JP3566867B2 - ゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水トリー劣化したゴム・プラスチック絶縁電力ケーブル(線路も含む)の耐圧試験結果の定量的評価方法に関し、特に、寿命判定試験結果から、ゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果を定量的評価する方法に関するもである。
【0002】
【従来の技術】
水トリー劣化したゴム・プラスチック絶縁電力ケーブル(以下、単にケーブルという)の劣化診断においては、水トリーが絶縁体を貫通していない、いわゆる、非橋絡水トリーの検出は非常に重要な課題である。
しかしながら、劣化ケーブル中に含まれる非橋絡水トリーの検出は難しく、運転電圧より高いAC(商用周波交流、以下ACと略記する)、直流電圧、減衰振動波、超低周波などを用いた耐電圧試験を行い、該ケーブルの破壊の有無により非橋絡水トリーの有無を調べる方法が採られていた。
【0003】
一方、ケーブルの劣化診断においては、ケーブルが後にどの程度の寿命を持つのかといった寿命判定試験が望まれている。このような余寿命の判定は、線路の引き替え、設備更新の計画を立てるために非常に有効な情報であり、当面の需要を乗り切れるかを判断するためには切実な問題である。
したがって、上述のような耐電圧試験を実施する場合、例えば先に本発明者らが提案した特願平8−58736号に見られるように、AC破壊電圧と水トリーの長さの関係を基にして、耐電圧試験をクリアしたケーブルについて、その後の寿命は何年といった残存寿命を保証する方法も検討されている。
【0004】
しかしながら、このような試験方法では破壊電圧のばらつきを考慮しておらず、安全サイドで検討している場合が多い。このような安全サイドでの評価は、耐圧試験電圧を高く設定することになり、例えば3年の余寿命を保証するために、10年程度の余寿命を持つと考えられるケーブルを耐圧試験によって破壊させてしまうことも考えられ、適切なケーブル余寿命を検討しているとは言えなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
水トリー劣化ケーブルの破壊試験および前駆遮断試験等を行うと、破壊(前駆遮断)電圧にばらつきが存在する。これは、同一の長さの水トリーであっても、水トリー形状や、内部の物性(イオン濃度など)に差異があることや、破壊現象そのもののばらつきによるものもある。
したがって、上記耐圧試験法にて、ケーブルの寿命を考慮する場合は、このばらつきも考慮するすべきである。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、本発明の第1の目的は、ゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、耐圧試験にクリアしたゴム・プラスチック絶縁ケーブルが所定年数内にどの程度の確かさで運転中に破壊するまたは破壊しないかを定量的に評価する方法を提供することである。
本発明の第3の目的は、耐圧試験法によりゴム・プラスチック絶縁ケーブルの寿命を判定する際、該試験において適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを定量的に評価する方法を提供することである。
本発明の第4の目的は、耐圧試験法によりゴム・プラスチック絶縁ケーブルの寿命を判定する際の最適な試験条件を定量的に求める方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1の発明においては、次のようにして、水トリー劣化したゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果を定量的に評価する。
(1)商用周波交流(以下ACという)運転電圧におけるゴム・プラスチック絶縁ケーブルの破壊確率と水トリー長の関係を求める。
(2)水トリーの成長速度から、寿命判定を行おうとする所定年数間の水トリー成長長さを求め、上記(1)で求めたAC運転電圧における破壊確率と水トリー長の関係より、その水トリー長から上記水トリー成長長さを差し引いた水トリー長と破壊確率の関係を求める。
【0008】
(3)上記(1)で求めた破壊確率と水トリー長の関係と、上記(2)で求めた水トリー長と破壊確率の関係から、全ての水トリー長に対して、上記所定年数間に前記ケーブルがAC運転中に破壊する確率と、破壊しない確率を求める。
(4)寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形におけるゴム・プラスチック絶縁ケーブルの破壊確率と水トリー長の関係を求め、該関係から、全ての水トリー長に対して、該試験に用いる所定電圧の試験波形により上記ケーブルが破壊する確率と破壊しない確率を求める。
【0009】
(5)下記の(i) 〜 (iv)の4種類の事象に分けて、全ての水トリー長について該4種類の事象の起きる確率を上記(3)および(4)の破壊確率と水トリー長の関係から計算し、横軸水トリー長、縦軸破壊確率としたグラフ上で上記4つの事象が起こる領域を求める。
(i) 寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形で破壊しかつAC運転電圧で前記所定年数以内に破壊
(ii)寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形で破壊せずかつAC運転電圧で前記所定年数以内に破壊
(iii) 寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形で破壊しかつAC運転電圧で前記所定年数以内に破壊しない
(iv)寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形で破壊せずかつAC運転電圧で前記所定年数以内に破壊しない
(6)上記4つの事象が起こる領域の面積の比と、寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形による試験結果から、ゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果を定量的評価する。
