JP3566798B2 - 高調波電流解析装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高調波電流解析装置に関し、さらに詳しく言えば、例えばIEC規格に準拠した変動測定モードで高調波解析を行なうようにした高調波電流解析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高調波による障害が増加の傾向を見せており、その対策として、電子機器の高調波電流の発生抑制が電気・電子機器の分野において大きな課題となっている。すなわち、発電所から送られてくる商用電源の電流波形は本来きれいな正弦波であるが、テレビジョンやパーソナルコンピュータなどに使用されているスイッチング電源やインバータを採用した空気調和機、蛍光灯などに流れる電流は正弦波ではなく、例えばパルス状にひずんだ電流波形となっている。
【0003】
この種の電子機器の普及にともない、高調波電流の総量が多くなると、電力供給の送電線のインピーダンスはゼロでないため、高調波電流による電圧降下により、商用電源の電圧波形のひずみが大きくなり、例えば高調波に起因する過電流による電力用コンデンサや変圧器の異常加熱、焼損、異音発生などの問題が生ずる。また、高調波に起因する電圧波形ひずみによるブレーカ、漏電遮断器もしくは制御機器などの誤動作、さらには高調波に起因する誘導障害による電子回路の誤動作やノイズ発生などの障害が問題とされる。
【0004】
このような背景から、IEC(国際電気標準会議)より、一般低電圧電源に接続される入力電流16A以下の電子機器を対象とした電源高調波規格案(IEC555−2、現在のものはその改訂案)が出されており、その中の一つに2.5分間変動測定モードが定められている。
【0005】
この測定モードは高調波電流の過渡状態を捕らえることを意図したもので、測定ウィンドウ幅は入力波形の4〜30サイクル分を含まなければならないとされ、これを1ウィンドウとしてFFT(高速フーリエ変換)演算処理し、2.5分間連続的して測定を行なう。例えば、電源周波数が50Hzで、1ウィンドウ中に16サイクルを含むとすると、2.5分間では469ウィンドウとなる。
【0006】
これにより、2.5分間をとおして全次数についての測定データが得られるとともに、演算部(CPU)にて各次数ごとに限度値が設定され、この限度値との比較により被測定チャンネルの評価(判定)が行なわれる。
【0007】
この2.5分間変動測定モードについて、IEC規格によると過渡的に変動する高調波電流は、その2.5分間の任意の10%の期間であるならば、その限度値を超えても1.5倍までであるならば許容される、という保留率の緩和措置が認められている。すなわち、保留率とは本来の限度値の他にそれよりも緩和された緩和限度値(例えば、限度値の1.5倍の値)が設定され、限度値を超えかつその緩和限度値内に入るウィンドウ数の全ウィンドウ数に対する割合(%)と定義され、これが10%以内であれば全体として合格(OK)と判定される。また、ウィンドウ単位で限度値の1.5倍を超えるものが1つでもあれば、その被測定チャンネルは不合格(NG)と判定される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、高調波データの解析および比較判定はウィンドウごとに行なわれるため、そのウィンドウ番号をキーにして画面を開くと、例えば図5に示されているようなバーグラフが表示される。
【0009】
これによれば、そのウィンドウに属する全次数(例えば、1〜40次)の電流値やその限度値との判定結果が読み取れるが、時系列順にその変動状態を観測する場合には、その都度ウィンドウ番号を指定して画面を切り替えなければならないという煩わしさがあった。すなわち、従来の図5のようなウィンドウ単位に開かれる表示画面では、各ウィンドウ間のつながり(遷移状態)を把握し難い。
【0010】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、その目的は、所望とする次数、なかでも最悪次数についての変動の遷移状態を例えば一画面で観測することができるようにした高調波電流解析装置を提供することにある
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、負荷に供給される交流電源の電流入力波形をディジタル信号に変換するA/D変換器を含む入力部と、同入力部から出力される波形データを記憶する第1のメモリと、上記波形データを高速フーリエ変換(FFT)し所定次数までの高調波成分の測定データを求める信号処理部と、その測定データを記憶する第2のメモリと、上記測定データに基づいて各次数ごとに限度値を算出するとともに、その限度値と上記測定データとを比較して波形判定などを行なう制御手段と、同制御手段からの指示に基づいて種々の表示を行なうディスプレイおよび上記制御手段に操作上の指示を与える操作部とを含み、所定時間を1測定単位とする変動測定モード時において、上記入力波形のm周期分の波形を1ウィンドウとするとともに、上記1測定単位時間に相当するnウィンドウ(m,nはともに正の整数で、m<n)のそれぞれについて、各次数ごとに測定データを算出してその限度値と比較する高調波電流解析装置において、上記操作部にて上記限度値を超える測定データがもっとも多く含まれている「最悪次数」の選択が可能であり、上記操作部より上記「最悪次数」の選択が指示されると、上記制御手段は上記第2のメモリから該当する次数の全ウィンドウの測定データを読み出して上記ディスプレイ上に時系列的にバーグラフ表示することを特徴としている。
