JP3608277B2 - 工業製品の性能評価法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は工業製品を環境への影響をも考慮して性能を評価する性能評価法に関し、例えばボイラやガスタービンなどの構成部品に施される溶射皮膜の評価に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
工業製品は、通常、原材料を製造し、これに加工を施して製品とし、出来上がった製品を所定の目的に使用するようにしている。
【0003】
このような工業製品の性能を評価する場合には、製品を使用する場合の機能及びコストで性能を評価することが多かった。
【0004】
例えば工業製品の一つである加圧流動層ボイラの層内管の場合には、流動層内での高温エロージョンによる摩耗が厳しく、管外面に耐熱性および耐摩耗性に優れたセラミックス系材料をコーティングする等の溶射皮膜を形成して用いることが考えられているが、このような溶射皮膜の性能について評価する場合にも耐摩耗性よび製造コストで評価することが行われている。
【0005】
一方、近年特に注目されている地球環境問題として工業製品についてもいわゆる性能やコストだけでなく、その製造から使用までの間に地球環境に及ぼす影響までを考慮して性能を評価する必要が提唱されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、工業製品の地球環境に及ぼす影響までを考慮した性能評価法については具体的にされたものがなく、材料の製造段階および製品の使用段階での環境汚染の大きさを考慮した性能評価法がないのが現状である。
【0007】
この発明は、かかる現状に鑑みてなされたもので、材料の製造段階および製品の使用段階での環境汚染の大きさを考慮した性能を評価することができる工業製品の性能評価法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の工業製品の性能評価法は、原材料が加工されて作られる製品の性能を環境への影響を考慮して評価するに際し、これら工業製品の製造から使用までを原材料製造、製品加工および製品使用の3つの過程に分割し、これら各過程における消費エネルギ、必要コストおよび環境汚染物質の発生量をそれぞれ求めるとともに、製品の性能を数値化して求める一方、評価対象の基準となる製品加工過程を定め、この基準加工過程の前記各値に対する被評価製品の単位加工当りの全過程の消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量および数値化した性能の比の総和を求めて評価するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
この工業製品の性能評価法によれば、工業製品の製造から使用までを原材料製造、製品加工および製品使用の3つの過程に分け、これら3つの各過程における消費エネルギ、必要コストおよび環境汚染物質の発生量をそれぞれ求めるとともに、製品の性能を数値化して求めておき、評価対象の基準となる製品加工過程を定め、この基準加工過程の前記各値に対する比として被評価製品の全過程の消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量および数値化した性能を求め、これらの比の総和を単位加工当りで求めるようにしており、この単位加工当りの比の総和から性能を評価することで、環境への影響を考慮した性能を定量的に評価することができるようになる。
【0010】
また、この発明の請求項2記載の工業製品の性能評価法は、請求項1記載の構成に加え、前記被評価製品の単位加工当りの全過程の消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量および数値化した性能の比の総和を求めた後、必要加工量に対するこれら全過程の消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量および数値化した性能の比の総和を求めて評価するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
この発明の請求項2記載の工業製品の性能評価法によれば、請求項1記載の構成の単位加工当りの比の総和からではなく、さらに性能を確保するのに必要な加工量に対する比の総和を求めるようにしており、この必要な加工量に対する比の総和から性能を評価することで、必要機能を満足した状態で、環境への影響を考慮した性能を定量的に評価することができるようになる。
【0012】
