JP3592992B2 - フレッティング疲労試験装置およびフレッティング疲労推定方法 - Google Patents

フレッティング疲労試験装置およびフレッティング疲労推定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、接触面圧をもって相対移動する機械要素に生じるフレッティング疲労限度を精度よく推定できるフレッティング疲労試験装置およびフレッティング疲労推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種回転機械におけるロータのルート翼溝部や軸に対する焼嵌めなど、面圧をもって互いに接触する部分を有する非一体構造物は、外力が繰り返して作用した場合にその接触部分で相対滑りを生じる。この相対滑りが表面せん断力に起因した疲労損傷を促進することでフレッティング疲労が生じ、通常の金属疲労に比べて非常に低い応力によって破壊を起こす可能性がある。このため、接触面圧を有する機械などを設計する場合には、使用する材料のフレッティング疲労を試験し、この試験結果を踏まえて設計を行う必要がある。
【0003】
図14は、従来のフレッティング疲労試験装置の一例を示す構成図である。このフレッティング疲労試験装置900は、実開昭57−75555号公報に開示されたものであって、試験片901の両側にパッド902を接触させると共に図示しない加振装置により当該試験片901を加振するようにした構成である。パッド902は、パッド取付部903に取り付けられており、このパッド取付部903は上部チャック904に設けた支え905によって支持されている。上部チャック904はロッド906を介して固定端907に固定されており、当該ロッド906にはロードセル908が設けられている。一方、パッド取付部903にはロードセル909が連結されている。ロードセル909には、油圧装置910が取り付けられている。
【0004】
前記油圧装置910を作動させることにより、所定の面圧でパッド902が試験片901に押し付けられる。また、加振装置により試験片901に加振力を加えると、試験片901とパッド902との接触部分で相対滑りが生じる。これより、試験片901に対して繰り返し荷重と面圧とが加わることになって、試験片901にフレッティング疲労を生じさせる。そして、繰り返し荷重と公称応力との相関から、図15に示すようなフレッティング疲労評価線図を作成し、許容範囲S内にて機械要素の設計を行うようにする。なお、公称応力とは、荷重を試験片の断面積で割った見かけ上の応力をいう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公称応力による評価では、部材の寸法、材料の組み合わせ、接触長さ、面圧、すべり量、荷重負荷形式などによってフレッティング疲労破壊を起こすときの応力が大きくばらついてしまい、フレッティング疲労限度の推定精度が悪いという問題点があった。
【0006】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フレッティング疲労限度を精度よく推定できるフレッティング疲労試験装置およびフレッティング疲労推定方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係るフレッティング疲労試験装置は、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、このパッドおよび試験片を相対移動させる加振手段と、試験片と、試験片に面圧を供するパッドとの接触端部の両側に渡って、かつ、前記試験片のフレッティング疲労が発生する部分であってパッドとの接触部分以外に張着した複数の歪ゲージ単体と、を備え、
各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記パッドと試験片との接触端部におけるピーク応力を外挿取得するピーク応力取得手段を設けたものである。
また、本発明に係るフレッティング疲労試験装置は、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、このパッドおよび試験片を相対移動させる加振手段と、前記試験片の、前記パッドとの接触部分以外であってパッドと試験片との接触端部近傍で、複数の歪ゲージ単体を前記接触端部の両側に渡って張着し、各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記接触端部におけるピーク応力を外挿取得するピーク応力取得手段を設けたものである。
また、本発明に係るフレッティング疲労試験装置は、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、一端を開放した試験片の他端を保持して加振する加振手段と、固定端に固定され、パッドを支持する支持手段と、前記試験片の、前記パッドとの接触部分以外であってパッドと試験片との接触端部近傍で、複数の歪ゲージ単体を前記接触端部の両側に渡って張着し、各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記接触端部におけるピーク応力を外挿取得するピーク応力取得手段を設けたものである。
