JP3617260B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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- Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の燃料噴射量を制御信号として用いて各種制御パラメータを制御する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジン等にあっては、エンジンの負荷と回転数に応じて基本的な燃料噴射量が決定され、この目標とする噴射量となるように燃料噴射ポンプが電子的に制御される。
【0003】
しかし、実際に噴射される燃料量は、燃料噴射ポンプ、燃料噴射ノズルの生産バラツキや経時劣化などもあって目標噴射量とは正確に一致しないことがある。この場合には、運転状態に応じて最適な燃料供給特性とはならず、例えば目標噴射量よりも実際の噴射量が多ければ、高負荷域などでスモーク発生量が増えたり、逆に少なければ、十分なエンジン出力が確保できなくなったりする。
【0004】
また、噴射量に応じて減速時などの燃料カットとリカバーを制御すれば、タイミングにバラツキを生じ、排気組成が悪化する。
【0005】
なお、従来、例えば特開昭63−230944号公報にもあるように、ディーゼルエンジンのEGR量(排気還流量)を運転状態に応じて制御するにあたり、この目標噴射量を制御信号として用いてEGR量を制御する場合、実相当噴射量との間に誤差があると、実際の燃焼に対して過大に排気還流が行われて、スモークが増えたりすることがある。そこで、この公報によれば、燃料噴射量の誤差を把握するため、例えばアイドル運転時などに目標とする所定の回転数を維持するのに必要な燃料噴射量の補正量を算出し、この補正量に基づいて目標噴射量を修正し、この修正された目標噴射量に基づいてEGR量を制御している。
【0006】
このようにすると、燃料噴射ポンプに特性上のバラツキ等があっても、目標噴射量と実際の噴射量とが対応するので、排気還流時の排気組成が目標値よりも悪化するような問題を回避できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来システムにおいて始動時は前回の運転時における学習値による燃料噴射量の修正が行われないため、燃料噴射量のバラツキが大きく、実際の噴射量が過大となったり、あるいはEGR率が大きくなって大量にスモークが発生する可能性がある。
【0008】
本発明はこのような問題を解決するために提案されたもので、内燃機関の燃料噴射制御装置において、始動後から各種制御パラメータの制御精度を向上させることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、エンジン運転状態を検出する手段と、エンジン運転状態に基づいて基本燃料噴射量を演算する手段と、エンジンのアイドル状態を判定する手段と、アイドル状態での各種パラメータ(パワステスイッチ、ニュートラルスイッチ、エアコンスイッチ、電気負荷信号、燃料温度、エンジン冷却水温、電源電圧、エンジン回転数のうちの少なくともひとつ)を検出する手段と、検出した各種パラメータに応じてアイドル状態での目標回転数を維持するのに必要な燃料噴射量に相当する実相当噴射量を演算する手段と、アイドル状態でエンジン回転数が目標回転数となるようにアイドル燃料噴射量を補正する手段と、アイドル状態において所定の条件が成立したときに燃料噴射量誤差の学習許可を判定する手段と、学習の許可時に補正されたアイドル燃料噴射量と、実相当噴射量との偏差から噴射量誤差を演算し学習する手段と、噴射量誤差の学習が終了したことを判定する手段と、エンジンの始動時から噴射量誤差の学習が終了するまでの間は、EGR量又は最大燃料噴射量の少なくもいずれかひとつを含む各種制御パラメータの制御目標値を所定量だけ減量し、学習が終了した後は前記噴射量誤差に基づいて前記目標値を設定する手段とを備えるものとした。
【0012】
第2の発明は、実相当噴射量から指令噴射量を差し引いた値が所定値より小さくなった場合に噴射量誤差の学習が終了したものと判定するものとした。
【0014】
【発明の作用・効果】
第1の発明において、アイドル運転状態において、基本的な燃料噴射量が設定され、燃料噴射ポンプより各気筒の燃料噴射ノズルに燃料が圧送され、噴射される。このときアイドル回転数を一定に維持するため、エンジン回転数が検出され、この検出した回転数が目標とする一定回転数と一致するように、燃料噴射量が補正される。
【0015】
このアイドル条件下において、実際のアイドル回転数を一定に維持するために補正した燃料噴射量と、この実相当噴射量との偏差に基づいて、噴射量の誤差を演算する。
【0016】
一般にこの噴射量の誤差分はエンジン、燃料噴射ポンプや燃料噴射ノズルの生産バラツキ、あるいは経時劣化等、さまざまな原因によって生じる。
【0017】
したがって、このようにして噴射量誤差を求め、これと基本噴射量とから目標とする噴射量を算出すると、この目標噴射量は正確に実際の噴射量と一致するため、この目標噴射量に基づいて燃料噴射量を制御すれば、エンジンの運転状態に応じて最適な燃料噴射量が得られる。
【0018】
ところで、従来システムにおいて始動時は前回の運転時における学習値による燃料噴射量の修正が行われないため、燃料噴射量のバラツキが大きく、実際の噴射量が過大となったり、あるいはEGR率が大きくなって大量にスモークが発生する可能性がある。
【0019】
本発明はこれに対処して、エンジンの始動時から噴射量誤差の学習が終了するまでの間は、燃料噴射量のバラツキが大きくなった場合に対応して各種制御パラメータの目標値を設定することにより、実際の噴射量が過大となったり、あるいはEGR率が大きくなって大量にスモークが発生することを防止できる。
【0020】
噴射量誤差の学習が終了した後は、学習された噴射量誤差に基づいて各種制御パラメータの目標値を設定することにより、各種制御パラメータの制御誤差を小さくして、スモークやパティキュレートの発生量を低減することができる。
【0021】
また、エンジンの始動時から噴射量誤差の学習が終了するまでの間は、燃料噴射量のバラツキが大きくなった場合に対応してEGR量を所定量だけ減らすかまたはカットすることにより、EGR率が過大になって大量にスモークやパティキュレートが発生することを防止できる。
