JP3633641B2 - 細孔多孔体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、吸着剤や分離膜として利用される、微細な細孔を均一に有する細孔多孔体に関する。
【0002】
【従来技術】
細孔径が100nm以下の多孔体は、混合物の分離に用いる吸着剤や、混合気体の分離に用いられる分離膜として有効なことが知られている。これは、気体の平均自由行程が約100nmであることから、多孔体の細孔の径がこの値以下になると多孔体を通過する気体の流れが壁面との衝突による影響を非常に大きく受けることとなり、分子量の差による透過速度の差が発現するからであり、このような多孔体で分離膜を形成すれば気体を分離できる。また、吸着剤として用いても、分子径の異なる混合物から各成分を分離することが可能である。
【0003】
このような微細の細孔を有する多孔体においては、いずれの用い方の場合においても、分離能力の向上を図るためには多孔体に形成される細孔径の均一性が要求される。従来かかる細孔多孔体を製造する方法として、次のような方法が実用化あるいは研究されている。
(1)酸に溶解し易い成分を含む多成分系のガラスを熱処理により微細に分相させ、これを酸に浸し、酸に溶解し易い成分のみを溶解させて取り除くことにより微細且つ均一な細孔をガラスに形成する分相法。
(2)アルミニウムを酸に浸し、電圧をかけながらその表面から酸化反応を行なうことにより微細且つ均一な径の細孔を有する酸化アルミニウムを形成させる陽極酸化法。
(3)金属アルコキシドの加水分解及び縮合を経て得られるゲル体を乾燥、焼成することにより微細且つ均一な細孔径を有する金属酸化物を形成するゾルゲル法。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記製造法は、いずれも多くの化学プロセスを伴わなくてはならず、孔径制御には各プロセスにおける試薬、溶媒等の配合比、反応温度、反応時間など多くの要因がかかわっているため品質の管理には非常に複雑な制御技術を必要とする。
【0005】
また、上記製造法(1)による製品は、酸に溶解する物質の形状を任意に形成できないため細孔の形状が複雑となり、かつ後から表面修飾等の応用が困難であるという問題がある。製造法(2)による製造では、数十nm以下の細孔径を形成することは困難であり、又製造法(3)による製品においては細孔径の再現性が充分でないといわれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、その目的は、細孔径が1nm〜100nmの範囲でかつ均一である細孔多孔体を提供することであり、化学プロセスを含まない単純な工程で細孔多孔体を製造する製造方法を提供することである。
【0007】
上記目的を達成するため、セラミック粒子相互が立体的に密に接触する状態に配置して細孔多孔体を形成し、又、所定の粒径のセラミック粒子材を、セラミック粒子が細密充填に近い状態になる圧力で圧縮し、セラミック粒子間に形成される間隙、すなわち細孔の径を気体の平均自由行程である約100nm以下に、しかも均一に形成することとして細孔多孔体の製造方法を構成した。
【0008】
【作用】
セラミック粒子が相互に立体的に接触した状態であると、セラミック粒子間で形成される細孔はセラミック粒子の径の1/3〜1/4程度になり、セラミック粒子を選択することにより100nm以下の所望の径の細孔が均一に形成された細孔多孔体を提供できる。またセラミック粒子材を高圧で圧縮することにより、簡単な工程で100nm以下の細孔径を均一に有する細孔多孔体の製造が可能である。更にセラミックの粒径を適宜に選択することにより細孔径の異なる多孔体を形成することができる。
【0009】
【実施例】
以下本発明について詳細に説明する。
【0010】
セラミック粒子としては粒径が3nm〜300nmで、その粒径分布がそれぞれ数%〜数10%の範囲で均一なものを用いる。セラミック粒子が溶液中に分散されたコロイド状であればまず乾燥させ、その後数千気圧で加圧し、まず円柱状に仮成型する。そして、この仮成型したセラミック粒子を高圧加圧機に掛け数万気圧の圧力で加圧して細孔多孔体を得た。
【0011】
