JP3654818B2 - 排水処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水質汚濁防止技術(公害防止技術)の分野に属するものであって排水系の端末で用いられる排水処理装置を改良したものに関する。
【0002】
【従来の技術】
排水処理手段の一つに、端末処理装置で処理した後の排水を地中へ浸透させるものがある。これによるときは、端末処理装置から地中へ浸透した処理水が地下水として涵養されるので地下水の枯渇化傾向が改善される。のみならず、処理水に残留する有機窒素・有機燐の類が地中の微生物で分解されたり地上植物に吸収されたりするから、処理水が地中から染み出して河川などに流れ込んだとしても水質汚濁が起こりがたい。これはまた、端末処理装置が大地に直結しているという点で、自然の浄化系に依存した大きな事後処理能力も期待することができる。設備面でもこの種の端末処理装置は、多孔構造の内筒と外筒・濾過材・処理槽などで簡潔かつ経済的に構成することができる。
【0003】
上記に関する先行技術として、本件出願人の考案に係る実公昭57−53673号公報の排水処理装置(端末処理装置)がある。この文献に開示された排水処理装置は図3を参照して明らかなように、処理槽1と、処理槽1上に建て込まれた錐形の内筒2と、内筒2の周りを囲う外筒3と、内外筒2・3間に充填された濾過材4と、外部から内筒2の空間内まで配管された排水導入管5とを備え、これらが地表G下に埋設されたものである。さらにいうと、内筒2は網目材からなり、これの上面に蓋6が施されている。外筒3は通水性のある多孔部材からなる。
【0004】
図3の排水処理装置において排水は、排水導入管5を通じて処理槽1内に流入する。処理槽1内への排水流入量が多くなると、処理槽1からオーバフローした排水が内筒2を通過して濾過材4の層へと浸透する。濾過材4の層や外筒3を通過した後の排水(処理水)は、地中の通気層を懸遊しながら地下へ重力浸透し、自由地下水になったり被圧地下水になったりする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した排水処理装置は、水質汚染防止と共に地下水の枯渇化傾向が改善できるところに有用性がある。しかも装置の出口が地中と直結しているから、処理水中の残留有機物が地中の各種微生物でさらに分解処理される。しかしながらこの装置にも難点がある。その一つは処理水の拡散性が乏しいことである。処理槽1をオーバフローした後の排水は、濾過材4中に浸透するといえども、処理槽1の外壁面を伝って直下型に流れる傾向が強いため、処理槽1の底壁付近に集中してそこに停滞しがちとなる。したがって処理水が地下へ十分に拡散浸透しない。他の一つは処理槽1から地中に至るまでの時間が短すぎることである。これは処理槽1と地中との間に濾過材4が介在しているだけで、排水が濾過材4の層からすぐに地中へ浸透するから、処理槽1内の嫌気生菌などで排水中の汚染物質を十分に分解処理することができない。しかも排水の地中拡散が不十分なところへ排水が短絡的に流出してくるのであるから、処理槽1の周囲では排水の停滞傾向がより顕著になり、はなはだしいときは水浸しとなる。
【0006】
【発明の目的】
本発明はかかる技術的課題に鑑み、処理槽内の微生物に依存した排水処理能力を高めたり、処理水の地中拡散性を高めたりすることのできる排水処理装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る排水処理装置は所期の目的を達成するために下記の課題解決手段を特徴とする。すなわち請求項1記載の排水処理装置は、内外に重なり合った複数の処理槽と、最内側にある処理槽の上部に建て込まれた多孔構造の内筒と、最内側処理槽のつぎに大きい処理槽内から立ち上がる多孔構造の外筒と、内外筒間に充填された濾過材と、外部から内筒の空間内まで配管された排水導入管とを備えていて、最外側にある処理槽には該処理槽の外周部から張り出した排水拡散用のフランジが設けられており、これらが地下に埋設されていることを特徴とする。
【0008】
【作用】
