JP3563480B2 - 光学活性体の製造方法、並びに光学活性なスルホニウム化合物 - Google Patents

光学活性体の製造方法、並びに光学活性なスルホニウム化合物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、下記一般式[I]
【化4】
Figure 0003563480
(式中、Yは無機酸残基または有機酸残基を示す)で表される光学活性なスルホニウム化合物の製造方法、並びに光学活性なスルホニウム化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トシル酸スプラタスト〔(±)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネート〕はIgE抗体産生を抑制し、アレルギー性疾患の治療剤として有用である(特公平3−70698号公報参照)。トシル酸スプラタストはラセミ体であり、化学式から明らかなように不斉炭素を一つ有していることから、二つの光学対掌体が存在していることが予測されていた。しかしながら、該光学対掌体をラセミ体から単離する方法や不斉合成で製造し、その化合物の有する物理化学的および薬理学的特性に関しての研究については一切検討されていなかった。
【0003】
ラセミ体の結晶には、単結晶中にエナンチオマーが1:1の割合で含まれるラセミ化合物(ラセミ結晶)、+体の単結晶と−体の単結晶が1:1の割合で混合するラセミ混合物(不斉結晶)、単結晶中のエナンチオマー比は一定ではないがラセミ体結晶全体のエナンチオマー比は1:1になっているラセミ固溶体の三種類が存在する。そして、ラセミ体の結晶の多くは、ラセミ化合物であることが知られており、トシル酸スプラタストについても、特公平3−70698号公報に従って製造されるラセミ体の結晶は、本発明者らが既になした報告(日本薬剤学会第8年会講演要旨集48(1992))から殆どラセミ化合物であることが知られている。
【0004】
ラセミ化合物と光学活性体の皮膚透過率の違いについてはL.Wearley等によりSch−39304の皮膚透過率の違いについて検討がなされており、光学活性体の方が9.1倍も透過することが報告(Pharm.Res.,Vol0,136(1993))されている。
【0005】
ラセミ体から光学活性体を分割する方法としては、光学活性体を種晶として使用し、同一の光学活性体を再結晶により結晶として得る優先晶出法(Enantiomers,Racemates and Resolutions,John Wiley & Sons,New York(1981))、ジアステレオマー経由の分割法(Optical Resolution Procedures for Chemical Compounds,Vol 1〜3,Optical Resolution Information Center,New York(1978〜1984))、合成光学活性ホストとの錯体形成を利用する方法(Top.Curr.Chem.,140,43(1987))、クロマトグラフィーによる直接分割法(Liq.Chromatogr.,2,1063(1979))、酵素を用いる分割法(酵素機能と精密有機合成、シーエムシー(1984))等が一般に知られている。
【0006】
まず、ラセミ体を、再結晶法で光学分割することは、装置自体も格別なものが不要なうえ、再結晶のための作業も簡単であるため作業性に優れ、コスト的にも安くできることから、残りの分割方法に比して優れているといえる。ところで、ラセミ体を再結晶した場合に、ホモキラル相互作用の繰り返しによりラセミ混合物が晶出するか、ヘテロキラル相互作用によりラセミ化合物が優先晶出するか、又はラセミ固溶体が生じる。従って、再結晶法により光学分割する場合に、ラセミ混合物であれば再結晶法(優先晶出法)による分割が可能な場合があり、そこで、ラセミ混合物に誘導する方法が野平等により明らかにされている(Chem.Lett.,1981,951)。しかしながらラセミ混合物であっても、ルーペまたは顕微鏡で識別できるほど大きな結晶が得られる場合を除き、種晶を接種しないで再結晶法により一方の光学活性体を得るということは事実上不可能であるという問題がある。
【0007】
これに対し、ラセミ化合物の場合は、優先晶出法により光学分割することは不可能とされており、非ラセミの溶液を昇華することにより光学純度を高めて光学活性なスルフィドを回収したという報告(J.Org.Chem.,32,1867(1966))や光学活性な少量の疎水性アミノ酸を用いて親水性アミノ酸を光学分割したという報告(J.Am.Chem.Soc.,110,561(1988))等がせいぜい散見されるに過ぎないのであって、ラセミ化合物においては、ジアステレオマー経由の分割法により光学分割されているのが一般的で、エナンチオマーが光学活性体を使用しない再結晶のみで光学分割できることは未だ知られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた皮膚透過性を示す下記一般式[I]
【化5】
Figure 0003563480
(式中、Yは無機酸残基または有機酸残基を示す)で表される皮膚透過性が優れた新規の光学活性なスルホニウム誘導体及びそれを含有するアレルギー性疾患の治療剤並びにその製造方法を提供することに有る。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者はトシル酸スプラタストの光学分割について鋭意研究を行っていたところ、一般的にはラセミ化合物の光学分割はできないと考えられていた再結晶法により高純度、高収率で光学活性体が分割できること、およびこれら方法によって光学分割された光学活性体がラセミ体と比較して皮膚透過性が優れていることを見い出し本発明を完成した。
