JP3609311B2 - 液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギ評価方法及び装置 - Google Patents

液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギ評価方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギ評価法に関し、特に、IPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギを、IPSセルを用いて評価する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の液晶表示素子(以下、LCD )にはネマチック液晶と薄膜トランジスタ(以下、TFT)とで構成される場合が多く、特にねじれネマチックと呼ばれる液晶配向を利用したモード(以下、TNモード)が主流である。しかし、TNモードLCDは、液晶分子の駆動方向がガラス基板に垂直方向であるため視野角が狭く、液晶の駆動力が印加電界との誘電相互作用であるため応答が遅いといった問題点が指摘されている。視野角の問題点は、従来のTNモードLCDに位相差フィルムを貼付することによっても改善可能であるが、位相差フィルムが高価であるためコスト高になるという欠点がある。
【0003】
そこで、近年、位相差フィルムを用いない視野角改善法として液晶の駆動方向をガラス基板に対しほぼ平行とするイン・プレイン・スイッチング(In−Plain−Switching)モード(以下、IPSモード)が注目されている。IPSモードによれば、特別な処理無しでTNモードLCDよりも遥かに広い視野角化を達成することができる。
【0004】
IPSモードLCDにおいては、基板面内に櫛形の電極を配置し、基板面にほぼ平行方向に電圧を印加することにより、液晶分子を基板面に平行な面内で駆動する。即ち、IPSモードLCDは、液晶分子の光軸方向を印加電圧に応じて基板面内で回転させることにより光透過率を制御する。
【0005】
液晶分子の光軸方向はセル厚方向に一定ではないが、その分布即ち配向状態を決定しているのは、印加電圧の大きさ、液晶の物性値(弾性定数、粘性定数、誘電率等)、画素構造(電極の配置、セルギャップ等)、及び液晶−配向膜界面における液晶分子と配向膜とのアンカリングと呼ばれる相互作用である。
【0006】
現在、液晶を特定の方向に配列させるために、ポリイミド等の配向膜を基板に塗布し、配向膜の表面をナイロン等でできた布でこするラビング処理を行う技術が量産性の点から広く採用されている。アンカリングとは、一般に、液晶分子が配向膜表面上で配向膜がこすられた方向に配向しようとする現象を指す。エネルギ論的には、ラビングによって定まるある特定の方向に液晶分子が向いている状態がエネルギ最低となるような形状を持った界面エネルギが液晶−配向膜界面に発生したことになり、この界面エネルギの異方的な項をアンカリングエネルギと称する。
【0007】
棒状の液晶分子の運動には、重心の並進運動の他に、極角方向と方位角方向に回転する自由度が存在する。LCDでは通常、基板面から立ち上がる回転方向を極角方向、基板面内での回転方向を方位角方向と定義する。アンカリングエネルギにも、この2つの自由度に対応して極角アンカリングエネルギと方位角アンカリングエネルギが存在する。
【0008】
IPSモードLCDでは、基本的に液晶分子が基板面に平行な面内で運動するため、方位角アンカリングエネルギが透過率−印加電圧特性に支配的な影響を与える。そのためLCDの品質管理という点においても、また液晶−基板界面の評価・研究という点においても、このアンカリングエネルギの測定は重要である。
【0009】
従来、方位角アンカリングエネルギは、捩れ配向セルと呼ばれるテストセルを用いて評価されていた。捩れ配向セルとは、液晶分子が基板面に平行に配向しているが、上下基板で配向の方位角が異なるために、上下基板間で液晶が捩れて配向しているセルのことである。方位角アンカリングエネルギは、上下基板でラビング角度を変えてある捩れ角度を持った捩れ配向セルを作製し、実際の液晶配向の捩れ角とラビング角度との差の変化を測定して算出される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、方位角アンカリングエネルギは、ラビング処理の微妙な条件の違いによって変動するものであるため、捩れ配向セルによって評価した方位角アンカリングエネルギは実際のIPSモードセルとは必ずしも一致しない。例えば、捩れ配向セルと実際のIPSモードセルは基板サイズや基板表面の電極パターン等が異なるため、基板エッジや基板表面の凹凸がラビングに与える影響が異なる。しかも、そうしたラビング条件の相違が方位角アンカリングエネルギに与える影響の大きさは、配向膜の材料や硬化条件によっても変わる。このため、IPSモードLCDの開発において、捩れ配向セルを用いて測定した方位角アンカリングエネルギを、IPSモードセルの電気光学特性と直接関係づけて議論することが困難であった。
【0011】
また、IPSモードLCDの製造において、みかけ上は同一の条件でラビング処理がされていても、ラビング機の微妙な調整ずれやラビング布の異常等によって方位角アンカリングエネルギが変化して不良が発生する場合がある。こうした場合に、不良発生前後の方位角アンカリングエネルギの推移を評価できれば工程管理に役立つが、捩れ配向セルはラビング方向の違いから実際のIPSセルに混ぜて定期的に工程に流すことが困難である。このため、捩れ配向セルによって評価した方位角アンカリングエネルギによって、IPSモードLCDの工程管理を行うことも困難であった。
【0012】
