JP3630917B2 - 半導体装置の作製方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜半導体を用いた半導体装置の構成およびその作製方法に関する。例えば、ガラス等の絶縁基板上に設けられたTFT(薄膜トランジスタ)の構成および体装置及びその作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜半導体を用いた薄膜トランジスタ(以下TFT等)が知られている。このTFTは、基板上に薄膜半導体を形成し、この薄膜半導体を用いて構成されるものである。このTFTは、各種集積回路に利用されているが、特に電気光学装置特にアクティブマトリックス型の液晶表示装置の各画素に設けられたスイッチング素子、さらには画素を駆動する周辺回路部分に形成されるドライバー素子として注目されている。
【0003】
これらの装置に用いられるTFTには、薄膜状の珪素半導体を用いるのが一般的である。薄膜状の珪素半導体としては、非晶質珪素半導体(a−Si)からなるものと結晶性を有する珪素半導体からなるものの2つに大別される。非晶質珪素半導体は作製温度が低く、気相法で比較的容易に作製することが可能で量産性に富むため、最も一般的に用いられているが、導電率等の物性が結晶性を有する珪素半導体に比べて劣るため、今後より高速特性を得る為には、結晶性を有する珪素半導体からなるTFTの作製方法の確立が強く求められていた。尚、結晶性を有する珪素半導体としては、多結晶珪素、微結晶珪素、結晶成分を含む非晶質珪素、結晶性と非晶質性の中間の状態を有するセミアモルファス珪素等が知られている。
【0004】
これら結晶性を有する薄膜状の珪素半導体を得る方法としては、
(1) 成膜時に結晶性を有する膜を直接成膜する。
(2) 非晶質の半導体膜を成膜しておき、レーザー光のエネルギーにより結晶性を有せしめる。
(3) 非晶質の半導体膜を成膜しておき、熱エネルギーを加えることにより結晶性を有せしめる。
と言った方法が知られている。
【0005】
しかしながら、(1)の方法は良好な半導体物性を有する膜を基板上に全面に渡って均一に成膜することが技術上困難であり、また成膜温度が600℃以上と高いので、安価なガラス基板が使用できないというコストの問題がある。また、(2)の方法は、現在最も一般的に使用されているエキシマレーザーを例にとると、レーザー光の照射面積が小さいため、スループットが低いという問題がまずあり、また大面積基板の全面を均一に処理するにはレーザーの安定性が充分ではなく、次世代の技術という感が強い。(3)の方法は、(1)、(2)の方法と比較すると大面積に対応できるという利点はあるが、やはり加熱温度として600℃以上の高温にすることが必要であり、安価なガラス基板を用いることを考えると、さらに加熱温度を下げる必要がある。特に現在の液晶表示装置の場合には大画面化が進んでおり、その為ガラス基板も同様に大型の物を使用する必要がある。この様に大型のガラス基板を使用する場合には、半導体作製に必要不可欠な加熱工程における縮みや歪みといったものが、マスク合わせ等の精度を下げ、大きな問題点となっている。特に現在最も一般的に使用されているコーニング7059ガラスの場合には、歪み点が593℃であり、従来の加熱結晶化方法では大きな変形を起こしてしまう。また、温度の問題以外にも現在のプロセスでは結晶化に要する加熱時間が数十時間以上にも及ぶので、さらにその時間を短くすることも必要である。
【0006】
そして更に大きな問題としてこれらの方法によって作製された結晶性を有するシリコン薄膜は、偶発的な核発生とそこからの結晶成長によっているため、その粒径、配向性等が殆ど制御できないことであった。これらを制御しようとする試みは過去から現在に渡り非常に多く行われており、その例として例えば特公平5─71993に示される様な特許を挙げることができる。しかしこの特許に示される様な方法においても、所詮はある限定された範囲内での偶発的な核を用いたに過ぎず、完全に膜の配向性を制御したわけではなく、また粒径の制御は全く行われていないのが現実である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決する手段を提供するものである。より具体的には非晶質珪素からなる薄膜を加熱により結晶化させる方法を用いた、結晶性を有する珪素半導体からなる薄膜の作製方法において、結晶化に必要な温度の低温化と時間の短縮を両立するプロセスを提供することをその目的とする。勿論、本発明で提供されるプロセスを用いて作製した結晶性を有する珪素半導体は、従来技術で作製されたものと同等以上の物性を有し、TFTの活性層領域にも使用可能なものであることは言うまでもないことである。
【0008】
その際に、従来の偶発的な核発生を利用した方法に代わる新しい結晶性珪素薄膜の作製方法を提供するものである。この方法は、比較的低温において十分な生産性を有する結晶性珪素薄膜の作製方法であると同時に、粒径の制御及び配向性についてもかなり高い制御性を有する方法である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
〔発明の背景〕
本発明人らは、上記従来の技術の項で述べた様な非晶質珪素の結晶化に付随する問題点を解決するため、熱結晶化を促進する方法、粒径及び配向性の制御方法を検討すべく、以下のような実験及び考察を行った。
【0010】
まずは、熱結晶化を促進する方法について述べる。
まず実験事実として、ガラス基板上に非晶質珪素膜を成膜し、この膜を加熱により結晶化させるメカニズムを調べると、結晶成長はガラス基板と非晶質珪素との界面から始まり、ある程度の膜厚以上までは基板表面に対して垂直な柱状に進行することが認められた。
【0011】
上記現象は、ガラス基板と非晶質珪素膜との界面に、結晶成長の基となる結晶核(結晶成長の基となる種)が存在しており、その核から結晶が成長していくことに起因すると考察される。このような結晶核は、基板表面に微量に存在している不純物金属元素やガラス表面の結晶成分(結晶化ガラスと呼ばれるように、ガラス基板表面には酸化珪素の結晶成分が存在していると考えられる)あるいは応力に起因するものであると考えられる。
【0012】
そこで、より積極的に結晶核を導入することによって結晶化温度の低温化が可能ではないかと考え、その効果を確認すべく、他の金属を微量に基板上に成膜し、その上に非晶質珪素からなる薄膜を成膜、その後加熱結晶化を行う実験を試みた。その結果、幾つかの金属を基板上に成膜した場合においては結晶化温度の低下が確認され、異物を結晶核とした結晶成長が起こっていることが示唆された。そこで低温化が可能であった複数の不純物金属について更に詳しくそのメカニズムを調査した。
【0013】
結晶化は、初期の核生成と、その核からの結晶成長の2段階に分けて考えることができる。ここで、初期の核生成の速度は、一定温度において点状に微細な結晶が発生するまでの時間を測定することによって観測されるが、この時間は上記不純物金属を成膜した薄膜ではいずれの場合も短縮され、結晶核導入の結晶化温度低温化に対する効果が確認された。しかも予想外のことであるのだが、核生成後の結晶粒の成長を加熱時間を変化させて調べたところ、ある種の金属を成膜後、その上に成膜した非晶質珪素薄膜の結晶化においては、核生成後の結晶成長の速度までが飛躍的に増大することが観測された。このメカニズムについては後ほど詳しく述べることにする。
【0014】
いずれにしろ、上記2つの効果により、ある種の金属を微量に成膜した上に非晶質珪素からなる薄膜を成膜、その後加熱結晶化した場合には、従来考えられなかったような、580℃以下の温度で4 時間程度の時間で十分な結晶性が得られることが判明した。この様な効果を有する不純物金属の中で、最も効果が顕著であり、我々が選択した材料がニッケルである。
【0015】
ニッケルがどの程度の効果を有するのか一例を挙げると、なんら処理を行なわない、即ちニッケルの微量な薄膜を成膜していない基板上(コーニング7059)にプラズマCVD法で形成された非晶質珪素からなる薄膜を窒素雰囲気中での加熱によって、結晶化する場合、その加熱温度として600℃とした場合、加熱時間として10時間以上の時間を必要としたが、ニッケルの微量な薄膜を成膜した基板上の非晶質珪素からなる薄膜を用いた場合には、4時間程度の加熱において同様な結晶化状態を得るこができた。尚この際の結晶化の判断はラマン分光スペクトルを利用した。このことだけからも、ニッケルの効果が非常に大きいことが判るであろう。
【0016】
上記説明から判る様に、ニッケルの微量な薄膜を成膜した上から、非晶質珪素からなる薄膜を成膜した場合、結晶化温度の低温化及び結晶化に要する時間の短縮が可能である。そこで、このプロセスをTFTの製造に用いることを前提に、さらに詳細な説明を加えていくことにする。尚、後ほど詳述するが、ニッケルの薄膜は基板上のみならず非晶質珪素上に成膜しても同様に低温化の効果を有すること、及びイオン注入等でも同様であったことから、今後本明細書ではこれら一連の処理を「ニッケル微量添加」と呼ぶことにする。
【0017】
まずニッケル微量添加の方法について説明する。ニッケルの微量添加は、基板上に微量なニッケル薄膜を成膜し、その後非晶質珪素を成膜する方法でも、先に非晶質珪素を成膜し、その上から微量なニッケル薄膜を成膜する方法でも、両者同様に低温化の効果が有り、その成膜方法はスパッタ法でも、蒸着法でもあるいはプラズマ処理でも可能で、成膜方法は問わないことが判明している。プラズマ処理とは、平行平板型あるいは陽光柱型のプラズマCVD装置において、電極として触媒元素を含んだ材料を用い、窒素または水素等の雰囲気でプラズマを生じさせることによって非晶質珪素膜に触媒元素の添加を行なう方法である。
ただし、基板上に微量なニッケル薄膜を成膜する場合、7059ガラス基板の上から直接微量なニッケル薄膜を成膜するよりは、同基板上に酸化珪素の薄膜を成膜し、その上に微量なニッケル薄膜を成膜した場合の方が効果がより顕著である。この理由として考えられることとして、珪素とニッケルが直接接触していることが今回の低温結晶化には重要であり、7059ガラスの場合には珪素以外の成分がこの両者の接触あるいは反応を阻害するのではないかということが挙げられる。
【0018】
また、微量添加の方法としては、非晶質珪素の上または下に接して薄膜を形成する以外に、イオン注入によってニッケルを添加してもほぼ同様の効果が確認されている。
ニッケルの量については、1×1015atoms/cm 以上の量の添加において低温化が確認されているが、1×1021atoms/cm 以上の添加量においては、ラマン分光スペクトルのピークの形状が珪素単体の物とは明らかに異なることから、実際に使用可能であるのは1×1015atoms/cm 〜5×1019atoms/cm の範囲であると思われる。また、半導体物性として、TFTの活性層に使用することを考えると、この量を1×1015atoms/cm 〜1×1019atoms/cm に抑えることが必要である。