【0010】
本発明の請求項2の発明は、請求項1の発明において、上記(1)の破壊確率と水トリー長の関係を次のように算出するようにしたものである。
AC破壊電圧と水トリー長の関係おいて、寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形による破壊電圧の確率分布関数を全ての水トリー長に対して与え、全ての水トリー長について、上記確率分布における確率密度関数を0からAC運転電圧まで積分することによって得られるAC運転電圧での破壊確率と、水トリー長の関係を算出する。
また、寿命判定試験に用いる試験波形による破壊電圧と水トリー長の関係において、各波形による破壊電圧の確率分布関数を全ての水トリー長に対して与え、全ての水トリー長について、上記破壊分布における確率密度関数を0から所定の試験電圧まで積分することによって得られる該試験波形での破壊確率と水トリー長の関係を算出する。
【0011】
本発明の請求項3の発明は、請求項1,2の発明において、上記(6)で得た4つの事象が起こる領域の面積の比と、寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形による寿命判定結果から、その後の前記所定年数でのAC運転中におけるケーブルの破壊または破壊しない確率を求めるようにしたものである。
本発明の請求項4の発明は、請求項1,2の発明において、4つの事象の面積比と寿命判定を行おうとする所定年数の関係を求め、前記所定年数を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを評価するようにしたものである。
【0012】
本発明の請求項5の発明は、請求項4の発明において、各年数と4つの事象が起こる領域の面積の比から、寿命判定を最も効果的に行うことができる所定年数を求めるようにしたものである。
本発明の請求項6の発明は、請求項1,2の発明において、寿命判定試験に用いる各試験電圧と4つの事象が起こる領域の面積の比から、上記寿命判定試験に用いる所定電圧を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを評価するようにしたものである。
本発明の請求項7の発明は、請求項6の発明において、寿命判定試験に用いる各試験電圧と4つの事象が起こる領域の面積の比から、寿命判定を最も効果的に行うことができる所定電圧を求めるようにしたものである。
本発明の請求項8の発明は、請求項1,2の発明において、4つの事象が起こる領域の面積の比から、耐圧試験をクリアしたケーブルが、どの程度の確からしさで所定期間内に運転中絶縁破壊を起こさないかを示す寿命判定精度を求めるようにしたものである。
本発明の請求項9の発明は、請求項1,2の発明において、上記4つの事象が起こる領域の面積の比から、所定年数内に破壊する有害な水トリーを耐圧試験により破壊できる有害水トリーの検出確率を求めるようにしたものである。
本発明の請求項10の発明は、請求項1,2の発明において、4つの事象が起こる領域の面積の比から、上記寿命判定試験に用いる所定年数を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを求め、また、上記4つの事象が起こる領域の面積の比から、耐圧試験をクリアしたケーブルがどの程度の確からしさで所定期間内に運転中絶縁破壊を起こさないかを示す寿命判定精度を求め、さらに、所定年数内に破壊する有害な水トリーを耐圧試験により破壊できる有害水トリーの検出確率を求め、上記所定年数を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを示す確率、寿命判定精度と所定年数との関係、および、有害水トリーの検出確率と所定年数との関係から適切な試験条件を定めるようにしたものである。
本発明の請求項11の発明は、請求項1,2の発明において、4つの事象が起こる領域の面積の比から、上記寿命判定試験に用いる所定電圧を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを求め、また、上記4つの事象が起こる領域の面積の比から、耐圧試験をクリアしたケーブルがどの程度の確からしさで所定期間内に運転中絶縁破壊を起こさないかを示す寿命判定精度を求め、さらに、所定年数内に破壊する有害な水トリーを耐圧試験により破壊できる有害水トリーの検出確率を求め、上記所定電圧を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを示す確率、寿命判定精度と試験電圧との関係、および、有害水トリーの検出確率と試験電圧との関係から適切な試験条件を定めるようにしたものである。
本発明の請求項12の発明は、請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11の発明において、寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形を、0.01〜200Hzの交流または減衰振動波もくしは直流波形としたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
試験波形として0.1Hzの交流(超低周波電圧、以下VLFという)とした場合の33kVCVケーブル(絶縁厚8mm)の耐圧試験を例として、本発明の手法について詳細に説明する。
【0014】
(1)破壊電圧のばらつきの定量化
まず、破壊電圧のばらつきを定量化する。図1に示すAC破壊電圧と水トリー長の関係および図2に示すVLF破壊電圧と水トリー長の関係から破壊電圧のばらつきを定量化する。
破壊電圧のばらつきが正規分布に従うと仮定すると、ACおよびVLF破壊電圧の平均値μaおよびμvは、図1および図2における1の曲線で示され、標準偏差ρは、AC;ρa=15.9%、VLF;ρv=13.5%と評価された。
ここでは、破壊電圧のばらつきが正規分布に従うとしたが、ワイブル分布など別の分布関数で評価してもよい。
【0015】
(2)破壊確率と水トリー長の関係の算出
