JP3624194B2 - 既設管渠の補強後耐荷力の照査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設管渠の補強後耐荷力の照査方法に関し、特に、既設管渠と内張補強層との境界の挙動に着目することにより、地盤力等により既設管渠と内張補強層との一体化が部分的に損なわれた場合にも常に適正な既設管渠の補強を行うすることができる安全性の高い既設管渠の補強後耐荷力の照査方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
表面部材を貼設したりモルタルを充填したりする既設管渠の補強方法(製管工法)は、管渠内の鉄筋が連続して欠落していない場合に適用され、この場合、既設管渠と新設の補強部材とが一体化していることを前提として、内張補強層の補強設計が行われている。
一方、鉄筋が連続して欠落しているような劣化や損傷が著しい場合にも、補強用の鋼材を配置した後、連続して欠落していない場合と同様に、既設管渠との一体化を前提として内張補強層の補強設計が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような内張補強層による管渠の補強設計においては、地盤による圧縮等により内張補強層側が引張力を受けるような場合は、既設管渠と内張補強層との境界において滑りや剥離が生じることがあり、上記従来の管渠と内張補強層の一体化を前提とした補強後耐荷力の照査方法では、設計耐荷力に比べて実際の耐荷力が小さくなり、十分な管渠の補強効果が得られない場合があるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法が有する問題点に鑑み、既設管渠と内張補強層との境界の挙動に着目し、滑動及び剥離を考慮に入れた2次元解析を設計に適用するか、あるいは、簡易的に重ね梁と合成梁とを組み合わせた断面照査を設計に適用することにより、地盤力等により既設管渠と内張補強層との一体化が部分的に損なわれた場合にも常に適正な既設管渠の補強を行うすることができる安全性の高い既設管渠の補強後耐荷力の照査方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本第1発明の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法は、既設管渠の内側に内張補強層を形成する既設管渠の補強設計における補強後耐荷力の照査方法において、内張補強層を形成した管渠に発生する断面力の算定を行うとともに、前記内張補強層側が引張力を受ける部位での内張補強層を形成した管渠の断面耐力を、既設管渠と内張補強層とが分離しているものと仮定して、個別に独立して求めた既設管渠の断面耐力と内張補強層の断面耐力の和に基づいて、前記既設管渠側が引張力を受ける部位での内張補強層を形成した管渠の断面耐力を、既設管渠と内張補強層とが合成されているものと仮定して、一体として求めた既設管渠と内張補強層の合成断面耐力に基づいて、それぞれ算定し、これらの断面耐力が前記内張補強層を形成した管渠に発生する最大断面力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定することを特徴とする。
【0006】
この既設管渠の補強後耐荷力の照査方法は、内張補強層を形成した管渠に発生する断面力の算定を行うとともに、前記内張補強層側が引張力を受ける部位での内張補強層を形成した管渠の断面耐力を、既設管渠と内張補強層とが分離しているものと仮定して、個別に独立して求めた既設管渠の断面耐力と内張補強層の断面耐力の和に基づいて、前記既設管渠側が引張力を受ける部位での内張補強層を形成した管渠の断面耐力を、既設管渠と内張補強層とが合成されているものと仮定して、一体として求めた既設管渠と内張補強層の合成断面耐力に基づいて、それぞれ算定し、これらの断面耐力が前記内張補強層を形成した管渠に発生する最大断面力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定することから、地盤力等により既設管渠と内張補強層との一体化が部分的に損なわれた場合にも常に適正な既設管渠の補強を行うすることができる。
【0007】
