JP3576444B2 - 警戒領域進入監視目標探知装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーダ装置やソナー装置等による目標探知において、予め設定した警戒領域へ接近してくる目標を探知した場合、その目標が警戒領域へ進入する(達する)のはいつか、また進入した後警戒領域から離脱するのはいつかを予測する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、警戒領域を設定した場合、目標探知装置の位置を中心(原点)とする座標を想定し、原点から小さい方位角度間隔で放射状に多数設定される方位線と、原点を中心として狭い距離間隔を置いて設定される多数の同心円線とによって警戒領域を細区分し、その細区分された1つ(これをセルと呼ぶ)づつの位置座標をメモリに記憶させていた。
【0003】
単純な具体例を図3に示す。
図3は、目標探知装置の位置を原点0とする直交座標である。ここでは、x軸、y軸および距離100kmの円弧で囲まれた4分の1円形が警戒領域として設定されている。
【0004】
そして、この領域を等角度間隔の多数の方位線と、等距離間隔の円弧である多数の距離線によって細かく区分されている。その1区分がセルである。方位線の角度間隔は例えば0.7度、距離線の間隔は例えば1kmというように選ばれる。そして、各セルの極座標アドレス(Rm,θn)は、用意されているメモリに記憶されメモリマップとして保持される。
【0005】
このメモリマップの規模は、例えば上記警戒領域の例では、距離方向にR1 〜R100 の100区分、方位方向に 90÷0.7≒128 でθ1 〜θ128 の128区分であるからセル数は12800となり、この数だけのアドレスを記憶する記憶素子が必要ということになる。
警戒領域の設定を状況に応じて変更することが考えられる場合には、そのセル数の最大数に対応し得る規模のメモリが必要ということになる。
【0006】
そして、今、警戒領域外に目標が探知された場合、着眼時点における目標の進行方向線上に存在する警戒領域中のセルを抽出し、それらの各セルが警戒領域へ進入する位置のセルであるか、警戒領域から離脱する位置のセルであるかを一々判定して進入位置のセルと離脱位置のセルを抽出したうえ、着眼時点における目標の位置からこれらのセルまでの距離を算出し、着眼時点における目標速度で、進入位置のセルまでの距離を除して進入までの予測時間(進入予測時間)とし、離脱位置のセルまでの距離を除して離脱までの予測時間(離脱予測時間)としていた。
【0007】
目標位置が距離Rin、方位θinであるときに、各セルとの距離は次のようにして求める。各セルの位置も、目標の位置も極座標で表されているので、まず、これを直交座標に変換した後、2点間の距離を求めることになる。目標の直交座標位置を(xin,yin)とすれば、それは数式1、数式2のように表される。
【0008】
【数1】
xin=Rin・sinθin
【0009】
【数2】
yin=Rin・cosθin
【0010】
一方、各セル(Rm,θn)の直交座標(xmn,ymn)は数式3、数式4のように表される。
【0011】
【数3】
xmn=Rm ・sinθn
【0012】
【数4】
ymn=Rm ・cosθn
【0013】
これらの数式で表される目標位置から各セルまでの距離Lmnは数式5で表される。
【0014】
【数5】
【0015】
一方、着眼時点の目標速度の検出されたx軸成分をVx ,y軸成分をVy とすれば、進行方向における速度Vは数式6で表される。
【0016】
【数6】
【0017】
従って、目標が着眼時点から各セル(Rm ,θn)へ達するまでの時間tmnは数式7で表される。
【0018】
【数7】
【0019】
以上、数式1から数式7までの間で、目標位置データのRin,θin、速度データVx,Vy 、セル位置データRm ,θnをもとにして行われる演算回数は、数式1、数式2が各2回ずつ、数式3,数式4が各2回ずつ、数式5が6回、数式6が4回、数式7が1回の合計19回となる。
【0020】
従って、このような演算を進入予測時間と離脱予測時間の両者について行うこととなる。