次に、AC運転電圧で破壊する確率と、水トリー長の関係を求める。例えば、d1の長さの水トリーが存在したとすると、この長さの水トリーの破壊確率は、図3に示すように上記μaおよびρaで規定した確率密度関数を0から運転電圧(33kV運転電圧は19.1kV)まで積分することにより得られる(図3における確率密度関数の斜線部分の面積に相当する)。
これらをd1,d2,d3,……の長さの水トリーというように全ての水トリー長に対して計算すると、図4に示す破壊確率と水トリー長の関係が得られる。
【0016】
一方、同様に60kVのVLFをケーブルに印加した場合の破壊確率と水トリー長の関係は、全ての水トリー長についてμv、ρvの確率密度関数を0から60kVまで積分することにより得られる。
図5は上記のようにして求めたVLF60kVの破壊確率と水トリー長の関係を示しており、例えばVLF60kVを印加した場合、水トリー長が6.5mmであるケーブルが破壊する確率は0.49(49%)、破壊しない確率は0.51(51%)である。
【0017】
(3)水トリーの伸びの評価
次に、水トリーの伸びを考慮する。図6に示すように8mmのCVケーブルの高周波加速劣化試験結果から水トリーの伸びは、最も厳しい場合で、200μm/年と評価することができた。
(4)所定年数の間に破壊する水トリーの領域の算出
上記(3)の結果および上記(2)のAC運転電圧破壊確率と水トリー長の関係から、例えば5年間に破壊する水トリーの領域は図7に示すようになる。
図7の曲線1は、図4のAC運転電圧破壊確率を示す曲線であり、曲線2は水トリーの5年間での成長、すなわち、(200μm/年)×5年=1000μmを考慮して、1の曲線を横軸方向に1mmずらした曲線である。
【0018】
(5)耐圧試験結果と水トリー長の相関関係の算出
上記(2)の図5、上記(4)の図7の結果より、VLF60kVを耐圧試験電圧として用いた場合の耐圧試験結果と、水トリー長の相関関係を求める。
この場合、耐圧試験を行うことによって生じる結果としては以下の4通りが考えられる。
▲1▼AC運転電圧で5年以内に破壊するケーブルをVLF耐圧試験で破壊する。
▲2▼AC運転電圧で5年以内に破壊するケーブルをVLF耐圧試験で破壊しない。
▲3▼AC運転電圧で5年以内に破壊しないケーブルをVLF耐圧試験で破壊する。
▲4▼AC運転電圧で5年以内に破壊しないケーブルをVLF耐圧試験で破壊しない。
【0019】
例えば、水トリー長6.5mmの場合、図5および図7から上記▲1▼〜▲4▼の確率は以下のように計算される。
▲1▼の場合
図7から、AC運転電圧で水トリー長6.5mmのケーブルが5年以内に破壊する確率は0.73であり(同図中の0.08は0年以内で破壊する確率を示す。すなわち、既にAC運転電圧下で破壊している確率であり、実際の劣化ケーブルではありえない状態である。また、0.19は5年経過しても破壊しない確率を示す)、また、図5からVLF60kVを印加したとき、水トリー長が6.5mmのケーブルが破壊する確率は0.49であるから、AC運転電圧で5年以内に破壊するケーブルがVLF60kV耐圧試験で破壊する確率は、0.73×0.49=0.36となる。
【0020】
▲2▼の場合
図7から、AC運転電圧で水トリー長6.5mmのケーブルが5年以内に破壊する確率は0.73であり、図5からVLF60kVを印加したとき、水トリー長が6.5mmのケーブルが破壊しない確率は0.51であるから、AC運転電圧で5年以内に破壊するケーブルがVLF耐圧試験で破壊しない確率は、0.73×0.51=0.37となる。
【0021】
▲3▼の場合
図7から、AC運転電圧で水トリー長6.5mmのケーブルが5年以内に破壊しない確率は0.19であり、図5からVLF60kVを印加したとき、水トリー長が6.5mmのケーブルが破壊する確率は0.49であるから、AC運転電圧で5年以内に破壊しないケーブルがVLF耐圧試験で破壊する確率は、0.19×0.49=0.09となる。
▲4▼の場合
図7から、AC運転電圧で水トリー長6.5mmのケーブルが5年以内に破壊しない確率は0.19であり、図5からVLF60kVを印加したとき、水トリー長が6.5mmのケーブルが破壊しない確率は0.51であるから、AC運転電圧で5年以内に破壊しないケーブルがVLF耐圧試験で破壊しない確率は、0.19×0.51=0.10となる。
【0022】
上記計算を全ての水トリー長について計算すると、図8に示す耐電圧試験結果と水トリー長の相関図が得られる。
ここで、図8における▲1▼〜▲4▼の領域は上記▲1▼〜▲4▼の事象に対応し、▲5▼で示した領域はAC運転電圧で0年で破壊する領域を示しており、前記したように、これから耐圧試験を行おうとする劣化ケーブルにはあり得ない状態を示している。
【0023】
(6)耐圧試験結果の評価
図8に示した相関図を基にして、耐圧試験結果を評価する。水トリー劣化ケーブルにこのような耐圧試験を行った場合、どの様な割合で上記▲1▼〜▲4▼までの結果となるかということは、図8の相関図の面積比となる。
図8において、合計を100として、▲1▼〜▲4▼の面積比を計算すると次のようになる。
▲1▼:▲2▼:▲3▼:▲4▼=8.3:5.8:1.5:84.4
この結果より、60kVの試験電圧にてVLF耐圧試験を行い、耐圧試験で破壊しない場合は、上記▲2▼+▲4▼=90.2と示される。したがって、劣化ケーブルにVLF60kVの耐圧試験を行うことにより、この耐圧試験で破壊しなかったケーブルについては、▲4▼を(▲2▼+▲4▼)で除した93.6%の確率で少なくとも5年間は運転電圧下で破壊しないという余寿命が評価されたことになる。
【0024】
同様な計算をAC運転電圧下で破壊するまでの年数を変えて行うことにより、例えば、VLF60kVの場合、少なくとも97.3%の確率で3年間は運転電圧下で破壊しないという余寿命を評価することができる。
また、上記図8の結果から、60kVの耐圧試験中にケーブルが破壊する確率を知ることができる。すなわち、VLF60kVの耐圧試験で破壊する場合は、上記▲1▼+▲3▼=9.8と示される。したがって、VLF60kVの耐圧試験により9.8%の確率でケーブルが破壊すると評価される。
【0025】
(7)効率的に寿命判定できる試験電圧と寿命判定年数