即ち、請求項1の発明は、一般式[I]
【化3】
Figure 0003563480
(式中、Yは無機酸残基または有機酸残基を示す)で表される化合物のラセミ体のスルホニウム化合物から光学活性体を光学分割するにあたり、前記化合物を過飽和になるまで溶媒に溶解した後、該溶解したものを無添加または種晶としてラセミ体を接種して結晶を析出させ、しかる後、該析出した結晶を除去した残液から光学活性体を得るものであることを特徴とする光学活性体の製造方法である
【0010】
式中、Yで表される無機酸残基としては、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等のハロゲン化水素酸、硝酸、硫酸、四弗化硼素酸、過塩素酸、リン酸、メタリン酸等の酸残基、有機酸残基としては、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ピクリルスルホン酸、カンファースルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸残基、および酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、フマール酸、酒石酸、ステアリン酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、オレイン酸、マロン酸、安息香酸、アスコルビン酸、グリチルリチン酸、ニコチン酸が例示できる。これら酸残基のうち特に好ましいのはスルホン酸残基であり、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−ニトロベンゼンスルホン酸、1,5−ナフタレンスルホン酸等の置換されていても良いアリールスルホン酸がより好ましい。
【0011】
本発明化合物に包含される化合物としては、
・R(−)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネート(化合物1)
・S(+)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネート(化合物2)
・R(−)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム ベンゼンスルホネート(化合物3)
・S(+)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム ベンゼンスルホネート(化合物4)
・R(−)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−ニトロベンゼンスルホネート(化合物5)
・S(+)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−ニトロベンゼンスルホネート(化合物6)
が例示され、特に、Yがp−トルエンスルホン酸残基である化合物1および2が好ましい。光学活性な本発明化合物は、特公平3−70698号公報に記載された製造方法に準じた下記反応工程式による不斉合成あるいは本発明化合物のラセミ体を再結晶することにより製造することができる。
【0012】
<反応工程式>
【化7】
Figure 0003563480
(式中、Yは前記と同一の意味を表す)
【0013】
[工程A]
化学式[II]で表される3−メチルプロピオニルクロライドと光学活性な化学式[III]で表される4−(3−エトキシ−2−ドロキシプロポキシ)アニリンにトリエチルアミンの存在下で反応させることにより化学式[IV]で表される2−{4−(3−エトキシ−2−ドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチルメチルスルフィドを製造する。
[工程B]
化学式[IV]で表される化合物にさらに一般式[V]で表される化合物を反応させることにより本発明化合物を製造しうる。本製造方法の詳細については、特公平3−70698号公報および後記実施例に記載されている。
【0014】
また、一般式[III]で表される光学活性な化合物は下記反応工程式によって製造される。
【化8】
Figure 0003563480
化学式[III−1]で表される光学活性なグリシジルトシレートにニトロフェノール及び水素化ナトリウムを反応させ、化学式[III−2]で表される4−(3−エトキシ−2−ドロキシプロポキシ)ニトロベンゼンを得る。次ぎにこの化合物をパラジウム−炭素を用い接触還元により化学式[III]で表される光学活性な化合物を得ることができる。本製造の詳細については後記実施例に記載した。
【0015】
再結晶による製造方法は下記一般式[I]
【化9】
Figure 0003563480
(式中、Yは無機酸残基または有機酸残基を示す)で表されるスルホニウム化合物のラセミ体および非ラセミ体を複数回、再結晶することによって分割される。
【0016】
より具体的には、ラセミ体または非ラセミ体を過飽和になるまで溶媒に溶解した後、該溶解したものを無添加または種晶としてラセミ体又は光学活性体を接種して結晶を析出させ、しかる後、該析出した結晶を除去した残液から(+)あるいは(−)の光学活性体を得る。本方法の特徴とするところは、
i.析出した結晶中に光学活性体が分離されるのではなく残液中に(+)又は(−)の光学活性体が特異的に分割されること
ii.析出した結晶を再度再結晶することにより残液に前回の分割された光学活性体と反対の施光度を有する光学活性体が分離されること
iii.ラセミ体であっても、分割可能であること