【0012】
また、請求項2の発明は上記請求項1の発明に含まれる好ましい態様として、全ウィンドウの測定データを時系列的にバーグラフ表示するにあたって、上記制御手段は各ウィンドウの測定データとその限度値との比較判定結果を色分けして表示することを特徴としている。
【0013】
また、請求項3の発明は上記請求項1の発明に含まれる好ましい別の態様として、上記ディスプレイに表示されているカーソルにて上記バーグラフ中の所定のウィンドウが指定されると、上記制御手段は上記ディスプレイの所定箇所に指定されたウィンドウに含まれている測定データの限度値に対する倍率をウィンドウ番号とともに数値にて表示することを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の技術的思想をよりよく理解するうえで、図面を参照しながらその実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、この高調波電流解析装置の概略的なブロック線図であり、これによると、同装置は図示しない負荷に供給される交流電源ラインからの電流が入力される入力部10を備えている。同入力部10はその入力電流をディジタル信号に変換するA/D変器を含み、この例においては三相4線まで対応し得るように4つの入力部10が用意されている。
【0016】
また、この高調波電流解析装置は、入力部10にてディジタルに変換された波形データを高速フーリエ変換(FFT)して例えば40次までの高調波データを求める信号処理部11と、各種条件でトリガを発生させるトリガ制御部12と、各入力部10のサンプリングなどを同期制御するPLL制御部13と、入力部10からの波形データを記憶するストレージメモリ14と、中央制御ユニットとしてのCPU15と、同CPU15の制御プログラムなどが書き込まれているROM16と、信号処理部11にて演算された高調波の測定データが格納されるRAMからなるメモリ17と、測定時間の時間管理に用いられる時計手段18と、外部記憶手段としてのフロッピィディスク装置19と、表示手段としてのディスプレイ20と、CPU15に種々の動作指示を与えるマウスなどを含む操作部21と、外部コンピュータと接続するためのGP−IBインターフェイス22と、印字手段としてのプリンタ23とを備えている。
【0017】
IEC規格によると、測定ウィンドウ幅は基本周波数の4〜30サイクル分を含まなければならないとされているため、この例では図2に示されているように、1ウィンドウに基本周波数の16サイクル(周期)を含ませている。したがって、基本周波数が50Hzの場合、2.5分間変動測定モード時おける全ウィンドウ数は469であり、60Hzの場合の全ウィンドウ数は563となる。
【0018】
信号処理部11でのFFT演算は各ウィンドウごとに行なわれ、その演算によって得られた1次〜40次までの測定データはウィンドウ番号とともにメモリ17に書き込まれるが、メモリ17の記憶容量は有限であるため、この実施例では現在測定中の2.5分間の測定データのみを保持し、それ以前の測定データは古いものから順次捨てていく、いわゆるFI−FO(ファーストイン−ファーストアウト)方式を採用している。
【0019】
この連続測定モード中、CPU15は各ウィンドウごとにその全次数について、本来の限度値とその緩和限度値とを設定し、これら両限度値と測定(高調波)データとを比較し、「OK」「NG」の各判定を行なう。この実施例ではその緩和限度値として本来の限度値の1.5倍の値が採用され、また、この緩和限度値とは別に、限度値の0.8倍の値を参考比較値として設けている。説明の便宜上、本来の限度値を1.0倍値、緩和限度値を1.5倍値、そして参考比較値を0.8倍値とする。
【0020】
図3(a)には、測定終了後において、操作部21からの指示によりディスプレイ20に開かれた判定遷移の表示画面が示されている。すなわち、ディスプレイ20内の表示ファンクション中の「判定遷移」ボタンをクリックすることにより、同ディスプレイ20に横軸をウィンドウ数、縦軸を限度値とする判定遷移の表示画面が開かれる。この例では、基本周波数を50Hzとしていることから、全ウィンドウ数は469である。
【0021】
判定遷移を知りたい次数に特に制限はなく、1〜40次までの任意の次数を指定できるが、本発明では「最悪次数」としての指定も可能であり、図3(a)にはその最悪次数を指定した場合が示されている。これによると、最悪次数が2次であることが分かる。
【0022】
そして、この表示画面上に各ウィンドウの測定(高調波)データがそのウィンドウ番号順に沿って、時系列的にバーグラフ表示される。これにより、2次についての変動状態が一目で把握することができる。
この場合、縦軸には「0.8倍値」「1.0倍値」「1.5倍値」がそれぞれリニアスケールで目盛られており、本発明ではこれら限度値と各ウィンドウの測定データとの比較判定結果が色分け表示される。
【0023】
すなわち、そのウィンドウ内の全次数が「1.0倍値」内である場合にはOKウィンドウとして『青色』表示、「1.0倍値」を超え「1.5倍値」内のもの(次数)が10%以内、すなわちこの例で言えば46以内である場合には保留ウィンドウとして『黄色』表示、そして、「1.5倍値」を超える次数が一つでもあればNGウィンドウとして『赤色』で表示される。参考までに、図3(a)中に青色表示部分にB、黄色表示部分にY、赤色表示部分にRを付しておく。
【0024】