本発明は上記の課題を解決するために、実際のIPSモードセルを用いて方位角アンカリングエネルギを評価する方法及び装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1に記載の発明は、対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
(a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向βoptと前記電界強度Eとの数値相関を求め
(b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向βoptと前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
(c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
前記液晶層の誘電率異方性及び捩れ変形の弾性定数をΔε及びK 2 、電界無印加時における前記液晶層の光軸方向と前記電極長手方向とのなす角をβ R 、前記液晶表示素子のセルギャップをd、前記方位角アンカリングエネルギをBとして、電界E印加時における前記液晶層中央の光軸方向と前記電極長手方向とのなす角をβ m が、
【数6】
Figure 0003609311
として表される式を満たし、前記β opt とEとの理論関係式が、
【数7】
Figure 0003609311
で表されることを特徴とする液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギ評価方法である。
【0014】
これにより、IPSモードセルを用いて方位角アンカリングエネルギを評価することができるため、IPSモードセルのデバイス特性と方位角アンカリングエネルギを直接関連づけて議論することが可能となる。
【0015】
た、これにより、液晶の方位角分布を求めることなく方位角アンカリングエネルギを評価することができる。
【0016】
さらに、請求項に記載の発明は、対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
(a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの数値相関を求め
(b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
(c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
前記βoptとEとの理論関係式に基づいて計算したIPSモード液晶表示素子の透過率最大電圧をVmax simとし、光学測定により求めたIPSモード液晶表示素子の透過率最大電圧をVmax expとして、前記βoptとEとの理論関係式を、同式中の全ての電界強度EにVmax sim/Vmax expを掛け合わせることにより補正することを特徴とする。これにより、より正確な方位角アンカリングエネルギの評価を行うことができる。
【0017】
またさらに、請求項に記載の発明は、対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
(a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの数値相関を求め
(b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
(c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
(i)所定の電界Eを印加した前記液晶表示素子を直交ニコル状態の偏光子及び検光子によって挟んで光透過率を測定し、前記偏光子及び検光子を前記液晶表示素子に対して相対的に回転させた時に光透過率が最小となる方向を前記みかけの光軸方向βoptとし、(ii)前記(i)の測定を、電界強度Eを変化させて繰り返すことにより前記βoptとEとの数値相関を求めることを特徴とする。
【0018】
加えて、請求項に記載の発明は、対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
(a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの数値相関を求め
(b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
(c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
(i)所定の電界Eを印加した前記液晶表示素子を平行ニコル状態の偏光子及び検光子によって挟んで光透過率を測定し、前記偏光子及び検光子を前記液晶表示素子に対して相対的に回転させた時に光透過率が最大となる方向をβmaxとして、前記みかけの光軸方向βoptをβmax−45°とし、(ii)前記(i)の測定を、電界強度Eを変化させて繰り返すことにより前記βoptとEとの数値相関を求めることを特徴とする。請求項又はに記載の発明によれば、光透過率の測定誤差の影響を最小限に抑制して、正確な方位角アンカリングエネルギの評価を行うことができる。
【0019】
また、請求項に記載の発明は、対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
(a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの数値相関を求め
(b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
(c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