このようにして得られた細孔多孔体は、セラミック粒子が立体的に相互に密接した状態となっており、セラミック粒子間に形成される間隙(円形と仮定する)は、図1に示すように、セラミック粒子の粒子半径をaとしたとき、細密充填状態での孔径、つまり1/4a〜1/3aに非常に近い値になっている。しかも、均一に粒子が密接しているため粒子間に形成される細孔の孔径が上記値の範囲内で均一に形成されている。
【0012】
次に上記細孔多孔体の実施例1〜8について説明する。
【0013】
(実施例1)
平均粒径15nmのシリカ粒子のコロイド液(触媒化成工業製:カタロイドSN)をシヤーレ上で乾燥させ、乾燥したシリカ粒子を0.2gとり、アルミ箔で包む。アルミ箔で包んだシリカ粒子を加圧機にて5000気圧の圧力で加圧し、円柱状に仮成型する。この仮成型したシリカ粒子を、次に高圧加圧機に掛け、室温において25000気圧の圧力で2時間加圧した。このようにして得られた細孔多孔体の細孔径を求めた結果を図2に示す。図2に示すグラフは、横軸に細孔直径(単位nm)を表し、縦軸に細孔容積(単位cm3 /g)を表す。細孔容積の計測はBET法による計測である。又、図中の実線は加圧を行なわないシリカ粒子材であり、細点線は5000気圧による仮成型のみのもの、粗点線は仮成型品を25000気圧まで加圧したものを示す。この図2から明らかなように、25000気圧に加圧することにより、細孔径が小さくなり、その値は粒径の1/4程度の細密充填値に近づいていることがわかる。しかも、その値においてシャープなピークを有し、細孔径が均一の値であることがわかる。
【0014】
図8に、上記粒子を25000気圧で加圧して得られた多孔体の電子顕微鏡写真を示す。この電子顕微鏡写真は、多孔体表面を50000倍の倍率に拡大した写真であり、この図からもシリカ粒子が相互に密接した状態で接触していることがわかる。
【0015】
(実施例2)
実施例1と同様にして仮成型したシリカ粒子を、高圧加圧機により、室温において35000気圧の圧力で2時間の加圧をおこない、細孔多孔体を形成した。その結果を図3の細点線で示す。
【0016】
(実施例3)
実施例1と同様にして仮成型したシリカ粒子を、高圧加圧機により、室温において40000気圧の圧力で2時間の加圧をおこない、細孔多孔体を形成した。その結果を図3の粗点線で示す。
【0017】
(実施例4)
実施例1と同様にして仮成型したシリカ粒子を、高圧加圧機により、室温において50000気圧の圧力で2時間の加圧をおこない、細孔多孔体を形成した。その結果を図3の一点鎖線で示す。図3における横軸及び縦軸の表すものは図2におけるものと同様である。以下図4〜図7も同様である。
【0018】
図3からは、加圧の程度により細孔分布の均一性は変化し、細密充填させるには最適な圧力が存在することが判明した。すなわち、必要以上の加圧を行なうと細孔の総体積が減少し、より微細な細孔が相対的に増加している。これは、シリカ粒子が圧力により破壊され、粒子間の空隙の緻密化が進行しているためと判断される。
【0019】
(実施例5)
平均粒径8nmのシリカ粒子のコロイド液(触媒化成工業製:カタロイドSI−350)をシヤーレ上で乾燥させ、乾燥したシリカ粒子を0.2gとり、アルミ箔で包む。アルミ箔で包んだシリカ粒子を加圧機にて5000気圧の圧力で加圧し、円柱状に仮成型する。この仮成型したシリカ粒子を高圧加圧機に掛け、室温において25000気圧の圧力で2時間加圧した。このようにして得られた細孔多孔体の細孔径を求めた結果を図4に示す。
【0020】
(実施例6)
平均粒径12nmのシリカ粒子のコロイド液(触媒化成工業製:カタロイドSI−30)をシヤーレ上で乾燥させ、乾燥したシリカ粒子を0.2gとり、アルミ箔で包む。アルミ箔で包んだシリカ粒子を加圧機にて5000気圧の圧力で加圧し、円柱状に仮成型する。この仮成型したシリカ粒子を高圧加圧機に掛け、室温において25000気圧の圧力で2時間加圧した。このようにして得られた細孔多孔体の細孔径を求めた結果を図5に示す。
【0021】
(実施例7)
平均粒径33nmのシリカ粒子のコロイド液(触媒化成工業製:カタロイドSI−45P)をシヤーレ上で乾燥させ、乾燥したシリカ粒子を0.2gとり、アルミ箔で包む。アルミ箔で包んだシリカ粒子を加圧機にて5000気圧の圧力で加圧し、円柱状に仮成型する。この仮成型したシリカ粒子を高圧加圧機に掛け、室温において25000気圧の圧力で2時間加圧した。このようにして得られた細孔多孔体の細孔径を求めた結果を図6に示す。