しかしながら、上記のような元素が半導体中に多量に存在していることは、これら半導体を用いた装置の信頼性や電気的安定性を阻害するものであり好ましいことではない。
【0019】
即ち、上記のニッケル等の結晶化を助長する元素(本明細書では、結晶化を助長する元素を触媒元素という)は、非晶質珪素を結晶化させる際には必要であるが、結晶化した珪素中には極力含まれないようにすることが望ましい。この目的を達成するには、触媒元素として結晶性珪素中で不活性な傾向が強いものを選ぶと同時に、結晶化に必要な触媒元素の量を極力少なくし、最低限の量で結晶化を行なう必要がある。この量については、活性層中のニッケル濃度が1×1019atoms cm−3以下でないとデバイス特性に悪影響が生じることが判明している。そしてそのためには、上記触媒元素の添加量を精密に制御して導入する必要がある。
【0020】
また、ニッケルを触媒元素とした場合、非晶質珪素膜を成膜し、ニッケル添加をプラズマ処理法によって行ない結晶性珪素膜を作製し、その結晶化過程等を詳細に検討したところ以下の事項が判明した。
(1)プラズマ処理によってニッケルを非晶質珪素膜上に導入した場合、熱処理を行なう以前に既に、ニッケルは非晶質珪素膜中のかなりの深さの部分まで侵入している。
(2)結晶の初期核発生は、ニッケルを導入した表面から発生している。
(3)蒸着法でニッケルを非晶質珪素膜上に成膜した場合であっても、プラズマ処理を行なった場合と同様に結晶化が起こる。
【0021】
上記事項から、プラズマ処理によって導入されたニッケルが全て効果的に機能していないということが結論される。即ち、多量のニッケルが導入されても十分に機能していないニッケルが存在していると考えられる。このことから、ニッケルと珪素が接している点(面)が低温結晶化の際に機能していると考えられる。そして、可能な限りニッケルは微細に原子状に分散していることが必要であることが結論される。即ち、「必要なのは非晶質珪素膜の表面近傍に低温結晶化が可能な範囲内で可能な限り低濃度のニッケルが原子状で分散して導入されればよい」ということが結論される。
【0022】
非晶質珪素膜の表面近傍のみに極微量のニッケルを導入する方法、言い換えるならば、非晶質珪素膜の表面近傍のみに結晶化を助長する触媒元素を極微量導入する方法としては、蒸着法を挙げることができるが、蒸着法は制御性が悪く、触媒元素の導入量を厳密に制御することが困難であるという問題がある。
【0023】
また、触媒元素の導入量は極力少ないことが必要とされるが、この場合、結晶性が不良となる問題が生じ、適切な量の触媒元素の制御が重要である。これらを解決する手段として、溶液を用いた触媒元素の添加方法を本発明人らが発明したが、これについては本明細書中では詳細は割愛する。この方法を用いることにより、1×1016atoms cm−3〜1×1019atoms cm−3の範囲内で触媒元素の濃度を制御可能であることが判明している。また、ニッケル以外にも同様の効果が得られる触媒元素として、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、In、Sn、Pb、As、Sbから選ばれた一種または複数種類の元素を用いることが可能であることが発明者らの研究により判明している。
【0024】
続いて、ニッケル微量添加を行った場合の結晶成長及び結晶形態の特色について述べ、そこから推測される結晶化機構について説明を加える。
【0025】
上述の通り、ニッケルを添加しない場合には、基板界面等の結晶核からランダムに核が発生し、その核からの結晶成長も同様にランダムで、作製方法によっては(110)或いは(111)に比較的配向した結晶が得られることが報告されており、当然ながら薄膜全体に渡ってほぼ均一な結晶成長が観測される。
【0026】
まずこの機構を確認すべく、DSC(示差走査熱量計)による解析を行った。プラズマCVDで基板上に成膜した非晶質珪素薄膜を、基板についたまま試料容器に充填し、一定速度で昇温していった。すると、およそ700℃前後で明確な発熱ピークが観察され、結晶化が観測された。この温度は、昇温速度を変えると当然シフトするが、例えば10℃/minの速度で行った場合には700.9℃から結晶化が開始した。次に昇温速度を3種類変えたものを測定し、それらから小沢法によって初期核生成後の結晶成長の活性化エネルギーを求めた。すると、およそ3.04eVという値が得られた。また、反応速度式を理論曲線とのフィッティングから求めたところ、無秩序核生成とその成長モデルによって、最も良く説明されることが判明し、基板界面等の結晶核からランダムに核が発生し、その核からの結晶成長というモデルの妥当性が確認された。
【0027】
前述と全く同様の測定を、ニッケルを微量添加したものについても行ってみた。すると、10℃/minの速度で昇温を行った場合には619.9℃から結晶化が開始し、それら一連の測定から求めた結晶成長の活性化エネルギーはおよそ1.87eVであって、結晶成長が容易となっていることが数値的にも明らかとなった。また、理論曲線とのフィッティングから求めた反応速度式は、一次元的界面律速のモデルに近く、結晶成長に一定方向の方向性を有することが示唆された。
【0028】
上記熱分析によって得られたデータを下記表5に示す。
【0029】
この表5に示す活性化エネルギーは、試料を加熱していく段階で、試料から放出される熱量を計測し、その結果から小沢法と呼ばれる解析手段によって算出したものである。
【0030】
【表5】
Figure 0003630917
【0031】
上記表5における活性化エネルギーは、結晶化のし易さを示すパラメータであり、その値が大きい程結晶化はしにくく、またその値が小さい程結晶化がし易いことを示す。表5を見ると、ニッケル添加の試料は、結晶化が進むにつれて活性化エネルギーが低下することが見てとれる。即ち、結晶化が進んでいくにつれて、結晶化がより行ない易くなることが示されている。一方、ニッケル無添加の従来の方法による結晶性珪素膜の場合は、結晶化が進行するにつれて、活性化エネルギーが高くなることが示されている。これは、結晶化が進行するにつれて、より結晶化しにくくなることを示している。また、活性化エネルギーの平均値を比較すると、ニッケル添加によって結晶化させた珪素膜の値はニッケル無添加の結晶性珪素膜の場合の約62%であり、このことからもニッケル添加の非晶質珪素膜の結晶化のし易さが示唆される。
【0032】
次に、今回のニッケル微量添加したものの結晶形態について、800Åの非晶質珪素を出発膜として用いた場合のTEM(透過型電子顕微鏡)で観察した結果を示す。TEM観察の結果から判明した特徴的な現象として、ニッケルを添加した領域と、その近傍の部分で結晶成長が異なるということが挙げられる。即ち、ニッケルを添加した領域について、断面から観察すると、モアレあるいは格子像とみられる縞が基板にほぼ垂直に観測され、このことは添加したニッケルあるいはその珪素との化合物が結晶核となり、ニッケルを添加していないものと同様に基板にほぼ垂直に結晶が成長することを示すものと考えられる。また、ニッケルを添加した周辺の領域においては、基板に平行な方向に針状あるいは柱状に結晶成長している様子が観察された。
【0033】
これらの現象を更に詳細に説明する上で結晶学の基礎ではあるが以下の様な記号を用いて説明をすることにする。まず{hkl}とは、(hkl)面に等価な面の全てを含んだものを示す記号である。また同様に〈hkl〉とは、〔hkl〕軸に等価な軸を全て含んだものを示す記号である。
【0034】
ニッケルを添加した領域の近傍の結晶形態の観察結果を示す。まず、ニッケルを直接微量添加していない領域が結晶化すること自体が予想外であったのであるが、ニッケル微量添加部分、その近傍の横方向の結晶成長部分(以後横成長部分と略)、更に遠方の非晶質部分( かなり離れた部分では低温結晶化は行われず、非晶質部分が残る) について、ニッケルの濃度をSIMS( 二次イオン質量分析法) により調べた所、図17に示すように横成長部分はニッケル微量添加部分から少ない濃度が検出され、非晶質部分は更に約1桁少ない量が観測された。すなわち、ニッケルはかなり広範囲に渡って拡散しており、ニッケルを添加した領域の近傍の領域の結晶化もまたニッケル微量添加の効果であると考えられる。
【0035】
まず、800Åの非晶質珪素を用い、ニッケルを添加した領域の近傍の表面TEM像を図13に示す。図より明らかなように、特徴的な、幅の揃った針状または柱状の結晶が基板に概略平行方向に観測される。またその結晶の先端部分には、他の結晶部分とはコントラストの異なる層があることが観測され、その後の高分解能TEM及びTEM−EDXの結果から、この部分がNiSi であって、結晶の成長方向に対して垂直にNiSi 層が存在している(これは膜厚によって変わるのであるが、このことについては後ほど詳述する)ことが判明している。この基板に概略平行な横成長は、ニッケルを微量添加した領域から、大きいものでは数百μmも成長することが観測され、時間の増加及び温度が高くなるに比例して成長量も増大することも判った。例として、550℃、4時間においては約20μm程度の成長が観測された。次いで、上記針状あるいは柱状に結晶成長した領域3点についてのTEDパターン(電子線回折像)を図14に示す。このTEDパターンは、基板に垂直な方向からとったものである。このパターンは、珪素膜の結晶構造を示すものである。このパターンを見ると、非常にパターンがシンプルであり、単結晶或いは多くても双晶のようなものが見られる程度で、結晶方位は非常に揃っていることがわかる。このパターンより上記800Åの非晶質珪素膜を出発膜として用い、横成長させた結晶はその軸方向が〈111〉方向であることがわかる。この関係を、図16に示す。
【0036】
以上の実験事実に基づき、発明者らは以下のような機構により結晶化が進行すると考えている。
【0037】
まず縦成長について考えると、結晶化の初期段階において核発生が起こるが、この際の活性化エネルギーがニッケルの微量添加により低減される。このことはニッケルを添加することにより、より低温から結晶化が発生していることから自明であって、この理由としてはニッケルの異物としての効果以外にも、非晶質珪素が結晶化するよりも低温で生成するニッケルと珪素からなる金属間化合物の内の一つ(NiSi )が、結晶シリコンと格子定数が近いために結晶核として作用していると考えられる。また、この核発生はニッケルの添加した領域全面についてほぼ同時に発生するため、結果として結晶成長は面のまま成長するような機構となり、この場合反応速度式は一次元的界面律速過程となり、基板に概略垂直方向に結晶成長した結晶が得られる。しかしながら、膜厚に制限されること、及び応力等の影響で、完全に揃った結晶軸を有するとまではいかない。
