JP3605000B2 - 粘弾性特性値測定装置および粘弾性特性値測定方法 - Google Patents

粘弾性特性値測定装置および粘弾性特性値測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂、架橋ゴム等の粘弾性材料のヤング率、損失係数等の粘弾性特性値を測定するための粘弾性特性値測定装置および粘弾性特性値測定方法に関し、詳しくは、所謂スプリットホプキンソン棒法が用いられ、比較的軟質の粘弾性材料の粘弾性特性値が精度よく測定するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、物体が衝撃を受けた場合の変形挙動を解析するのに、実測ではなくシミュレーションが用いられることが多い。シミュレーションでは、ヤング率、損失係数等、物体の粘弾性特性値(パラメータ)の代入が必要である。パラメータは静的パラメータと動的パラメータとに大別されるが、変形挙動は動的なものであるので、この変形挙動に近い状態で測定された動的パラメータが、シミュレーションには有効である。また、シミュレーションに限らず、物体の特性を把握する上でも、動的パラメータの測定は重要である。
【0003】
動的パラメータを測定する手段としてスプリットホプキンソン棒測定機が知られており、金属材料の分野等で用いられている(例えば、昭和63年10月28日、日刊工業新聞社発行の「衝撃工学」第173頁から第183頁参照)。この測定機では、金属製の打撃棒、入力棒及び出力棒が直線上に配置され、入力棒の後端と出力棒の前端との間に試験片が挟持され、入力棒及び出力棒には、それぞれひずみゲージが取り付けられている。
【0004】
粘弾性体からなる試験片の粘弾性特性を測定する時、入力棒の前端に打撃棒が衝突される。この衝突時に生じたひずみ波は、入力棒から試験片及び出力棒に伝播する。入力棒中を入力棒後端に向かって進む入射ひずみ波、この入射ひずみ波が入力棒後端から反射して前端に向かう反射ひずみ波及び入力棒から試験片を透過して出力棒の後端へ向かう透過ひずみ波が、入力棒、出力棒に取り付けられたひずみゲージで測定され、試験片の粘弾性特性値が算出される。
【0005】
なお、以下、入射ひずみ波、反射ひずみ波、透過ひずみ波をまとめて記載する時は「ひずみ波」と略称し、かつ、入力棒および出力棒を合わせて記載する時は「応力棒」と略称する。
【0006】
この測定機では金属材料の特性値は測定が可能であるが、合成樹脂、架橋ゴム等の高分子材料の粘弾性特性値は測定が困難である。高分子材料が試験片である場合、金属製である応力棒と試験片との特性インピーダンスが大きく異なるので、伝播する上記ひずみ波が正確にはピックアップできないからである。高分子材料の粘弾性特性値の測定には、試験片との特性インピーダンス差が少ない応力棒が選択される必要がある。
【0007】
社団法人日本設計工学会中国支部講演論文集No.16の第25頁から第29頁には、金属棒に代わり、高分子材料からなる応力棒に利用した粘弾性特性値測定装置が、広島大学の中川等によって開示されている。この高分子材料からなる応力棒では、金属製のものとは異なり、ひずみ波が大きく減衰する。例えば、入力棒中を試験片に向かって進む入射ひずみ波は、入力棒に取り付けられたひずみゲージで測定された後、入力棒後端に至るまでに減衰し、入力棒後端における入射ひずみ波を正確に推測することはできない。同様に、入力棒後端から前端に向かって反射される反射ひずみ波及び試験片後端から出力棒に透過される透過ひずみ波も正確に推定することができない。
【0008】
中川等によって開示された前述の粘弾性特性値測定装置では、入力棒及び出力棒にそれぞれ2個ずつのひずみゲージが取り付けられることにより、高分子材料からなる応力棒の減衰の問題が解決されている。即ち、2個のひずみゲージで測定された上記入射ひずみ波、反射ひずみ波、透過ひずみ波から伝達関数が導出され、この伝達関数によって入力棒後端における入射ひずみ波、入力棒後端における反射ひずみ波及び出力棒前端における透過ひずみ波の各ひずみ量が推定される。この粘弾性特性値測定装置では、例えば、最大ひずみ速度が秒速500から8000、最大変形量が1%から30%といった高速大変形時の粘弾性特性値の測定も可能である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この粘弾性特性値測定装置では、比較的硬質な高分子材料の粘弾性特性値は正確に測定されるが、比較的軟質な粘弾性材料の粘弾性特性値は誤差が大きくなり、精度上で問題がある。この誤差は、上記ひずみ波が試験片の中を進む速度と、その前後の入力棒および出力棒を進む速度との差が、試験片が軟質になるほど大きくなることに起因する。
【0010】
