JP3593445B2 - スクロールラップの加工方法およびその加工装置 - Google Patents

スクロールラップの加工方法およびその加工装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクロールラップの加工方法およびその加工装置に係り、特に、スクロール圧縮機の圧縮室を形成する旋回スクロールおよび固定スクロールのスクロールラップを加工する方法であって、インボリュート曲線で規定されるスクロールラップの形状と位置と寸法の精度を高精度かつ効率的に測定して加工機を補正するスクロールラップの加工方法およびその加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
まず、本発明の対象となる旋回スクロールおよび固定スクロールについて図8を参照して説明する。
図8は、スクロールラップの外観を示す斜視図で、(a)は旋回スクロール、(b)は固定スクロールの斜視図である。
図8(a),(b)にそれぞれ外観を示す旋回スクロール20と固定スクロール21は、空気調和機等のスクロール圧縮機に用いられており、互いに組み合わせて相対的な運動をさせることで、冷媒ガス等の圧縮機能を担っている。
【0003】
旋回スクロール20のスクロールラップ20aはインボリュート曲線で規定される厚さを有する渦巻形状の壁で形成されており、対になる固定スクロール21のスクロールラップ21aも同様である。このスクロールラップ20a,21aは互いに組み合わせて機密性を必要とする圧縮室を構成するため高い精度が必要とされている。通常、このスクロールラップは機械加工によって仕上げるが、加工したスクロールラップ20a,21aの精度を測定し、測定によって得られた結果をもとに加工装置の調整する部分と量を決めて調整して、以後の加工を行なっていた。
【0004】
スクロールラップ20a,21aを加工するための測定データを得る方法と装置の一例として、例えば、特開昭60−52702号に開示されているように、回転テーブルと直線移動軸とを組合わせて測定する方法および装置があった。
この測定方法および装置は、インボリュート曲線は基礎円の伸開線であるという特徴を活かして、形状に関わる測定を行う構成となっていた。
本先行技術のような測定方法および装置を加工装置と組合わせて、スクロールラップの加工が行われていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
スクロールラップの加工においては、加工装置を調整するために精度測定する必要がある項目の中で、特に重要であるのは、形状の偏差、厚さの偏差、基礎円中心位置の偏差、位相角の偏差である。しかし、前述の特開昭60−52702号に開示されている回転テーブルと直線移動軸を組み合わせて精度を測定する装置の構成は、主に形状の偏差を測定するように構成されており、その他の項目を測定する配慮がなされておらず、特に、厚さの偏差と位相角の偏差に関しては的確なデータを得る構成にはなっていなかった。
【0006】
このような従来技術による第一の問題点は次のとおりである。
スクロールラップの測定にあたっては、スクロールラップの外側の壁である外線と内側の壁である内線を評価する必要がある。形状の評価にあたっては測定で得られた座標点列の設計値からの偏差で評価するのが通例である。ここで、スクロールラップは加工した装置の変位等によって基礎円中心位置と位相角に偏差が生じており、形状の評価には不都合である。そこで、この基礎円中心位置と位相角の偏差を演算で除外する処置を講じ、形状の偏差のみを抽出して評価するようにしていた。
【0007】
この過程で、スクロールラップの形状の評価に最適な状態にするため、外線と内線の測定座標点列を、それぞれ単独に座標変換し、評価するのが通例であった。外線と内線とを別個に座標変換するため、外線と内線の測定座標点列の相対位置にずれが生じる。よって、工具の摩耗等によって生じる厚さの偏差は判断できず、また位相角の評価結果も誤差が多大になる問題があった。
【0008】
本発明の第一の目的は、上記第1の問題点を解決するためになされたもので、ただ1組の並行移動および回転移動の座標変換量を求め、これを基準からの偏差とすることで、測定データから加工装置を調整すべきデータを容易に、かつ正確に入手でき、ひいては精度の良好なスクロールラップを効率的に得られるスクロールラップの加工方法およびその加工装置を提供することにある。
【0009】
また、第2の問題点は次のとおりである。
上記の例で説明した座標変換の量と方向は、スクロールラップの基準からの偏差に等しい。この基準からの偏差として、基礎円中心の偏差と位相角の偏差があり、これらの値を知ることで、加工装置を修正することができる。しかし、従来は、外線と内線の測定座標点列をそれぞれ別個に座標変換していたため、基礎円中心位置と位相角の偏差は2通り求められる結果となっていた。すなわち、外線の基礎円中心位置と位相角の偏差が1通りと内線の基礎円中心位置と位相角の偏差が1通りとの合計2通りである。
【0010】
一方、スクロールラップの外線と内線は、同一の加工装置、同一の工具、同一座標系のもとで一筆書きの動作によって連続的に加工されるのが一般的である。よって、加工装置の変位状態は1通りである。この1通りの変位状態で加工したスクロールラップを測定した結果から、加工装置の修正に利用しようとする値が2通り求まるため、はなはだ不具合な問題があった。
【0011】
以上の第1,第2の問題点があったため、従来の測定ユニットでは形状の偏差は得られたものの、基礎円中心位置、位相角および厚さの偏差を得ることが不可能であった。このため、加工したスクロールラップから判断できない基礎円中心位置と位相角の偏差の調整量を知るには、加工装置の各軸の位置測定や回転軸の角度測定によって代行しており、加工装置を停止して行う内容のため著しく生産性を阻害するものであった。また、厚さの偏差は別の寸法測定機器、例えばマイクロメータのような寸法測定器を用いて測定する必要があり、手数が多大である上、精度が劣悪であるという問題があった。