本発明装置において排水導入管を流れる排水は内筒の空間内より最内側の処理槽内に流れ込む。最内側の処理槽内では固形物・粗大微粒子・液体などが比重差で分離し、固形物や粗大微粒子が沈降する。最内側処理槽に至るまでの排水は、好気性菌による分解処理やその他の処理をすでに受けているので大きな固形物はほとんどないとみてよい。最内側処理槽内に流れ込んだ排水はこれが一定量に達するまで該処理槽内に溜まり、ここに棲息する嫌気生菌などの微生物で汚染物質を分解される。排水が連続的または間欠的に流れ込むことで槽内水量が最内側処理槽の容量を上回ると、排水は最内側処理槽からオーバフローして内筒→濾過材→外筒のように通過し、中間の処理槽内や最外側の処理槽内へと進入する。この間、排水中の汚染物質は濾過材で捕捉される。中間処理槽内に溜まる排水も、これが所定量以上になったときに該処理槽をオーバフローして最外側の処理槽へ流れ込む。最外側処理槽からオーバフローする排水の場合は、該処理槽に隣接する地中へ拡散浸透していく。このような排水処理によるときは、最内側処理槽内の微生物による汚染物質の分解処理、濾過材による汚染物質の捕捉、中間処理槽内や最外側処理槽内の微生物による汚染物質の分解処理、地中微生物による汚染物質の分解処理など、これらの処理で排水のクリーン度が高まる。
【0009】
本発明装置は内外に重なり合った複数の処理槽を基盤にしており、これらと他の構成部材とが組み立てられたものである。この装置における排水は上述のごとく、排水導入管→最内側処理槽→内筒→濾過材→外筒→中間処理槽→最外側処理槽→地中のような経路で流れる。この経路中には、最内側処理槽だけでなく中間処理槽や最外側処理槽も存在するから、排水が各処理槽を通過するときの所要時間(トータル的な槽内滞在時間)は長い。この間、排水は各処理槽内の微生物とくに嫌気生菌で十分に分解される。しかも排水は、各処理槽を通過するときに流動抵抗を受けるので緩やかに流れる。加えて最外側処理槽の径が大きい。したがって最外側処理槽から地中へ向かう処理水(処理後の排水)も低速かつ広範囲に拡散しながら無理なく地中に浸透していく。これは最外側処理槽の周りの水浸しや処理水の拡散不良が起こりがたいということである。また、排水拡散用のフランジが最外側処理槽の外周部に設けられているので、処理水(処理後の排水)の拡散性がより高まり、上記のような水浸し現象もほとんど起こらない。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る排水処理装置の実施形態を添付の図面に基づき説明する。
【0011】
図1図2において、11〜13は処理槽、21は内筒、22は内筒用の蓋、31は外筒、41〜43は濾過材、51は排水導入管、Gは地表をそれぞれ示す。
【0012】
各処理槽11〜13の相対関係はつぎのようなものである。すなわちこれらは、処理槽11<処理槽12<処理槽13のような外径差を有するほか、高さ(深さ)についても処理槽11=処理槽12>処理槽13のような差がみられる。各処理槽11〜13はいずれも上面の開放された容器からなる。また、これらのうちの処理槽13には、その外周部から径方向に張り出した排水拡散用のフランジ14が設けられている。図示例のフランジ14は、これの突出する方向に向けて下り勾配で傾斜している。各処理槽11〜13としては、陶器製(セラミック製)・コンクリート製・合成樹脂製・不銹性金属製・これらの複合材製など任意材質のものを用いることができるが、耐食性の点で陶器製やコンクリート製や合成樹脂製のものが望ましい。その一例として素焼陶器製のものが用いられる。
【0013】
内筒21や外筒31は筒体からなり、内筒21にはこれの上面を開閉するための蓋22が付帯している。内筒21や外筒31は合成樹脂・不銹性金属またはこれらの複合材でつくられる。その代表的一例として合成樹脂でつくられた網目構造の筒体が内筒21や外筒31として用いられる。内筒21・外筒31の形状も円筒形・多角筒形・円錐筒形・角錐筒形・異形の筒形など任意である。図示例においては内筒21として截頭円錐形のものが採用されており、外筒31として円筒形のものが採用されている。内筒21と外筒31の相対関係では外筒31の内径が内筒21の最大外径を上回る。内外両筒21・31の高さは任意でよい。しかし通常は[処理槽11の高さ]+[内筒21の高さ]>[外筒31の高さ]のような関係を満足させる。蓋22は内筒21の上端開口部と脱着自在に対応する形状や大きさを有するものであり、これは処理槽11〜13と同じ材料でつくられる。
