部材65に対して直交するように形成されている。両被案内部材66は前記下部案内部材58の上面に沿って摺動可能となっている。
【0039】
次に、前述のように構成された開閉器11の開路時の作用を説明する。
図2に示す投入状態において、前記操作ハンドルが開路操作されると、可動電極19は軸18を中心に右回動する。そして、図6に示すように、可動電極19が固定電極16から離間すると両電極16,19間にはアークが発生する。可動電極19の右回動に伴い、同可動電極19は前記細隙消弧部材56a, 56a間を下方から上方へ移動する。即ち、可動電極19は両細隙消弧部材56a, 56aによって挟着され、両電極16,19間に発生したアークは細隙消弧されながら引き延ばされる。また、アーク熱にて発生した消弧性ガスによりアークの消弧が促進される。図8(a)に示すように、スリット57が閉鎖部材65にて閉鎖されることにより、消弧性ガスのスリット57からの漏出が防止され、消弧装置30の消弧性能が向上する。
【0040】
一方、前記操作ハンドルの開路操作に伴って、前記レバー21は右回動し、作動リンク23は上方に移動する。可動隔壁部材32は作動ピン64を介して上方へ移動され、支持軸60を中心に左回動する。図6及び図8(b)に示すように、隔壁部材61aは被案内部材66が下部案内部材58にて案内されながら前記スリット57内に円滑に進入する。即ち、隔壁部材61aは、消弧室本体31内における両電極16,19間のアーク発生部位に対し、アークが引き延ばされる方向に対してほぼ直交するように進入する。
【0041】
言い換えれば、隔壁部材61aは固定電極16のアーク発生部と可動電極19のアーク発生部とを直線で結んだ線分を遮るように移動する。この隔壁部材61aは発生したアークを遮るように両電極16, 19間に介在する。このため、図6に示すように、アーク経路は隔壁部材61aを迂回するように屈曲され、アーク経路、即ちアークの引き伸ばし距離が直線の場合に比べて大きくなる。アーク経路の屈曲度は隔壁部材61aのスリット57内への進入に伴って増大する。
【0042】
前記可動電極19が図7に示す開放位置まで移動すると、アークは完全に消弧され開路動作は終了する。このとき、アーク経路は図7に示すように両電極16,19間の絶縁距離が十分に確保される程度に屈曲する。即ち、開路動作終了後、隔壁部材61aは同相間絶縁バリアとして機能し、両電極16,19間の絶縁耐力が向上する。このため、両電極16,19間の距離を短縮することが可能となる。尚、閉路時には前述の開路時とは逆の動作が行われる。
【0043】
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)開路時、アークの発生部位に対し、アークが引き延ばされる方向に対してほぼ直交するように隔壁部材61aを進入させるようにした。このため、アーク経路は隔壁部材61aを迂回するように屈曲され、アークの引き伸ばし距離が直線の場合に比べて大きくなる。従って、固定電極16と可動電極19との間の距離を短縮することができる。
【0044】
(2)隔壁部材61aのアーク発生部位への進入動作は、可動電極19の開路動作に連動して行われるようにした。即ち、隔壁部材61aがアークの発生タイミングに対応してアーク発生部位に進入し、両電極16,19間の絶縁耐力を効率的に向上させることができる。
【0045】
(3)固定電極16側に配置固定した消弧室本体31に対して可動隔壁部材32を回動可能に支持した。そして、可動電極19の開路動作に連動して、可動隔壁部材32を回動させ隔壁部材61aをアークの発生している消弧室本体31内へ進入させるリンク機構Lを設けた。このため、隔壁部材61aを簡単な構成で可動電極19の開路動作に連動させることができる。
【0046】
(4)消弧室本体31の固定電極16直近部位を切り欠いて、隔壁部材61a進入用のスリット57を形成した。そして、隔壁部材61aには、閉路状態において、このスリット57を外側から閉鎖する閉鎖部材65を設けた。このため、開路時、消弧室本体31内にて発生した消弧性ガスのスリット57からの漏出を防止することができる。
【0047】
(5)固定電極16を収容する収容部41を、互いに組立可能とした底部収容部材43及び上部収容部材44から構成した。即ち、ボルトB及びナットNにて導電棒15に底部収容部材43を固定しておき、この底部収容部材43に対して上部収容部材44を上方から嵌め込むようにした。このため、消弧室本体31の固定電極16への取り付けが簡単になる。
【0048】
(6)底部収容部材43及び上部収容部材44には、それぞれ互いに対応する半円柱状の突起49,54を設け、両者43,44が組み立てられたとき、両突起49,54によって、可動隔壁部材32を回動可能に支持する支持軸60が構成されるようにした。このため、支持軸60に対して可動隔壁部材32を軸着することで、消弧室本体31に対する安定した可動隔壁部材32の挿入動作が得られると共に、底部収容部材43と上部収容部材44との連結がより強固になる。