即ち、比較的軟質な粘弾性材料からなる試験片の場合、入力棒では試験片に比べてひずみ波の進行速度が速く、入力棒が短いと、その後端で反射されて、入力棒に取り付けられたひずみゲージで測定される第1の反射ひずみ波が入力棒の前端に達し、前端で反射された第2の反射ひずみ波がひずみゲージで測定されてしまい、両者が干渉しあって反射ひずみ波の正確なひずみ量の測定が困難となる問題がある。よって、第2反射ひずみ波が減衰しえる距離を入力棒の前端から離す必要がある。かつ、入力棒の後端近くでは入射ひずみ波と第1の反射ひずみ波が干渉する可能性があるため、入射ひずみ波と反射ひずみ波を測定するひずみゲージは所要寸法離れた位置に取り付ける必要があり、これらの理由より入力棒の長さは大となる。
【0011】
これに対して、出力棒に取り付けるひずみゲージは透過ひずみ波のみを測定するため、出力棒の前端付近に取り付けれることができる。よって、出力棒の長さを短くしても、出力棒の後端からひずみゲージの距離が長くなるため、反射ひずみ波がひずみゲージで測定されて透過ひずみ波と干渉することはない。
しかしながら、従来は、出力棒の長さは入力棒と同一長さに設定されている。出力棒の長さを大とすると、それだけ出力棒に撓みが発生しやすく、ひずみ量の少ない透過ひずみ波の測定値にノイズを与える問題がある。また、出力棒も長くすると測定装置が大型化する問題もある。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、比較的軟質な試験片であっても、その粘弾性特性値が正確に測定できる粘弾性特性値測定装置を提供することを課題としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、粘弾性材料からなる試験片を挟持するため直線上に配置された入力棒及び出力棒と、この入力棒に取り付けられた第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージと、出力棒に取り付けられた第三ひずみゲージ及び第四ひずみゲージとを備え、上記入力棒の前端が打撃された時に入力棒に生じる入射ひずみ波と反射ひずみ波が上記第一ひずみゲージと第二ひずみゲージで測定され、入力棒より試験片を経て出力棒に伝わる透過ひずみ波が上記第三ひずみゲージ及び第四ひずみゲージによって測定される粘弾性特性値測定装置であって、
上記入力棒および出力棒を粘弾性材から形成し、上記出力棒の長さを入力棒の長さ以下で、上記出力棒の長さを500mm以上2500mm以下、入力棒の長さが1500mm以上2500mm以下とし、
且つ、上記入力棒に第一ひずみゲージを前側、第二ひずみゲージを後側として取り付け、上記第一ひずみゲージは入力棒後端から入力棒全長の10%〜70%の間の所要位置、第二ひずみゲージは入力棒後端から入力棒全長の8%〜62%の間の所要位置に設ける一方、
上記出力棒に第三ひずみゲージを前側、第四ひずみゲージを後側として取り付け、上記第三ひずみゲージは出力棒前端から出力棒全長の4%〜25%の間の所要位置、第四ひずみゲージは出力棒前端から出力棒全長の8%〜50%の間の所要位置に設け、
上記第一ひずみゲージと第二ひずみゲージの間隔は200mm以上1200mm以下、第三ひずみゲージと第四ひずみゲージの間隔は30mm以上400mm以下としていることを特徴とする粘弾性特性値測定装置を提供している。
【0014】
上記出力棒の長さを500mm以上、2500mm以下としているのは、500mmより小さいと、透過ひずみ波が出力棒の後端で反射して、この反射したひずみ波が減衰される前に第四、第三ひずみゲージで測定される恐れがあることによる。一方、2500mm以下としているのは、2500mmを越えると、加工精度が低下し、かつ、撓みが生じやすく、撓みはひずみ波にノイズを発生させる原因となると共に、入力棒と出力棒との軸線の一致が困難となり、かえって測定精度が低下するためである。上記した観点からは、出力棒の長さは800mm以上2200mm以下が好ましい。
【0015】
一方、上記入力棒の長さは1500mm以上2500mm以下としていることが好ましい。
即ち、入力棒では、入射ひずみ波を第一、第二ひずみゲージで測定し、かつ、入射ひずみ波が減衰した後に入力棒後端で反射された反射ひずみ波を測定する必要があるため、入力棒後端から第一ひずみゲージの間隔および入力棒後端から第二ひずみゲージの間隔は十分な距離が必要である。この間隔を必要とされる十分なものとするために、入力棒の長さを1500mm以上としている。入力棒の長さが1500mmより小さいと、入力棒の後端で反射して第二、第一ひずみゲージで測定された反射ひずみ波が、入力棒の前端に達し、該前端で再反射され、この再反射された反射ひずみ波が再度第一、第二ひずみゲージで測定されてしまうことになるためである。一方、2500mm以下としているのは出力棒と同様な理由で、2500mmを越えると、加工精度が低下し、かつ、撓みが生じやすく、入力棒と出力棒との軸線の一致が困難となり、かえって測定精度が低下するためである。上記した観点からは、入力棒の長さは1800mm〜2300mmが好ましい。
【0016】
上記のように、本発明では、出力棒の長さを入力棒の長さ以下とし、入力棒における入射ひずみ波と反射ひずみ波の測定精度を高めると共に、出力棒における透過ひずみ波の測定精度を高めている。