(i)所定の電界Eを印加した前記液晶表示素子を、直交ニコル状態の偏光子及び検光子によって偏光子の透過軸が前記電極に対して所定の角度βpとなるように挟んで光透過率を測定し、該光透過率値Tから前記みかけの光軸方向βoptを算出し、(ii)前記(i)の測定を、電界強度Eを変化させて繰り返すことにより前記βoptとEとの数値相関を求めることを特徴とする。
【0020】
さらに、請求項に記載の発明は、光透過率測定を行う光波長をλ、光波長λにおける前記液晶層の複屈折率をΔn、前記液晶表示素子のセルギャップをdとして、
【数8】
Figure 0003609311
して表される式によって前記みかけの光軸方向βoptを算出することを特徴とする。
【0021】
またさらに、請求項に記載の発明は、前記電界強度Eを変化させた時の光透過率Tの最大値をTmaxとして、
【数9】
Figure 0003609311
として表される式によって前記みかけの光軸方向βoptを算出することを特徴とする。
【0022】
請求項乃至に記載の発明によれば、偏光子及び検光子をIPSモードセルに対して回転させる必要がないため、簡易な光学系によって方位角アンカリングエネルギの評価を行うことができる。
【0023】
加えて、請求項に記載の発明は、対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
(a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの数値相関を求め
(b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
(c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
(i)所定の電界Eを印加した前記液晶表示素子を直交ニコル状態の偏光子及び検光子によって挟み、前記偏光子及び検光子を前記液晶表示素子に対して相対的に角度αだけ回転させて光透過率Tを測定し、複数の角度αについての光透過率Tから、
【数10】
Figure 0003609311
(Aは、定数)
として表される式によって前記みかけの光軸方向βoptを算出し、(ii)前記(i)の測定を、電界強度Eを変化させて繰り返すことにより前記βoptとEとの数値相関を求めることを特徴とする。この方法では、偏光子及び検光子を印加電圧に関係無く一定角度回転させれば良いため、簡易な方法により方位角アンカリングエネルギを評価することができる。
【0024】
また、請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれか1項に記載した方位角アンカリングエネルギ評価方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0025】
また、請求項10に記載の発明は、単色光源と、直交又は平行ニコル状態に配置された偏光子及び検光子と、前記偏光子及び検光子の間に液晶表示素子を保持するための保持機構と、前記単色光源から発して前記偏光子、液晶表示素子及び検光子を通過した光を検出する光検出器を備え、請求項1乃至9のいずれか1項に記載した方位角アンカリングエネルギ評価方法を実行することを特徴とする方位角アンカリングエネルギ評価装置である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、IPSモードセルの構造を示す模式図である。表面に配向膜を形成した下側基板4及び上側基板5の間に、液晶分子1が挟持されている。下側基板4及び上側基板5の表面は同じ方向にラビングされており、液晶分子1は基板に平行方向にホモジニアス配向している。また、下側基板4には、信号電極2及び共通電極3が平行に形成されている。
【0027】
図2に模式的に示すように、電圧を印加していない時、液晶分子1は信号電極2と共通電極3の間にラビング方向を向くように配向している。ラビング方向は、電極2及び3に平行とせずに電極長手方向に対してある角度β(但しβは0〜90°)を持つように設定される。信号電極2及び共通電極3の間に電圧を印加されると、電極長手方向に垂直な電界Eが発生し、液晶分子1には図の矢印方向に回転しようとする力が働く。この結果、液晶分子1の光軸が印加電圧に応じて回転し、IPSモードセルの透過率が印加電圧によって変化する。尚、電極長手方向に対してある角度βをもつ方向にラビングを行うのは、電極間に電圧が印加された時に液晶が回転する方向を一義に決定するためである。電極間の電界方向とラビング方向が直交していると、左回りと右回りの液晶分子の回転がエネルギ的に等価となり、セル内に液晶分子の回転方向が異なる2種類の領域ができてしまう。
【0028】
ここで、液晶分子1の回転角は、セル厚方向に一定ではなく、セル中央付近の液晶分子の回転角βが最も大きく、基板表面近傍の液晶分子1の回転角βが最も小さくなる。これは、基板表面近傍の液晶分子1は配向膜からラビング方向に束縛(アンカリング)する力を受けているためである。したがって、液晶分子1を層全体として見た時のみかけ上の光軸方向βopt(以下、「みかけの光軸方向」と称す)はβとβの間の角度となり、IPSモードセルの透過率はこの「みかけの光軸方向」に依存すると考えることができる。
【0029】
本発明は、IPSモードセルのみかけの光軸方向βoptが方位角アンカリングエネルギに依存することに着目し、
(a)セル中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づいて、液晶層のみかけの光軸方向βoptと電界強度Eとの数値相関を確認し
(b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギ項を繰り込んで導いたみかけの光軸方向βoptと電界強度Eとの関係式を、数値相関と比較し、
