JP3627727B2 - 砲弾破砕装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、過去の大戦で残され、長年外地に放置されてきた数知れない砲弾を、高効率、安全、安価に、且つ細片破砕可能に処理できる砲弾破砕装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、遺棄砲弾を処理するには、鉄製砲弾の場合、単発(1個)の冷凍(脆性破壊)した砲弾を、プレス機で破砕したり、ウォータージェットで切断したりしていた。しかし、この単発方式では、数知れない砲弾処理に多数の高価で大容量のプレス機と多数の時間を要するため、非効率であり、現状の対応には不向きである。
【0003】
また、プレス機のパンチとダイスの形状は、一般的な「平坦」、「V溝」、「丸溝」などで、これによるせん断または圧縮荷重では粉砕が不十分で、荷重数百〜千トン級の比較的大容量のプレス機を必要としていた。
【0004】
さらに、プレス機を囲んでいる耐圧容器では、特に耐熱・耐圧防護対策は採られておらず、単に鋼板肉厚を増加させることに終始していた。従って、特に耐熱の観点からは、容器の損傷は計り知れず、強度的に安全性を懸念された。しかも爆発時には、プレス機も同時に破損する危険性があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、複数の砲弾を同時に破砕できて高効率に処理でき、また、急激な圧力上昇と熱負荷に耐えることができ且つ有毒ガスが発生しても安全に処理でき、さらに、圧縮、せん断により細片破砕できるようにした砲弾破砕装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の砲弾破砕装置は、底板にスライド孔を複数備えた耐圧容器と、該耐圧容器内の下部で前記スライド孔に上下動可能に挿通したガイド隔壁を有する押圧プレートとにより複数の砲弾破砕室を形成し、この複数の砲弾破砕室の内壁に防護膜を設けると共に、一端面に爆風抜き配管を設けて逃がしタンクに接続し、他端面に砲弾搬入及び破砕片回収のための扉を開閉可能に取り付け、前記耐圧容器内で押圧プレートの上方には押圧プレートを押圧する駆動手段と仕切り板とを交互に上下動可能に配設し、最上段の駆動手段の上側に封塞天板を配して耐圧容器に固定して成るものである。
【0007】
上記の砲弾破砕装置において、押圧プレートを押圧する複数の駆動手段は、一斉に加圧することにより膨張する金属風船であることが好ましい。
【0008】
また、上記の砲弾破砕装置において、押圧プレートを押圧する複数の駆動手段は、一斉に通電することにより変位し高さが高くなる形状記憶合金の曲面板、曲げロッド、縦ばねのいずれかであることも好ましい。
【0009】
上記の砲弾破砕装置において、各砲弾破砕室の上下面には、夫々大小の突起が設けられていることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の砲弾破砕装置の一実施形態を図によって説明する。図1において、1は底板2にスライド孔3を複数等間隔に平行に設けた平面矩形の耐圧容器で、この耐圧容器1内の下部で前記スライド孔3に上下動可能に挿通した複数のガイド隔壁4を有する押圧プレート5が上下動可能に配されて、複数の砲弾破砕室6が形成され、この各砲弾破砕室6における押圧プレート5の下面と耐圧容器1の底板2上には大小の突起7、8が設けらている。前記の複数のガイド隔壁4の下端には耐圧容器1の下方で押圧プレート5を押し上げる戻しばね9が接続されている。前記押圧プレート5の周面にはシール材10が装備され、また前記各スライド孔3の内面にもシール材10が装備されて、各砲弾破砕室6が気密になされている。この各砲弾破砕室6の内壁には前記押圧プレート5の加圧下降に支障の無いように防護膜11が設けられている。この防護膜11は、亜鉛、鉛、黄銅などの低融点金属細粒又はこれに砂や断熱材を混合した材料を薄いライナーで内包したものである。各砲弾破砕室6の長手方向の一端面上部には爆風抜き配管12が設けられて図2に示すように外部の逃がしリンク13に接続され、長手方向の他端面に砲弾搬入及び破砕片回収のための扉14が上下方向に開閉可能に取り付けられている。