【0022】
噴射量誤差の学習が終了した後は、学習された噴射量誤差に基づいてEGR量の目標値を設定することにより、EGR率の制御誤差を小さくして、スモークやパティキュレートの発生量を低減することができる。
【0023】
さらに、エンジンの始動時から噴射量誤差の学習が終了するまでの間は、最大噴射量を所定量だけ減らすことにより、実際の噴射量が過大となってエンジンが過負荷状態で運転されることを回避して、エンジンの耐久性を維持するとともに、大量にスモークやパティキュレートが発生することを防止できる。
【0024】
噴射量誤差の学習が終了した後は、学習された噴射量誤差に基づいて最大噴射量の目標値を設定することにより、噴射量が許容値を越えることがなく、スモークやパティキュレートの発生量を低減することができる。
さらにまた、実相当噴射量は各種パラメータの入力状態に応じて決定され、補機負荷、電気負荷等に対応した、実際のアイドル噴射量を正確に反映したものとなり、また、噴射量誤差は順次学習されていくので、燃料噴射特性の経時変化などを含む変動要因を補償し、常に精度よく噴射量誤差を算出できる。
【0025】
第2の発明において、実相当噴射量から指令噴射量を差し引いた値が所定値より小さくなったかどうかを判定することにより、噴射量誤差の学習が終了したことを的確に判定することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
【0028】
図31に示すように、ディーゼルエンジン30の排気通路32と吸気通路31を結ぶEGR通路33が設けられ、EGR通路33の途中にはEGR弁34が介装される。排気通路32を流れる排気ガスの一部をEGRガスとしてEGR通路33から吸気通路31に還流することにより、シリンダ内の酸素濃度を下げ、燃料の燃焼温度を下げてNOxの発生を抑制する。
【0029】
EGR弁34の開度が大きくなるほど、EGR通路33を介して吸気通路31に還流されるEGR量は増大する。EGR弁34はステップモータ35によって駆動される。ステップモータ35のステップ数がコントロールユニット18によりエンジン運転条件に応じて制御されることにより、EGR弁34の開度が調節される。
【0030】
図31において、エンジン回転に同期して回転駆動される燃料噴射ポンプ1の入力軸6aには、燃料を予圧するフィードポンプ6が取付けられ、さらに同軸上には入力軸6aと同一的に回転すると共に、軸方向に往復運動するように連結されたプランジャ2が配置される。
【0031】
フィードポンプ6はポンプ室7に加圧した燃料を送り出し、かつ余剰燃料は図示しない燃料タンクへと還流され、ポンプ室7の圧力を一定に維持する。
【0032】
プランジャ2には気筒数に対応したカム山をもつフェイスカム2aが同軸に設けられ、フェイスカム2aがローラ8aに乗り上げる毎にプランジャ2が軸方向に往復運動する。例えば6気筒エンジンならば、入力軸6aが1回転すると、この間にフェイスカム2aが6回だけローラ8aに乗り上げ、プランジャ2が6回往復運動する。プランジャ2が往復運動すると、その都度、プランジャ室2bに燃料を吸込み、加圧する。なお、2kはフェイスカム2aに対抗してプランジャ2を押し戻すリタンースプリングである。
【0033】
プランジャ2の伸び出し行程において、プランジャ室2bには、前記ポンプ室7からの燃料が、燃料停止弁10及びプランジャ2に設けたスリット2jを経由して吸入される。
【0034】
これに対して、プランジャ2の圧縮行程でプランジャ室2bの加圧燃料を燃料噴射ノズルに圧送するため、プランジャ2の軸心に沿って、プランジャ室2bと連通する連通路2cが形成され、この連通路2cは途中において半径方向に分岐する高圧通路2dをもち、またその先端部において同じく半径方向に貫通する放出通路2eが形成される。
【0035】
プランジャ2の回転位置に応じて高圧通路2dと選択的に接続するように、プランジャ2の周囲のシリンダ2fの内周には、エンジン気筒数に対応した数のポート2gが均等に配置され、各ポート2gにはそれぞれデリバリバルブ2h(1つだけしか図示していない)が接続し、このデリバリバルブ2hから図示しない燃料噴射ノズルへと燃料が圧送される。
【0036】
プランジャ2は1回転する度に6回往復し、その都度吸入した燃料を加圧するが、加圧燃料が連通路2cから高圧通路2dに押し込まれ、このときプランジャ2の回転位置により連通するポート2gに加圧燃料が送り込まれ、対応するデリバリバルブ2hを介して燃料噴射ノズルに燃料が圧送される。
【0037】
一方、プランジャ2の外周にはコントロールスリーブ3が摺動自在に嵌合し、通常は前記放出通路2eを被覆して閉じているが、プランジャ2の圧縮方向への移動により、やがて放出通路2eを解放する。これにより、プランジャ室2bの圧力が解放され、デリバリバルブ2hから燃料噴射ノズル11への燃料の圧送が終了する。
【0038】
したがって、燃料噴射ノズルに送り込まれる燃料量は、コントロールスリーブ3の位置により変化し、プランジャ2の圧縮方向への移動時に、早期に放出通路2eを解放すれば、燃料噴射量は少なく、逆に放出通路2eの解放時期が遅くなると、燃料噴射量は多くなる。
【0039】
この燃料噴射量を制御するため、コントロールスリーブ3の位置を自由に変化させるロータリソレノイド4が設けられ、このロータリソレノイド4にはコントローラ18からの燃料の噴射信号が供給され、これに応じてコントロールスリーブ3の位置を変える。なお、コントロールスリーブ3の位置は位置センサ5によって検出され、コントローラ18にフィードバックされる。
【0040】
次に、前記したフェイスカム2aが乗り上げるローラ8aは、タイマピストン8によって、そのフェイスカム2aの円周方向の位置が制御される。なお、図示したタイマピストン8は、説明の便宜上、実際の位置から90度だけ回転させてある。タイマピストン8の両側には、低圧室8bと高圧室8cとが設けられ、高圧室8cの圧力は、コントロールバルブ9によって高圧燃料の一部を低圧室8bに逃がす量を制御することにより調整され、これによってタイマピストン8の位置が変化する。
【0041】