(c)上記の関係式が数値相関に最も良く適合するように、方位角アンカリングエネルギ項を決定することにより方位角アンカリングエネルギを評価するものである。
【0030】
この評価方法によれば、IPSモードセルの方位角アンカリングエネルギを、捩れ配向セルを用いることなく直接評価することが可能となる。したがって 、IPSモードセルのデバイス特性を、得られた方位角アンカリングエネルギと直接関係づけて議論することが可能となる。
【0031】
まず、IPSモードセルにおけるみかけの光軸方向βoptと電界強度Eの理論的な関係式について説明する。電圧を印加した時の液晶の配向状態は、連続体理論によって計算可能である。印加電圧によって生じる電界の強度Eがセル厚方向に一定であると仮定すると、液晶の自由エネルギ密度fのセル厚z方向の分布は以下の式1で表される。ここでKは液晶の捩れ変形の弾性定数、βは液晶分子1の方位角、Δεは液晶分子1の誘電率異方性である。尚、電界強度Eは、印加電圧を電極間の距離で除することによって算出することができる。また、本明細書において、方位角βは電極長手方向を基準とし、絶対値が0°〜(90°+β)の範囲に納まるように回転方向の正負を規定する。尚、ここでβはラビング方向を表す。
【数11】
Figure 0003609311
Figure 0003609311
【0032】
また、液晶分子1と基板の界面における界面エネルギγは、以下の式2で表される。ここで、γは電圧無印加時の界面エネルギ、Bは方位角アンカリングエネルギ定数、βは基板表面における液晶分子1の方位角、βはラビング方向の角度である。
【数12】
Figure 0003609311
Figure 0003609311
【0033】
したがって、式1をセル厚z方向に積分し、式2の方位角アンカリングエネルギを加えることによってセルの単位面積あたりのエネルギを算出することができ、この単位面積あたりのエネルギを最小にする液晶分子の方位角の分布β(z)を計算することにより、ある電界強度Eにおけるみかけの光軸方向βoptを計算することができる。
【0034】
ここで、上下基板で同じ界面エネルギγを持つものとすると、前述の通り、上下基板面(z=0、d)での方位角βが最小で、セル中央(z=d/2)での方位角βが最大となるような捩れ変形が発生する。尚、dはセルギャップである。
【0035】
この点を考慮し、印加電界強度Eが小さく、液晶方位角βの変化が小さいと仮定すると、単位面積あたりのエネルギを最小にする方位角分布β(z)の形は、z=0〜d/2の範囲において以下の式3のようになる。
【数13】
Figure 0003609311
Figure 0003609311
【0036】
z=d/2〜dの範囲においては、対称性からのz=0〜d/2における液晶方位角分布β(z)をz=d/2で折り返した形になる。従って、セル中央d/2において液晶方位角分布β(z)のセル厚z方向の微係数は0になる。この条件と界面でのトルクバランスの式4を用いて式3からβを消去すると、セル中央での方位角βの電界強度Eとの関係を示す式5が得られる。
【数14】
Figure 0003609311
Figure 0003609311
【数15】
Figure 0003609311
Figure 0003609311
【0037】
一方、このセル中央での方位角βは、Eが小さく液晶の配向変化が小さい範囲では、みかけの光軸方向βoptと近似的に以下の式6の関係にある。
【数16】
Figure 0003609311
Figure 0003609311
【0038】
式5及び式6を組み合わせてβを消去することにより、みかけの光軸方向βoptと電界強度Eの関係式を得ることができる。この理論関係式において、方位角アンカリングエネルギ定数Bを除く、ラビング方向β、液晶1の誘電率異方性Δε、捩れ変形の弾性定数K、及びセルギャップdは、一般に正確な数値を得ることができる。したがって、測定から得られるβoptとEの数値相関に上記理論関係式をフィッティングすることによって、方位角アンカリングエネルギBを決定することができる。この理論式を用いた評価法によれば、方位角の分布β(z)を計算する必要がないため、簡便で高速な方位角アンカリングエネルギ評価が可能となる。
【0039】
尚、みかけの光軸方向βoptを表す式6は、印加電界強度Eが小さく、液晶方位角βの変化量が小さいという仮定のもとに成り立っているため、みかけの光軸方向βoptの変化がラビング方向から10°以内、より好ましくは5°以内の測定値に対してフィッティングを行って方位角アンカリングエネルギ定数Bを決定することが望ましい。
【0040】
また、より正確な評価を行うために、上記βoptとEの理論関係式に代えて他の理論式を用いても良い。例えば、上記理論式において液晶層の自由エネルギ密度fは式1から導かれているが、図4に示すように、この自由エネルギ密度からシミュレートした透過率 − 印加電圧曲線の透過率最大を与える印加電圧は、実測の透過率最大を与える印加電圧より小さくなる。これは印加電圧によって生じる電界の強度がセル厚方向で一定であるとした仮定が厳密には成立しておらず、実際に液晶にかかっている電界強度Eが印加電圧から算出される電界強度より小さいことを示している。
【0041】
そこで、印加電圧から算出される電界強度に定数δを掛けて補正を行うことにより、より精度の高い方位角アンカリングエネルギ評価が可能となる。定数δは以下の式7で与えられ、実用的なIPS構造の範囲では 0.2〜0.8程度 の値となる。
【数17】
Figure 0003609311
Figure 0003609311
【0042】
次に、理論関係式と光学測定値との比較から方位角アンカリングエネルギ定数Bを評価する具体的な方法及び装置について説明する。
実施の形態1.
