JP3602285B2 - 水晶共振器回路の立上がり振動特性のコンピュータ支援による反復的検出方法 - Google Patents
水晶共振器回路の立上がり振動特性のコンピュータ支援による反復的検出方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、計算機を用いた、水晶共振器回路立上がり振動特性のコンピュータ支援による反復的検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明は、高精度な周波数基準を生成するための高効率品質を備えた水晶発振器にも関係する。この種の回路形態の意味合いは、例えばそれを用いることによって振り子時計等の最初のエスケープの不精度(これは月による重力の影響や地球の回転周期の僅かな不規則性によって引き起こされる)が証明されることを考えてみれば明らかである。
【0003】
ドイツ連邦共和国内だけでも平均して1世帯毎に7つ以上の水晶共振器が利用され、しかもこれらの構成素子は非常に幅広い拡張性を有しているにもかかわらず、今日までに、工場における専門開発者や技術者がそれらに要する回路をコンピュータによるオンラインで検査し最適化できるような手段はまだ存在していない。
【0004】
作動している水晶発振器の組立は極端に難しいわけではないという評価とは反対に、高価な発振器の設計は一般的な電子技術関係者には不明瞭で断片的にしかわからない。
【0005】
公知文献1“U.Feldmann et al,Algorithms for Modern Circuit Simulation,AEUE,Vol.46,No2,Hirzel-Verlag Stuttgart,274〜285頁、1992”に記載のいわゆる低安定形システムの過渡的分析方法を用いた立上がり振動特性の検出には、水晶共振回路への過渡的分析の適用に際してとりわけ次のような欠点が生じる。すなわち各計算単位への純粋な量的要求が過度に高くなる欠点を含んでいる。
【0006】
この場合明らかなことは、水晶発振器のシミュレーションの際に極端な立上がり時間が(作動電圧の急な引き上げによるシステムの起動の後で)観察され、それと共に、前述したような従来の過渡的分析(公知文献1)においては立上がり終了状態が来るまでは非常に多くの周期計算の必要性も生じることである。
【0007】
立上がり経過の持続時間は、選択された動作点と共振器の品質に依存する。
【0008】
大ざっぱな原則として立上がり時間tfは、以下のように推定される。
【0009】
tf=104〜107*T
この場合前記Tは共振器電圧の振動周期を表す。
【0010】
基準周波数が50の“走査レート”を基礎とするならば、この例では少なくとも500000の積分ステップの手間が生じる。この手間は、中程度の品質でそれ自体最小の回路が有意な精度要求のもとで最新ワークステーションに対して6〜8時間の計算時間を要求する。さらに大きな回路で品質の高い共振器の場合には、このコストは殆ど任意に上昇する。総体的に計算時間は数週間にも及ぶ結果となり、これは水晶共振器回路の立上がり振動特性を求める期間中に到来するデータに対する異常な記憶スペースの要求を伴う。
【0011】
このようなばく大な計算時間の要求の問題は、公知文献2“I.Ivanisevic,The Quarz Crystal Oscillator Realization Using Current Conveyors,IEEE Transactions on Circuits and Systems-I: Fundamental Theory and Applications,Vol.40,No.8,530〜533頁、
August 1993”から公知の方法によって解決される。この方法では、発振器インダクタンスLmと、共振キャパシタンスCmと、共振器抵抗Rmを有する水晶共振器の等価回路で、発振器インダクタンスLmは低減され、発振器キャパシタンスCmは高められる。さらに共振器抵抗Rmは不変にされる。それにより今日では、システムの振動性が検査可能となる。しかしながら立上がり期間や、共振器回路で生じる周波数等の重要なパラメータは、いずれにせよそこからは導出できない。これは、この公知方法の決定的な欠点を表しており、異常な立上がり時間の問題は依然として残される。