タイマピストン8の位置が変化し、フェイスカム2aの回転方向にローラ8aの位置を進めると、フェイスカム2aがローラ8aに乗り上げる位置が相対的に遅れ、プランジャ2による燃料の加圧開始時期、つまり燃料の噴射時期が遅くなり、逆にフェイスカム2aの回転と反対方向にローラ8aの位置を遅らせると、プランジャ2による加圧開始時期が早まり、燃料噴射時期が早くなる。
【0042】
前記したコントローラ18からの信号により、運転状態に応じてコントロールバルブ9の作動が制御され、タイマピストン8の位置が調整され、燃料噴射時期が進角、遅角制御される。
【0043】
コントローラ18には、燃料噴射ノズル11の開弁時期及びリフト量を検出するノズルリフトセンサ12と、燃料噴射ポンプ1に供給される燃料温度を検出する燃料温度センサ15と、エンジン冷却水温を検出する冷却水温センサ13と、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ16と、ポンプ回転数を検出する回転数センサ14などからの信号が入力し、これらに基づいて燃料噴射量、噴射時期の制御信号を演算し、出力する。
【0044】
そして、本発明では、このコントローラ18によって制御される燃料噴射量について、運転状態に応じて決まる目標噴射量と、この目標噴射量信号に基づいて実際に噴射される噴射量とが一致するように、この目標噴射量を以下のようにして修正する。
【0045】
図1において、101はエンジン回転数やアクセル開度(負荷)などを含む運転状態を検知する手段であり、102はこれらの各出力から基本となる燃料噴射量を演算する手段である。また、103はアイドルスイッチなどの出力からアイドル運転状態を判定する手段、104は例えばスタータスイッチ、イグニッションスイッチ、パワステスイッチ、電気負荷信号、ニュートラルスイッチ、エアコンスイッチや、燃料温度、エンジン冷却水温、車速、電源電圧、エンジン回転数センサからの各種パラメータを入力する手段である。
【0046】
105は各種パラメータ入力手段104の出力に基づいて、さまざまな条件下において、アイドル運転時に目標回転数を維持するため、実際に噴射していると予想される噴射量を演算する実相当噴射量の演算手段である。106は上記した燃料噴射量演算手段102、アイドル状態判定手段103,各種パラメータ入力手段104からの信号に基づいてアイドル運転時に目標回転数と一致するように噴射量を補正する手段である。また、107はアイドル状態判定手段103と各種パラメータ入力手段104の出力に基づいて、後述するように、アイドル運転状態での特定の条件においてのみ燃料噴射量誤差の学習を行うべく、学習の許可判定を行う手段である。
【0047】
そして、108は実相当噴射量の演算手段105と、アイドル燃料補正手段106と、学習許可判定手段107との出力に基づいて、学習が許可された運転状態において、補正されたアイドル燃料噴射量と予測される実相当噴射量との偏差から燃料噴射量の誤差を演算する誤差演算手段である。この場合、例えばエアコンの作動しているときは、非作動時に比較して、アイドル回転数を目標回転数に維持するのに必要な燃料噴射量は大きくなり、これと同じく、実相当噴射量も入力パラメータにより変化し、エアコン作動時には非作動時に比較して大きくなる。したがって、これら噴射量の偏差は、エアコン負荷等の影響を除いた噴射量の誤差分に相当する。
【0048】
109は燃料噴射量演算手段106と噴射量誤差演算手段108の出力から、燃料噴射量を噴射量誤差に基づいて修正し、目標噴射量を設定する噴射量演算手段である。
【0049】
そして、この目標噴射量を基本噴射量に対して所定の範囲に収まるように最終噴射量設定手段110において調整し、この最終的に決められた目標噴射量にしたがって燃料噴射手段111によって燃料噴射量を制御する。
【0050】
114はエンジンの始動後において噴射量誤差の学習が終了したか否かを判定する学習終了判定手段である。後述するように実相当噴射量から指令噴射量を差し引いた値が所定値より小さくなった場合に噴射量誤差の学習が終了したものと判定する。
【0051】
112は噴射量誤差の学習が終了した後に噴射量誤差に基づいて各種パラメータの目標値を設定するパラメータ目標値設定手段である。
【0052】
例えば、パラメータを最大燃料噴射量として、後述するように噴射量誤差の学習が終了する前に最大噴射量を所定量だけ減らし、噴射量誤差の学習が終了した後に噴射量誤差に基づいて最大噴射量の目標値を設定する。
【0053】
また、パラメータをEGR量とし、後述するように噴射量誤差の学習が終了する前に排気還流を停止し、噴射量誤差の学習が終了した後に噴射量誤差に基づいてEGR量の目標値を設定する
この最終的に決められた目標量にしたがってパラメータ制御手段113によって最大噴射量、EGR量等のパラメータを制御する。
【0054】
ここで、これら制御内容について、以下のフローチャートにしたがって、さらに詳しく説明する。
【0055】
図2は燃料噴射ポンプ1に対して出力される最終的な燃料噴射量を演算するフローであり、エンジン回転に同期したタイミングで処理が行われる(Ref同期演算)。
【0056】
ステップ1で基本となる燃料噴射量を演算する(後に図3によって詳しく説明する)。ステップ2では、エンジンの始動後において噴射量誤差の学習が終了したかどうかの判定を行う。ステップ3では、この燃料噴射量に対しての最大噴射量の制限を行う(図8によって詳しく説明する)。ステップ4では燃料噴射量の誤差を学習するかどうかの許可判定を行う。この学習許可については、後述する図14、図15で説明する。ステップ5では学習が許可されたときに燃料噴射量の誤差を後述するようにして演算する(後で図16〜図20にしたがって説明する)。
【0057】
そして、ステップ6では前記した最大噴射量を規制された燃料噴射量と、この噴射量誤差とから補正噴射量を演算する(図24によって詳しく説明する)。
【0058】
このようにして、燃料噴射量の誤差を修正した噴射量を求め、燃料噴射ポンプ1の制御信号として出力するのであるが、各々については後で詳しく説明する。
【0059】
図3は基本燃料噴射量を演算するフローであり、エンジン回転に同期したタイミングで処理が行われる(Ref同期演算)。
【0060】