また、本発明に係るフレッティング疲労試験装置は、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、一端を固定端に固定された試験片の他端を保持して加振する加振手段と、前記試験片の、前記パッドとの接触部分以外であってパッドと試験片との接触端部近傍で、複数の歪ゲージ単体を前記接触端部の両側に渡って張着し、各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記接触端部におけるピーク応力を外挿取得するピーク応力取得手段を設けたものである。
また、本発明に係るフレッティング疲労推定方法は、試験片に面圧をもってパッドを接触させ、この試験片に発生するフレッティング疲労を評価するにあたり、前記試験片の、前記パッドとの接触部分以外であってパッドと試験片との接触端部近傍で、複数の歪ゲージ単体を前記接触端部の両側に渡って張着し、各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記接触端部におけるピーク応力を外挿取得し、このピーク応力を用いてフレッティング疲労強度を推定するようにしたものである。
【0008】
フレッティング疲労における応力は、試験片とパッドとの接触端部でピーク値を示し、この接触端部から亀裂が発生する。この発明ではかかる観点に着目して、試験片のフレッティング疲労が発生する部分に歪ゲージを設け、前記ピーク応力を直に取得するようにする。なお、パッドとの接触部分に歪ゲージを取り付けることはできないから、当該部分を避けて可能な限り近傍に設置するようにする。このような構成にすれば、取得したピーク応力に基づいてフレッティング疲労限度を推定することが可能になる。発明者らの実験したところ、このピーク応力からフレッティング疲労を評価することで、機械要素の材料や形状その他の条件に起因したばらつきが極めて小さくなることが判った。このため、当該フレッティング疲労試験装置を用いることにより、フレッティング疲労限度を精度よく推定することが可能になる。
【0009】
また、本発明に係るフレッティング疲労試験装置は、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、このパッドおよび試験片を相対移動させる加振手段と、パッドが接触する前記試験片の面であってパッドと試験片との接触端部近傍から設けた歪ゲージと、を備えたものである。
【0010】
ここでいう接触端部近傍は、パッドと試験片との相対移動領域に設けることができないから、少なくともこの相対移動領域を避け且つできるだけ接触端部に近い位置であることを意味する。試験片のパッド接触面に歪ゲージを設けるようにしたのは、実際の試験片のフレッティング疲労に近い状態で測定できるからである。
【0011】
また、本発明に係るフレッティング疲労試験装置は、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、一端を開放した試験片の他端を保持して加振する加振手段と、固定端に固定され、パッドを支持する支持手段と、試験片のフレッティング疲労が発生する部分であってパッドとの接触部分以外に設けた歪ゲージとを備えたものである。
【0012】
通常のフレッティング疲労試験装置は、上記従来例にて示したように、試験片に接触させているパッドを固定支持すると共に、試験片の一端を固定し他端に加振手段を設けた構成である。これに対して、本発明のフレッティング疲労試験装置は、パッドを固定端に支持して試験片の一端を開放し、この状態で加振するようにしている。また、従来と異なるのは、公称応力を用いるのではなく、歪ゲージからピーク応力を取得し、当該ピーク応力を用いてフレッティング疲労限度を推定するようにしている点である。発明者らの実験により、ピーク応力を用いたフレッティング疲労試験においては、装置構成の違いなどによるピーク応力のばらつきが極めて小さいことが判っており、このため、本発明のような簡単な構成であっても、フレッティング疲労限度を高い精度で求めることができることになる。
【0013】
また、本発明に係るフレッティング疲労試験装置は、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、一端を固定端に固定された試験片の他端を保持して加振する加振手段と、試験片のフレッティング疲労が発生する部分であってパッドとの接触部分以外に設けた歪ゲージとを備えたものである。
【0014】
上記同様に、本発明は、従来例の装置構成に比べて簡単であること、ピーク応力を用いてフレッティング疲労限度を推定していることから、簡単な構成でフレッティング疲労限度を高い精度で求めることができる。
【0015】
また、本発明に係るフレッティング疲労試験装置は、上記フレッティング疲労試験装置において、さらに、複数の歪ゲージ単体を直線的に設けて前記歪ゲージを構成し、各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記パッドと試験片との接触端部におけるピーク応力を外挿取得するピーク応力取得手段を設けたものである。
【0016】