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、水晶共振器回路の立上がり振動特性のコンピュータ支援による反復的検出方法において、この方法実施のために計算機に要求される計算容量が大幅に低減されるように改善を行うことである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題は本発明により、水晶共振器の動的アームを流れる電流の初期振幅を求め、水晶共振器回路の動作点を求め、水晶共振器の等価回路を、水晶共振器の動的アームを流れる電流の初期振幅値を有する電流源に置き換え、前記置き換えられた電流源を有する水晶共振器回路に対して動的平衡状態を検出し、前記電流源を再び水晶共振器の前記等価回路に置き換え、水晶共振器回路の動的平衡状態に対して過渡的分析手法を用いて、水晶共振器の動的アームを流れる電流振幅の増加レートを求め、前記ステップb)からf)までを実施する毎にそれぞれ、前記増加レートがゼロよりも大きい場合には水晶共振器動的アームに、振幅の高められた電流を、そのつどの目下の増加レートが所定の閾値よりも小さくなるまで供給し、前記増加レートがゼロよりも小さい場合には水晶共振器動的アームに、振幅の低減された電流をそのつどの目下の増加レートが所定の閾値よりも小さくなるまで供給し、前記増加レートの反復的検出シーケンスから、水晶共振器回路の立上がり振動特性を検出するようにして解決される。
【0014】
本発明によれば、水晶共振器の動的なアームの電流の初期振幅を求めた後で、回路全体の動作点が求められる。水晶共振器の直列アームの等価回路は、電流源に代えられる。この電流源は、先行するステップで求められた初期振幅の大きさの電流を供給する
代替電流源を有する水晶共振器回路に対しては、例えばシューティング又は調和バランス手法を用いて動的な平衡状態を求められる。
【0015】
動的な平衡状態を求めた後では水晶共振器の等価回路が再び取り替えられ、電流源に代えられる。
【0016】
事前に求められた水晶共振器回路の動的平衡状態に対しては、過渡分析によって水晶共振器の動的アームを流れる電流の振幅の増加レートが求められる。このステップは、そのつどの反復ステップ毎の増加レートが所定の閾値よりも小さくなるまでは反復的に行われる。各反復ステップ毎にこの方法ステップは新たに行われる。これは水晶共振器の動的アームを流れる電流の振幅の増加レートの大きさに依存する。これは、先行する反復ステップでの増加レートがゼロよりも大きい場合は、水晶共振器の動的アームの、振幅中に高められた電流でもって行われ、増加レートがゼロよりも小さい場合は振幅中に低減された電流でもって行われる。
【0017】
ゼロよりも大きい1つの値を有している、全ての求められた増加レートは、記憶され、これらの増加レートのシーケンスから最終的に水晶共振器回路の立上がり振動特性が検出される。
【0018】
これによって所要計算時間に関して良好なレベルの立上がり振動特性を実現する初めての手段が達成される。本発明による方法の決定的な利点は、代替電流源の引き上げが共振器振動の周期期間と比べて大きなステップで実施可能なことである。これは場合によっては数万周期の間隔が電流源の時間軸上で明確に分離された個々の振幅値に相応することを意味する。
【0019】
それにより立上がり振動特性はポイント毎にだけ、そして以下に述べられるパッシブな位相条件を備えて、算出される。
【0020】
これらの時間的に部分抽出されたパラメータからはグローバルな特性が再現され、それと共に立上がり振動特性が確定される。
【0021】
本発明の別の有利な実施例は従属請求項に記載される。
【0022】
例えば有利には、動的平衡状態の検出に対していわゆるシューティング手法が適用される。
【0023】
しかしながらそれに対して選択的に有利には、動的平衡状態の検出に対していわゆる調和バランス手法も用いられる。
【0024】
同様に有利には、計算すべき回路のモデル化に対して負の抵抗モデルが適用される。
【0025】
本発明の別の有利な実施例によれば、立上がり振動特性の検出が次のように行われる。すなわち記憶された増加レートのシーケンスから、時間ステップのシーケンスが検出され、この時間ステップのシーケンスの和から水晶共振器回路の立上がり期間が得られる。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に本発明を図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
図1にはモデル化すべき水晶共振器の等価回路EOが示されている。
【0028】
この等価回路EOは、以下の構成要素を有している。
【0029】
−共振器インダクタンスLmと、共振器キャパシタンスCmと、共振器抵抗Rmを備えた直列アームSAと、
−並列キャパシタンスC0を備えた並列アームPAを有している。
【0030】
この等価回路EO及び水晶共振器は、任意の回路SCHに接続される。
【0031】
本発明による方法に対して有利には、並列キャパシタンスC0は、回路パラメータの算出の際に回路SCHに割当てられる。
【0032】
さらに本発明の別の有利な実施例では、等価回路EOの直列アームSAが以下で説明する非依存性の電流源に代えられる。
【0033】
