JP3629478B2 - ウシ乳房炎により出現するラクトフェリン分子種による乾乳期ならびに初乳分泌期のウシ乳房炎診断方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウシの乳房炎診断方法に関し、特に乾乳期ならびに初乳分泌期のウシの乳房炎診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ウシ乳房炎は、乳牛において最も罹り易く、且つ、慢性化し易い疾患である。乳房炎に感染すると、牛乳の生産量の低下による経済損失ばかりでなく、酪農家にかかる労働負担が増加する。そのため、ウシの乳房炎は、酪農業を営む者にとって極めて重大な疾患の一つである。特に近年では、多頭飼育によるストレスと、搾乳機の普及による搾乳ストレスの増加により、乳房炎が多発する傾向にある。潜在性乳房炎を含めると乳房炎罹患牛は全泌乳牛の1/4にもおよび、絶えず高率の乳房が乳房炎に罹患している。
【0003】
乳房炎の診断は、一般的に、臨床症状、薬剤残留乳やアルコール不安定乳などの異常乳検査、カリフォルニア・マスティティス・テスト(CMT)又はCMT変法による乳汁中のpHや体細胞数(SCC)検査、NAGase活性検査などの乳汁の理化学検査、および黄色ブドウ球菌や大腸菌などの乳房炎起因菌に対する細菌検査により行われる(家畜共済における臨床病理検査要領.農林水産省経済局編,57−79,全国農業共済協会,東京,1997.)。
【0004】
しかしながら、上記の理化学的検査は、乳汁中の細胞の数、乳汁の特有な酵素活性等の性状を利用して行われるものである。そのため、細胞成分の構成が大きく異なり、乳成分の合成能が低下し、常乳と比較して乳成分が大きく異なる乾乳期および初乳分泌期間には(日畜会報,70,J169−J176,1999.)、乳房炎の診断に応用することが困難である。
【0005】
上記以外検査としては、ラクトフェリン(以下、Lfとする。)を診断マーカーとして用いた泌乳期の臨床型乳房炎の診断方法がある。これは、泌乳期にウシが臨床型乳房炎に罹患すると乳汁中のLf濃度が増加することを利用するものである(家畜共済における臨床病理検査要領.農林水産省経済局編,60,全国農業共済協会,東京,1997.)。
【0006】
しかしながら、泌乳期以外の期間、すなわち、乾乳期には、ウシ乳房炎の診断マーカーとしてLfを利用できなかった。その理由は、乾乳導入後の乳汁中や初乳中におけるLf濃度は、泌乳期の乳汁のLf濃度と比較して数倍から数百倍高くなったり(日本畜産学会報,70,J169−J176,1999.)、乾乳期のステージによっては泌乳期とは逆に低くなったりするため、Lf含有量により乳房炎を判断することができないからである。
【0007】
それゆえ、乾乳期と初乳分泌期間中のウシ乳房炎の診断は、臨床症状および上記の細菌検査のみで対応せざるをえないのが現状である。
【0008】
一般に、乾乳期における発症後の臨床症状は、泌乳期と比較して重篤な症状を示すものが多く、特に、乾乳導入後早期と分娩直後にはより重篤な乳房炎が多発することが知られている。また、乾乳期に乳房炎に罹患すると、乾乳経過が遅延する。これにより、母ウシ乳腺の発育が遅れ、その結果として、出産した母牛によって飼育された子牛にも、その発育不全や種々の細菌やウイルスによる感染性下痢症を誘起しやすくなる(日畜会報,71,J279−J285,2000.)。
【0009】
そのため、従来は、乾乳期にける有効な診断マーカーがなかったため、乾乳期の乳房炎の早期発見および防除を困難なものとし、乾乳期間中ならびに分娩前後での重篤な乳房炎の発症を招いていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ウシ乳房炎の診断するための診断方法を提供することを課題とする。より詳しくは、泌乳期、乾乳期および初乳分泌期等の泌乳ステージにかかわらず、乳房炎を診断する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、泌乳ステージにかかわらず、乳房炎発症後もしくは慢性化した後、ウシ乳汁中のLfは、従来報告されている分子種と比較して、分子量が小さく、コンカナバリンA(以下、ConAとする。)の親和性が弱く、糖含量が約倍量であって、等電点が酸性領域にあり、さらに、炎症誘起作用のあることを発見し、本発明を完成するに至った。そして、炎症時に出現するLf分子種を「炎症性Lf」、健康乳汁中に多く含まれ、ConAとの親和性の強く、過去の報告(ラクトフェリン、食品新素材有効利用技術シリーズNo.6、菓子総合技術センター)にある分子量や等電点を示すLfを「生理的Lf」と呼称することとした。