さらに、この発明の請求項3記載の工業製品の性能評価法は、請求項1または2記載の構成に替え、前記製品加工過程を溶射皮膜加工過程とする一方、これら溶射製品の性能を加速摩耗試験により数値化するようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項3記載の工業製品の性能評価法によれば、溶射皮膜加工過程で施される溶射皮膜の性能を環境への影響を考慮して評価することができるようになる。
【0014】
また、この発明の請求項4記載の工業製品の性能評価法は、請求項3記載の構成に替え、前記環境汚染物質を溶射皮膜加工過程で発生するヒュームとし、その発生量で評価するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
この発明の請求項4記載の工業製品の性能評価法によれば、請求項3記載の構成に加え、環境汚染物質を溶射皮膜加工過程で発生するヒュームとし、その発生量に基づき、溶射皮膜加工過程で施される溶射皮膜の性能を環境への影響を考慮して評価することができるようになる。
【0016】
工業製品とは、原材料から何等かの加工が施された製品をいい、工業的な加工、すなわち鋳造、溶接、切断、塑性加工、切削加工、砥粒加工、特殊加工、表面処理などを施して作られる中間及び最終の製品のいずれも含むのものである。
【0017】
環境への影響とは、原材料の製造から製品の使用までの間に環境に悪影響を与える因子であり、例えば環境汚染物質の発生量や騒音、粉塵等をあげることができる。
【0018】
原材料製造過程とは、製品加工に必要な全ての原材料を作るための過程であり、製品加工の前処理に必要な原材料、加工そのものに必要な原材料、加工を促進するために必要なものなどの全てをいい、例えば溶射皮膜を施す場合には、前処理に用いるサンドブラストやエチルアルコール、溶射するセラミックス粉末や雰囲気ガスなどをあげることができる。
【0019】
製品加工過程とは、原材料を用いて工業的な加工を行うことをいい、例えば溶射皮膜を施すことをあげることができる。
【0020】
製品使用過程とは、その製品の機能を発揮させるようにすることをいい、例えば溶射皮膜を施した加圧流動層ボイラの層内管の場合には、層内管として使用することが相当する。
【0021】
消費エネルギとは、電力、ガス等のエネルギとして消費されるものをいう。 必要コストとは、経済性を評価する因子とするものであり、原材料のコストや消費エネルギのコスト、加工に要するコストなどを含めたコストをいう。
【0022】
環境汚染物質とは、粉塵やガス等のほか、ここでは騒音などを含む環境に影響を与えるものをいう。
【0023】
評価対象の基準となる製品加工過程とは、製品加工の1つを基準すれば良く、評価対象に対して原材料の異なるものとしたり、加工方法が異なるものとしたり、評価すべき要素の1つが異なるものを基準とすれば良い。
【0024】
製品の性能の数値化とは、製品の機能を定量的に表わすことをいい、例えば溶射皮膜の場合には、その目的が耐摩耗性にあることから、摩耗試験を行い摩耗速度を測定し、これで性能を表わすようにしている。
【0025】
単位加工当りとは、製品加工に必要な加工量が異なることから基準とするためのもので、例えば厚さ当りや長さ当り、面積当りなどを単位とすれば良く、溶射皮膜の場合には、単位厚さを基準にしている。
【0026】
単位加工当りの比の総和とは、基準となる加工過程の消費エネルギ、必要コスト、数値化した性能に対する比で評価すべき工業製品の消費エネルギ、必要コスト、数値化した性能を表わした無次元化した値の和をいい、これにより単位の異なるものであっても和として評価できるようになる。
【0027】
必要加工量に対する比の総和とは、製品として必要な加工を施した状態での基準となる加工過程に対する比で表わした値の和をいい、必要性能を満足した製品として評価することができるようになる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の工業製品の性能評価法の実施の態様について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0029】
この工業製品の性能評価法は、図1に示す工程図にしたがって、例えば加圧流動層ボイラの層内管の外面に施される種々の溶射皮膜の評価に適用される。
【0030】
この加圧流動層ボイラの層内管の外面に施される種々の溶射皮膜のライフサイクルを考えると、図2に示すように、資源採取から原材料の製造、溶射加工、製品使用および廃棄の過程に分けられるが、ここでは、原材料製造、溶射加工、製品使用の3つの過程を対象として評価する。
【0031】
(a) まず、評価すべき工業製品である溶射皮膜の製造から使用までを原材料製造過程、製品加工過程、製品使用過程の3つの過程、具体的には原材料製造、溶射加工、製品使用の3つの過程に分ける。
