JP3616734B2 - Sliding mode controller - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧制御システム等の制御量に対する動作不感帯を有した制御対象をスライディングモード制御する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関のクランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を切換弁による油圧制御によって連続的に可変制御する構成のバルブタイミング制御装置として、特開平10−141022号公報に開示されるようなベーン式バルブタイミング制御装置がある。
【0003】
このものは、カムスプロケットに固定される筒状のハウジングの内周面に凹部を形成する一方、カムシャフトに固定される羽車の羽部(ベーン)を前記凹部に収容し、前記凹部内で前記羽部が移動できる範囲内でカムシャフトがカムスプロケットに対して相対的に回転できるよう構成する。
【0004】
そして、前記羽部が前記凹部を回転方向の前後に区画して形成される一対の油圧室に対して相対的に油を給排することで、前記羽部を前記凹部の中間位置に保持させ、回転位相の連続的な可変制御を行わせる構成となっており、前記一対の油圧室の油圧が目標の回転位相が得られる油圧に調整されると、油圧通路を切換弁で閉じて油の給排を停止させるよう構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような油圧制御システムでは、油圧室の油を給排する油圧通路を切換弁で閉じて、定常時に吸・排気弁からの反力による油圧室からの油洩れを防止するように、切換弁(スプール弁)の弁体の閉じ代を大きく設定している。このため、切換弁の制御量(電磁駆動式ではデューティ比等)に対して前記油圧室の油量ひいては制御対象であるカムシャフトの回転位相が動作不感帯を有する。
【0006】
前記カムシャフト回転位相の制御方式としては、PID制御などが一般的に採用されるが、該PID制御だけでは前記不感帯に対して応答よくフィードバック制御することが困難である。このため、PIDとは別にディザー分を付加してディザー制御を行なうようにしたものもあるが、エラー量に基づいてディザー分の付加判定を行なう必要があって複雑な制御となり、ROMやRAMの容量をとってしまい、また、部品毎の不感帯幅のバラツキを小さくして制御精度を確保するためには、部品の加工精度を上げなければならず、加工コストが増大していた。
【0007】
また、前記PID制御を応答性よく実行するためには、油温や油圧に応じて油の粘性が変化するため、フィードバックゲインを可変に設定することが望ましいが、該設定のマッチングが容易でない。
【0008】
一方、近年外乱に対する影響の小さいロバスト性の高いフィードバック制御として、スライディングモード制御が注目されている。
そこで、前記油圧制御式のバルブタイミング制御装置にスライディングモード制御を適用することが考えられ、教科書とおりにスライディングモード制御を設計した場合には、前記油温や油圧の変化などの外乱による影響は抑制できるが、前記不感帯に対しては有効に機能せず、前記ディザーザー制御の代替若しくは補助とはならないことが判明した。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、油圧制御システム等の制御量に対する動作不感帯を有した制御対象に対し、該不感帯による応答性の低下を抑制したロバスト性の高いスライディングモード制御を実行できるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に係る発明は、
バルブ特性が可変に制御される可変動弁機構の制御量のフィードバック補正分を、線形項と非線形項とを加算して設定し、かつ、非線形項をスライディングモード制御によって算出する装置であって、
前記フィードバック補正分の線形項を、バルブ特性を決定する制御対象の目標の位置と実際の位置との偏差の関数として設定したことを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る発明によると、スライディングモード制御におけるフィードバック補正分の線形項が、バルブ特性を決定する制御対象の目標の位置と実際の位置との偏差の関数として設定される。
【0012】
これにより、動作不感帯に入って、制御対象の実際の位置が変化しないときでも目標位置と実際の位置との間に偏差(≠0)を有するため、該偏差の関数として設定される線形項によって、フィードバックゲインを切り換える切換線への移動速度が適度に与えられ、以って、目標位置に応答性よく収束させることができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、
前記可変動弁機構は、油圧制御システムであることを特徴とする。
請求項2に係る発明によると、
油圧制御システムに、本発明にかかるスライディングモード制御が適用される。
【0014】
これにより、前記切換弁等により大きな動作不感帯を有する油圧制御システムにおいて、該不感帯による影響を抑制した応答性の良い制御が実行される。
また、請求項3に係る発明は、
前記可変動弁機構は、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を油圧制御によって連続的に可変制御する構成であって、前記油圧制御される油圧アクチュエータに対する油の給排を切換弁によって選択的に制御することにより制御する構成の内燃機関のバルブタイミング制御装置であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明によると、
上記構成の内燃機関のバルブタイミング制御装置に、本発明にかかるスライディングモード制御が適用される。
【0016】
これにより、前記切換弁により大きな動作不感帯を有する油圧制御式の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、該不感帯による影響を抑制した応答性の良い制御が実行される。
【0017】
また、請求項4に係る発明は、
前記フィードバック補正分の線形項を、制御対象の目標位置と実際の位置との偏差に比例する項と、制御対象の動作速度に比例する項とを加算して設定したことを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る発明によると、
スライディングモード制御における制御量の線形項が、制御対象の目標位置と実際の位置との偏差に比例する項と、制御対象の動作速度に比例する項とを加算して設定される。
【0019】