また、本第2発明の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法は、既設管渠の内側に内張補強層を形成する既設管渠の補強設計における補強後耐荷力の照査方法において、内張補強層を形成した管渠に発生する応力の算定をFEM解析を用いて行うに際し、該FEM解析において、既設管渠と前記内張補強層の境界面が引張力を受ける部位では既設管渠と内張補強層の境界面に剪断応力を伝達しないジョイント要素の存在を仮定して、内張補強層と既設管渠との境界面が圧縮力を受ける部位では前記ジョイント要素の存在を仮定せずに、それぞれ解析を行うとともに、内張補強層を形成した管渠の許容発生応力を既設管渠と内張補強層とでそれぞれ個別に独立して算定し、これらの許容発生応力のそれぞれが、前記内張補強層を形成した管渠の既設管渠と内張補強層とにそれぞれ発生する最大応力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定することを特徴とする。
【0008】
この既設管渠の補強後耐荷力の照査方法は、内張補強層を形成した管渠に発生する応力の算定をFEM解析を用いて行うに際し、該FEM解析において、既設管渠と前記内張補強層の境界面が引張力を受ける部位では既設管渠と内張補強層の境界面に剪断応力を伝達しないジョイント要素の存在を仮定して、内張補強層と既設管渠との境界面が圧縮力を受ける部位では前記ジョイント要素の存在を仮定せずに、それぞれ解析を行うとともに、内張補強層を形成した管渠の許容発生応力を既設管渠と内張補強層とでそれぞれ個別に独立して算定し、これらの許容発生応力のそれぞれが、前記内張補強層を形成した管渠の既設管渠と内張補強層とにそれぞれ発生する最大応力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定することから、地盤力等により既設管渠と内張補強層との一体化が部分的に損なわれた場合にも常に適正な既設管渠の補強を行うことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図4に、本発明の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法の第1実施例を示す。
この既設管渠の補強後耐荷力の照査方法は、図3〜図4に示すように、既設管渠1の内側に内張補強層2を形成する際に使用される。
すなわち、この既設管渠の補強後耐荷力の照査方法は、図1左半に示すように、既設管渠1の内側に内張補強層2を形成した管渠に発生する断面力の算定を通常通り行う。
そして、その一方で、内張補強層2側が引張力を受けると想定される部位での内張補強層2を形成した管渠の断面耐力を、図1右半に示すように、既設管渠1と内張補強層2とが分離しているものと仮定して、個別に独立して求めた既設管渠1の断面耐力と内張補強層2の断面耐力の和に基づいて算定するとともに、既設管渠1側が引張力を受ける部位での内張補強層2を形成した管渠の断面耐力を、一体として求めた既設管渠1と内張補強層2の合成断面耐力に基づいて、それぞれ算定し、これらの断面耐力が前記既設管渠1の内側に内張補強層2を形成した管渠に発生する最大断面力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定する。
【0011】
一般に、地盤から円形の管渠に土圧がかかる場合、図3〜図4に示すように、その変形により管頂及び管底部付近は内側が引張状態に、側部付近は外側が引張状態になる。
外側引張の場合は、例えば、
・既設及び新設材料からなる合成断面とする。
・維ひずみは合成断面の中立軸からの距離に比例する。
・コンクリート及びモルタルの引張応力は無視する。
これに対し、内側引張の場合は、例えば、
・既設管渠1と内張補強層2とを分離して計算し、それぞれの断面耐力の和とする。
・維ひずみはそれぞれの断面の中立軸からの距離に比例する。
・コンクリート及びモルタルの引張応力は無視する。
【0012】
そして、本実施例の照査方法のように管渠に発生する応力の算定に骨組み解析を用いる場合は、図1〜図2に示すように、
(1)常時又は地震時における発生断面力を算定する。
管渠を骨組みにモデル化する。
荷重を骨組みモデルに直接あるいは地盤バネを介して作用させる。
