JP3589668B2 - 複合体支承シェルおよび被覆部を有する義歯、その製造法およびその製造機械 - Google Patents

複合体支承シェルおよび被覆部を有する義歯、その製造法およびその製造機械 Download PDF

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Description

本発明は歯冠、ブリッジ、移植義歯、人工歯または着脱自在矯正器などの義歯、すなわち自然ゾウゲ質断片から少なくとも1つの歯の形状および特性を再構成するための義歯(口中で最初の歯の上に取り付けられる歯冠)、移植取り付け部材(口中の移植歯の上に取り付けられる歯冠)または軟組織(歯列)を代表する実験的モデルに関するものである。
公知の義歯は、金属または複合材料(WO−A−8,904,640)または樹脂からなる単一部品の支持枠形に、またはセラミックまたは樹脂で覆われた一般に金属のシェルまたは補強材の形に形成される。またFR−A−2,588,181号はインレーコア、シェル、ブリッジまたは移植歯のポストを形成するために複合材料を使用する方法を推奨している。
先行技術においては、これらの義歯および特にその内部の構成要素(シェル、金属支持枠、ポスト、シェルなど)をできるだけ剛性の材料から製造する方法が探求されていた。すなわち、WO−A−8,904,640は、より剛性で強い複合材料、一般に使用されるポリマーより高い機械特性を有する剛性材料から義歯を製造する方法を推奨している。特にこの文献は、3.45GPaより高い弾性率を有する複合材料を使用する方法を推奨している。またFR−A−2,588,181は高いこわさを義歯に与えるため、特にエポキシ樹脂またはポリエステルから成るマトリックスを高強度繊維、特に炭素繊維によって補強した複合材料を使用する方法を推奨している。歯または義歯の公知の本質的性質は、衝撃作用で破断せず、また他方過度に急速に摩耗しない性質である。しかし現在まで、このような性質を得るために義歯の剛性を強化する事が求められた。
しかし全金属性の義歯は外観がよくなく、また全部樹脂で形成された義歯は使用中に脆い事が発見された。また金属シェルまたはセラミックで被覆された補強材から成る義歯は非常にコスト高で製造時間が掛かり製造が複雑であり、また樹脂で被覆された金属支持枠あるいは補強材は同じく製造時間が掛かり、その使用中に金属補強材またはシェル上の樹脂の接着性が悪くまた非常に異なる機械特性を有する材料(金属/樹脂)の界面における応力の集中の故に使用中に破損しやすい。
しかし出願人は、満足な機械特性を得るためには、ゾウゲ質とエナメル質被覆によって包囲された歯髄冠を含む自然歯をできるだけ模倣しまた再現しなければならない事を発見した。従って義歯が相異なる機械特性を有する2つの別々の部分から成る事、すなわち硬い摩耗抵抗の被覆と支承シェルまたは補強材とから成りそれらの特性は硬い被覆が破断せず、またゾウゲ質断片に剛性的に組合わされて自然歯の動的および静的機械特性を再現するようにする事が重要である。
従って本発明の目的は、支承シェルとこの支承シェルを被覆する外側仕上げ被覆とを含み、前記のような先行技術の問題点を示す事なく、すなわち被覆が完全に支承シェルに対して固着し、被覆と支承シェルのそれぞれの機械特性および物理化学特性がそれぞれの固有の応力から別々に決定されるようにした義歯を提供するにある。
本発明の他の目的は自然歯の機械的特性をできるだけ再現しまたバイオ相容性であって、製造の容易な義歯を提供するにある。
本発明の他の目的は、完全に耐摩性であり、使用中に破断せず、歯の生物学的環境と両立し、特に衝撃に対して骨を防護し、特に歯のネックのレベルで骨分解またはアンシーリングまたはアンステックキング現象を防止する事のできる義歯を提供するにある。
本発明のさらに他の目的は、患者の自己受容性感覚をできるだけ保存させる事のできる義歯を提供するにある。
本発明のさらに他の目的は、外観上の要件を満たしまた自然歯を模倣した表面状態を有する義歯を提供するにある。
本発明のさらに他の目的は、同時に金属をまったく含有しない義歯を提供するにある。
本発明のさらに他の目的は、橋かけ結合(架橋結合)前の有機マトリックスを予含浸された本発明の義歯を製造するための織り体部分を提供するにある。
本発明のさらに他の目的は、この方法を実施するための機械を提供するにある。特に本発明の目的は、特に構造簡単で、安価であり、低コストで義歯技術者に提供されるコンパクトな義歯製造機械を提供するにある。