【0012】
本発明の第二の目的は、上記第2の問題点を解決するためになされたもので、外線と内線のデータ両方を用い、座標変換したのちに設計値と測定値の偏差を求めて厚さを含んだ偏差を得ることができ、ひいては工具摩耗のため工具径が減少して発生する厚さの調整データを容易に、かつ正確に入手しうるスクロールラップの加工方法およびその加工装置を提供することにある。
【0013】
さらに、第3の問題点は次のとおりである。
測定座標点に対応する設計値を求めるにあたり、設計値に関するデータが必要となる。従来、一般的に、インボリュート曲線に限定されずに使用できる汎用的な手法が用いられていた。この手法は、設計値は数式ではなく座標点で設計値を与えるものであり、設計値に対応する測定点を求めるにあたっては汎用できる曲線を当てはめ、近似計算を行う処理を用いていた。曲線の当てはめには、インボリュート曲線は用いられていなかったため計算誤差を発生する原因になっており、特に設計値と測定座標点の距離が長くなるに従い計算による誤差が拡大していくという問題があった。
【0014】
本発明の第三の目的は、上記第3の問題点を解決するためになされたもので、設計値をインボリュート曲線の設計数式から求めることで、従来より測定データの評価精度を向上させることができ、ひいては加工精度を向上できるスクロールラップの加工方法およびその加工装置を提供することにある。
【0015】
またさらに、第4の問題点は次のとおりであった。
前述の測定ユニットの構成で、回転テーブルの回転中心はただ一点に存在するが、環境温度の変化によって測定ユニットの構造部材が熱変位すると、直線軸と回転テーブル中心との相対位置が変位する。インボリュート曲線では、長さと角度が等価であるため、この回転テーブル中心の変位は位相角の誤差になって評価される。よって、熱変位によって、位置ではなく位相角の測定誤差が生じるという問題があった。
【0016】
本発明の第四の目的は、上記第4の問題点を解決するためになされたもので、測定ユニットの熱変位の影響を除外でき、劣悪な加工現場環境にあっても高精度な測定が可能となるスクロールラップの加工方法およびその加工装置を提供することにある。
【0017】
上記を総合して、本発明の目的は、スクロールラップの形状と位置と厚さに関する評価を回転テーブルを用いた測定ユニットで行い、スクロールラップの加工装置に必要なデータを精度良く効率的に得、ひいては精度の良好なスクロールラップを効率的に得るスクロールラップの加工方法およびその加工装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の第1ないし第4の問題点を解決するためになされたものである。
上記第一の目的を達成するために、本発明のスクロールラップの加工方法に係る第一の発明の構成は、インボリュート曲線で規定される厚さを有するスクロールラップを、当該スクロールラップを載置する角度検出機能を備える回転テーブルと、スクロールラップに当接して少なくとも1方向の変位量を検出する測定子を取り付けた直線方向の位置検出機能を備える直線移動軸との組み合わせで精度測定し、その精度測定の結果に基づいて加工装置を調整して加工する方法であって、前記スクロールラップの外線と内線の精度を判定するためのデータを、少なくとも前記回転テーブルの角度と前記直線移動軸の位置とにより決まる測定座標点を複数有する測定座標点列群として収集した後に、前記外線と内線の測定座標点とおのおのの設計値との偏差の総和が最少となるように、前記外線と内線の座標点列群の両者を同一量かつ同一方向に平行移動する座標変換および回転移動する座標変換をして、続いて、前記外線と内線の測定座標点と当該設計値との偏差を求めた後に、その偏差の平均を求めて平均厚さとし、その平均厚さを解消するように、前記加工装置の工具径に関わるデータ、工具位置偏差に関わるデータ、および工具軌跡に関わるデータの少なくとも1つを修正して加工するようにしたものである。
【0019】
すなわち、外線と内線の測定座標点列を一括して座標変換することで、形状に関わる偏差のみでなく、寸法に関わる偏差も抽出することでスクロールラップの厚さを正確に判断可能とし、ひいては工具摩耗に関わる加工装置の調整を可能としたものである。
【0020】
また、上記第二の目的を達成するために、本発明のスクロールラップの加工方法に係る第二の発明の構成は、上記第一の発明の構成において、座標変換によって求めた平行移動する座標変換量と座標変換方向、および回転移動する座標変換量と座標変換方向を、それぞれ測定したスクロールラップの測定座標点と設計値との間における基礎円中心座標の偏差および位相角の偏差にして、これら基礎円中心座標の偏差および位相角の偏差を解消するように、前記加工装置に定めた工具の位置制御に関わるデータを修正して加工するものである。
【0021】
さらに、上記第三の目的を達成するために、本発明のスクロールラップの加工方法に係る第三の発明の構成は、上記の構成において、測定によって得られた各測定座標点と設計値との偏差を求めるにあたり、当該設計値は少なくとも当該スクロールラップの基礎円半径、基礎円中心位置、位相角を与えることでインボリュート曲線式から演算によって算出し、当該測定座標点に対する設計値をインボリュート曲線上に存在せしめるものであり、精度測定によって収集された外線と内線の座標点列群と設計値との偏差の総和が最少となるように、前記外線と内線の座標点列群の両者を同一量かつ同一方向に平行移動する座標変換量および回転移動する座標変換量を求めるにあたり、前記外線と内線の両者が存在する伸開角の範囲にある測定座標点列を抽出して用いるものである。