これにより、制御対象の目標位置と実際の位置との偏差に比例する項によって、前記の動作不感帯に入ったときでも切換線への移動速度が適度に与えられる機能を有すると共に、動作不感帯から外れたときには制御対象の動作速度に比例する項による切換線への移動速度調整機能も加わって、より適切な移動速度に調整され、応答性がより向上する。
【0020】
また、請求項5に係る発明は、
前記フィードバック補正分の線形項を、制御対象の目標位置と実際の位置との偏差に比例する項のみで設定したことを特徴とする。
【0021】
請求項5に係る発明によると、
スライディングモード制御における制御量の線形項が、制御対象の目標位置と実際の位置との偏差に比例する項のみによって設定される。
【0022】
線形項を制御対象の目標位置と実際の位置との偏差に比例する項のみによって設定した場合でも、動作不感帯に入ったときのみならず、動作不感帯から外れたときでも切換線への移動速度が適度に与えられる機能を有するので、スライディングモード制御を実現することができ、上記(請求項4における)制御対象の動作速度に比例する項を省略したことにより、制御(演算)が簡易となってプログラム容量を節約できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図6は、実施形態における内燃機関のバルブタイミング制御装置の機構部分を示すものであり、吸気バルブ側に適用したものを示す。
【0024】
図に示すバルブタイミング制御装置は、機関のクランクシャフト(図示省略)によりタイミングチェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット1(タイミングスプロケット)と、該カムスプロケット1に対して相対回転可能に設けられたカムシャフト2と、該カムシャフト2の端部に固定されてカムスプロケット1内に回転自在に収容された回転部材3と、該回転部材3をカムスプロケット1に対して相対的に回転させる油圧回路4と、カムスプロケット1と回転部材3との相対回転位置を所定位置で選択的にロックするロック機構10とを備えている。
【0025】
前記カムスプロケット1は、外周にタイミングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部5aを有する回転部5と、該回転部5の前方に配置されて回転部材3を回転自在に収容したハウジング6と、該ハウジング6の前端開口を閉塞する蓋体たる円板状のフロントカバー7と、ハウジング6と回転部5との間に配置されてハウジング6の後端部を閉塞する略円板状のリアカバー8とから構成され、これら回転部5とハウジング6及びフロントカバー7,リアカバー8は、4本の小径ボルト9によって軸方向から一体的に結合されている。
【0026】
前記回転部5は、略円環状を呈し、周方向の約90°の等間隔位置に各小径ボルト9が螺着する4つの雌ねじ孔5bが前後方向へ貫通形成されていると共に、内部中央位置に後述する通路構成用のスリーブ25が嵌合する段差径状の嵌合孔11が貫通形成されている。更に、前端面には、前記リアカバー8が嵌合する円板状の嵌合溝12が形成されている。
【0027】
また、前記ハウジング6は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面の周方向の90°位置には、4つの隔壁部13が突設されている。この隔壁部13は、横断面台形状を呈し、それぞれハウジング6の軸方向に沿って設けられて、各両端縁がハウジング6の両端縁と同一面になっていると共に、基端側には、小径ボルト9が挿通する4つのボルト挿通孔14が軸方向へ貫通形成されている。更に、各隔壁部13の内端面中央位置に軸方向に沿って切欠形成された保持溝13a内に、コ字形のシール部材15と該シール部材15を内方へ押圧する板ばね16が嵌合保持されている。
【0028】
更に、前記フロントカバー7は、中央の比較的大径なボルト挿通孔17が穿設されていると共に、前記ハウジング6の各ボルト挿通孔14と対応する位置に4つのボルト孔18が穿設されている。
【0029】
また、リアカバー8は、後端面に前記回転部材5の嵌合溝12内に嵌合保持される円板部8aを有していると共に、中央にスリーブ25の小径な円環部25aが嵌入する嵌入孔8cが穿設され、更に、前記ボルト挿通孔14に対応する位置に4つのボルト孔19が同じく形成されている。
【0030】
前記カムシャフト2は、シリンダヘッド22の上端部にカム軸受23を介して回転自在に支持され、外周面の所定位置に、バルブリフターを介して吸気バルブを開動作させるカム(図示省略)が一体に設けられていると共に、前端部にはフランジ部24が一体に設けられている。
【0031】
前記回転部材3は、フランジ部24と嵌合穴11にそれぞれ前後部が嵌合した前記スリーブ25を介して軸方向から挿通した固定ボルト26によってカムシャフト2の前端部に固定されており、中央に前記固定ボルト26が挿通するボルト挿通孔27aを有する円環状の基部27と、該基部27の外周面周方向の90°位置に一体に設けられた4つのベーン28a,28b,28c,28dとを備えている。
【0032】
前記第1〜第4ベーン28a〜28dは、それぞれ断面が略逆台形状を呈し、各隔壁部13間の凹部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、ベーン28a〜28dの両側と各隔壁部13の両側面との間に、進角側油圧室32と遅角側油圧室33を構成する。また、各ベーン28a〜28dの外周面の中央に軸方向に切欠された保持溝29にハウジング6の内周面6aに摺接するコ字形のシール部材30と該シール部材30を外方に押圧する板ばね31がそれぞれ嵌着保持されている。
【0033】
前記ロック機構10は、前記回転部5の嵌合溝12の外周側所定位置に形成された係合溝20と、前記係合溝20に対応した前記リアカバー8の所定位置に貫通形成されて、内周面がテーパ状の係合孔21と、該係合孔21に対応した前記1つのベーン28の略中央位置に内部軸方向に沿って貫通形成された摺動用孔35と、該1つのベーン28の前記摺動用孔35内に摺動自在に設けられたロックピン34と、該ロックピン34の後端側に弾装されたばね部材であるコイルスプリング39と、ロックピン34と摺動用孔35との間に形成された受圧室40とから構成されている。
【0034】
前記ロックピン34は、中央側の中径状の本体34aと、該本体34aの先端側に略先細り円錐状に形成された係合部34bと、本体34aの後端側に形成された段差大径状のストッパ部34cとから構成されており、ストッパ部34cの内部凹溝34dの底面とフロントカバー7の内端面との間に弾装された前記コイルスプリング39のばね力によって係合孔21方向へ付勢されるようになっていると共に、前記本体34aとストッパ部34cとの間の外周面及び摺動用孔35の内周面との間に形成された受圧室40内の油圧によって、係合孔21から抜け出る方向に摺動するようになっている。また、この受圧室40は、前記ベーン28の側部に形成された通孔36によって前記遅角側油圧室33に連通している。また、ロックピン34の係合部34bは、回転部材3の最大遅角側の回動位置において係合部34bが係合孔21内に係入するようになっている。