各要素の発生断面力を求める。
(2)各要素の断面耐力を求める。
外側引張の場合は合成断面として計算し、内側引張の場合は重ね梁として計算するものとする。そして、外側引張と内側引張(図1参照)のそれぞれの場合について計算を行うものとする。
(3)照査
安全性の照査は、常時又はL1レベルの地震時に対しては使用限界状態に対する検討によりするものとし、L2レベルの地震時には終局限界状態に対する検討によるものとする。
曲げに関する照査では、具体的には以下の照査を行う。
常時:発生曲げモーメントとひび割れモーメントを比較する。
L1レベルの地震時:発生曲げモーメントとひび割れモーメントを比較する。
L2レベルの地震時:発生曲げモーメントと終局モーメントを比較する。
【0013】
(実施例1)
ここでは、円形更生管の横断面方向を対象に、レベル2地震時について照査を行う。
なお、地震時外力の設定は、「下水道施設の耐震対策指針と解説」((社)日本下水道協会、平成9年8月)(以下、本明細書において、「指針」という。)」に準拠する。
1.設定条件
設定条件を図2(a)と下記の表1及び表2に示す。
(1)地盤条件
表層地盤を厚さH=18mの単一地盤と仮定し、標準貫入試験による表層地盤の平均N値が5であると設定すると、固有周期Tsが0.66秒(III種地盤)、設計応答速度Svが75kine(指針p.41の図2−11)と算定される。
(2)管渠の条件
既設管渠は内径1500mmの円形外圧管とする。土被りは3.0mであり、設計支持角120°の範囲で自由支承により支持されているものとする。
管渠の劣化状態として、管厚の半分まで劣化が進行し、減肉している状態を想定する(外側のスパイラル筋を含む部材断面の半分を有効断面とする。)。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
2.発生断面力の算定
(1)常時の断面力
常時の荷重によって生じる横断面内の断面力を算定する。荷重としては、鉛直土圧及び水平土圧について考慮し、内水圧及び自重は考慮しないものとする。
・鉛直土圧:Pv=γH=20.6kN/m3×3.0m=61.7kN/m2
・水平土圧:Ph=Kγh=(1−sinφ)/(1+sinφ)・γ・h=0.277×20.6kN/m3×h
(管頂部)Ph=0.277×20.6kN/m3×3.04m=17.3kN/m
(管底部)Ph=0.277×20.6kN/m3×4.82m=27.4kN/m
以上の荷重条件を36分割の円形骨組みモデルを用いて各要素の発生断面力を求める。
図2(b)(c)に荷重分布と解析モデルの概略を示す。
【0017】
(2)地震時増分断面力
地震時増分断面力は、地震時の管渠の頂部と支承部との相対変位量を外力に換算し、地盤バネ条件を与えて断面力を算定する。
(2−1)地震時の相対変位量
指針p.49式(2.2)より、下記式が使用される。
【0018】
【数1】
【0019】
(2−2)地盤バネ定数
「道路橋示方書・同解説 IV下部構造編」p.256式の(解9.5.4)より、地盤反力係数は、
kH=(1/0.3)αE0×(BH/0.3)−3/4=(1/0.3)×2×2800×5×(1.78/0.3)−3/4=30477kN/m3
よって、地盤バネ定数は、
K=kH・Aelm
Aelm:バネの分担幅の投影面積
(2−3)地震時水平力
各節点の相対変位量に相当する水平力は地盤反力係数と相対変位量により
Fi=kH・δi
δi:各深さにおける相対変位量
管頂部における水平力は、
F0=30477kN/m3×0.005559m=169.4kN/m/m
以上の荷重条件を36分割の円形骨組みモデルを用いて各要素の発生断面力を求める。
図2(b)(c)に荷重分布と解析モデルの概略を示す。
【0020】
(3)計算結果
骨組み解析の結果を図6(a)(b)に示す。また、それらのうち、最大断面力を下記の表3に整理する。
【0021】
【表3】
【0022】
3.断面耐力の算定
ここでは、劣化した既設管渠及び更生管の部材断面耐力をRC断面計算により算出する。
(1)算出条件
算出する、更生管断面の条件を図7に示す。
【0023】
(2)計算結果
RC断面計算結果を下記の表4に示す。
【0024】
【表4】
【0025】
4.照査
(1)既設管渠