上記のような計算を用いて、前記所定年数を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるか、また、上記寿命判定試験に用いる所定電圧を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを下記(a)(b)のようにして評価することができる。
(a) 所定年数を変えた際の適切な試験結果が得られる割合
まず、図8に示した耐圧試験結果と水トリー長の相関図を寿命判定を行おうとする所定年数を連続的に変化させて各年数における値を計算し、▲1▼から▲4▼の4つの事象の面積比をそれぞれ求める。
上述のVLF60kVの場合の面積比は、例えば寿命判定を行おうとする所定年数が3年の場合は、次のようになる。
▲1▼:▲2▼:▲3▼:▲4▼=6.0:2.4:3.8:87.8
また寿命判定を行おうとする年数が5年の場合は、前述した面積比が得られる。
【0026】
以上のようにして耐圧試験結果における4つの事象の面積比と寿命判定を行おうとする所定年数の関係を求めると図9が得られる。
耐圧試験を行う場合に、上述した▲1▼〜▲4▼の領域の内、耐圧試験として理想的なものは、▲1▼および▲4▼の領域のみが存在する場合である。すなわち、所定年数内に運転中に破壊しないケーブルについては耐圧試験にクリアさせることによって、寿命を判定し、所定年数内に運転中に破壊するケーブルについては耐圧試験により破壊させることのみを行うことが理想的である。
【0027】
しかし、破壊電圧にばらつきがあることにより、実際には所定年数内に運転中に破壊するケーブルが耐圧試験にクリアしてしまう場合(前述の▲2▼)、および所定年数内に運転中に破壊しないケーブルを耐圧試験で破壊させてしまう場合(前述の▲3▼)が存在するので、▲1▼および▲4▼のみの理想的な耐圧試験とはならない。
したがって、耐圧試験を行う場合に、前述の▲1▼および▲4▼を加えた事象の面積比が最も大きくなる所定年数を寿命判定年数とすることにより、最も効率的に寿命判定が行えることになる。
【0028】
図10は、図9における▲1▼+▲4▼の面積比を横軸を寿命判定年数として示したものであり、図10より▲1▼+▲4▼の面積比が最も大きくなるのは、VLF60kVの耐圧試験では、運転中の破壊までの年数を3.2年とした場合であり、その場合、▲1▼+▲4▼の占める面積比は93.9%となる。この結果は、例えば寿命判定年数を5年とした場合に▲1▼+▲4▼の占める面積比は92.7%であるので、これに比較して効率よく寿命判定ができるといえる。
【0029】
(b) 所定電圧を変えた際の適切な試験結果が得られる割合
以上のことは、ある試験電圧を基にして、寿命判定年数を変えた場合に耐圧試験結果がどのようになるかを定量的に評価し、また、最適な寿命判定年数を求めることに適しているが、逆に、ある寿命判定年数を基にして、試験電圧を変えた場合に、耐圧試験結果がどのようになるかを定量的に評価し、また、最適な試験電圧を求めることも可能である。
【0030】
図11は、寿命判定年数を3年とした場合について、試験電圧と耐圧試験結果の分布割合を図9と同様な方法で示したものである。さらに、図12は▲1▼+▲4▼の占める面積比と試験電圧の関係を図10と同様に示したものである。
図12より、寿命判定年数を3年とした場合、▲1▼+▲4▼の面積比が最大になるのは、試験電圧が56kVとなり、この電圧を用いた耐圧試験を行うことが最も最適と言える。
この場合、適切な結果は94.1%の割合で得られることになる。
【0031】
また、図11からVLF56kVにおける▲1▼〜▲4▼の比は▲1▼:▲2▼:▲3▼:▲4▼=4.9:3.5:2.4:89.2であるから、VLF56kVの耐圧試験をクリアしたケーブルについては、96.2%の確率(▲4▼を▲2▼+▲4▼で除した値)で寿命判定年数である3年間の間は運転電圧で破壊しないということができる。
また、以上の例では、AC運転電圧を基にして確率計算を行ったが、耐圧試験の目的により、運転電圧×1.1または運転電圧×1.2等にように裕度を与えることも可能である。
【0032】
さらに、以上の説明では、33kVCVケーブルにVLFで耐圧試験を行う例を示したが、AC破壊電圧と水トリー長の関係、試験電圧波形と水トリー長の関係、水トリーの成長速度のデータを調べることにより、他のクラスのケーブル(電圧および絶縁厚の異なるケーブル)および任意の試験波形を用いた試験に適用することが可能であることは明白である。
上記定量的評価方法を、試験電圧波形としてVLF、減衰振動波(以下、OSWという)、直流(以下、DCという)を用い、次のようにして検証した。
【0033】
【実施例1】
実線路から撤去したケーブルおよび新品ケーブル(共に絶縁厚8mm)に種々の時間にて浸水高周波加速劣化試験を行い、水トリーを発生させた。これらを5m長に切り分けたところ、70本の試験用サンプルを得ることができた。
このケーブルにVLF60kVの耐圧試験を行ったところ6本が耐圧試験によって破壊した。
【0034】
残りの64本のケーブルについて、AC運転電圧である19.1kVにて長期間課電試験を行ったところ、等価0.3年、等価2.9年、等価3.5年、等価4.2年で1本ずつ破壊し、残りのケーブルについては等価5年以内に破壊しなかった。これら試験結果を評価すると、耐圧試験によって破壊したケーブル6本であるので、その割合は(6/70)×100=8.6%、耐圧試験で破壊しなかったもののうち5年以内に破壊したケーブルは64本中4本であるので、その割合は(4/64)×100=4.7%、耐圧試験で破壊しなかったもののうち5年以内に破壊しなかったケーブルは64本中60本であるので、(60/64)×100=93.8%となった。
前述したように、VLF60kVの耐圧試験をクリアしたケーブルが運転電圧下で5年以内に破壊しない確率は93.6%と評価されているので、実施例で示した結果とほぼ等しいことがわかり、本発明の定量的評価方法が有効であることが確認された。
【0035】
【実施例2】
33kVクラスのケーブルについて、OSW破壊電圧と水トリー長の関係を新たに調査した。この結果を用いて前述した本発明の手法により、OSW70kVをケーブル線路に印加した場合に、AC運転電圧下で3年以内に破壊するか否かを境界として、耐圧試験結果と水トリー長の相関図を作成した。
その結果、前述した▲1▼〜▲4▼の面積比は次のようになった。