【0035】
前記油圧回路4は、進角側油圧室32に対して油圧を給排する第1油圧通路41と、遅角側油圧室33に対して油圧を給排する第2油圧通路42との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路41,42には、供給通路43とドレン通路44とがそれぞれ通路切り換え用の電磁切換弁45を介して接続されている。前記供給通路43には、オイルパン46内の油を圧送するオイルポンプ47が設けられている一方、ドレン通路44の下流端がオイルパン46に連通している。
【0036】
前記第1油圧通路41は、シリンダヘッド22内からカムシャフト2の軸心内部に形成された第1通路部41aと、固定ボルト26内部の軸線方向を通って頭部26a内で分岐形成されて第1通路部41aと連通する第1油路41bと、頭部26aの小径な外周面と回転部材3の基部27内に有するボルト挿通孔27aの内周面との間に形成されて第1油路41bに連通する油室41cと、回転部材3の基部27内に略放射状に形成されて油室41cと各進角側油圧室32に連通する4本の分岐路41dとから構成されている。
【0037】
一方、第2油圧通路42は、シリンダヘッド22内及びカムシャフト2の内部一側に形成された第2通路部42aと、前記スリーブ25の内部に略L字形状に折曲形成されて第2通路部42aと連通する第2油路42bと、回転部材5の嵌合孔11の外周側孔縁に形成されて第2油路42bと連通する4つの油通路溝42cと、リアカバー8の周方向の約90°の位置に形成されて、各油通路溝42cと遅角側油圧室33とを連通する4つの油孔42dとから構成されている。
【0038】
前記電磁切換弁45は、内部のスプール弁体が各油圧通路41,42と供給通路43及びドレン通路44a,44bとを相対的に切り換え制御するようになっていると共に、コントローラ48からの制御信号によって切り換え作動されるようになっている。
【0039】
具体的には、図4〜図6に示すように、シリンダブロック49の保持孔50内に挿通固定された筒状のバルブボディ51と、該バルブボディ51内の弁孔52に摺動自在に設けられて流路を切り換えるスプール弁体53と、該スプール弁体53を作動させる比例ソレノイド型の電磁アクチュエータ54とから構成されている。
【0040】
前記バルブボディ51は、周壁の略中央位置に前記供給通路43の下流側端と弁孔52とを連通する供給ポート55が貫通形成されていると共に、該供給ポート55の両側に前記第1,第2油圧通路41,42の他端部と弁孔52とを連通する第1ポート56及び第2ポート57がそれぞれ貫通形成されている。また、周壁の両端部には、両ドレン通路44a,44bと弁孔52とを連通する第3,第4ポート58,59が貫通形成されている。
【0041】
前記スプール弁体53は、小径軸部の中央に供給ポート55を開閉する略円柱状の第1弁部60を有していると共に、両端部に第3,第4ポート58,59を開閉する略円柱状の第2,第3弁部61,62を有している。また、スプール弁体53は、前端側の支軸53aの一端縁に有する傘部53bと弁孔52の前端側内周壁に有するスプリングシート51aとの間に弾装された円錐状の弁ばね63によって、図中右方向、つまり第1弁部60で供給ポート55と第2油圧通路42とを連通する方向に付勢されている。
【0042】
前記電磁アクチュエータ54は、コア64,移動プランジャ65,コイル66,コネクタ67などを備え、移動プランジャ65の先端に前記スプール弁体53の傘部53bを押圧する駆動ロッド65aが固定されている。
【0043】
前記コントローラ48は、機関回転速度を検出する回転センサ101や吸入空気量を検出するエアフローメータ102からの信号によって現在の運転状態(負荷、回転)を検出すると共に、クランク角センサ103及びカムセンサ104からの信号によってカムスプロケット1とカムシャフト2との相対回動位置、即ち、クランクシャフトに対するカムシャフト2の回転位相を検出する。
【0044】
前記コントローラ48は、前記電磁アクチュエータ54に対する通電量をデューティ制御信号に基づいて制御する。
例えば、コントローラ48から電磁アクチュエータ54にデューティ比0%の制御信号(OFF信号)を出力すると、スプール弁体53が弁ばね63のばね力で図4に示す位置、つまり、最大右方向に移動する。これによって、第1弁部60が供給ポート55の開口端55aを開成して第2ポート57と連通させると同時に、第2弁部61が第3ポート58の開口端を開成すると共に、第4弁部62が第4ポート59を閉止する。このため、オイルポンプ47から圧送された作動油は、供給ポート55,弁孔52,第2ポート57,第2油圧通路42を通って遅角側油圧室33に供給されると共に、進角側油圧室32内の作動油が、第1油圧通路41,第1ポート56,弁孔52,第3ポート58を通って第1ドレン通路44aからオイルパン46内に排出される。
【0045】
従って、遅角側油圧室33の内圧が高、進角側油圧室32の内圧が低となって、回転部材3は、ベーン28a〜28bを介して最大一方向に回転する。これによって、カムスプロケット1とカムシャフト2とは一方側へ相対回動して位相が変化し、この結果、吸気バルブの開時期が遅くなり、排気バルブとのオーバーラップが小さくなる。
【0046】
一方、コントローラ48から電磁アクチュエータ54にデューティ比100%の制御信号(ON信号)を出力すると、スプール弁体53が弁ばね63のばね力に抗して図6に示すように左方向へ最大に摺動して、第3弁部61が第3ポート58を閉止すると同時に、第4弁部62が第4ポート59を開成すると共に、第1弁部60が、供給ポート55と第1ポート56とを連通させる。このため、作動油は、供給ポート55、第1ポート56、第1油圧通路41を通って進角側油圧室32内に供給されると共に、遅角側油圧室33内の作動油が第2油圧通路42、第2ポート57、第4ポート59、第2ドレン通路44bを通ってオイルパン46に排出され、遅角側油圧室33が低圧になる。
【0047】
このため、回転部材3は、ベーン28a〜28dを介して他方向へ最大に回転し、これによって、カムスプロケット1とカムシャフト2とは他方側へ相対回動して位相が変化し、この結果、吸気バルブの開時期が早くなり(進角され)、排気バルブとのオーバーラップが大きくなる。
【0048】