すなわち、第三の発明は、測定座標点に対応する設計値を求めるにあたり、設計値をインボリュート曲線の設計数式から求めることで、近似計算を用いず、誤差の発生を縮小しているものである。
【0022】
さらに、上記第四の目的を達成するために、本発明のスクロールラップの加工方法に係る第四の発明の構成は、上記の構成において、回転テーブルに設けた回転中心からの距離が既知である基準ゲージを測定し、直線移動軸に対する前記回転テーブル中心位置を把握する工程を含むものである。
すなわち、回転テーブルの回転中心近傍にゲージを取り付けて、このゲージと回転中心からの距離をあらかじめ別装置で測定しておき、ゲージの位置を測れば中心位置が把握できるようになっているため、環境温度の変化等によって機構が変位してもゲージを測定すれば、変位した後の回転中心位置を把握できるものである。
なお、上記スクロールラップの第1ないし第4の各加工方法を具現化するものが第1ないし第4の各加工装置である。
【0023】
【発明の実施の形態】
実施の形態の説明に入る前に、本発明に関わる基本的事項について、図1ないし図3を参照して説明する。
図1は、スクロールラツプの加工に関係して、回転テーブルを用いて精度を測定するユニットの構成を示した説明図、図2は、スクロールラップの設計上の構成の一例を示した説明図、図3は、スクロールラップを回転テーブルを用いて測定する方法を示した説明図である。
【0024】
前述のように、スクロール圧縮機には、スクロールラップを有する部品として旋回スクロールと固定スクロールがあるが、インボリュート曲線の巻方向が主な相違点であり、同様な説明となるので、以下では旋回スクロールのスクロールラップについて説明する。
図1は、スクロールラップの加工に関係して精度を測定するユニットの一例について構成の概略を示した説明図である。
図1において、2はロータリエンコーダ、4はX軸スケール、6はY軸スケール、8はZ軸スケール、9aは測定子、10は測定子スケール、20は旋回スクロール、20aはスクロールラップである。
【0025】
図1に一例を示した構成の測定ユニットで、まず、測定子9aの中心を、Y軸スケール6を利用して、ロータリエンコーダ2と連動する回転テーブル(図示せず)の中心から、インボリュート曲線の基礎円半径分をY軸スケール6と平行な方向にオフセットする。続いて、測定子9aを、旋回スクロール20のスクロールラップ20aに当接し、スクロールラップ20aを回転させ、この回転に伴う変位に追従するように測定子9aを移動させる。この過程で、ロータリエンコーダ2により角度を検出し、X軸スケール4と測定子スケール10のデータを組合わせて直線方向の位置を検出する。この角度と位置の組合わせで入手する座標を評価する。
【0026】
ここで図2,図3を参照してさらに詳しく説明する。
図2は、スクロールラップ20について、設計上の構成例を示した説明図である。図2において、20aはスクロールラップ、Sはスクロールラップの外線、Soは外線始点、Snは外線S上の点、Tnは点Snにおける接線、Uはスクロールラップの内線、Uoは内線始点、Unは内線U上の点、Cはインボリュート曲線の基礎円、rは基礎円半径、Oは基礎円中心、αは位相角、λnは伸開角、Mは、加工機にあるXY方向を決めるための基準溝、Hは、加工機にある中心位置Oを加工するための基準穴である。
【0027】
図2に示す例では、座標系XYは、スクロールラップ20aと反対の面に設けられた前記基準溝M、基準穴Hを基準としている。この座標系XYの基準は、別に設けたピンや旋回スクロールそのものの外周であってもよい。図2では、基礎円Cの中心Oは、座標系XYの中心に一致して配置されているが、この中心Oの位置はこの例にとらわれず、座標系の任意の位置にあっても差し支えない。また、外線Sは基礎円CとX軸との交点Soを始点としており、OSoは位相角α、伸開角λnの基準となっている。この外線の開始位置と角度の基準はこの他であってもよい。
【0028】
ここで、外線Sでインボリュート曲線を説明する。伸開角λnの基礎円上の点Qnから基礎円Cに法線を引き、この法線の上に線分SnQnの長さが弧SoQnの長さに等しくなるように外線S上の点Snを定め、伸開角λnを変化させた時に点Snの描く軌跡がインボリュート曲線である。また、外線Sに対して厚さを持たせるために位相角αだけ変位させ、基礎円上の点Uoから開始させたインボリュート曲線が内線Uである。内線Uのように位相角αを有する場合は、弧UoQnの長さが線分UnQnの長さに等しくなる。また、点Snにおけるインボリュート曲線の接線Tnは、線分SnQnに直交している。
【0029】
図3は、以上に説明した設計上の構成に一致したスクロールラップを、回転テーブルを用いて測定する方法を示した説明図である。図3において、引用した符号は図2のそれと同じであるが、次の符号を追加する。すなわち、Lは線分SnQnの延長線、Rnは線分SnQnの長さである伸開長、9aは測定子、Pnは測定子中心、rpは測定子半径である。
【0030】
図3に示す例で、基礎円Cの中心Oを基準に、外線Sを時計回りに回転させると、Qnを通りX軸と平行な線Lの上にあるSnは右に移動していく。ここで線分SnQnの長さをRnとすると、インボリュート曲線には、伸開長Rnが基礎円半径rと伸開角λnの積に等しい性質がある。そこで、回転テーブルの中心に基礎円中心Oを一致させて、スクロールラップ20を回転させながら伸開角λnと点Snの位置を測定し、伸開長Rnの長さを求めて、設計値と比較すれば偏差が求められる。これによって、精度が測定できる。ここで、点Snにおける接線Tnは直線Lと直交しており、これは測定子9aの中心も直線L上に位置することを意味し、よって、測定子9aは直線Lの方向にのみ検出する構造で良い。以上が、回転テーブルと直線軸移動機構を用いてスクロールラップを測定する基本原理である。