【0012】
すなわち、本発明は、ウシ乳房炎により出現するラクトフェリン(以下、Lfとする。)分子種を測定することによるウシの乳房炎診断方法を提供する。
【0013】
本発明は、ウシ乳房炎により出現するLf分子種を測定することによる乾乳期ならびに初乳分泌期のウシの乳房炎診断方法を提供する。
【0014】
上記のLf分子種の測定とは、Lfの分子量の測定、ConAの親和性の測定、糖含量の測定及び等電点の測定を包含する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、炎症性Lf分子種を測定することによりウシ乳房炎を診断する方法である。
【0016】
Lf分子種の測定とは、具体的には、乳房炎により出現するLf分子種の、分子量の測定;ConAとの親和性の測定;Lfの糖含量の測定;および等電点(pl)である。これらの測定のうち、1種の測定を行うことにより乳房炎を診断しても、2種以上行うことにより乳房炎を診断してもよい。2種以上の測定を行うことにより、乳房炎診断結果をより信頼性の高いものにすることができる。
【0017】
また、炎症性乳房炎を測定しモニターすることにより、乳房炎発症時の診断ばかりでなく、治療後の予後の経過観察や、乳房炎の慢性化の診断、更に、乾乳期間中の乳腺の健康状態を観察することへの応用が可能である。
【0018】
以下に測定例を示し説明するが、本発明は、これらの測定方法に限定されるものではない。
【0019】
Lfの分子量の測定は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(以下、SDS Page)を行った後、ウエスタンブロッティング法により行うことができる。
【0020】
ConAとの親和性の測定は、ConA二次元免疫泳動法により行うことができる。具体的には、ConA二次元免疫電気泳動法によるConA親和性の異なるLfのピーク高、もしくは、ピーク面積を算出し比較することで、乳汁中Lf中の炎症性Lfの含有率を測定できる。また、あらかじめ乳汁中の全Lf濃度を、一元放射免疫拡散(SRID)法や、酵素抗体法(EIA、ELISA)などの方法で測定しておくことで、算出された炎症性Lfの含有率から、炎症性Lfの含有濃度を知ることができる。炎症性Lfの特異抗体、もしくは、モノクローナル抗体を作成することで、SRID法、EIA法、ELISA法、免疫比濁法および免疫比朧法(ネフェロメトリー法)などの、抗原抗体反応を利用した各種測定法での応用が可能である。
【0021】
Lfの糖含量の測定については、市販の糖含量測定キットを用いて解析することができる。糖タンパクであるLfの糖鎖構造と密接な関係にある、シアル酸の含量は、1%Lf溶液を0.1Nの塩酸で処理した後、20%水酸化ナトリウムで中和し、SDS Pageにより測定してもよい。
【0022】
等電点の測定は、アクリルアミドを用いた平板等電点電気泳動法により測定することができる。
【0023】
(試験例1)
乾乳期における乳房炎発症後のウシ分房、5分房から得られた乳汁中のLfについて、分子量、ConA親和性、糖含量、シアル酸含量及び等電点を測定した。これと比較するために健康ウシ分房(5分房)内の乳汁中Lfについても同様の測定を行った。各測定方法については、以下の通りである。
【0024】
Lf分子量については、SDS Pageとウェスタン ブロッティング法により測定した。具体的には、ウシLf抗体を結合させたアフィニティーカラムを作成し、ウシ乳汁中Lfを分離した。次に、分離したLfが12.5%の濃度となるようにポリアクリルアミドゲルを作成し、定法に従い泳動した。その後、分離Lfを泳動したポリアクリルアミドゲルからPVDF(Polyvinilidenedifluoride)膜に、転写装置(バイオラッド社製、トランスブロッドSDシステム)によりブロッティングした。このPVDF膜に、ウシLfウサギアフィニティー抗体と反応させ、その後、ウサギIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ標識山羊抗体と反応させた。そして、適当な基質試薬と反応させ発色させた。