前記コントローラ48は、第1弁部60が供給ポート55を閉止し、かつ、第3弁部61が第3ポート58を閉止し、かつ、第4弁部62が第4ポート59を閉止する位置となるデューティ比をベースデューティ比BASEDTYとする一方、クランク角センサ103及びカムセンサ104からの信号に基づいて検出されるカムスプロケット1とカムシャフト2との相対回動位置(回転位相)と、運転状態に応じて設定した前記相対回動位置(回転位相)の目標値(目標進角値)とを一致させるためのフィードバック補正分UDTYを後述するようにスライディングモード制御によって設定し、前記ベースデューティ比BASEDTYとフィードバック補正分UDTYとの加算結果を最終的なデューティ比VTCDTYとし、該デューティ比VTCDTYの制御信号を電磁アクチュエータ54に出力するようにしてある。なお、前記ベースデューティ比BASEDTYは、供給ポート55,第3ポート58,第4ポート59が共に閉止され、いずれの油圧室32,33でも油の給排が行われないデューティ比範囲の略中央値(例えば50%)に設定されている。
【0049】
つまり、前記相対回動位置(回転位相)を遅角方向へ変化させる必要がある場合には、前記フィードバック補正分UDTYによりデューティ比が減少され、オイルポンプ47から圧送された作動油が遅角側油圧室33に供給されると共に、進角側油圧室32内の作動油がオイルパン46内に排出されるようになり、逆に、前記相対回動位置(回転位相)を進角方向へ変化させる必要がある場合には、前記フィードバック補正分UDTYによりデューティ比が増大され、作動油が進角側油圧室32内に供給されると共に、遅角側油圧室33内の作動油がオイルパン46に排出されるようになる。そして、前記相対回動位置(回転位相)を現状の状態に保持する場合には、前記フィードバック補正分UDTYの絶対値が減ることで、ベースデューティ比付近のデューティ比に戻るよう制御され、供給ポート55,第3ポート58,第4ポート59の閉止(油圧の給排の停止)により各油圧室32,33の内圧を保持するように制御される。
【0050】
ここで、前記フィードバック補正分UDTYが、スライディングモード制御により、以下のように算出される。なお、以下では、前記検出されるカムスプロケット1とカムシャフト2との相対回動位置(回転位相)をバルブタイミング制御装置(VTC)の実角度、その目標値をVTCの目標角度として説明する。
【0051】
1.数学モデルの算出
スライディングモード制御では、制御対象の数学モデルによりコントローラのパラメータを決定していくので、最初にVTCの数学モデルを算出する。
【0052】
該数学モデルの求め方は、運動方程式を立てる、システムの同定より求めるなどの方法があるが、ここでは、システム同定を利用した。
入力u(k):デューティ、出力y(k):VTCの実角度としたときのシステム同定の結果、次の伝達関数が得られた。
【0053】
G(s)=b/(s2+a2・s+a1)
2.伝達関数の簡素化
システム同定で求めたモデルは、高次モデルの可能性があるのと、コントロ−ラの構成を簡素化するため、伝達関数の簡素化を行なう。
【0054】
G(s)=b/[s(s+a2)]……(2.1)
3.状態方程式の算出
求めた伝達関数よりVTCの微分方程式は、以下のように与えられる。但し、x:VTCの実角度、u:入力(デューティ)
【0055】
【数1】
状態方程式は、
【0056】
【数2】
とおけるので、微分方程式(3.1)を(3.2)に代入すると、以下のようになる。
【0057】
【数3】
4.切換関数の設計
スライディングモード制御は、システムの状態により、フィードバックゲインを切り換えるので、この切換関数Sを以下のように置く。
【0058】
【数4】
切換関数のパラメータによりスライディングモードが発生しない場合があるため、切換関数の設計は非常に重要である。設計方法は、主に以下のような方法がある。
【0059】
▲1▼極配置法を用いた設計法
▲2▼最適切換超平面の設計法
▲3▼システムの零点を用いた設計法
▲4▼周波数整形による超平面の設計法
α1,α2を上記の設計法を適用して求め、α1:α2=γ:1が成立するγを求めると、以下のようになる。
【0060】
【数5】
しかし、上記のように、通常の教科書とおりに設計された切換関数では、制御対象の実際の位置つまりVTCの実角度xの関数としているため、バルブタイミング制御装置に対しては、以下のように不適となる。
【0061】
まず、γxの項については、VTCの目標角度が0°以外の場合、常に正の値がついてしまい、目標角度と実角度とに、無関係な値となるため、VTCが目標角度に収束しない。
【0062】
また、dx/dtの項については、電磁切換弁が不感帯にあるときには、VTCが動作しないため、実速度dx/dtは変化せず、微小角度だけ動作させたい場合には、応答性が悪い。
【0063】
なお、教科書とおりの設計では、エラー量の積分項も付加することが推奨されているが、カムシャフトが目標角度にされたときに、該エラー量の積分項が0でない値で残されることとなり、目標角度への収束を妨げるように機能してしまう。
【0064】
そこで、切換関数Sを以下のようなエラー量の関数として設定する。
【0065】
【数6】
ここで、該切換関数の設計には、▲3▼のシステムの零点を用いた設計法を利用した。該システムの零点は、(S,A,B)の零点を複素平面上左半面に設定する手法である(S:切換関数、A,B:(3.2)式の定数)。
【0066】
5.スライディング条件の算出
スライディングが成立する最も単純な条件は、S・dS/dt<0である。
Sが減少していくときのみ、上記条件が成立する。Sは、エラーとエラーの微分値を変数としているので、上記条件成立時はエラーが減少し、目標値に収束していくことを意味する。
【0067】
最初にSの展開に必要な式を求める。
制御量uを以下のようにおく。
【0068】
【数7】
これを(3・1)式に代入すると、
【0069】
【数8】
次にハットuについて展開する。
【0070】
ハットuは、スライディングしているときの入力なので、S=dS/dt=0である。
【0071】
【数9】
bu=ハットuとすると、
【0072】
【数10】
スライディングする条件S・dS/dt<0について考える。
【0073】
【数11】
(5・2),(5・3)式より、
【0074】
【数12】
したがって、kを正の値にとれば、スライディングが成立する。
【0075】
6.制御量演算式の設計
制御量(フィードバック補正量)uは、式(5.1),(5.3)より、以下のようになる。
【0076】
【数13】
VTCの伝達関数を簡素化した(2.1)式を用いると、状態方程式は以下のようにおける。
【0077】
【数14】
(6.2)の状態方程式を用いると、(6.1)式は、以下のようになる。
【0078】
【数15】
ここで、α=b−1(a−γ)、k’=b−1kとおくと、
【0079】
【数16】
この式は、切換線S=0上をスライディングしながら動くことを保証する式である。
【0080】