【0031】
続いて、本発明の実施の形態を、図4ないし図7を参照して説明する。
まず、第一の発明(請求項1)ないし第三の発明(請求項3)に関わる一実施の形態を図4および図5を参照して説明する。
図4は、本発明の一実施の形態を示す測定によって得られた測定座標点の一例を基礎円近傍に着目して示した説明図、図5は、座標変換後の測定座標点の一例を基礎円近傍に着目して示した説明図である。
【0032】
図4において、Sはスクロールラップの外線設計値、Soは外線設計始点、S1nは外線設計座標点、Uはスクロールラップの内線設計値、Uoは内線設計始点、U1iは外線設計座標点、Cは設計基礎円、rは設計基礎円半径、Oは基礎円設計中心、α2は内線設計位相角である。
【0033】
また、S’は加工した外線、S’1nは外線S’の測定座標点、S’11ないしS’15は外線の測定座標点列、ΔS’1nはS’1nの偏差、R’1nは線分Q’1nS’1nの長さであるS’1nの測定伸開長、λ’1nはS’1nの測定伸開角、Q’1nはS’1nから基礎円Cに引いた接線の接点、α’11は加工した外線位相角、β’1nはS’1nの測定誤差角、U’は加工した内線、U’1iは内線の測定座標点、U’11ないしU’15は内線の測定座標点列、ΔU’1iはU’1iの偏差、R’1iはU’1iの測定伸開長、λ’1iはU’1iの測定伸開角、Q’1iはU’1iから基礎円Cに引いた接線の接点である。
【0034】
α’21は加工した内線U’の位相角、C’は加工したスクロールラップの基礎円、O’は加工したスクロールラップの基礎円中心、ΔOは座標変換により平行移動する量と方向、Δα1は座標変換により回転させる角度と方向である。なお、外線の設計位相角に対応するα1は図示していないが、ゼロの例であり、また設計基礎円中心の座標は(0,0)の例である。
【0035】
図4は、基礎設計円中心O、外線設計位相角α1、内線設計位相角α2から、装置の変位等によって、それぞれO’、α’11、α’21に偏差をもって製作され、さらに形状に関わるうねり状の偏差も加わったスクロールラップ20aの測定例である。加工した外線S’を測定して得られた座標の列がS’11ないしS’15およびS’1nであり、加工した内線U’を測定して得られた座標の列がU’11ないしU’15およびU’1iである。
【0036】
ここで、偏差ΔS’1nとΔU’1iの総和を最少にする座標変換を行なうことは、外線S’の測定座標点列S’1nと内線U’の測定座標点列U’1iから外線S’と内線U’に最も良くあてはまる半径rの基礎円C’を1つ求めて、基礎円中心O’を基礎円中心Oに一致させる平行移動と、α1とα’11、α2とα’21の差から座標系X’Y’の傾き角Δα1を求め、これを解消する方向に、回転移動する座標変換と等価である。そこで、O’の位置と角度Δα1を求めると座標変換量と座標変換の方向を把握することができるが、一例として以下のように求める。
【0037】
まず、測定して得られたR’1nとλ’1nより、S’1nの座標値(X’1n,Y’1n)は式(1)と式(2)のようにそれぞれ求められ、同様に、測定して得られたR’1iとλ’1iよりU’1iの座標値(X’1i,Y’1i)は式(3)と式(4)のようにそれぞれ求められる。
【数1】
X’1n=rcosλ’1n+Rsinλ’1n ……(1)
Y’1n=rsinλ’1n−Rcosλ’1n ……(2)
【数2】
X’1i=rcosλ’1i+Rsinλ’1i ……(3)
Y’1i=rsinλ’1i+Rcosλ’1i ……(4)
【0038】
また、一般的に中心位置座標が(a,b)で位相角がαであるインボリュート曲線は次式のように表せる。
【数3】
X=r{cosλ+(λ−α)sinλ}+a ……(5)
Y=r{sinλ−(λ−α)cosλ}+b ……(6)
式〔5〕と式〔6〕を加えると式〔7〕となる。
【数4】
Figure 0003593445
【0039】
ここで、式(7)においてX、Yをそれぞれ式(1)と式(2)によって得られるX1n、Y1n’とし、λをλ’1nとし、a、b、αをそれぞれa’11n、b’11n、α’11nに置き換えると、式(3)は3つの未知数a’11n、b’11n、α’11nを有する式となる。内線の測定座標点を示す式(3),式(4)を用いた場合も、記号の添え字が替わるだけで同様の手順である。これより、3測定点、例えばS’11、S’12、S’13によってa、b、αに対応する1組の(a’111、b’111、α’111)が得られる。
【0040】
続いてS’14、S’15、S’16の組について同様な操作を行なうと、(a’112、b’112、α’113)が得られ、さらに外線の最終データをS’1mとすると、S’1m−2、S’1m−1、S’1mの組まで同様の操作を行い、(a’11k、b’11k、α’11k)を得る。また、内線の測定座標点についても同様にして、U’11、U’12、U’13より、(a’211、b’211、α’211)を得、内線の最終測定座標点を含むU’1h−2、U’1h−1、U’1hまでくり返し、(a’21j、b’21j、α’21j)まで得る。ここでは、測定座標点を3の倍数になる個数に調整している。
【0041】
また、この測定点の組の作り方は3個毎の区切りではなく、S’11、S’12、S’13に続いてS’12、S’13、S’14のように最小順位が1づつ増加するような方法でもよく、計算時間短縮のために測定で得たデータ全てを用いずに、途中を間引く方法でもよい。
なお、a’、b’、α’に付けた添え字の1桁目は通し番号であり、2桁目は座標変換回数表示であり、3桁目では1が外線測定座標より求めた値であることを示し、2は内線測定座標値より求めた値であることを表示している。
【0042】