にある。初回の再結晶において分割される光学活性体がR(−)体又はS(+)体であるかについては予測することはできないが、施光度を測定すること及び、後記実施例に示したようにHPLC法により光学純度を算出することにより決定できる。それ以降の再結晶における残液中の光学活性体の立体配置は、例えば初回の残液中のものがR(−)体であれば、二回目の再結晶においてはS(+)体のように交互に正反対の化合物が光学分割される。
【0017】
また、本発明によって光学分割されるラセミ体の化合物としては、100%ラセミ化合物である必要はなく、ラセミ混合物又はラセミ固溶体が混在していてもよく、さらには、光学純度が+又は−過剰側にずれた非ラセミ体であってもよい。
【0018】
本発明で使用される再結晶溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ジメチルエタノール、2−メチルプロパノール等のアルコール類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエテルケトン等のアルキルケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤や水等の一種類あるいは上記各種有機溶剤の混合溶剤等を例示でき、特にアルコール類が好ましい。
【0019】
過飽和溶液中における各光学活性体の出発混合物の濃度は、溶剤の種類、環境温度及び各光学活性体の相対比に依存するが、多くの場合、2W/W%以上であり、好ましくは10〜50W/W%である。
【0020】
また、過飽和溶液から結晶を析出させる際の温度は、使用する溶剤の種類、得ようとする光学純度、回収量及び回収に要する時間により適宜選択できるが、実用的には−30℃〜40℃であり、好ましくは−30℃〜25℃である。なお、使用する溶剤によっては溶液が凍結してしまう場合もあるが、そのような場合はこの限りではない。
【0021】
そして、本発明を実施できる前記一般化学式[I]で示されるスルホニウム化合物のラセミ体の代表的なものとしては、Yがスルホン酸残基である化学式[VI]で示される(±)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネート(通称:トシル酸スプラタスト)、化学式[VII]で示される(±)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム ベンゼンスルホネート(通称:ベンゼンスルホン酸スプラタスト)、化学式[VIII]で示される(±)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−ニトロベンゼンスルホネート(通称:p−ニトロベンゼンスルホン酸スプラタスト)等が例示できる。
【化10】
Figure 0003563480
【0022】
前記一般式[I]で表されるスルホニウム化合物が、この様に再結晶法で光学分割できる理由としては、ラセミ体の融解エンタルピーが、光学活性体の融解エンタルピーと略一致していることに起因するものと推論できる。つまり、ラセミ体には、ラセミ化合物(RS体)と二種類の光学活性体(RR体,SS体)とが存在するが、これを再結晶させる場合に、溶質濃度が過飽和状態となって高いと、その溶液中では、
【化11】
Figure 0003563480
の可逆的な溶質間反応が生じる。
このうち、反応i.、ii.の平衡が右に進む場合、生成する結晶はラセミ混合物となり、反応iii.の平衡が右に進む場合、生成する結晶はラセミ化合物となる。ここで、ラセミ化合物の溶解度が光学活性体の溶解度より低いものであれば、ラセミ化合物がそのまま優先的に晶出する。これに対し、ラセミ化合物と各光学活性体の融解エンタルピーが略同じである場合には、結晶化エンタルピーも近いと考えられ、従って、ラセミ固溶体が生成するかまたはラセミ化合物の結晶化に誘発されて一部i.またはii.の反応が右に進んで光学活性体の結晶が生成し、それが核になって該側の光学活性体の結晶がラセミ化合物と共に析出し、その結果として、再結晶母液中には反対の光学活性体の比が高くなって光学分割されるものと推論される。
【0023】
従って本方法においては、ラセミ体の過飽和溶液の安定性が高く容易に結晶化しにくいほど、溶質間平衡が長いあいだ存在することになって、上記の現象が起こりやすくなる。
【0024】
また、本方法によって光学分割できるものは次の条件を備えた化合物であるといえる。つまり、化合物において、ラセミ体と各光学活性体との結晶化エンタルピーが近似し、過飽和溶液の安定性が高く、容易に結晶化しないものであることである。また、再結晶法による手法として、その代表的なものとして次の(I)から(VII)に従うものがある。
(I) ラセミ体の光学活性体混合物を可溶性溶剤に加温溶解して過飽和状態とし、一定温度下に放置することにより結晶を析出させる。放置しておいた再結晶母液の光学純度を調べ、目的の光学純度となったところで再結晶母液を分離し、溶媒を留去するかまたは濃縮して過飽和状態とすることにより、光学活性体または一方の光学活性に富んだ結晶を得ることができる。
(II) (I)の操作において生成した結晶に再度可溶性溶剤を加え、加温溶解して過飽和状態とした後、一定温度下に放置すれば、(I)と反対の光学活性体に関して富化された再結晶母液を得ることができる。この再結晶母液からは、(I)と同様の操作を行うことにより、(I)と反対の光学活性体または(I)と反対の光学活性に富んだ結晶を得ることができる。
(III) (I)及び(II)の実施にあたっては、結晶成長を促すため原料であるラセミ体を種晶として接種しても良いし、過飽和溶液を作成する際に完全に溶解せず、未溶解の物を残しておいても良く、撹拌すれば更に効率が良い。(IV) 過飽和溶液を作成する代わりに、ラセミ体または光学活性体混合物を融点以上に加温して溶融するか、またはそのまま可溶性溶剤を加えて抽出して飽和溶液を得、これを冷却することにより過飽和状態とし、(I)と同様に操作することも可能である。