この目的を達成するため、自然、移植または人工のゾウゲ質断片を被覆するように設計された支承シェルと、前記支承シェルを被覆する外側仕上げ被覆とを含む義歯において、前記支承シェルはマトリックスの中に埋め込まれた繊維補強材を含む複合材料から成り、また前記被覆は、前記支承シェルのマトリックスの少なくとも1つの本質的成分と同一性質の少なくとも1つの本質的成分を有する少なくとも1層の材料から成る事を特徴とする義歯に関するものである。支承シェルについての複合材料を使用し被覆についてこれと同一性質の有機樹脂とを使用する事により、支承シェルと被覆の両方の機械特性(弾性率、弾性限度、引張強さおよび圧縮強さなど)を相互に別個に適合させる事ができると共に支承シェル上の被覆の完全な凝縮と解離を伴なわない接着状態とを保証する事ができる。
本発明によれば、化粧樹脂の主成分と有機マトリックスの主成分が類似または同種である。さらに詳しくはまた本発明によれば、支承シェルのマトリックスと外側仕上げ被覆は本質的に少なくとも1種のメタクリラート樹脂、特にジメタクリラート樹脂によって形成される。本発明によれば、BIS フェノール A誘導体、特にBIS−GMA(BIS−フェノール A−グリシジル ジメタクリラート)から形成された樹脂を使用する事ができる。バイオ相容性であてって、所要の機械的特性を生じるに適した被覆および複合材料マトリックスが得られ、またマトリックスと被覆樹脂の中に少なくとも1つの共通成分が存在して化学反応によって相互的凝縮と強固な接着が得られる限り、他の任意樹脂を使用する事ができる。
本発明によれば、支承シェルの弾性率は自然歯列の弾性率から25%以上相違しない。特に本発明によれば、支承シェルの弾性率が25GPa以下または同等とし、特に7乃至25GPaの範囲内に含まれ、これに対して被覆の弾性率は10GPa以上、特に12乃至26Gpaの範囲内にある。さらに、支承シェルは120MPa以上の引張り強さ、特に200MPaの引張り強さを有し、また300乃至400MPaの範囲内の圧縮強さを有する。外側仕上げ被覆は100KHN以上の硬度を有する。
本発明によれば、支承シェルの補強部材は特にガラス繊維、セラミックス繊維またはシリカ繊維の少なくとも1層の、特に複数層の繊維メッシュ織り体から成る。
また本発明は、橋かけ結合前のマトリックスを予含浸され、成形、橋かけ結合および有機樹脂から成る外側仕上げ被覆の配置後に義歯の支承シェルを成す織り体部分において、前記マトリックスが被覆の少なくとも1つの本質的成分と同一性質の少なくとも1つの本質的成分を有する事を特徴とする織り体部分に関するものである。本発明によれば、この織り体部分は2枚のフィルムまたは膜の間に保持されたディスク状を成し、また/あるいはその中心部分において少なくとも相当に円筒形に予成形されている。またこの織り体部分は任意形状とし、ユーザがその用途に従ってその一部を切断し、特に2または2以上の支承シェル間にリンクを形成してブリッジまたは歯列を構成する事ができる。
また本発明は、本発明による予含浸された織り体部分が成形モデルの上に配置され、この織り体部分を成形モデル上に圧縮する事によって成形され、織り体部分の有機マトリックスの硬化を実施して剛性支承シェルを形成し、次に支承シェルの上に順次に複数の被覆層を橋かけ結合して外側仕上げ被覆を形成する事を特徴とする本発明による凝縮の製法に関するものである。被覆を形成するため支承シェル上に順次に配置される有機樹脂層は予含浸された織り体のマトリックスと同一性質の少なくとも1つの本質的成分を含む。
また本発明は、気密ケーシングと、前記ケーシングの中において成形モデルを受けるプレートと、前記ケーシングを2つのチャンバに分割する可撓性流体不透過性、例えば気密性膜と、成形モデルを含むチャンバの中に他方のチャンバの流体圧より低い流体圧を生じる手段と、成形モデル上に配置された織り体部分を橋かけ結合する手段とを含む事を特徴とする本発明による方法を実施する機械に関するものである。
また本発明は下記に記載の特徴の全部または一部を結合的に含む義歯、予含浸された織り体部分、その製造法および製造機械に関するものである。
以下、本発明を図面に示す実施例について詳細に説明するが本発明はこれに限定されない。
第1図は本発明による義歯を備えた歯の垂直断面図、
第2図は本発明の製造法の1段階における本発明の予含浸された織り体部分の立面図、
第3図は本発明の製造法の次の段階を示す第2図と類似の図、
第4図は本発明による機械の概略断面図、また
第5図は本発明による予含浸された織り体部分とこれを挟持するフィルムおよび膜を示す斜視図である。