【0032】
(b) これら3つの過程全体を通しての消費エネルギの算出、必要コストの算出、環境汚染物質の発生量の算出を行うとともに、製品性能の数値化を行う。
【0033】
そこで、溶射皮膜の場合の3つの過程である原材料製造、溶射加工、製品使用のそれぞれについて見ると、図2に示すように、エネルギ、コスト、環境汚染物質の3つの要素を共通に評価するほか、溶射加工過程では、原料およびガスも要素として加えてエネルギ及びコストの算出を行い、製品使用過程では、製品の性能を表わす耐摩耗性および耐熱衝撃性も要素として加え、これにより性能を数値化する。
【0034】
(1) エネルギ消費量の算出
エネルギ消費量としては、例えば消費電力量とカロリー換算したエネルギ消費量を算出する。
【0035】
▲1▼ 前処理
溶射皮膜の形成では、前処理の粗面化の工程でサンドブラスト装置と除塵のための湿式スクラバーを用いることからその消費電力量を求めるとともに、消耗材料についてその材料を生産するための単位重量当たりの電力量を考慮して電力量を求める。
【0036】
また、清浄化工程では、消耗材料としてエチルアルコールを用い、ブラスト処理ではアルミナを用いるので、これらについてもそれぞれの材料を生産するための単位重量当たりの電力量を考慮して消費電力量を求める。
なお、これらは、各溶射皮膜の溶射プロセスに共通の値である。
【0037】
▲2▼ 溶射
各溶射プロセスの消費電力量は、構成装置の制御盤、冷水機、溶射電源、回転台、ハンドリングロボット、集塵機の実測データをもとに算出する。
【0038】
溶射装置としては大気プラズマ溶射装置(APS)、高速ガスフレーム溶射装置(HVOF)、ガスフレーム溶射装置(GS+Fused)等を用いるが、大気プラズマ溶射装置は消費電力量が大きいのに対し、高速ガスフレーム溶射装置およびガスフレーム溶射装置は熱源としてガスを大量に消費することから、これらを発熱量に換算して比較するようにした。
【0039】
また、材料については、その生産のための単位重量当りの電力量を考慮して消費電力量を算出する。材料としては溶射材料そのものとガスを用いることからこれらについて求める。
【0040】
溶射材料量は、単位肉厚(1mm当たり)で検討し、必要肉厚を溶射する時間を考慮して消費電力量を求める。
【0041】
こうして自溶性合金のガスフレーム溶射(GS+Fused)および皮膜Aの高速ガスフレーム溶射(HVOF)を始めとし、大気プラズマ溶射(APS)による皮膜B〜皮膜Hの合計9種類の溶射を行い、これら各溶射プロセスの全工程の前処理、原料粉末製造、消費ガス製造、装置使用に要した単位肉厚当たりの消費エネルギを求めた結果を図3に示す。なお、これら実験に用いた自溶性合金はニッケルクロムであり、皮膜A〜Hはクロムカーバイドやアルミナおよびアルミナ系材料である。
【0042】
(2) 必要コストの算出
必要コストは、3つに分けた過程全体のコストとして求める。この必要コストは、消費エネルギの算出の場合と同様に、各プロセスごとの電気およびガス使用量、原材料の使用量、加工時間をもとに単位加工当たりのコストを求める。
【0043】
すなわち、溶射皮膜の場合には、電気およびガス使用量、溶射粉末使用量、溶射所要時間をもとに、肉厚1mm当たりの施工コストを求め、必要コストとする。
【0044】
こうして溶射プロセスの全工程に要した単位肉厚当たりのトータルコストを求めた結果を図4に示す。
【0045】
この必要コストは、消費エネルギと同一対象を重複して算出するようになるが、必要コストは経済的な側面で評価するものであるのに対し、消費エネルギはエネルギ的な側面で評価するものであり、両側面からの評価が必要となる。
【0046】
(3) 環境汚染物質の発生量の算出
原材料の製造や製品加工、製品使用の各過程で環境に悪影響を及ぼす汚染物質が発生する場合がある。
【0047】
そこで、溶射皮膜の各過程についてみると、前処理でエチルアルコールを用いることから、有機溶剤として有害性の問題を考慮する必要があるが、このエチルアルコール自体は有害物質に該当するものでなく、問題にする必要がない。
【0048】
また、ブラスト処理の際、粉塵が空気中に浮遊する可能性があり、有害物質となる可能性があるが、吸引装置のついたブラストチャンバ内でブラスト処理を行うことからここでは問題とならない。
【0049】
次に溶射工程では、溶射粉末はプラズマジェット又はガス炎により溶滴となって未溶融粉末とともに空気中に飛散する過程で、金属、金属酸化物、セラミックスなどの微粒子(ヒューム)が発生する。溶射材料は溶射中に組成が変化し、粒径も変化するが、これらに対する実測データは見当たらない。
【0050】