図3は、方位角アンカリングエネルギBを評価する評価装置を示す概略図である。図3の装置は、白色光源22及びバンドパスフィルタ24からなる単色光源と、直交ニコル状態に配置された偏光子26及び検光子28と、偏光子26及び検光子28の間にIPSモードセル20を保持する保持機構と、光源22から発してバンドパスフィルタ24、偏光子26、IPSモードセル20及び検光子28を通過した光を検出する光検出器30を備えている。白色光源22とバンドパスフィルタ24の組み合わせの代わりに、レーザ光源等の単色光源を備えていても構わない。また、図3の装置は、直交ニコル状態の偏光子26及び検光子28と設置したIPSモードセル20とが装置の光軸を中心に相対的に回転できるような回転機構を備えている。
【0043】
IPSモードパネル20のみかけの光軸方向βoptは、直交ニコル状態の偏光子26及び検光子28を、IPSモードセル20に対して相対的に回転させた時の光検出器30における光強度が最小となる回転角度(=消光位の回転角度)として測定することができる。
【0044】
また、この方法に代えて、偏光子及び検光子28を平行ニコル状態としてIPSモードセル20に対して相対的に回転させた時の光検出器30における光透過率が最大となる方向をβmaxとして、みかけの光軸方向βoptをβmax−45°としても良い。
【0045】
ここで、偏光子及び検光子の回転角度(以下βと称す)は、例えば、IPSモードセル20の信号電極の長手方向に対する偏光子26の透過軸の回転角度を指し、偏光子26の透過軸が信号電極2の長手方向と平行である時を0度とする。但し、この回転角が90度毎に光学的に等価な状態となるので、偏光子26の透過軸が信号電極2と直交する時を0度としても良い。また、偏光子26の代わりに検光子28の透過軸を基準に回転角度を規定しても良い。右回り左回りのいずれを正とするかは、液晶方位角βに合わせる。尚、この回転角度の考え方は、以下に述べる他の実施の形態においても同様である。
【0046】
IPSモードセル20への印加電圧を順次変えながら上記測定を繰り返すことによって、みかけの光軸方向βoptと電界強度Eの数値上の相関関係を測定することができる。このβoptとEの数値相関に対して、方位角アンカリングエネルギ定数Bをパラメータとして前述の式5及び式6から得られるβoptとEの理論関係式をフィッティングすれば、方位角アンカリングエネルギ定数Bを決定することができる。
【0047】
この評価方法においては、測定した光透過率そのものではなくその最小となる角度からβoptを求めるため、βoptの測定値に対する光透過率の測定誤差の影響を最小限に抑制することができる。したがって、精度よく方位角アンカリングエネルギ定数Bを決定することができる。
【0048】
実施の形態2.
IPSモードセルを角度βで設置された直交ニコル状態の偏光子及び検光子によって挟んだ場合の光透過率Tは以下の式8で表される。
【数18】
Figure 0003609311
Figure 0003609311
【0049】
したがって、測定する光波長λにおけるIPSモードセル20内の液晶層の複屈折率Δn及びセルギャップdが既知であれば、光透過率Tそのものからβoptを求めることができる。例えば、実施の形態1に示した装置において、直交ニコル状態の偏光子26及び検光子28を、偏光子26の透過軸がIPSモードセル20の信号電極2に平行又は直交となる配置で固定して光透過率Tを測定し、測定値を式7に代入することによってβoptを求める。
【0050】
上記測定をIPSモードセル20への印加電圧を変えながら繰り返すことによって、みかけの光軸方向βoptと電界強度Eの数値上の相関関係を測定することができる。このβoptとEの数値相関に対して、前述のβoptとEの理論関係式をフィッティングすれば、方位角アンカリングエネルギ定数Bを決定することができる。
【0051】
この方法によれば、偏光子26及び検光子28をIPSモードセル20に対して回転させる必要がないため、簡易な測定装置によって方位角アンカリングエネルギを評価することができる。
【0052】
実施の形態3.
また、式8においてβ−βopt=45°の時に光透過率は最大(=Tmax)となるので、以下の式9からβoptを求めることも可能である。
【数19】
Figure 0003609311
Figure 0003609311
【0053】
したがって、実施の形態2と同様の測定を、印加電圧を変えながら光透過率Tが最大(=Tmax)となるまで繰り返し、各印加電圧における光透過率T及びTmaxを式9に代入することにより、βoptと電界強度Eの数値相関を求めることができる。このβoptとEの数値相関に対して、前述のβoptとEの理論関係式をフィッティングすれば、方位角アンカリングエネルギ定数Bを決定することができる。
【0054】
この方法によれば、液晶の複屈折率Δnが未知の場合であっても、実施の形態2と同様の測定系によって方位角アンカリングエネルギ定数Bを評価することができる。但し、透過率最大となるような高い電界強度EにおいてはΔn値がみかけ上変化するため、そのΔnの変化分の誤差は評価結果に含まれることになる。この変化分を別途見積もることにより、より正確な方位角アンカリングエネルギBの評価が可能である。
【0055】
実施の形態4.