以上の過程で得られた複数の基礎円中心のX座標であるa’111ないしa’11k、a’211ないしa’21j、およびY座標であるb’111ないしb’11k、b’211ないしb’21j、および位相角であるα’111ないしα’11k、α’211ないしα’21jが求められ、それぞれの平均値を求め、設計値との差を求めると以下のようになる。なお、式(8)ないし式(10)において設計値の基礎円中心のX座標はa、Y座標はb、外線の位相角はα1、内線の位相角はα2である。図4の例ではaとbはゼロである。
【0043】
【数5】
Figure 0003593445
これら式(8)ないし式(10)に示した測定座標と設計値の差を解消するように、測定座標点を座標変換する。すなわち、各測定座標点を、X方向にΔa1移動し、Y方向にΔb1移動し、さらにΔα1回転させる。以上の操作によって1回の座標変換を終了する。
【0044】
ここで、設計値S1nとU1iに対し測定座標点S’1nとU’1iは、まだ、最も適した位置関係になっていない。これは、S’1nに対応する正規の伸開角は仮想基礎円C’のλ’’1nであるが、測定によって直接求めることは不可能であり、測定で得たλ’1nを採用しているためである。ここでは、誤差β’1nが存在している。そこで、座標変換後の座標点から、以下の式(11)と式(12)に従い伸開角を再度計算して、式(8)から式(10)までの座標変換に関する計算を再度行う。式(11)と式(12)において、ωは座標点の存在する象限によって表1にしたがって選択する数値である。
【0045】
【数6】
Figure 0003593445
ただし、ζは巻き数である。
また、添え字の2桁目は座標変換の回数を表現している。
【表1】
Figure 0003593445
【0046】
ここで、座標変換の量が判定する精度より十分に小さく、期待する値以下となるまで、以上に述べた式(11)と式(12)により伸開角を求め直し、式(8)から式(10)の座標変換を繰り返す。ここで、座標変換を行った回数をwとして、座標変換の量をΔaw、Δbw、Δαwとすると、最終の回までに座標変換をした総計は以下となる。
【0047】
【数7】
Figure 0003593445
前述した一連の座標変換後、得られた測定座標点を、基礎円中心付近について模擬的に示したのが図5である。適用した符号は図4に同じであるが、添え字の一部を省略している。
【0048】
図5の状態では、測定座標点と設計値の偏差ΔSn’とΔUi’の総和は最少となっており、外線と内線の測定座標点Sn’とUi’を同一方向に平行移動し、同一角度回転させてきたので、両者の相対的位置は変化しておらず、偏差ΔSn’とΔUi’は、形状の偏差のみでなく厚さの偏差を含んだ厚さ偏差となっている。
【0049】
加工に用いている工具(図示せず)の摩耗が進行すると、工具の径が減少し、結果としてスクロールラップ20aは厚くなっていくが、工具半径の減少は、厚さ偏差の平均としてとらえることができる。この厚さ偏差の平均ΔTを、以下のように求め、平均厚さとする。
【数8】
Figure 0003593445
【0050】
式(16)ないし式(18)で求めた平均厚さΔTを解消する方向に、加工装置の工具径に関わるデータ、もしくは工具オフセットに関わるデータ、もしくは工具軌跡に関わるデータを修正する。工具径に関わるデータを修正する例では、測定したスクロールラップ20aを加工した時に使用した工具径のデータから、平均厚さを減じる。このようにすることで、以後の加工では、工具は前記の平均厚さだけスクロールラップに近づいた軌跡で移動することになり、結果として、厚さ偏差を解消した精度の良好なスクロールラップを得ることができる。また、式(16)ないし式(18)と同様の手法で、図5に示したΔS’’nおよびΔU’’nを求めれば形状の偏差のみも抽出できる。
【0051】
また、前述した式(13)から式(15)に示したΔA、ΔB、ΔΦが、それぞれ、基準からのX軸方向の偏差、Y方向の偏差、位相角の偏差である。よって、これらΔA、ΔB、ΔΦは加工装置のX軸、Y軸、回転角を調整する量と方向を示す。このようにして、加工装置を調整すべき1組のデータを入手することができるので、ΔA、ΔB、ΔΦを解消する傾向に加工装置のスクロールラップの加工に係わる座標を構成しているデータ、例えば機械原点座標に対するワーク座標系の位置と角度のデータを修正して以後の加工を行う。このようにして、位置の精度が良好なスクロールラップを得ることができる。また、以上に説明してきた一連の過程では、設計インボリュート曲線そのものを用いて計算しており、近似的な曲線をあてはめる操作をしていないので精度の良い評価が可能である。
【0052】
次に、第三の発明(請求項4)に関わる実施の形態を、図6を参照して説明する。
図6は、本発明の他の実施の形態に係る、内線にのみ高い精度を要求する領域がある旋回スクロールの一例を示した説明図である。
図6において、20は旋回スクロール、20aはスクロールラップ、20bは外線、20cは内線、Eはインボリュート曲線伸開角の領域である。
【0053】
図6に示す実施の形態では、Eで指示する領域の外線20bには、組み合わされる相手が固定スクロールに存在しない。このため、領域Eの外線20bはE部以外に連続するインボリュート曲線で規定されておらず、スクロールラップ20aを薄くするようにシフトしている。本例では、外線20bの領域Eは高い精度が不要で、精度測定の範囲より除外している。したがって、E領域では、同一伸開角において、内線20cの測定座標は存在するが外線20bの測定座標は存在しない。
【0054】
このような例では、先に述べてきた式(7)ないし式(15)を用いて行う座標系変換にあたって、領域Eの部分を除外した測定データを用いる。一方、座標変換のくり返しの後に行う、式(16)ないし式(18)に示した厚さ偏差、平均厚さを求める操作では、領域Eの外線20bのデータは使用する。換言すれば、座標変換に使用する測定座標点は、外線20bと内線20cの測定座標点両者が存在する伸開角の範囲を使用し、厚さ偏差を求めるにあたっては全測定座標点を対象にして評価する。