【0022】
(実施例8)
平均粒径80nmのシリカ粒子のコロイド液(触媒化成工業製:カタロイドSI−80P)をシヤーレ上で乾燥させ、乾燥したシリカ粒子を0.2gとり、アルミ箔で包む。アルミ箔で包んだシリカ粒子を加圧機にて5000気圧の圧力で加圧し、円柱状に仮成型する。この仮成型したシリカ粒子を高圧加圧機に掛け、室温において25000気圧の圧力で2時間加圧した。このようにして得られた細孔多孔体の細孔径を求めた結果を図7に示す。
【0023】
実施例5〜8の結果からシリカ粒子の直径を適宜に選択することにより、成型された細孔多孔体の細孔径を制御することができることが判明した。
【0024】
以上述べたように、かかる細孔多孔体を吸着剤や分離膜として用いた場合には、細孔多孔体に形成された細孔が、気体の平均自由行程以下であるので、気体の分離等に良好な結果を得ることができる吸着剤等に形成できる。
【0025】
尚、シリカ微粒子のコロイド液を用いた理由は、シリカコロイド液中に粒径数nm〜数十nmの範囲内の所望の径の球形のシリカ微粒子が、水溶液、有機溶媒、あるいはその混合物などの液体に分散しており、その粒径分布は数%〜数十%の範囲で均一なものが市販されて容易に入手できるからである。しかも、その径の均一性は電子顕微鏡観察やレーザによる粒度分布測定により容易に確認が可能であるからである。
【0026】
しかしながら、これらの粒子は極めて小さくまたその表面が帯電しているために凝集や沈降が起こらず液体中に均一に分散している。したがって、これらシリカ微粒子のコロイド液をただ乾燥したり弱い加圧をしただけでは微粒子の表面の反発により細密には充填せずその乾燥物、成型物の細孔径分布は広くなってしまう。そこで、本発明のように充分な圧力で加圧することにより、かかるシリカ粒子を凝集させることが初めて可能となり、気体の平均自由行程程度の径の細孔を均一に有する多孔体を確実且つ容易に得ることが可能となった。なお、当初から均一な径のシリカ粒子が得られれば、シリカ粒子はコロイドに限らず粉末状であってもよい。
【0027】
【発明の効果】
本発明の、細孔多孔体は、気体の平均自由行程程度の径の細孔を均一に有し、良好な分離膜等として利用可能であり、また、かかる細孔多孔体の製造方法によれば、容易に且つ確実に気体の平均自由行程程度の径の細孔を均一に有した細孔多孔体を形成でき、これにより分離膜等を形成できる。更に、シリカ粒子の粒径を適宜に選択することにより形成される細孔を所望の径にすることができ、これにより分離膜等を形成した場合には所望の性能を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック粒子間の細孔径を示す図である。
【図2】本発明にかかる細孔多孔体の一実施例の細孔径分布を示すグラフである。
【図3】本発明にかかる細孔多孔体の他の実施例の細孔径分布を示すグラフである。
【図4】本発明にかかる細孔多孔体の他の実施例の細孔径分布を示すグラフである。
【図5】本発明にかかる細孔多孔体の他の実施例の細孔径分布を示すグラフである。
【図6】本発明にかかる細孔多孔体の他の実施例の細孔径分布を示すグラフである。
【図7】本発明にかかる細孔多孔体の他の実施例の細孔径分布を示すグラフである。
【図8】本発明にかかる細孔多孔体の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
Claims (2)
- 3〜300nmの間の均一な径の微細セラミック粒子材を仮成型し、その後5000〜40000気圧の圧力で圧縮して該セラミック粒子相互を立体的に互いに接触させ、該セラミック粒子間に形成される間隙が1〜100nmの間の所望の均一な径の細孔となるようにしたことを特徴とする細孔多孔体の製造方法。
- 前記セラミック粒子間に形成される細孔の径が、前記セラミック粒子材の径の1/3〜1/4程度であることを特徴とする請求項1に記載の細孔多孔体の製造方法。
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- 1994-02-25 JP JP02714894A patent/JP3633641B2/ja not_active Expired - Fee Related
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