【0025】
ConA親和性は、ConA二次元免疫電気泳動法を用いて行った。具体的には、一次元目はConA(生化学工業社製)を0.5mg/ml加えた1.2%アガロースで、9V/cmにて1.5時間行った。その後、二次元目の泳動は、抗ウシLfウサギ血清と0.4%のα−Dメチルマンノシドを加えたアガロースで15時間行った。泳動の終了したアガロースは、乾燥した後、ブロムチモールブルーにより染色した。
【0026】
Lf中の糖含量は糖含量キット(Pierse社製、Glycoprotein Carbohydrate Estimation Kit)を用いて測定した。
【0027】
Lf中のシアル酸含量は、1%Lf溶液を0.1Nの塩酸で処理した後、20%水酸化ナトリウムで中和し、SDS Pageにより測定した。
【0028】
等電点は、アクリルアミドを用いた平板等電点電気泳動法により測定した。具体的には、市販の等電点電気泳動用アクリルアミドゲル(ファルマシア社製、Ampholine PAGplate)を用い、マルチパーパス電気泳動システム(ファルマシア社製)により行った。
【0029】
ConA二次元免疫電気泳動法による泳動像を図1に、それ以外については表1に示す。なお、図1の(A)は正常乳汁中Lf、(B)は慢性乳房炎乳汁中Lf、(C)は急性乳房炎乳汁中Lfに関する。
【0030】
【表1】
【0031】
これらの結果から、乳房炎発症後のウシ由来のLfは、健康ウシ由来のLfと比較して、分子量が低く、糖含量が高く、シアル酸含量が高く、等電点が低く、ConA親和性が低い、炎症性Lf分子種が増加していることが理解される。
【0032】
(試験例2)
炎症時に出現する炎症性Lfを、ウシLfアフィニティー抗体を結合させたアフィニティーカラムで、炎症性乳汁中からLfを分離し、さらにConA Sepharose(ファルマシア社製)により、ConA親和性の低い、炎症性Lfを分離した。そして、この炎症性Lfを、乾乳期の健康なウシ乳房内に100mg投与した。
【0033】
これと比較するために、今度は、ウシ健康時に存在するConA親和性の強いLfを分離し、これをウシ乳房内に同量投与した。また、対照として、生理食塩水をウシ乳房内に同量投与した。
【0034】
各乳房内の乳汁について、白血球を中心とした体細胞数、炎症性サイトカインのTNFα及び急性相反応蛋白のα1酸性糖蛋白(α1AG)を以下の方法で測定した。
【0035】
体細胞(SCC)数は、乳汁を20mMエチレンビス4酢酸ナトリウム加リン酸生理緩衝液(EDTA−PBS)で洗浄後、ヨウ化プロピディウムを用い染色した後、フローサイトメーター(ファックスキャリバー、日本ベクトンディッキンソン社製、東京)により測定した。
【0036】
特に、SCC中の白血球数は、乳汁をリン酸生理食塩水(PBS)で洗浄後、細胞をCytospin(Shandon Scientific Ltd., England)を用いて、スライドグラス上に付着させた後,ギムザ染色を行い顕微鏡下で細胞数を計測した。
【0037】
TNFα濃度は市販のヒト用ELISAキット(Genzyme TECHNE社製、USA)にて測定した。
【0038】
α1AG濃度は一元放射免疫拡散法(SRID)法(メタボリックエコバイオシステム研究所、ウシα1AGプレート)を用いた。
【0039】
SCC数については図2に、白血球数については図3に、TNFα濃度については図4に、α1AG濃度については図5に示す。
【0040】
これらの結果によると、炎症時に出現するLfを投与された分房は、投与後日数0.5日にSCC数及び白血球数が急激に増加し、投与後日数2日までTNFα濃度及びα1AG濃度が増加した。これにより、炎症性Lfが確認された。
【0041】
(試験例3)
ウシ胎児血清を10%加えたRPMI1640培地に、5μg/mlとなるよう炎症性Lfを添加し、この培地で、健康なウシの脾臓から分離した白血球を3日間培養した。そして、その培養上清中に産生されたLfについてConAニ次元免疫電気泳動より解析した。この結果を図6に示す。なお、図6において、(A)は生理的刺激、(B)は炎症性Lf刺激、(C)はSEC刺激によるウシ脾臓白血球の産生するLfのConA二次元免疫泳動像である。