【0049】
尚、前記実施形態は以下のように変更して実施してもよい。
・前記消弧室本体31を図9に示すように形成してもよい。即ち、両細隙消弧部材56a, 56aの電源側ブッシング13側間を連結するくの字状の連結部材31aに放出孔31bを形成してもよい。この放出孔31bは開口部30aの上方に位置するように形成する。このようにすれば、可動隔壁部材32の移動に伴って、消弧室本体31、可動隔壁部材32及び底壁部材45で構成される袋状の空間X内において、アークの発生する熱エネルギと、消弧室本体31等が熱分解することで発生する消弧性ガスとにより、瞬間的に圧力が上昇する。これは可動隔壁部材32の移動によって消弧性ガスの放出口面積、即ち開口部30aの開口面積が小さくなるからである。この空間X内の圧力上昇に伴って、消弧性ガスは開口部30aから放出され、同開口部30aから放出された消弧性ガスは放出孔31bを介して消弧装置30の外部に放出される。即ち、隔壁部材61aは消弧性ガスの放出方向を可動電極19の軌道から遠ざけるように移動する。本実施例においては、消弧性ガスは上方へ放出され、可動電極19方向には放出されない。一般に、アークを消弧しながら遮断することから、消弧性ガス中には拡散電子が混在している。このため、例えば消弧室本体31の消耗により消弧性能が低下した場合に、拡散電子を伴う消弧性が低下したガスが可動電極19方向へ放出されると、可動電極19が開放状態にあり一旦消弧が完了していても、若干のタイムラグを伴って再点弧現象が発生するおそれがある。本実施例では、消弧性ガスは上方へ放出され可動電極19方向には放出されないことから、消弧室本体31等の消耗により消弧性能が低下した場合においても再点弧が発生しにくい。
【0050】
・また、前記消弧室本体31を図10に示すように形成してもよい。即ち、前記連結部材31aにおけるくの字部分上部を省略してもよい。このようにしても、前記連結部材31aに放出孔31bを形成した場合と同様に、消弧性ガスは上方へ放出され、可動電極19方向に放出されることがない。従って、消弧装置30の消弧性能が低下した場合でも再点弧が防止できる。
【0051】
・図1、図9及び図10に示す消弧装置30、固定電極16、可動電極19及びリンク機構L等からなる開閉部を天地が逆になるように設けてもよい。例えば投入時、可動電極19は軸18を中心に左回動し、固定電極16に対して下方から接触する。また、開放時、開口部30aは図1、図9及び図10における下方に位置し、消弧性ガスは下方へ放出される。このようにしても、消弧性ガスは可動電極19方向に放出されることがなく、消弧室本体31等の消耗により消弧性能が低下した場合における再点弧を防止することができる。
【0052】
・本実施形態においては、1枚板状の接触刃19aからなる可動電極19を備えた開閉器11に応用したが、2枚板状の接触刃からなる可動電極を備えた開閉器に応用してもよい。即ち、2つの接触刃と固定電極との間に発生したアークを遮るように隔壁を進入させる。このようにしても、固定電極と可動電極との間の絶縁耐力を向上させ、両電極間の距離を短縮することができる。
【0053】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、可動電極の開路動作に連動して、隔壁部材がアークの発生している消弧室内へ進入することにより、固定電極と可動電極との間の閃絡距離が長くなり、両電極間の距離を短縮することができる。
【0054】
請求項及び請求項〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明によれば、隔壁部材がアークの発生タイミングに対応してアーク発生部位に進入することにより、効率的に絶縁耐力を向上させることができる。
【0055】
請求項に記載の発明によれば、隔壁部材を簡単な構成で可動電極の開路動作に連動させることができる。
請求項に記載の発明によれば、請求項に記載の発明の効果に加えて、開路時、消弧室内にて発生した消弧性ガスのスリットからの漏出を防止することができる。
【0056】
請求項に記載の発明によれば、請求項又は請求項に記載の発明の効果に加えて、固定電極に対して収容部を簡単に取り付けることができる。
請求項に記載の発明によれば、請求項〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明に記載の発明の作用に加えて、隔壁部材を支持軸を支点に回動させることができる。
【0057】
請求項に記載の発明によれば、請求項又は請求項に記載の発明の効果に加えて、支持軸に対して隔壁部材を軸着することで、底部収容部材と上部収容部材との連結をより強固にすることができる。
【0058】