ステップ1、2でエンジン回転数Neとアクセル開度Clを読み込み、ステップ3では、これらNeとClに基づいて、図4に示すようなマップから燃料噴射量を設定し、これをMqdrvとする。ステップ4ではこの燃料噴射量Mqdrvについてエンジン冷却水温等による増量補正を行い、基本燃料噴射量Qsol1とする。そして、ステップ5ではアイドル状態を判定するスイッチ、例えばアクセルの全閉位置を検出するスイッチの出力に基づいてアイドル状態を判定する。アイドル状態であるときは、ステップ6に進み、エンジン回転数Neがアイドル状態での目標回転数Nsetとなるように燃料噴射量を補正し、この補正後の値をQsol2とする。
【0061】
なお、目標アイドル回転数Nsetの設定については、図5で説明する。
【0062】
これに対して、アイドル状態に無いときは、そのままQsol1をQsol2として処理を終了する。
【0063】
図5はアイドル運転状態において、目標アイドル回転数Nsetを設定するフローである(Ref同期演算)。
【0064】
ステップ1でエンジン冷却水温度Twを読み込み、ステップ2では、図6のようなテーブルから、Twに基づいて目標アイドル回転数Nsetを設定し(水温が低いほど目標回転数は高くなる)、処理を終了する。
【0065】
次に図7は、上記した基本噴射量を許容最大噴射量との関係に基づいて規制するためのフローである(Ref同期演算)。
【0066】
ステップ1で目標噴射量Qsol2と、図8に示すようにして求める最大噴射量Qfulを比較し、Qsol2が大きいときにはステップ2に進み、燃料噴射量QsolにQfulを用い、これに対してQsolが小さいときには、ステップ3に進み、そのままQsolにQsol2を設定し、処理を終了する。
【0067】
図8は最終的な最大燃料噴射量Qfulを演算するためのフローである(Ref同期演算)。
【0068】
ステップ1でエンジン回転数Neを読み込み、ステップ2ではこのNeに基づいて、例えば図9に示すようなテーブルから、限界空気過剰率Klambを設定する。ステップ3では後述(図12参照)するようにして求めた1シリンダ当たりの吸入空気量Qacを読み込み、ステップ4でこれらQac、Klambを用いて、最大噴射量基本値Qfulbを次式のようにして算出する。
【0069】
Qfulb=(Qac/Klamb)/14.7
このようにして最大噴射量基本値Qfulbを演算したらステップ5に進んで、噴射量誤差学習終了フラグFqlnfhの状態を見て、Fqlnfhtがセットされた噴射量誤差の学習が終了している場合にステップ6に進み、Fqlnfhがクリアされた噴射量誤差の学習が未了である場合にステップ7に移行する。
【0070】
噴射量誤差の学習が終了されているときは、ステップ6で最大噴射量基本値Qfulbをそのまま最大噴射量Qfulとして処理を終了する。
【0071】
噴射量誤差の学習が未了のときは、ステップ7でエンジン回転数Neに基づいて、例えば図10に示すようなテーブルから、最大噴射量補正量Dqlnfhを設定する。続いてステップ8に進んで、最大噴射量基本値Qfulbから最大噴射量補正量Dqlnfhを減算した値を最大噴射量Qfulとして処理を終了する。
【0072】
なお、図10のテーブル特性はエンジン回転数が上昇するのにしたがって最大噴射量補正量Dqlnfhを小さくし、最大噴射量Qfulが大きくなるように設定されている。
【0073】
すなわち、噴射量誤差の学習が終了しているときは最大燃料噴射量Qfulを減量せず、噴射量誤差の学習が未了のときは最大噴射量Qfulを減量する。
【0074】
図11は吸入空気量を演算するためのフローである。
【0075】
ステップ1でエアフローメータの出力電圧Usを読み込み、ステップ2で図12に示すような、電圧流量変換テーブルから、このUsに基づいて、吸入空気量Qas0_dに変換する。さらに、ステップ3でこのQas0_dの加重平均処理を行い、Qas0を求め、処理を終了する。なお、この処理は、例えば4msecJOB等の所定時間間隔で実行する。
【0076】
図13はこの吸入空気量に基づいてシリンダに流入する空気量を演算するフローである。(Ref同期演算)。
【0077】
ステップ1ではエンジン回転数Neを読み込み、ステップ2では前記した空気量Qas0とNeとから、次式のようにして、1吸気行程当たりの吸入空気量Qac0に変換する。
【0078】
Qac0=(Qas0/Ne)×KC ただし、KCは定数
ステップ3ではエアフローメータ(吸入空気量計測手段)から吸気コレクタまでの輸送遅れ分のディレイ処理を、Qac=Qac0n−Lとして行う。ただしLは定数。そして、ステップ4では、次式のようにして、コレクタ内でのダイナミクス相当の遅れ処理を行い、1シリンダ当たりの吸入空気量Qacを算出するのである。
【0079】
Qac=Qacn−1×(1−KV)+Qacn×KV ただし、KVは定数
このようにして、処理を行い終了する。
【0080】
次に図14から図20によって、燃料噴射量の誤差の演算、学習について説明する。
【0081】
まず、図14、図15は燃料噴射量の誤差を学習することを許可するかどうかを判定するためのフローである(Ref同期演算)。
【0082】
この許可判定は、次のようにしてアイドル回転時における種々の条件を検出して行われるもので、まず、ステップ1でエンジンのスタートスイッチSTSWがオンかどうか判断し、オン(始動中)のときはステップ16に進み、学習許可カウンタCtrlrnを所定値TMRLRN#に設定する。これに対して、オンでないときは、ステップ2に進み、イグニッションスイッチIGNSWがオンかどうか判断する。オフ(エンジン停止)のときは、上記したステップ16に進むが、オンのときは、ステップ3でアイドルスイッチIDLESWがオンかどうかを判断する。
【0083】
アイドルスイッチオンのときは、ステップ4に進んで車速VSPがゼロかどうか判断するが、否のときは上記と同じくステップ16に進む。車速がゼロのときは(車両停車状態)、ステップ5に進み、エンジン回転数Neが、アイドル目標回転Nsetに所定値NLRNH#を加えた値よりも小さいかどうかを判断する。もし、回転数が低いときは、ステップ6に進むが、否のときはステップ16に移行する。
【0084】
ステップ6においては、エンジン回転数Neをアイドル目標回転Nsetから所定値NLRNL#を引いた値よりも大きいかどうか判断する。回転数がこれよりも高いときは、ステップ7に進むが、そうでないときは、ステップ16に移行する。
【0085】
このようにして、アイドル回転数が、目標アイドル回転数を基準にして所定の範囲内にあるときはステップ7に進む。