そこで、ここでは、溶射粉末使用量と溶射中に溶着しなかった比率(歩留まり率の逆数)から、飛散粉塵量を求める一方、粉塵の中でも10μm以下の微粉末が有害なヒューム等になると仮定するとともに、飛散粉塵の粒度分布が溶射前の粒度分布と等しいと仮定し、計算によりヒューム発生量を求める。
【0051】
例えば、溶射粉末としてアルミナを用いる場合には、その粒径が小さい部分の粒度分布の一例を示す図5からヒューム発生量を計算し、その結果を他の溶射材料の場合とともに図6に示した。
【0052】
さらに、環境汚染物質として、ガス中毒の問題があり、大気プラズマ溶射では、アルゴンを使用するため、チャンバなどの密閉した中では酸欠の危険性があり、プラズマ中では、アルゴンからオゾンが発生する場合があり、これらによるガス中毒の危険性がある。また、窒素酸化物の発生も考えられる一方、高速ガスフレーム溶射等のガスを燃焼させる場合には、不完全燃焼による一酸化炭素ガス中毒の危険性もある。
【0053】
しかしながら、これらのガスの発生量については未調査であるが、換気を十分行うことで、実際上の問題にはなっていない。
【0054】
次に、騒音については、大気プラズマ溶射の場合は100〜130ホン以上で周波数も非常に高いため作業上防音対策が必要であるが、高速ガスフレーム溶射の場合には若干騒音が小さく、通常のガスフレーム溶射では60ホン程度であり、大きな騒音は発生しない。
【0055】
特に、実験室的なチャンバ内でのロボット装置による溶射の場合には、問題とならない。
【0056】
眼障害についても高熱による赤外線や紫外線による影響が考えられるが、未調査である。
【0057】
以上のような環境汚染物質(因子)があげられるが、これらを考慮する場合には、基準となる溶射法を定めてその値に対する各溶射プロセスの比で評価するようにすることで、ヒュームの場合と同様に環境汚染物質として評価することができる。
【0058】
(4) 製品性能の数値化
製品の性能評価を定量的に行う必要から数値化することが行われる。
【0059】
この製品の性能については、従来から最も重要な評価要素として用いられているものをそのまま使用すれば良く、例えば溶射皮膜の場合には、図2に示したように耐摩耗性及び耐熱衝撃性が性能上最も問題となることから、これらに関連する要素を検討する。
【0060】
具体的な性能評価は、各溶射皮膜の高温摩耗特性と熱サイクルをかけたときの剥離特性および皮膜硬度を測定し、比較することで行う。
【0061】
ここでは、加圧流動層ボイラの層内管として使用される材料となる耐熱鋼管(STBA22)を母材として各種溶射皮膜を形成した。
【0062】
高温摩耗試験では、図7に示す流動層内回転摩耗試験装置を用い、大気中での高温摩耗特性を調べた。この試験では、研磨仕上加工で溶射皮膜の肉厚250μmとし、試験条件は、温度を400℃、回転速度を5m/sとして実際の空塔速度の約1〜2m/sから推定したベッド材の衝突速度の予想最高速度3m/sに対して加速的摩耗条件とした。
【0063】
また、使用した摩耗粉体(ベッド材)は実際のベッド材では、SiO2 、Al2 O3 、石灰石などを含むがその中で最も摩耗特性に影響を与えるSiO2 を100%とし、平均粒径を450μmとしたのもを用いた。
【0064】
そして、試験時間を5時間と15時間とし、1時間当たりの摩耗減量と最大摩耗深さを測定した。その結果を図8及び図9に示した。
【0065】
また、溶射施工時における剥離特性として、各溶射皮膜での肉厚を、250、500、750、および1000μmを目標とし、各皮膜を目視観察するとともに、染色浸透探傷検査および断面組織観察をおこなって欠陥の有無を調べた。その結果、1mmを越える肉厚の溶射でも欠陥や剥離なく行うことができた。
【0066】
さらに、熱サイクル試験では、剥離特性の場合と同様に、各溶射皮膜での肉厚を、250、500、750、および1000μmを目標として溶射したものに、400℃、30分加熱後水冷の熱サイクルを繰り返し(5回)、各皮膜を目視観察するとともに、染色浸透探傷検査をおこなって欠陥の有無を調べた。その結果、試験条件の熱サイクルにおいてはいずれの皮膜にも若干の亀甲状の割れが生じることがあっても剥離が生じていなかった。
【0067】
硬度試験では、溶射試験片の断面を切断研磨し、断面の硬度をマイクロビッカース硬度計(荷重500g)で測定した。その結果を図10に示した。
【0068】
このような溶射皮膜の性能を種々の因子について調べたが、その中で摩耗量に大きな差が現われたので、ここでは、製品性能評価の代表因子としては、摩耗量を用いて数値化することとした。
【0069】
(c) 次に、基準となる製品加工過程を定める。