歪ゲージ単体を直線的に設けることでその歪ゲージ単体それぞれの位置における応力を取得することができる。通常、パッドと試験片との接触端部から遠い歪ゲージ単体から小さい応力が検出され、接触端部に次第に近くなるにつれ検出する応力が大きくなる。一方、パッドと試験片との接触する部分には歪ゲージを設けることができないが、この接触端部において応力がピークに達するから、当該接触端部におけるピーク応力を取得するために前記検出した応力の傾向を用いる。この応力の傾向は、例えば応力−距離(接触端部からの距離)線図(例えば下記図5参照)によって表すことが可能であるから、この線を延長することでピーク応力を外挿することができる。
【0017】
また、本発明に係るフレッティング疲労推定方法は、試験片に面圧をもってパッドを接触させ、この試験片に発生するフレッティング疲労を評価するにあたり、試験片とパッドとの接触端部に生じるフレッティング疲労発生時のピーク応力を取得し、このピーク応力を用いてフレッティング疲労強度を推定するようにしたものである。
【0018】
従来では、公称応力を用いてフレッティング疲労を推定するようにしていたので、機械要素の寸法や材料などによってフレッティング疲労発生時の応力にばらつきが生じていたが、発明者らの鋭意研究により、ピーク応力を用いてフレッティング疲労を評価することで機械要素の寸法や材料などによっても、ばらつきを少なく抑えられることが判った。すなわち、機械要素の寸法や材料などが異なってもピーク応力のばらつきが少ないため、かかるピーク応力を用いるようにすれば、フレッティング疲労強度を精度よく推定することができるようになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
[フレッティング疲労試験装置]
図1は、この発明の実施の形態にかかるフレッティング疲労試験装置を示す正面図である。図2は、図1に示したフレッティング疲労試験装置の平面図である。このフレッティング疲労試験装置100は、加振装置1のホルダー2に試験片3をボルト4で固定し、その試験片3に対してパッド5を押圧した構成である。パッド5は、冶具11に固定されており、板バネ6はその両端においてロッド7で連結されている。このロッド7の両端はスペーサ8を介してナット9により固定されており、その一方側にはスペーサ8とナット9との間にロードセル10が設けられている。
【0021】
また、冶具11自体は支持部材12に取り付けられている。また、冶具11は中央がくびれた形状になっており、その表面には歪ゲージ13が設けられている。前記支持部材12はロードセル14を介して固定端15に固定されている。
【0022】
また、パッド5と試験片3との接触端部の近傍には、狭い幅の5連集中の歪ゲージ20が張着されている。また、パッド5と試験片3との接触端部に対向して、両者の相対滑り量を測定するセンサー16が配置されている。図3は、パッド5と試験片3との接触部分を示す拡大図である。前記歪ゲージ20は、試験片3の側面中央付近に張着されている。狭い幅の歪ゲージ20を設けたのは、接触端部30の応力状態を可能な限り近い位置で把握したいためである。
【0023】
図4は、試験片に生じる応力分布を示す模式図である。試験片3には繰り返し荷重による応力(図中、応力の大きさを点線で示す)が接触端部30でピークに達する。また、フレッティング疲労によるき裂(T)は、図中斜め方向に発生する。前記歪ゲージ20は、前記応力がピークに達する接触端部30のできるだけ近傍であって、パッド5と試験片3とが相対移動する際に接触しない位置に設ける。例えばパッド5と試験片3との接触端部30から0.5mmの位置に歪ゲージ20の端縁が位置するようにする。
【0024】
また、図3に示すように、パッド5と試験片3との平面部分にはそれぞれターゲット17が設けられており、このターゲット17にレーザー光線を照射し、その反射光を取得することで相対移動量を測定する。この相対移動量を測定するのは、実機の物に対して面圧と相対すべり量のデータがあった場合、それらを使用してピーク応力が推定できることとなるからである。つぎに、このフレッティング疲労試験装置100では、歪ゲージ20の検出信号から接触端部30のピーク応力を外挿する。
【0025】
図5は、接触端部からの距離Xと応力Sとの相関関係を示すグラフ図である。すなわち、歪ゲージ20を接触端部30に位置させることができないため、複数の歪ゲージ単体20a〜20eからの検出信号を用いて当該接触端部30のピーク応力を推定する。図4に示したように、接触端部30の応力がもっとも高く、離れるに従って小さくなるから、前記5連の歪ゲージ20a〜20eそれぞれの検出信号(グラフ中、S20a〜S20eで示す)から応力線図を作成し、この端部を延長することで接触端部30における応力ピークを取得する。なお、上記歪ゲージ20やロードセル14からの検出信号は、処理回路25に送られて、当該処理回路25にて接触端部30のピーク応力などを演算する。
【0026】
このフレッティング疲労試験装置100は、ロッド7を締めてパッド5を所定の面圧で試験片3に押圧し、加振装置1により試験片3を振動させることでフレッティング疲労試験を行う。この振動により前記パッド5と試験片3との間に面圧をもった摩擦が生じるから、フレッティング疲労が進行して所定のフレッティング強度において試験片3に亀裂が発生する。このときのピーク応力を用いてフレッティング疲労限度を推定する。