【0086】
ステップ7では電源電圧Vbを所定値VBLRN#と比較し、電源電圧が所定値以上のときは、ステップ8に進み、否のときはステップ16に移行する。
【0087】
ステップ8ではエンジン冷却水温Twを所定値TWLRNH#と比較し、所定値よりも低いときは、ステップ9に進むが、そうでないときはステップ16に移行する。ステップ9では冷却水温Twを、前記したTWLRNH#よりも低い所定値TWLRNL#と比較し、これよりも高いとき、つまりエンジン冷却水温が所定の範囲にあるときはステップ10に進むが、そうでないときはステップ16に移る。
【0088】
ステップ10では燃料温度Tfnを所定値TFLRNH#と比較し、もしこれより低いときはステップ11に進むが、高いときはステップ16に移行する。
【0089】
ステップ11では、燃料温度Tfnを、前記TFLRNH#よりは低い所定値TFLRNL#と比較し、これよりも高いとき、つまり、燃料温度が所定の範囲にあるときは、ステップ12に進むが、そうでないときは、やはりステップ16に移行する。
【0090】
ステップ12で電源電圧VbがVBQLL#よりも高いことを確認したら、ステップ13に進み、パワステスイッチPWSTSWがオンかどうか判断し、オフのとき、つまりパワーステアリングが非作動のときは、ステップ14に進み、ここで電気負荷、例えばヘッドライトやディフォッガ等がオフのときにステップ15に進むが、ステップ13、14において、補機等を含む負荷があるときは、ステップ16に移行する。
【0091】
そして、アイドル回転中であって、補機などの負荷が無い状態では、ステップ15において、学習許可状態カウンタCtrlrnをデクリメントし、つまりCtrlrn=Ctrlrn−1とし、ステップ17でカウンタCtrlrnがゼロよりも大きいかどうかを判断する。もし、ゼロならば、ステップ18に進んで学習許可フラグをセット、すなわち、Flgqln=1とするが、ゼロよりも大きいときは、ステップ19に進み、学習許可フラグをクリアし、Flgqln=0にして処理を終了する。
【0092】
このようにして、エンジンが適正な範囲のアイドル回転中であって、後述するようにニュートラルスイッチ、エアコンスイッチを除く、補機等の負荷がかからない状態にあり、かつこの状態が所定時間継続したときに学習許可フラグがセットされ、燃料噴射量の誤差学習が許可される。
【0093】
図16は燃料噴射量の誤差を演算するための基本フローである(Ref同期演算)。
【0094】
まず、ステップ1では、後で詳しく説明する学習値反映ゲインGlqfhを演算する(図17参照)。ステップ2で前記した学習許可フラグFlgqlnの状態を見て、フラグFlgqln=1ならば、ステップ3に進む、クリアされていたらステップ5に移行する。
【0095】
学習が許可されているときは、ステップ3でアイドル状態において目標回転数を維持するのに必要な、実際に供給していると考えられる燃料噴射量Qsolibを演算する(図19で詳しく説明する)。さらにステップ4では図20に示すようにして、噴射量誤差Dqsol¥を演算し、学習する。
【0096】
そして、ステップ5で噴射量誤差Dqsollを、Dqsoll=Dqsol¥×Glqfhとして算出する。
【0097】
なお、学習が許可されていないときは、ステップ2からステップ5に進み、前回の学習値であるDqsol¥を用いて、噴射量誤差Dqsollを演算することになる。
【0098】
図17は演算された噴射量誤差を安定させるための学習値反映ゲインGlqfhを演算するためのフローである(Ref同期演算)。
【0099】
ステップ1ではアイドルスイッチIDLESWがオンかどうか判断し、否ならばステップ4に移行するが、オンのときはステップ2で車速VSPがゼロかどうか判定する。もし車速がゼロでないときは、ステップ4に移るが、ゼロのときはステップ3で学習反映ゲインGlqfh=1.0として処理を終了する。
【0100】
車速ゼロでないときは、ステップ4で、例えば図18に示すような学習値反映ゲインマップにより、エンジン回転数Neと噴射量Qsolとから、学習値反映ゲインGlqfhを読み込み、処理を終了する。
【0101】
なお、学習値反映ゲインGlqfhは、運転条件がアイドル状態に近いほど1.0に近づき、高負荷、高回転域になるほど小さくなり、噴射量誤差を小さく評価する。
【0102】
次に図19は、アイドル運転状態で実際に噴射していると想定される実相当噴射量Qsolibを演算するためのフローである(Ref同期演算)。
【0103】
ステップ1では変速機のニュートラルスイッチNeutSWがオンかどうか判断し、オンでニュートラル状態ならばステップ2に進み、オフならばステップ5に進む。
【0104】
ステップ2ではエアコンスイッチA/CSWがオンかどうか判断し、オフならばステップ3に進んで、噴射量Qsolib=QSOLL0#とし、またオンならばQsolib=QSOLL1#とする。
【0105】
一方、ステップ5ではエアコンスイッチがオンかどうかを見て、オフならばステップ6に進み、噴射量Qsolib=QSOLL2#とし、オンならばステップ7に進んでQsolib=QSOLL3#とし、処理を終了する。
【0106】
噴射量Qsolibは、ニュートラルでないときの方が相対的に大きく、またエアコンスイッチがオンのときの方が相対的に大きくなる。
【0107】
なお、これらの噴射量は、アイドル回転数を目標回転数に維持するために必要な、予め設計等により想定されたアイドル運転状態での予想噴射量であり、補機負荷等が増えればそれだけ噴射量は増加する。
【0108】
ところで、前記した図14、図15の学習許可の判定条件からは、ニュートラルスイッチとエアコンスイッチからの信号は除外されており、したがって、学習が許可されたアイドル状態において、この例では4つの条件について、それぞれ実相当噴射量が設定されることになる。そして、後述するように、噴射量誤差の学習は、制御の安定性、信頼性を高めるために、これら4つの条件ついて行われたものの荷重平均がとられるようになっている。
【0109】
なお、この例では、ニュートラルスイッチとエアコンスイッチとから条件を判定し、実相当噴射量を算出しているが、この他に、例えばパワステスイッチ、電気負荷信号、ニュートラルスイッチ、エアコンスイッチや、燃料温度、エンジン冷却水温、電源電圧、エンジン回転数センサ等に基づいて、各条件下においてそれぞれ予想されるアイドル運転状態での実相当噴射量を、同じようにして設定することができ、条件が増えるほど、学習精度の安定性が高まる。
