JP3583680B2 - エレベーター装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は屋上機械室を省略したエレベーター装置に係り、カウンタウェイトに駆動装置を搭載したエレベーター装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
屋上機械室に駆動装置を設置することなく、カウンタウェイトに駆動装置を搭載し、建物スペースの有効利用を図った屋上機械室レスエレベーター装置が先に提案されている。
【0003】
屋上機械室レスエレベーター装置の従来技術としては、例えば特開昭57−121568号公報に記載のように、駆動装置をリニアモータとして、カウンタウェイトにリニア誘導モータの一次側を、昇降路内に二次導体を配置したリニアモータエレベーター装置がある。
【0004】
また、別の例では、特開平7−137963号公報に記載のように、アキシャルギャップ型の平板モータをカウンタウェイトに搭載するエレベーター装置がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
第1の従来技術では、カウンタウェイトに駆動装置としてリニアモータを設けているが、リニアモータは、二次導体をエレベーターの行程全域にわたって敷設する必要があり、エレベーターの据付工事現場でモータを組み立てる作業を行う。その結果、モータの特性は据付工事によって左右されることになり、所定の性能を得るためには工事に大きな労力を要し、工費の増加に繋がり、この点で改善が望まれる。
【0006】
また、リニアモータは、端効果により推力が不足してモータを大きくしなければならないことや、推力リプルが発生してかご振動を生じるため、この端効果を低減するためには、モータ形状の調整や制御上の調整等の手間がかかり、この点でも工費の増加に繋がり、改善が望まれる。
【0007】
第2の従来技術では、シーブと大径薄型モータを用いたダイレクトドライブの駆動装置をカウンタウェイトに組み込んでいるが、このモータは、薄型化を目的にアキシャルギャップ型の特殊モータを用いており、モータは特殊品なので、汎用品に比べて高価とならざるを得ない。
【0008】
また、このような大型モータでアキシャルギャップ型にすると、ギャップ間の吸引力が数トンのオーダーと大きく、それに対応する支持機構を堅牢にしなくてはならないため、この点でも高価とならざるを得ず、改善が望まれる。
【0009】
そして、この種モータの低価格化を図るためには、それぞれの部品の性能のマージンを切りつめることが考えられるが、アキシャルギャップ型では、ギャップ長が製品単体毎にばらつくので、これを抑制するためのチューニングに手間がかかり、この点でコスト上昇を招き、モータの低価格化を阻害する一因となっており、改善が望まれる。
【0010】
さらに、カウンタウエイト内にモータを設置すると、ローピングの性質上、モータに必要なトルクが2倍になってしまう。当業者間で明らかなように、モータの体格は出力ではなく、トルクで決まるため、大トルクのモータを小型化するは難しい。
【0011】
本発明は、屋上機械室に駆動装置を設置することなく、カウンタウエイトに駆動装置を搭載し、建物スペースの有効利用を図った屋上機械室レスエレベーター装置において、エレベーターシステムとしての低コスト化を図ることを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、ロープ式エレベーター装置の乗りかご用駆動装置として、径の異なる複数のプーリとベルトとの組み合わせからなる減速機構付きの回転型モータをカウンタウエイトに搭載することによって達成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の一実施形態のエレベーター装置を示す。
【0014】
かご1はかご下プーリ2を持ち、一端が昇降路頂部に固定されたロープ3がかご下プーリ2を通り、ロープ3は頂部プーリ4に掛かり、カウンタウエイト5の上部トラクションシーブ20を懸垂し、その他端が昇降路頂部に固定されている。かご1はかごレール7に沿って上下方向に移動でき、カウンタウエイト5はカウンタウエイトレール8に沿って移動する。
【0015】
カウンタウエイト5のトラクションシーブ20は、それより径の大きなプーリ21と一体で回転し、プーリ21はモータ10と軸が直結されたプーリ23にベルト22を介してつながれている。ベルト22は図示したように昇降路の壁側ではなく、かご側にくるように設置する。モータ10はベルト22を介して動力をトラクションシーブ20に伝え、エレベータとして動作する。カウンタウエイト5は上からつり上げるから、ロープ3の引き回しが少なくて済むよう、トラクションシーブ20の配置はモータ10の上側にあり、ロープ3がカウンタウエイト5内でケースに接触して寿命が短くなるのを防止している。