【0027】
図6は、異なる形式のフレッティング疲労試験装置を示す正面図である。また、図7は、図6に示したフレッティング疲労試験装置を示す平面図である。このフレッティング疲労試験装置200では、加振装置1のホルダー2に試験片3をボルト4で固定し、さらに当該試験片3の上端部をホルダー41にボルト42で固定する。このホルダー41は、固定端15からロードセル14を介して吊り下げられた支持部材12に固定されている。また、試験片3は、冶具11に設けたパッド5により両側から押圧されている。板バネ6はその両端においてロッド7で連結されている。このロッド7の両端はスペーサ8を介してナット9により固定されており、その一方側にはスペーサ8とナット9との間にロードセル10が設けられている。
【0028】
また、パッド5と試験片3との接触端部30の近傍には、上記同様に狭い幅の5連集中の歪ゲージ20が張着されている。また、パッド5と試験片3との接触端部30に対向して、両者の相対滑り量を測定するセンサー16が配置されている。なお、この歪ゲージ20の取付形態は、上記図3に示した形態と同じである。
【0029】
このフレッティング疲労試験装置200は、パッド5側を自由にした点に特徴がある。このため、加振装置1により試験片3を振動させると、その両端が固定されていることから試験片3に圧縮または伸び応力が加わる。これにより、試験片3との間で相対滑りが発生し、フレッティング疲労が進行する。フレッティング強度のピークは、上記同様、歪ゲージ20により取得した検出信号から外挿する。
【0030】
図8は、さらに異なる形式のフレッティング疲労試験装置を示す正面図である。また、図9は、図8に示したフレッティング疲労試験装置を示す平面図である。このフレッティング疲労試験装置300は、上記図1に示したフレッティング疲労試験装置100と図6に示したフレッティング疲労試験装置200とを混合したものである。すなわち、このフレッティング疲労試験装置300は、図1に示したフレッティング疲労試験装置100の試験片3上部をホルダー41にボルト42で固定し、このホルダー41を支持部材12に固定した構成である。なお、各構成要素は、上記同様であるからその説明を省略する。
【0031】
加振装置1により試験片3を振動させると、その両端が固定されていることから試験片3に圧縮または伸び応力が加わる。また、パッド5が冶具11により支持されているので、試験片3とパッド5との間に摩擦力が生じる。これにより、試験片3との間で相対滑りが発生し、フレッティング疲労が進行する。フレッティング強度のピークは、上記同様、歪ゲージ20により取得した検出信号から外挿する。
【0032】
[フレッティング疲労試験]
図10は、上記3種類のフレッティング疲労試験装置によりピーク応力を用いてフレッティング疲労試験をした結果を示すグラフ図であり、横軸に繰り返し荷重サイクルを示し、縦軸にピーク応力を示す。また、図中、符号○は、図1に示したフレッティング疲労試験装置100による試験値であり、符号●は、図6に示したフレッティング疲労試験装置200による試験値である。また、符号△は、図8に示したフレッティング疲労試験装置300による試験値である。試験片3には12CrMoを用い、大気中で加振周波数fを15Hzとして試験した。なお、参考に通常の疲労破壊強度を示す値(公称応力)を符号□で示す。
【0033】
図11に、比較試験例として、従来の公称応力を用いたフレッティング疲労試験の結果を示す。同図(a)のグラフ図では、横軸に繰り返しサイクルを示し、縦軸に公称応力を示す。試験片3には上記同様の12CrMoを用い、大気中で加振周波数fを15Hzとして試験した。用いるフレッティング疲労試験装置は、図1、図6、図8に示したフレッティング疲労試験装置のロードセルを用いてフレッティング疲労強度を測定したものである(歪ゲージ20は使用しない)。
【0034】
なお、このフレッティング疲労試験装置は、接触端部30のピーク応力を測定するものではないため、パッド5と試験片3との接触長さ(L)を変えると共に一部(図1に示した形式)で試験片3の幅(W)を変えて試験を行った(5mm、10mm、30mm、50mm)。この詳細を同図(b)の表図に示す。なお、この試験を行うために図1および図6に示す形式のフレッティング疲労試験装置100、200を用いているが、これらの形式はいわゆる公知であることを意味するものではない。また、参考に通常の疲労破壊強度を示す値を符号◇で示す。
【0035】
この試験結果を比較すると、公称応力を用いて評価する方法では、接触長さLおよび幅W、面圧の違いによりフレッティング疲労強度のデータに相当なばらつきが生じていることが判る。また、接触長さLと幅Wが同じであっても、用いる装置形式によってフレッティング疲労強度のデータに相当なばらつきが生じている。これは、機械要素の部材寸法や発生形態などの影響を受けてフレッティング疲労が異なる挙動を示すことを意味しており、それゆえ、フレッティング疲労限度の推定を困難にする。
【0036】