また、偏光子26及び検光子28のIPSモードパネル20に対する相対的な回転角度をαとすると、光透過率はAを定数として以下の式10によっても表すことができる。
【数20】
Figure 0003609311
Figure 0003609311
【0056】
したがって、透過率Tの回転角度αへの依存性を測定し、βoptをパラメータとして式9をフィッティングすることによってもβoptを求めることができる。この測定をIPSモードセル20への印加電圧を変えながら繰り返してβoptとEの数値上の相関関係を測定し、前述のβoptとEの理論関係式をフィッティングすれば、方位角アンカリングエネルギ定数Bを決定することができる。
【0057】
この方法によれば、偏光子26及び検光子28のIPSモードセル20に対する回転角度について光透過率が最小となる位置を検出する必要がないため、印加電圧に関わらず一定の角度まで回転させれば良く、実施の形態1よりも簡易な機構によって方位角アンカリングエネルギ定数Bを評価することができる。
【0058】
以上の実施の形態1乃至4に説明した方位角アンカリングエネルギ評価の評価手順はコンピュータプログラム化することが可能であり、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体及び適当な制御システムを図3に示した測定系に組み込むことにより、方位角アンカリングエネルギを自動測定可能な評価装置を構成することができる。
【0059】
また、図3に示した測定系の各部材の殆どは、一般的な液晶パネル評価装置や偏光解析装置に常備されているので、これらの装置に不足部材を補い、本発明の方位角アンカリングエネルギ評価法の手順を記録した記録媒体を組み合わせることにより、従来の装置に方位角アンカリングエネルギ評価機能を付与することもできる。
【0060】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
50mm×50mm×1.1mmの1対のガラス基板の片方に線幅4μm、間隔9μmの櫛形電極をCrで形成し、この1対のガラス基板の片側(電極のある基板は電極側)にポリイミド配向膜を厚さ100nmで成膜し、ナイロン生成の布で電極長手方向に対し10°の角度でラビングした。配向膜を内側にして樹脂製スペーサで特定のギャップを保持するように対向させ、そのギャップに液晶を注入し、ガラス基板の外側に偏光板を直交ニコルの状態で、片方の透過軸がラビング方向と一致するように貼り、IPS構造の液晶セルを作成した。このIPS試料の透過率−印加電圧曲線を測定し、式8からみかけの光軸βoptを求めたところ、図5の通りとなった。図5において、8は測定値、9はフィッティングした理論曲線である。尚、複屈折率Δnは0.0787、セルギャップdは3.80μm、光源波長λは543.5nmであ った。
【0061】
使用した液晶の物性値(K=4.8pN、Δε=7.8)を用いて式1及び式2により液晶分子の方位角分布を求め、4×4行列法によりβopt−E依存性を計算し、測定により得られたβopt−E依存性にフィッティングすることで方位角アンカリングエネルギ定数Bは4.28×10−5J/mと求められた。尚、フィッティングはβoptの変化量が5°以内の範囲内で行った。尚、同一ラビング条件で作成した捩れ配向セルによる方位角アンカリングエネルギ評価では、方位角アンカリングエネルギ定数Bは4.98×10−5J/mと求められた。
【0062】
(実施例2)
実施例1と同じ手順でIPS試料を作成した。ギャップは3.77μmであった。このIPS試料のβopt−E曲線を直交ニコル状態の偏光子及び検光子を回転させることにより測定し、実施例1と同様に、計算したβopt−E依存性と比較することにより、方位角アンカリングエネルギ定数Bは4.58×10−5J/mと求められた。
【0063】
(実施例3)
実施例1と同じ手順でIPS試料を作成した。セルギャップdは3.50μmであった。このIPS試料のβopt−E曲線を、透過率から式9により計算し、ラビング方向10°からの液晶方位角の変化が5°以内の範囲を式5及び6を用いてフ ィッティングした結果、方位角アンカリングエネルギ定数Bは1.52×10−5J/mと求められた。
【0064】
(実施例4)
実施例1と同じ手順でIPS試料を作成した。セルギャップdは3.77μmであった。このIPS試料のβopt−E曲線を、直交ニコル状態の偏光子及び検光子を回転させることにより測定し、ラビング方向10°からの液晶方位角の変化が5°以内の範囲を式5及び6を用いてフィッティングした結果を図6に示す。図6において、10は測定値、11はフィッティングした理論曲線である。これより、方位角アンカリングエネルギ定数Bは1.14×10−5J/mと求められた。
【0065】
(実施例5)
実施例1と同じ手順でIPS試料を作成した。ギャップは3.52μmであった。印加電圧を変化させながら透過率を測定したところ、印加電圧は4.6Vにおいて透過率が最大となった。一方、使用した液晶の物性値(K=4.8pN、Δε=7.8)と式1及び2を用いたシミュレーションでは透過率最大となる印加電圧は3.1Vであった。そこで、δ=0.67として式5及び6を補正し、ラビング方向10°からの液晶方位角の変化が5°以内の範囲においてフィッティングした結果、図7の通りとなった。図7において、12は測定値、13はフィッティングした理論曲線である。このフィッティングから、方位角アンカリングエネルギ定数Bは6.23×10−5J/mと求められた。尚、同一ラビング条件で作成した捩れ配向セルによる評価では、方位角アンカリングエネルギ定数は4.98×10−5J/mであった。
【0066】
(実施例6)
市販の偏光顕微鏡に波長589nm、透過バンドの半値全幅10nmの単色化バンドパスフィルタを設置し、偏光顕微鏡の透過光強度を光電子増倍管によって電圧信号に変え、この電圧信号をオシロスコープを経由してコンピュータに蓄積した。また、同じコンピュータによりIPS試料に印加する電圧を制御する制御系を組み立て、透過率の印加電圧に対する依存性を測定できるプログラムを作成した。 さらに、コンピュータに蓄積された透過率−印加電圧のデータを式8に基づいてβopt−E依存性のデータに換算するプログラム、及び式5及び6を用いたβopt−E理論式のフィッティングを行うことができるプログラムをコンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録した。
【0067】
こうして作成した方位角アンカリングエネルギ評価装置を用いて、実施例1と同様に作成したIPS試料を評価したところ、方位角アンカリングエネルギ定数Bは1.22×10−5J/mと求 められた。
【0068】
(実施例7)
市販のリタデーション測定装置に、本発明による方位角アンカリングエネルギ評価の手順を記録した記録媒体を組み込むことにより、方位角アンカリングエネルギ評価が可能になるようにした。リタデーション測定装置の測定波長は632.8nmであった。この評価装置を用いて実施例1と同様に作成したIPS試料を評価したところ、方位角アンカリングエネルギ定数は1.35×10−5J/mと求 められた。