【0014】
濾過材41〜43としては、天然の無機材料・有機材料や合成系の無機材料・有機材料など、この種の技術分野で公知ないし周知のものが用いられる。これの具体例としてゼオライト・砕石・砂利・活性炭・シリカ・炭・石炭・植物繊維・合成繊維・木屑(木粉)などをあげることができる。これらの材料から任意に選択される濾過材41〜43は、合成樹脂製網袋や布製袋のような通水性のある被包材に詰められて変形自在なブロック形状をなしている。
【0015】
排水導入管51は排水を流すための下水管である。このような排水導入管51は、陶器・コンクリート・合成樹脂・不銹性金属などのうちから選択された周知材料からなる。
【0016】
図1・図2に例示された排水処理装置一例として下記のようにして組み立てられる。はじめは地表Gから地中に向けて掘られた縦穴の底部に処理槽13が設置され、その上に処理槽12、さらにその上に処理槽11が積み重ねられる。すなわち各処理槽11〜13は、縦穴の底部において内外に重ね合わされて同心円状に配置される。このような各処理槽については、最内側処理槽11、中間処理槽12、最外側処理槽13のようにいうことができる。つぎに最外側処理槽13の残存空間(中間処理槽12と最外側処理槽13との間)に濾過材43が詰め込まれる。これで両処理槽12・13はずれ動くことなく安定する。続いて中間処理槽12内に外筒31が建て込まれる。この場合の外筒31も各処理槽11〜13に対して同心円状になる。外筒31の建て込み後、中間処理槽12と外筒31との間に濾過材42が詰め込まれたり、外筒31と最内側処理槽11との間に濾過材41が詰め込まれたりするが、この時点で外筒31と最内側処理槽11との間に詰め込まれる濾過材41の量は、最内側処理槽11の上端付近までである。この濾過材充填により、外筒31や最内側処理槽11もずれ動くことなく安定する。しかる後、内筒21が最内側処理槽11の上部に建て込み連結されて内筒21と外筒31との間に濾過材41が詰め込まれるとともに、その上にも濾過材41が積み上げられる。装置の近くまで配管された排水導入管51の端部は、かかる濾過材41の充填途中において、外筒31や内筒21を貫通して内筒21の空間内に引き込まれる。そのほか、内筒21の上端開口部が蓋22で閉じられる。このようにして所定の組み立てが完了したときは、縦穴が埋め戻し用の土で覆土される。かくて装置は、蓋22を除くほとんどの部分が図1のごとく地下に埋没する。
【0017】
本発明において、図1・図2の実施形態に係る排水処理装置を用いて排水処理するときは以下のようになる。
【0018】
図1・図2に例示された排水処理装置は図示しない排水処理系の端末にあり、排水導入管51を介してその排水処理系に接続されているものである。この排水処理装置で排水導入管51を間欠的または連続的に流れる排水は、内筒21の空間部より最内側処理槽21内に流れ込む。最内側処理槽21内においては既述のとおり、固形物・粗大微粒子・液体などが比重差で分離し、固形物や粗大微粒子が沈降する。最内側処理槽21では嫌気生菌が支配的であるから、それによって排水中の有機物その他が分解される。最内側処理槽21の水位が該槽の上端を越えると、排水は内筒21内の空間部領域まで一時的に上昇し、そこから内筒21の壁(多孔構造)を透過して内外筒21・31間の濾過材41中へ緩やかに滲み出し、該濾過材41の層の中を低速で重力浸透する。排水中の汚染物質などはこれらの濾過材41で捕捉されたり微生物処理されたりする。このように重力浸透する排水は中間処理槽12の領域内にあるから中間処理槽12内に溜まる。中間処理槽12内には外筒31の内外側に濾過材41の層があり、上記重力浸透時の排水はそのうちの内側の濾過材層を伝う。けれども内側・外側の両濾過材層は外筒31の壁(多孔構造)を介して相互に通じているから、内側の濾過材41の層を浸透する排水は外側の濾過材42の層にも行きわたる。もちろんこれら濾過材41・42の層においても排水中の汚染物質等が捕捉されたり分解されたりする。中間処理槽12の水位が所定レベルを越えると、排水が最外側処理槽13へ流れ出る。この最外側処理槽13内にも濾過材43が充填されているから、ここへ進入した排水は上記と同様に処理される。最外側処理槽13の水位が所定レベルを越えたときは、排水が最外側処理槽13からオーバフローして地中へ拡散浸透する。