【0016】
モータ10の回転数は、プーリ21とプーリ23の周長比で減速し、さらにエレベータの速度Vはトラクションシーブ20の周長に比例する。
【0017】
したがって、エレベータの速度Vは、モータの回転数と以下の関係になる。トラクションシーブ20の周長をL20、プーリ21の周長をL21、プーリ23の周長をL23、モータの回転数をNとすれば、
【0018】
【数1】
V=N*L20*L23/L21
となり、エレベータの速度Vが同じならば、L20やL23が小さく、L21が大きいとNが大きくなる。つまり、回転数が高くなる。一方、エレベータとしてモータの必要なパワーPは一定だから、トルクをTとすれば、
【0019】
【数2】
P=2πTN
の関係から、Nが高ければトルクTが少なくて済むことになる。
【0020】
当業者間で明らかなように、モータの体格は出力ではなく、トルクで決まるため、モータの回転数を上げれば体格を小さくすることができる。
【0021】
したがって、本実施例によれば、カウンタウエイト5に搭載するモータ10は、従来技術の項で述べたダイレクトドライブ式のアキシャルギャップ型モータ等に比べて小さく安価な回転型モータで済むので、汎用のモータを利用して駆動装置の薄型化を図ることができ、昇降路断面積を増やすことなくカウンタウエイト5内に駆動装置を納めることができる。
【0022】
図2は図1のカウンタウエイト5の詳細図である。
【0023】
トラクションシーブ20側にディスクブレーキ14が取り付けられている。シーブ20とプーリ21、さらにディスク24は一体で回転し、ディスク24をディスクブレーキ14で挟み、シーブ20の回転を制動する。また、制御装置11と回生抵抗12もカウンタウエイト5内に配置する。
【0024】
カウンタウエイト5には、レール8との間に回転防止装置25を取り付けてある。実施例のカウンタウエイト5は、モータ10やプーリ23等の回転モーメントの反力を受けるため、カウンタウエイト5が昇降路側から見て回るような力が働く。そこで、カウンタウエイト5の回転防止装置25を設けている。この装置25は、恒常的にカウンタウエイト5に触れているので、シューよりもローラガイドが望ましい。
【0025】
ところで、昇降路内にモータを設置するエレベーター装置では騒音が大きな問題になる。この問題を解決するためには、減速機として用いられているベルト22が有効に働く。近年の材料技術の向上により、自動車のタイミングベルトや、クレーンの巻上機のロープ等にも、繊維でできた取り扱いが容易で丈夫なベルト類が数多くあり、これらを前記ベルト22として活用することができ、ベルトは金属同士が接触する場合のような音が生じないので、金属製ギアのように騒音源となることがない。
【0026】
また、金属製ギアの場合、歯の摩耗により金属粉が発生し、これがモータのコイル部分やベアリング、あるいはインバータの回路に付着し、絶縁破壊を招く心配があるが、ベルト22はそのような心配がなく、モータ10や制御装置11の信頼性が向上する利点もある。
【0027】
以下にさらに詳細な実施例を述べる。
【0028】
減速機構として設けたプーリ21,23、特に小径プーリ23では、ベルト22との接触面が少なく、滑りやすい欠点がある。そこで、プーリにはライニングを設け、ベルト22の滑りを防止する。あるいは、ベルト22に歯がついた自動車のタイミングベルトのようなものを使用しても良く、プーリでベルト22が滑らないので、モータ10の回転数とシーブ20の回転数の比が常に一定に保たれ、エレベーターの位置制御が容易になる利点がある。
【0029】
本実施例では、以下のような工夫もなされている。
【0030】
エレベーターのように人間の生命を預かる装置には、万全の安全対策が必要であるから、ベルト22を定期的に交換することが必要になる。以上の点を考慮して、前記交換作業がしやすいように、ベルト22は、作業者が乗りかご1上から直接アクセスできる側、すなわち昇降路の壁側ではなく、乗りかご1側に設けられている。
【0031】
また、制動装置14はモータ10側ではなく、シーブ20側に設けてある。したがって、万が一ベルト22が切れた場合でも、ブレーキに関しては全く正常に作動し、乗客の安全を確保できる。
【0032】
その他、本実施例には以下のような効果もある。
【0033】
従来技術の項で述べたダイレクトドライブ式のモータは、回転周波数が低いので定速回転時のトルクリプルが目立つ。エレベーターのロープ系の共振周波数は3Hz前後と非常に低いので、低速回転時の低周波のモータのトルクリプルは、かご振動を招きやすい。
【0034】
これに対し、先の実施例で述べたごとき減速機構付きの回転型モータでは、モータの回転数が高いので、回転子の慣性トルクが大きく、モータのトルク脈動成分が動力として伝わりにくく、結果としてかご振動を招きにくい利点がある。
【0035】