【0055】
上記の操作で、本例では内線のように、測定座標の多い方の設計値に測定座標点を近づけすぎてしまう座標変換を防止でき、より適切な位置関係に配置することができる。一方、厚さ偏差の評価は座標を変換させる操作ではなく、単に、設計値との偏差を計算するのみであるから、全測定座標を用いてもよい。本発明は、特に、設計値から厚さ偏差の大きいスクロールラップを測定した場合、誤差拡大防止に有効である。
【0056】
次に、第四の発明(請求項5)に関わる実施の形態を図7を参照して説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る測定ユニツトの構成を示した説明図である。図7において、1は回転テーブル、2はロータリエンコーダ、3はX軸、4はX軸スケール、5はY軸、6はY軸スケール、7はZ軸、8はZ軸スケール、9は測定ヘッド、9aは測定子、10は測定子スケール、11はスケール位置検出装置、12は動作制御装置、13は位置データメモリ、13aは外線データ領域、13bは内線データ領域、14は設計パラメータメモリ、15は演算装置、16はディスプレー、17はプリンタである。
【0057】
図7の構成において、回転テーブル1には円筒状のゲージAを装着している。ゲージAは本例の測定対象である旋回スクロール20の外形より大きく、旋回スクロール20を回転テーブル1に載置した状態でも測定ヘッド9の測定子9aはゲージAの位置を測定できる。また、ゲージAの半径は当該ゲージAを回転テーブル1に装着する前に測定しておく。このような構成で、旋回スクロール20の測定を開始する直前に、ゲージAの側面を測定子9aにより測定する。この結果得られるゲージAの側面の位置に、すでに測定済みのゲージAの半径値を加えると、回転テーブル1の回転中心のX軸3に対する位置を求めることができる。
【0058】
この測定では、回転テーブル1を回転させ、1回転分のデータを収集して、ゲージAの中心と回転テーブル1の中心に存在する偏心成分を除去した後に、ゲージAの半径を求めるのが好ましい。また、このゲージAの特定の角度で半径を把握しておき、この角度で側面の位置を測定しても良い。また、上記ではゲージAは円筒形状で説明したが、回転テーブル1の測定可能な位置に、回転テーブル1の回転中心からの距離を把握して、特定の角度の方向にブロック状のゲージを装備しても良い。
【0059】
以上のように、旋回スクロール20の測定を開始する前に、回転テーブル1の中心を測定することで、環境温度変動等によってユニットベースが延び縮みして生じるX軸3と回転テーブル1の中心との変位を解消でき、位相角の測定誤差が小さい高精度な測定が可能となる。特に基礎円半径が数ミリメートル程度と小さく、X軸3が数百ミリメートル程度と長い場合に有効である。
【0060】
続いて、本発明のスクロールラップの加工装置の一実施の形態を、上記説明で用いた図7を参照して説明する。
図7に示す測定ユニットでは、旋回スクロール20を載置できる回転テーブル1が、角度を検出するロータリエンコーダ2を具備し、角度を検出しながら回転運動可能となっており、この回転テーブル1の回転軸心に直交する方向に直線移動できるX軸3が配置され、X軸の移動方向の位置を検出するX軸スケール4を備え、X軸3の移動方向に直角で回転テーブル1の回転軸心にも直角になるようにY軸5が配置され、Y軸の移動方向の位置を検出するY軸スケール6を備えている。
【0061】
さらに、X軸3の移動方向に直角で、かつ回転テーブル機構1の回転軸心に平行になるようにZ軸7が配置され、Z軸7の移動方向の位置を検出するZ軸スケール8を備え、Z軸7の先端には測定ヘッド9が装着されており、測定ヘッド9はスクロールラップ20に当接しX軸3の移動方向と平行に移動する測定子9aを具備し、測定子9aの移動方向の位置を検出する測定子スケール10を具備している。
なお、ここでは、測定子9aは、一方向に移動する構成であるが、直交2方向以上に移動できそれぞれの位置を検出できる構造でも良い。また、回転テーブル1、X軸3、Y軸5、Z軸7はサーボモータ(図示せず)により駆動され、決められたプログラムに従って運動できるようになっている。
【0062】
上記の構成で、まず、動作制御装置12によってY軸5を駆動し、Y軸スケール6のデータにより測定子9aの中心から回転テーブル1の中心をインボリュート曲線の基礎円半径分オフセットする。次いで、X軸3とZ軸7と回転テーブル1を駆動して、測定ヘッド9の測定子9aを測定開始点に移動させ、測定子9aをスクロールラップ20aに当接させる。その後、回転テーブル1を回転させながら、X軸3によりZ軸7に取り付けられた測定ヘッド9を駆動して、測定子9aをスクロールラップに追従させる。測定順序の制御は、外線20b、内線20cのいずれから始めてもよく、中心部分、外周いずれから開始してもよい。また、測定順序も外線20b、内線20cとも外周から測定を開始する制御としても良く、一方、外周から中心部に向かい、連続的に中心部から外周部にもどる制御でも良い。動作制御装置12は上記の動作を行なわせる機能を有している。
【0063】
ここで、測定子9aをスクロールラップ20に追従させる過程で、スケール位置検出装置11では、ロータリエンコーダ2、X軸スケール4および測定子スケール10をカウントする機能を有し、位置データメモリ13の外線データ領域13aあるいは内線データ領域13bでは、測定部分に対応した位置検出装置データを格納する機能を有している。一方、設計パラメータメモリ14には、外線20b、内線20cの設計データとして、少なくとも基礎円中心座標、基礎円半径、位相角、外線伸開角範囲、内線伸開角範囲を格納している。
【0064】