【0021】
また、その前に警戒領域中の目標の進行方向線上に存在するセルの中から進入位置のセルと離脱位置のセルを抽出するための判定演算が進行方向線上に存在するセルの回数だけ行われることになる。
【0022】
この回数は警戒領域に対する目標の位置および進行方向により異なるが、目標探知装置の上空付近を経て一直線に遠ざかる場合には、図3の設例では100のセルが直線上にあることになるから判定回数は100回ということになる。そうすると、この場合、進入予測時間演算19回、離脱予測時間演算19回、判定演算100回で、合計138回の演算が行われることになる。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術には、設定される最大警戒領域の面積に対応するメモリマップが必要であること、また、目標の進行方向によっては、その進行方向線上にかかるセルの数が多くなり、進入位置のセルと離脱位置のセルを抽出するまでの判定回数が非常に多くなるという問題がある。
【0024】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑みて、メモリマップを必要とせず、また目標の進行方向によって演算回数が非常に多くなるということのない進入目標監視手段を具備した警戒領域進入監視目標探知装置を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の警戒領域進入監視目標探知装置は、下記の各構成を具備する。
(イ)探知した目標の位置を検出する目標位置検出手段
(ロ)探知した目標の進行方位を検出する進行方位検出手段
(ハ)探知した目標の進行速度を検出する速度検出手段
(ニ)探知領域中に特定の警戒領域を設定する警戒領域設定手段
(ホ)前記設定警戒領域の輪郭線に対応して、該輪郭線の方程式を立てる輪郭線方程式手段
(ヘ)警戒領域外で探知した目標の着眼時点における位置および進行方位から、目標がそのまま直線運動するものと仮定した場合の、探知領域平面における目標軌跡の直線方程式を立てる目標軌跡方程式手段
(ト)前記輪郭線方程式と目標軌跡方程式に基づいて輪郭線と目標軌跡の交点即ち目標が警戒領域へ進入する位置(進入予測位置)および警戒領域から離脱する位置(離脱予測位置)を算出する進入・離脱位置算出手段
(チ)探知した目標の着眼時点における位置から前記進入予測位置および離脱予測位置までの直線距離を算出する距離算出手段
(リ)前記直線距離と、前記着眼時点の速度とから、目標が警戒領域へ進入するまでの時間および警戒領域から離脱するまでの時間を算出する進入・離脱予測時間算出手段
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態は、従来技術のようにメモリマップを用いるのではなく、警戒領域の輪郭線を方程式化するとともに、着脱時点における目標の位置および進行方位から、目標がそのまま直線運動をするものと仮定した場合の目標の予測直線軌跡を方程式化し、これらの方程式から輪郭線と目標軌跡の交点の座標を求め、この交点を警戒領域への進入予測位置、警戒領域からの離脱予測位置とし、着脱時点における目標位置からの距離を算出し、進入予測位置までの距離及び離脱予測位置までの距離とし、着眼時点における目標速度でそれらの距離を除し、進入予測時間および離脱予測時間とするものである。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は本発明の目標探知装置の構成を示すブロック図である。
目標位置検出手段1は探知目標の方位θinおよび距離Rinによる極座標位置を検出し、これより数式1および数式2により直交座標位置(xin,yin)に変換して出力する。進行方位検出手段2は目標の進行方位θT を検出する。
【0028】
速度検出手段3は目標速度の直交座標成分Vx ,Vyを検出する。警戒領域設定手段4は、例えば図2の如き所定の警戒領域を設定する手段である。目標軌跡方程式手段5は、目標位置検出手段1からの目標位置(xin,yin)と、進行方位検出手段から目標の進行方位θT を受け、目標軌跡の予測直線方程式を生成する。