前記耐爆容器1内で押圧プレート5の上方には、押圧プレート5を押圧する駆動手段15と仕切板16とを交互に複数上下動可能に配設され、最上段の駆動手段15の上側に封塞天板17が配されて防圧容器1内の上端部に固定されている。前記仕切板16の周面には上下方向にスライド可能なシール材10が装備されている。前記複数の駆動手段15は、本例の場合、外部より開閉弁18付き配管19を通して加圧気体を供給することにより膨張する金属風船20より成る。図1の金属風船20は、扁平形状のものを1袋づつ仕切板16の上下に横寝かせに配置しているが、円筒形状のものを複数袋づつ仕切板16の上下に横寝かせに配置してもよい。また、当該金属風船は、単層、多層肉厚のいずれも適用可能である。
【0011】
上記のように構成された実施形態の砲弾破砕装置により遺棄砲弾を破砕する方法について説明する。遺棄砲弾は、予め冷凍して保存しておいた砲弾で、この砲弾を脆性破壊で破砕するには、先ず、砲弾破砕装置の図2に示される各砲弾破砕室6の他端面の扉14を上方に回動して開き、砲弾Gを横向きに搬入して設置し、扉14を下方に回動して閉じる。次に各金属風船20に連なる各配管19の開閉弁18を開き、各配管19を通して加圧気体を各金属風船20内に供給して膨張させ、その各金属風船20の下方への膨張変位の加算の結果、増幅された負荷圧力により押圧プレート5が押圧され、各砲弾破砕室6内の砲弾Gが一斉に破砕される。この砲弾Gの破砕において、砲弾Gは押圧プレート5の下面の大小の突起7、8と耐圧容器1の底板3上の大小の突起7、8とにより、最初に小さな荷重で大きな突起7、7同士により大きい破片に破砕され、続いて小さな突起8、8同士により大きな突起7、7間に入った大きい破片が圧縮されて細片に粉砕される。このように初期の脆性破壊とそれ以降の圧縮、粉砕の2段階で効率的な砲弾の細片破砕が遂行されるので、従来のように当初から大荷重により瞬時の圧縮荷重やせん断荷重負荷によって砲弾を破砕する方式に比べて爆発の可能性が低減される。また、上記の砲弾Gの破砕において、例え爆発が生じても爆風は爆風抜き配管12を通して逃がしタンク13に逃げるので、各砲弾破砕室6の内部に過大な圧力や熱がかからず、しかも各砲弾破砕室6の内壁に、低融点金属細粒又はこれに砂や断熱材を混合した材料を薄いライナーにて内包して成る防護膜11が設けられているので、爆発時の圧力衝撃と熱衝撃を防護できる。さらに、砲弾Gの破砕処理により有毒ガスが発生することがあっても爆風抜き配管12を通して逃がしタンク13に貯め、砲弾破砕室6から漏洩することがないので、安全である。砲弾Gの破砕後、押圧プレート5は、金属風船20からの加圧気体の排出と共に戻しばね9により元の位置に復帰せしめられる。
【0012】
砲弾Gの破砕によって各砲弾破砕室6の底に集積した破砕片Bは、図2に示される各砲弾破砕室6の他端面の扉14を上方に回動して開いて取り出す。破砕片Bを取り出した後は、夫々砲弾Gを横向きに搬入して設置し、扉14を下方に回動して閉じる。このあと、前記と同様に砲弾Gの破砕を行う。
【0013】
尚、各砲弾破砕室6内の防護膜11は、取り外すことができるので、砲弾Gの破砕において、内部の低融点金属細粒が融着して、クッション材としての機能が低下した場合は、防護膜11を交換するか、又は内部の低融点金属細粒を交換するとよい。
【0014】
次に本発明の砲弾破砕装置の他の実施形態を図3によって説明する。この実施形態は、各仕切板16の上下に配された各駆動手段15を、一斉にヒータ21に通電することにより、加熱して変位し、高さが高くなる形状記憶合金の曲面板22となしたものである。その他の構成は、前記実施形態と同一である。この形状記憶合金の曲面板22は、図4に示すようにバナナ形状の形状記憶合金の曲げロッド23を複数本となしたものに代えても良い。
【0015】
上記図3に示す砲弾破砕装置により遺棄砲弾を破砕するには、先ず、前記実施形態と同様の手順にて各砲弾破砕室6内に砲弾Gを設置する。次に各形状記憶合金製の曲面板22のヒータ21に通電することにより、各曲面板22は加熱されて変位し、その変位の加算により増幅された負荷圧力により押圧プレート5が押圧されて、前記実施形態と同様に各砲弾破砕室6内の砲弾Gが一斉に破砕される。
【0016】