この工程では、前工程(b)で評価に必要な消費エネルギや必要コスト、環境汚染物質の発生量などを求めたが、いずれも得られる単位が異なっており、そのままでは、比較し評価することができないことから、基準となる製品加工過程を定め、基準に対する各値の比をとることで無次元化して比較できるようにする。
【0070】
したがって、基準となる製品加工過程は、特に現在最も用いられているものなどいずれでも良く、実験などが容易にできるものを定めるようにするようにしても良い。ここでは、基準となる溶射皮膜の過程として実験した各種溶射皮膜の1つである自溶性合金(ガスフレーム溶射)とした。
【0071】
(d) こうして基準となる製品加工過程を定めた後、この基準の加工の消費エネルギに対する3つに分けた各過程それぞれの消費エネルギの比を求めるが、このときそれぞれの製品加工で加工量が異なることから、単位加工当たり、すなわち溶射皮膜の場合には、肉厚1mm当たりにした値で求める。同様にして、必要コスト、環境汚染物質の発生量についても基準となる製品加工過程に対する比で求める。
【0072】
(e) 次に、3つの過程ごとに求められた比を全過程の単位加工当たりの消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量、製品性能の数値を和として求める。こうして求めた結果を図11に示す。
【0073】
同図で明らかなように、基準とした自溶性合金の消費電力量、ヒューム量、摩耗量、コストのいずれの相対比が1であり、他の溶射皮膜がこの値に対するそれぞれ相対比で示されている。
【0074】
なお、(b)の工程での説明では、3つの原材料製造、製品加工、製品使用の過程それぞれについて消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量を求めた後、これらの全過程の値を求めるようにしたので、この場合には、全過程の基準値に対する比を求めることで和を求めるようにしても良い。
【0075】
(f) このような単位肉厚当たりの特性を比較することで、4つの総和が最も小さいものが単位加工当たりでエネルギ、コスト、環境への影響、性能を加味した総合的評価が良いことになる。
【0076】
しかしながら、異なる溶射皮膜を施工する場合には、製品として必要な肉厚が異なるため、単位肉厚に対する総合評価が高いものであっても、製品として必要な肉厚が厚ければ、評価も異なってしまう。
【0077】
(g) そこで、必要加工に対して4つの値の比の総和を求めて比較することが有効となる。
【0078】
すなわち、必要肉厚とすれば、性能上必要な特性を備えることになり、この状態の消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量及び性能を評価することで、最も現実的な総合評価ができる。そこで、必要肉厚当たりにした特性を相対比で表わしたものを図12に示した。
【0079】
この場合にも、各相対比の値の和が最も小さいものが総合性能に優れたものとなる。
【0080】
以上のように、溶射皮膜の場合を例に説明したが、エネルギ、コスト、環境汚染物質の発生量及び性能を相対比の和の形で評価するようにすることで、これまで定量的に評価することができなかった製品を環境負荷を考慮した総合評価することができるようになる。
【0081】
そして、単位加工量当たりで求めることで、その加工法の良否が定量的に評価できる一方、必要加工量当たりで求めることで、性能を重視して満足した状態で総合性能を定量的に評価することができる。
【0082】
なお、この実施の形態では、溶射皮膜を例に説明したが、これに限らず、工業製品に広く適用でき、基準を定めて相対比を求めることで、同様にして、製品加工における環境への影響を加味した性能を定量的に評価することができるようになる。
【0083】
【発明の効果】
以上実施の形態とともに具体的に説明したように、この発明の請求項1記載の工業製品の性能評価法によれば、工業製品の製造から使用までを原材料製造、製品加工および製品使用の3つの過程に分け、これら3つの各過程における消費エネルギ、必要コストおよび環境汚染物質の発生量をそれぞれ求めるとともに、製品の性能を数値化して求めておき、評価対象の基準となる製品加工過程を定め、この基準加工過程の前記各値に対する比として被評価製品の全過程の消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量および数値化した性能を求め、これらの比の総和を単位加工当りで求めるようにしたので、この単位加工当りの比の総和から性能を評価することで、環境への影響を考慮した性能を定量的に評価することができる。
【0084】