【0038】
しかしながら、基板に水平方向は、垂直方向と比較して均質であるため、柱状あるいは針状の結晶がニッケル添加部分を核として横方向に揃って成長し、その成長面の方向は〈111〉となり、例えば800Åの非晶質珪素膜を用いた場合には結晶成長方向も同様に〈111〉となる。勿論この場合も反応速度式は一次元界面律速型となることが予想される。結晶成長の活性化エネルギーは、前述の通りニッケルを添加することにより低減されているため、この横方向の成長速度は非常に速いことが期待され、事実そうなっている。
【0039】
次に、上記ニッケル微量添加部分とその近傍の横成長部分についての電気特性を説明する。ニッケル微量添加部分の電気特性は、導電率に関してはほぼニッケルを添加していない膜、即ち600℃程度で数十時間結晶化を行ったものと同程度の値であり、また導電率の温度依存性から活性化エネルギーを求めたところ、ニッケルの添加量を前述の様に1017atoms/cm 〜1018atoms/cm 程度とした場合には、ニッケルの準位に起因すると思われる様な挙動は観測されなかった。即ち、この実験事実からは、上記の濃度であればTFTの活性層等として使用が可能であることが考察される。
【0040】
それに対し、横成長部分は、導電率がニッケル微量添加部分と比較して1桁以上高く、結晶性を有する珪素半導体としてはかなり高い値を有していた。このことは、電流のパス方向が結晶の横成長方向と合致したため、電極間で電子が通過する間に存在する粒界が少ないあるいは殆ど無かったことによるものと考えられ、透過電子線顕微鏡写真の結果と矛盾無く一致する。即ち、キャリアの移動が針状または柱状に成長した結晶の粒界に沿ったものとなるので、キャリアは移動しやすい状態が実現されている、と考えることができる。
【0041】
また、上記図13に示す針状あるいは柱状に結晶成長した先端部を拡大した珪素の結晶構造を示す写真であるTEM写真を図15に示す。図15には、その端部に黒い部分が現れており、この部分は前述の通りNiSi であることが判明している。即ち、基板に平行に針状あるいは柱状に結晶成長する結晶の先端部にはニッケルが集中的に存在しており、その中間領域においては、ニッケル濃度が低いことが理解される。
【0042】
そこで、本明細書で開示する発明の効果の一つとしては、上記結晶粒界に概略沿った方向と半導体装置(例えばTFT)内のキャリアが移動する方向を概略一致せしめることにより、キャリアの移動度を向上させることが挙げられる。また、基板と平行な方向に結晶成長した領域の先端部を避けて、その中間領域、即ち、横方向に結晶成長した結晶性珪素膜の成長端部とニッケルが添加された領域の中間の領域を利用することにより、キャリアの移動し易い結晶性珪素膜を利用すると同時に、ニッケルの濃度の低い領域を利用する構成を挙げることができる。
【0043】
この結晶粒界に沿った方向は、針状または柱状に結晶成長した成長方向であり、しかもこの成長方向は、800Åの膜厚においては(正確には、これ以上の膜厚においては同様であることが判明しているが)〈111〉の軸方向に結晶性を有する方向であり、さらにまたこの方向は、前述のように他の方向(例えば結晶成長に垂直な方向)に対して選択的に高い導電率を有する方向である。また現実問題として、結晶成長方向とキャリアの流れる方向とが完全に一致することは困難であり、また結晶も完全に全面に渡って、一様な方向に揃って成長するわけではない。そこで実際問題としては、結晶成長の方向は平均的な方向として定められる。またその方向とキャリアの流れる方向とは±20°程度の範囲であれば一致しているとみなすこととし、800Åの非晶質珪素膜を用いた場合には完全にこの範囲に入っていることが判明している。
【0044】
次に、粒径及び配向性の制御方法について説明する。触媒元素を導入して結晶化を施した試料について、X線回折を行ったが、その際にパラメータとして以下の内容について検討した。
【0045】
・触媒元素を非晶質珪素薄膜の表面に導入した場合と、下地との界面に導入した場合の比較
・触媒を添加した領域(縦成長と本明細書中では表記する)と、その周辺の横成長領域の比較
・非晶質珪素膜の膜厚を変化させたときの依存性
・触媒濃度を変化させた時の依存性
・横成長プロセスを使用した場合で、該横成長領域が上下とも酸化珪素ではさまれた構造とするか、上面が酸化珪素が無い構造とするかの比較
【0046】
そして、上記のパラメータを変化させたときに、得られた傾向を定量的に評価するため下記数1に示すように(111)配向比率を定義することにし、(111)配向性が高いという目安を上記(111)配向比率が0.67以上(完全にランダムな粉末においては上記定義に従うと(111)配向比率が0.33となり、この比率の倍以上の比率があれば(111)配向と呼んでも問題がないと考えた為である)とすることにした。
【0047】
【数1】
Figure 0003630917
【0048】
そしてこの(111)配向比率を基に評価した結果、下記表1、表2、表3、表4及び図1の様な傾向が観察された。
【0049】
【表1】
Figure 0003630917
【0050】
【表2】
Figure 0003630917
【0051】
【表3】
Figure 0003630917
【0052】
【表4】
Figure 0003630917
【0053】
尚、作製方法は表中に示されたパラメータ以外は全て同一であり、触媒元素としてニッケルを用い、添加方法は溶液からのニッケル添加方法(以後液相法と省略)を用い、特に横成長と示されていないものに関してはシリコン表面に塗布した場合の縦成長を用いた。ただし、横成長プロセスにおいて、上面の酸化珪素膜の有無を比較する実験においては、上面に酸化珪素がない横成長プロセスを実現するためにOCD等のSOG用の溶液中にニッケルを添加したものを用い、他の横成長プロセスとは逆に直接添加領域(縦成長領域)のみにOCDを残し、横成長すべき領域上には酸化珪素が無い構造とした。また、固相成長(図中ではSPCとも表記する)を550℃8時間、その後のレーザー結晶化(補助的に行うことにより、結晶性を飛躍的に高めることが可能である)を300mJ/cm とした。
【0054】
表1は、表中に示されている通り、触媒添加場所を変化させた場合の結果であり、添加場所が異なるだけで配向性が全く異なるという特異的な傾向が観測された。粒径においては、添加場所の依存性は殆ど観測されず、任意の場所について粒径分布を測定したところ、分布の幅は触媒元素を添加しなかった場合の半分程度であり、均一な粒径が得られていることが判明した。
【0055】
表2は、結晶成長方法を変えた場合の結果であり、全面にニッケルを導入した場合(縦成長)と、アモルファスシリコンの上に酸化珪素を成膜し(カバー酸化珪素)、該酸化珪素をパターニングして触媒元素を添加する窓を開け、そこからの横成長をさせた部分との比較である。その結果、縦成長部分は比較的ランダムであり、上面に酸化珪素膜の有る横成長部分は、膜厚にもよるが(膜厚依存性については後述)ほぼ完全に(111)配向性を有していた。
【0056】
表3は膜厚依存性についてであるが、膜厚は300Åから5000Åについて実験を行ったところ、横成長部分については膜厚が薄いほど(111)配向性が強くでるという傾向がはっきりと確認された。この内、400Åから800Åについては図9に示されるようにほぼ誤差範囲内で直線性が見出された。尚、縦成長部分に関しては、元々がランダムであるため明確な傾向は観測されなかった。表4は横成長プロセスにおいて、上面の酸化珪素膜の有無を比較する実験の結果であるが、上面に酸化珪素がない横成長プロセスの試料は膜厚によりその配向性が変化するが何れも(111)配向性以外の配向を示すのに対し、上面の酸化珪素が有る場合の横成長プロセスで得られる結晶性珪素の配向性は(111)配向性が強く、特に図9からも強く示唆されるように、800Å以下ではかなり強い(111)配向であることは前述の通りである。そしてこのことから、膜厚を800Å以下とすることによって、(111)配向を強くできることが結論される。
【0057】
図1は、縦成長を用い、ニッケルの添加量を変化させた場合の依存性をプロットしたものであるが、横軸はニッケルの酢酸塩あるいは硝酸塩を用いて液相添加を行った際のドーズ量を、左側の縦軸が(111)配向比率を、また右側の縦軸がレーザー結晶化前のシリコン膜の内、固相成長によって結晶化している面積の比率を示したものである。この図より、(111)配向比率を、触媒元素の濃度によってランダムから(111)配向性まで自由に変化させることが可能であることが理解される。また、これらはレーザー結晶化前に固相成長で成長した割合の変化と完全に一致していることが判り、そのことは濃度変化の代わりに加熱温度及び加熱時間を変えてレーザー結晶化前に固相成長で成長した割合を変えても同様の傾向が見られることにより確認された。
【0058】
次に、図には示していないが、粒径について示すと、光学顕微鏡から観測された粒径(必ずしもこの中が単結晶であるかは現在までのところ判明していない。)はドーズ量を増やすに連れて、33μmから20μmまで減少していくことが確認された。
【0059】
では、上記の実験結果はどの様な機構によるかであるが、配向性についてはシリコン─酸化珪素界面の影響を、固相成長の際にどの程度受けたかで全てを解釈することが可能である。この様な観点から上記の現象を解釈すると以下の様になる。
【0060】
表1の結果については、下地界面に触媒元素を導入した場合には、核発生する際にすでに下地の影響を受けており、この時点で(111)配向性になる可能性が高い。それに比して、表面で核発生する場合には下地の影響を受けずに、ランダムな核発生をすることができる。そして結晶成長の間中、その履歴をもっていると考えられるのである。
【0061】
表2の結果については、縦成長部分は上述と同様の機構であり、横成長に関しては、成長点が下地及びカバーの酸化珪素と接触しながら成長する為、これらの影響を大きく受けやすいと考えられる。
【0062】
表3の膜厚依存性については、膜厚が厚くなれば、系全体の自由エネルギーに対する下地酸化珪素との界面のエネルギーの比率が相対的に低下し、(111)に配向させる力が弱まる為と考えられる。
【0063】