(V) (I)、(II)及び(IV)の実施にあたっては、放置または冷却する代わりに不溶性溶剤を添加することにより過飽和状態とすることができる。
(VI) 光学分割により得られた高光学純度の再結晶母液は、減圧下に溶剤を留去し残留物を溶解性の低い溶剤に加温溶解して、素早くほとんどの結晶が回収されるような条件下に放置することにより、高光学純度の光学活性体を得ることができる。
(VII) (VI)の実施にあたっては、得ようとする光学活性体を接種することが望ましい。
【0025】
かくして得られた本発明化合物をアレルギー性疾患の治療剤として用いるにあたっては、通常、薬理学的に許容される製剤担体を配合して製剤化する。担体としては、当該分野において通常使用されるものが使用でき、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤を例示することができる。
【0026】
本発明製剤の投与単位形態は、経口及び非経口の製剤形態の何れでもよく、経口の製剤形態としては、例えば錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等であり、非経口の製剤形態としては注射剤、坐剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル軟膏剤、貼布剤、テープ剤、点鼻剤、点眼剤等を例示できる。特に好ましいのは、坐剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル軟膏剤、貼布、テープ剤、点眼剤及び点鼻剤等の経皮吸収等によって薬剤を投与できる剤形である。
【0027】
錠剤の形態に成形するに際しては、担体として、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。さらに、錠剤は、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被剤、フイルムコーティング錠、二重錠、多層錠等とすることができる。
【0028】
丸剤の形態に成形するに際しては、担体として、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド等を使用できる。
カプセル剤は、本発明化合物を前記に例示した各種の担体と混合し、硬質ゼラチンカプセル、軟カプセル等に充填して調製される。
ペースト、クリーム及びゲルの形態に調製する際には、希釈剤として例えば白色ワセリン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト等を使用できる。
【0029】
製剤中に含まれる本発明化合物の量は特に限定されず、適宜選択すればよいが、何れも通常製剤中1〜70重量%程度とするのがよい。
前記製剤には、前記成分のほか、必要に応じて、着色剤、着香剤、防腐剤、酸化防止剤等を含有することができる。防腐剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、チモール等が挙げられる。酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、オキシベンゾン、パラアミノ安息香酸エチル等が挙げられる。
【0030】
以下に製剤例について具体的に述べる。
[製剤例1]
(1)化合物1 5.0 部
(2)1,3−ブチレングリコール 5.0 部
(3)ステアリン酸 3.0 部
(4)ステアリルアルコール 0.5 部
(5)ミツロウ 0.5 部
(6)グリセリルモノステアレート 3.0 部
(7)ポリオキシエチレン(5モル)硬化ヒマシ油 0.5 部
(8)セバシン酸ジエチル 0.25部
(9)白色ワセリン 82.25部
成分(1)、(2)を50℃の加温下で溶解し、混合物Iを調製した。一方、成分(3)〜(9)を75℃の加温下で均一に混合し、混合物IIを調製した。次ぎに、混合物IIを60℃の加温下で撹拌しながら混合物Iを加え、全体を放冷し、外用剤を得る。
【0031】
[製剤例2]
(1)化合物2 5.0 部
(2)ポリエチングリコール 400 12.5 部
(3)メチルパラベン 0.1 部
(4)ステアリン酸 3.0 部
(5)ステアリルアルコール 0.5 部
(6)ミツロウ 0.5 部
(7)グリセリルモノステアレート 3.0 部
(8)ポリオキシエチレン(5モル)硬化ヒマシ油 0.5 部
(9)セバシン酸ジエチル 1.0 部
(10)白色ワセリン 73.8 部
(11)プロピルパラベン 0.1 部
成分(1)〜(3)を50℃の加温下で溶解し、混合物Iを調製した。一方、成分(4)〜(11)を75℃の加温下で均一に混合し、混合物IIを調製した。次ぎに、混合物IIを60℃の加温下で撹拌しながら混合物Iを加え、全体を放冷し、外用剤を得る。
【0032】
【効果】
そして本発明は、この構成によって、前記スルホニウム化合物のラセミ体から生物学的利用率の高い光学活性体を光学分離することが、設備的に簡便で特殊な装置が不用な再結晶法によって高純度で製造できることと成る。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施した実験例を、比較例と共に幾つか挙げ、本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0034】
[実験例1]
R(−)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネート(化合物1)の製造