また、本発明によれば、モータを効率良く利用できる。先のダイレクトドライブ式のモータは回転数が低く遅い。当業者間で良く知られているように、モータは或る程度の回転数がないとコイル銅損が多く、モータの効率が悪い。これに対し、実施例で述べたごとき減速機構付きの回転型モータでは、モータの回転数を上げることができるから、モータ効率も良く、電力消費量の少ないエレベーター装置を提供することができる。
【0036】
また、出力が同等のモータを、回転数を上げることによって小型化した場合、発熱の問題が起こる。これに対し、モータ10をカウンタウエイト5に搭載した場合、モータ10の周囲には常に空気の流れがあるので、冷却の点から有利である。モータ10の回りに効率良く空気の流れを送るように、カウンタウエイト5内にフィンを設けたり、カウンタウエイト5のケースに通気口をあけるとさらに冷却効率が良くなる。
【0037】
なお、図示実施例に示すように、カウンタウエイト5にモータ10の制御装置11を備え、制御装置11をモータ10と減速機構の下側に配置すれば、ロープ3と制御装置11とが接触して制御装置11が故障するといった不具合を回避することができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、カウンタウエイトに駆動装置を搭載したエレベーター装置において、エレベーターシステムとしての低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すエレベーター装置の斜視図である。
【図2】(a)は本発明の一実施形態の要部の正面図、(b)は(a)の右側面図である。
【符号の説明】
1…かご、2…カゴ下プーリ、3…ロープ、4…頂部プーリ、5…カウンタウエイト、7…かごレール、8…カウンタウエイトレール、10…モータ、11…モータ制御装置、12…回生抵抗器、14…制動装置、20…トラクションシーブ、21…シーブ一体プーリ、22…ベルト、23…モータ直結プーリ、24…ブレーキディスク、25…回転防止装置。
Claims (9)
- ロープを介して乗りかごとカウンタウエイトを接続し、前記乗りかごが上下移動するエレベーター装置において、前記乗りかごの駆動装置として、径の異なる複数のプーリとベルトとの組み合わせからなる減速機構付きの回転型モータをカウンタウエイトに搭載し、かつ前記カウンタウエイトにモータの制御装置を備え、前記制御装置をモータと減速機構の下側に配置したことを特徴とするエレベーター装置。
- 請求項1において、径の異なる複数のプーリとベルトとの組み合わせからなる減速機構を介して回転型モータの回転力をトラクションシーブに伝達し、前記ロープと前記トラクションシーブとの摩擦により乗りかごの駆動力を得る構成としたエレベーター装置。
- 請求項2に記載のエレベーター装置において、トラクションシーブの回転力の反力をうけるための回転防止装置をカウンタウエイトとカウンタウエイトガイドレール間に介装したエレベーター装置。
- ロープを介して乗りかごとカウンタウエイトを接続し、前記乗りかごが上下移動するエレベーター装置において、前記乗りかごの駆動装置として、径の異なる複数のプーリとベルトとの組み合わせからなる減速機構付きの回転型モータをカウンタウエイトに搭載し、かつ前記カウンタウエイトにモータの制御装置を備え、前記制御装置をモータと減速機構の下側に配置し、さらに前記プーリとベルトとの組み合わせからなる減速機構のうち、最も低速側のトラクションシーブと一体で回転するプーリに駆動装置の制動装置を取り付けたことを特徴とするエレベーター装置。
- 請求項4に記載のエレベーター装置において、トラクションシーブの回転力の反力をうけるための回転防止装置をカウンタウエイトとカウンタウエイトガイドレール間に介装したエレベーター装置。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のエレベーター装置において、プーリとベルトとの組み合わせからなる減速機構のプーリにライニングを設けたエレベーター装置。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のエレベーター装置において、プーリとベルトとの組み合わせからなる減速機構のベルトを、昇降路の乗りかご側に設置したエレベーター装置。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のエレベーター装置において、カウンタウエイトのケースに通気口を設けたエレベーター装置。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のエレベーター装置において、プーリとベルトとの組み合わせからなる減速機構のベルトに歯を設けたエレベーター装置。
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