【0017】
また、本発明の測定装置は、ゴムや弾性を有する樹脂等の粘弾性材からなる試験片の粘弾性特性値を測定するものであるため、入力棒および出力棒も粘弾性材を用いている。このように、入力棒および出力棒を粘弾性材から形成すると、試験片との特性インピーダンスの差を小さくすることができる。
【0018】
よって、上記入力棒および出力棒を形成する粘弾性材料としては、その粘弾性特性値と試験片の粘弾性特性値との差が小さいものを選択して用いることが好ましい。
具体的には、アクリル系樹脂棒、塩化ビニル系樹脂棒、ポリアセタール系樹脂棒、ポリカーボネート系樹脂棒を用いることができ、その中でもアクリル系樹脂棒が好適に用いられ、特に、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)が好ましい。このように、入力棒および出力棒からなる応力棒として粘弾性材を用いると、合成樹脂、架橋ゴム等の軟質の粘弾性材料からなる試験片と入力棒および出力棒とのインピーダンス差を非常に少さくでき、測定精度を高めることができる。
【0019】
上記入力棒に第一ひずみゲージを前側、第二ひずみゲージを後側として取り付け、上記第一ひずみゲージは入力棒後端から入力棒全長の10%〜70%の間の所要位置、第二ひずみゲージは入力棒後端から入力棒全長の8%〜62%の間の所要位置に設けている。
具体的には、第一ひずみゲージは入力棒の後端から300mm〜1500mmの間の位置、第二ひずみゲージは入力棒の後端から100mm〜1300mmの位置とすることが好ましい。
【0020】
即ち、試験片に連接する入力棒の後端から第一ひずみゲージは10%、第二ひずみゲージは8%離す必要がある。これは、試験片に近づきすぎると、第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージにおいて、入射ひずみ波の減衰が終了しないうちに第二のひずみゲージ及び第一のひずみゲージで入力棒の後端で反射された反射ひずみ波が測定されてしまい、両者が干渉しあって入射ひずみ波の正確な測定が困難となるためである。
逆に、入力棒の前端から第一ひずみゲージは30%、第二ひずみゲージは38%離す必要がある。これは、入力棒の前端に近づきすぎると、入力棒の後端で反射された第1の反射ひずみ波が入力棒を前進して第二、第一ひずみゲージで測定された後に入力棒の前端に達し、該入力棒の前端で反射される第2の反射ひずみ波の減衰が終了しないうちに第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージで上記第2の反射ひずみが測定されてしまい、両者が干渉しあって第1の反射ひずみ波の正確な測定が困難となるためである。
【0021】
上記第一ひずみゲージと第二ひずみゲージの間隔は200mm以上1200mm以下とすることが好ましく、約600mmが最も好ましい。これは200mm未満であると、距離が近づきすぎると伝達関数の精度が低下する一方、入力棒の全長および第一ひずみゲージと第二ひずみゲージの入力棒への取付位置を考慮すると、1200mm以下がノイズを少なくできる点より好ましいことに因る。
【0022】
一方、上記出力棒に第三ひずみゲージを前側、第四ひずみゲージを後側に取り付け、上記第三ひずみゲージは出力棒前端から出力棒全長の4%〜25%の間の所要位置、第四ひずみゲージは出力棒前端から出力棒全長の8%〜50%の間の所要位置に設けている。
具体的には、第三ひずみゲージは出力棒の前端から30mm〜400mmの間、第四ひずみゲージは出力棒の前端から60mm〜800mmの位置が好ましい。
【0023】
即ち、試験片に連接する出力棒の前端から第三ひずみゲージは4%、第四ひずみゲージ5は8%離す必要がある。これは、試験片に近づきすぎると、ノイズの問題が生じることに因る。
逆に、出力棒の前端から第三ひずみゲージは25%、第四ひずみゲージは50%以上離れると、透過ひずみ波の減衰が終了しないうちに第四のひずみゲージ及び第三のひずみゲージで出力棒の後端で反射された反射ひずみ波が測定されてしまい、両者が干渉しあって透過ひずみ波の正確な測定が困難となるためである。
【0024】
上記第三ひずみゲージと第四ひずみゲージの間隔は、30mm以上400mm以下、好ましくは約100mmの間隔を隔てて取り付けることが好ましい。
30mm以上400mm以下としているのは、30mm未満であると、距離が近づきて伝達関数の精度が低下する。入力棒の第一と第二ひずみゲージとの最小間隔を200mmとしているのに対して、出力棒の第三ひずみゲージと第四ひずみゲージの最小間隔を30mmとしているのは、出力棒前端近くにひずみゲージを取り付けることができることに因る。
一方、出力棒の全長および第三ひずみゲージと第四ひずみゲージの出力棒への取付位置を考慮すると、第三ひずみゲージと第四ひずみゲージの間隔は400mm以下がノイズが少なくなる範囲である。
【0025】