また、この発明の請求項2記載の工業製品の性能評価法によれば、請求項1記載の構成の単位加工当りの比の総和からではなく、さらに性能を確保するのに必要な加工量に対する比の総和を求めるようにしたので、この必要な加工量に対する比の総和から性能を評価することで、必要機能を満足した状態で、環境への影響を考慮した性能を定量的に評価することができる。
【0085】
さらに、この発明の請求項3記載の工業製品の性能評価法によれば、溶射皮膜加工過程で施される溶射皮膜の性能を環境への影響を考慮して定量的に評価することができる。
【0086】
また、この発明の請求項4記載の工業製品の性能評価法によれば、請求項3記載の構成に加え、環境汚染物質を溶射皮膜加工過程で発生するヒュームとし、その発生量に基づき、溶射皮膜加工過程で施される溶射皮膜の性能をヒュームの環境への影響を考慮して定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかる工程図である。
【図2】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態を加圧流動層ボイラの層内管の外面に施される種々の溶射皮膜の評価に適用した場合のライフサイクルの説明図である。
【図3】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかる単位肉厚当たり溶射施工全工程に要したエネルギを示すグラフである。
【図4】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかる単位肉厚当たりのトータルコストを比較して示すグラフである。
【図5】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかる溶射粉末の粒度分布を示すグラフである。
【図6】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかるヒューム発生量を示すグラフである。
【図7】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかる流動層内回転式エロージョン試験機の概略構成図である。
【図8】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかる高温摩耗試験結果を示すグラフである。
【図9】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかる1時間当たりの最大損傷深さを示すグラフである。
【図10】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかるコーティングの硬さを比較して示すグラフである。
【図11】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかる単位肉厚当たりの特性を比較して示すグラフである。
【図12】この発明の工業製品の性能評価法の一実施の形態にかかる必要肉厚当たりの特性を比較して示すグラフである。
Claims (4)
- 原材料が加工されて作られる製品の性能を環境への影響を考慮して評価するに際し、これら工業製品の製造から使用までを原材料製造、製品加工および製品使用の3つの過程に分割し、これら各過程における消費エネルギ、必要コストおよび環境汚染物質の発生量をそれぞれ求めるとともに、製品の性能を数値化して求める一方、評価対象の基準となる製品加工過程を定め、この基準加工過程の前記各値に対する被評価製品の単位加工当りの全過程の消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量および数値化した性能の比の総和を求めて評価するようにしたことを特徴とする工業製品の性能評価法。
- 前記被評価製品の単位加工当りの全過程の消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量および数値化した性能の比の総和を求めた後、必要加工量に対するこれら全過程の消費エネルギ、必要コスト、環境汚染物質の発生量および数値化した性能の比の総和を求めて評価するようにしたことを特徴とする請求項1記載の工業製品の性能評価法。
- 前記製品加工過程を溶射皮膜加工過程とする一方、これら溶射製品の性能を加速摩耗試験により数値化するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の工業製品の性能評価法。
- 前記環境汚染物質を溶射皮膜加工過程で発生するヒュームとし、その発生量で評価するようにしたことを特徴とする請求項3記載の工業製品の性能評価法。
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