測定座標点の収集が終了した段階で、演算装置15は、位置データメモリ13の測定座標と設計値パラメータメモリ14のデータを用いて、式(1)ないし式(15)に示した手法の演算を実施する機能を有する。この機能で得られる座標系の平行移動の量と方向、回転移動の量と方向を、ディスプレー16では表示する機能を有し、プリンタ17では必要によって印刷する機能を有する。また、式(16)ないし式(18)に示した手法の演算も、演算装置15で実施する機能を有し、その結果をディスプレー16に表示でき、必要によってプリンタ17で印刷できる。
上記では、演算の結果を人為的に見て加工装置のデータを修正する構成であるが、演算結果を加工装置に転送し、自動的に加工装置のデータを変更する構成でも良い。
【0065】
また、図7の構成では、座標変換量を求めるにあたり、図6に示したような外線20bあるいは内線20cのいずれか一方しか存在しない伸開角の領域は、設計値パラメータメモリ14に格納した伸開角データから判断して座標変換量を求めるデータから除外する機能を有する。
ところで、回転テーブル1には、半径が既知の円筒形状ゲージAが装備された構造を採用している。このゲージAをスクロールラップ20を測定する直前、あるいは直後に測定することでX軸スケール4に対する回転テーブル1の回転中心を把握でき、測定ユニットが熱変位等を生じても精度の良好な測定が可能な構成となる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、第一の発明によれば、従来存在していた第一の問題点が解決でき、ただ1組の並行移動および回転移動の座標変換量を求め、これを基準からの偏差とすることで、測定データから加工装置を調整すべきデータを容易に、かつ正確に入手でき、ひいては精度の良好なスクロールラップを効率的に得られるスクロールラップの加工方法およびその加工装置を提供することができる。
【0067】
また、第二の発明によれば、従来存在していた第二の問題点が解決でき、外線と内線のデータ両方を用い、座標変換したのちに設計値と測定値の偏差を求めて厚さを含んだ偏差を得ることができ、ひいては工具摩耗のため工具径が減少して発生する厚さの調整データを容易に、かつ正確に入手しうるスクロールラップの加工方法およびその加工装置を提供することができる。
【0068】
さらに、第三の発明によれば、従来存在していた第三の問題点が解決でき、設計値をインボリュート曲線の設計数式から求めることで、従来より測定データの評価精度を向上させることができ、ひいては加工精度を向上できるスクロールラップの加工方法およびその加工装置を提供することができる。
【0069】
さらに、第四の発明によれば、従来存在していた第四の問題点が解決でき、測定ユニットの熱変位の影響を除外でき、劣悪な加工現場環境にあっても高精度な測定が可能となるスクロールラップの加工方法およびその加工装置を提供することができる。
【0070】
以上を総合して、本発明によれば、スクロールラップの形状と位置と厚さに関する評価を回転テーブルを用いた測定ユニットで行い、スクロールラップの加工装置に必要なデータを精度良く効率的に得、ひいては精度の良好なスクロールラップを効率的に得るスクロールラップの加工方法およびその加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スクロールラツプの加工に関係して、回転テーブルを用いて精度を測定するユニットの構成を示した説明図である。
【図2】スクロールラップの設計上の構成の一例を示した説明図である。
【図3】スクロールラップを回転テーブルを用いて測定する方法を示した説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す測定によって得られた測定座標点の一例を基礎円近傍に着目して示した説明図である。
【図5】座標変換後の測定座標点の一例を基礎円近傍に着目して示した説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る、内線にのみ高い精度を要求する領域がある旋回スクロールの一例を示した説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る測定ユニツトの構成を示した説明図である。
【図8】スクロールラップの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…回転テーブル、2…ロータリエンコーダ、3…X軸、4…X軸スケール、5…Y軸、6…Y軸スケール、7…Z軸、8…Z軸スケール、9…測定ヘッド、9a…測定子、10…測定子スケール、11…スケール位置検出装置、12…動作制御装置、13…位置データメモリ、13a…外線データ領域、13b…内線データ領域、14…設計パラメータメモリ、15…演算装置。

Claims (10)

  1. インボリュート曲線で規定される厚さを有するスクロールラップを、当該スクロールラップを載置する角度検出機能を備える回転テーブルと、スクロールラップに当接して少なくとも1方向の変位量を検出する測定子を取り付けた直線方向の位置検出機能を備える直線移動軸との組み合わせで精度測定し、その精度測定の結果に基づいて加工装置を調整して加工する方法であって、
    前記スクロールラップの外線と内線の精度を判定するためのデータを、少なくとも前記回転テーブルの角度と前記直線移動軸の位置とにより決まる測定座標点を複数有する測定座標点列として収集した後に、
    前記外線の測定座標点前記外線の設計値との偏差と、前記内線の測定座標点列と前記内線の設計値との偏差との総和が最少となるように、前記外線の測定座標点列前記内線の測定座標点列の両者を同一量かつ同一方向に平行移動する座標変換をすると共に前記外線の測定座標点列と前記内線の測定座標点列の両者を同一量かつ同一方向に回転移動する座標変換をして、