請求項10に記載の発明によれば、請求項〜請求項のうちいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、消弧性ガスが可動電極の軌道から遠ざかる方向に放出されることにより、消弧室の消耗により消弧性能が低下した場合においても再点弧が発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 開閉器の正断面図。
【図2】 投入状態の開閉部の正面図。
【図3】 消弧装置の取り付けを示す分解斜視図。
【図4】 (a)は、消弧室本体の分解正面図。
(b)は、消弧室本体の分解側面図。
【図5】 (a)は、可動隔壁部材の正面図。
(b)は、可動隔壁部材の側面図。
【図6】 開放途中の開閉部の正面図。
【図7】 開放状態の開閉部の正面図。
【図8】 (a)は、図2における1−1線要部断面図。
(b)は、図6における2−2線要部断面図。
【図9】 別の実施形態における開閉部の正面図。
【図10】別の実施形態における開閉部の正面図。
【図11】(a)〜(c)は、従来の消弧室の正断面図。
【符号の説明】
11…開閉器、12…本体ケース、13…電源側ブッシング、
14…負荷側ブッシング、15…導電棒、16…固定電極、17…導電棒、
19…可動電極、19a…接触刃、30…消弧装置、
31…消弧室本体(消弧室)、32…可動隔壁部材、41…収容部、
42…細隙消弧室、43…底部収容部材、44…上部収容部材、
49,54…突起、57…スリット、60…支持軸、61a…隔壁部材、
61b…側壁、62…軸着部、64…作動ピン、65…閉鎖部材、
L…リンク機構。

Claims (10)

  1. 開路時において、固定電極と可動電極との間に発生するアークを固定電極側に固定された消弧室内において消弧するようにした開閉器の消弧方法において、
    可動電極の開路動作に連動して、アークの発生部位に対し、アークが引き延ばされる方向に対してほぼ直交するように前記固定電極側に回動可能に支持した隔壁部材を消弧室内へ進入させると共に前記消弧室内においてアーク熱により発生する消弧性ガスを可動電極の軌道から遠ざける方向に放出する開閉器の消弧方法。
  2. 開路時において、固定電極と可動電極との間に発生するアークを消弧する消弧装置において、
    前記固定電極側に消弧室を固定配置し、その室内を、開路時において固定電極と可動電極との間に発生するアークの発生部位とすると共に、同じく固定電極側に隔壁部材を回動可能に支持し、可動電極の開路動作に連動して、前記隔壁部材をアークの発生している消弧室内へ進入させるリンク機構を設けた開閉器の消弧装置。
  3. 前記消弧室の固定電極直近部位を切り欠いて、隔壁部材進入用のスリットを形成し、閉路状態において、このスリットを外方から閉鎖する閉鎖部材を隔壁部材に突設した請求項2に記載の開閉器の消弧装置。
  4. 前記隔壁部材は円弧板状に形成されると共に、前記消弧室の両側を覆う扇状の側壁を有し、同側壁に設けた軸着部を介して固定電極側へ軸着されると共に、前記側壁に設けた支持軸に対し、可動電極を外部から操作可能にしたリンク機構を作動連結し、開路時に、前記隔壁部材を消弧室のアーク発生部位に進入可能にした請求項2又は請求項3に記載の開閉器の消弧装置。
  5. 開閉器の本体ケースを貫通する一方のブッシングの内端に突設された導電棒に対し、固定電極及びこれを覆う消弧室を固着し、同消弧室の収容部側面には隔壁部材を軸着すると共に、同じく消弧室の細隙消弧室基端部には前記隔壁部材を進入可能としたスリットを形成し、さらにもう一方のブッシング内端に突設された導電棒には、可動電極を、その接触刃が前記固定電極に対して接離可能に軸着すると共に、外部操作に連動して回動される支持軸からリンク機構を介して、同接触刃を回動可能に連動し、同じくリンク機構を介して前記隔壁部材を前記スリットへ進入可能に連動した開閉器。
  6. 前記消弧室は、導電棒に固着された固定電極の収容部と、その上面に対して、斜状に形成された細隙消弧室とからなり、固定電極の直近であって細隙消弧室基端には、開路時、隔壁部材が進入するスリットを形成した請求項5に記載の開閉器の消弧装置。
  7. 前記収容部は、互いに組立可能とした底部収容部材と上部収容部材とからなり、固定電極を収容可能とした請求項5又は請求項6に記載の開閉器の消弧装置。
  8. 前記収容部には隔壁部材を軸着可能とした支持軸を設けた請求項5〜請求項7のうちいずれか一項に記載の開閉器の消弧装置。
  9. 前記底部収容部材と上部収容部材には、それぞれ互いに対応する半円柱状の突起を設け、両部材が組み立てられたとき、両突起によって、隔壁部材を回動可能に支持する支持軸が構成されるようにした請求項7又は請求項8に記載の開閉器の消弧装置。
  10. アーク熱により発生する消弧性ガスの放出方向を可動電極の軌道から遠ざけるように前記隔壁部材が移動するようにした請求項7〜請求項9のうちいずれか一項に記載の開閉器の消弧装置。
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