JP3629664B2 - 高圧ガス圧縮機のピストン - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、天然ガス等を高圧に圧縮する無給油往復動圧縮機のピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、天然ガス等を高圧に圧縮する際に圧縮ガス中に潤滑油が混入するのを避けるため、無給油往復動圧縮機が用いられている。しかし無給油で圧縮機を運転するために、精々40kgf/cm2 程度までの圧縮機が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の無給油往復動圧縮機では潤滑油を用いないため、これを用いて250 kgf/cm2 以上にまで圧縮しようとすると、圧縮機の運転中の各部の振動により、クロスヘッドやピストンに摩擦による摩耗が発生する。
【0004】
特に高圧にガスを圧縮する圧縮機では運転中のガスの温度上昇により、常温と運転温度の差による、シリンダとピストンの熱膨張の差を吸収するために、シリンダ内径とピストン外径の間隙を或る程度大きくする必要がある。特にピストン部とクロスヘッド部の直径が異なり、クロスヘッド部の直径が大きい場合、運転時の温度上昇に伴う熱膨張量が、クロスヘッド部の方が大きくクロスヘッドガイドとクロスヘッドの間の間隙をシリンダとピストンの間の間隙よりも大きくする必要があり、従来のクロスヘッドとピストンが一体に構成された圧縮機の場合は運転初期の温度が定常状態に達する迄にピストン部に無理な力が掛かるため、ピストンとシリンダの間隙を大きくする必要があった。
【0005】
そのようにシリンダとピストンの間隙を大きくすると、その間隙を通じて漏洩するガス量が増加し、圧縮機の効率が低下する。又その間隙が大きいと、ピストンの往復動の際、シリンダとピストンが完全に平行を保って往復運動せず、僅かに傾くため、シリンダとライダリング及びピストンに無理な力が加わり、摩耗を促進する虞もある。
【0006】
従って、本発明は高圧にガスを圧縮する無給油往復動圧縮機において、ピストン及びライダリングの摩耗の少ないピストンを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、クランクシャフトにより連接棒を介して駆動されて往復運動するクロスヘッドとシリンダ内を往復するピストンとの連接部を緩く連接し、クロスヘッドとピストンがその軸線と直角の方向に互いに摺動可能に構成するか、あるいはクロスヘッドとピストンの軸線が互いに微小な角度の範囲で揺動可能に連接部を構成することにより、ピストンの往復運動時にピストンとシリンダの間に無理な力が掛からないようにすると共に、そのクロスヘッドとピストンの連接部の互いの摺動部にの少なくとも一方を潤滑性素材で構成するか、潤滑性皮膜を被覆することにより、その摺動部の摩耗を防止することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
即ち本発明は、シリンダと該シリンダ内を往復摺動するピストンと該ピストンに結合され連接棒を介してクランク軸の回転により往復運動するように駆動されるクロスヘッドを備えた無給油式高圧ガス圧縮機において、該ピストンと該クロスヘッドの結合部を、中空の該クロスヘッドの頂部にピストンの端部を嵌合する 嵌合孔を設け、一方該ピストンの基端部には該クロスヘッドの嵌合孔に嵌合する嵌合突起を設け、該嵌合孔に該嵌合突起を嵌合し該嵌合突起の先端面に該嵌合孔よりも径の大なる座金を固着して、該ピストンとクロスヘッドを結合し、該嵌合孔の内径を該嵌合突起の外径より若干大きく、該嵌合突起の高さを該嵌合孔の深さよりも僅かに大きく形成し、該嵌合突起が該嵌合孔内でピストンの軸線に対し直角方向に微小距離の範囲内で摺動可能に構成すると共に、該クロスヘッドの頂面及び/又は該ピストンの該嵌合突起の周囲の端面をポリイミド系の合成樹脂よりなる耐摩耗性で且つ潤滑性の皮膜で被覆したことを特徴とする高圧ガス圧縮機のピストンを要旨とする。