    続いて、前記外線の測定座標点列前記外線の設計値との偏差と前記内線の測定座標点前記内線の設計値との偏差を求めた後に、その偏差の平均を求めて平均厚さとし、
    その平均厚さを解消するように、前記加工装置の工具径に関わるデータ、工具位置偏差に関わるデータ、および工具軌跡に関わるデータの少なくとも1つを修正して加工することを特徴とするスクロールラップの加工方法。
  2. 請求項1記載のスクロールラップの加工方法において、
    座標変換によって求めた平行移動する座標変換量と座標変換方向、および回転移動する座標変換量と座標変換方向を、それぞれ測定したスクロールラップの測定座標点と設計値との間における基礎円中心座標の偏差および位相角の偏差にして、
    これら基礎円中心座標の偏差および位相角の偏差を解消するように、前記加工装置に定めた工具の位置制御に関わるデータを修正して加工することを特徴とするスクロールラップの加工方法。
  3. 請求項1または2記載のいずれかのスクロールラップの加工方法において、
    測定によって得られた各測定座標点と設計値との偏差を求めるにあたり、当該設計値は少なくとも当該スクロールラップの基礎円半径、基礎円中心位置、位相角を与えることでインボリュート曲線式から演算によって算出し、
    当該測定座標点に対する設計値をインボリュート曲線上に存在せしめることを特徴とするスクロールラップの加工方法。
  4. 請求項1または2記載のいずれかのスクロールラップの加工方法において、
    記外線の測定座標点前記外線の設計値との偏差と、前記内線の測定座標点列と前記内線の設計値との偏差との総和が最少となるように、前記外線の測定座標点列前記内線の測定座標点列の両者を同一量かつ同一方向に平行移動する座標変換を求めると共に前記外線の測定座標点列と前記内線の測定座標点列の両者を同一量かつ同一方向に回転移動する座標変換量を求めるにあたり、前記外線と内線の両者が存在する伸開角の範囲にある測定座標点列を抽出して用いることを特徴とするスクロールラップの加工方法。
  5. 請求項1または2記載のいずれかのスクロールラップの加工方法において、
    回転テーブルに設けた回転中心からの距離が既知である基準ゲージを測定し、直線移動軸に対する前記回転テーブル中心位置を把握する工程を含むことを特徴とするスクロールラップの加工方法。
  6. インボリュート曲線で規定される厚さを有するスクロールラップを、当該スクロールラップを載置する角度検出機能を備える回転テーブルと、スクロールラップに当接して少なくとも1方向の変位量を検出する測定子を取り付けた直線方向の位置検出機能を備える直線移動軸との組み合わせで精度測定し、その精度測定の結果に基づいて加工用データを調整するスクロールラップ加工装置であって、
    前記スクロールラップの外線と内線の精度を判定するためのデータを、少なくとも前記回転テーブルの角度と前記直線移動軸の位置とにより決まる測定座標点を複数有する測定座標点列として収集する手段と、
    前記外線の測定座標点前記外線の設計値との偏差と、前記内線の測定座標点列と前記内線の設計値との偏差との総和が最少となるように、前記外線の測定座標点列前記内線の測定座標点列の両者を同一量かつ同一方向に平行移動する座標変換をすると共に前記外線の測定座標点列と前記内線の測定座標点列の両者を同一量かつ同一方向に回転移動する座標変換する手段と、
    前記外線の測定座標点列前記外線の設計値との偏差と前記内線の測定座標点前記内線の設計値との偏差を求め、その偏差の平均を求めて平均厚さとする手段と、
    その平均厚さを解消するように、前記加工装置の工具径に関わるデータ、工具位置偏差に関わるデータ、および工具軌跡に関わるデータの少なくとも1つを修正する手段とを有することを特徴とするスクロールラップの加工装置。
  7. 請求項6記載のスクロールラップの加工装置において、
    座標変換によって求めた平行移動する座標変換量と座標変換方向、および回転移動する座標変換量と座標変換方向を、それぞれ測定したスクロールラップの測定座標点と設計値との間における基礎円中心座標の偏差および位相角の偏差にして、
    これら基礎円中心座標の偏差および位相角の偏差を解消するように、前記加工装置に定めた工具の位置制御に関わるデータを修正して加工する手段を有することを特徴とするスクロールラップの加工装置。
  8. 請求項6または7記載のいずれかのスクロールラップの加工装置において、
    測定によって得られた各測定座標点と設計値との偏差を求めるにあたり、当該設計値は少なくとも当該スクロールラップの基礎円半径、基礎円中心位置、位相角を与えることでインボリュート曲線式から演算によって算出し、
    当該測定座標点に対する設計値をインボリュート曲線上に存在せしめる手段を有することを特徴とするスクロールラップの加工装置。
  9. 請求項6または7記載のいずれかのスクロールラップの加工装置において、
    記外線の測定座標点前記外線の設計値との偏差と、前記内線の測定座標点列と前記内線の設計値との偏差との総和が最少となるように、前記外線の測定座標点列前記内線の測定座標点列の両者を同一量かつ同一方向に平行移動する座標変換を求めると共に前記外線の測定座標点列と前記内線の測定座標点列の両者を同一量かつ同一方向に回転移動する座標変換量を求めるにあたり、前記外線と内線の両者が存在する伸開角の範囲にある測定座標点列を抽出して用いる手段を有することを特徴とするスクロールラップの加工装置。
  10. 請求項6または7記載のいずれかのスクロールラップの加工装置において、回転テーブル機構に回転中心からの距離が既知である基準ゲージを設けたことを特徴とするスクロールラップの加工装置。
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