i. (R)−4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ニトロベンゼンの合成
水素化ナトリウム(ヘキサンで洗浄)0.189gと無水ジメチルホルムアミド6mlの混液に、氷冷下p−ニトロフェノール0.962gと無水ジメチルホルムアミド3mlの混液を滴下後、同温度で15分間撹拌する。同温度で(2R)−(−)グリシジルトシレート1.5gと無水ジメチルホルムアミド3mlの混液を滴下する。同温度で15分間、さらに室温で3日間撹拌する。反応液を室温で減圧乾燥し、残渣にエーテル40mlを加え不純物を濾過して除去する。濾液を室温で減圧濃縮し、残渣に無水エタノール30mlと濃硫酸9滴を加え、1時間還流する。放後、クロロホルム120mlを加え、水洗濃縮する。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル150ml)にかけエタノール/クロロホルム(1:1)にて溶出して淡黄色油状の表記化合物0.69g(収率43.7%)を得た。
−NMR(100MHz DMSO−d6)δ:
1.11(3H,t,J=7Hz),3.3−3.6(2H,m),3.47(2H,q,J=7Hz),3.8−4.3(3H,m),5.20(1H,d,J=5Hz),7.16(2H,d,J=9Hz),8.20(2H,d,J=9Hz)
ii. (R)−4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)アニリンの合成
(R)−4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ニトロベンゼン0.575g、エタノール20mlと5%Pd−C 60mgの混液を室温2気圧で接触還元を行う(反応時間3時間)。反応液を濾過し、濾液を濃縮して淡褐色油状物の表記化合物0.238g(収率47.3%)を得た。
−NMR(100MHz DMSO−d6)δ:
1.10(3H,t,J=7Hz),3.2−3.6(2H,m),3.44(2H,q,J=7Hz),3.65−4.0(3H,m),4.61(2H,bs),4.97(1H,d,J=5Hz),6.4−6.8(4H,m)
iii. (R)−2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチルメチルスルフィドの合成
(R)−4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)アニリン2.11g、ジクロルメタン20mlとトリエチルアミン1.12gの混液に、20℃以下で3−メチルメルカプトプロピオニルクロライド1.38gを滴下する。同温で30分撹拌後、さらに室温で3時間撹拌する。反応液を2N−塩酸10mlで2回、水10mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥する。残渣にエーテル20mlを加え、サスペンド後濾過する。濾取した結晶をベンゼンより再結晶して表記化合物1.69g(収率54.2%)を得た。融点101〜102℃。 元素分析C1523NOSとして
計算値 C:57.49 H:7.40 N:4.47
実測値 C:57.32 H:7.07 N:4.41
−NMR(100MHz DMSO−d6)δ:
1.11(3H,t,J=7Hz),2.08(3H,S),2.4−2.9(4H,m),3.2−3.6(2H,m),3.45(2H,q,J=7Hz),3.7−4.0(3H,m),5.06(1H,d,J=5Hz),6.87(2H,d,J=9Hz),7.49(2H,d,J=9Hz),9.81(1H,bs)
iv. R(−)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネート(化合物1)の合成
(R)−2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチルメチルスルフィド30g、ジクロルメタン100mlとp−トルエンスルホン酸メチル72gの混液を室温で12日間撹拌する。反応液にメチルエチルケトン300mlを加え、室温で30分間撹拌後、静置する。上澄液をデカンテーションにより除去後、アセトン100mlを加え、室温で30分間撹拌する。結晶化するまで静置(2日間)後、濾過する。濾取した結晶をエタノール/エーテルで精製して白色結晶の表記化合物24.9g(収率52.1%)を得た。融点83−85℃
元素分析C2333NOとして
計算値 C:55.29 H:6.66 N:2.80
実測値 C:55.03 H:6.56 N:2.87
FAB−MS m/z=328(M−トシル酸+)
【外1】
−NMR(100MHz DMSO−d6)δ:
1.10(3H,t,J=7Hz),2.28(3H,S),2.93(6H,S),2.93(2H,t,J=6Hz),3.2−3.6(4H,m),3.45(2H,q,J=7Hz),3.7−4.0(3H,m),5.07(1H,d,J=5Hz),6.89(2H,d,J=9Hz),7.11(2H,d,J=8Hz),7.50(2H,d,J=8Hz),7.50(2H,d,J=9Hz),10.14(1H,bs)
【0035】
[実験例2]
S(+)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネート(化合物2)の製造
以下、実験例1と同様な方法により下記化合物を合成した。
i. (R)−4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ニトロベンゼン
淡黄色油状
−NMR(100MHz DMSO−d6)δ:
1.11(3H,t,J=7Hz),3.3−3.6(2H,m),3.47(2H,q,J=7Hz),3.8−4.3(3H,m),5.20(1H,d,J=5Hz),7.16(2H,d,J=9Hz),8.20(2H,d,J=9Hz)