【0029】
この方程式は、図2に示すように、直交座標において点(xin,yin)を通り、勾配が1/tanθT の直線の方程式であるから、数式8のようになる。
【0030】
【数8】
y=x/tanθT +yin−xin/tanθT
【0031】
この数式情報は進入・離脱位置算出手段6へ送られる。一方、警戒領域設定手段4で警戒領域が設定されると輪郭線方程式手段7は、その領域情報により警戒領域の輪郭線の方程式を決定する。
【0032】
図2の例でいうなら、輪郭線a、輪郭線b、輪郭線cの方程式を決定する。
輪郭線a、および輪郭線cは原点を通る比例直線であるから、その方程式はそれぞれ数式9、数式10のようになる。
【0033】
【数9】
y=x/tanθ1
【0034】
【数10】
y=x/tanθ2
【0035】
また、輪郭線bは原点を中心とする半径Rの円弧であるから、その方程式は数式11のようになる。
【0036】
【数11】
x2 +y2 =R2
【0037】
そして、これらの数式情報は、進入・離脱位置算出手段6へ送られる。
そこで、今、図2において、着眼時点における目標位置が(xin,yin)で、進行方位がθT とすれば、目標軌跡の予測直線は点線の直線Tのようになる。
【0038】
この場合、目標が警戒領域へ進入する位置(進入予測位置)は、輪郭線cと直線Tの交点(x1,y1)ということになる。そこで、進入・離脱位置算出手段6は直線Tの方程式である数式8と輪郭線cの方程式である数式10とから交点の座標(x1,y1)を算出する。
【0039】
これは、両式をイコールとしてx1 を求め、そのx1 を数式8又は数式10へ代入することにより、y1 が求められる。その結果、x1 は数式12、y1 は数式13のようになる。
【0040】
【数12】
x1 =(yin・tanθT −xin)・tanθ2 /(tanθT −tanθ2)
【0041】
【数13】
y1 =(yin・tanθT −xin)/(tanθT −tanθ2)
【0042】
こうして得られた進入予測位置情報は距離算出手段8へ送られる。一方、距離算出手段8へは目標位置検出手段1から着眼時点の目標位置座標(xin,yin)が入力されており、両位置間の距離Linが数式14によって計算される。
【0043】
【数14】
【0044】
この距離情報は進入・離脱予測時間算出手段9へ送られ、速度検出手段3から送られて来ている目標速度Vx ,Vy とで数式15により、目標が着眼時点の位置から進入予測位置へ達するまでの進入予測時間tinを算出する。
【0045】
【数15】
【0046】
以上のようにして、進入予測時間tinを求めるための演算回数を見てみれば、数式1および数式2が各2回、数式12が9回、数式13が7回、数式14が6回、数式15が5回で合計31回である。
【0047】
次に、目標が警戒領域を離脱する位置(離脱予測位置)は、直線Tと輪郭線bの交点(x2 、y2)ということになる。そこで、進入・離脱位置算出手段6は直線Tの方程式である数式8と輪郭線bの方程式である数式11とからなる連立方程式を解いて離脱予測位置の座標(x2 、y2)を算出する。今、演算の簡明のため、数式8の係数および定数に次の数式16、数式17による置換を行う。
【0048】
【数16】
(1/tanθT) →aT
【0049】
【数17】
(yin−xin/tanθT) →bT
【0050】
この置換を行うと、数式8は数式18のようになる。
【0051】
【数18】
y=aT ・x+bT
【0052】
そして、この数式18と数式11とからなる連立方程式を解くと、交点の座標(x2 、y2)は数式19、数式20となる。
【0053】
【数19】
【0054】
【数20】
y2 =aT ・x2 +bT
【0055】
こうして得られた離脱予測位置情報は距離算出手段8へ送られ、目標位置検出手段1からの目標位置座標(xin、yin)とで両位置間の距離Lout が数式21によって計算される。
【0056】
【数21】
【0057】
この距離情報は進入・離脱予測時間算出手段9へ送られ、速度検出手段3から送られて来ている目標速度Vx 、Vy とで数式22により、目標が警戒領域を離脱するまでの離脱予測時間tout を算出する。