【0110】
ただし、これら入力パラメータが変わるときは、学習許可条件もそれぞれ相違し、実相当噴射量の入力条件に入ったものについては、学習条件から除外されることになる。
【0111】
そして、図20は基本燃料噴射量と実相当噴射量とに基づいて、噴射量誤差学習値Dqsol¥を演算するためのフローである(Ref同期演算)。
【0112】
まず、ステップ1では生産時からのエンジン回転の積分値SNeから加重平均時定数補正係数(回転積分重み補正係数)Klsneを、図21のようなテーブルに基づいて設定する。
【0113】
なお、このテーブル特性はエンジン初期作動時の不安定な状態での学習ゲインを小さくし、経時的にエンジンの作動が安定してきた状態では、補正係数が1.0(補正無し)になる。
【0114】
ステップ2では生産時からの走行距離SVspから加重平均時定数補正係数(走行距離重み補正係数)KLsvspを、例えば図22のようなテーブルから設定する。このテーブル特性についても、エンジン初期作動時の不安定要素を取り除くためのもので、走行距離に応じて補正係数が1.0に近づく。
【0115】
ステップ3ではエンジン生産時からの作動時間SSttmからの加重平均時定数補正係数(経過時間重み補正係数)Klsstを、図23のようなテーブルから設定する。この場合にも、エンジン初期作動時の不安定な状態での学習ゲインが小さくなるように設定してある。
【0116】
なお、これら各重み補正係数Klsne、KLsvsp、Klsstについては、必ずしも全部でなく、少なくとも一つ求めればよい。
【0117】
次にステップ4でニュートラルスイッチNeutSWがオンかどうか判断し、オンならばステップ5に、またオフならばステップ8に進み、それぞれにおいて、エアコンスイッチA/CSWがオンかどうか判断する。
【0118】
ステップ5において、エアコンスイッチがオンならばステップ6に進み、加重平均時定数相当基本値KlconをKLC0#とし、オフならばステップ7に進んでKlconをKLC1#にする。また、ステップ8において、エアコンスイッチがオンのときは、ステップ9に進み、加重平均時定数相当基本値KlconをKLC2#にとし、オフのときはステップ10に進んで、KlconをKLC3#にする。
【0119】
このようにして補機負荷等の条件によって、学習ゲインを調整し、条件が相違したときの学習誤差の影響を小さくする。
【0120】
そして、ステップ11で、この加重平均時定数相当基本値Klconと、上記した重み補正係数Klsne、KLsvsp、Klsstとから、加重平均時定数相当値Klcを、Klc=Klcon×Klsne×KLsvsp×Klsstとして演算する。ステップ12では、このKlcを0以上1以下の値となるように制限、つまりこの範囲を越えるときには、最小値で0、最大値で1となるように制限する。
【0121】
ステップ13では基本燃料噴射量Qsol2と、実相当噴射量Qsolibとの差をとり、その偏差をDqsol0とする。すなわち、Dqsol0=Qsol2−Qsolibとする。
【0122】
つまり、所定のアイドル運転状態において、目標回転数を維持するのに必要な燃料噴射量と、そのときの実相当噴射量とから、燃料噴射量のずれ分Dqsol0を算出するのである。
【0123】
そして、ステップ14では噴射量誤差学習値Dqsol¥を、これらずれ分Dqsol0と荷重平均時定数相当値Klcとを用いて加重平均処理を行って求める。つまり、Dqsol¥=Dqsol¥n−1×(1−Klc)+Dqsol0×Klcとして演算する。
【0124】
このようにして、学習が許可された所定のアイドル運転状態において、そのときの目標アイドル回転数を維持するために補正された燃料噴射量と、補機負荷等に応じて設定された実相当噴射量との偏差に基づいて、燃料噴射量の偏差が求められ、これに補正値が乗算され、さらに加重平均されることにより、燃料噴射量誤差の学習値が求められるのである。
【0125】
図24は上記のようにして求めた噴射量誤差の学習値に基づいて修正した噴射量を演算するフローである(Ref同期演算)。
【0126】
ステップ1で基本燃料噴射量Qsol2と、誤差学習値Dqsollを読み込む。ステップ2では学習値により次のようにして基本噴射量を修正する。すなわち、修正噴射量Qsolhを、Qsolh=Qsol2+Dqsollとして算出する。
【0127】
なお、図25は、このようにして求めた燃料噴射量Qsolfから、実際に噴射量を制御する出力信号に変換するためのマップで、Qsolfが大きくなるほど出力信号(電圧)Uαsolは大きくなる。
【0128】
図26は学習終了を判定するフローである(Ref同期演算)。
【0129】
ステップ1ではアイドル条件かどうか判断し、アイドル状態でないときはステップ5に進み、フラグFqlnfhは前回の値が保持される。
【0130】
アイドル状態であるときはステップ2に進み、実相当燃料噴射量Qsolibが基本燃料噴射量Qsol2に所定値EPQF#を加算した値より小さいかどうかを判定し、否ならばステップ4に進み、学習が終了していないものとして、学習終了フラグFqlnfhをクリア、すなわFqlnfh=0とする。
【0131】
実相当燃料噴射量Qsolibが基本燃料噴射量Qsol2に所定値EPQF#を加算した値以上ならばステップ3に進み、学習が終了したものとして、学習終了フラグFqlnfhをセット、すなわちFqlnfh=1として処理を終了する。ここで所定値EPQFは学習終了の設定範囲を与えるものである。
【0132】
噴射量誤差の学習が終了されている、または噴射量誤差が小さいときは、噴射量誤差学習値Dqsol¥を反映した制御に移行する。
【0133】
図27は噴射量誤差学習値Dqsollを用いて目標のEGR率Megrを設定するフローである(Ref同期演算)。
【0134】
ステップ1でエンジン回転数Ne、基本燃料噴射量Qsol2、冷却水温度Tw、噴射量誤差学習値Dqsollを読み込み、ステップ2では、これらNeと修正噴射量Qsolhに基づいて、図28に示すようなマップから基本目標EGR率Megrbを検索する。
【0135】