第1図には、義歯を受けるように口中で補修された自然のゾウゲ質断片1上に取付けられた本発明による義歯を示す。この義歯は自然断片1をカバーする支承シェル2と、支承シェル2をカバーする外側仕上げ被覆3とから成る。この支承シェル2は、有機マトリックス5の中に埋込まれた繊維補強材4の複合材料から成る。また被覆3は少なくとも1つの有機樹脂層から成り、この有機樹脂が化学反応によって支承シェル2の複合材料の上に接着するようにこの樹脂の少なくとも1つの本質的成分が有機マトリックス5の少なくとも1つの本質的成分と同一である。
本明細書を通して、「本質的成分」とはマトリックスまたは樹脂中において10%以上の濃度を有する成分を意味し、また「同一性質」とは、これらの成分が同一であるか、または同一化学ファミリーに属して相互に反応し橋かけ結合後に固体の均質組織を形成できる事を意味する。
従って本発明によれば、被覆と支承シェルのマトリックスの有機樹脂は少なくとも1つの成分を共有する。好ましくはまた本発明によれば、樹脂とマトリックスの主成分は同一性質を有し、特に類似または同一のものである。
被覆を構成する有機樹脂および支承シェル2を構成する複合材料は、得られた義歯が外観上の要求およびバイオ相容性要件を満たす満足な機械特性を有するかぎり任意のものを使用する事ができる。しかし義歯の被覆に使用される有機樹脂は一般に有機ベースと装入物またはマイクロ装入物から成る樹脂である。本発明によれば支承シェル2を構成する有機マトリックスも、被覆3と同一のベースと、使用上の便宜および適当な機械的特性を与えるための適当な充填材またはマイクロ装入物とから成る有機樹脂とする。
本発明によれば、支承シェル2のマトリックス5と外側被覆3は本質的に少なくとも1つのメタクリラート樹脂、特にジメタクリラート樹脂から成る。
本発明によれば支承シェル2のマトリックス5は、ジメタクリラートベース芳香族樹脂、エポキシベース芳香族樹脂およびポリメタクリラート樹脂から成るグループから選定された少なくとも1つの本質的成分を含み、また本発明によればマトリックス5はウレタン メタクリラート樹脂を含む事ができる。ジメタクリラート芳香族樹脂のうち、特にBISフェノールA誘導体、例えばBISフェノールA−グリシジル−ジメタクリラート(BIS−GMA)、また/あるいはウレタン ジメタクリラート(UDMA)などの他の単量体、および/またはトリエチレン−グリコール−ジメタクリラート(TEDMA)を使用する事ができる。
本発明によれば、低分子量複合体との共重合によって変性されたBIS−GMAベース樹脂、被制限的例としてビスフェノール グリシジル−ジメタクリラート(BIS−MA)、ビスフェノール エチル−メタクリラート(BIS−EMA)、ビスフェノール プロピル−メタクリラート(BIS−PMA)、エチレン グリコール−ジメタクリラート(EGDMA)、ジエチレン クリコール−ジメタクリラート(DEGDMA)、トリメチレン グリコール−ジメタクリラート(TEGDMA)、トリエチレン グリコール−メタクリラート(TEGMA)、メチルメタクリラート(MMA)およびポリウレタン−フルオル−メタクリラート(PFUMA)を使用する事ができる。
また支承シェル2を構成する有機マトリックス5は装入物および特に光硬化性成分、例えばジケトン、特にジアセチルおよび/またはキノン、例えば可視光線に対して感応するカムフォロ−キノンおよびアセナフテン キノン、および促進剤、特にアミンを含む。従って本発明による有機マトリックスは可視光線に照射する事によって橋かけ結合される。
さらに、支承シェルの複合材料は少なくとも1層の繊維メッシュ織り体から成る繊維補強材4を含む。本発明によれば、支承シェル2の複合材料は複数層の繊維メッシュ織り体、特にガラス繊維、セラミックまたはシリカ繊維から成るラミネートである。従って、それぞれ厚さ0.1mmを有する2層乃至10層のガラス繊維織り体EまたはSを使用する事ができる。
非制限的例として下記特性を有する繊維メッシュ織り体が優れた結果を示した。
目方:90±5g/m2
補強材:4のサテン
組織:
縦糸:EC5 22
横糸:EC5 22
ラミネートの層ごとの厚さ:0.09mm
弾性率:
縦糸:約18,000MPa
横糸:約18,000MPa
引張り強さ:
縦糸:200MPa
横糸:200MPa
50体積%の補強材を有するラミネートの場合。
