JP3604172B2 - 除菌組成物、及び除菌方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、揮発性の除菌成分を含む除菌組成物であって、全体を密閉空間内に封じ込めることが困難な比較的大きな物品に対しても必要最少な量で有効な除菌効果を奏することができる除菌組成物、及び当該除菌成分を用いて手軽に除菌処理を施すことができる除菌方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、台所や風呂場等の水廻りは雑菌が繁殖しやすい環境にあるが、雑菌の繁殖に手を拱いていると腐敗臭が生じてきたりする等して極めて不快であり、また、雑菌の繁殖をそのまま放置しておくことは衛生的にも好ましくない。特に、人体に害を及ぼす雑菌が付着した食品を食したりすると食中毒の原因になることもあるため、食品を取り扱う台所にあっては調理具等も含めて衛生的な状態を維持する必要がある。
【0003】
従来より、各種の除菌剤を用いて雑菌を除去することが行われているが、一般に用いられている除菌剤には人体に対して有害な塩素系のものが多く、過去には塩素による中毒死といった事故もあったように、塩素系の除菌剤を用いるにあたっては換気に気をつけなければならない等、その取り扱いに注意しなければならなかったり、更には、除菌剤が調理具や食器類等に残存することがないように、除菌処理を終えた後には除菌剤を充分に洗い流す必要もあるため手軽さに欠けるという不具合もあった。
【0004】
これに対して近年、ワサビ、カラシ、大根等に、所謂辛み成分として含まれているイソチオシアネート類の奏する除菌効果が注目され、これを主成分とした除菌剤が提案されてきている。このような除菌剤は、ワサビや大根等の古くから人々に食されてきた食品に含まれている成分を利用するものであるため安全性に優れ、前述の如き塩素系除菌剤を使用するときのような特別な注意を払わずとも除菌処理を施すことができるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、イソチオシアネート類は揮発して気相にあるときにその効力が最大に発揮されるものであるため、イソチオシアネート類による除菌効果を効率良く得るには、ある程度密閉された状態にある空間内に除菌処理を施す対象となる物品を封じ込める等して該対象物に気相のイソチオシアネート類を接触させなければならず、手軽さに長けているとはいい難かった。また、当該対象物をこのような密閉空間に封じ込めたりすることが困難な場合には、除菌対象物の処理面における除菌成分の有効濃度を高めるべく多量の除菌剤を使用しなければならないという問題もあった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、イソチオシアネート類や、これと同様の除菌効果を奏するチオシアネート類等、揮発性の除菌成分を含む除菌組成物であって、除菌処理を施す対象となる物品全体を密閉空間内に封じ込めずとも、必要最少な量で有効な除菌効果を奏することができる除菌組成物、及び当該除菌成分を用いて手軽に除菌処理を施すことができる除菌方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明除菌組成物は揮発性の除菌成分を含む除菌組成物であって、当該除菌成分と共に少なくとも水分と反応して気体を発生する発泡成分及び界面活性剤が含まれていることを特徴とする。
【0008】
本発明除菌組成物における揮発性の除菌成分としては、例えば、イソチオシアネート類や、その異性体であるチオシアネート類等、気相において除菌効果が最大に発揮されるものを用いることができる。
【0009】
本発明においてイソチオシアネート類としては、アリルイソチオシアネート、トランス−4−メチルチオ−3−ブテニルイソチオシアネート、エチルイソチオシアネート、ブチルイソチオシアネート、第2ブチルイソチオシアネート、3─ブテニルイソチオシアネート、4─ペンテニルイソチオシアネート、n─ヘキシルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネート、β─フェニルエチルイソチオシアネート等、また、チオシアネート類としては、3─ブテニルチオシアネート、4─ペンテニルチオシアネート、イソボルニルチオシアネート等を例示することができるが、人体に対する影響を考慮すると、ワサビやカラシの辛み成分であるアリルイソチオシアネートや、大根の辛み成分であるトランス−4−メチルチオ−3−ブテニルイソチオシアネートが特に好ましい。尚、本発明ではこれらの除菌成分を単独で用いても、或いは、イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類から任意に選んだ2種以上を混合して用いても良い。