【0042】
この結果から、白血球自身が、乳房炎の起因菌であるブドウ球菌性エンテロトキシン−C(SEC)および炎症性Lfそのものの刺激により、炎症性Lfを産生することが理解される。
【0043】
(測定例1)
初乳分泌期、乾乳直前期、乾乳前期、乾乳中期および乾乳後期において、臨床型乳房炎を発症した分房の乳汁中Lf濃度を、SRID法によって測定した。その結果を表2に示す。
【0044】
これらの結果によると、乳汁中のLf濃度は、健康牛乳汁に比べて低値を示すケースが認められ、従来法である泌乳期の乳房炎診断項目である乳汁中Lf濃度の測定では、乾乳期乳房炎の診断が困難であることが明らかとなった。
【0045】
【表2】
【0046】
なお、表2中のnは、サンプル数を示す。
【0047】
さらに、これら乳汁について、ConAを含むアガロースで一次元目の泳動を行い、二次元目の泳動に牛Lf抗体を含ませたアガロースで泳動するConA二次元免疫電気泳動を行った。そして、ConA親和性の異なるLfのピークの高さから、生理的Lfと炎症性Lfの含有比率を算出したところ。泌乳ステージにかかわらず、乳房炎乳汁中に高率に炎症性Lfが含有されることが明らかとなった。この結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
これらの結果によると、初乳分泌期に於いては50%、乾乳期於いては約60%の炎症性Lf含有率で臨床型乳房炎と診断されることが判明した。
【0050】
ここで、炎症性Lf含有率(%)=炎症性Lfピーク高÷(生理的Lfピーク高+炎症性Lfピーク高)×100とする。
【0051】
従来から用いられているCMTおよびCMT変法以外の検査方法である乳汁中Lf濃度の測定による方法でも、乾乳期ならびに初乳分泌期の乳房炎診断が困難である。これに対し、上記の乳汁中Lfの炎症性Lf含有率による診断は、乾乳期の乳房炎を診断することが可能であることを示す。
【0052】
(測定例2)
乾乳期に乳房炎を発症し、抗生物質(商品名:セファゾリンDC「ミタカ」、三鷹製薬(株)社製)により治療後に乳房炎が改善した5症例と、改善しなかった3症例について、SRID法による乳汁中Lfの濃度の測定と、ConA二次元免疫電気泳動による乳汁中の炎症性Lf含有率の算出を行った。
【0053】
なお、乳房炎治癒の診断は、乳房の臨床症状(腫脹、硬結、発熱など)の解消と、起因菌の消失により判定した。起因菌の消失の検査は、ブドウ球菌寒天培地、5%に綿羊血液を加えたトリプトソーヤ寒天培地、そしてDHL寒天培地に乳汁を塗抹し、37℃で所定の時間培養し、菌の集落の有無により判定した。その結果を表4及び5に示す。
【0054】
表中の「乳房臨床症状」について、乳房の腫脹、硬結、発熱が解消していれば(−)、解消していなければ(+)と評価し、「起因菌保有」については起因菌の集落が見られれば(+)、見られなければ(−)と評価した。
【0055】
これらの結果によると、乳房炎の改善した症例では、乳房炎症状と起因菌数の低減と共に、乳汁中の炎症性Lf含有率が優位に低下した。また、全例で乾乳期の乳房炎診断値であった炎症性Lf含有率60%未満の値を示した。特に、症例3では1.92%の極低値まで低下した。しかしながら、症例5では、57.8%までの低下に留まっていた。
【0056】
一方、乳房炎症状の改善や起因菌数が低下しなかった症例では、炎症性Lf含有率も全例で70%以上の高値で推移し、特に、症例3では治療後3日目の値(68.9%)より高く、71.5%まで増加していた。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
この結果から、乾乳期の乳房炎において、その治療の予後観察に有効なマーカーであることが示された。
【0060】
(測定例3)
乾乳導入時に、測定例2と同様の方法により、泌乳牛の乳汁中のLf濃度と炎症性Lf含有率を測定した。また、同泌乳牛の分娩後の初乳中IgG1濃度を測定した。その結果を表6及び7に示す。
【0061】