ii. (S)−4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)アニリン
淡褐色油状物
−NMR(100MHz DMSO−d6)δ:
1.10(3H,t,J=7Hz),3.2−3.6(2H,m),3.45(2H,q,J=7Hz),3.65−4.0(3H,m),5.0(3H,bs),6.4−6.8(4H,m)
iii. (S)−2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチルメチルスルフィド
融点101〜102.5℃
元素分析C1523NOSとして
計算値 C:57.49 H:7.40 N:4.47
実測値 C:56.95 H:6.98 N:4.38
−NMR(100MHz DMSO−d6)δ:
1.11(3H,t,J=7Hz),2.08(3H,S),2.4−2.9(4H,m),3.2−3.6(2H,m),3.45(2H,q,J=7Hz),3.7−4.0(3H,m),5.06(1H,d,J=5Hz),6.87(2H,d,J=9Hz),7.49(2H,d,J=9Hz),9.82(1H,bs)
iv. S(+)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネート(化合物2)
白色結晶、融点82−84℃
元素分析C2333NOとして
計算値 C:55.29 H:6.66 N:2.80
実測値 C:54.91 H:6.36 N:2.81
FAB−MS m/z=328(M−トシル酸+)
【外2】
−NMR(100MHz DMSO−d6)δ:
1.10(3H,t,J=7Hz),2.28(3H,S),2.93(6H,S),2.93(2H,t,J=6Hz),3.2−3.6(4H,m),3.45(2H,q,J=7Hz),3.7−4.0(3H,m),5.07(1H,d,J=5Hz),6.89(2H,d,J=9Hz),7.11(2H,d,J=8Hz),7.49(2H,d,J=9Hz),7.50(2H,d,J=8Hz),10.14(1H,bs)
【0036】
ラセミ体及び上記実験例1、2の方法によって得られた−体(化合物1)、+体(化合物2)の各光学活性体の融点、融解エンタルピー、イソプロパノールに対する溶解度をそれぞれ測定した結果を表1に示す。なお、融点は示差熱分析を用いて測定した。
【表1】
Figure 0003563480
【0037】
[実験例3]
R(−)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム ベンゼンスルホネート(化合物3)の製造
p−トルエンスルホン酸メチルの代わりにベンゼンスルホン酸メチルを用いた以外は実験例1と同一の方法により表記化合物を合成した。
融点 110.1℃
−NMR(270MHz DMSO−d6)δ:
1.11(3H,t,J=7Hz),2.93(6H,S),2.93(2H,t,J=6Hz),3.4−3.6(4H,m),3.45(2H,q,J=7Hz),3.8−4.0(3H,m),5.07(1H,d,J=4Hz),6.89(2H,d,J=9Hz),7.31(3H,m),7.48(2H,d,J=9Hz),7.61(2H,m),10.11(1H,S)
【0038】
[実験例4]
S(+)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム ベンゼンスルホネート(化合物4)の製造
p−トルエンスルホン酸メチルの代わりにベンゼンスルホン酸メチルを用いた以外は実験例2と同一の方法により表記化合物を合成した。
融点 108.7℃
−NMR(270MHz DMSO−d6)δ:
1.10(3H,t,J=7Hz),2.93(6H,S),2.93(2H,t,J=6Hz),3.4−3.6(4H,m),3.45(2H,q,J=7Hz),3.8−4.0(3H,m),5.06(1H,d,J=4Hz),6.89(2H,d,J=9Hz),7.31(3H,m),7.48(2H,d,J=9Hz),7.61(2H,m),10.11(1H,S)
【0039】
[実験例5]
R(−)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−ニトロベンゼンスルホネート(化合物5)の製造
p−トルエンスルホン酸メチルの代わりにp−ニトロベンゼンスルホン酸メチルを用いた以外は実験例2と同一の方法により表記化合物を合成した。
油状
−NMR(270MHz DMSO−d6)δ:
1.11(3H,t,J=7Hz),2.93(6H,S),2.93(2H,t,J=5Hz),3.4−3.5(4H,m),3.48(2H,q,J=7Hz),3.8−4.0(3H,m),5.07(1H,d,J=3Hz),6.90(2H,d,J=9Hz),7.47(2H,d,J=9Hz),7.84(2H,d,J=9Hz),8.20(2H,d,J=9Hz),10.08(1H,S)
【0040】
[実験例6]
S(+)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−ニトロベンゼンスルホネート(化合物6)の製造
p−トルエンスルホン酸メチルの代わりにp−ニトロベンゼンスルホン酸メチルを用いた以外は実験例2と同一の方法により表記化合物を合成した。
油状
−NMR(270MHz DMSO−d6)δ:
1.11(3H,t,J=7Hz),2.93(6H,S),2.93(2H,t,J=5Hz),3.4−3.5(4H,m),3.48(2H,q,J=7Hz),3.8−4.0(3H,m),5.06(1H,d,J=4Hz),6.90(2H,d,J=9Hz),7.47(2H,d,J=9Hz),7.84(2H,d,J=9Hz),8.20(2H,d,J=9Hz),10.08(1H,S)