【0069】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているため、下記の効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、IPSモード液晶表示素子において、電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づいてみかけの光軸方向βoptと前記電界強度Eとの数値相関を求め、連続体理論式に方位角アンカリングエネルギ項を繰り込んで導いたβoptとEとの理論関係式をフィッティングすることにより、方位角アンカリングエネルギを評価するため、得られた方位角アンカリングエネルギをIPSモードセルのデバイス特性に直接関連づけて議論することが可能となり、IPS液晶表示素子の開発又は工程管理を効率的に行うことができる。
【0070】
また、請求項記載の発明によれば、βoptとEとの理論関係式が、式5及び式6によって表されるため、液晶の方位角分布を求めることなく簡易に方位角アンカリングエネルギを評価することができる。
【0071】
さらに、請求項に記載の発明によれば、βoptとEとの理論関係式を、同式中の全ての電界強度EにVmax sim/Vmax expを掛け合わせることにより補正したため、より正確な方位角アンカリングエネルギの評価を行うことができる。
【0072】
またさらに、請求項又はに記載の発明によれば、液晶表示素子を直交又はニコル状態の偏光子及び検光子によって挟んで光透過率を測定し、偏光子及び検光子を液晶表示素子に対して相対的に回転させた時に光透過率が最小又は最大となる方向から前記みかけの光軸方向βoptを算出するため、光透過率の測定誤差の影響を最小限に抑制して、正確な方位角アンカリングエネルギの評価を行うことができる。
【0073】
また、請求項に記載の発明は、液晶表示素子を、直交ニコル状態の偏光子及び検光子によって、偏光子の透過軸が前記電極に対して所定の角度βpを持つように挟んで光透過率を測定し、光透過率値Tから前記みかけの光軸方向βoptを算出したため、偏光子及び検光子をIPSモードセルに対して回転させる必要がなく、簡易な光学系によって方位角アンカリングエネルギの評価を行うことができる。
【0074】
さらに、請求項に記載の発明は、式8からみかけの光軸方向βoptを算出するため、液晶の複屈折率Δnが既知であれば、偏光子及び検光子をIPSモードセルに対して回転させる必要がなく、簡易な光学系によって方位角アンカリングエネルギの評価を行うことができる。
【0075】
またさらに、請求項に記載の発明は、電界強度Eを変化させた時の光透過率Tの最大値をTmaxとして、式9によってみかけの光軸方向βoptを算出するため、液晶の複屈折率Δnが未知であっても簡易な光学系によって方位角アンカリングエネルギの評価を行うことができる。
【0076】
加えて、請求項に記載の発明によれば、偏光子及び検光子を前記液晶表示素子に対して相対的に角度αだけ回転させて光透過率Tを測定し、複数の角度αについての光透過率Tから、式10によって前記みかけの光軸方向βoptを算出するため、偏光子及び検光子を印加電圧に関係無く一定角度回転させれば良く、簡易な方法により方位角アンカリングエネルギを評価することができる。
【0077】
また、請求項に記載の発明によれば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に、請求項1乃至のいずれか1項に記載した方位角アンカリングエネルギ評価方法を実行させるためのプログラムを記録したため、既存の液晶評価装置や偏光解析装置に組み込むことによって方位角アンカリングエネルギ評価機能を付与することができる。
【0078】
また、請求項10に記載の発明によれば、単色光源と、直交又は平行ニコル状態に配置された偏光子検光子と、液晶表示素子を保持する保持機構と、光検出器とを備え、請求項1乃至のいずれか1項に記載した方位角アンカリングエネルギ評価方法を実行するため、IPSモードセルの方位角アンカリングエネルギを直接評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、IPSモードセルの構造を示す模式図である。
【図2】図2は、IPSモードセルの液晶分子駆動原理を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明に係る方位角アンカリングエネルギ評価装置の光学系を示す概略図である。
【図4】図4は、透過率の印加電圧依存性を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施例1に係るβopt−E依存性を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施例4に係るβopt−E依存性を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の実施例5に係るβopt−E依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 液晶分子、2 信号電極、3 共通電極、4及び5 基板、20 IPSモードセル、22 光源、24 バンドパスフィルタ、26 偏光子、28 検光子、30 光検出器。

Claims (10)

  1. 対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
    (a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向βoptと前記電界強度Eとの数値相関を求め
    (b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向βoptと前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
    (c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
    前記液晶層の誘電率異方性及び捩れ変形の弾性定数をΔε及びK 2 、電界無印加時における前記液晶層の光軸方向と前記電極長手方向とのなす角をβ R 、前記液晶表示素子のセルギャップをd、前記方位角アンカリングエネルギをBとして、電界E印加時における前記液晶層中央の光軸方向と前記電極長手方向とのなす角をβ m が、
    Figure 0003609311
    として表される式を満たし、前記β opt とEとの理論関係式が、
    Figure 0003609311
    で表されることを特徴とする液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギ評価方法。
  2. 対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
    (a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの数値相関を求め