続いてステップ3に進んで、図29に示すようなテーブルから、エンジン冷却水温度Twに基づいて目標EGR率水温補正係数Kegr_twを検索する。水温が80°Cの近傍にあるときKegr_tw=1となり、80°Cから離れるにしたがってKegr_twは0に近づくように設定されている。
【0136】
続いてステップ4に進んで、これらMegrb、Kegr_twを用いて、目標EGR率Megrを次式のようにして算出する。
【0137】
Megr=Megrb×Kegr_tw
続いてステップ5に進んで、学習終了フラグFqlnfhがセットされているかどうかを判定する。
【0138】
学習終了フラグFqlnfhがセットされた噴射量学習終了時に、ステップ6,7に進んでエンジンの完爆状態かどうかを判定する(詳しくは、図30によって説明する)。
【0139】
一方、学習終了フラグFqlnfhがクリアされた噴射量学習未了時に、または噴射量学習が終了してもエンジンの完爆状態でないと判定された場合、ステップ8に進んで目標EGR率Megr=0と設定して、排気還流を停止し、処理を終了する。
【0140】
すなわち、エンジンの完爆状態でない場合、エンジンの完爆状態となっても噴射量学習が終了しない場合、排気還流が停止される。一方、エンジンの始動後に完爆状態となり、かつ噴射量学習が終了している場合、目標EGR率Megrに基づいて排気還流を行う。
【0141】
図30はエンジンの完爆状態を判定するフローである(30msecの周期毎に実行される)。
【0142】
ステップ1でエンジン回転数Neを読み込み、ステップ2では、エンジン回転数Neが所定のスライスレベルNRPMK(例えば400rpm)より高いかどうかを判定する。
【0143】
エンジン回転数NeがスライスレベルNRPMK以下の場合、ステップ6に進んで完爆後に計測されるタイマTmrkbをクリアし、ステップ7に進んで完爆でないとして処理を終了する。
【0144】
エンジン回転数Neが完爆判定スライスレベルNRPMKを超えても、ステップ3に進んで完爆後のタイマTmrkbが所定値TMRKBPを超えないと判定された場合、ステップ5に進んで完爆後のタイマTmrkbをインクリメントした後、ステップ7に進んで完爆でないとして処理を終了する。
【0145】
完爆後のタイマTmrkbが所定値TMRKBPを超えた場合、ステップ4に進んで完爆状態と判定して処理を終了する。
【0146】
すなわち、エンジン回転数Neが所定のスライスレベルNRPMKより高い運転時間が所定値TMRKBPを超えた場合に完爆状態と判定される。
【0147】
次に全体的な作用について説明する。
【0148】
一般に、エンジンの生産バラツキ、燃料噴射ポンプ1や燃料噴射ノズルの生産バラツキ、あるいはこれらの経時劣化等があるため、制御目標とする燃料噴射量に対して実際の燃料噴射量との間には誤差が生じる。
【0149】
この噴射量誤差が大きいときは、運転状態に応じて最適な燃料噴射量とはならず、例えばエンジン高負荷域などで、実際の噴射量が目標噴射量よりも過大のときは、大量にスモークが発生したり、あるいは噴射量が少なければ、加速時などエンジン出力が不足したりする。減速時の燃料カット、リカバー時にもバラツキが出て、場合によってはリカバー時の燃料が不足し、エンストを起こすこともある。
【0150】
本システムでは目標噴射量を実際の噴射量と一致させるために、次のようにして目標噴射量が演算される。
【0151】
アイドル運転状態において、基本的な燃料噴射量が設定され、燃料噴射ポンプ1より各気筒の燃料噴射ノズルに燃料が圧送され、噴射される。このときアイドル回転数を一定に維持するため、エンジン回転数が検出され、この検出した回転数が目標とする一定回転数と一致するように、燃料噴射量が補正される。
【0152】
この場合、アイドル回転数を一定に維持するために演算された目標燃料噴射量と実際に供給される噴射量とが一致していれば、補正量はゼロとなるはずだが、誤差があればそれに対応して補正量が算出される。ただし、補機負荷等があれば、この補機負荷に応じて燃料を増量しないとアイドル回転数を一定に維持できない。このため、燃料噴射量の補正分には実際の噴射量とのずれ分に補機負荷等の変化分が含まれてくる。
【0153】
したがって、アイドル回転数を目標回転数とするために演算された燃料噴射量と実際の燃料噴射量との誤差は、単純に補正量だけからは判断できない。
【0154】
そこで、アイドル状態における各種パラメータ、例えばニュートラルスイッチ、エアコンスイッチ、パワステスイッチ、電気負荷信号、冷却水温、燃料温度などに基づいて、これらの入力条件下において、一定のアイドル回転数を維持するのに必要な、実際の燃料噴射量に相当する実相当噴射量を求める。これは、補機負荷等があったときに、それぞれの場合においてアイドル回転数を一定に維持するのに必要な噴射量を予測したものである。
【0155】
パワステスイッチやエアコンスイッチが入っている状態では、エンジンに負荷がかかり、アイドル回転数を一定に維持するのに必要な燃料噴射量は相対的に増加する。したがって、これらに応じて求めた実相当噴射量は、それだけ実際の燃料噴射量に近くなる。
【0156】
次に、このアイドル条件下において、実際のアイドル回転数を一定に維持するために補正した燃料噴射量と、この実相当噴射量との偏差に基づいて、噴射量の誤差を演算する。実相当噴射量はそのときの補機負荷等の条件によって異なった値となり、したがって、補正後の噴射量からこの実相当噴射量を差し引いたものは、補機負荷分等を含まない噴射量誤差分にのみ相当したものとなる。
【0157】
一般にこの噴射量の誤差分はエンジン、燃料噴射ポンプ1や燃料噴射ノズルの生産バラツキ、あるいは経時劣化等、さまざまな原因によって生じる。
【0158】
したがって、このようにして噴射量誤差を求め、これと基本噴射量とから目標とする噴射量を算出すると、この目標噴射量は正確に実際の噴射量と一致するため、この目標噴射量に基づいて燃料噴射量を制御すれば、エンジンの運転状態に応じて最適な燃料噴射量が得られる。
【0159】
これにより、燃料噴射量の誤差に基づくスモークやパティキュレートの増大が防止され、また燃料カット後のリカバー時の運転性が改善される。
【0160】
燃料噴射量の誤差分の演算については、一定の学習条件が成立した状態で行っているが、この学習許可条件として、エンジンの補機負荷や電気負荷などが少なく、また、エンジン冷却水温や燃料温度、あるいは電源電圧等が所定の範囲にあり、かつこれらが所定の時間にわたり継続しているときを選ぶことにより、エラーの少ない安定した状態のもとで学習が行える。