表4の2つの横成長(上面に酸化珪素膜が有るものと無いもの)の結果については、上面が酸化珪素で覆われたものは、結果として上下を酸化珪素で囲まれていることとなり、その界面を安定化させるべく(111)配向性となるものと考えられる。それに対し、上面に酸化珪素の無い横成長プロセスはこの界面の寄与が半分になるためそれだけ拘束力が弱まり(111)以外の配向性を示すものと考えられる。ところで前述の様に、上面に酸化珪素の無い横成長プロセスにおいては、膜厚と配向性の間に明確な相関があった。例えば500Åの非晶質珪素を用いた場合には(200)あるいは(311)の配向性が強く観察された。これについては、結晶学的な解析、及び図18に示す様な写真より、図19の様な機構で結晶成長が起こっていると考えることができる。即ち、結晶の成長面501あるいは506は(111)面であり、これは常に一定であるが、この面が基板に対してどの様な角度を有しているかはその膜厚によりほぼ一義的に決定するというものである。その結果膜厚が変化すれば、例えば800Åの膜厚においては、見掛け上の結晶成長方向504と結晶成長面501はほぼ垂直であり、その結果配向性(配向性と言った場合一般的には基板に垂直方向の配向性を言う)としては〈111〉軸に垂直な方向が観測されることになる。しかし膜厚500Åにおいては、結晶成長面506と見掛け上の結晶成長方向505とは垂直ではなく、その為配向性も変化する。即ち、上面に酸化珪素が無い横成長プロセスにおいては、膜厚を変化させることにより配向性制御が可能である。
図1の結果は、上述の縦成長がランダムな理由に付加して、レーザー結晶化が(111)配向であることを認めることによって容易に説明される。その機構を簡単に示したものが図2である。図中のAは触媒元素のドーズ量が少なく、レーザー結晶化前に固相成長で結晶化しているランダムな部分が少なく、それよりもレーザー結晶化した(111)配向性の部分が多い例であり、図中のBは、殆どが固相成長したもので、レーザー結晶化した(111)配向の部分が殆どない例である。これを裏付ける実験として、レーザー結晶化の際のエネルギー密度及び照射時間を変化させた実験を行なってみた。すると、エネルギー密度及び照射時間を増大させるに連れ、(111)配向比率が高くなることが判明した。この結果は、レーザーにより結晶化する割合を高めることが(111)配向比率を高めることに直結していることを示すものと考えられる。
【0064】
次に粒径については、前述の現象を説明するためには、触媒元素を用いた場合にはその添加場所等によらず、触媒元素のドーズ量により核発生密度が一義的に決定し、その結果結晶成長できる大きさが決まってきてしまうと考えると説明可能である。
【0065】
よってこれらをまとめると、低温結晶化及び配向性の制御方法は以下の様になる。
【0066】
まず前提としてニッケルに代表される触媒元素を表面から液相法で添加する方法を用い、結晶化には固相成長とレーザー結晶化を併用することにする。この様に触媒元素を微量に添加することにより結晶化温度の低温化及び要する時間の飛躍的な短縮が可能となる。
【0067】
・(111)配向性が高い膜を得たい場合
横成長プロセスを用いるか、レーザー結晶化前の結晶化比率を小さくする。この方法を用いることにより、(111)配向比率を0.67〜1の間で任意に制御することが可能である。この結晶化比率を下げる方法としては、触媒元素のドーズ量を小さくする、あるいは固相成長条件を変える方法のいずれかを選択すればよい。
【0068】
・ランダムな膜を得たい場合
縦成長プロセスを用いて、レーザー結晶化前の結晶化比率を大きくする。この結晶化比率を高める方法としては、触媒元素のドーズ量を多くする、あるいは固相成長条件を変える方法のいずれかを選択すればよい。
【0069】
・上記の中間の配向性を有する膜を得たい場合
縦成長プロセスを用い、レーザー結晶化前の結晶化比率を適当にする。このプロセスを用いることにより、(111)配向比率を0.33〜1の間で任意に制御することが可能である。この結晶化比率を適当な値にする方法としては、触媒元素のドーズ量を変える、あるいは固相成長条件を変える方法のいずれかを選択すればよい。
【0070】
・その他の配向性の膜を得たい場合
上面に酸化珪素の無い横成長プロセスを用い、膜厚を変化させることにより配向性を制御する。この際には、膜厚としては800Åから300Å程度の間で変化させることが制御性から言って望ましい。それ以上厚い場合には、膜厚よりも柱状結晶の幅が小さくなり、ランダムな傾向に成りやすく、また300Å以下では結晶成長が困難であった。
【0071】
次に、結晶の粒径を変える手段としては以下の様にすれば良い。
・粒径を大きくする場合、添加する触媒元素の濃度を下げる。
【0072】
・粒径を小さくする場合、添加する触媒元素の濃度を上げる。
【0073】
尚、上記の触媒元素の添加量を制御するのと同時に、固相成長の温度及び時間を制御することは有効である。しかしながら最大どの程度まで粒径を大きくできるかは前記触媒元素の添加量によって一義的に決定される。
【0074】
本発明においては、触媒元素としてニッケルを用いた場合に最も顕著な効果を得ることができるが、その他利用できる触媒元素の種類としては、好ましくはPt、Cu、Ag、Au、In、Sn、Pd、P、As、Sbを利用することができる。これらの元素は珪素に対して侵入型の元素であり、珪素膜中に拡散していき、結晶化を助長する作用を有する。
【0075】
また、触媒元素の導入方法は、水溶液やアルコール等の溶液を用いた液相法に限定されるものではなく、触媒元素を含んだ物質を広く用いることができる。例えば、触媒元素を含んだ金属化合物や酸化物を用いることができる。
【0076】
では最後に、上述の各種特性を踏まえた上でTFTに応用する方法について説明する。ここでTFTの応用分野としてはTFTを画素の駆動に用いるアクティブマトリックス型液晶表示装置を想定するものとする。
前述の様に、最近の大画面のアクティブマトリックス型液晶表示装置においては、ガラス基板の縮みを抑えることが重要であるが、本発明のニッケル微量添加プロセスを用いることにより、ガラスの歪み点に比較して十分に低い温度で結晶化が可能であり、特に好適である。本発明を用いれば、従来非晶質珪素を用いていた部分を、ニッケルを微量添加し、500〜550℃程度で4時間程度結晶化させることにより、結晶性を有するシリコンに置き換えることが容易に可能である。勿論、デザインルール等をそれ相応に変更する必要はあるが、装置、プロセス共従来の物で十分に対応可能であり、そのメリットは大きいものと考えられる。本明細書中においては、絶縁ゲイト型を有する薄膜トランジスタ(TFT)の例を主に示すが、本明細書で開示する発明は、薄膜半導体を用いた素子に広く利用することができる。例えば、薄膜ダイオードや薄膜バイポーラトランジスタ、さらには薄膜半導体を用いた光電変換装置に利用することができる。
【0077】
【実施例】
〔実施例1〕
本実施例は、1200Åの酸化珪素膜を選択的に設け、この酸化珪素膜をマスクとして選択的にニッケルを導入し、横成長を行わせ、(111)配向性の高いシリコン膜を作製する例である。
【0078】
図3に本実施例における作製工程の概略を示す。まず、ガラス基板11(コーニング7059、10cm角)上の非晶質珪素膜12(プラズマCVDの500Åの膜)上にマスクとなる酸化珪素膜21(カバー酸化珪素)を1000Å以上、ここでは1200Åの厚さに成膜する。この酸化珪素膜21の膜厚については、発明者等の実験によると500Åでも問題がないことを確認しており、膜質が緻密であれば更に薄くても良いと思われる。
【0079】
そして通常のフォトリソパターニング工程によって、必要とするパターンに酸化珪素膜21をパーニングする。そして、酸素雰囲気中における紫外線の照射で薄い酸化珪素膜20を成膜する。この酸化珪素膜は、濡れ性を改善し、後に導入されるニッケルを含有した溶液が均一に塗布する目的で形成される。この酸化珪素膜20の作製は、酸素雰囲気中でUV光を5分間照射することによって行なわれる。なおこの酸化珪素膜20の厚さは20〜50Å程度と考えられる。(図3(A))
【0080】
この状態において、100ppmのニッケルを含有した酢酸塩溶液を5ml滴下(10cm角基板の場合)する。またこの際、スピナー15で50rpmで10秒のスピンコートを行い、基板表面全体に均一な水膜14を形成させる。さらにこの状態で、1分間保持した後スピナーを用いて2000rpm、60秒のスピンドライを行う。なおこの保持は、スピナー上において0〜100rpmの回転をさせながら行なってもよい。(図3(B))
【0081】
そして550度(窒素雰囲気)、8時間の加熱処理を施すことにより、非晶質珪素膜12の結晶化を行う。この際、ニッケルが導入された部分22の領域から23で示されるように、ニッケルが導入されなった領域へと横方向に結晶成長が行われる。今回の条件では横成長量として30μm程度が得られた。そしてその後、カバー酸化珪素をバッファーフッ酸を用いて剥離し、300mJ/cm のパワー密度でKrFエキシマレーザ(248nm)によるレーザー結晶化を行った。
【0082】
この様にして得られたシリコン膜をX線回折を行ってみたところ、(111)配向比率が0.917と、(111)配向性が非常に高い膜が得られた。その結果を図4に示す。
【0083】
〔実施例2〕
本実施例は、実施例1と全く同一のプロセスを用い、非晶質珪素膜の膜厚のみを400Åと800Åの2種類で試した例である。
【0084】
結果としては、X線回折から求めた(111)配向比率については、400Åの試料は約1.0とほぼ完全に(111)配向の膜であり、800Åの試料は0.720と500Åに比較して若干(111)配向性が弱くなっていることが判明した。
【0085】
〔実施例3〕
本実施例では、結晶化を助長する触媒元素を水溶液に含有させて、非晶質珪素膜上に塗布し、しかる後に加熱により結晶化させ、さらにレーザー光の照射により結晶性を高める例である。この構成は前述の記載においては縦成長にあたり、比較的ランダムな配向性を有する膜を得ることができる。
【0086】
図5を用いて、触媒元素(ここではニッケルを用いる)を導入するところまでを説明する。本実施例においては、基板11としてコーニング7059ガラスを用いる。またその大きさは100mm×100mmとする。
【0087】
まず、非晶質珪素膜12をプラズマCVD法やLPCVD法によって100〜1500Å形成する。ここでは、プラズマCVD法によって非晶質珪素膜12を500Åの厚さに成膜する。(図5(A))
【0088】
そして、汚れ及び自然酸化膜を取り除くためにフッ酸処理を行い、その後酸化膜13を10〜50Åに成膜する。汚れが無視できる場合には、酸化膜13の代わりに自然酸化膜をそのまま用いれば良い。
【0089】
なお、この酸化膜13は極薄のため正確な膜厚は不明であるが、20Å程度であると考えられる。ここでは酸素雰囲気中でのUV光の照射により酸化膜13を成膜する。成膜条件は、酸素雰囲気中においてUVを5分間照射することにおって行なった。この酸化膜13の成膜方法としては、熱酸化法を用いるのでもよい。また過酸化水素による処理によるものでもよい。