また本発明による複合材料は繊維補強材料4のほか、他の有機装入物を含む事ができる。特にマトリックス5の流動性とペゴシティ(Pegosity)を変更するように設計された装入物、例えば少なくとも0.1μm乃至100μmの直径を有するシリカ粒子ベース、例えば熱分解シリカまた/あるいはガラスあるいはセラミックベース粒子、特にガラスまたはホウケイ酸粒子、セラミックスガラス、バリウム−アルミニウム粒子、ストロンチュウム−アルミニウム粒子などを含む事ができる。またニオブ、スズ、チタンなどの放射線不透過性重金属、およびシェルの外観を良くするように設計された有機または無機顔料を含む事ができる。さらにこれらのすべての無機装入物(粒子および繊維)は有機マトリックス5の中に装入する前にアリールオキシ−シランおよび/またはハロシランなどの有機シラン複合体によって処理される。
本発明によれば、支承シェル2は40乃至80体積%の有機マトリックスを含む。これは、芳香族樹脂ベース成分および光硬化性有機装入物が複合体材料の体積の40%乃至80%の割合で含まれている事を意味する。また無機装入物、すなわち繊維補強材料4および他の無機装入物は複合体材料の20乃至60体積%含まれる事を意味する。
さらに外側仕上げ被覆3は、高い剛性と、大きな摩耗抵抗と、自然の歯に類似した色合いを有するように、化粧樹脂、特にBIS−フェノール−A誘導体、例えばBIS−GMAなどの樹脂を装入する事ができる。この種の装入化粧樹脂はそれ自体公知である。
また本発明は、自然、移植または人工ゾウゲ質断片1をカバーする支承シェル2と、この支承シェル2をカバーする外側仕上げ被覆3とを含む義歯において、支承シェル2の弾性率が自然の歯冠または歯根ゾウゲ質から±25%相違しない事を特徴とする義歯に関するものである。本発明によれば、支承シェル2の弾性率は25GPa以下またはこれと同等であって特に7乃至25GPaの範囲に含まれ、外側仕上げ被覆3の弾性率は10GPa以上、特に12乃至26GPaの範囲内である。このようにして、先行技術の義歯において見られるような相異なる材料層間の弾性率の連続性の中断が除かれる。従って第1図に図示のような本発明による義歯によって得られる再構成歯は自然の歯と類似の機械特性を有する。
さらに、支承シェル2は120MPa以上の、特に約200MPa以上の引張り強さを有する。この引張り強さは、特に引張り強さに耐えなければならない支承シェル2のネック6のレベルで大である。さらに本発明によれば、支承シェル2は、噛む動作によって生じる圧縮力に耐えるために300乃至400MPaの範囲内の圧縮力を有する。外側仕上げ被覆3は100KHN以上の硬度を有する。
仕上げ被覆3と支承シェル2のこれらのそれぞれの機械特性は、支承シェル2を構成する複合材料と被覆3の有機樹脂とを構成する要素を適当に選択する事によって容易に達成される。特にガラス繊維の割合および使用される織り体層の数、およびガラス繊維の直径が公知のように弾性率に影響する。
さらに本発明によれば外側被覆3は、支承シェル2の外側面と同一レベルまたは有機マトリックス5から突出した支承シェル2の繊維補強材4の表面層に接着する。このようにして被覆3を形成樹脂が表面に現れた繊維被覆4の繊維の上に直接に接着し、これは凝集力と接着力を改良する。従って前述から明らかなように、支承シェル2の繊維補強材4の表面繊維の網目の中に外側被覆3が進入する事による物理的固着と、他方において支承シェル2の有機マトリックス5と被覆3の有機樹脂との化学反応との組合わせにより、被覆3と支承シェル2との間の凝集および接着が内部的に達成される。
本発明によれば支承シェルと接触する被覆3の第1有機樹脂層は、有機マトリックス5の層と共通成分の樹脂によって構成される。すなわち非装入樹脂から成る。特にこの第1層は非装入メタクリラートまたはジメタクリラート樹脂から成る。この被覆3の非装入樹脂の第1層が支承シェル2の複合材の中に進入しまた他方被覆3の装入樹脂の第1層の中に進入する。支承シェル2と被覆3との間の融合により均質な混合と優れた連続性が得られる。
支承シェル2そのものは密封セメント31によってゾウゲ質断片1の上に取り付けられ、この密封セメントは有機樹脂ベースとし、特にゾウゲ質断片1と義歯との間の密封性を生じるようにトリ−n−ブチル化合物によって活性化された無水4−メタクリルオキシエチルトリメノット酸とする。これは、ゾウゲ質断片1と義歯との間の密接状態を生じる(META4と呼ばれる樹脂)。
従って本発明による義歯を取付けられた歯は外側から内側に、0mm乃至2mmの厚さを有する化粧外側仕上げ被覆3と、複合材料から成り0.1乃至2mmの厚さを有する支承シェル2と、5乃至35μmの厚さを有する密封セメント層31と、自然ゾウゲ質または複合材料あるいは金属材料の再構成ゾウゲ質の断片1とを含む。