上記入力棒と出力棒とは、その間に、長さが1mm以上15mm以下の範囲の試験片を挟持できるように配置している。
言い換えると、試験片は、その長さが1mm以上15mm以下のものが用いられる。これは、試験片が軟質であることに起因する入力棒と出力棒との中心軸線のズレを抑えるには、試験片の長さを1mm以上15mm以下とするのが好ましいことによる。試験片の長さが1mm未満であると、試験片の両端と入力棒および出力棒の接触面における摩擦力及び試験片中での半径方向での慣性力が無視できなくなり、測定誤差が大きくなることに因る。逆に、試験片の長さが15mmを越えると、軸ずれが起こる場合があり、精度が悪くなることに因る。
【0026】
また、試験片は長さ方向に均一な断面形状で、丸棒形状が好ましい。なお、角棒形状ではノイズが多くなる。
一方、入力棒、出力棒も丸棒形状が好ましく、断面が真円形状の同一形状としている。断面積は、直径を10mm以上30mm以下とし、好ましくは20mmとしているが、試験片の断面積との相関関係により規定される。入力棒および出力棒の断面積は試験片の断面積の1倍以上3倍以下が好ましい。これは1倍よりも小さいと、試験片の変形が不均一となり測定精度が悪くなる一方、3倍より大きいと入力棒の第1反射ひずみ波、出力棒の透過ひずみ波が不均一となる問題が生じる。
【0027】
上記試験片と入力棒および出力棒の接合面での密着性は重要な要件で、平滑面として、加工精度をあげて密着性を高めていると共に、摩擦係数μはμ〈0.1とすることが好ましい。
【0028】
上記入力棒に取り付ける第一ひずみゲージ、第二ひずみゲージおよび出力棒に取り付ける第三ひずみゲージ、第四ひずみゲージは、同一のひずみゲージからなり、単軸プラスチック用のひずみゲージが最も好適に用いられる。それは高分子材料の変形量に合致しているためである。しかしながら、ひずみゲージはこれに限るものではない。
【0029】
上記打撃棒も入力棒および出力棒と同一材で形成し、粘弾性材で形成することが好ましい。該打撃棒の打撃面は、片当たりを防ぐために球面とすることが好ましいが、打撃棒自体は中実、中空のいずれでもよい。また、打撃棒の衝突速度は打撃棒質量サンプルの用途により最適条件に設定するものであるが、1m/s〜70m/s、更に好ましくは5m/s〜68m/s、特に好ましくは10m/s〜60m/sの衝撃速度で入力棒の前端を打撃するのがよい。この打撃力は、入力棒、出力棒、試験片の長さおよび断面積、試験片の種類等に応じて選択される。
【0030】
上記入力棒と出力棒のいずれか一方、あるいは両方はベース上に移動可に取り付け、試験片の長さに応じて、両者の間隔を調整可とし、かつ、入力棒の後端と出力棒の前端が試験片の前後面を接触した位置で、固定できる構成としている。
【0031】
また、本発明は、上記粘弾性特性値測定装置を用いた粘弾性特性値測定方法を提供している。即ち、
入力棒後端と出力棒前端とに試験片を挟持させ、入力棒前端を打撃し、
上記打撃によって生じた入力棒、試験片及び出力棒に伝播するひずみ波のうち、入力棒側の第一ひずみゲージと第二ひずみゲージで入射ひずみ波と反射ひずみ波を測定し、出力棒側の第三ひずみゲージ及び第四ひずみゲージで透過ひずみ波を測定し、
上記各ひずみ波の時刻歴を用いて入力棒後端における入射ひずみ時刻歴、入力棒後端における反射ひずみ波時刻歴及び出力棒前端における透過ひずみ波時刻歴を推定し、
上記推定された入射ひずみ波時刻歴、反射ひずみ波時刻歴及び透過ひずみ波時刻歴から、試験片のひずみ速度時刻歴、ひずみ時刻歴及び応力時刻歴を算出して、応力−ひずみ曲線を決定し、
上記応力−ひずみ曲線から、ヤング率、損失係数等の粘弾性特性値を算出している。
【0032】
本発明の測定方法において実際に各ひずみゲージで測定される波形には、打撃により生じるひずみ波の他に、打撃によって生じる散乱波が合成されている。ひずみ波の周波数は、2.5kHzから5.0kHz程度であるが、散乱波はその周波数が10kHz以上の高周波である。この高周波はノイズであるので、このノイズを含んだ合成波を用いて応力−ひずみ曲線を画くと、得られる粘弾性特性値の精度が低下する。よって、精度向上のためには、合成波に対して補正を行うのが好ましい。具体的には、第一ひずみゲージ、第二ひずみゲージ、第三ひずみゲージ及び第四ひずみゲージによって実測されたひずみ波(合成波)をローパスフィルターに通し、10kHz以上の高周波を除去している。
【0033】
上記各種のひずみ波がひずみゲージに到達するまでは、ひずみゲージの実測値は本来ゼロであるべきであるが、実際は微量のノイズが入力されてゼロからずれる。このズレ自体は微少なものであるが、ひずみの時刻歴はひずみ速度の積分であるため、時間の経過と共にズレが加算され、無視できなくなる。具体的には、ひずみの開始点の特定が困難となったり、ひずみの絶対値が不正確となってしまい、得られる粘弾性特性値の精度が低下する。よって、精度を向上させるため、第一ひずみゲージ、第二ひずみゲージ、第三ひずみゲージ及び第四ひずみゲージによって実測されたひずみ波の時刻歴に、そのベースライン値をゼロとするゼロ補正を施している。ゼロ補正は、波形全体を上下に移動させることによって行っている。