【0161】
また一方、いくつかの入力パラメータ、例えばニュートラルスイッチとエアコンスイッチとを条件にして、各条件下において場合分けし、それぞれ求めた実相当噴射量との比較して噴射量の誤差を求め、かつその荷重平均値として最終的な噴射量誤差を演算し、学習しているので、学習値のバラツキが小さく、信頼性が高められる。さらにこの学習にあたり、エンジンの回転数の積算値、走行距離、生産後の経過時間などを補正値として取り込んでいるので、経時劣化による変動分を加味され、学習値の安定性や信頼性がそれだけ高まる。
【0162】
ところで、従来システムにおいて始動後において噴射量学習が未了の間は、学習値による燃料噴射量の修正が行われないため、噴射量のバラツキが大きく、実際の噴射量が過大となったり、EGR量が過大になって、大量にスモークやパティキュレートが発生したり、エンジンの耐久性を低下させる可能性がある。
【0163】
本発明はこれに対処して、エンジンの始動後に完爆状態となり、かつ噴射量学習が終了している場合、目標EGR率に基づいて排気還流を行う一方、噴射量学習が未了の場合、または噴射量学習が終了してもエンジンの完爆状態でない場合、排気還流を停止する。
【0164】
これにより、始動時に噴射量誤差が大きくなっても、EGR量が過大になることを抑制し、大量にスモークやパティキュレートが発生することを防止できる。噴射量誤差の学習が終了した後は、学習された噴射量誤差に基づいてEGR量の目標値を設定することにより、EGR率の制御誤差を小さくして、スモークやパティキュレートの発生量を低減することができる。
【0165】
また、噴射量誤差の学習が未了の場合、最大噴射量補正量を減量することにより、始動時に噴射量誤差が大きくなっても、最大燃料噴射量が過大になることを抑制し、エンジンの耐久性を維持するとともに、大量にスモークやパティキュレートが発生することを防止できる。
【0166】
噴射量誤差の学習が終了した後は、学習された噴射量誤差に基づいて最大噴射量の目標値を設定することにより、噴射量が許容値を越えることがなく、スモークやパティキュレートの発生量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】最終燃料噴射量を演算するためのフローチャート。
【図3】基本燃料噴射量を演算するためのフローチャート。
【図4】基本燃料噴射量特性を示す特性図。
【図5】目標アイドル回転数を設定するためのフローチャート。
【図6】目標アイドル回転数の特性図。
【図7】基本噴射量を許容最大噴射量との関係に基づいて規制するためのフローチャート。
【図8】最大燃料噴射量を規制するためのフローチャート。
【図9】限界空気過剰率を設定した特性図。
【図10】最大噴射量補正量を設定した特性図。
【図11】吸入空気量を検知するためのフローチャート。
【図12】吸入空気量の電圧変換特性図。
【図13】シリンダ吸入空気量を演算するためのフローチャート。
【図14】燃料噴射量誤差の学習許可を判定するためのフローチャート。
【図15】同じくフローチャート。
【図16】燃料噴射量誤差を演算するためのフローチャート。
【図17】学習値反映ゲインを演算するためのフローチャート。
【図18】学習値反映ゲインの特性図。
【図19】実相当噴射量を演算するためのフローチャート。
【図20】誤差学習値を演算するためのフローチャート。
【図21】学習重み係数の特性図。
【図22】同じく特性図。
【図23】同じく特性図。
【図24】最終噴射量を演算するフローチャート。
【図25】噴射量と電圧変換特性を設定した特性図。
【図26】学習終了を判定するフローチャート。
【図27】目標EGR率を演算するフローチャート。
【図28】目標EGR率を設定した特性図。
【図29】目標EGR率補正係数を設定した特性図。
【図30】完爆を判定するフローチャート。
【図31】エンジンのシステム図。
【符号の説明】
101 運転状態の検知手段
102 燃料噴射量の演算手段
103 アイドル状態判定手段
104 各種パラメータの検出手段
105 実相当噴射量の演算手段
106 アイドル燃料噴射量の補正手段
107 噴射量学習許可判定手段
108 噴射量誤差の演算学習手段
109 目標燃料噴射量の演算手段
110 最終噴射量の設定手段
111 噴射量の制御手段
112 パラメータ目標値設定手段
113 パラメータの制御手段
114 学習終了判定手段
Claims (2)
- エンジン運転状態を検出する手段と、
エンジン運転状態に基づいて基本燃料噴射量を演算する手段と、
エンジンのアイドル状態を判定する手段と、
アイドル状態での各種パラメータ(パワステスイッチ、ニュートラルスイッチ、エアコンスイッチ、電気負荷信号、燃料温度、エンジン冷却水温、電源電圧、エンジン回転数のうちの少なくともひとつ)を検出する手段と、
検出した各種パラメータに応じてアイドル状態での目標回転数を維持するのに必要な燃料噴射量に相当する実相当噴射量を演算する手段と、
アイドル状態でエンジン回転数が目標回転数となるようにアイドル燃料噴射量を補正する手段と、
アイドル状態において所定の条件が成立したときに燃料噴射量誤差の学習許可を判定する手段と、
学習の許可時に補正されたアイドル燃料噴射量と、実相当噴射量との偏差から噴射量誤差を演算し学習する手段と、
噴射量誤差の学習が終了したことを判定する手段と、
エンジンの始動時から噴射量誤差の学習が終了するまでの間は、EGR量又は最大燃料噴射量の少なくもいずれかひとつを含む各種制御パラメータの制御目標値を所定量だけ減量し、学習が終了した後は前記噴射量誤差に基づいて前記目標値を設定する手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 実相当噴射量から指令噴射量を差し引いた値が所定値より小さくなった場合に噴射量誤差の学習が終了したものと判定する請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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Family Applications (1)
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