支承シェル2の複合材料はガラス以外の繊維、例えばアラミド繊維(特にKevlar、登録商標)、炭素繊維、ホウ素繊維、シリカ繊維またはセラミック繊維などで形成する事ができる。有機マトリックスも、光ではなく加熱プロセスまたは化学プロセスまたはその他のプロセスで橋かけ結合されるマトリックスとする事ができる。繊維補強材4を構成する繊維の配向、サイズおよびメッシュは義歯の適用について必要とされる前記の機械的特性に対応して選定される。本発明によれば、支承シェル2のネック6はネック以外の箇所の標準的厚さと同一の厚さを有する。義歯のネック6近くの箇所の複合材料の引張り強さを増大するため、この箇所において繊維補強材のメッシュを強化し締付る事ができる。実際に、義歯の受ける最大応力が一般にネック6のレベルに加えられる事が確認された。
また本発明は本発明による2つの義歯の2つの支承シェル2を連結要素によって連結してブリッジを構成する事ができる。連結要素そのものは複合材料または織り体あるいは繊維によって強化された材料によって形成する事ができる。
また本発明は、予め有機マトリックスを含浸され、成形、橋かけ結合および有機樹脂から成る外側被覆3を配置して本発明による義歯の支承シェル2を形成するように設計された織り体部分7に関するものである。この本発明による織り体部分7は、被覆3の少なくとも1つの本質的成分と同一成分の少なくとも1つの本質的成分を有する。織り体部分7は、橋かけ結合された後に本発明による義歯の支承シェル2を形成するためにそのまま使用される。従ってこの織り体部分は本発明による義歯の支承シェル2を構成するすべての成分を含む。従って被覆3の樹脂の主成分と織り体部分7のマトリックスの主成分は類似である。また織り体部分7の有機マトリックスと被覆3の樹脂は少なくとも1つのメタクリラート樹脂、特にジメタクリラート樹脂によって構成される。織り体部分7の繊維補強部材4は、それぞれ約0.1mmの厚さを有する少なくとも1層、特に複数層、2乃至10層の繊維メッシュ織り体から成る。本発明によれば、好ましくはガラス、セラミックスまたはシリカ繊維が使用される。
本発明によれば、織り体部分7は2枚の保護フィルム8および/または2枚の可撓性膜9、10の間に保持された直径10乃至100mmのディスク状を成す。織り体部分は任意の形状をとる事ができ、この場合ユーザはその所望の用途に従って、特にブリッジまたは歯列を成すために2または2以上の支承シェルの間にリンクを成すように、織り体部分を切り出す事ができる。
また本発明は本発明による予含浸織り体部分7から本発明による義歯を製造する方法に関するものである。本発明によれば、予含浸織り体部分7が成形モデル11上に配置される。このモデルは自然ゾウゲ質断片、または可移植ゾウゲ質断片、または可動義歯のモデル(例えば歯列の製造の場合)のレプリカとする事ができる。次に予含浸された織り体部分7を成形モデル11上に圧縮する事によって成形する。次にその有機マトリックス5を橋かけ結合して剛性支承シェル2をえる。次にこの支承シェル2上に順次に複数層の橋かけ結合有機樹脂層を形成して外側仕上げ被覆3を形成する。予含浸織り体部分7を成形モデル11上で形成しこの成形モデルに対して押圧するため、可撓性の流体不透過膜、特に気密膜9が流体差圧によって織り体部分7上に加えられ、この織り体部分が成形モデル11に対して圧着される。この段階において、成形モデル11と膜9との間に1つまたは複数のエアポケットが捕捉される事を防止するため、制御された差圧を加える事により膜9を成形モデル11の表面の上方において、徐々に長手方下方にまたは上方に移動させる。織り体部分7は、モデル11上に配置される前に、その中央部分において、少なくとも相当に円錐形となるようにゾウゲ質断片の形状に予形成される。このようにして、特殊の手段を必要とせずに、円錐形中心部分がゾウゲ質断片11上に載置される。他の実施態様として、予含浸された織り体部分7を2枚の流体不透過性可撓性膜9、11の間に強く保持し、この組立体を差圧によって成形モデル11上に圧着する事によって、織り体部分7をモデル11上で成形する事ができる。人工歯を配置する底板は単一操作で製造される。第1の実施態様が単一義歯の製造の場合に好ましい。
本発明によれば、橋かけ結合の前に支承シェル2の外側面12は摩損作用または侵食作用を受けて、被覆3を形成するための第1有機樹脂層をかぶせる前に繊維補強部材4の繊維を表面に露出させる。このようにして、被覆3を形成する第1層を成す隣接被着層が補強部材4の繊維と直接に接触させられる。また本発明によれば、支承シェル2上に被着される有機樹脂の第1層は、被覆3およびマトリックス5と共通の成分から成る樹脂、すなわち非装入または軽度装入樹脂によって形成される。