しかし、このように(教科書とおりに)設計された制御量の式では、線形項α・dx/dtについても、不感帯にあるときに油の給排が行なわれないため、動作速度dx/dt=0→線形項=0となって有効に機能しない。
【0081】
そこで、本発明では、不感帯に入ったときでも線形項が有効に機能するように、以下のような処理を行なう。
即ち、上記の制御量uの式に、β・S(βは定数)を加える。ここで、切換線S=0上をスライディングしているときは、β・S≒0であるので、β・Sを制御量uに加算してもスライディングに何ら影響はない。
【0082】
【数17】
ここで、β’=βγ、α’=α+βとおくと、
【0083】
【数18】
この式は、
【0084】
【数19】
の形となる。
【0085】
このように、上記の加算処理を行なった結果、制御量の線形項にVTCのエラー量(PERR)が含まれることとなり、これにより、動作不感帯に入ったときでも0でない線形項によって切換線への移動速度が適度に与えられ、切換線上での良好なスライディングも確保されるので、目標角度へ応答性よく収束させることができる。
【0086】
なお、c、dの係数は、通常の線形制御系の設計(応答性、安定性より決定)を用いて決める。例えば、cは、実際のバルブタイミング制御装置の90%応答時間及び行き過ぎ量から決定できる。係数dも、大きすぎると目標角度に収束せず、ハンチングが発生するので、発散しないように適度の値に設定する。
【0087】
Kは、正の値を設定する。但し、大きすぎるとハンチングの原因になるので、ハンチングが発生しない最大の値を設定する。
7.チャタリング防止の設計
非線形項UnL=−k・S/|S|=−ksgn(S)をデジタル制御器で用いると、サンプリング周期を無限小にできないため、切換面を滑らず、その近傍でチャタリングを起こす。
【0088】
そこで、飽和関数、平滑関数等を用いてチャタリングの低減を行なう。これらの関数を図示すると、図7に示すようになる。
いずれを使用してもよいが、平滑関数は、飽和関数に比較して演算式が簡単であるので(条件分岐がない)、使用しやすい。
【0089】
図8は、上記のように設計されたスライディングモード制御を適用した前記コントローラ48による電磁アクチュエータ54のデューティ制御の様子を示すブロック図である。
【0090】
VTC目標角度VTCTRGとVTC実角度VTCNOWとの偏差であるエラー量PERRを算出し、該エラー量PERRにP分ゲインcを乗じた比例分制御量UPと、VTC実角度VTCNOWの微分値であるVTC実速度UNに速度ゲインdを乗じた速度制御量UN’を加算して線形項制御量ULを算出する。
【0091】
また、前記エラー量PERRに傾きγを乗じた値と、エラー量PERRの微分値d(PERR)/dtとを加算して、切換関数Sを算出し、該切換関数Sを用いた平滑関数−kS(|S|+δ)として非線形項制御量UNLを算出する。
【0092】
前記線形項制御量ULは、制御系(VTC)の状態を切換線(S=0)に近づける速さを調整する役割を有し、非線形項制御量UNLは、切換線上に沿ったスライディングモードを生じさせる役割を有する。
【0093】
そして、前記線形項制御量ULと、非線形項制御量UNLとを加算して、制御量(フィードバック補正分)UDTYを算出し、該フィードバック補正分UDTYを、前記不感帯中立位置相当のベースデューティ比BASEDTYと加算して該加算結果を最終的なデューティ比VTCDTYとして出力する。
【0094】
このように、スライディング制御によってフィードバック補正量を算出して、予め設定された切換線上に制御系の状態を導くようにフィードバックゲインの切換が行なわれるので、油温や油圧などの外乱による影響を受けにくく、ロバスト性の高い制御を行うことができる(図9参照)。
【0095】
また、特に、制御量の線形項をエラー量の関数として設定することにより、前記切換弁の不感帯を乗り越えるための複雑なディザー制御が不要若しくは依存率を減少させてマッチングを簡略化でき、ROMやRAMの容量も節約できる。
【0096】
また、前記不感帯の影響が低減するため、切換弁の不感帯幅の寸法公差が緩められ、加工コストを軽減できる。
また、前記実施の形態では、線形項を前記エラー量に比例した項に加えて、VTCの動作速度に比例した項を設けて設定したため、動作不感帯から外れたときには該動作速度に比例する項による切換線への移動速度調整機能も加わって、より適切な移動速度に調整され、応答性がより向上する。
【0097】
しかし、前記制御量の線形項を、エラー量に比例する項のみで設定した場合でも、動作不感帯に入ったときのみならず、動作不感帯から外れたときでも切換線への移動速度が適度に与えられる機能を有するので、スライディングモード制御を実現することができ、この場合は動作速度に比例する項を省略したことにより、制御(演算)が簡易となってプログラム容量を節約できる(図10参照)。
【0098】
なお、本発明は、前記ベーン式の油圧アクチュエータを用いたVTCに限らず、例えば、リニア式の油圧アクチュエータを用いて直線運動を回転運動に変換してカムシャフトの回転位相を可変するようなVTCにも適用できることは勿論であり、動作不感帯を有する制御対象であれば油圧制御式に限るものでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態におけるバルブタイミング制御機構を示す断面図。
【図2】図1のB−B断面図。
【図3】上記バルブタイミング制御機構の分解斜視図。
【図4】上記バルブタイミング制御機構における電磁切換弁を示す縦断面図。
【図5】上記バルブタイミング制御機構における電磁切換弁を示す縦断面図。
【図6】上記バルブタイミング制御機構における電磁切換弁を示す縦断面図。
【図7】スライディングモード制御の非線形項制御量に使用される関数の形態を示す図。
【図8】上記バルブタイミング制御機構の制御ブロック図。
【図9】上記バルブタイミング制御機構のスライディングモード制御時の目標角度への収束の様子を示すタイムチャート。
【図10】別の実施の形態におけるバルブタイミング制御機構の制御ブロック図。
【符号の説明】
2…カムシャフト
4…油圧回路
32…進角側油圧室
33…遅角側油圧室
45…電磁切換弁
47…オイルポンプ
53…スプール弁体
101…回転センサ
102…エアフローメータ
103…クランク角センサ
104…カムセンサ[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to an apparatus for performing sliding mode control on a controlled object having an operation dead band with respect to a controlled variable such as a hydraulic control system.