▲1▼:▲2▼:▲3▼:▲4▼=5.9:8.3:13.6:72.3
すなわち、OSW70kVの耐圧試験をクリアしたケーブルは、少なくとも89.7%〔▲4▼/(▲2▼+▲4▼)=72.3/80.6〕の確率で3年間は破壊しないと考えられる。
【0036】
実線路から撤去したケーブルおよび新品ケーブル(共に絶縁厚8mm)に種々の時間にて浸水高周波加速劣化試験を行い、水トリーを発生させた。これらを5m長に切り分けたところ、50本の試験用サンプルを得ることができた。
このケーブルにOSW70kVの耐圧試験を行ったところ9本が耐圧試験によって破壊した。
残りの41本のケーブルについて、長期間課電試験を行ったところ、4本が等価3年以内に破壊し、残り37本のケーブルは3年以内に破壊しなかった。すなわち、耐圧試験にクリアしたケーブルは、90.2%の確率で3年以内に破壊しなかった。
これらの結果より、OSW70kVの耐圧試験で破壊しなかったケーブルは、89.7%の確率でその後、3年間は破壊しないと評価させているので、実施例で示した結果とほぼ等しいことがわかり、本発明がOSWを試験波形に用いた耐圧試験にも有効であることが確認された。
【0037】
【実施例3】
77kVクラスのCVケーブル(絶縁厚;13mm)について、AC破壊電圧と水トリー長の関係、DC破壊電圧と水トリー長の関係、および、水トリーの成長速度のデータから、DC180kVを課電したときにそのケーブルがAC運転電圧下で1年以内に破壊するか否かを境界として耐圧試験結果と水トリー長の相関図を作成した。
【0038】
その結果、▲1▼〜▲4▼の面積比は次のようになった。
▲1▼:▲2▼:▲3▼:▲4▼=0.2:13.5:32.7:53.6
すなわち、DC180kVの耐圧試験をクリアしたケーブルは、少なくとも79.9%の確率で3年間は破壊しないと考えられる。
実線路から撤去したケーブルおよび新品ケーブル(共に絶縁厚13mm)に種々の時間にて浸水高周波加速劣化試験を行い、水トリーを発生させた。これらを10m長に切り分けたところ、20本の試験用サンプルを得ることができた。
このケーブルにDC180kVの耐圧試験を行ったところ全てが耐圧試験をクリアした。
【0039】
残りの20本のケーブルに対して、長期間課電試験を行ったところ、3本が1年以内に破壊し、残り17本のケーブルは1年以内に破壊しなかった。すなわち、耐圧試験にクリアしたケーブルは、85.0%の確率で1年以内に破壊しなかった。
よって、絶縁厚13mmのケーブルにDC180kVの耐圧試験を実施することにより破壊しなかったケーブルは、79.9%の確率でその後1年間は破壊しないと評価させているので、実施例で示した結果とほぼ等しいことがわかり、本発明が絶縁厚を変えた場合および試験波形を変えた場合についても有効であることが確認された。
【0040】
【実施例4】
実施例1に引き続き、VLF60kVを用いた寿命判定試験において、最も効率の良いと考えられる寿命判定年数について検証した。実際には、耐圧試験により破壊したケーブルについては、そのケーブルが所定期間内に破壊するか否かを真に求めることは不可能であるが、実施例1でVLF60kVの耐圧試験中に破壊した6本のサンプルについて、破壊点を取り除きAC19.1kV下で長期課電試験を行い破壊までの年数を耐圧試験により破壊したサンプルの寿命とした。このようにして長期課電を行った6本のサンプル中5本は、等価1.2年、等価1.6年、等価2.2年、等価2.8年、等価3.7年でそれぞれ破壊し、残りの1本については、5年以内に破壊しなかった。
【0041】
以上の結果および実施例1で示した結果から、耐圧試験における▲1▼〜▲4▼までの結果となった本数を長期課電における破壊までの年数(=寿命判定年数)を1年毎に分けて、1〜5年まで求めた。表1に上記結果を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1においては、例えば、寿命判定年数を2年としたとき、▲1▼の試験結果になる事象は、本実施例4における長期課電中の等価1.2年および等価1.6年で破壊した2本、▲2▼の試験結果になる事象は、前述した実施例1で示した耐圧試験中で等価0.3年で破壊した1本、▲3▼の試験結果になる事象は、本実施例4で長期課電中に等価2年以内に破壊しなかった4本、▲4▼の試験結果になる事象は、前述した実施例1の長期課電中に等価2年以内で破壊しなかった63本となる。
【0044】
このように寿命判定年数を1〜5年まで変化させ、耐圧試験による結果を各4つの事象について調べた結果、VLF60kVにおいて、▲1▼+▲4▼の占める割合が最も大きくなるのは、寿命判定年数を3年または4年とした場合で、この場合、耐圧試験を行ったケーブル70本中66本、すなわち66本/70本=94.3%が適正な寿命判定を行った結果であることを示している。
VLF60kVを用いた耐圧試験の場合、寿命判定年数を3.2年とすることが最も効率が良く、その場合、93.9%の確率で適正な寿命判定が行えると評価されているので、本発明による耐圧試験における最も効率的に寿命判定を行うことができる寿命判定年数が有効であることが確認された。
【0045】
【実施例5】
実施例4に引き続き、寿命判定年数を3年間としたとき、最も効率の良い耐圧試験電圧について検証した。
実施例1で用いたものと同様な水トリー劣化ケーブルを試験用サンプルとして、140本の試料を用意し、その内の70本にVLF50kVの耐圧試験を行い、残りの70本にVLF70kVの耐圧試験を行った。
その結果、VLF50kVの耐圧試験では、70本中4本が耐圧試験中に破壊した。耐圧試験中に破壊したものは、実施例4と同様に破壊点を取り除き、破壊しなかった試料はそのままAC19.1kV下で長期課電試験を行った。
【0046】
その結果、VLF50kVで破壊したサンプル4本中3本がそれぞれ、等価1.2年、等価2.1年、等価2.2年で破壊し、残りの1本は等価3年間の長期課電試験中は破壊しなかった。また、VLF50kVの耐圧試験で破壊しなかった66本中3本が、それぞれ、等価1.9年、等価2.5年、等価2.9年で破壊し、残りの63本は、等価3年間の長期課電試験に耐えた。
【0047】
同様に、VLF70kVの耐圧試験により、70本中11本が耐圧試験中に破壊した。耐圧試験中に破壊したものについては、破壊点を取り除き、AC19.1kV下で長期課電試験を行った。