回路SCH(これは任意の回路装置を有し得る)に対しては、この回路が能動的であることが見て取れる。すなわちエネルギーを直列アームSAに供給している。この仮定は水晶発振器の振動に対して重要である。なぜなら等価回路EOがパッシブな共振器抵抗Rmを有しているからである。
【0034】
すなわち直列アームSAはエネルギーを必要とする。それによって水晶発振器の振動に対する前提条件が満たされる。このエネルギーは回路SCHに供給される。能動回路SCHにおいて重要なことは、いわゆる負の抵抗モデルにおいての考慮である。この場合回路SCHは、並列アームPA、すなわち並列キャパシタンスC0に加えて、負荷キャパシタンスC_と負荷抵抗R_からなる直列回路としてモデル化される(図2参照)。負荷抵抗R_からは振動に必要なエネルギーがこのモデルの枠内で供給される。
【0035】
本発明による方法は有利には、水晶共振器回路の構成における設計仕様の検証のために用いることができる。
【0036】
ここに示された方法は、少なくともその正確性において方法の結果が非常に良好であるいくつかの仮定が基礎にされている。
【0037】
一方ではこの方法は、水晶共振器の高い品質から出発し、圧電材料として水晶を特徴付けると共に水晶の製造手法に大きく依存しサイズオーダでは確定されている定数から直接派生する。
【0038】
それにより、水晶の幾何学的寸法及びカットデータと、水晶共振器回路内の水晶共振器の電気特性との間の基本的な関係が成り立つ。
【0039】
水晶共振器の品質が高ければ高い程、本発明による方法の結果はより良好となる。
【0040】
さらに本発明による方法は、基本波又は振動モードの調和に関する情報のみを提供する。スプリアス応答(いわゆるスプリアスモード)の考慮も本発明による方法では行われない。しかしながらこのことは目立った欠点にはならない。なぜならこのスプリアス応答は通常は考慮されないものだからである。この構成側の設定からの直接的な結果として、開発者には次のような要求、すなわち数値的なシミュレーションに頼ることなく、不所望な周波数又は不所望な複数の周波数上で水晶発振器が振動しないように配慮する要求が課せられる。
【0041】
とりわけ処理のよくない水晶で生じる、高い共振器電流での大きな負荷のもとでの非線形特性は、本発明による方法によって考慮はされない。このことは電気的な等価回路の素子が制御に依存する値を有していることを意味する。
【0042】
スイッチオン過程及び振動開始過程に関する仮定
非線形的なシステムの典型的な分析では、いつでも無視されるかないしは周知の前提条件とされる影響量は、使用される初期値のセットy(0)である。これは微分方程式系F(y,y’,t)をまず完全な初期値問題から遠ざける。
【0043】
このような関係において重要な課題は、極度に跳躍的ではない形態で受け取られたスイッチオン過程や、以下の式
【0044】
【数2】
【0045】
によってモデル化された作動電圧Uop特性がどのように、共振器の初期電気特性に反映されているかである。
【0046】
この場合前記U0は終了作動電圧を示し、τopはスイッチオン時定数である。
【0047】
前記tは時間を表している。
【0048】
このことは、第2の導入すべき時定数τ0の値と、外部共振器電圧の初期振幅UR,0の値の評価行われなければならないことを意味している。前記外部共振器電圧は、以下の式
【0049】
【数3】
【0050】
によってモデル化される。
【0051】
第3の時定数は、回路本来の動作点が単に遅れのみで達成されることが考慮される場合に導入可能である。このことは、動作点−時定数τAPによって記述される。
【0052】
本発明による方法はさらなる別の仮定、すなわちスイッチオン過程が時定数τ0と動作点−時定数τAPに比べて非常に早いものと推定される仮定にも基づく。
【0053】
これは以下の関係式
τOP << τ0.τAP (3)
を意味する。この条件は通常の状況下では充たされるものである。
【0054】
さらに別の方向からは、例えば作動電圧の極端に遅延された引き上げ等のような作動電圧の操作がなぜ前記本発明内部で考慮できないのかという見解が持ち上がるが、スイッチオン過程が、根底にある動作周波数の最大のいくつかの周期の持続時間の経過として受け入れられる場合にのみ、本発明の方法にとって不可欠な考察が有効となる。
【0055】
複素周波数s=jxωによって表される、水晶共振器直列アームの伝達アドミタンスは、以下の通りである(図2参照)。
【0056】
【数4】
【0057】
この場合わかりやすくするために共振器素子のインデックスmは省かれている。
【0058】
さらに、水晶共振器が前記式(2)に従って増加する外部電圧に対しては無負荷動作を示し、さらに2つのパラメータが相関付けされていることを前提とするならば、定数c=1/τ0での共振器電流ILのラプラス変換に対して以下の関係式が得られる。