【0010】
本発明において除菌成分として用いることができる上記の如きイソチオシアネート類やチオシアネート類等は、分解され易い不安定な化合物であるため、本発明除菌組成物を使用する以前に、除菌成分としてのイソチオシアネート類やチオシアネート類等が分解してしまい、その除菌効果が損なわれてしまうということがないように、これらのものはシクロデキストリンに包接させて包接化合物としておくのが好ましく、更に、当該包接化合物は水等を添加して高湿条件下におくことによって包接したイソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類を放出し、このときにイソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類が揮発して除菌効果を発揮するので、除菌成分としてのイソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類をシクロデキストリンに包接させておけば、本発明除菌組成物を使用する直前まで除菌成分の除菌効果が損なわれないように該除菌成分を保持しておくことができるとともに、本発明除菌組成物を使用する際に除菌効果が発揮されるように、その時期を制御することができる。
【0011】
また、本発明ではイソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類をシクロデキストリンに包接させずに、マイクロカプセル化して用いることもできる。この場合、液状のイソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類を芯物質とし、高湿条件下でカプセルが溶解してイソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類を揮発させることができるよう、ポリビニルアルコール、デンプン等の水溶性材料を用いて界面重合法、液中硬化被覆法、相分離法、界面沈殿法等の適宜手段によってマイクロカプセル化するのが好ましい。
【0012】
本発明において、イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類等の不安定な除菌成分を上記のようにしてシクロデキストリンに包接、又は、マイクロカプセル化しておけば、除菌成分の安定性を向上させることができるとともに、高湿条件下におかれた包接化合物、又はマイクロカプセルから徐々に除菌成分が揮発し、それに伴って除菌効果が発揮されるよう、本発明除菌組成物の使用時における除菌成分の除放性を図り、少なくとも除菌組成物中の包接化合物又はマイクロカプセルの全てが高湿条件下におかれるまでの間継続して除菌効果を発揮させることができる。
【0013】
更に、本発明において用いられる発泡成分としては、前述のように除菌成分を揮発させるために添加した水等によって(即ち、高湿条件下で)反応が開始し、常温常圧下で気体を発生するものであれば特に限定されないが、簡便性、更には発生する気体やそれ自身の安全性等から常温常圧において安定な固体の炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、及び有機酸とからなるものが好ましい。
【0014】
上記炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムカリウム、炭酸ナトリウムカリウム等が挙げられる。また、炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウムカリウム等が挙げられる。更に、有機酸としては、例えば、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、ソルビン酸、酒石酸、クエン酸、スルファミン酸、スルファニル酸等が挙げられる。また、これらの炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸のそれぞれは、単独、或いは2種以上混合して用いることができる。
【0015】
本発明における発泡成分として上記したような炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、及び有機酸をもちいた場合、これら炭酸塩及び/又は炭酸水素塩に対する有機酸のモル比は、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩100モルに対して有機酸が30〜300モル、好ましくは100〜250モル、更に好ましく150〜200モルであり、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩に対する有機酸の比が、このような範囲から逸脱する場合は発泡力が弱くなってしまうという不都合が生じる。