【0019】
上記のようにして地中浸透する排水すなわち処理水は、地中浸透を開始するまでの間に数次にわたる処理を受けているので、処理前に比べ、クリーン度の高いものになっている。以下処理水は、地中の微生物により残存有機物等を分解されたりして地下水として涵養される。地中浸透するときの処理水は、また、最も外径の大きい最外側処理槽13からオーバフローするから、処理水の拡散範囲は当初から大きい。これは狭い領域から地中拡散浸透するものと比べた場合に、処理水の局在化や停滞が起こりがたい。ゆえに処理水の拡散浸透性がよくなる。とくに排水拡散用のフランジ14が最外側処理槽13の外周部に設けられているものでは、それによって最外側処理槽13の外径がさらに大きくなるので、処理水の拡散性がより高まる。加えて、最外側処理槽13の外周面沿いに処理水が流下するのを下り勾配のフランジ14が阻止するから、最外側処理槽13の周りで水浸し等の事態が発生することもない。
【0020】
本発明に係る排水処理装置の他の実施形態にはつぎのようなものがある。一つは中間処理槽12内の濾過材42および/または最外側処理槽13内の濾過材43を省略することである。これらの濾過材42・43を省略したとき、中間処理槽12内や最外側処理槽13内には覆土が入り込む。他の一つは中間処理槽12を省略することである。このように省略するケースのとき、濾過材42には濾過材または覆土が入り込む。これとは逆に、径の異なる二つ以上の中間処理槽を最内側処理槽11と最外側処理槽13との間に介在させることもある。
【0021】
【発明の効果】
本発明に係る排水処理装置はつぎの効果を有する。
【0022】
排水は、地中にある複数の処理槽・多孔構造の内筒・多孔構造の外筒・濾過材の層など多くの処理部を緩やかに通過する。それで排水中に含まれる有機物質やその他の汚染物質は、これらの処理部を棲息の場とする微生物で十分に分解処理されたり濾過材で捕捉されたりする。ゆえに排水処理能力が高く、排水をクリーン度の高い処理水にして地中浸透させることができる。
【0023】
排水は上記のように緩やかに流れる。加えて最外側処理槽の径が大きい。したがって最外側処理槽から地中へ向かう処理水も低速かつ広範囲に拡散しながら無理なく地中に浸透していく。それゆえ、最外側処理槽の周りの水浸しや処理水の拡散不良が起こりがたい。また、排水拡散用のフランジが最外側処理槽の外周部に設けられているので、処理水の拡散性がより高まるので、上記水浸し現象もほとんど起こらない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の一実施形態を略示した切り欠き正面図である。
【図2】図1の本発明装置について濾過材の一部を取り除いて略示した平面図である。
【図3】従来装置を略示した断面図である。
【符号の説明】
11〜13 処理槽
14 フランジ
21 内筒
22 蓋
31 外筒
41〜43 濾過材
51 排水導入管
G 地表

Claims (1)

  1. 内外に重なり合った複数の処理槽と、最内側にある処理槽の上部に建て込まれた多孔構造の内筒と、最内側処理槽のつぎに大きい処理槽内から立ち上がる多孔構造の外筒と、内外筒間に充填された濾過材と、外部から内筒の空間内まで配管された排水導入管とを備えていて、最外側にある処理槽には該処理槽の外周部から張り出した排水拡散用のフランジが設けられており、これらが地下に埋設されていることを特徴とする排水処理装置。
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