【0059】
【数5】
【0060】
さらにいくつかの変形により以下の式が得られる。
【0061】
【数6】
【0062】
畳み込み定理の使用並びに現れた積分に対する帰納的数式の支援のもとで共振器電流に対して以下の式が成り立つ。
【0063】
【数7】
【0064】
さらに以下の式の置換によって、
【0065】
【数8】
【0066】
以下の式のように時間tに関する共振器電流IL(t)が得られる。
【0067】
【数9】
【0068】
共振器電流の振幅IL,0は以下の式から得られる。
【0069】
【数10】
【0070】
それにより、採用された仮定に対して共振器電流の特性を作動電圧の供給の後で正確に表す関係式が得られる。
【0071】
インデックス0はここでは、t=0の意味と混同されないようにしなければならない。これは単に、僅かな周期の後で設定される初期電流を意味するだけである。
【0072】
以下の関係
1/(L・C)>>(R/2L)2 (11)
を仮定すれば、水晶共振器の動的アーム、ここでは直列アームSAの電流の初期振幅IL,0が以下の式
【0073】
【数11】
【0074】
から得られる。
【0075】
さらに以下の関係
R・C・τ0 <<L・C (13)
を想定すれば、以下の式のような共振器電流の非常に簡素な初期振幅IL,0が得られる。
【0076】
【数12】
【0077】
前述した共振器電流の初期振幅IL,0の計算に関する基本的特徴は、公知文献4“A.Rusznyak,Start-Up Time of CMOS Oscillators,IEEE Transaction on Circuits and Systems ,Vol.34,No3, 259〜268頁,Maerz 1987”にも記載されている。
【0078】
振動開始過程に関するさらに別のアルゴリズムに基づく仮定は、以下の通りである。
【0079】
UR,0=UR,AP (15)
この関係から共振器電流の初期振幅IL,0は以下の式によって得られる。
【0080】
【数13】
【0081】
このことは同時に、共振器内の初期電流だけが動作点の計算によって検出されるのではなく、他の全ての回路網パラメータも検出されることを意味している。それにより動作点−時定数τAPの作用によって、以下に述べる別の共振器時定数τRがその値の中で優勢になった場合に初めて妥当性を有することは考慮されない。
【0082】
さらに図2に示されている負の抵抗モデルが採用された場合には、水晶共振器の等価回路EOは、負荷キャパシタンスC_と負荷抵抗R_でもって容量結合される。この負荷キャパシタンスC_と負荷抵抗R_によって回路SCHは、等価回路EOの並列アームPAに加えてモデル化される。
【0083】
二次の振動回路の周知の微分方程式並びに特徴的な多項式手段に従って、例えば公知文献5“N.Nguyen et al,Start-Up and Frequency Stability in High-Frequency Oscillators,IEEE Journal of Solid-State Circuits,Vol.27,No.5 810〜820頁,Mai 1992”にて行われている近似によりこのシステムの解決手段として得られる。
【0084】
IL(t)=IL(0)eα・t・cos(ω・t−θ) (17)
この手段は、根底にある振動cos(ωt−θ)からなっており、これは指数項eαtによって確定される包絡線特性によって変調される。
【0085】
このシステムは、係数αが正の値を有する場合にのみ、すなわち係数αが以下の式
【0086】
【数14】
【0087】
で定義され、周波数ωが以下の式
【0088】
【数15】
【0089】
で定義される場合に、有効な解決手段となる。
【0090】
負の抵抗R_は、絶対値の点で共振器抵抗Rmよりも大きな値を有している。この以下に記載する関係は、システムの有効な解決手段のための重要な前提条件となる。
【0091】
|R_|>Rm (20)
指数的動特性の評価
これについての説明に対してはまず適する位相角度の設定についてから始める(但しこれはあくまでもその一般性を制限するためのものではない)。この場合の位相角度θ=90゜である。
【0092】
しかしながらその他の位相角度θの設定も可能である。
【0093】
いくつかの変形によって共振器の直列アームを通る、時間に依存した電流と、共振器キャパシタンスCmにおける低下電圧に対しては以下の式が成り立つ。
【0094】
IL(t)=−IL(0)・eα・t・sin(ω・t)
UC=UC(0)・eα・t・cos(ω・t) (21)
期間t=0のもとで開始され、位相角度θの選定によってシステムは共振器電流IL(t)のゼロ通過からの出発が観察される。すなわち正から負への値である。
【0095】
正確に1周期の後でシステムは以下の電圧振幅値に達する。