【0016】
一方、本発明における界面活性剤としては、発泡成分が反応することにより発生した気体によって泡沫を形成し、該泡沫内に発泡成分から発生した気体、及び揮発した除菌成分を一定時間保持することができるものであれば特に限定されず、例えば、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等の陰イオン系界面活性剤、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第4アンモニウム塩等の陽イオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン系界面活性剤、アミノ酸等の両性界面活性剤等を挙げることができる。これらのものは、単独で用いても、或いは2種以上混合して用いても良い。
【0017】
これらの界面活性剤に要求されるのは起泡力と、形成された泡沫の安定性であり、本発明において用いられる上記の如き界面活性剤は、除菌成分や発泡成分に応じて適宜選択して用いられるが、その量が少な過ぎると泡沫を安定に形成することが困難となってしまい、発泡成分の反応により生じた気体や揮発した除菌成分を充分に保持することができない。逆に、界面活性剤の量が多過ぎてしまうと泡ギレが悪くなり除菌処理後の洗浄が面倒となる。このため、本発明除菌組成物の全量に対する界面活性剤の割合は0.1〜5重量%であるのが好ましく、より好ましくは1〜3重量%である。
【0018】
尚、本発明にあっては、必要に応じて本発明除菌組成物の除菌作用に影響を及ぼさない範囲で、硫酸ナトリウム等の増量剤を加えたり、或いは、湿気等により本発明除菌組成物が塊状にならないように、ブロッキング防止剤を加えたりすることができる。
【0019】
本発明除菌組成物は、以上説明してきたような除菌成分、発泡成分、及び界面活性剤等を適宜選択し、例えばパウダー状に加工して、これらのものを所定量混合してなるものであるが、本発明では、揮発した除菌成分を保持する泡沫を形成させるための発泡成分及び界面活性剤を、揮発性の除菌成分と共に組成物中に含有させた構成を採用した点が特に重要である。
【0020】
このため、本発明除菌組成物によれば、該除菌組成物を高湿条件下におくだけで泡沫が形成され、且つ、該泡沫内には揮発した除菌成分が保持されるので、除菌処理の対象となる物品に除菌成分を充分に接触させることができる。従って、対象物全体を密閉空間内に封じ込めずとも、本発明除菌組成物を除菌処理の対象物に散布してこれに水等を添加するだけで、気相にあるときにその効力が最大に発揮される揮発性の除菌成分の除菌効果を効率良く得ることができる。
【0021】
次に、本発明除菌方法を説明する。
【0022】
本発明除菌方法は、イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類をシクロデキストリンに包接、又はマイクロカプセル化してなる除菌成分、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、及び有機酸からなる発泡成分、及び界面活性剤を少なくとも含有する除菌組成物を、除菌処理対象物に散布した後に高湿条件下において発泡成分を反応せしめて泡沫を形成し、且つ該泡沫内に揮発した上記イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類を保持して、該イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類を除菌処理対象物に接触させることによって除菌処理を行うことを特徴とするものである。
【0023】
本発明方法における上記除菌組成物は、具体的には前述したような組成のものが用いられ、本発明方法を実施するにあたっては、先ずこのような除菌組成物を除菌処理を施す対象となる物品にできるだけ均一に散布する。
【0024】
次いで、除菌対象物上に散布された除菌組成物に水等を添加することによって、除菌組成物中の発泡成分を反応せしめて上記対象物上に泡沫を形成するとともに、イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類をシクロデキストリン、又はマイクロカプセル中から放出させる。尚、対象物が濡れた状態にあるときには、水等を添加する必要は特にない。