一方、本発明のようにピーク応力を用いてフレッティング疲労強度を測定した場合には、フレッティング強度のばらつきが小さく、さらに、装置形態によるばらつきも小さく抑えられることが判った。これは、パッド5と試験片3との接触端部30に生じるピーク応力に着目したので、接触長さLによる影響を含めて評価したことが一つの理由であると思われる。このように、上記フレッティング疲労試験装置100、200、300を用いることにより、フレッティング強度限界の帯域(図10中、符号B)を精度よく設定することが可能になる。また、同図の結果から、装置形態によるばらつきも極めて小さいことが判る。これは、フレッティング疲労試験装置100〜300の形態に自由度を持たせられることを意味しており、例えば装置形態を適宜選択して使用しても、フレッティング疲労強度のばらつきが小さいから、同じような試験結果を得ることができることになる。
【0037】
図12は、歪ゲージの配置を変更した例を示す説明図である。同図(a)に示すように、パッド5と試験片3との接触端部30から試験片3の厚み方向に歪ゲージ50を張着するようにしてもよい。また、歪ゲージ50の一端縁50aは、ピーク応力を実測するため、試験片3の端縁3aに合わせるようにして設置する。同図(b)では、横軸に接触端部30からの距離(X)、縦軸に応力(S)を示す。試験片3に対する応力は接触端部30がもっとも大きいから、歪ゲージ50の出力は接触端部30に近づくほど大きくなり、当該接触端部30でピーク応力を示す。このような構成にすれば、ピーク応力を外挿しなくても直接検出することができる。あとは、上記同様、このピーク応力からフレッティング疲労限度を推定する。
【0038】
図13は、歪ゲージの配置を変更した他の例を示す説明図である。同図(a)に示すように、パッド5と試験片3との接触端部30から試験片3の平面側に歪ゲージ60を張着するようにしてもよい。また、歪ゲージ60の一端縁60aは、ピーク応力を実測するため、前記接触端部30の位置に合わせるようにする。同図(b)では、横軸に応力(S)、縦軸に接触端部30からの距離(X)を示す。上記同様、歪ゲージ60の出力は、接触端部30に近づくほど大きくなり、当該接触端部30でピーク応力を示す。あとは、このピーク応力からフレッティング疲労限度を推定する。
【0039】
なお、同図(c)に示すように、歪ゲージ65を接触端部30の両側に渡って張着するようにしてもよい。このときの歪ゲージ65の出力を同図(d)に示す。この場合、より正確にピーク応力を測定できるから、フレッティング疲労限度を精度よく推定できるようになる。なお、上記実施の形態では、歪ゲージ20、50、60に5連のものを用いたが、これ以外にも6連以上のものを用いることができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明のフレッティング疲労試験装置では、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、このパッドおよび試験片を相対移動させる加振手段と、試験片のフレッティング疲労が発生する部分であってパッドとの接触部分以外に設けた歪ゲージとを備えた。このため、フレッティング疲労限度を精度よく推定することが可能になる。
【0041】
また、この発明のフレッティング疲労試験装置では、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、このパッドおよび試験片を相対移動させる加振手段と、パッドが接触する前記試験片の面であってパッドと試験片との接触端部近傍から設けた歪ゲージとを備えたので、フレッティング疲労限度を精度よく推定することが可能になる。
【0042】
また、この発明のフレッティング疲労試験装置では、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、一端を開放した試験片の他端を保持して加振する加振手段と、固定端に固定され、パッドを支持する支持手段と、試験片のフレッティング疲労が発生する部分であってパッドとの接触部分以外に設けた歪ゲージとを備えたので、簡単な構成で、フレッティング疲労限度を高い精度で求めることができる。
【0043】
また、この発明のフレッティング疲労試験装置では、試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、一端を固定端に固定された試験片の他端を保持して加振する加振手段と、試験片のフレッティング疲労が発生する部分であってパッドとの接触部分以外に設けた歪ゲージとを備えたので、簡単な構成でフレッティング疲労限度を高い精度で求めることができる。
【0044】
また、この発明のフレッティング疲労試験装置では、複数の歪ゲージ単体を直線的に設けて前記歪ゲージを構成し、各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記パッドと試験片との接触端部におけるピーク応力を外挿取得するピーク応力取得手段を設けたので、フレッティング疲労限度を高い精度で求めることができる。
【0045】