【0096】
UC(T)=UC(0)・ eα・T (22)
係数αが一般的に一定でないことを考慮すれば、この係数αも基礎となる振動の1つの周期に亘る各任意の時点t毎に有効な共振器電気量の動特性を表す。
【0097】
他の位相角、すなわち90゜以外の位相角が設定されている一般的な場合では
電流の動特性は以下の式に従って評価可能である。
【0098】
IL(t)=−IL(0)・eα・T (23)
動作点における相関的な振動時定数α0は、以下の式によって定義される。
【0099】
【数16】
【0100】
この場合全回路網の初期状態が動作点計算によって求められることが確定されなければならない。
【0101】
前記式(22)の項eαTは、次のように書き換えられてもよい。
【0102】
eαT= UC(T)/UC(0)=1+Δ (25)
ここでは前記式(25)中の障害項Δが常に1よりも小さいことが表されている。この場合いずれにせよ、前記障害項Δの最大値は、共振器自体の材料特性によって決定され、この障害項の最大値Δmaxは次の式によって得られる。
【0103】
Δmax=π/2r (26)
材料定数rは次の式から得られる。
【0104】
r={(π2・N2)/8}・{(c・k・ε0)/e2} (27)
この場合前記Nは、振動モード(N=1:基本波)であり、
前記cは、弾性的剛性の係数であり、
前記kは、有効な誘電率であり、
前記eは、 圧電率であり、
前記kは、圧電結合係数であり、
前記ε0は、電気的なサセプタンスである。
【0105】
物理的領域から電気的等価回路の等価値へ変換され、通常は極端な計算時間に結び付く水晶共振器の材料特性はここではまず一度は限局される。すなわち少なくとも1つの周期に亘って有効な水晶共振器の直列アームのモデル化が以下の式で表されるサイン波電流源IS(t)として許容される。
【0106】
IS(t)=IS・sin(ω・t) (28)
直列アームの初期振幅値IS並びに周波数ωは、十分正確に検出できる。それにより水晶共振器が十分な近似で限局、すなわち少なくとも1つの周期に亘り非依存性の電流源としてモデル化される。
【0107】
但しここにおいて強調しておきたいことは、サイン波電流源による直列振動回路のモデル化が、立上がり状態の終了後だけにおいて有効なのでなく、立ち上がり振動期間中の特性も妥当に表されることである。このことは、前述した指数的モデル化手段が、水晶共振器回路の立上がり振動期間中の全ての時点、すなわち期間[0,tf]における全ての時点に対しても有効であることを意味する。
【0108】
共振器電流の支配特性
最初の調和において生じる共振器電流IS(t)は、前述したように代替電流源により“エミュレーション”される。これに対する重要なパラメータ=水晶共振器の動的アームを流れる電流の初期振幅値はこの場合、まず任意に設定可能である。前述したような置き換えの後ではまだ電圧が未知量として残る。これは水晶共振器全体では低下する。この電圧を共振器電流と相関付けもしくはこの電流から導出できるようにするために、本発明による方法とは異なるさらなる別の仮定がとり行われる。
【0109】
この仮定は以下の通りである。
【0110】
共振器時定数と動作点定数τAPの比に関しては立上がり振動特性は、共振器支配よりも下位におかれる。導入される時定数の特性としては以下の関係が示される。
【0111】
【数17】
【0112】
それにより、動作点の達成並びに、後続する立上がり振動経過において生じるシフトは、共振器により確定される立上がり振動過程の中へ埋め込まれるものとみなされる。
【0113】
その結果、動作点APの重要な全てのシフトは、回路がリニアに動作している限りは遠ざけられる。
【0114】
代替電流源によってその他の回路の特性は強いられる。これはそのつどの印加された振幅の大きさ、例えば水晶共振器の動的アームを流れる電流の初期振幅等に依存する。共振器電流の支配及び電流源の印加の仮定では、第2の未知量、外部共振器電圧を求める手段が提供される。
【0115】
非依存性の電流源への代替では、次のような強制的な条件が示される。すなわち残留する非線形的な回路網に共振器の電気量を強いることが示される。
【0116】
この強制条件と、共振器の支配的な立上がり振動過程の仮定、すなわち共振器の動的アームの支配的な共振器時定数τRの仮定を組み合わせるならば、回路網の他の全ての動的仮定は、同じ大きさかもしくは最良のケースではより小さい時定数によって特徴付けられる。これは内部振動開始過程で十分迅速に共振器に追従可能であり、残りの仮定の影響下で以下で述べるように形式化される、水晶共振器回路の立上がり振動特性の検出方法に対するフローチャートが定められる。
【0117】
次に本発明を図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0118】