【0025】
そして、本発明方法では揮発した上記イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類を除菌対象物上に形成された泡沫内に保持せしめ、気相にあるイソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類を当該除菌対象物に接触させることによって除菌処理が行われる。
【0026】
本発明方法によれば、気相において除菌効果が最大に発揮される揮発性の除菌成分によって除菌処理を施すにあたって、対象物全体を封じ込めるための密閉空間を形成する必要は特になく、除菌組成物を除菌処理対象物に散布した後、散布された除菌組成物に単に水等を添加する等して該組成物を高湿条件下におくだけで、除菌対象物の除菌処理を効率良く手軽に行うことができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0028】
〔実施例1〕
次の組成で本発明除菌組成物を調製した。
【0029】
(除菌成分)
アリルイソチオシアネート−シクロデキストリン包接化合物・・・・・ 3重量%
(発泡成分)
炭酸ナトリウム ・・・・・30重量%
リンゴ酸 ・・・・・40重量%
(界面活性剤)
パーソフトSK(日本油脂株式会社製) ・・・・・ 2重量%
(増量剤)
硫酸ナトリウム ・・・・・25重量%
【0030】
〔比較例1〕
本発明除菌組成物において該除菌組成物中に界面活性剤を含有させたことによる効果を確認するために、界面活性剤のみを除いた以外は上記実施例1の除菌組成物と同じ組成で除菌組成物を調製した。
【0031】
上記実施例1、及び比較例1について以下の試験1、2を行った。尚、各試験において用いた比較例1の除菌組成物の全量は、試験に用いた実施例1の除菌組成物の全量から界面活性剤だけを除いた量と等しくなるようにした。
【0032】
〔試験1〕
容積450mlのガラス製容器内底面に上記組成の除菌組成物を1g散布し、これに2mlの水を注入した後に容器を密閉したときの、時間経過に伴う容器内における気相中でのアリルイソチオシアネート(AITC)の濃度変化をガスクロマトグラフを用いて測定した。
【0033】
また、比較例1の除菌組成物についても上記試験1と同様にして、時間経過に伴う容器内における気相中でのアリルイソチオシアネートの濃度変化を測定した。
【0034】
これらの結果を表1、及び図1に示す。尚、図中、○で示されたグラフは実施例1の除菌組成物についてのものであり、△で示されたグラフは比較例1の除菌組成物についてのものである。
【0035】
【表1】
※但し、気相中のAITC濃度の欄の上段は実施例1の除菌組成物についての測定値であり、下段( )内は比較例1の除菌組成物についての測定値である。
【0036】
上記試験1の結果から、界面活性剤を含む実施例1の除菌組成物の方が、界面活性剤を含まない比較例1のものよりも気相中に揮発していくアリルイソチオシアネートの量が少ないことが判る。組成物中の除菌成分の量が同じであれば、揮発するアリルイソチオシアネートの量は界面活性剤の有無には影響されず一定のはずであるから、界面活性剤を含んでいる方が気相中に揮発していくアリルイソチオシアネートの量が少ないということは、この場合、揮発したアリルイソチオシアネートは容器内に拡散せず、界面活性剤によって形成された泡沫内に保持されているということが容易に理解できる。従って、本発明除菌組成物において該除菌組成物中に界面活性剤を含有させることによって、揮発したアリルイソチオシアネートを界面活性剤によって形成された泡沫内に保持し、除菌処理面におけるアリルイソチオシアネート濃度をより長い時間、高く維持することができるので、除菌処理面に気相にあるアリルイソチオシアネートを充分に接触させて、除菌効果を効率良く得ることが可能になる。
【0037】
〔試験2〕
120℃の温度で15分間、ポリプロピレン製のまな板(縦×横;200mm×400mm)に水蒸気滅菌処理を施した後、該まな板の表面に納豆菌懸濁液を塗布し、自然乾燥させて被検体を準備した。次に、上記まな板の表面に実施例1の除菌組成物10gをできるだけ均一に散布し、これに水を添加して発泡させた。発泡開始から一定時間経過した後に、まな板表面を水洗いして泡沫を除去し、まな板表面に残存する菌をスタンプアガー培地を用いて採取した。次いで、採取した菌を25℃の温度条件で24時間培養し、培地上のコロニーの数を測定した。発泡開始から泡沫を除去するまでの時間(処理時間)と、まな板表面に残存する菌の数との関係を図2に示す。尚、まな板表面に残存する菌の数は、培地の面積とまな板の面積との比から培地上のコロニー数を換算して求めた。