【0009】
更に他の本発明は、シリンダと該シリンダ内を往復摺動するピストンと該ピストンに結合され連接棒を介してクランク軸の回転により往復運動するように駆動されるクロスヘッドを備えた無給油式高圧ガス圧縮機において、該ピストンと該クロスヘッドの結合部を、該ピストンの基端部に設けたフランジ部と、該フランジ部を収容する浅い円筒部と該円筒部の端部に固着され該ピストンを挿通する有孔円板部よりなり該フランジ部をクロスヘッド頂面に保持するピストン押えよりなり、該フランジ部の外径より該ピストン押えの円筒部の内径を若干大きく、該フランジ部の厚みよりも該ピストン押えの円筒部の深さを僅かに大きく構成し、該フランジ部が該ピストン押え内でピストンの軸線に対し直角方向に微小距離の範囲内で摺動可能に構成し、該フランジ部の端面及び/又は該クロスヘッドの頂面をポリイミド系の合成樹脂よりなる耐摩耗性で且つ潤滑性の皮膜で被覆すると共に、該フランジ部を凸球面状の下面を有する球面鍔部とこれと丁度嵌合する凹球面状窪み部を有するピストン受に分割し、該球面鍔部と該窪み部の間の球面状摺動面により該ピストンと該ピストン受が互いに摺動可能に結合され、該ピストンと該クロスヘッドとが微小角度範囲で互いに揺動可能に構成し、該球面状摺動面の少なくとも片側の摺動面をポリイミド系の合成樹脂よりなる耐摩耗性で且つ潤滑性の皮膜で被覆したことを特徴とする高圧ガス圧縮機のピストンを要旨とする。
【0010】
【実施例】
本発明の高圧ガス圧縮機のピストンの一例について、図面により詳細に説明する。図1は本発明の高圧ガス圧縮機のピストンを備えた圧縮機の一例の概略を示す断面図であり、図2は本発明の高圧ガス圧縮機のピストンの一例の断面図である。
【0011】
図1及び図2において、1はクランクケース2に対して1個又は放射状に複数個取付られた圧縮機のシリンダであり、その内面を往復摺動するピストン3を備え、ピストン3の外周には複数のピストンリング25及びライダリング24が嵌挿されている。ピストン3は、連接棒5を介してクランク軸4の回転によりクロスヘッドガイド23内を往復駆動されるクロスヘッド6に結合されている。ピストン3とクロスヘッド6との結合はピストン3の軸線Iの方向に対し直角方向に微小距離の範囲で互いに遊動可能に結合されている。その結合構造は図2に示す実施例では、中空のクロスヘッド6の頂部にピストン3の端部を嵌合する嵌合孔14を設け、一方ピストン3の基端部にはクロスヘッド6の嵌合孔14に嵌合する嵌合突起15を設け、その嵌合孔14に嵌合突起15を嵌合し、嵌合突起15の先端面に嵌合孔14よりも径の大なる座金16を締付ボルト17により固着して、ピストン3とクロスヘッド6を結合する。嵌合孔14の内径は嵌合突起15の外径より若干大きく、嵌合突起15の高さHは嵌合孔14の深さDよりも僅かに大きく形成することより、フランジ部8とクロスヘッド6とが軸線Iの方向と直角の方向に互いに微小範囲内で摺動可能となる。
【0012】
圧縮機の運転中ピストン3の端面9とクロスヘッド6の頂面7が常に摺動する結果、無給油式圧縮機の場合はこの摺動面に異常摩耗が発生する虞がある。そこでピストン3の端面9に耐摩耗性で且つ潤滑性を有する固体潤滑膜13を被覆することにより、その摩耗を防止することができる。即ちクロスヘッド6の頂面7及び/又はピストン3の基端部の嵌合突起15の周囲の端面9に固体潤滑膜13を被覆する。又固体潤滑膜13で被覆する代わりにピストン3本体をポリイミド系合成樹脂等により構成してもよい。固体潤滑膜13は例えばポリイミド系合成 樹脂が好ましく用いられる。
【0013】
図3は本発明の高圧ガス圧縮機のピストンの更に改良された別の実施例の断面図である。クロスヘッド6の頂面7にピストン3の基端部に設けたフランジ部8の端面9が互いに摺動可能にピストン押え10により緩く結合されている。ピストン押え10は短い円筒部11とその上端に結合した有孔円板部12よりなり、その円筒部11の内径をピストン3のフランジ部8の外径より若干大きくし、円筒部11の内面の高さHをピストン3のフランジ部8の厚みDより僅かに大きくすることにより、フランジ部8とクロスヘッド6とが軸線Iの方向と直角の方向に互いに微小範囲内で摺動可能となる。