本発明は計算機を用いて実施される。ブロック201において第1の時点t=0に対して水晶共振器回路の動作点APが求められる。さらに共振器の動的アーム内の電流の初期振幅が検出される。数値インデックスiには初期値0が割り当てられる。
【0119】
次のステップ202では、所定の振幅ISと周波数ω≒ωSを有する非依存性の電流源に置き換えられる。この場合周波数ωSは代替電流源から供給される電流の振動周波数を表している。
【0120】
この代替電流源を有する水晶共振器回路に対してブロック203では動的な平衡状態が求められる。
【0121】
これは公知の手法、例えばいわゆるシューティング手法や調和バランス手法によって行われる。これらの方法の詳細は例えば公知文献6“K.Kundert et al,Techniques for Finding the Periodic Steady-state Response of Circuits,Analog Methods for Computer-Aided Circuit Analysis and Diagnosis,T.Ozawa(ed.),marcel Dekker Inc.,ISBN 0-8247-7843-0,169〜203頁,1988”に記載されている。
【0122】
動的平衡状態の検出の後ではブロック204において代替電流源に対する水晶共振器の等価回路の再置換が行われる。
【0123】
この再度の初期回路装置状態への再置換に対してはブロック205において、時間領域での動的平衡状態に対していわゆる前記公知文献1記載の過渡的分析が場合によっては問題に合わせて修正された積分手法と共に実行される。
【0124】
本発明に適用可能な数値的積分手法は、当業者には公知である。
【0125】
これに対してはいわゆるオイラー積分手法(第1種、第2種)やいわゆる梯形積分が適用可能である。さらなる数値的積分手法は当業者には周知である(例えば前記公知文献1)。これらは本発明による方法において何等制約を受けることなく用いることができる。
【0126】
各積分ステップ(これはコンピュータによって実行され、そのつどの数値インデックスiで示される)毎に、数値インデックスiの値に依存して、以下に述べる処理が行われる。
【0127】
当該方法の開始時点で、つまり数値インデックスiが0の時点では、動作点の相関的振動開始時定数α0<0であるか否かが検査される。
【0128】
この条件に該当する場合には回路の振動性が否定され、当該方法は終了する。
【0129】
この方法のさらなる全ての反復ステップに対して、すなわち数値インデックスi>0の場合の全ての値に対しては、それぞれ動作点における相関的振動開始時定数を求める水晶共振器動的アームの電流振幅の増加レートαiが求められたのと同じ形態かどうかが検査され、さらにこの増加レートαiに対してこれが正の値を有しているのか又は負の値を有しているのかがブロック206で検査される。
【0130】
増加レートαiがそのつどの積分ステップiにおいて負の値を有している場合には、以下に述べる次の反復ステップi+1に対して当該方法は、ブロック207にて低減された代替電流源の電流の初期振幅ISの値で実施される。
【0131】
しかしながら前記増加レートαi>0の場合には、当該方法は次の反復ループにて代替電流源による水晶共振器動的アームの電流のブロック208で高められた初期振幅ISでもって実施される。
【0132】
この場合は増加レートαiはブロック209にて記憶される。
【0133】
さらに増加レートαi>0の場合には、αi+αi - 1の和に基づいて2つの状態の間で経過した期間が求められる。
【0134】
前記増加レートαiの値が0以上であるが、所定の閾値ε以下であり(ブロック210)、それに伴ってR_の絶対値マイナス共振器抵抗Rmもεより小さい場合にはこの計算がブロック211で終了する。
【0135】
別のケースにおいて数値インデックスiが値1だけ高められ(ブロック212)、電流源の振幅値ISもそれぞれ増加レートαiに依存して前述のように高められた場合には、ブロック202にて新たに当該方法全体が、ここにおいて選択される電流源振幅値ISでもって非依存性の電流源の代替で開始される。
【0136】
反復ステップに対して増加レートαi>0の場合には、この増加レートαiがそのつどの反復ステップ毎に記憶される(ブロック209)。
【0137】
しかしながら増加レートαi<0の場合には、この値は記憶されない。
【0138】
記憶された増加レートαiからは立上がり振動期間tfの検出を近似的に行うこともできる。これは有利には全ての計算期間ステップΔtiの和から得られ、これに対しては以下の比例関係が成り立つ。
【0139】
【数18】
【0140】
この比例関係は以下で詳細に説明する。
【0141】