その結果、VLF70kVで破壊したサンプル5本がそれぞれ、等価0.3年、等価1.3年、等価1.8年、等価1.9年、等価2.0年で破壊したが、残りの6本は等価3年間の長期課電試験中は破壊しなかった。一方、VLF70kVの耐圧試験で破壊しなかった試料59本については、その内の1本が等価2.9年で破壊し、残りの58本は、等価3年間の長期課電試験に耐えた。
これらの結果を、前述の実施例4の結果と併せて表2に示した。
【0048】
【表2】
【0049】
表2に示すように、寿命判定年数を3年間とした場合は、試験電圧を50kVまたは60kVとした場合に最も▲1▼+▲4▼となる試験結果が多く得られた。
この場合、適正な試験結果を得られた割合は70本中66本、すなわち、(66本/70本=94.3%である。
寿命判定年数を3年間とした場合のVLF耐圧試験電圧は56kVが最も効率よく、その場合、適正な試験結果が得られる割合は94.1%と評価されているので、本発明による耐圧試験における最も効率的に寿命判定を行うことができる試験電圧が有効であることが示された。
【0050】
【実施例6】
以上述べた各実施例では、適切な試験結果の一つとして、前記したように▲1▼+▲4▼という試験結果が得られる割合を寿命判定を行う所定年数あるいは所定電圧を変えて求めたが、耐圧試験結果における4つの事象の面積比から、適切な試験結果が得られる割合として以下に示す確率を定量的に評価することが可能である。
すなわち、耐圧試験をクリアしたケーブルがどの程度の確からしさで所定期間内に運転中絶縁破壊をおこすことが無いか(▲4▼を▲2▼+▲4▼で除したもの)であり、これはいわば耐圧試験をクリアしたケーブルに対する寿命判定の精度である。
【0051】
図13は、水トリー劣化33kVCVケーブルにVLF60kVの耐圧試験を行った場合の寿命判定年数と適切な試験結果が得られる割合の関係を示しており、図9の4つの事象の面積比と寿命判定年数の関係を示す図より、▲4▼を▲2▼+▲4▼で除すことにより求めたものである。
図13より、水トリー劣化した33kVCVケーブルにVLF60kVの耐圧試験により、例えば、5年のケーブル余寿命を判定する試験を行う場合は、耐圧をクリアしたケーブルが5年以内に破壊しない確率、すなわち適切な試験結果が得られる割合は93.6%と評価される。同様に寿命判定年数を3年とすると適切な試験結果が得られる割合は97.3%と評価される。
また逆に、VLF60kVの耐圧試験で適切な試験結果が得られる割合が例えば、95%になるような試験を行いたい場合は、寿命を判定する年数を4.3年にすればよいと評価される。
【0052】
図14は、水トリー劣化33kVCVケーブルにおいて3年の余寿命を判定する耐圧試験を行った場合の試験電圧と適切な試験結果が得られる割合の関係を示しており、図11の4つの事象の面積比と試験電圧の関係を示す図より、▲4▼を▲2▼+▲4▼で除すことにより求めたものである。
図14より、水トリー劣化33kVケーブルにおいて3年の余寿命を判定する試験を例えばVLF50kVの耐圧試験にて行った場合、耐圧をクリアしたケーブルが3年以内に破壊しない確率、すなわち適切な試験結果が得られる割合は94.3%と評価される。同様に試験電圧をVLF60kV とすると適切な試験結果が得られる割合は97.3%と評価される。
また逆に、3年の寿命を判定する耐圧試験で適切な試験結果が得られる割合が例えば、95%になるような討験を行いたい場合は、試験電圧を52kVにすればよいと評価される。
【0053】
【実施例7】
実施例6では、適切な試験結果の一つとして、▲4▼を▲2▼+▲4▼で除した確率を寿命判定を行う寿命判定年数あるいは試験電圧を変えて求めたが、耐圧討験結果における4つの事象の面積比から、さらに別の観点から考えた適切な試験結果が得られる割合として以下に示す確率を定量的に評価することも可能である。
すなわち、寿命判定年数内に破壊するような水トリーを耐圧試験により破壊できる確率(▲1▼を▲1▼+▲2▼で除したもの)であり、これは、耐圧試験によって有害な水トリーを破壊できる確率と言える。
【0054】
図15は、水トリー劣化33kVCVケーブルにVLF60kVの耐圧試験を行った場合の寿命判定年数と適切な試験持果が得られる割合の関係を示しており、図9の4つの事象の面積比と寿命判定年数の関係を示す図より、▲1▼を▲1▼十▲2▼で除すことにより求めたものである。
図15より、水トリー劣化33kVにVLF60kVの耐圧試験により、例えば、5年のケーブル余寿命を判定する試験を行う場合は、5年以内に破壊する水トリーを耐圧試験で破壊することのできる確率、すなわち適切な試験結果が得られる割合は58.9%と評価される。同様に寿命判定年数を3年とすると適切な試験結果が得られる割合は71.3%と評価される。
また逆に、VLF60kVの耐圧試験で適切な試験結果が得られる割合が例えば、80%になるような試験を行いたい場合は、寿命判定を行う年数を1.2年にすればよいと評価される。
【0055】
図16は、水トリー劣化33kVCVケーブルにおいて3年の余寿命を判定する耐圧試験を行った場合の試験電圧と適切な試験結果が得られる割合の関係を示しており、図11の4つの事象の面積比と試験電圧の関係を示す図より、▲1▼を▲1▼+▲2▼で除すことにより求めたものである。
図16より、水トリー劣化33kVケーブルにおいて3年の余寿命を判定する試験を例えばVLF50kVの耐圧試験にて行った場合、3年以内に破壊する水トリーを耐圧試験で破壊することのできる確率、すなわち適切な試験緒果が得られる割合は35.1%と評価される。同様に試験電圧をVLF60kVとすると適切な試験結果が得られる割合は71.3%と評価される。
また逆に、3年の寿命を判定する耐圧試験で適切な破壊結果が得られる割合が例えば、80%になるような試験を行いたい場合は、試験電圧を63kVにすればよいと評価される。
【0056】
【実施例8】
以上の実施例では、適切な試験結果か得られる割合として、
(1) ▲1▼+▲4▼;耐圧試験で正しい判定をする割合
(2) ▲4▼を▲2▼+▲4▼で除したもの;寿命判定の精度
(3) ▲1▼を▲1▼十▲2▼で除したもの;有害水トリーを破壊できる割合