また、この発明のフレッティング疲労推定方法では、試験片に面圧をもってパッドを接触させ、この試験片に発生するフレッティング疲労を評価するにあたり、試験片とパッドとの接触端部に生じるフレッティング疲労発生時のピーク応力を取得し、このピーク応力を用いることで、フレッティング疲労強度を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態にかかるフレッティング疲労試験装置を示す正面図である。
【図2】図1に示したフレッティング疲労試験装置の平面図である。
【図3】パッドと試験片との接触部分を示す拡大図である。
【図4】試験片に生じる応力分布を示す模式図である。
【図5】接触端部からの距離と応力との相関関係を示すグラフ図である。
【図6】異なる形式のフレッティング疲労試験装置を示す正面図である。
【図7】図6に示したフレッティング疲労試験装置を示す平面図である。
【図8】さらに異なる形式のフレッティング疲労試験装置を示す正面図である。
【図9】図8に示したフレッティング疲労試験装置を示す平面図である。
【図10】3種類のフレッティング疲労試験装置によりピーク応力を用いてフレッティング疲労試験をした結果を示すグラフ図である。
【図11】比較試験例として、従来の公称応力を用いたフレッティング疲労試験の結果を示すグラフ図および表図である。
【図12】歪ゲージの配置を変更した例を示す説明図である。
【図13】歪ゲージの配置を変更した他の例を示す説明図である。
【図14】従来のフレッティング疲労試験装置の一例を示す構成図である。
【図15】フレッティング疲労評価線図の一例を概略的に示すグラフ図である。
【符号の説明】
100 フレッティング疲労試験装置
1 加振装置
2 ホルダー
3 試験片
5 パッド
6 板バネ
7 ロッド
10 ロードセル
11 冶具
12 支持部材
13 歪ゲージ
14 ロードセル
15 固定端
20 歪ゲージ
25 処理回路
30 接触端部
41 ホルダー

Claims (5)

  1. 試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、
    このパッドおよび試験片を相対移動させる加振手段と、
    試験片と、試験片に面圧を供するパッドとの接触端部の両側に渡って、かつ、前記試験片のフレッティング疲労が発生する部分であってパッドとの接触部分以外に張着した複数の歪ゲージ単体と、を備え、
    各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記パッドと試験片との接触端部におけるピーク応力を外挿取得するピーク応力取得手段を設けたことを特徴とするフレッティング疲労試験装置。
  2. 試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、
    このパッドおよび試験片を相対移動させる加振手段と、
    前記試験片の、前記パッドとの接触部分以外であってパッドと試験片との接触端部近傍で、複数の歪ゲージ単体を前記接触端部の両側に渡って張着し、各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記接触端部におけるピーク応力を外挿取得するピーク応力取得手段を設けたことを特徴とするフレッティング疲労試験装置。
  3. 試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、
    一端を開放した試験片の他端を保持して加振する加振手段と、
    固定端に固定され、パッドを支持する支持手段と、
    前記試験片の、前記パッドとの接触部分以外であってパッドと試験片との接触端部近傍で、複数の歪ゲージ単体を前記接触端部の両側に渡って張着し、各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記接触端部におけるピーク応力を外挿取得するピーク応力取得手段を設けたことを特徴とすることを特徴とするフレッティング疲労試験装置。
  4. 試験片に対して所定の面圧をもって接触させるパッドと、
    一端を固定端に固定された試験片の他端を保持して加振する加振手段と、
    前記試験片の、前記パッドとの接触部分以外であってパッドと試験片との接触端部近傍で、複数の歪ゲージ単体を前記接触端部の両側に渡って張着し、各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記接触端部におけるピーク応力を外挿取得するピーク応力取得手段を設けたことを特徴とするフレッティング疲労試験装置。
  5. 試験片に面圧をもってパッドを接触させ、この試験片に発生するフレッティング疲労を評価するにあたり、前記試験片の、前記パッドとの接触部分以外であってパッドと試験片との接触端部近傍で、複数の歪ゲージ単体を前記接触端部の両側に渡って張着し、各歪ゲージの出力信号から試験片に作用する応力の傾向に基づいて、前記接触端部におけるピーク応力を外挿取得し、このピーク応力を用いてフレッティング疲労強度を推定するようにしたことを特徴とするフレッティング疲労推定方法。
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