[0002]
[Prior art]
Conventionally, as a valve timing control device configured to continuously and variably control the rotational phase of a camshaft with respect to a crankshaft of an internal combustion engine by hydraulic control using a switching valve, a vane type valve as disclosed in JP-A-10-141022 There is a timing control device.
[0003]
In this structure, a concave portion is formed on the inner peripheral surface of a cylindrical housing fixed to the cam sprocket, while a vane portion of the impeller fixed to the camshaft is accommodated in the concave portion. The camshaft can be rotated relative to the cam sprocket within a range in which the wing portion can move.
[0004]
And the said wing | blade part hold | maintains the said wing | blade part in the intermediate position of the said recessed part by supplying and discharging oil relatively with respect to a pair of hydraulic chamber formed by dividing the said recessed part into the front and back of a rotation direction. When the hydraulic pressure in the pair of hydraulic chambers is adjusted to a hydraulic pressure at which a target rotational phase is obtained, the hydraulic passage is closed by a switching valve and the oil pressure of the pair of hydraulic chambers is adjusted. It is configured to stop supply and discharge.
[0005]
[Problems to be solved by the invention]
By the way, in the hydraulic control system as described above, the hydraulic passage for supplying and discharging oil in the hydraulic chamber is closed by a switching valve so as to prevent oil leakage from the hydraulic chamber due to the reaction force from the intake / exhaust valves in a steady state. The closing margin of the valve body of the switching valve (spool valve) is set large. For this reason, the amount of oil in the hydraulic chamber and thus the rotational phase of the camshaft to be controlled has an operation dead zone with respect to the control amount of the switching valve (duty ratio or the like in the electromagnetic drive type).
[0006]
As a control method of the camshaft rotational phase, PID control or the like is generally employed, but it is difficult to perform feedback control with good response to the dead zone only by the PID control. For this reason, some dithers are added to perform dither control separately from PID. However, it is necessary to perform addition determination for dithers based on the amount of error, which is complicated control, and ROM or RAM In order to secure capacity and control accuracy by reducing the variation of the dead zone width for each component, it is necessary to increase the processing accuracy of the component and increase the processing cost.
[0007]
In order to execute the PID control with high responsiveness, it is desirable to variably set the feedback gain because the viscosity of the oil changes according to the oil temperature and oil pressure. However, it is not easy to match the settings.
[0008]
On the other hand, in recent years, sliding mode control has attracted attention as feedback control with high robustness and little influence on disturbance.
Therefore, it is conceivable to apply sliding mode control to the hydraulic control type valve timing control device, and when sliding mode control is designed according to the textbook, the influence of disturbances such as changes in the oil temperature and hydraulic pressure is suppressed. However, it has been found that it does not function effectively for the dead zone and does not replace or assist the dither control.
[0009]
The present invention has been made by paying attention to such a conventional problem, and is a robust device that suppresses a decrease in responsiveness due to the dead zone with respect to a control target having an operation dead zone with respect to a control amount of a hydraulic control system or the like. The purpose is to enable high sliding mode control.
[0010]
[Means for Solving the Problems]
For this reason, the invention according to
A device for setting a feedback correction amount of a control amount of a variable valve mechanism whose valve characteristics are variably controlled by adding a linear term and a nonlinear term, and calculating the nonlinear term by sliding mode control,
The linear term for the feedback correction is the control target that determines the valve characteristics.It is set as a function of the deviation between the target position and the actual position.
[0011]
According to the invention of
[0012]
As a result, even when the operation dead zone is entered and the actual position of the controlled object does not change, there is a deviation (≠ 0) between the target position and the actual position. Therefore, the linear term set as a function of the deviation The moving speed to the switching line for switching the feedback gain is appropriately given, so that the target position can be converged with good responsiveness.
[0013]
The invention according to
SaidThe variable valve mechanismIt is a hydraulic control system.
According to the invention of
The sliding mode control according to the present invention is applied to the hydraulic control system.
[0014]
As a result, in the hydraulic control system having a large operation dead zone due to the switching valve or the like, control with good responsiveness that suppresses the influence of the dead zone is executed.
The invention according to
The variable valve mechanism isThe configuration is such that the rotational phase of the camshaft with respect to the crankshaft is continuously variably controlled by hydraulic control, and is controlled by selectively controlling the supply and discharge of oil to and from the hydraulic actuator that is hydraulically controlled. It is a valve timing control device for an internal combustion engine.
[0015]
According to the invention of
The sliding mode control according to the present invention is applied to the valve timing control device for an internal combustion engine having the above configuration.
[0016]
As a result, in the valve timing control device for a hydraulically controlled internal combustion engine having a large operation dead zone due to the switching valve, control with good responsiveness, in which the influence of the dead zone is suppressed, is executed.
[0017]
The invention according to
SaidFeedback correctionThe linear term is set by adding a term proportional to the deviation between the target position of the controlled object and the actual position and a term proportional to the operating speed of the controlled object.
[0018]
According to the invention of
The linear term of the control amount in the sliding mode control is set by adding a term proportional to the deviation between the target position of the control target and the actual position and a term proportional to the operation speed of the control target.
[0019]
As a result, the term proportional to the deviation between the target position to be controlled and the actual position has a function that allows the moving speed to the switching line to be given even when the operation dead zone is entered, and deviates from the operation dead zone. In this case, a function for adjusting the moving speed to the switching line by a term proportional to the operating speed of the controlled object is also added, so that the moving speed is adjusted to a more appropriate speed and the responsiveness is further improved.
[0020]
The invention according to
SaidFeedback correctionThe linear term is set only by a term proportional to the deviation between the target position to be controlled and the actual position.
[0021]
According to the invention of
The linear term of the control amount in the sliding mode control is set only by a term proportional to the deviation between the target position to be controlled and the actual position.
[0022]
Even when the linear term is set only by a term proportional to the deviation between the target position to be controlled and the actual position, the moving speed to the switching line is not only when entering the motion dead zone but also when moving outside the motion dead zone. Since it has an appropriate function, sliding mode control can be realized, and the control (calculation) is simplified by omitting the term proportional to the operation speed of the controlled object (in claim 4). The program capacity can be saved.
[0023]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Embodiments of the present invention will be described below.
FIGS. 1-6 shows the mechanism part of the valve timing control apparatus of the internal combustion engine in embodiment, and shows what was applied to the intake valve side.