    (b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
    (c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
    前記β opt とEとの理論関係式に基づいて計算したIPSモード液晶表示素子の透過率最大電圧をV max sim とし、光学測定により求めたIPSモード液晶表示素子の透過率最大電圧をV max exp として、前記β opt とEとの理論関係式を、同式中の全ての電界強度EにV max sim / max exp を掛け合わせることにより補正することを特徴とする液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギ評価方法。
  3. 対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
    (a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの数値相関を求め
    (b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
    (c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
    (i)所定の電界Eを印加した前記液晶表示素子を直交ニコル状態の偏光子及び検光子によって挟んで光透過率を測定し、前記偏光子及び検光子を前記液晶表示素子に対して相対的に回転させた時に光透過率が最小となる方向を前記みかけの光軸方向β opt とし、(ii)前記(i)の測定を、電界強度Eを変化させて繰り返すことにより前記β opt とEとの数値相関を求めることを特徴とする液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギ評価方法。
  4. 対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
    (a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの数値相関を求め
    (b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
    (c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
    (i)所定の電界Eを印加した前記液晶表示素子を平行ニコル状態の偏光子及び検光子によって挟んで光透過率を測定し、前記偏光子及び検光子を前記液晶表示素子に対して相対的に回転させた時に光透過率が最大となる方向をβ max として、前記みかけの光軸方向β opt をβ max −45°とし、(ii)前記(i)の測定を、電界強度Eを変化させて繰り返すことにより前記β opt とEとの数値相関を求めることを特徴とする液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギ評価方法。
  5. 対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
    (a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの数値相関を求め
    (b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
    (c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
    (i)所定の電界Eを印加した前記液晶表示素子を、直交ニコル状態の偏光子及び検光子によって偏光子の透過軸が前記電極に対して所定の角度β p となるように挟んで光透過率を測定し、該光透過率値Tから前記みかけの光軸方向β opt を算出し、(ii)前記(i)の測定を、電界強度Eを変化させて繰り返すことにより前記β opt とEとの数値相関を求めることを特徴とする液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギ評価方法。
  6. 光透過率測定を行う光波長をλ、光波長λにおける前記液晶層の複屈折率をΔn、前記液晶表示素子のセルギャップをdとして、
    Figure 0003609311
    として表される式によって前記みかけの光軸方向β opt を算出することを特徴とする請求 項5記載の評価方法。
  7. 前記電界強度Eを変化させた時の光透過率Tの最大値をT max として、
    Figure 0003609311
    として表される式によって前記みかけの光軸方向β opt を算出することを特徴とする請求項5記載の評価方法。
  8. 対向する2枚の透明基板の間にホモジニアス配向した液晶層を挟持し、前記透明基板の一方に設けた複数の電極により前記透明基板とほぼ平行な電界を形成することにより前記液晶層を駆動して光の透過を制御するIPS(イン・プレイン・スイッチング)モード液晶表示素子における方位角アンカリングエネルギの評価方法であって、
    (a)前記液晶表示素子中の電界強度Eを変化させて行った光学測定値に基づき、前記液晶層のみかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの数値相関を求め
    (b)連続体理論式に方位角アンカリングエネルギの項を繰り込んで導いた前記みかけの光軸方向β opt と前記電界強度Eとの理論関係式を、前記数値相関と比較し、
    (c)前記理論関係式が前記数値相関に適合するように、前記方位角アンカリングエネルギを決定し、
    (i)所定の電界Eを印加した前記液晶表示素子を直交ニコル状態の偏光子及び検光子によって挟み、前記偏光子及び検光子を前記液晶表示素子に対して相対的に角度αだけ回転させて光透過率Tを測定し、複数の角度αについての光透過率Tから、
    Figure 0003609311
    (Aは、定数)
    として表される式によって前記みかけの光軸方向β opt を算出し、(ii)前記(i)の測定を、電界強度Eを変化させて繰り返すことにより前記β opt とEとの数値相関を求めることを特徴とする液晶表示素子の方位角アンカリングエネルギ評価方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載した方位角アンカリングエネルギ評価方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  10. 単色光源と、直交又は平行ニコル状態に配置された偏光子及び検光子と、前記偏光子及び検光子の間に液晶表示素子を保持するための保持機構と、前記単色光源から発して前記偏光子、液晶表示素子及び検光子を通過した光を検出する光検出器を備え、請求項1乃至8のいずれか1項に記載した方位角アンカリングエネルギ評価方法を実行することを特徴とする方位角アンカリングエネルギ評価装置。
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