を寿命判定年数あるいは試験電圧を変えて求めることにより、種々の観点から適切な条件を考えて、定量的に評価できることを示した。ここでは、別の実施例として、これら3つの条件を踏まえ全体として適切な試験結果が得られるような考え方に基づいた実施例について説明する。
上記(2)および(3)で示した適切な試験結果が得られる割合を必要以上高くすると、(1)で示した適切な試験結果が得られる割合が低下する。従って、これら3つの条件を共に高レベルで満足させるような耐圧試験を行うことが望ましい。
表3は、33kVCVケーブル線路において3年間のケーブル余寿命を耐圧試験により判定する試験を実施するための試験電圧を検討した例である。
【0057】
【表3】
【0058】
この場合上記の3つ条件を共に高レベルで満たすように、試験電圧を高めにすることにより上記(2)および(3)で示す割合を高くする。
ここで、上記(1)の割合が低下するが、この低下割合を本実施例では最大値より3%以内に収めることを条件とした。このような試験電圧は、表3の二重線に囲んだ65kVであり、3つの適切な試験結果が得られる割合を全て高レベルで満足するものである。なお、本実施例で示した3%という値は、実際に試験を行う際に必要十分な適宜の値を状況に応じて想定することが可能であり、限定されるべきものは無い。
同様にして、上記の3つ条件を共に高レベルで満たような寿命判定年数を求めることも可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては以下の効果を得ることができる。
(1)ゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果、特に寿命判定試験における試験結果を定量的に評価することができる。
このため、試験結果をクリアしたケーブルについて、少なくとも何パーセントの確率で設定期間内は運転可能であるかを判定することができ、運転継続の可否、線路の引き替え、設定更新の計画を立てることができる。
(2)耐圧試験法によりケーブルの寿命を判定する際、該試験において適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを定量的に評価することができ、耐圧試験の信頼性を保証することができる。
(3)耐圧試験法によりケーブルの寿命を判定する際の最適な試験条件を定量的に求めることができる。
(4)耐圧試験によりケーブルが破壊する可能性を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】AC破壊電圧と水トリー長の関係を示す図である。
【図2】VLF破壊電圧と水トリー長の関係を示す図である。
【図3】水トリー長に対するAC破壊電圧の確率密度関数を示す図である。
【図4】AC運転電圧の破壊確率と水トリー長の関係を示す図である。
【図5】VLF60kVの破壊確率と水トリー長の関係を示
【図6】使用年数に対する最大水トリー長を示す図である。
【図7】5年間に破壊する水トリーの領域を示す図である。
【図8】耐電圧試験結果と水トリー長の相関図である。
【図9】4つの事象の面積比と寿命判定を行う所定年数の関係を示す図である。
【図10】寿命判定年数と適切な試験結果が得られる割合を示す図である。
【図11】試験電圧と耐圧試験結果の分布割合を示す図である。
【図12】寿命判定年数を3年とした場合の試験電圧と適切な試験結果が得られる割合を示す図である。
【図13】寿命判定年数と適切な試験結果が得られる割合の関係を示す図である。
【図14】寿命判定年数を3年とした場合の試験電圧と適切な試験結果が得られる割合の関係を示す図である。
【図15】寿命判定年数と適切な試験結果が得られる割合の関係を示す図である。
【図16】寿命判定年数を3年とした場合の試験電圧と適切な試験結果が得られる割合の関係を示す図である。
Claims (12)
- 水トリー劣化したゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法であって、
(1)商用周波交流(以下ACという)運転電圧におけるゴム・プラスチック絶縁ケーブルの破壊確率と水トリー長の関係を求め、
(2)水トリーの成長速度から、寿命判定を行おうとする所定年数間の水トリー成長長さを求め、上記(1)で求めたAC運転電圧における破壊確率と水トリー長の関係より、その水トリー長から上記水トリー成長長さを差し引いた水トリー長と破壊確率の関係を求め、
(3)上記(1)で求めた破壊確率と水トリー長の関係と、上記(2)で求めた水トリー長と破壊確率の関係から、全ての水トリー長に対して、上記所定年数間に前記ケーブルがAC運転中に破壊する確率と、破壊しない確率を求め、
(4)寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形におけるゴム・プラスチック絶縁ケーブルの破壊確率と水トリー長の関係を求め、該関係から、全ての水トリー長に対して、該試験に用いる所定電圧の試験波形により上記ケーブルが破壊する確率と破壊しない確率を求め、
(5)(i) 寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形で破壊しかつAC運転電圧で前記所定年数以内に破壊、(ii)寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形で破壊せずかつAC運転電圧で前記所定年数以内に破壊、(iii) 寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形で破壊しかつAC運転電圧で前記所定年数以内に破壊しない、(iv)寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形で破壊せずかつAC運転電圧で前記所定年数以内に破壊しない、の4種類に事象を分けて、全ての水トリー長について該4種類の事象の起きる確率を上記(3)および(4)の破壊確率と水トリー長の関係から計算し、横軸水トリー長、縦軸破壊確率としたグラフ上で上記4つの事象が起こる領域を求め、
(6)上記4つの事象が起こる領域の面積の比と、寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形による試験結果から、ゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果を定量的評価する