第2図は、自然ゾウゲ質断片を再現する人工ゾウゲ質断片としての成形モデル11上に配置され円錐形状に予形成された予含浸織り体部分7を示す。第3図は織り体部分7が差圧によってゾウゲ質断片11上に成形された後の状態を示す。第3段階の次に、支承シェル2の余分ネック部分13が切断される。この操作は絶対にゾウゲ質断片を引き出す前に実施しなければならない。このようにして形成された剛性支承シェル2は、分離フィルムがゾウゲ質断片11と含浸された織り体部分7との間に配置されていれば、単にこれをゾウゲ質断片11から分離する事によって引き出され、あるいはゾウゲ質断片11を構成する材料を化学的に溶解する事によって引き出される。次に前述のように支承シェル2の外側面12の摩耗を実施し、化粧樹脂の順次光重合層を被着して被覆3を形成する。
また本発明は第4図に図示のような本発明の方法を実施するための機械に関するものである。この機械は密封ケーシング14、ケーシング14の中に成形モデル11を受けるプレート15、ケーシング14を2つのチャンバ14a,14bに分割する特に気密性の可撓性流体不透過性膜9、成形モデル11を含むチャンバ14aの中に縦方向のチャンバ14bの中より低い流体圧を生じる手段16、25、26、およびチャンバ14a中の成形モデル11上に配置された織り体部分7の橋かけ結合手段17、18、19、32を含む。本発明によれば、橋かけ結合手段17、18、19は光硬化手段であって、成形モデル11を含むチャンバ14aの反対側のチャンバ14bの中に配置された少なくとも1つの光源17を含む。この場合、可撓性分離部材9は半透明または透明であり、すなわち光を通過させる。橋かけ結合手段17、18、19は少なくとも1つの光搬送ダクト18を含み、この光ダクトはプレート15を通して、透明または半透明材料から成る成形モデル11そのものの内側に光を伝達する。このようにして内側からの照射が実施され、橋かけ結合の効率が改良される。また橋かけ結合手段17、18、19は、光の拡散を改良するために成形モデル11を包囲した周辺ミラー19を有する。
本発明の機械は、前記の橋かけ結合手段17、18、19のほか、化学的および/または熱的橋かけ結合手段32を含む事ができる。
ケーシング4は、成形モデル11を受ける下方プレート15と、カバーを成す同形の平行上方プレート20と、これらの2つのプレート間に流体不透過的に配置された円筒体21とを含む。円筒体21は製造工程の進行を視認するために透明である。上方プレート20はその外周にそって規則的間隔に配置された圧縮バネ23を含む複数の小カラム22を担持する。これらのカラム22は、膜9の外周縁を下方プレート15の円筒形突起24にクサビ留めするために、この膜9の縁を圧着するように設計されている。従って小カラム22、バネ23および突起24は、2チャンバ14a,14bを分離する膜9の着脱自在固着手段を成す。
従って膜9は、機械を分解させる必要があるたびに、すなわち義歯の製造を準備するために簡単に交換する事ができる。膜9を取り替えまた/あるいは成形モデル11と重合される織り体部分7を準備する事ができるように、下方プレート15は円筒体21に対して気密的にしかし着脱自在に取付けられる。光源17は単に電球によって形成する事ができる。2つのチャンバ14a、14bの間の差圧はオリフィス25を通してチャンバ14bの中に圧縮流体を導入する事により、また/あるいは成形モデル11を含む下方チャンバ14aから吸引オリフィス26を通して流体を吸引する事により生じる事ができる。例えば吸引オリフィス26と導入オリフィス25を流体ポンプ16によって相互に接続する事ができる。このようにして作られる差圧の作用で、可撓性膜9が成形モデル11に対して押圧され、従って予含浸された織り体部分7を成形モデル11に対して押圧する。次に、照明手段17、18のスイッチを入れて、織り体部分7の有機マトリックスの光重合を実施し、支承シェル2を形成する。このようにして得られた結果を第3図に示す。第4図において、歯列の製造例を示した。この場合成形モデル11は歯列用の実験モデルである。予含浸された織り体部分7が2枚の膜9、10の間に保持される。上方膜9はケーシング14を分離する膜として作用する。その直径は機械の直径に対応している。その厚さは60乃至120μmの範囲内である。この膜9はコポリマーなどの弾性合成材料から成る。下方膜10は、吸引ポンプ16が始動される前に織り体部分7を保持するのに役立つ。この下方膜10もコポリマーの20乃至40μm厚さの半透明膜によって成形する事ができる。