(内引張)曲げ耐力Mu:3.6kN・m/m<発生曲げモーメント8.2kN・m/m ・・・不適合
(外引張)曲げ耐力Mu:6.8kN・m/m<発生曲げモーメント9.9kN・m/m ・・・不適合
(2)更生管
(内引張)曲げ耐力Mu:12.7kN・m/m>発生曲げモーメント8.2kN・m/m・・・適合
(外引張)曲げ耐力Mu:22.1kN・m/m>発生曲げモーメント9.9kN・m/m・・・適合
以上により、レベル2地震時に管に作用する最大曲げモーメントと曲げ耐力とを比較すると、劣化した既設管渠では曲げ耐力が発生断面力を下回るものの、更生後は耐力が発生断面力以上に向上し、想定の条件においては安全率2.0以上になることが確認された。
【0026】
かくして、本第1実施例の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法は、内張補強層2を形成した管渠に発生する断面力の算定を行うとともに、前記内張補強層2側が引張力を受ける部位での内張補強層2を形成した管渠の断面耐力を、既設管渠1と内張補強層2とが分離しているものと仮定して、個別に独立して求めた既設管渠1の断面耐力と内張補強層2の断面耐力の和に基づいて、前記既設管渠1側が引張力を受ける部位での内張補強層2を形成した管渠の断面耐力を、既設管渠1と内張補強層2とが合成されているものと仮定して、一体として求めた既設管渠1と内張補強層2の合成断面耐力に基づいて、それぞれ算定し、これらの断面耐力が前記内張補強層2を形成した管渠に発生する最大断面力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定することから、地盤力等により既設管渠1と内張補強層2との一体化が部分的に損なわれた場合にも常に適正な既設管渠1の補強を行うことができる。
【0027】
次に、図8〜図9を参照して、本発明の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法の第2実施例を説明する。
この既設管渠の補強後耐荷力の照査方法は、やはり第1実施例の照査方法と同じように既設管渠1の内側に内張補強層2を形成する際に使用される。
すなわち、この既設管渠1の補強後耐荷力の照査方法は、既設管渠1の内側に内張補強層2を形成した管渠に発生する応力の算定をFEM解析を用いて行うに際し、該FEM解析において、既設管渠1と前記内張補強層2の境界面が引張力を受ける部位では既設管渠1と内張補強層2の境界面に剪断応力を伝達しないジョイント要素の存在を仮定して、内張補強層2と既設管渠1との境界面が圧縮力を受ける部位では前記ジョイント要素の存在を仮定せずに、それぞれ解析を行うとともに、内張補強層2を形成した管渠の許容発生応力を既設管渠1と内張補強層2とでそれぞれ個別に独立して算定し、これらの許容発生応力のそれぞれが、前記内張補強層2を形成した管渠の既設管渠1と内張補強層2とにそれ ぞれ発生する最大応力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定する。
【0028】
具体的には、図8に示すように、下記の作業を行う。
(1)常時又は地震時における発生応力の算定をする。
既設管渠1の内側に内張補強層2を形成した管渠のFEMモデル化にあたっては、既設管渠1の部分と内張補強層2の部分を別々の平面FEM要素に分ける。さらに、その境界面に引張応力が作用した場合にのみ、応力を伝えないジョイント要素を設置する。
荷重をFEMモデルに直接あるいは地盤用FEM要素を介して作用させ、各要素の発生応力を求める。
(2)各部材に発生する応力に換算する。
要素の発生応力より、鋼材、コンクリート及びモルタルに発生する応力を求める。
(3)照査
発生応力と、鋼材、コンクリート及びモルタルの強度とを比較する。
【0029】
(実施例2)
ここでは、円形更生管の横断面方向を対象に、レベル2地震時について照査を行う。
なお、地震時外力の設定は、指針に準拠する。
【0030】
1.設定条件
設定条件を図2(a)と下記の表5に示す。
なお、管渠断面の概念図及び構造諸元は実施例1と同じである。
(1)地盤条件
表層地盤を厚さH=18mの単一地盤と仮定し、標準貫入試験による表層地盤の平均N値が5であると設定すると、固有周期Tsが0.66秒(III種地盤)、設計応答速度Svが75kine(指針p.41の図2−11)と算定される。