[0024]
The valve timing control device shown in the figure is provided so as to be rotatable relative to the cam sprocket 1 (timing sprocket) that is rotationally driven via a timing chain by an engine crankshaft (not shown).
[0025]
The
[0026]
The rotating
[0027]
The
[0028]
Further, the
[0029]
The
[0030]
The
[0031]
The rotating
[0032]
The first to fourth vanes 28a to 28d each have a substantially inverted trapezoidal cross section, and are disposed in the recesses between the
[0033]
The
[0034]
The
[0035]
The
[0036]
The first
[0037]
On the other hand, the second
[0038]
The
[0039]
Specifically, as shown in FIGS. 4 to 6, a
[0040]
The
[0041]
The
[0042]
The
[0043]
The
[0044]
The
For example, when a control signal (OFF signal) with a duty ratio of 0% is output from the
[0045]
Therefore, the internal pressure of the retard side
[0046]
On the other hand, when a control signal (ON signal) with a duty ratio of 100% is output from the
[0047]
For this reason, the rotating
[0048]
The
[0049]
That is, when it is necessary to change the relative rotation position (rotation phase) in the retarding direction, the duty ratio is reduced by the feedback correction UDTY, and the hydraulic oil pumped from the
[0050]
Here, the feedback correction amount UDTY is calculated as follows by sliding mode control. In the following description, the detected relative rotation position (rotation phase) between the
[0051]
1. Mathematical model calculation
In the sliding mode control, the controller parameters are determined by the mathematical model to be controlled. Therefore, the VTC mathematical model is first calculated.
[0052]
The mathematical model can be obtained by, for example, establishing an equation of motion or obtaining the system by identifying the system. Here, system identification is used.
As a result of system identification when input u (k): duty and output y (k): VTC actual angle, the following transfer function was obtained.
[0053]
G (s) = b / (s2+ A2・ S + a1)
2. Simplification of transfer function
The model obtained by system identification may be a higher-order model, and the transfer function is simplified in order to simplify the controller configuration.
[0054]
G (s) = b / [s (s + a2]] …… (2.1)
3. Calculation of equation of state
From the obtained transfer function, the differential equation of VTC is given as follows. Where x: actual angle of VTC, u: input (duty)
[0055]
[Expression 1]
The equation of state is
[0056]
[Expression 2]
Therefore, substituting the differential equation (3.1) into (3.2) gives the following.
[0057]
[Equation 3]
4). Switching function design
In the sliding mode control, the feedback gain is switched depending on the system state, so this switching function S is set as follows.
[0058]
[Expression 4]
Since the sliding mode may not occur depending on the parameters of the switching function, the design of the switching function is very important. There are mainly the following design methods.
[0059]
(1) Design method using pole placement method
(2) Optimum switching hyperplane design method
(3) Design method using zero of system
(4) Hyperplane design method by frequency shaping
α1, Α2Is obtained by applying the above design method, and α1: Α2When γ satisfying γ = 1 is obtained, it is as follows.
[0060]
[Equation 5]
However, as described above, the switching function designed according to a normal textbook is a function of the actual position of the control object, that is, the actual angle x of the VTC. It becomes inappropriate.
[0061]
First, with regard to the term of γx, when the target angle of VTC is other than 0 °, a positive value is always given and becomes an irrelevant value between the target angle and the actual angle, so that VTC does not converge to the target angle.
[0062]
As for the term dx / dt, when the electromagnetic switching valve is in the dead zone, the VTC does not operate, so the actual speed dx / dt does not change, and the response is poor when it is desired to operate only at a minute angle.
[0063]
In addition, in the design according to the textbook, it is recommended to add an integral term for the error amount, but when the camshaft is set to the target angle, the integral term for the error amount is left as a non-zero value. It will function to prevent convergence to the target angle.
[0064]
Therefore, the switching function S is set as a function of the following error amount.
[0065]
[Formula 6]
Here, the design method using the zero of the system of (3) was used for designing the switching function. The zero of the system is a method of setting the zero of (S, A, B) to the left half of the complex plane (S: switching function, A, B: constant of equation (3.2)).
[0066]
5). Calculation of sliding conditions
The simplest condition for achieving sliding is S · dS / dt <0.
The above condition is satisfied only when S decreases. Since S is a variable of the error and the differential value of the error, it means that when the above condition is satisfied, the error decreases and converges to the target value.
[0067]
First, an expression necessary for the expansion of S is obtained.
The control amount u is set as follows.
[0068]
[Expression 7]
Substituting this into equation (3.1),
[0069]
[Equation 8]
Next, the hat u is developed.
[0070]
Since hat u is an input when sliding, S = dS / dt = 0.
[0071]
[Equation 9]
If bu = hat u,
[0072]
[Expression 10]
Consider the sliding condition S · dS / dt <0.
[0073]
## EQU11 ##
From formulas (5.2) and (5.3)
[0074]
[Expression 12]
Therefore, if k is a positive value, sliding is established.
[0075]
6). Control amount calculation formula design
The control amount (feedback correction amount) u is as follows from equations (5.1) and (5.3).
[0076]
[Formula 13]
Using equation (2.1), which simplified the VTC transfer function, the equation of state is as follows.
[0077]
[Expression 14]
Using the state equation of (6.2), the equation (6.1) becomes as follows.
[0078]
[Expression 15]
Where α = b-1(A−γ), k ′ = b-1If k is set,
[0079]
[Expression 16]
This equation is an equation that guarantees movement while sliding on the switching line S = 0.
[0080]
However, in the control amount equation designed in this way (as in the textbook), the linear term α · dx / dt is not supplied or discharged when it is in the dead zone, so that the operation speed dx / dt = Since 0 → linear term = 0, it does not function effectively.
[0081]
Therefore, in the present invention, the following processing is performed so that the linear term functions effectively even when the dead zone is entered.
That is, β · S (β is a constant) is added to the equation of the control amount u. Here, when sliding on the switching line S = 0, since β · S≈0, adding β · S to the control amount u has no effect on the sliding.
[0082]
[Expression 17]
Here, if β ′ = βγ and α ′ = α + β,
[0083]
[Expression 18]
This formula is
[0084]
[Equation 19]
It becomes the form.