【0041】
[実験例7]
特公平3−70698号公報に記載される方法に準じて製造したトシル酸スプラタストのラセミ体9.2gにメタノール10mlを加えて40℃に加温して溶解した後、ジイソプロピルエーテル20mlを加え、−30℃に3日間放置した。析出した結晶を濾別し、得られた再結晶母液を減圧下に溶媒を留去して油状物0.2535g(回収率5.5%、光学純度97.5%ee(+過剰))を得た。
析出した結晶にメタノール10mlを加えて40℃に加温して溶解した後、ジイソプロピルエーテル20mlを加え、−30℃に47日間放置した。析出した結晶を濾別し、得られた再結晶母液を減圧下に溶媒を留去してR(−)−[2−{4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル}エチル]ジメチルスルホニウム p−トルエンスルホネート(化合物1)油状物0.1770g(回収率3.8%、光学純度98.2%ee(−過剰))を得た。尚、参考として、実験例3の1回目、2回目で得られた油状物の液体クロマトグラムを図1及び図2に示した。
図1は1回目再結晶母液から得た油状物の液体クロマトグラム図であって、これからもトシル酸スプラタストの+体が高い光学純度で光学分割されていることが観測された。一方、図2は2回目の再結晶母液から得られた油状物の液体クロマトグラムであって、これからもトシル酸スプラタストの−体が高い光学純度で光学分割されていることが観測された。
【0042】
[実験例8]
光学純度8.2%eeの(−)−トシル酸スプラタスト20.00gにエタノ−ル40mlを加えて70℃に加温して溶解し、5℃に8日間、−30℃に7日間放置した。析出した結晶を濾別し、得られた再結晶母液を減圧下に溶媒を留去して油状物3.27g(回収率30.3%,光学純度98.6%ee(−過剰))を得た。得られた油状物に10mlのアセトンを混入した後、5mlのジイソプロピルエーテルを加え、(−)−トシル酸スプラタスト1〜2mgを接種し、−30℃に3日間放置した後、析出した結晶を濾取し、室温で減圧下2日間乾燥して、(−)−トシル酸スプラタスト2.81g(油状物からの回収率86.0%、光学純度98.4%ee)を得た。
1回目の再結晶により得られた結晶(光学純度6.0%eeの(+)−トシル酸スプラタスト)にエタノール40mlを加えて70℃に加温して溶解し、5℃に4日間、−30℃に2日間放置した。析出した結晶を濾別し、得られた再結晶母液を減圧下に溶媒を留去して油状物2.02g(回収率22.0%、光学純度97.3%ee(+過剰))を得た。得られた油状物に10mlのアセトンを混和した後、5mlのジイソプロピルエーテルを加え、(+)−トシル酸スプラタスト1〜2mgを接種し、−30℃に5日間放置した後、析出した結晶を濾取し、室温で減圧下2日間乾燥して、(+)−トシル酸スプラタスト1.77g(油状物からの回収率87.6%、光学純度95.7%ee(+過剰))を得た。
2回目の再結晶により得られた結晶(光学純度6.0%eeの(−)−トシル酸スプラタスト)にエタノール40mlを加えて70℃に加温して溶解し、5℃に10日間、−30℃に6日間放置した。析出した結晶を濾別し、得られた再結晶母液を減圧下に溶媒を留去することにより得られた油状物に10mlのアセトンを混入した後、5mlのジイソプロピルエーテルを加え、(−)−トシル酸スプラタスト1〜2mgを接種し、−30℃に3日間放置した後、析出した結晶を濾取し、常温で減圧下、2日間乾燥して(−)−トシル酸スプラタスト1.64g(回収率15.0%、光学純度97.5%ee)を得た。
3回目の再結晶により得られた結晶(光学純度5.7%eeの(+)−トシル酸スプラタスト)にエタノール40mlを加えて70℃に加温して溶解し、−15℃に19日間、−30℃に2日間放置した。析出した結晶を濾別し、得られた再結晶母液を減圧下に溶媒を留去することにより得られた油状物に10mlのアセトンを混和した後、5mlのジイソプロピルエーテルを加え、(+)−トシル酸スプラタスト1〜2mgを接種し、−30℃に5日間放置した後、析出した結晶を濾取し、室温で減圧下、2日間乾燥して(+)−トシル酸スプラタスト1.19g(回収率12.8%、光学純度97.2%ee)を得た。
【0043】
[実験例9]
光学純度61.7%eeの(+)−トシル酸スプラタスト10.00gに、アセトン10mlを加えて加温して溶解し、(±)−トシル酸スプラタスト10〜20mgを接種した後、室温に14日間、5℃に10日間、−15℃に10日間放置した後、析出した結晶を濾別し、得られた再結晶母液を減圧下に溶媒を留去して油状物5.89g(回収率72.8%,光学純度98.2%ee(+過剰))を得た。
【0044】
[実験例10]
特公平3−70698号公報に記載される方法に準じて製造したトシル酸スプラタストのラセミ体1.0gにイソプロパノール4mlを加えて70℃に加温して溶解した溶液を作成し、サンプルNo.1とし、25℃に7日間、15℃に7日間、5℃に7日間、−5℃に7日間放置し、それぞれの溶液の光学純度をHPLC法(CHIRALCEL OD[4.8×250mm ダイセル化学]溶離溶液 n−ヘキサン・エタノール・ジクロルメタン・トリフルオロ酢酸・ジエチルアミン=800:200:100:5:1)にて測定したところ、それぞれ−21.2、−55.9、−88.5,−94.3%eeであった。
次に、析出した結晶を濾別し、これにさらにイソプロパノール4mlを加えて70℃に加温して溶解した溶液を作成し、25℃に7日間、15℃に7日間、5℃に7日間、−5℃に7日間放置し、それぞれの溶液の光学純度を前回と同様に測定したところ、それぞれ+65.5、+89.1、+99.3、+100.0%eeであった。