(2)管渠の条件
既設管渠は内径1500mmの円形外圧管とする。土被りは3.0mであり、設計支持角120°の範囲で自由支承により支持されているものとする。
管渠の劣化状態として、管厚の半分まで劣化が進行し、減肉している状態を想定する(外側のスパイラル筋を含む部材断面の半分を有効断面とする。)。
【0031】
【表5】
【0032】
2.発生応力の算定
(1)解析モデル
発生応力の算定に用いる解析モデルを図10に示す。また、地盤及び構造物の入力物性値を表6に示す。また、表7にジョイント要素の特性値を示す。
【0033】
【表6】
【0034】
【表7】
【0035】
(2)荷重の設定
常時は自重を外力として、全要素に与える。
地震時は、地震時の管渠の頂部と支承部との相対変位量を与える節点力を解析モデルの地盤節点に外力として入力する。
・地震時の相対変位量
指針p.49式(2.2)より、下記式が使用される。
【0036】
【数2】
【0037】
(3)計算結果
計算結果より、常時及び地震時の最大発生応力を表8に示す。また、最大変形時の変形図を図11に示す。
【0038】
【表8】
【0039】
3.許容値と照査
許容値として、常時は許容応力度を、地震時は降伏強度あるいは圧縮強度を用いた。照査結果を表9に示す。
【0040】
【表9】
【0041】
かくして、本第2実施例の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法は、既設管渠1の内側に内張補強層2を形成した管渠に発生する応力の算定をFEM解析を用いて行うに際し、該FEM解析において、既設管渠1と前記内張補強層2の境界面が引張力を受ける部位では既設管渠1と内張補強層2の境界面に剪断応力を伝達しないジョイント要素の存在を仮定して、内張補強層2と既設管渠1との境界面が圧縮力を受ける部位では前記ジョイント要素の存在を仮定せずに、それぞれ解析を行うとともに、内張補強層2を形成した管渠の許容発生応力を既設管渠1と内張補強層2とでそれぞれ個別に独立して算定し、これらの許容発生応力のそれぞれが、前記内張補強層2を形成した管渠の既設管渠1と内張補強層2とにそれぞれ発生する最大応力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定することから、地盤力等により既設管渠1と内張補強層2との一体化が部分的に損なわれた場合にも常に適正な既設管渠1の補強を行うことができる。
【0042】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法の構成は、この実施例の記載に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することが可能である。
【0043】
【発明の効果】
本第1発明の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法によれば、内張補強層を形成した管渠に発生する断面力の算定を行うとともに、前記内張補強層側が引張力を受ける部位での内張補強層を形成した管渠の断面耐力を、既設管渠と内張補強層とが分離しているものと仮定して、個別に独立して求めた既設管渠の断面耐力と内張補強層の断面耐力の和に基づいて、前記既設管渠側が引張力を受ける部位での内張補強層を形成した管渠の断面耐力を、既設管渠と内張補強層とが合成されているものと仮定して、一体として求めた既設管渠と内張補強層の合成断面耐力に基づいて、それぞれ算定し、これらの断面耐力が前記内張補強層を形成した管渠に発生する最大断面力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定することから、地盤力等により既設管渠と内張補強層との一体化が部分的に損なわれた場合にも常に適正な既設管渠の補強を行うすることができる。
【0044】