【0090】
この酸化膜13は、後のニッケルを含んだ酢酸塩溶液を塗布する工程で、非晶質珪素膜の表面全体に酢酸塩溶液を行き渡らせるため、即ち濡れ性の改善の為のものである。例えば、非晶質珪素膜の表面に直接酢酸塩溶液を塗布した場合、非晶質珪素が酢酸塩溶液を弾いてしまうので、非晶質珪素膜の表面全体にニッケルを導入することができない。即ち、均一な結晶化を行うことができない。
【0091】
つぎに、ニッケルの酢酸塩水溶液を作る。ニッケルの濃度は25ppmとする。そしてこの酢酸塩溶液を非晶質珪素膜12上の酸化膜13の表面に2ml滴下し、水膜14を形成する。またこの状態を5分間保持する。そしてスピナーを用いてスピンドライ(2000rpm、60秒)を行う。(図5(C)、(D))
【0092】
酢酸溶液中におけるニッケルの濃度は、1ppm以上であれば実用になるが、所望の配向性と鑑みて、今回は25ppmとした。また、溶液として2−エチルヘキサン酸ニッケルのトルエン溶液の如き無極性溶媒を用いる場合、酸化膜13は不要であり、直接非晶質珪素膜上に触媒元素を導入することができる。
【0093】
このニッケル溶液の塗布工程を、1回〜複数回行なうことにより、スピンドライ後の非晶質珪素膜12の表面に数Å〜数百Åの平均の膜厚を有するニッケルを含む層を形成することができる。この場合、この層のニッケルがその後の加熱工程において、非晶質珪素膜に拡散し、結晶化を助長する触媒として作用する。なお、この層というのは、完全な膜になっているとは限らない。尚、本実施例においては塗布回数は1回とした。
【0094】
上記溶液の塗布の後、1分間その状態を保持させる。この保持させる時間によっても、最終的に珪素膜12中に含まれるニッケルの濃度を制御することができるが、最も大きな制御因子は溶液の濃度である。
【0095】
そして、加熱炉において、窒素雰囲気中において550度、8時間の加熱処理を行う。この結果、基板11上に形成された一部結晶性を有する珪素薄膜12を得ることができる。この段階での結晶化比率を、コンピュータを用いた画像解析から求めたところ、98.84%であった。
【0096】
上記の加熱処理は450度以上の温度で行うことができるが、温度が低いと加熱時間を長くしなけらばならず、生産効率が低下する。また、550度以上とすると基板として用いるガラス基板の耐熱性の問題が表面化してしまう。
【0097】
本実施例においては、非晶質珪素膜上に触媒元素を導入する方法を示したが、非晶質珪素膜下に触媒元素を導入する方法を採用してもよい。しかしながらその場合には、前述の通り(111)配向性が非常に高くなってしまうことに注意する必要がある。
【0098】
加熱処理により一部結晶性を有する珪素膜12を得たら、KrFエキシマレーザ(波長248nm、パルス幅30nsec)を窒素雰囲気中において200〜350mJ/cm のパワー密度で数ショト、本実施例では300mJ/cm で1ショット照射し、珪素膜12を完全に結晶化せしめる。この工程は、赤外光の照射によってもよい。
【0099】
この様にして得られた結晶性を有する珪素膜を、X線回折を行って配向性を評価した。その結果を図6に示す。(111)(220)(311)のピークがはっきりと観測され、これについて(111)配向比率を計算すると0.405となりランダムな膜が希望通り得られていることが判明した。
【0100】
〔実施例4〕
本実施例は、実施例3において、触媒元素であるニッケル塩の濃度を1ppmとしたものである。その他の処理は全て実施例3と同様である。この様な構成とすることにより、1つの結晶粒径を大きくすることが可能である。また、本実施例に関しては、固相成長条件を4時間のものと16時間の物の2つの条件で実験を行った。
熱処理後の薄膜を顕微鏡観察した結果、この様に濃度を下げ、固相成長の時間を4時間とした試料は、実施例3の試料よりも非晶質珪素の部分が多く、また結晶性珪素からなる結晶核の数も低下していた。次にレーザー結晶化後の試料をセコエッチ後SEMにより観察してみた。その結果、今回の様に溶液濃度を低下することにより、一つの結晶粒の大きさを、実施例2の場合と比較して大きくすることが可能であることが判明した。
【0101】
更に、レーザー結晶化後の試料をX線回折を行ってみたところ、固相成長が4時間の物は(111)配向比率が0.730と、(111)配向性の膜が得られた。また16時間固相成長を行った膜は、同配向比率が0.4程度に低下しており、ランダムな膜となっていた。
〔実施例5〕
本実施例は、本明細書で開示する発明の方法を利用して作製した結晶性珪素膜を用いて、TFTを得る例である。本実施例のTFTは、アクティブマトリックス型の液晶表示装置のドライバー回路や画素部分に用いることができる。なお、TFTの応用範囲としては、液晶表示装置のみではなく、一般に言われる薄膜集積回路に利用できることはいうまでもない。
【0102】
図7に本実施例の作製工程の概要を示す。まずガラス基板11上に下地の酸化珪素膜(図示せず)を2000Åの厚さに成膜する。この酸化珪素膜は、ガラス基板からの不純物の拡散を防ぐために設けられる。
【0103】
そして、非晶質珪素膜を実施例1と同様な方法で500Åの厚さに成膜する。そして、自然酸化膜を取り除くためのフッ酸処理の後、薄い酸化膜を20Å程度の厚さに酸素雰囲気でのUV光の照射によって成膜する。この薄い酸化膜の作製方法は、過水処理や熱酸化による方法でもよい。
【0104】
そして25ppmのニッケルを含有した酢酸塩溶液を塗布し、1分間保持し、スピナーを用いてスピンドライを行う。その後バッファフッ酸によって酸化珪素膜20と21を取り除き、550度、8時間の加熱によって、珪素膜を結晶化させる。(ここまでは実施例1に示した作製方法と同じ)
【0105】
上記加熱処理を行うことによって、非晶質成分と結晶成分とが混在した珪素膜を得られる。この結晶成分には結晶核が存在している。さらにKrFエキシマレーザー光を200〜300mJ/cm 、本実施例では300mJ/cm で照射することにより、珪素膜の結晶性を助長させる。このレーザー光の照射工程においては、基板を400℃程度に加熱する。この工程よって、更に結晶化を高める。
【0106】
次に、結晶化した珪素膜をパターニングして、島状の領域104を形成する。この島状の領域104はTFTの活性層を構成する。そして、厚さ200〜1500Å、ここでは1000Åの酸化珪素膜105を形成する。この酸化珪素膜はゲイト絶縁膜として機能する。(図7(A))
【0107】
上記酸化珪素膜105の作製には注意が必要である。ここでは、TEOSを原料とし、酸素とともに基板温度150〜600℃、好ましくは300〜450℃で、RFプラズマCVD法で分解・堆積した。TEOSと酸素の圧力比は1:1〜1:3、また、圧力は0.05〜0.5torr、RFパワーは100〜250Wとした。あるいはTEOSを原料としてオゾンガスとともに減圧CVD法もしくは常圧CVD法によって、基板温度を350〜600℃、好ましくは400〜550℃として形成した。成膜後、酸素もしくはオゾンの雰囲気で400〜600℃で30〜60分アニールした。
【0108】
この状態でKrFエキシマーレーザー(波長248nm、パルス幅20nsec)あるいはそれと同等な強光を照射することで、シリコン領域104の結晶化を助長させてもよい。特に、赤外光を用いたRTA(ラピットサーマルアニール)は、ガラス基板を加熱せずに、珪素のみを選択的に加熱することができ、しかも珪素と酸化珪素膜との界面における界面準位を減少させることができるので、絶縁ゲイト型電界効果半導体装置の作製においては有用である。
【0109】
その後、厚さ2000Å〜1μmのアルミニウム膜を電子ビーム蒸着法によって形成して、これをパターニングし、ゲイト電極106を形成する。アルミニウムにはスカンジウム(Sc)を0.15〜0.2重量%ドーピングしておいてもよい。次に基板をpH≒7、1〜3%の酒石酸のエチレングリコール溶液に浸し、白金を陰極、このアルミニウムのゲイト電極を陽極として、陽極酸化を行う。陽極酸化は、最初一定電流で220Vまで電圧を上げ、その状態で1時間保持して終了させる。本実施例では定電流状態では、電圧の上昇速度は2〜5V/分が適当である。このようにして、厚さ1500〜3500Å、例えば、2000Åの陽極酸化物109を形成する。(図7(B))
【0110】
その後、イオンドーピング法(プラズマドーピング法ともいう)によって、各TFTの島状シリコン膜中に、ゲイト電極部をマスクとして自己整合的に不純物(燐)を注入する。ドーピングガスとしてはフォスフィン(PH )を用いる。ドーズ量は、1〜4×1015cm−2とする。
【0111】
さらに、図7(C)に示すようにKrFエキシマーレーザー(波長248nm、パルス幅20nsec)を照射して、上記不純物領域の導入によって結晶性の劣化した部分の結晶性を改善させる。レーザーのエネルギー密度は150〜400mJ/cm 、好ましくは200〜250mJ/cm である。こうして、N型不純物(燐)領域108、109を形成する。これらの領域のシート抵抗は200〜800Ω/□となる。
【0112】
この工程において、レーザー光を用いる代わりに、フラッシュランプを使用して短時間に1000〜1200℃(シリコンモニターの温度)まで上昇させ、試料を加熱する。ここでRTA(ラピッド・サーマル・アニール)(RTP、ラピット・サーマル・プロセスともいう)等のいわゆるレーザー光と同等の強光の照射を用いてもよい。
【0113】
その後、全面に層間絶縁物110として、TEOSを原料として、これと酸素とのプラズマCVD法、もしくはオゾンとの減圧CVD法あるいは常圧CVD法によって酸化珪素膜を厚さ3000Å形成する。基板温度は250〜450℃、例えば、350℃とする。成膜後、表面の平坦性を得るため、この酸化珪素膜を機械的に研磨する。(図7(D))
【0114】
そして、層間絶縁物110をエッチングして、図7(E)に示すようにTFTのソース/ドレインにコンタクトホールを形成し、クロムもしくは窒化チタンの配線112、113を形成する。
【0115】
最後に、水素中で300〜400℃で0.1〜2時間アニールして、シリコンの水素化を完了する。このようにして、TFTが完成する。そして、同時に作製した多数のTFTをマトリクス状に配列せしめてアクティブマトリクス型液晶表示装置として完成する。このTFTは、ソース/ドレイン領域108/109とチャネル形成領域114を有している。また115がNIの電気的接合部分となる。
【0116】
本実施例の構成を採用した場合、活性層中に存在するニッケルの濃度は、3×1018cm−3程度あるいはそれ以下の、1×1016atoms cm−3〜3×1018atoms cm−3であると考えられる。