そのつどの反復ステップiに対する期間ステップ(Δt)iでもって、順次連続する2つの値IL,ISの間の時間軸上の間隔(IL〜IS)が表される。水晶共振器の端子に作用する負の抵抗R_の絶対値が共振器抵抗の値Rmに近似しているならば、すなわち適切に選択された閾値εとの関係が以下の通り、
|R_|−Rm<ε (31)
であるならば、立上がり振動過程は終了したものとみなすことができる。
【0142】
増加レートαiの値のもとでの代替電流源の振幅ISの順次連続する引き上げ、いわゆるソースステッピングは、当業者に公知の制御に従って行われる。
【0143】
ここで留意すべき点は、水晶共振器内で1サイクル中に消費される電気エネルギが同じ期間中に再度供給される場合にはシステムの限界サイクルが達成されたものとみなせることである。そのため水晶共振器と回路は、エネルギ的な意味において均衡状態にある。
【0144】
以下においてその個々の構成部分に関してより厳密に特殊化される方法の大きな利点は、既に前述したように、代替電流源の引き上げが発振器周波数の周期期間よりも大きなステップで行うことができることである。
【0145】
このことは、時間軸上で個別に明確に分離される電流源の振幅値ISが場合によっては数万周期の間隔にも相応することを意味する。それにより立上がり振動特性はポイント毎に、そして包絡線特性の続く適した位相条件を備えて算出される。このような局所的に抽出されたパラメータからはグローバルな特性が再生され、それと共に立上がり振動期間も検出される。
【0146】
本発明による方法の開始時点では、前述したように動作点の検出も行われる(ブロック201)。これはいわゆるDC分析によって行われる。2つのキャパシタンスCm,C0によって水晶共振器はこの分析期間中は回路網内部で作用しない。
【0147】
前述したような共振器電流の初期振幅の検出に対する関係式は以下の通りである。
【0148】
【数19】
【0149】
前記パラメータUR,0に対しては、動作点APに対して求められた値が利用され、前記パラメータτ0は初期値0を有している。
【0150】
適用サイドからは前記関係式(32)における時定数τ0の代入による操作が可能である。この手法によれば、それによって誘起される電流がシステムの振動開始に十分な大きさを有しているかどうかがはっきりしないような場合に、状況に応じてクリティカルな投入接続処置をシミュレーションできる。
【0151】
電流源による置き換えでは初期の時間−周期系が非自発的に変換される。
【0152】
それによりこの系の状態ベクトルの算出に対して、電流源の周波数と振幅の設定の際に以下のような形態
y(T)=Y(0) (33)
の強制的な振動問題が解決される。この場合前記Tは周期を表す。従ってこの周期は、以下の式から得られる。
【0153】
T=2π/ω
この課題に対して公知技術の代表としてはシューティング手法と調和バランス手法(前記公知文献6)が存在する。このような手法による給電と所定のソース値に対して求められる初期回路網の状態ベクトル
y(T)=Y(0)
は、次に示す新たな初期値問題、
F(y,y’,ti)=0 ti≦t≦ti+p*T
を周知のy(0)と伴い、1つ又は複数の周期に亘るその解決手段は以下の条件
ti≦t≦ti+p*T,1≦p≦pmax
に当てはまる動的特性を供給する。
【0154】
ここに挿入されているパラメータpmaxは、過渡的分析内の積分すべき周期の最大数を示す方法パラメータを表している。シューティング手法又は調和バランス手法の最終的に大きな中断エラーによっては一般的にさらに比較的迅速な補償過程が生じる。それによりpmax=2の値が必要かつ十分な値として求められる。
【0155】
これにより比較的簡単に増加レートαiが以下の式に従って確定される。
【0156】
【数20】
【0157】
ブロック203におけるシューティング手法又は調和バランス手法による動的平衡状態の検出と、ブロック204におけるそのつどの動的平衡状態に対する再置換の後でブロック205において過渡的分析が実施される。
【0158】
増加レートαiからは期間ステップΔtiが求められる。この期間ステップΔtiは有利には以下の式に従って検出される。
【0159】
【数21】
【0160】
本発明における個々のパラメータの正確な意味は以下のとおりである。
【0161】
UC(T)は直列アームの共振器キャパシタンスにて低下する電圧を表している。それに相応して増加レートαi - 1は共振器における時点ti - 1に対して有効な値である。UC((n−1)×T)は次の過渡的分析の開始値である。
【0162】
以下の関係式
UC((n−1)T)=ri・ UC(T) (36)
は、直列アームの共振器キャパシタンスにおける低下電圧のまず初めに一度評価された値を表している。
【0163】
ri∈Κ,ri>1は、計算の経過の中で適切に形成されるべき単調に低下するシーケンスである。これは電流源の引き上げに対する規定を提供する。