[0085]
As described above, as a result of performing the above addition processing, the VTC error amount (PERR) is included in the linear term of the control amount, so that even when the operation dead zone is entered, a linear term that is not 0 leads to the switching line. Is moderately given, and good sliding on the switching line is ensured, so that the target angle can be converged with good responsiveness.
[0086]
The coefficients c and d are determined by using a normal linear control system design (determined from responsiveness and stability). For example, c can be determined from the 90% response time and overshoot of the actual valve timing controller. If the coefficient d is too large, it does not converge to the target angle and hunting occurs. Therefore, the coefficient d is set to an appropriate value so as not to diverge.
[0087]
K is set to a positive value. However, if it is too large, it will cause hunting, so set the maximum value that does not cause hunting.
7). Anti-chattering design
If the non-linear term UnL = −k · S / | S | = −ksgn (S) is used in the digital controller, the sampling period cannot be made infinitely small, so that the switching surface does not slip and chattering occurs in the vicinity thereof.
[0088]
Therefore, chattering is reduced using a saturation function, a smooth function, or the like. These functions are illustrated in FIG.
Any of these may be used, but the smooth function is easy to use because it has a simpler arithmetic expression than the saturation function (no conditional branching).
[0089]
FIG. 8 is a block diagram showing a state of duty control of the
[0090]
An error amount PERR that is a deviation between the VTC target angle VTCTRG and the VTC actual angle VTCNOW is calculated, and a proportional control amount U obtained by multiplying the error amount PERR by a P-component gain c.PVTC actual speed U which is a differential value of VTC actual angle VTCNOWNSpeed control amount U multiplied by speed gain dN′ Is added to the linear term control amount ULIs calculated.
[0091]
Further, a value obtained by multiplying the error amount PERR by a slope γ and a differential value d (PERR) / dt of the error amount PERR is calculated to calculate a switching function S, and a smoothing function using the switching function S− kS (| S | + δ) as a nonlinear term control amount UNLIs calculated.
[0092]
The linear term control amount ULHas a role of adjusting the speed at which the state of the control system (VTC) is brought close to the switching line (S = 0), and the nonlinear term control amount UNLHas a role of generating a sliding mode along the switching line.
[0093]
And the linear term control amount ULAnd the nonlinear term control amount UNLIs added to calculate the control amount (feedback correction amount) UDTY, and the feedback correction amount UDTY is added to the base duty ratio BASEDTY corresponding to the dead zone neutral position, and the addition result is used as the final duty ratio VTCDTY. Output.
[0094]
In this way, the feedback correction amount is calculated by the sliding control, and the feedback gain is switched so as to guide the state of the control system on the preset switching line, so that it is affected by disturbances such as oil temperature and hydraulic pressure. It is difficult to perform control with high robustness (see FIG. 9).
[0095]
In particular, by setting the linear term of the control amount as a function of the error amount, complicated dither control for overcoming the dead zone of the switching valve is unnecessary or the dependency rate can be reduced, and matching can be simplified. RAM capacity can also be saved.
[0096]
In addition, since the influence of the dead zone is reduced, the dimensional tolerance of the dead zone width of the switching valve is relaxed, and the processing cost can be reduced.
Further, in the above embodiment, since the linear term is set by setting a term proportional to the VTC operating speed in addition to the term proportional to the error amount, the term proportional to the operating speed is used when it is out of the operation dead zone. The function of adjusting the moving speed to the switching line is also added to adjust the moving speed to a more appropriate moving speed, and the responsiveness is further improved.
[0097]
However, even when the linear term of the control amount is set only with a term proportional to the error amount, not only when entering the operation dead zone, but also when moving out of the operation dead zone, the moving speed to the switching line is given moderately. Therefore, the sliding mode control can be realized. In this case, by omitting the term proportional to the operation speed, the control (calculation) is simplified and the program capacity can be saved (see FIG. 10). .
[0098]
The present invention is not limited to the VTC using the vane type hydraulic actuator. For example, a VTC that changes the rotational phase of the camshaft by converting linear motion into rotational motion using a linear hydraulic actuator. Needless to say, the present invention is not limited to the hydraulic control type as long as it is a control target having an operation dead zone.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a cross-sectional view showing a valve timing control mechanism in an embodiment.
2 is a cross-sectional view taken along the line BB in FIG.
FIG. 3 is an exploded perspective view of the valve timing control mechanism.
FIG. 4 is a longitudinal sectional view showing an electromagnetic switching valve in the valve timing control mechanism.
FIG. 5 is a longitudinal sectional view showing an electromagnetic switching valve in the valve timing control mechanism.
FIG. 6 is a longitudinal sectional view showing an electromagnetic switching valve in the valve timing control mechanism.
FIG. 7 is a diagram illustrating a form of a function used for a nonlinear term control amount in sliding mode control.
FIG. 8 is a control block diagram of the valve timing control mechanism.
FIG. 9 is a time chart showing how the valve timing control mechanism converges to a target angle during sliding mode control.
FIG. 10 is a control block diagram of a valve timing control mechanism in another embodiment.
[Explanation of symbols]
2 ... Camshaft
4 ... Hydraulic circuit
32 ... Advance side hydraulic chamber
33 ... retarded-side hydraulic chamber
45 ... Electromagnetic switching valve
47 ... Oil pump
53 ... Spool valve body
101 ... Rotation sensor
102 ... Air flow meter
103 ... Crank angle sensor
104: Cam sensor
Claims (5)
前記フィードバック補正分の線形項を、バルブ特性を決定する制御対象の目標の位置と実際の位置との偏差の関数として設定したことを特徴とするスライディングモード制御装置。 A device for setting a feedback correction amount of a control amount of a variable valve mechanism whose valve characteristics are variably controlled by adding a linear term and a non-linear term calculated using sliding mode control,
A sliding mode control apparatus, wherein the linear term for the feedback correction is set as a function of a deviation between a target position to be controlled and a real position for determining valve characteristics .
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31322199A JP3616734B2 (en) | 1999-11-04 | 1999-11-04 | Sliding mode controller |
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DE10054600A DE10054600A1 (en) | 1999-11-04 | 2000-11-03 | Sliding mode control device for internal combustion engine has linear term of control value that is set as function of deviation between target position and actual position of control object |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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