【0038】
更に、比較例1の除菌組成物についても上記試験2と同様の試験を行い、処理時間とまな板表面に残存する菌の数との関係を求め、この結果を併せて図2に示した。尚、図中、○で示されたグラフは実施例1の除菌組成物についてのものであり、△で示されたグラフは比較例1の除菌組成物についてのものである。
【0039】
いずれの場合も、まな板上に残存する菌の数は、処理時間が長くなるに伴って減少しているが、界面活性剤を含まない比較例1にあっては、5分間処理した後にもまな板上に菌が残存しており、完全に除菌することができなかった。これに対して、界面活性剤が含まれている実施例1においては、5分間処理した後には完全に除菌されていることが確認できた。また、同じ処理時間であっても比較例1よりも実施例1の方が除菌効果に優れていることが、図2のグラフから読み取ることができる。
【0040】
また、本発明除菌組成物において、除菌成分を保持する泡沫を発泡剤の反応により発生した気体によって形成したことによる効果を確認するために、以下の組成で除菌組成物を調製して試験3を行った。
【0041】
〔実施例2〕
(除菌成分)
アリルイソチオシアネート−シクロデキストリン包接化合物・・・・・2.4重量%
(発泡成分)
炭酸ナトリウム ・・・・・23.8重量%
リンゴ酸 ・・・・・23.8重量%
(界面活性剤)
パーソフトSK(日本油脂株式会社製) ・・・・・2.4重量%
(増量剤)
硫酸ナトリウム ・・・・・47.6重量%
【0042】
〔比較例2〕
発泡成分を除いた以外は上記実施例2の除菌組成物と同じ組成で除菌組成物を調製した。
【0043】
〔試験3〕
実施例2の除菌組成物4.2gを200mlメスシリンダー(内径約3.1cm)中に取り、更に水20mlを添加して発泡成分を反応させて泡沫を形成し、形成された泡沫の高さの変化をメスシリンダーの目盛りで読み取った。これに対して、メスシリンダー中に入れた実施例2の除菌組成物の全量から発泡成分だけを除いた量と等しい量で比較例2の除菌組成物を上記メスシリンダーと同一のメスシリンダーに取り、これに水20mlを添加した後に泡沫の高さが150mlの目盛りに達するまでストローで空気を吹き込み、泡沫の高さの変化をメスシリンダーの目盛りで読み取った。この結果を表1、及び図3に示す。尚、図中、○で示されたグラフは実施例2の除菌組成物についてのものであり、△で示されたグラフは比較例2の除菌組成物についてのものである。
【0044】
【表2】
【0045】
上記試験3の結果から、発泡剤の反応によって泡沫を形成した場合には、泡沫の形成がピークに達した後、形成された泡沫は徐々に減少していくのに対して、発泡剤に依らずに外部から空気を吹き付けて泡沫を形成した場合には、形成された泡沫は急激に減少してしまい持続性がないということが判り、本発明除菌組成物のように、揮発性の除菌成分を保持する泡沫を発泡剤の反応により発生した気体によって形成すれば、泡沫の形成が持続性のある安定したものとなり、揮発した除菌成分を泡沫内に継続的に一定時間保持させておくことができる。
【0046】
更に、本発明除菌組成物の各種菌類に対する除菌効果を確認するために、以下の試験4〜6を行った。
【0047】
〔試験4〕
市販されているDrigalski寒天培地(半径8cm)に大腸菌懸濁液を塗布した後に自然乾燥させ、実施例1の除菌組成物を0.3g散布したものと、何もしないものとを準備し、これらのものに生理食塩水2mlをそれぞれ注入して除菌組成物を散布したものにあっては該除菌組成物を発泡させ、しかる後、37℃で15時間培養した。
【0048】
培養後それぞれの培地を観察すると、実施例1の除菌組成物を散布したものは寒天上の生理食塩水は清澄のままであった。これに対して、生理食塩水だけを注入したものは大腸菌の繁殖が著しく、寒天上の生理食塩水が極端に濁っていた。この結果、本発明除菌組成物が、大腸菌に対して有効な除菌効果を発揮できることが判った。
【0049】
〔試験5〕
市販されているTCBS寒天培地(半径8cm)に腸炎ビブリオ菌懸濁液を塗布した後に自然乾燥させ、実施例1の除菌組成物を0.3g散布したものと、何もしないものとを準備し、これらのものに生理食塩水2mlをそれぞれ注入して除菌組成物を散布したものにあっては該除菌組成物を発泡させ、しかる後、37℃で15時間培養した。
【0050】
培養後それぞれの培地を観察すると、実施例1の除菌組成物を散布したものは寒天上の生理食塩水は清澄のままであった。これに対して、生理食塩水だけを注入したものは腸炎ビブリオ菌の繁殖が著しく、寒天上の生理食塩水が極端に濁っていた。この結果、本発明除菌組成物が、腸炎ビブリオ菌に対しても有効な除菌効果を発揮できることが判った。