【0117】
本実施例で作製されたTFTは、移動度がNチャネルで75cm /Vs以上のものが得られている。またVthも小さく良好な特性を有していることが確認されている。さらに、移動度のバラツキも±5%以内であることが確認されている。このバラツキの少なさは、配向性がランダムであるため、デバイスの動作特性に異方性がないためであると考えられる。レーザー光のみを利用した場合には、Nチャネル型で100cm /Vs以上のものを容易に得ることができるが、バラツキが大きく、本実施例のような均一性を得ることができない。
【0118】
〔実施例6〕
本実施例は、実施例5のニッケル濃度を1ppmとし、結晶粒径を大きくする構成である。それ以外の構成は実施例5と全く同一である。
【0119】
結果としては、移動度がNチャネルで150cm /Vs以上のものが得られた。これは結晶粒径が大きくなった効果であると考えられる。しかしながら、移動度のバラツキが±30%程度存在し、均一性はそれほど高くなかった。この理由は明らかではないが、(111)配向性をある程度有しているため、デバイスに異方性が生じてしまった可能性があると推測される。
【0120】
〔実施例7〕
本実施例においては、実施例2に示すようにニッケルを選択的に導入し、その部分から横方向(基板に平行な方向)に結晶成長した領域を用いて電子デバイスを形成する例を示す。このような構成を採用した場合、デバイスの活性層領域におけるニッケル濃度をさらに低くすることができ、デバイスの電気的安定性や信頼性の上から極めて好ましい構成とすることができる。また、非晶質珪素膜の膜厚を400Åとすることによって、ほぼ完全に(111)配向性の膜を得ることが可能である。
【0121】
図8に本実施例の作製工程を示す。まず、基板201を洗浄し、TEOS(テトラ・エトキシ・シラン)と酸素を原料ガスとしてプラズマCVD法によって厚さ2000Åの酸化珪素の下地膜202を形成する。そして、プラズマCVD法によって、厚さ300〜1500Å、本実施例では400Åの真性(I型)の非晶質珪素膜203を成膜する。次に連続的に厚さ500〜2000Å、例えば1000Åの酸化珪素膜205をプラズマCVD法によって成膜する。そして、酸化珪素膜205を選択的にエッチングして、非晶質珪素の露出した領域206を形成する。
【0122】
そして実施例2に示した方法により結晶化を助長する触媒元素であるニッケル元素を含んだ溶液(ここでは酢酸塩溶液)塗布する。酢酸溶液中におけるニッケルの濃度は100ppmである。その他、詳細な工程順序や条件は実施例1で示したものと同一である。この工程は、実施例5または実施例6に示した方法によるものであってもよい。
【0123】
この後、窒素雰囲気下で500〜620℃、例えば550℃、8時間の加熱アニールを行い、珪素膜203の結晶化を行う。結晶化は、ニッケルと珪素膜が接触した領域206を出発点として、矢印で示されるように基板に対して平行な方向に結晶成長が進行する。図においては領域204はニッケルが直接導入されて結晶化した部分、領域203は横方向に結晶化した部分を示す。この203で示される横方向への結晶は、25μm程度である。(図8(A))
【0124】
上記加熱処理による結晶化工程の後にさらにレーザー光の照射により珪素膜203の結晶性を助長させる。この工程は、実施例1と全く同一であるが、酸化珪素膜205を除去せずにレーザー結晶化を施すために、実施例1よりも更に高エネルギー、本実施例中では350mJ/cm で結晶化を行った。
【0125】
次に、酸化珪素膜205を除去する。この際、領域206の表面に形成される酸化膜も同時に除去する。そして、珪素膜204をパターニング後、ドライエッチングして、島状の活性層領域208を形成する。この際、図8(A)で206で示された領域は、ニッケルが直接導入された領域であり、ニッケルが高濃度に存在する領域である。また、結晶成長の先端にも、やはりニッケルが高濃度に存在することが確認されている。これらの領域では、その中間の領域に比較してニッケルの濃度が高いことが判明している。したがって、本実施例においては、活性層208において、これらのニッケル濃度の高い領域がチャネル形成領域と重ならないようにした。
【0126】
その後、100体積%の水蒸気を含む10気圧、500〜600℃の、代表的には550℃の雰囲気中において、1時間放置することによって、活性層(珪素膜)208の表面を酸化させ、酸化珪素膜209を形成する。酸化珪素膜の厚さは1000Åとする。熱酸化によって酸化珪素膜209を形成したのち、基板を、アンモニア雰囲気(1気圧、100%)、400℃に保持させる。そして、この状態で基板に対して、波長0.6〜4μm、例えば、0.8〜1.4μmにピークをもつ赤外光を30〜180秒照射し、酸化珪素膜209に対して窒化処理を施す。なおこの際、雰囲気に0.1〜10%のHClを混入してもよい。
(図8(B))
【0127】
引き続いて、スパッタリング法によって、厚さ3000〜8000Å、例えば6000Åのアルミニウム(0.01〜0.2%のスカンジウムを含む)を成膜する。そして、アルミニウム膜をパターニングして、ゲイト電極210を形成する。(図8(C))
【0128】
さらに、このアルミニウムの電極の表面を陽極酸化して、表面に酸化物層211を形成する。この陽極酸化は、酒石酸が1〜5%含まれたエチレングリコール溶液中で行う。得られる酸化物層211の厚さは2000Åである。なお、この酸化物211は、後のイオンドーピング工程において、オフセットゲイト領域を形成する厚さとなるので、オフセットゲイト領域の長さを上記陽極酸化工程で決めることができる。(図8(D))
【0129】
次に、イオンドーピング法(プラズマドーピング法でもよい)によって、活性層領域(ソース/ドレイン、チャネルを構成する)にゲイト電極部、すなわちゲイト電極210とその周囲の酸化層211をマスクとして、自己整合的にN導電型を付与する不純物(ここでは燐)を添加する。ドーピングガスとして、フォスフィン(PH )を用い、加速電圧を60〜90kV、例えば80kVとする。ドーズ量は1×1015〜8×1015cm−2、例えば、4×1015cm−2とする。この結果、N型の不純物領域212と213を形成することができる。図からも明らかなように不純物領域とゲイト電極とは距離xだけ放れたオフセット状態となる。このようなオフセット状態は、特にゲイト電極に逆電圧(NチャネルTFTの場合はマイナス)を印加した際のリーク電流(オフ電流ともいう)を低減する上で有効である。特に、本実施例のようにアクティブマトリクスの画素を制御するTFTにおいては良好な画像を得るために画素電極に蓄積された電荷が逃げないようにリーク電流が低いことが望まれるので、オフセットを設けることは有効である。
【0130】
その後、レーザー光の照射によってアニールを行う。レーザー光としては、KrFエキシマレーザー(波長248nm、パルス幅20nsec)を用いるが、他のレーザーであってもよい。レーザー光の照射条件は、エネルギー密度が200〜400mJ/cm 、例えば250mJ/cm とし、一か所につき2〜10ショット、例えば2ショット照射した。このレーザー光の照射時に基板を200〜450℃程度に加熱することによって、効果を増大せしめてもよい。(図8(E))
【0131】
続いて、厚さ6000Åの酸化珪素膜214を層間絶縁物としてプラズマCVD法によって形成する。さらに、スピンコーティング法によって透明なポリイミド膜215を形成し、表面を平坦化する。
【0132】
そして、層間絶縁物214、215にコンタクトホールを形成して、金属材料、例えば、窒化チタンとアルミニウムの多層膜によってTFTの電極・配線217、218を形成する。最後に、1気圧の水素雰囲気で350℃、30分のアニールを行い、TFTを有するアクティブマトリクスの画素回路を完成する。(図8(F))
【0133】
本実施例で作製したTFTは高移動度を得ることができるので、アクティブマトリックス型の液晶表示装置のドライバー回路に利用することができる。具体的には移動度がNチャネルで250cm /Vs以上のものが得られた。これは結晶の配向性が非常に高くなったため、粒界におけるポテンシャル障壁が低下したことに起因していると予想される。
【0134】
〔実施例8〕
本実施例は、実施例7の横成長の方法をOCDを用いた方法に変更したものである。即ち、500Åの真性(I型)の非晶質珪素膜203の後に連続的に成膜した厚さ500〜2000Å、例えば1000Åの酸化珪素膜205を省略し、その代わりにニッケルを含有させたSOG膜、ここでは東京応化製のOCD Type−2 のノンド─プの材料 Si−59000−SGを用い、この中にニッケル化合物を含有させた物を成膜した。成膜に先立っては、表面をオゾンにさらして非常に薄い酸化膜を形成し、その後にOCDを成膜した。
その後80℃及び150℃のプリベ─クを行い、続いて250℃のキュアを行った。このキュアの温度が高すぎるとこの工程において既にニッケルが非晶質珪素中に拡散してしまうため注意が必要である。また、オゾンによって生成した非常に薄い酸化膜はこのキュア工程における拡散のバリヤーとして作用し、これが無い場合には250℃でも充分にニッケルが拡散してしまうので注意が必要である。
次に、所定のパタ−ニングを行う。このパターニングは実施例7のマスクを用いて、レジストでポジネガ反転させたものを用いた。パターニング後のエッチングは、OCDのエッチングレートが非常に早い為、ウェットよりもドレイプロセスが望ましい。
以下の工程は実施例7とほぼ同様であるため省略する。得られたTFTの特性は実施例7の物と殆ど同様であった。
得られたTFTのゲ─ト部分を剥離し、その下の活性層部分の配向性を電子線回折から調べたところ、ほぼ(200)配向となっていることが観測された。
【0135】
〔実施例9〕
本実施例は、ガラス基板上に形成された結晶性珪素膜を用いたPチャネル型TFT(PTFTという)とNチャネル型TFT(NTFTという)とを相補型に組み合わせた回路を形成する例である。本実施例の構成は、アクティブ型の液晶表示装置の画素電極のスイッチング素子や周辺ドライバー回路、さらにはイメージセンサや集積回路に利用することができる。
図10に本実施例の作製工程の断面図を示す。まず、基板(コーニング7059)301上にスパッタリング法によって厚さ2000Åの酸化珪素の下地膜302を形成する。つぎにメタルマスクまたは酸化珪素膜等によって形成されたマスク303を設ける。このマスク303は、300の領域でスリット状に下地膜302を露呈させる。即ち、図10(A)の状態を上面から見ると、スリット状に下地膜302は露呈しており、他ぼ部分はマスクされている状態となっている。
【0136】