さらに、もう一回、同様の操作を繰返し、光学純度を測定したところ、それぞれ−70.4、−90.7、−97.9、−98.0%eeであった。以下、同様の方法によりNo.2、No.3を作成し、光学純度を測定した。その結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
Figure 0003563480
表2の結果から、トシル酸スプラタストのラセミ体から、再結晶法により光学活性な(+)または(−)のトシル酸スプラタストを光学分割できたことが明らかであり、その光学純度は、保存温度が低いほど、再結晶回数が多いほど高くなっていることが認められる。
【0046】
[実験例11]
前記化学式[VII]で示されるベンゼンスルホン酸スプラタストの各光学活性体およびラセミ体について、その融点、融解エンタルピー、イソプロパノールに対する溶解度を測定し、その結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
Figure 0003563480
(±)−ベンゼンスルホン酸スプラタストの0.50gにイソプロパノール2mlを加えて70℃に加温して懸濁し、25℃に10日間、15℃に10日間、5℃に7日間、−5℃に22日間放置した後、析出した結晶を濾別し、光学純度66.7%ee(+過剰)の再結晶母液を得た。
【0048】
次ぎに、本発明化合物の再結晶法による分離が本発明のスルホニウム化合物にのみ適用されることを本発明化合物の合成原料である一般式[III]で表される化合物を用いて検討した。
【0049】
[比較例1]
比較例として、トシル酸スプラタストの合成原料である化学式[III]で示される4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)アニリン
【化12】
Figure 0003563480
のラセミ化合物及び各光学活性体について(予め液体クロマトグラフ法等により光学分割したもの)、その融点、融解エンタルピー、イソプロパノールに対する溶解度を測定した結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
Figure 0003563480
そして、ラセミ化合物である(±)−4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)アニリンの0.5gにエタノール2mlを加えて、50℃に加温して溶解した後、5℃にて保存し、経時的に光学純度を測定したところ、1日後は0.5%(−過剰)、2日後は0.6%(+過剰)、3日後は0.0%であり、溶液が光学活性を呈する現象は全く観測されなかった。
【0051】
[薬理試験]皮膚透過性試験
実験例8で得られたトシル酸スプラタストの光学活性体(化合物1及び2)の各々100mgを乳鉢中で粉砕したものに、ワセリン1.9gを加えてよく混合してそれぞれ軟膏剤とし、この軟膏剤400mgをヘアレスラットの腹部皮膚に塗布(塗布面積:5.31cm)して縦型セルに固定し、水13mlを透過液として透過実験を行い、その経時的な透過量を液体クロマトグラフ法により測定した。その結果を図に示す。化合物1及び2はラセミ体と比較して優れた皮膚透過性を示した。
【0052】
[薬理試験]同種受身アナフィラキシー(PCA)に及ぼす影響
J.Immunology 106,1002(1971)に記載された方法に従い、本発明化合物の同種受身アナフィラキシー(PCA)に及ぼす影響について検討した。化合物1及び化合物2のPCA抑制率は、それぞれ60%、58.5%であった。
【0053】
[急性毒性]
ddY系雄性マウス(体重20g)を使用してアップダウン法により算出した化合物1及び化合物2のLD50はそれぞれ280、267mg/kgであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例7における1回目再結晶母液から得た油状物の要部の液体クロマトグラムである。
【図2】実験例7における2回目再結晶母液から得た油状物の要部の液体クロマトグラムである。
【図3】皮膚透過性の薬理試験結果を示すグラフ図である。

Claims (5)

  1. 一般式[I]
    Figure 0003563480
    (式中、Yは無機酸残基または有機酸残基を示す)で表される化合物のラセミ体のスルホニウム化合物から光学活性体を光学分割するにあたり、前記化合物を過飽和になるまで溶媒に溶解した後、該溶解したものを無添加または種晶としてラセミ体を接種して結晶を析出させ、しかる後、該析出した結晶を除去した残液から光学活性体を得るものであることを特徴とする光学活性体の製造方法
  2. 請求項1において、溶媒はアルコール類であることを特徴とする光学活性体の製造方法。
  3. 一般式[I]
    Figure 0003563480
    (式中、Yは無機酸残基または有機酸残基を示す)で表される化合物のラセミ体のスルホニウム化合物を光学分割して光学活性体を得るにあたり、前記化合物を過飽和になるまで溶媒に溶解した後、該溶解したものを無添加または種晶としてラセミ体を接種して結晶を析出させ、しかる後、該析出した結晶を除去した残液から得た光学活性体であることを特徴とする光学活性なスルホニウム化合物。
  4. 請求項3において、Yが有機酸残基であることを特徴とする光学活性なスルホニウム化合物。
  5. 請求項3において、Yが置換されていてもよいアリールスルホン酸残基であることを特徴とする光学活性なスルホニウム化合物。
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