これらの結果によると、臨床上健康で、乾乳導入時の炎症性Lf含有率が50%未満(平均41.8%)の分房11例では(表6)、乾乳期間中の乳房炎発症は確認されなかった。また、分娩後の初乳中の炎症性Lf含有率も乾乳導入時と殆ど変わらず、平均で41.3%の含有率であった。しかしながら、分娩後1例で乳房炎の発生が確認され(症例3)、この分房の分泌した初乳では炎症性Lf含有率は48.8%と、若干高い値であった。更に、初乳中の免疫グロブリンの主成分であるIgG1濃度は、平均で9.62mg/mlを示し、乳房炎発症分房の初乳では6.22mg/mlと若干低値であったが、多くの分房では10mg/ml前後のIgG1濃度が確認された。
【0062】
一方、乾乳導入時に炎症性Lf含有率が50%を越えていた分房(10例、表7)では、その多くが、初乳中でも50%を超える含有率を示し、50%未満の値を示した分房は1例のみであった。また、乾乳期間中の乳房炎発症が4例認められ、更に、分娩後にも3例発症していた。更に、初乳中のIgG1濃度も多くの検体で低値であった(平均4.42mg/ml)が、炎症性Lf濃度が50%未満の値を示した症例3で、6.12mg/mlと、この群では最も高い値を示した。
【0063】
これらの結果によると、乾乳導入早期から乳腺が炎症を起こしているものでは、次回分娩時の乳腺の再生・分化、初乳中のグロブリンの合成にまで影響があることが理解される。また、この結果から、本発明による乾乳期間中のモニタリングは、この様に炎症を起こしている乳腺の早期発見と早期治療に有効な診断法であることが理解される。
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
【発明の効果】
本発明によると、泌乳牛の泌乳期は勿論のこと、乾乳期ならびに初乳分泌期での乳房炎の早期診断が可能となる。
【0067】
また、抗生物質などの薬剤による治療の予後経過の診断と、乳房炎の再発を早期に診断できる。
【0068】
さらに、本発明により、乾乳期での乳腺の状態をモニターすることで、早期に治療対策を立てることができ、分娩後の初乳分泌を円滑に行うことができる。
【0069】
本発明による乳汁中の炎症性Lfの測定は、牛以外の動物においても応用が可能である。
【0070】
また、乳汁以外にもLfが炎症性疾患で体液中に増加することが知られていることから、その様な疾患でも本発明は応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ConA二次元免疫電気泳動法によるウシ乳汁中Lfの泳動像である。
【図2】乾乳期牛乳房内への炎症性Lf投与後の乳汁中体細胞数の経時変化を示す図である。
【図3】乾乳期牛乳房内への炎症性Lf投与後の乳汁中体多形核白血球数の経時変化を示す図である。
【図4】乾乳期牛乳房内への炎症性Lf投与後の乳汁中TNFα濃度の経時変化を示す図である。
【図5】乾乳期牛乳房内への炎症性Lf投与後の乳汁中α1AG濃度の経時変化を示す図である。
【図6】生理的Lf、炎症性LfならびにSEC刺激によるウシ脾臓白血球の産生するLfのConA二次元免疫泳動像である。
Claims (5)
- ウシ乳汁における全ラクトフェリン中の炎症性ラクトフェリンの含有率を求め、前記含有率が初乳分泌期においては50%以上であることにより乳房炎であることを診断する、ウシ乳房炎の診断方法。
- 乾乳期導入時のウシにおいて、ウシ乳汁中の、全ラクトフェリン中の炎症性ラクトフェリンの含有率を求め、
前記含有率が60%以上であることにより乳房炎の早期治療を要することを診断する、乳房炎の診断方法。 - 前記含有率を、生理的ラクトフェリンと炎症性ラクトフェリンの、ConA親和性の違いにより求める請求項1又は2に記載のウシ乳房炎の診断方法。
- ウシ乳汁における全ラクトフェリン中の炎症性ラクトフェリンの含有率を求め、前記含有率の推移により、乾乳期における乳房炎治療の予後の診断をすることを特徴とするウシ乳房炎の診断方法。
- 乾乳期導入時のウシ乳汁においてウシ乳汁中の全ラクトフェリン中の炎症性ラクトフェリンの含有率を求め、前記含有率が50%以上であることにより、分娩後に分泌される初乳中のIgG1濃度が低値となることを予測する方法。
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