【0164】
直列アームの共振器キャパシタンスにて低下する電圧UCに対する予測値について述べるならば、この値はいずれにしても、そこから導出される動特性に対してαi>0の条件が満たされた場合にしか補正はできない。それ以外の場合ではこの予測値は放棄しなければならない。
【0165】
UC((n−1)T)が受け入れられる場合には、以下の式で示されるような処置が施される。
【0166】
【数22】
【0167】
これはα(t)の線形化の枠内で、最後に算出された値UC(T)と目下の値UC(n×T)の間の正確な時間的間隔を表す。
【0168】
前記UC(n×T)は1周期のみが計算された場合の分析の最終値である。
【0169】
個々の期間ステップ(Δt)iの形成のための前記式(35)を関与させることは重要なことではない。その他の依存関係、例えば前記多項式等もこの枠内では使用可能である。しかしながらこの場合重要なのは、増加レートαiの増加方向での変更と、期間ステップ(Δt)iの増加との間接的な比例関係の考慮が例えば前記式(30)のように表われていることである。
【0170】
総体的に当該方法の終了において立上がり振動期間tfに対して以下の式が成り立つ。
【0171】
【数23】
【0172】
本発明の方法は必然的にコンピュータによって実施される。
【0173】
なお前記本発明の参考として公知文献“L.Dworsky et al,A Simple Single Model for Quarz Crystal Resonator Low Level Drive Sensitivity and Monolithic Filter Intermodulation,IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics and Frequency Control,Vol.41,No.2,261〜268頁,maerz 1994”も参照される。
【図面の簡単な説明】
【図1】等価回路図の形態で示された水晶共振器のブロックの回路図である。
【図2】水晶共振器の等価回路の直列アームと、水晶共振器の等価回路の並列アームが負の抵抗モデルでモデル化されたブロックの回路図である。
【図3】本発明による方法の実施例のフローチャートである。
【符号の説明】
EO 等価回路
SA 直列アーム
PA 並列アーム
Lm 共振器インダクタンス
Cm 共振器キャパシタンス
Rm 共振器抵抗
Claims (6)
- 水晶共振器回路の立上がり振動特性のコンピュータ支援による反復的検出方法において、
a)水晶共振器回路の直列アーム(SA)を流れる電流(I s )の初期振幅を求め、
b)水晶共振器回路の動作点(AP)を求め(ブロック201)、
c)水晶共振器回路の等価回路を、水晶共振器回路の直列アーム(SA)を流れる電流の初期振幅値(IL,0)を有する電流源に置換え(ブロック202)、
d)前記置換られた電流源を有する水晶共振器回路に対する動的平衡状態を(ブロック203)、
e)前記電流源を再び水晶共振器回路の等価回路に置換え(ブロック204)、
f)過渡解析手法を用いることにより、水晶共振器回路の求められた動的平衡状態に対する、水晶共振器回路の直列アーム(SA)を流れる電流(I s )の振幅の増加レート(αi)を求め(ブロック205)、
g)前記b)からf)までを実施する毎にそれぞれ、
g1)前記増加レート(αi)がゼロよりも大きい場合(ブロック206,208,209)には、水晶共振器回路の直列アーム(SA)に、振幅の高められた電流(I s )を、そのつどの目下の増加レート(αi)が所定の閾値(ε)よりも小さくなるまで供給し(ブロック210、211、212)、
g2)前記増加レート(αi)がゼロよりも小さい場合(ブロック206,207)には、水晶共振器回路の直列アーム(SA)に、振幅の低減された電流(I s )を、そのつどの目下の増加レート(αi)が所定の閾値(ε)よりも小さくなるまで供給し、
h)前記増加レート(αi)の所定の反復的シーケンスから、水晶共振器回路の立上がり振動特性を確定するようにしたことを特徴とする方法。 - 動的平衡状態の検出に対してシューティング手法が適用される、請求項1記載の方法。
- 動的平衡状態の検出に対して調和バランス手法が用いられる、請求項1記載の方法。
- モデル化すべき回路(SCH)の等価回路として負の抵抗モデルが適用される、請求項1又は2記載の方法。
- 増加レート(αi)のシーケンスから、時間ステップ(Δti)のシーケンスが検出され、該時間ステップのシーケンスの和から水晶共振器回路の立上がり期間が得られる、請求項1〜4いずれか1項記載の方法。
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