また、本第2発明の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法によれば、内張補強層を形成した管渠に発生する応力の算定をFEM解析を用いて行うに際し、該FEM解析において、既設管渠と前記内張補強層の境界面が引張力を受ける部位では既設管渠と内張補強層の境界面に剪断応力を伝達しないジョイント要素の存在を仮定して、内張補強層と既設管渠との境界面が圧縮力を受ける部位では前記ジョイント要素の存在を仮定せずに、それぞれ解析を行うとともに、内張補強層を形成した管渠の許容発生応力を既設管渠と内張補強層とでそれぞれ個別に独立して算定し、これらの許容発生応力のそれぞれが、前記内張補強層を形成した管渠の既設管渠と内張補強層とにそれぞれ発生する最大応力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定することから、地盤力等により既設管渠と内張補強層との一体化が部分的に損なわれた場合にも常に適正な既設管渠の補強を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本第1発明の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法の一実施例を示すチャート図である。
【図2】管渠に作用する荷重を示し、(a)は管渠の埋設条件を示す断面図、(b)は平常時の荷重とモデルを示す説明図、(c)は地震時の荷重とモデルを示す説明図である。
【図3】管渠とそれに作用する荷重を示し、(a)は自由支持状態での荷重分布を示す説明図、(b)は荷重により変形した状態の管渠を示す説明図である。
【図4】管渠の変形によるひずみを示し、(a)は既設管渠と内張補強層が一体に変形する状態を示す説明図、(b)は既設管渠と内張補強層が別々に変形する状態を示す説明図である。
【図5】管渠の構造を示し、(a)は既設管渠の断面図、(b)は更正管の断面図である。
【図6】管渠の変形と曲げモーメント分布を示し、(a)は常時、(b)は地震時増分の既設管渠を示す説明図である。
【図7】管渠の変形によるひずみを示し、(a)は内側引張状態、(b)は外側引張状態を示す説明図である。
【図8】本第2発明の既設管渠の補強後耐荷力の照査方法の一実施例を示すチャート図である。
【図9】FEM解析モデルの例を示す説明図である。
【図10】発生応力の算定に用いるFEM解析モデルの例を示す説明図である。
【図11】管渠の最大変形時の変形状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 既設管渠
2 内張補強層
Claims (2)
- 既設管渠の内側に内張補強層を形成する既設管渠の補強設計における補強後耐荷力の照査方法において、内張補強層を形成した管渠に発生する断面力の算定を行うとともに、前記内張補強層側が引張力を受ける部位での内張補強層を形成した管渠の断面耐力を、既設管渠と内張補強層とが分離しているものと仮定して、個別に独立して求めた既設管渠の断面耐力と内張補強層の断面耐力の和に基づいて、前記既設管渠側が引張力を受ける部位での内張補強層を形成した管渠の断面耐力を、既設管渠と内張補強層とが合成されているものと仮定して、一体として求めた既設管渠と内張補強層の合成断面耐力に基づいて、それぞれ算定し、これらの断面耐力が前記内張補強層を形成した管渠に発生する最大断面力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定することを特徴とする既設管渠の補強後耐荷力の照査方法。
- 既設管渠の内側に内張補強層を形成する既設管渠の補強設計における補強後耐荷力の照査方法において、内張補強層を形成した管渠に発生する応力の算定をFEM解析を用いて行うに際し、該FEM解析において、既設管渠と前記内張補強層の境界面が引張力を受ける部位では既設管渠と内張補強層の境界面に剪断応力を伝達しないジョイント要素の存在を仮定して、内張補強層と既設管渠との境界面が圧縮力を受ける部位では前記ジョイント要素の存在を仮定せずに、それぞれ解析を行うとともに、内張補強層を形成した管渠の許容発生応力を既設管渠と内張補強層とでそれぞれ個別に独立して算定し、これらの許容発生応力のそれぞれが、前記内張補強層を形成した管渠の既設管渠と内張補強層とにそれぞれ発生する最大応力を上回ることを条件とすることにより必要な補強諸元を算定することを特徴とする既設管渠の補強後耐荷力の照査方法。
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