本発明の砲弾破砕装置のさらに他の実施形態を図5によって説明する。この実施形態は各仕切板16の上下に配された各駆動手段15を、一斉にヒータ21に通電することにより加熱して変位し、高さが高くなる形状記憶合金の縦ばね24を複数本としたものである。その他の構成は、図3に示す前記実施形態と同一であるので、図示説明を省略する。
【0017】
かかる実施形態の砲弾破砕装置では、一斉に各ヒータ21に通電することにより、各仕切板16の上下に配された各形状記憶合金の縦ばね24が加熱されて高さが高くなり、その変位の加算により増幅された負荷圧力により押圧プレート5が押圧されて、図3の実施形態と同様に各砲弾破砕室内の砲弾が一斉に破砕される。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明で判るように本発明の砲弾破砕装置は、複数層に配した金属風船や形状記憶合金の曲面板などの変位の加算により増幅された負荷圧力により押圧プレートを押圧し、各砲弾破砕室に設置された砲弾を一斉に破砕できるので、高効率に砲弾を破砕できる。また、各砲弾破砕室内には、低融点金属粒又は砂や断熱材料を混合した材料を薄いライナーに内包した防護壁を有し、且つ各砲弾破砕室は逃がし配管を介して逃がしタンクに接続されているので、砲弾破砕時の急激な圧力上昇と熱負荷に耐えることができ、且つ有毒ガスの発生があっても、安全に砲弾を破砕できる。さらに、砲弾破砕室における押圧プレートの下面及び耐圧容器の底板上に、夫々大小の突起が設けられているので、小さな荷重で初期の脆性破壊と、それ以降の圧縮、粉砕の2段階で効率的な砲弾の細片破砕が遂行されるので、従来のように大荷重により瞬時の圧縮荷重やせん断荷重負荷によって破砕する方式に比し爆発の可能性が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の砲弾破砕装置の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A線断面矢視図である。
【図3】本発明の砲弾破砕装置の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図4】図3の砲弾破砕装置における駆動手段である形状記憶合金の他の例の配置を示す斜視図である。
【図5】図3の砲弾破砕装置における駆動手段の他の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 耐圧容器
2 底板
3 スライド孔
4 ガイド隔壁
5 押圧プレート
6 砲弾破砕室
7 大きな突起
8 小さな突起
9 戻しばね
10 シール材
11 防護膜
12 爆風抜き管
13 逃がしタンク
14 扉
15 駆動手段
16 仕切板
17 封塞天板
18 開閉弁
19 配管
20 金属風船
21 ヒータ
22 形状記憶合金の曲面板
23 形状記憶合金の曲げロッド
24 形状記憶合金の縦ばね
Claims (4)
- 底板にスライド孔を複数備えた耐圧容器と、該耐圧容器内の下部で前記スライド孔に上下動可能に挿通したガイド隔壁を有する押圧プレートとにより複数の砲弾破砕室を形成し、この複数の砲弾破砕室の内壁に防護膜を設けると共に、一端面に爆風抜き配管を設けて逃がしタンクに接続し、他端面に砲弾搬入及び破砕片回収のための扉を開閉可能に取り付け、前記耐圧容器内で押圧プレートの上方には押圧プレートを押圧する駆動手段と仕切り板とを交互に上下動可能に配設し、最上段の駆動手段の上側に封塞天板を配して耐圧容器に固定して成る砲弾破砕装置。
- 請求項1記載の砲弾破砕装置において、押圧プレートを押圧する複数の駆動手段が、一斉に加圧することにより膨張する金属風船であることを特徴とする砲弾破砕装置。
- 請求項1記載の砲弾破砕装置において、押圧プレートを押圧する複数の駆動手段が、一斉に通電することにより変位し高さが高くなる形状記憶合金の曲面板、曲げロッド、縦ばねのいずれかであることを特徴とする砲弾破砕装置。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の砲弾破砕装置において、各砲弾破砕室の上下面に、夫々大小の突起が設けられていることを特徴とする砲弾破砕装置。
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