ことを特徴とするゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法。 - AC破壊電圧と水トリー長の関係において、寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形による破壊電圧の確率分布関数を全ての水トリー長に対して与え、
全ての水トリー長について、上記確率分布における確率密度関数を0からAC運転電圧まで積分することによって得られるAC運転電圧での破壊確率と、水トリー長の関係を算出し、
寿命判定試験に用いる試験波形による破壊電圧と水トリー長の関係において、各波形による破壊電圧の確率分布関数を全ての水トリー長に対して与え、
全ての水トリー長について、上記破壊分布における確率密度関数を0から所定の試験電圧まで積分することによって得られる該試験試験波形での破壊確率と水トリー長の関係を算出する
ことを特徴する請求項1のゴム・プラスチック絶縁電力ケーブルの寿命判定試験方法。 - 上記4つの事象が起こる領域の面積の比と、寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形による寿命判定結果から、その後の前記所定年数でのAC運転中におけるケーブルの破壊または破壊しない確率を求める
ことを特徴とする請求項1または請求項2のゴム・プラスチック絶縁電力ケーブルの寿命判定試験方法。 - 前記寿命判定を行おうとする所定年数を連続的に変えて、各年数について上記4つの事象が起こる領域の面積の比をそれぞれ求め、
上記各年数と4つの事象が起こる領域の面積の比から、前記所定年数を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを評価する
ことを特徴とする請求項1または請求項2のゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法。 - 上記各年数と4つの事象が起こる領域の面積の比から、寿命判定を最も効果的に行うことができる所定年数を求める
ことを特徴とする請求項4のゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法。 - 前記寿命判定試験に用いる所定電圧を連続的に変えて、各電圧について上記4つの事象が起こる領域の面積の比をそれぞれ求め、
上記各電圧と4つの事象が起こる領域の面積の比から、上記寿命判定試験に用いる所定電圧を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを評価する
ことを特徴とする請求項1または請求項2のゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法。 - 上記各電圧と4つの事象が起こる領域の面積の比から、寿命判定を最も効果的に行うことができる所定電圧を求める
ことを特徴とする請求項6のゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法。 - 4つの事象が起こる領域の面積の比から、耐圧試験をクリアしたケーブルが、どの程度の確からしさで所定期間内に運転中絶縁破壊を起こさないかを示す寿命判定精度を求める
ことを特徴とする請求項1または請求項2のゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法。 - 上記4つの事象が起こる領域の面積の比から、所定年数内に破壊する有害な水トリーを耐圧試験により破壊できる有害水トリーの検出確率を求める
ことを特徴とする請求項1または請求項2のゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法。 - 4つの事象が起こる領域の面積の比から、上記寿命判定試験に用いる所定年数を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを求め、
また、上記4つの事象が起こる領域の面積の比から、耐圧試験をクリアしたケーブルがどの程度の確からしさで所定期間内に運転中絶縁破壊を起こさないかを示す寿命判定精度を求め、
さらに、所定年数内に破壊する有害な水トリーを耐圧試験により破壊できる有害水トリーの検出確率を求め、
上記所定年数を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを示す確率、寿命判定精度と所定年数との関係、および、有害水トリーの検出確率と所定年数との関係から適切な試験条件を定める
ことを特徴とする請求項1または請求項2のゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法。 - 4つの事象が起こる領域の面積の比から、上記寿命判定試験に用いる所定電圧を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを求め、
また、上記4つの事象が起こる領域の面積の比から、耐圧試験をクリアしたケーブルがどの程度の確からしさで所定期間内に運転中絶縁破壊を起こさないかを示す寿命判定精度を求め、
さらに、所定年数内に破壊する有害な水トリーを耐圧試験により破壊できる有害水トリーの検出確率を求め、
上記所定電圧を変えた際に、適切な試験結果がどの程度の割合で得られるかを示す確率、寿命判定精度と試験電圧との関係、および、有害水トリーの検出確率と試験電圧との関係から適切な試験条件を定める
ことを特徴とする請求項1または請求項2のゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法。 - 寿命判定試験に用いる所定電圧の試験波形が、0.01〜200Hzの交流または減衰振動波もくしは直流波形である
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10または請求項11のゴム・プラスチック絶縁ケーブルの耐圧試験結果の定量的評価方法。
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