【0034】
ひずみ時刻歴及び応力時刻歴は本来的にはなだらかな曲線を画く。本発明の粘弾性特性値測定方法では、ピークを過ぎてしばらくはなだらかな曲線であるものの、その後、凹凸状の曲線となる。これは、入力棒の中心軸線と出力棒の中心軸線とが完全に一致していないことに起因する。両者の中心軸線を完全に一致させるのは困難であり、特に軟質の試験片の場合はこの傾向が強くなる。凹凸状の曲線を用いて、その後の計算を行った場合、得られる粘弾性特性値の精度が低下する。よって、精度向上のためには、凹凸状の曲線をなだらかな曲線とする補正を施すことが好ましい。
【0035】
ひずみ時刻歴のなだらかな曲線への補正は、算出された試験片のひずみ時刻歴のピーク以降の初期段階(すなわち曲線がなだらかな段階)の所定点における接線を用いて緩和時間λを導出し、下記数式(1)
ε(t)=ε0・e−t/ λ −−−(1)
(数式(1)において、ε0は接点におけるひずみを表す)
によって求められる曲線を所定点以降の曲線とすることによって達成される。なお、緩和時間λは、上記接線と時間軸との交点から求められる。
【0036】
また、応力時刻歴のなだらかな曲線への補正は、算出された試験片の応力時刻歴のピーク以降の初期段階(すなわち曲線がなだらかな段階)の所定点における接線を用いて緩和時間λを導出し、下記数式(2)
σ(t)=σ0・e−t/ λ −−−(2)
(数式(2)において、σ0は接点における応力を表す)
によって求められる曲線を所定点以降の曲線とすることによって達成される。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる粘弾性特性値測定装置が示された模式的正面図である。この粘弾性特性値測定装置は、打撃棒1、入力棒3及び出力棒5を備えている。入力棒3には、第一ひずみゲージ7及び第二ひずみゲージ9が取り付ける一方、出力棒5には、第三ひずみゲージ11及び第四ひずみゲージ13を取り付けている。入力棒3の後端3aと出力棒5の前端5aとの間には、円柱状の粘弾性材からなる試験片20が挟持される。
【0038】
打撃棒1、入力棒3及び出力棒5はポリメチルメタアクリレート製の円柱であり、断面直径は20mmとしている。打撃棒1の長さは100mmとしている。入力棒3の長さは1800mm、出力棒5の長さは1000mmとしている。
【0039】
第一ひずみゲージ7は入力棒3の後端3aから1200mmの位置に取り付け、第二ひずみゲージ9は入力棒3の後端3aから600mmの位置に取り付け、第一ひずみゲージ7と第二ひずみゲージ9の間隔を600mmとしている。また、出力棒5には、その前端5aから100mmの位置に第三ひずみゲージ11を取り付け、第四ひずみゲージ13は出力棒5の前端5aから200mmの位置に第四ひずみゲージ13を取り付け、第三ひずみゲージ11と第四ひずみゲージ13の間隔を100mmとしている。
【0040】
上記第一ひずみゲージ7、第二ひずみゲージ9、第三ひずみゲージ11、第四ひずみゲージ13として単軸プラスチック用ひずみゲージを用い、本実施形態では株式会社共和電業製のKFP−5−350−C1−65を用い、入力棒3、出力棒5の上記した位置に貼着している。これら第一ひずみゲージ7乃至第四ひずみゲージ13の入力棒3および出力棒7への取付位置は長さ方向において同一線上としている。
【0041】
上記試験片20の長さ(すなわち入力棒3の後端3bと出力棒5の前端5aとの距離)は4mmであり、試験片20の断面直径は18mmとしている。なお、本実施形態では試験片20としてアイオノマー樹脂で成形した上記寸法の円柱からなる試験片を用いている。
【0042】
上記測定装置によって粘弾性材からなる試験片の粘弾性特性値を測定する場合、まず、試験片20の前後両端面を入力棒3の後端3aと出力棒5の前端5aの密接させた状態で入力棒3と出力棒5の間に挟持する。この状態で、打撃棒1を入力棒3の前端3bに衝突させる。これによって、入力棒3に入射ひずみ波が生じ、この入射ひずみ波は入力棒3の後端3aに向かって進む。この入射ひずみ波の一部は、入力棒3の後端3aにおいて反射し、反射ひずみ波となって入力棒3の前端3bに向かって進む。入射ひずみ波の一部は、入力棒3の後端3aから試験片20を透過し、さらに出力棒5に伝播して透過ひずみ波となり、出力棒5の後端5bに向かって進む。
【0043】