これによれば、その色にて判定結果が容易に分かるが、この実施例ではカーソル機能により、任意のウィンドウの倍率を知ることができる。すなわち、操作部21のマウスを操作してそのカーソルMC(逆三角印参照)を所望とするバーグラフ上に位置させてクリックすると、図3(a)の親画面の所定表示領域に同図(b)のような子画面が開かれ、そのカーソルの読取り値が例えば「1.24倍」のように表示される。この場合、そのウィンドウ番号は親画面中のウィンドウNo.欄に表示され、これによればカーソルMCにて指示されたウィンドウ番号が「115」であることが分かる。
【0025】
上記の例は測定終了後において判定遷移状態を見た場合のものであるが、測定中においてもリアルタイム的に所定次数についての判定遷移を見ることができ、図4(a)にはその表示の一例が示されている。この例においても、上記実施例と同様限度値との比較判定結果が『青色』『黄色』『赤色』などにて色分け表示することができる。
【0026】
なお、この場合には図4(a)の親画面中の所定表示領域に同図(b)に示されている判定状況を表示する子画面が開かれる。すなわち、この子画面には、測定の進行状況に合わせて、それまでに保留ウィンドウとして判定された保留ウィンドウ数、その保留ウィンドウ数の全ウィンドウ数に対する比率、保留ウィンドウの最新発生時刻、NGウィンドウとして判定されたNGウィンドウ数およびそのNGウィンドウの最新発生時刻などが表示される。
【0027】
これによれば、時々刻々と変化する判定遷移が解析に必要な情報とともに表示され、高調波解析を行なう上できわめて便利である。なお、上記実施例ではカラーディスプレイを用いているが、モノクロディスプレイの場合には、色分けに代えて、例えば斜線表示、ベタ表示、梨地表示などを採用すればよい。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、ディスプレイ上に「最悪次数」について、その全ウィンドウの測定(高調波)データを時系列的にバーグラフ表示するようにしたことにより、煩雑な画面切り替え操作を行なうことなく、解析上興味ある最悪次数についての変動の遷移状態をその画面内で観測することができる。
【0029】
また、全ウィンドウの測定データを時系列的にバーグラフ表示するにあたって、各ウィンドウの測定データとその限度値との比較判定結果を色分けして表示するようにした請求項2の発明によれば、請求項1の効果に加えてきわめて容易に判定結果をも知ることができる。
【0030】
さらに、請求項3の発明のように、バーグラフ表示上から所定のウィンドウの限度値に対する倍率をウィンドウ番号とともに数値にて表示可能とすることにより、画面をそのままとした状態で解析に必要な情報を引き出すことができる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による高調波電流解析装置の一実施例に係る概略的なブロック線図。
【図2】1ウィンドウ中に含まれる波形を例示した波形図。
【図3】本発明による判定遷移の表示画面を示したディスプレイの画面図。
【図4】本発明の他の実施例による判定遷移の表示画面を示したディスプレイの画面図。
【図5】ウィンドウごとに開かれる従来のバーグラフ表示画面を示したディスプレイの画面図。
【符号の説明】
10 入力部
11 FFT信号処理部
14 ストレージメモリ
15 CPU
17 メモリ(RAM)
20 ディスプレイ
21 操作部(マウス)

Claims (3)

  1. 負荷に供給される交流電源の電流入力波形をディジタル信号に変換するA/D変換器を含む入力部と、同入力部から出力される波形データを記憶する第1のメモリと、上記波形データを高速フーリエ変換(FFT)し所定次数までの高調波成分の測定データを求める信号処理部と、その測定データを記憶する第2のメモリと、上記測定データに基づいて各次数ごとに限度値を算出するとともに、その限度値と上記測定データとを比較して波形判定などを行なう制御手段と、同制御手段からの指示に基づいて種々の表示を行なうディスプレイおよび上記制御手段に操作上の指示を与える操作部とを含み、
    所定時間を1測定単位とする変動測定モード時において、上記入力波形のm周期分の波形を1ウィンドウとするとともに、上記1測定単位時間に相当するnウィンドウ(m,nはともに正の整数で、m<n)のそれぞれについて、各次数ごとに測定データを算出してその限度値と比較する高調波電流解析装置において、
    上記操作部にて上記限度値を超える測定データがもっとも多く含まれている「最悪次数」の選択が可能であり、上記操作部より上記「最悪次数」の選択が指示されると、上記制御手段は上記第2のメモリから該当する次数の全ウィンドウの測定データを読み出して上記ディスプレイ上に時系列的にバーグラフ表示することを特徴とする高調波電流解析装置。
  2. 上記全ウィンドウの測定データを時系列的にバーグラフ表示するにあたって、上記制御手段は各ウィンドウの測定データとその限度値との比較判定結果を色分けして表示することを特徴とする請求項1に記載の高調波電流解析装置。
  3. 上記ディスプレイに表示されているカーソルにて上記バーグラフ中の所定のウィンドウが指定されると、上記制御手段は上記ディスプレイの所定箇所に指定されたウィンドウに含まれている測定データの限度値に対する倍率をウィンドウ番号とともに数値にて表示することを特徴とする請求項1または2に記載の高調波電流解析装置。
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