本発明による機械はコンパクトで、特に製造簡単であり、製造コストが低く、また使用しやすい。従って約20cmの高さと直径を有するこの種の機械を作成する事が可能となった。
実際に、3層の化粧被覆を磨き仕上げる最終段階を含めて約30分で、予含浸された織り体部分7から口中に容易に取り付けられる歯冠を作成する事が可能となった。しかし同一の型の歯冠を製造するためには、金属クラウンの場合、約1時間15分の作業時間を必要とし、金属補強材を有する樹脂歯冠の場合に1時間半、また金属補強部材を有するセラミック歯冠の場合には約2時間を必要とする。
本発明の他の実施態様においては、支承シェル2はセラミック粉末マトリックス中に埋め込まれたセラミック繊維から成る補強材4から成る複合材料であり、また被覆3はセラミック粉末から成る。もちろんこのマトリックスのセラミック粉末と被覆のセラミック粉末の組成は、本発明の本質的フィーチャの1つに従って、少なくとも1つの同一性質の本質的成分を有するようにする。
マトリックスと被覆のセラミック粉末は最初に結合剤として作用する材料を含む事ができる。この結合剤は例えば水、アルコール、有機樹脂とする事ができる。
この結合剤は、最初の成形操作に対して粉末に適当なペーストコンシステンシーを与えるのに役立つ。
またこの結合剤は、焼成または重合処理の後に粉末に対して最終硬度を与えるのに役立つ。従ってこの結合剤は義歯を硬化するために重合するように選定される。この場合この結合剤は重合性有機樹脂とする事ができる。また結合剤は焼成が実施された時に部分的にまは完全に消失するものが選定される。この場合この結合剤は水、アルコールまたは有機樹脂とする事ができる。

Claims (27)

  1. 自然、移植または人工のゾウゲ質断片(1)を被覆するように設計された支承シェル(29)と、外側仕上げ被覆(3)とを備えており、前記支承シェル(2)はマトリックス(5)の中に埋め込まれた繊維補強材(4)を含む複合材料から成る義歯において、外側仕上げ被覆(3)は支承シェル(2)を完全に被覆 し、この外側仕上げ被覆(3)は前記マトリックス(5)の少なくとも1つの本質的成分と同一性質の少なくとも1つの本質的成分を有する少なくとも1層の材料からなり、支承シェル(2)の弾性率が25GPa以下また は同等であり、被覆(3)の弾性率が10GPa以上である事を特徴とする義歯。
  2. 前記マトリックス(5)が、有機材料から成り、また前記被覆(3)が有機樹脂から成る事を特徴とする請求項1に記載の義歯。
  3. 前記複合体材料はセラミック粉末ベースマトリックス(5)の中に埋め込まれたセラミック繊維(4)の補強材を含み、また前記被覆(3)はセラミック粉末ベース材料から成る事を特徴とする請求項1に記載の義歯。
  4. 被覆(3)とマトリックス(5)の主成分が同一性質である事を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の義歯。
  5. 支承シェル(2)の弾性率は自然歯列の弾性率から25%以上相違しない事を特徴とする請求項1、2または4のいずれかに記載の義歯。
  6. 支承シェル(2)の弾性率が7乃至25GPa の範囲内に含まれる事を特徴とする請求項1、2、4または5のいずれかに記載の義歯。
  7. 被覆(3)の弾性率が12乃至26GPaの範囲 内にある事を特徴とする請求項1、2または4乃至6のいずれかに記載の義歯。
  8. 支承シェル(2)は120MPa以上の引張り強さ、特に約200MPaの引張り強さを有する事を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の義歯。
  9. 支承シェル(2)は300MPa以上の圧縮強さを有する事を特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の義歯。
  10. 外側仕上げ被覆(3)は100KHN以上の硬度を有する事を特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の義歯。
  11. 支承シェル(2)のマトリックスと被覆(3)は本質的に少なくとも1つのメタクリラート樹脂、特にジメタクリラート樹脂から成る事を特徴とする請求項1、2または4乃至10のいずれかに記載の義歯。
  12. 外側仕上げ被覆(3)は、マトリックス(5)と同一水準または突出した支承シェル(2)の補強材(4)の表面層に固着する事を特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の義歯。