【0014】
ピストン3の基端のフランジ部8の端面9に耐摩耗性で且つ潤滑性を有する固体潤滑膜13を被覆することにより、その摩耗を防止することができる。固体潤滑膜13は例えばポリイミド系合成樹脂が好ましく用いられる。
【0015】
ピストン3の基端部のフランジ部8を凸球面状の下面を有する球面鍔部18とこれと丁度嵌合する凹球面状窪み部22を有するピストン受19に分割し、球面状接合面20によりピストン3とピストン受19が互いに摺動可能に形成されている。21はスプリングであり、ナット22を締めることにより、ピストン3の球面鍔部18とピストン受19が互いに弾性的に押圧され摺動可能に結合される。上記凸球面と凹球面の位置を逆にして、ピストン3に凹球面をピストン受19に凸球面を設けてもよい。
【0016】
ピストン3の球面鍔部18とピストン受19の球面状接合面20の摺動により、クロスヘッド6の軸線Jとピストン3の軸線Iとが微小角度範囲で互いに揺動可能となる。
【0017】
ピストン3の球面鍔部18とピストン受19の球面状摺動面20の少なくとも片側の面には前記と同様の固体潤滑膜13を被覆するのが好ましい。またピストン受19全体を耐摩耗性及び潤滑性を有する素材で構成することもできる。例えばポリイミド系合成樹脂が好ましく用いられる。ピストン受19全体を潤滑性素材により構成することにより、球面状摺動面20の摺動及びピストン受19底面とクロスヘッド6頂面7の摺動を同時に潤滑することができる。
【0018】
更に上記各実施例において、ピストン3外周とシリンダ1内面の摺動を潤滑するために、ピストン3の外周の円筒状摺動面に前記と同様な耐摩耗性で且つ潤滑性の合成樹脂等の皮膜または潤滑剤粉末を埋設したメッキ層よりなる固体潤滑膜13を被覆することができる。これによりピストン3とシリンダ1の間の潤滑性が増し、ピストン3に無理な力が働くことが一層少なくなり、ピストン3とシリンダ1の間隙を更に小さくすることができる。
【0019】
【作用】
本発明の高圧ガス圧縮機のピストンによれば、ピストン3とクロスヘッド6が軸線Iに対して直角の方向に互いに摺動して、ピストン3がラジアル方向に移動可能となり、ピストン3とシリンダ1の芯出しが圧縮機の運転中に自動的に行われ、ピストン3がシリンダ1内を摺動する際に無理な力が働くことがなくなり、ピストン3及びライダリング24の摩耗が軽減される。そしてピストン3のフランジ部8の端面9とクロスヘッド6の頂面7の摺動面の少なくとも一方に耐摩耗性の潤滑膜13を被覆し、又は片側の部材を潤滑性素材で構成することより、摺動面の摩擦を軽減し摺動を容易にすることができ、上記芯出しが一層容易に行われる。
【0020】
特にピストン3の基端部のフランジ部8を球面鍔部18とピストン受19の窪み部22を球面状摺動面20で摺動可能に接合することにより、ピストン3の軸線Iとクロスヘッド6の軸線Jを揺動可能にすれば、ピストン3とクロスヘッド6が2方向の平行移動運動と2方向の回転運動の4つの自由度をもって接合されるため、ピストン3の往復運動中、ピストン3とシリンダ1の芯出しが自動的に精密に行われ、ピストン3及びライダリング24の摩耗を軽減すると共に、そのピストン3とクロスヘッド6の間の摺動面を固体潤滑膜13により潤滑することより、その摺動面の異常摩耗の虞をなくすることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の高圧ガス圧縮機のピストンによれば、無給油の高圧ガス圧縮機のピストン3のシリンダ1に対する芯出しが自動的に精密に行なえるため、ピストン3及びライダリング24の寿命を延長すると共に、ピストン3とシリンダ1の間隙を少なくすることができ、ガスの漏洩量を減少させ、圧縮効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高圧ガス圧縮機のピストンを備えた圧縮機の一例の概略を示す断面図である。