【0058】
【数22】
【0059】
以上のようにして、離脱予測時間tout を求めるための演算回数を見てみれば、数式1および数式2が各2回、数式16の括弧内が2回、数式17の括弧内が3回、数式19が12回、数式20が2回、数式21が6回、数式22が5回の合計34回となる。
【0060】
先に求めた進入予測時間の演算回数が31回であるから離脱予測時間の演算回数と合わせて65回ということになる。
【0061】
以上のように本発明装置では、警戒領域の輪郭線と目標軌跡の予測直線との交点(進入点と離脱点の2点)を求めることを基本としているから、警戒領域の大小によっては演算回数は変わらない。
【0062】
また、輪郭線と直線のみとするか、或いは直線と曲線を組み合わせるにしても、円、楕円、2次曲線などのような比較的単純な曲線と組み合わせることにより輪郭線方程式と予測直線方程式とからなる連立方程式の解、即ち交点の座標式も実施例に較べて複雑にはならず、演算回数は殆ど増加しない。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明装置では、警戒領域への進入予測時間、警戒領域からの離脱予測時間を求めるのに、警戒領域の輪郭線と目標軌跡の予測直線の交点を、輪郭線方程式と予測直線方程式からなる連立方程式の解を求めることにより、求めることを基本としたため、従来用いられていた、セルのアドレスを記憶するマップメモリが不要となるという大きな利点があるとともに、演算回数が、従来技術においては警戒領域の大きさや、目標の位置および進行方向によって演算回数が数10回から数百回に渡るのに対して、警戒領域の大きさや形状、目標の位置や進行方向にかかわりなく100回に満たない或る範囲の回数で進入予測時間や離脱予測時間を求めることができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明装置における、警戒領域への進入予測時間および警戒領域からの離脱時間を求めるための説明図である。
【図3】従来技術における警戒領域への進入予測時間および警戒領域からの離脱時間を求めるための説明図である。
【符号の説明】
1 目標位置検出手段
2 進行方位検出手段
3 速度検出手段
4 警戒領域設定手段
5 目標軌跡方程式手段
6 進入・離脱位置算出手段
7 輪郭線方程式手段
8 距離算出手段
9 進入・離脱予測時間算出手段
Claims (1)
- 下記各構成を具備する警戒領域進入目標監視手段を具備することを特徴とする警戒領域進入監視目標探知装置。
(イ)探知した目標の位置を検出する目標位置検出手段
(ロ)探知した目標の進行方位を検出する進行方位検出手段
(ハ)探知した目標の進行速度を検出する速度検出手段
(ニ)探知領域中に特定の警戒領域を設定する警戒領域設定手段
(ホ)前記設定警戒領域の輪郭線に対応して、該輪郭線の方程式を立てる輪郭線方程式手段
(ヘ)警戒領域外で探知した目標の着眼時点における位置および進行方位から、目標がそのまま直線運動するものと仮定した場合の、探知領域平面における目標軌跡の直線方程式を立てる目標軌跡方程式手段
(ト)前記輪郭線方程式と目標軌跡方程式に基づいて輪郭線と目標軌跡の交点即ち目標が警戒領域へ進入する位置(進入予測位置)および警戒領域から離脱する位置(離脱予測位置)を算出する進入・離脱位置算出手段
(チ)探知した目標の着眼時点における位置から前記進入予測位置および離脱予測位置までの直線距離を算出する距離算出手段
(リ)前記直線距離と、前記着眼時点の速度とから、目標が警戒領域へ進入するまでの時間および警戒領域から離脱するまでの時間を算出する進入・離脱予測時間算出手段
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JP2000037618A JP3576444B2 (ja) | 2000-02-16 | 2000-02-16 | 警戒領域進入監視目標探知装置 |
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