  13. 支承シェル(2)と接触する被覆(3)の第1層が被覆(3)と有機マトリックス(5)との共通成分から成る樹脂によって形成される事を特徴とする請求項1、2または4乃至12のいずれかに記載の義歯。
  14. 支承シェル(2)の補強材(4)が少なくとも1層の繊維メッシュ織り体から成る事を特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の義歯。
  15. 支承シェル(2)の複合体材料が複数層の繊維メッシュ織り体から成るラミネートである事を特徴とする請求項14に記載の義歯。
  16. 支承シェル(2)の補強材(4)の繊維が特にガラス繊維、セラミック繊維またはシリカ繊維である事を特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の義歯。
  17. 自然、移植または人工のゾウゲ質断片 (1)を被覆する、請求項1乃至16のいずれかに記載の義歯の製造法であって、自然、移植または人工のゾウゲ 質断片(1)を再生するよう予含浸された織り体部分(7)を成形モデル(11)の上に配置する段階と、この予含浸された織り体部分(7)を成形モデル(11)上で圧縮する事によって成形し、予含浸された織り体部分(7)のマトリックス(5)の硬化を実施して支承シェル(2)を形成する段階と、次に支承シェル(2)の上に順次に複数の被覆層を形成して外側仕上げ被覆(3)を形成する段階とを含み、前記被覆(3)は支承シェル (2)を完全に被覆し、この被覆(3)はマトリックス(5)の少なくとも1つの本質的成分と同一性質の本質的成分を有する材料の少なくとも1層によって形成される事を特徴とする義歯の製造法。
  18. 支承シェル(2)の繊維補強材(4)の繊維を表面に露出させるため、被覆第1層を配置する前に支承シェル(2)の外側面(12)に対して摩耗または侵食作用を加える事を特徴とする請求項17に記載の方法。
  19. 支承シェル(2)上に被着される第1層は、被覆(3)とマトリックス(5)との共通成分から成る材料によって構成される事を特徴とする請求項17または18のいずれかに記載の方法。
  20. 成形モデル(11)上に予含浸された織り体部分(7)を形成するため、可撓性流体不透過性膜(9)が流体差圧によって織り体部分(7)上に当接させられ織り体部分(7)が成形モデル(11)上に圧着される事を特徴とする請求項17乃至19のいずれかに記載の方法。
  21. 成形モデル(11)と膜(9)との間に1つまたは複数のポケットが捕捉されないようにするため、膜(9)は制御された差圧を加える事により成形モデル(11)の表面上に徐々に長手方に移動させられる事を特徴とする請求項20に記載の方法。
  22. 織り体部分(7)は、ゾウゲ質断片状のモデル(11)上に配置される前にその中央部を少なくともある程度円錐形に予形成される事を特徴とする請求項17乃至21のいずれかに記載の方法。
  23. 織り体部分(7)を2枚の可撓性流体不透過性膜(9、10)の間に保持しこの組立体に対して流体差圧を加えて織り体部分(7)を形成モデル(11)の上に圧着する事により織り体部分(7)を配置し成形する事を特徴とする請求項17乃至21のいずれかに記載の方法。
  24. 気密ケーシング(14)と、前記ケーシング(14)の中において成形モデル(11)を受けるプレート(15)と、前記ケーシング(14)を2つのチャンバ(14a、14b)に分割する可撓性流体不透過性膜(9)と、成形モデル(11)を含むチャンバ(14a)の中に他方のチャンバ(14b)の流体圧より低い流体圧を生じる手段(16、25、26)と、成形モデル(11)上に配置された織り体部分(7)を架橋結合する手段(17、18、19、32)とを含む事を特徴とする請求項17乃至23のいずれかに記載の方法を実施する機械。
  25. 架橋結合手段(17、18、19)が成形モデル(11)を収容するチャンバ(14b)の中に配置された少なくとも1つの光源(17)を含む光硬化手段であり、また前記膜(9)が半透明である事を特徴とする請求項24に記載の機械。
  26. 架橋結合手段(17、18、19)は、半透明材料から成る成形モデル(11)を内側から照射するためプレート(15)を通して光を通す少なくとも1つの光伝送ダクト(18)を含む事を特徴とする請求項24乃至25のいずれかに記載の機械。
  27. 架橋結合手段(32)が化学的架橋結合手 段または熱的架橋結合手段である事を特徴とする請求項24に記載の機械。
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