入射ひずみ波は、第一ひずみゲージ7及び第二ひずみゲージ9によって実測される。実測された入射ひずみ波はローパスフィルターに通され、10kHz以上の高周波が除去される。さらに入射ひずみ波の時刻歴は、そのベースライン値をゼロとするゼロ補正が施される。こうして得られた第一ひずみゲージ7及び第二ひずみゲージ9における時間軸ひずみのそれぞれがフーリエ変換され、周波数軸ひずみが求められる。この第一ひずみゲージ7及び第二ひずみゲージ9における周波数軸ひずみから伝達関数が導出される。第一ひずみゲージ7と入力棒3の後端3aとの距離X1と、第二ひずみゲージ9と入力棒3の後端3aとの距離X2との比(X1:X2)が考慮されつつ、上記伝達関数に基づいて、入力棒3の後端3aにおける周波数軸ひずみが推定される。この周波数軸ひずみがフーリエ逆変換されることにより、入力棒3の後端3aにおける入射ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻歴)εiが得られる。
【0044】
同様に、入力棒3の後端3aで反射して前端3bに向かう反射ひずみ波が第二ひずみゲージ9及び第一ひずみゲージ7によって実測される。この実測された反射ひずみ波から、入力棒3の後端15における反射ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻歴)εrが得られる。
【0045】
また、出力棒5の第三ひずみゲージ11及び第四ひずみゲージ13によって、試験片20をへて出力棒5に伝播される透過ひずみ波を実測し、この実測した透過ひずみ波から、出力棒5の前端5aにおける透過ひずみ波の時間軸ひずみ(ひずみの時刻歴)εtが得られる。
【0046】
こうして得られたεi、εr及びεtから、下記数式(3)によって、試験片20のひずみ速度ε’が算出される。
Figure 0003605000
(数式(3)において、C0は入力棒および出力棒中(応力棒)のひずみ波の 伝播速度(m/s)を表し、Lは試験片の長さ(m)を表し、Eは応力棒の ヤング率(N/m)を表し、ρは応力棒の密度(kg/m)を表す)
【0047】
また、εi、εr及びεtから、下記数式(4)によって試験片20のひずみεが算出される。
【0048】
【数1】
Figure 0003605000
【0049】
数式(4)において、C0は入力棒および出力棒からなる応力棒中のひずみ波の伝播速度(m/s)を表し、Lは試験片の長さ(m)を表し、Eは応力棒のヤング率(N/m) を表し、ρは応力棒の密度(kg/m)を表す。
【0050】
さらに、εi、εr及びεtから、下記数式(5)によって試験片20の応力σが算出される。
Figure 0003605000
(数式(5)において、Eは入力棒および出力棒からなる応力棒のヤング率 (N/m)を表し、Aは上記応力棒の断面積(m)を表し、Asは試験片の断面積(m)を表し、Dは応力棒の直径(m)を表し、Dsは試験片の直径(m)を表す)
【0051】
こうして得られた試験片20のひずみ時刻歴を、図2のグラフに示す。図2に示すように、曲線はピークP以降しばらくはなだらかであるが、その後、凹凸状となる。ピークP以降のなだらかな段階での点Sを選択し、この点Sにおける曲線に対する接線を画き、この接線と時間軸との交点から緩和時間λを導出し、上記数式(1)によって求められる曲線を点S以降の曲線とすることによって、ひずみ時刻歴全体をなだらかな曲線(図2中に点線で示す)とすることができる。これにより、最終的に得られる粘弾性特性値へのノイズの影響を除去することができる。同様に、上記数式(2)によって、応力時刻歴全体をなだらかな曲線とすることができ、これによって最終的に得られる粘弾性特性値へのノイズの影響を除去することができる。
【0052】
このような補正が行われた試験片20のひずみ時刻歴及び応力時刻歴から、応力−ひずみ曲線が決定される。図3は、典型的な応力−ひずみ曲線が示されたグラフである。この応力−ひずみ曲線から、下記の数式(6)を用いて、試験片20のヤング率Esが算出される。
Es=σmax/εmax −−−(6)
【0053】
また、図3の応力−ひずみ曲線から、下記の数式(7)を用いて、位相角δが算出される。
δ=sin−1((σa−σb)/σmax) −−−(7)
そして、この位相角δより、損失係数(tanδ)が算出される。
【0054】
以下に記載の実施例1乃至実施例7、比較例1乃至比較例3の測定試験を行った。
【0055】
[実施例1]
図1に示された上記実施形態に記載の粘弾性特性値測定装置(入力棒の長さは1800mm、出力棒の長さは1000mm)を用い、アイオノマー樹脂を試験片として、粘弾性特性値の測定を行った。打撃棒の衝突速度は、18.5m/sとした。測定は、室温23℃、相対湿度50%の条件下で行った。
【0056】
入力棒への第一ひずみゲージ、第二ひずみゲージ、出力棒への第三ひずみゲージ、第四ひずみゲージの取付位置は下記の表1に示す通りである。
【0057】
【表1】
Figure 0003605000
【0058】
実施例2乃至実施例7、比較例1乃至比較例3は、表1に示す入力棒、出力棒の長さ、第一ひずみゲージ乃至第四ひずみゲージの取付位置、試験片(サンプル)の長さを変えて、他の条件(試験片の素材等)は変えずに、測定を行った。
【0059】
図4は、実施例1における、第一ひずみゲージと第二ひずみゲージで測定した入射ひずみ波と反射ひずみ波、第三ひずみゲージ及び第四ひずみゲージで測定した透過ひずみ波を示している。