上記マスク303を設けた後、スパッタリング法によって、厚さ5〜200Å、例えば20Åの珪化ニッケル膜(化学式NiSi、0.4≦x≦2.5、例えば、x=2.0)を300の領域に選択的に成膜する。
【0137】
つぎに、プラズマCVD法によって、厚さ500〜1500Å、例えば1000Åの真性(I型)の非晶質珪素膜304を成膜する。そして、これを水素還元雰囲気下(好ましくは、水素の分圧が0.1〜1気圧),550℃、または不活性雰囲気化(大気圧),550℃、で4時間アニールして結晶化させる。この際、珪化ニッケル膜が選択的に成膜された300の領域においては、基板301に対して垂直方向に非晶質珪素膜304の結晶化が起こる。そして、領域300以外の領域では、矢印305で示すように、領域300から横方向(基板と平行な方向)に結晶成長が行われる。
【0138】
上記工程の結果、非晶質珪素膜304を結晶化させて、結晶性珪素膜を得ることができる。その後、スパッタリング法によって厚さ1000Åの酸化珪素膜306をゲイト絶縁膜として成膜する。スパッタリングには、ターゲットとして酸化珪素を用い、スパッタリング時の基板温度は200〜400℃、例えば350℃、スパッタリング雰囲気は酸素とアルゴンで、アルゴン/酸素=0〜0.5、例えば0.1以下とする。そして、素子間分離を行ない、TFTの活性層領域を確定する。この際、チャネル形成領域となる部分に305で示す結晶成長の先端部が存在しないようにすることは重要である。こうすることで、ソース/ドレイン間を移動するキャリアがチャネル形成領域において、ニッケル元素の影響を受けないようにすることができる。
【0139】
引き続いて、スパッタリング法によって、厚さ6000〜8000Å、例えば6000Åのアルミニウム(0.1〜2%のシリコンを含む)を成膜する。
【0140】
そして、アルミニウム膜をパターニングして、ゲイト電極307、309を形成する。さらに、このアルミニウムの電極の表面を陽極酸化して、表面に酸化物層308、310を形成する。この陽極酸化は、酒石酸が1〜5%含まれたエチレングリコール溶液中で行った。得られた酸化物層308、310の厚さは2000Åであった。なお、この酸化物308と310とは、後のイオンドーピング工程において、オフセットゲイト領域を形成する厚さとなるので、オフセットゲイト領域の長さを上記陽極酸化工程で決めることができる。
【0141】
次に、イオンド注入によって、活性層領域(ソース/ドレイン、チャネルを構成する)に一導電型を付与する不純物を添加する。このドーピング工程において、ゲイト電極307とその周囲の酸化層308、ゲイト電極309とその周囲の酸化層310をマスクとして不純物(燐およびホウ素)を注入する。ドーピングガスとして、フォスフィン(PH )およびジボラン(B )を用い、前者の場合は、加速電圧を60〜90kV、例えば80kV、後者の場合は、40〜80kV、例えば65kVとする。ドース量は1×1015〜8×1015cm−2、例えば、燐を2×1015cm−2、ホウ素を5×1015とする。ドーピングに際しては、一方の領域をフォトレジストで覆うことによって、それぞれの元素を選択的にドーピングする。この結果、N型の不純物領域314と316、P型の不純物領域311と313が形成され、Pチャネル型TFT(PTFT)の領域とNチャネル型TFT(NTFT)との領域を形成することができる。
【0142】
その後、レーザー光の照射によってアニール行う。レーザー光としては、KrFエキシマレーザー(波長248nm、パルス幅20nsec)を用いたが、他のレーザーであってもよい。レーザー光の照射条件は、エネルギー密度が200〜400mJ/cm 、例えば250mJ/cm とし、一か所につき2〜10ショット、例えば2ショット照射する。このレーザー光の照射時に基板を200〜450℃程度に加熱することは有用である。このレーザアニール工程において、先に結晶化された領域にはニッケルが拡散しているので、このレーザー光の照射によって、再結晶化が容易に進行し、P型を付与する不純物がドープされた不純物領域311と313、さらにはNを付与する不純物がドープされた不純物領域314と316は、容易に活性化させることができる。
【0143】
この工程は、赤外線(例えば1.2μm)によるランプアニールによる方法でもよい。赤外線は珪素へは吸収されやすく、1000度以上の熱アニールにも匹敵する効果的なアニールを行うことができる。その反面、ガラス基板へは吸収されにくいので、ガラス基板を高温に加熱することがなく、また短時間の処理ですむので、ガラス基板の縮みが問題となる工程においては最適な方法であるといえる。
【0144】
続いて、厚さ6000Åの酸化珪素膜318を層間絶縁物としてプラズマCVD法によって形成し、これにコンタクトホールを形成して、金属材料、例えば、窒化チタンとアルミニウムの多層膜によってTFTの電極・配線317、320、319を形成する。最後に、1気圧の水素雰囲気で350℃、30分のアニールを行い、TFTを相補型に構成した半導体回路を完成した。(図10(D))
【0145】
上記に示す回路は、PTFTとNTFTとを相補型に設けたCMOS構造であるが、上記工程において、2つのTFTを同時に作り、中央で切断することにより、独立したTFTを2つ同時に作製することも可能である。
【0146】
図11に、図10(D)を上面から見た概要を示す。図11における符号は図10の符号に対応する。図11に示すように結晶化の方向は矢印で示す方向であり、ソース/ドレイン領域の方向(ソース領域とドレイン領域を結んだ線方向)に結晶成長が行われている。この構成のTFTの動作時において、キャリアはソース/ドレイン間を針状あるいは柱状に成長した結晶に沿って移動する。即ちキャリアは針状あるいは柱状の結晶の結晶粒界に沿って移動する。従って、キャリアが移動する際に受ける抵抗を低減することができ、高移動度を有するTFTを得ることができる。
【0147】
本実施例においては、Niを導入する方法として、非晶質珪素膜304下の下地膜302上に選択的にNiを薄膜(極めて薄いので、膜として観察することは困難である)として形成し、この部分から結晶成長を行わす方法を採用したが、非晶質珪素膜304を形成後に、選択的に珪化ニッケル膜を成膜する方法でもよい。即ち、結晶成長は非晶質珪素膜の上面から行ってもよいし、下面から行ってもよい。また、予め非晶質珪素膜を成膜し、さらにイオンドーピング法を用いて、ニッケルイオンをこの非晶質珪素膜304中に選択的に注入する方法を採用してもよい。この場合は、ニッケル元素の濃度を制御することができるという特徴を有する。また非晶質珪素膜に対するニッケルの導入手段は、プラズマ処理やCVD法による方法でもよい。
【0148】
〔実施例10〕
本実施例は、アクティブ型の液晶表示装置において、Nチャネル型TFTをスイッチング素子として各画素に設けた例である。以下においては、一つの画素について説明するが、他に多数(一般には数十万)の画素が同様な構造で形成される。また、Nチャネル型ではなくPチャネル型でもよいことはいうまでもない。また、液晶表示装置の画素部分に設けるのではなく、周辺回路部分にも利用できる。また、イメージセンサや他の装置に利用することができる。即ち薄膜トランジタと利用するのであれば、特にその用途が限定されるものではない。
【0149】
本実施例の作製工程の概略を図12に示す。本実施例において、基板401としてはコーニング7059ガラス基板(厚さ1.1mm、300×400mm)を使用した。まず、下地膜402(酸化珪素)をスパッタリング法で2000Åの厚さに形成する。この後選択的にニッケルを導入するために、メタルマスクや酸化珪素膜、またはフォトレジスト等により、マスク403を形成する。そして、スパッタリング法により珪化ニッケル膜を成膜する。この珪化ニッケル膜は、スパッタリング法によって、厚さ5〜200Å、例えば20Åの厚さに形成する。この珪化ニッケル膜は、化学式NiSi、0.4≦x≦2.5、例えば、x=2.0で示される。このようにして、選択的に領域404に珪化ニッケル膜が形成される。
【0150】
この後、LPCVD法もしくはプラズマCVD法で非晶質珪素膜405を1000Åの厚さに形成し、400℃で1時間脱水素化を行った後、加熱アニールによって結晶化を行う。このアニール工程は、水素還元雰囲気下(好ましくは、水素の分圧が0.1〜1気圧)、550℃で4時間行った。またこの加熱アニール工程を窒素等の不活性雰囲気中で行ってもよい。
【0151】
このアニール工程において、非晶質珪素膜405下の一部の領域には、珪化ニッケル膜が形成されているので、この部分から結晶化が起こる。この結晶化の際、図12(B)の矢印で示すように、珪化ニッケルが成膜されている部分404では、基板401に垂直方向にシリコンの結晶成長が進行する。また、同様に矢印で示されるように、珪化ニッケルが成膜されいていない領域(領域404以外の領域)においては、基板に対し、平行な方向に結晶成長が行われる。
【0152】
こうして、結晶性珪素よりなる半導体膜405を得ることができる。次に、上記半導体膜405をパターニングして島状の半導体領域(TFTの活性層)を形成する。この際、矢印の如く結晶成長した結晶の先端部が活性層、特にチャネル形成領域に存在しないようにすることが重要である。具体的には、図12(B)の矢印の先端部が結晶成長に終点(端部)である場合、ニッケルが導入された404の部分とこの矢印の終点(図面左端)の部分の結晶性珪素膜405をエッチングで除去し、結晶性珪素膜405の基板に平行な方向に結晶成長した中間部分を活性層として利用することが有用である。これは、ニッケルが結晶成長先端部に集中している事実を踏まえ、この先端部に集中したニッケルがTFTの特性に悪影響を及ぼすことを防ぐためである。
【0153】
さらにテトラ・エトキシ・シラン(TEOS)を原料として、酸素雰囲気中のプラズマCVD法によって、酸化珪素のゲイト絶縁膜(厚さ70〜120nm、典型的には100nm)406を形成する。基板温度はガラスの縮みやソリを防止するために400℃以下、好ましくは200〜350℃とする。
【0154】
次に、公知のシリコンを主成分とした膜をCVD法で形成し、パターニングを行うことによって、ゲイト電極407を形成する。その後、N型の不純物として、リンをイオン注入法で注入し、自己整合的にソース領域408、チャネル形成領域409、ドレイン領域410を形成する。そして、KrFレーザー光を照射することによって、イオン注入のために結晶性の劣化した珪素膜の結晶性を改善させる。このときにはレーザー光のエネルギー密度は250〜300mJ/cm とする。このレーザー照射によって、このTFTのソース/ドレインのシート抵抗は300〜800Ω/cm となる。このアニール工程を、赤外線のランプアニールによって行うのは有用である。
【0155】