【図2】本発明の高圧ガス圧縮機のピストンの一例の断面図である。
【図3】本発明の高圧ガス圧縮機のピストンの更に改良された実施例の断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
2 クランクケース
3 ピストン
4 クランク軸
5 連接棒
6 クロスヘッド
7 頂面
8 フランジ部
9 端面
10 ピストン押え
11 円筒部
12 有孔円板部
13 固体潤滑膜
14 嵌合孔
15 嵌合突起
16 座金
17 締付ボルト
18 球面鍔部
19 ピストン受
20 球面状摺動面
21 スプリング
22 窪み部
23 クロスヘッドガイド
24 ライダリング
25 ピストンリング
Claims (3)
- シリンダと該シリンダ内を往復摺動するピストンと該ピストンに結合され連接棒を介してクランク軸の回転により往復運動するように駆動されるクロスヘッドを備えた無給油式高圧ガス圧縮機において、該ピストンと該クロスヘッドの結合部を、中空の該クロスヘッドの頂部にピストンの端部を嵌合する嵌合孔を設け、一方該ピストンの基端部には該クロスヘッドの嵌合孔に嵌合する嵌合突起を設け、該嵌合孔に該嵌合突起を嵌合し該嵌合突起の先端面に該嵌合孔よりも径の大なる座金を固着して、該ピストンとクロスヘッドを結合し、該嵌合孔の内径を該嵌合突起の外径より若干大きく、該嵌合突起の高さを該嵌合孔の深さよりも僅かに大きく形成し、該嵌合突起が該嵌合孔内でピストンの軸線に対し直角方向に微小距離の範囲内で摺動可能に構成すると共に、該クロスヘッドの頂面及び/又は該ピストンの該嵌合突起の周囲の端面をポリイミド系の合成樹脂よりなる耐摩耗性で且つ潤滑性の皮膜で被覆したことを特徴とする高圧ガス圧縮機のピストン。
- シリンダと該シリンダ内を往復摺動するピストンと該ピストンに結合され連接棒を介してクランク軸の回転により往復運動するように駆動されるクロスヘッドを備えた無給油式高圧ガス圧縮機において、該ピストンと該クロスヘッドの結合部を、該ピストンの基端部に設けたフランジ部と、該フランジ部を収容する浅い円筒部と該円筒部の端部に固着され該ピストンを挿通する有孔円板部よりなり該フランジ部をクロスヘッド頂面に保持するピストン押えよりなり、該フランジ部の外径より該ピストン押えの円筒部の内径を若干大きく、該フランジ部の厚みよりも該ピストン押えの円筒部の深さを僅かに大きく構成し、該フランジ部が該ピストン押え内でピストンの軸線に対し直角方向に微小距離の範囲内で摺動可能に構成し、該フランジ部の端面及び/又は該クロスヘッドの頂面をポリイミド系の合成樹脂よりなる耐摩耗性で且つ潤滑性の皮膜で被覆すると共に、該フランジ部を凸球面状の下面を有する球面鍔部とこれと丁度嵌合する凹球面状窪み部を有す るピストン受に分割し、該球面鍔部と該窪み部の間の球面状摺動面により該ピストンと該ピストン受が互いに摺動可能に結合され、該ピストンと該クロスヘッドとが微小角度範囲で互いに揺動可能に構成し、該球面状摺動面の少なくとも片側の摺動面をポリイミド系の合成樹脂よりなる耐摩耗性で且つ潤滑性の皮膜で被覆したことを特徴とする高圧ガス圧縮機のピストン。
- 該ピストン受けをポリイミド系の合成樹脂よりなる耐摩耗性で且つ潤滑性の素材で構成した請求項2記載の高圧ガス圧縮機のピストン。
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JP10039595A Expired - Fee Related JP3629664B2 (ja) | 1995-03-31 | 1995-03-31 | 高圧ガス圧縮機のピストン |
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