図4に示すように、実施例1の測定結果は、第一、第二ひずみゲージで測定された反射ひずみ波のピークPr1、Pr2は1回であり、波の重なりは無かった。また、第三、第四ひずみゲージで測定された透過ひずみ波のピークPt3、Pt4は1回であり、波の重なりは無かった。
【0060】
[比較例]
図5は、比較例1における、第一乃至第四ひずみゲージで測定されたひずみ波を示している。
図中、ピークPr2、Pr1は入力棒の後端で反射された第1の反射ひずみ波のピーク、
ピークPrr1、Prr2は入力棒の後端で反射されて入力棒の前端に達し、入力棒の前端で反射された第2の反射ひずみ波と入力棒の後端で反射された第1の反射ひずみ波が合わさったピーク、
ピークPt3、Pt4は出力棒で測定された透過ひずみ波のピーク、
ピークPtr3、Ptr4は出力棒の後端で反射したひずみ波と透過ひずみ波が合わさったひずみ波のピーク、
ピークPtrr3、Ptrr4は出力棒の後端で反射されて出力棒の前端に達し、出力棒の前端で反射したひずみ波と出力棒の後端で反射された波等が合わさったピークを示している。
【0061】
図5に示されているように、1000mmの長さの入力棒の後端で反射された第1の反射ひずみ波のピークPr1と、該第1反射ひずみ波が入力棒の前端に達して該入力棒の前端から反射した第2の反射ひずみ波のピークPrr1が第一ゲージで測定された。即ち、第2の反射ひずみ波の減衰が終了しないうちに第一のゲージで測定され、第一ひずみゲージで第1と第2の反射ひずみ波が測定されて、干渉が生じることが確認できた。
同様に、第二ひずみゲージで入力棒の後端で反射された第1の反射ひずみ波のピークPr2と、入力棒の前端で再度反射された第2の反射ひずみ波のピークPrr2で測定されていた。
【0062】
また、比較例1では出力棒の長さが1000mmであるが、第三ひずみゲージの取付位置が前端より300mm(後端より700mm)、第四ひずみゲージの取付位置が前端より600mm(後端より400mm)で、透過ひずみ波のピークPt3、Pt4が測定された後、出力棒の後端で反射されたひずみ波と透過ひずみ波が合わさったひずみ波のピークPtr3、Ptr4も測定され、さらに、出力棒の前端に達した後に反射されたひずみ波Ptrr3、Ptrr4までも測定されていた。
【0063】
これに対して、出力棒の長さが1000mmで同一の長さの出力棒を用いた実施例2、5、7では、第三、第四ひずみゲージで測定された透過ひずみ波のピークは1回であり、ひずみ波の干渉が見られなかった。
これは、実施例2では第三ひずみゲージの取付位置が出力棒前端より100mm(出力棒後端より900mm)、第四ひずみゲージの取付位置が出力棒前端より200mm(出力棒後端より800mm)であるため、出力棒の後端で反射された反射ひずみ波が第三、第四ひずみゲージに達するまでに減衰したと認められる。同様に、実施例5では第三ひずみゲージの取付位置が出力棒前端より200mm(出力棒後端より800mm)、第四ひずみゲージの取付位置が出力棒前端より400mm(出力棒後端より600mm)、実施例7では第三ひずみゲージの取付位置が出力棒前端より100mm(出力棒後端より900mm)、第四ひずみゲージの取付位置が出力棒前端より300mm(出力棒後端より700mm)であるため、出力棒の後端で反射された反射ひずみ波が第三、第四ひずみゲージに達するまでに減衰したと認められる。
上記結果から、出力棒においては、第三、第四ひずみゲージを出力棒前端寄りに取り付けると、出力棒の長さを短くしても測定する波の重なりが発生しないことが確認できた。
【0064】
比較例2は、入力棒および出力棒とも2800mmと長尺とし、かつ、試験片の長さを18mmと長尺にしているため、ノイズが多く、測定できなかった。
【0065】
比較例3は、出力棒の長さを500mmよりも短い400mmとし、第三ひずみゲージの取付位置を出力棒前端より200mm(出力棒後端から200mm)、第四ひずみゲージの取付位置を出力棒前端より300mm(出力棒後端から100mm)としたため、出力棒後端で反射したひずみ波が第四、第三ひずみゲージで測定されてしまった。
【0066】
表1中において、「波の重なり」で、◎は重なりなし、○は重なりがあるものの推定波形は得られる、×は重なったため応力−ひずみ曲線に得られないことを意味する。また、「ノイズ」で、◎はノイズなし、○はノイズがあるものの推定波形が得られるを意味する。
実施例1乃至実施例7は「波の重なり」がいずれも◎または○であり、「ノイズ」の評価も◎または○であった。
【0067】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、スプリットホプキンソン棒を用いる粘弾性特性値測定装置において、入力棒および出力棒の長さを適宜の範囲に設定し、かつ、これら入力棒と出力棒の間隔(即ち、試験片の長さ)も適宜な範囲に設定し、さらに、入力棒および出力棒を粘弾性材料からなる試験片と特性インピーダンスの差が小さくなる粘弾性材料から形成しているため、比較的軟質な樹脂やゴム等の弾性材料の粘弾性特性値が精度良く測定することが出来る。