その後、酸化珪素によって層間絶縁物411を形成し、さらに、画素電極412をITOによって形成する。そして、コンタクトホールを形成して、TFTのソース/ドレイン領域にクロム/アルミニウム多層膜で電極413、414を形成し、このうち一方の電極414はITO412にも接続するようにする。最後に、水素中で200〜300℃で2時間アニールして、シリコンの水素化を完了する。このようにして、TFTを完成する。この工程は、同時に他の多数の画素領域においても同時に行われる。
【0156】
本実施例で作製したTFTは、ソース領域、チャネル形成領域、ドレイン領域を構成する活性層として、キャリアの流れる方向に結晶成長させた結晶性珪素膜を用いているので、結晶粒界をキャリアが横切ることがなく、即ちキャリアが針状あるいは柱状の結晶の結晶粒界に沿って移動することになるから、キャリアの移動度の高いTFTを得ることができた。本実施例で作製したTFTはNチャネル型であり、その移動度は、90〜130(cm /Vs)であった。従来の600℃、48時間の熱アニールによる結晶化によって得られた結晶シリコン膜を用いたNチャネル型TFTに移動が、80〜100(cm /Vs)であったことと比較すると、これはこれは大きな特性の向上である。
【0157】
また上記の工程と同様な作製方法によって、Pチャネル型TFTを作製し、その移動度を測定すると、50〜80(cm /Vs)であった。これも従来の600℃、48時間の熱アニールによる結晶化によって得られた結晶性珪素膜を用いたPチャネル型TFTに移動が、30〜60(cm /Vs)であったことに比較すると大きな特性の向上である。
【0158】
〔実施例11〕
本実施例は、実施例10に示すTFTにおいて、結晶の成長方向に大して垂直な方向にソース/ドレインを設けた例である。即ち、移動する方向が結晶成長方向とは垂直になっており、針状あるいは柱状の結晶の結晶粒界を横切るようにしてキャリアが移動する構成とした例である。このような構成とすると、ソース/ドレイン間の抵抗を高くすることができる。これは、針状あるいは柱状に結晶成長した結晶の結晶粒界を横切るようにキャリアが移動しなければならないためである。本実施例の構成を実現するには、実施例10に示す構成において、単にTFTをどのような向きで設けるかを設定すればよい。
【0159】
〔実施例12〕
本実施例は、実施例10に示す構成において、TFTを設ける向き(ここではソース/ドレイン領域を結ぶ線で定義する。即ち、キャリアの流れる向きでTFTの方向を決めることとする)を結晶性珪素膜の基板表面に対する結晶成長方向と任意の角度で設定することにより、TFTの特性を選択することを要旨とする。
【0160】
前述のように、結晶の成長方向にキャリアを移動させる場合、キャリアは結晶粒界に沿って移動するので、その移動度を向上させることができる。一方、結晶の成長方向に対して垂直な方向にキャリアを移動させる場合には、キャリアが多数の粒界を横切らなければならないので、キャリアの移動度は低下する。
【0161】
そこで、この2つの状態の間で、即ち結晶成長方向とキャリアの移動する方向との角度を0〜90°の範囲において設定することにより、キャリアの移動度を制御することができる。また別な見方をするならば、上記結晶成長方向とキャリアの移動する方向との角度を設定することにより、ソース/ドレイン領域間の抵抗を制御できることになる。勿論この構成は、図11に示す構成にも利用することができる。この場合、図11に示すスリット状のニッケル微量添加領域300が0〜90°の範囲で回転し、矢印305で示す結晶の成長方向と、ソース/ドレイン領域を結ぶ線との角度が0〜90°範囲で選択されることになる。そして、この角度が、0°に近い場合は移動度が大きく、ソース/ドレイン間の電気抵抗が小さい構成とすることができる。またこの角度が90°に近い場合、移動度が小さく、ソース/ドレイン間の抵抗が大きい構成とすることができる。
【0162】
【効果】
基板上に設けられ、しかも基板表面に平行な方向に結晶成長した結晶性を有する非単結晶珪素半導体膜をTFTに利用するに際して、TFT内を移動するキャリアの流れの方向を結晶成長が行われた方向と合わせることにより、キャリアの移動が針状または柱状に成長した結晶の結晶粒界に沿って(平行に)移動する構成とすることができ、高移動度を有するTFTを得るこができる。
【0163】
また、基板に平行な方向に結晶成長した先端部には、結晶化を助長させるための金属元素が集中して存在しているので、この領域をさけてTFTを形成することにより、TFTの動作の安定性や信頼性を高めることができる。さらに、触媒元素を導入して低温で短時間で結晶化させ、さらにレーザー光または強光を照射した結晶性珪素膜を用いて、半導体装置を作製することで、生産性が高く、特性のよいデバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】結晶性珪素膜における配向性の触媒元素濃度依存性を示す。
【図2】結晶化機構を説明するモデル図である。
【図3】実施例の作製工程を示す。
【図4】結晶性珪素膜のX線回折の結果を示す。
【図5】実施例の作製工程を示す。
【図6】結晶性珪素膜のX線回折の結果を示す。
【図7】実施例の作製工程を示す。
【図8】実施例の作製工程を示す。
【図9】結晶性珪素膜の膜厚と配向性の関係を示す。
【図10】実施例の作製工程を示す。
【図11】実施例の概要を示す。
【図12】実施例の作製工程を示す。
【図13】珪素膜の結晶構造を示す写真である。
【図14】珪素膜の結晶構造を示す写真である。
【図15】珪素膜の結晶構造を示す写真である。
【図16】珪素膜の結晶方位を示した模式図である。
【図17】珪素膜中のニッケルの濃度を示す。
【図18】珪素薄膜の状態を示す写真である。
【図19】珪素膜の結晶化機構を示した模式図である。
【符号の説明】
11・・・・ガラス基板
12・・・・非晶質珪素膜
20・・・・酸化珪素膜
14・・・・ニッケルを含有した酢酸溶液膜
15・・・・ズピナー
21・・・・マスク用酸化珪素膜
22・・・・縦成長部分
23・・・・横成長部分
13・・・・酸化珪素膜
104・・・活性層
105・・・酸化珪素膜
106・・・ゲイト電極
109・・・酸化物層
108・・・ソース/ドレイン領域
109・・・ドレイン/ソース領域
110・・・層間絶縁膜(酸化珪素膜)
112・・・電極
113・・・電極
114・・・チャネル形成領域
201・・・ガラス基板
202・・・下地膜
203・・・珪素膜
205・・・マスク用酸化珪素膜
206・・・開孔部分
207・・・ニッケルを含有した酢酸溶液膜
208・・・活性層
209・・・酸化珪素膜
210・・・ゲイト電極
211・・・酸化物
212・・・N型の不純物領域
213・・・N型の不純物領域
214・・・酸化珪素膜(層間絶縁物)
215・・・層間絶縁物
217・・・電極・配線
218・・・電極・配線
301 ガラス基板
302 下地膜(酸化珪素膜)
303 マスク
304 珪素膜
305 結晶化の方向
306 ゲイト絶縁膜
307 ゲイト電極
308 陽極酸化層
309 ゲイト電極
310 陽極酸化層
311 ソース/ドレイン領域
312 チャネル形成領域
313 ドレイン/ソース領域
314 ソース/ドレイン領域
315 チャネル形成領域
316 ドレイン/ソース領域
317 電極
318 層間絶縁物
320 電極
319 電極
401 ガラス基板
402 下地膜(酸化珪素膜)
403 マスク
404 ニッケル微量添加領域
405 珪素膜
406 ゲイト絶縁膜
407 ゲイト電極
408 ソース/ドレイン領域
409 チャネル形成領域
410 ドレイン/ソース領域
411 層間絶縁物
413 電極
414 電極
412 ITO(画素電極)
501 結晶成長面
502 結晶性珪素
503 非晶質珪素
504 見掛け上の結晶成長方向
505 見掛け上の結晶成長方向
506 結晶成長面

Claims (6)

  1. 非晶質珪素膜を形成し、
    前記非晶質珪素膜の表面を酸化し、
    前記酸化された非晶質珪素膜の表面に、ニッケル、パラジウム、白金のいずれかを含む溶液を塗布し、
    前記非晶質珪素膜を加熱し、加熱後レーザー光又は強光を照射して、(111)配向比率が0.33以上の結晶性珪素膜を形成し、
    前記結晶性珪素膜の表面を酸化して、酸化珪素膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  2. 非晶質珪素膜を形成し、
    前記非晶質珪素膜の表面を酸化し、
    前記酸化された非晶質珪素膜の表面に、ニッケル、パラジウム、白金のいずれかを含む溶液を塗布し、
    前記非晶質珪素膜を加熱し、加熱後レーザー光又は強光を照射して、(111)配向比率が0.33以上の結晶性珪素膜を形成し、
    前記結晶性珪素膜をパターニングして、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル形成領域が設けられる島状の領域を形成し、
    前記島状の領域の表面を酸化して、酸化珪素膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  3. 請求項1又は2において、水蒸気を用いて前記島状の領域の表面を酸化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
  4. 非晶質珪素膜を形成し、
    前記非晶質珪素膜の表面を酸化し、
    前記酸化された非晶質珪素膜表面に、ニッケルを含む溶液を塗布し、
    前記非晶質珪素膜を加熱し、加熱後レーザー光または強光を照射して、結晶性珪素膜を形成し、
    レーザー光または強光を照射後、前記結晶性珪素膜をパターニングして、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル形成領域が設けられる島状の領域を形成し、
    前記島状の領域の表面を酸化して、酸化珪素膜を形成する半導体装置の作製方法であって、
    前記チャネル形成領域は(111)配向比率が0.33以上の結晶でなることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  5. 請求項において、前記ニッケルを含む溶液は酢酸ニッケル溶液であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
  6. 請求項4又は5において、水蒸気を用いて前記島状の領域の表面を酸化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
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