【0051】
〔試験6〕
市販されているMannitol Salt寒天培地(半径8cm)に黄色ブドウ球菌懸濁液を塗布した後に自然乾燥させ、実施例1の除菌組成物を0.3g散布したものと、何もしないものとを準備し、これらのものに生理食塩水2mlをそれぞれ注入して除菌組成物を散布したものにあっては該除菌組成物を発泡させ、しかる後、37℃で15時間培養した。
【0052】
培養後それぞれの培地を観察すると、実施例1の除菌組成物を散布したものは寒天上の生理食塩水は清澄のままであった。これに対して、生理食塩水だけを注入したものでは黄色ブドウ球菌が繁殖し、寒天上の生理食塩水が若干濁った状態になっていた。この結果、本発明除菌組成物が、黄色ブドウ球菌に対しても有効な除菌効果を発揮できることが判った。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明除菌組成物によれば、除菌組成物を高湿条件下におくだけで泡沫が形成され、且つ、該泡沫内には揮発した除菌成分が保持されるので、除菌処理の対象となる物品に除菌成分を充分に接触させることができ、対象物全体を密閉空間内に封じ込めずとも、本発明除菌組成物を除菌処理の対象物に散布してこれに水等を添加するだけで、気相にあるときにその効力が最大に発揮される揮発性の除菌成分の除菌効果を効率良く得ることができる。
【0054】
また、本発明において、イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類等の不安定なものを除菌成分として用いる場合には、これらのものをシクロデキストリンに包接、又は、マイクロカプセル化しておけば、除菌成分の安定性を向上させることができるとともに、高湿条件下におかれた包接化合物、又はマイクロカプセルから徐々に除菌成分が揮発し、それに伴って除菌効果が発揮されるよう、本発明除菌組成物の使用時における除菌成分の除放性を図り、少なくとも除菌組成物中の包接化合物又はマイクロカプセルの全てが高湿条件下におかれるまでの間継続して除菌効果が発揮されるようにすることができる。
【0055】
更に、本発明方法によれば、気相において除菌効果が最大に発揮される揮発性の除菌成分によって除菌処理を施すにあたって、対象物全体を封じ込めるための密閉空間を形成する必要は特になく、除菌組成物を除菌処理対象物に散布した後、散布された除菌組成物に単に水等を添加する等して該組成物を高湿条件下におくだけで、除菌対象物の除菌処理を効率良く手軽に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験1の結果を示すグラフである。
【図2】試験2の結果を示すグラフである。
【図3】試験3の結果を示すグラフである。
Claims (5)
- 揮発性の除菌成分を含む除菌組成物であって、当該除菌成分と共に少なくとも水分と反応して気体を発生する発泡成分及び界面活性剤が含まれていることを特徴とする除菌組成物。
- 揮発性の除菌成分が、イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類である請求項1記載の除菌組成物。
- イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類をシクロデキストリンに包接、又はマイクロカプセル化した請求項2記載の除菌組成物。
- 水分と反応して気体を発生する発泡成分が炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、及び有機酸とからなる請求項1、2、又は3記載の除菌組成物。
- イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類をシクロデキストリンに包接、又はマイクロカプセル化してなる除菌成分、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、及び有機酸からなる水分と反応して気体を発生する発泡成分、及び界面活性剤を少なくとも含有する除菌組成物を、除菌処理対象物に散布した後に高湿条件下において前記発泡成分を反応せしめて泡沫を形成し、且つ該泡沫内に揮発した上記イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類を保持して、該イソチオシアネート類及び/又はチオシアネート類を除菌処理対象物に接触させることによって除菌処理を行うことを特徴とする除菌方法。
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