【0068】
さらに、入射ひずみ波と反射ひずみ波を測定する入力棒に取り付ける第一と第二のひずみゲージを取付位置および取付間隔を適宜に設定すると共に、透過ひずみ波を測定する出力棒に取り付ける第三と第四のひずみゲージの取付位置および取付間隔を適宜に設定しているため、ひずみ波が重なりなく検出でき、この点からも測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施形態にかかる粘弾性特性値測定装置が示された模式的正面図である。
【図2】図2は試験片のひずみ時刻歴の補正前の状態が示されたグラフである。
【図3】図3は応力−ひずみ曲線が示されたグラフである。
【図4】図4は本発明の実施例1にかかる粘弾性特性値測定装置で測定されたひずみ波が示されたグラフである。
【図5】図5は比較例1にかかる粘弾性特性値測定装置で測定されたひずみ波が示されたグラフである。
【符号の説明】
1 打撃棒
3 入力棒
5 出力棒
7 第一ひずみゲージ
9 第二ひずみゲージ
11 第三ひずみゲージ
13 第四ひずみゲージ
20 試験片

Claims (6)

  1. 粘弾性材料からなる試験片を挟持するため直線上に配置された入力棒及び出力棒と、この入力棒に取り付けられた第一ひずみゲージ及び第二ひずみゲージと、出力棒に取り付けられた第三ひずみゲージ及び第四ひずみゲージとを備え、上記入力棒の前端が打撃された時に入力棒に生じる入射ひずみ波と反射ひずみ波が上記第一ひずみゲージと第二ひずみゲージで測定され、入力棒より試験片を経て出力棒に伝わる透過ひずみ波が上記第三ひずみゲージ及び第四ひずみゲージによって測定される粘弾性特性値測定装置であって、
    上記入力棒および出力棒を粘弾性材から形成し、上記出力棒の長さを入力棒の長さ以下で、上記出力棒の長さを500mm以上2500mm以下、入力棒の長さが1500mm以上2500mm以下とし、
    且つ、上記入力棒に第一ひずみゲージを前側、第二ひずみゲージを後側として取り付け、上記第一ひずみゲージは入力棒後端から入力棒全長の10%〜70%の間の所要位置、第二ひずみゲージは入力棒後端から入力棒全長の8%〜62%の間の所要位置に設ける一方、
    上記出力棒に第三ひずみゲージを前側、第四ひずみゲージを後側として取り付け、上記第三ひずみゲージは出力棒前端から出力棒全長の4%〜25%の間の所要位置、第四ひずみゲージは出力棒前端から出力棒全長の8%〜50%の間の所要位置に設け、
    上記第一ひずみゲージと第二ひずみゲージの間隔は200mm以上1200mm以下、第三ひずみゲージと第四ひずみゲージの間隔は30mm以上400mm以下としていることを特徴とする粘弾性特性値測定装置。
  2. 上記入力棒および出力棒を形成する粘弾性材料は、その粘弾性特性値が、試験片の粘弾性特性値と差が小さいものを用いている請求項1に記載の粘弾性特性値測定装置。
  3. 上記入力棒の後端と出力棒の前端の間に、長さが1mm以上15mm以下の範囲の試験片を挟持できるように配置している請求項1または請求項2に記載の粘弾性特性値測定装置。
  4. 上記入力棒および出力棒は同一断面積の丸棒状で、その断面積は直径10mm以上30mm以下で、試験片の断面積の1.0倍以上3.0倍以下としている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘弾性特性値測定装置。
  5. 上記打撃棒は、入力棒および出力棒と同一材で形成し、1m / s〜70m/sの衝撃速度で入力棒の前端を打撃する設定としている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の粘弾性特性値測定装置。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の粘弾性特性値測定装置を用い、
    入力棒後端と出力棒前端とに試験片を挟持させ、入力棒前端を打撃し、
    上記打撃によって生じた入力棒、試験片及び出力棒に伝播するひずみ波のうち、入力棒側の第一ひずみゲージと第二ひずみゲージで入射ひずみ波と反射ひずみ波を測定し、出力棒側の第三ひずみゲージ及び第四ひずみゲージで透過ひずみ波を測定し、
    上記各ひずみ波の時刻歴を用いて入力棒後端における入射ひずみ波時刻歴、入力棒後端における反射ひずみ波時刻歴及び出力棒前端における透過ひずみ波時刻歴を推定し、
    上記推定された入射ひずみ波時刻歴、反射ひずみ波時刻歴及び透過ひずみ波時刻歴から、試験片のひずみ速度時刻歴、ひずみ時刻歴及び応力時刻歴を算出して、応力−ひずみ曲線を決定し、
    上記応力−ひずみ曲線から、ヤング率、損失係数等の粘弾性特性値を算出することを特徴とする粘弾性特性値測定方法。
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