JP3556445B2 - アルミニウム合金板材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金板材の製造方法に関し、さらに詳しくは、押出方向を途中で内角180°未満の側方に変化させる側方押出により、アルミニウム合金を板状に加工すると共に、組織の平均結晶粒径を5μm以下に微細化して高強度化、高靭性化したアルミニウム合金板材を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属又は合金からなる金属材料は、変形を加えることによって、即ち加工硬化によって材料の強度が上昇することが知られており、この技術は所謂鍛錬効果として強度改善の目的で多くの金属材料に広く実用に供されている。これは、加工(変形)によって、材料中に種々の欠陥(点欠陥、転位、積層欠陥等)が蓄積し、転位その他の欠陥の間の相互作用の結果、新しい欠陥の導入又は欠陥の移動が困難となるため、外部の力に対して抵抗を持ち、その結果、材料が強化されると説明される。
しかし、鍛錬は、一般に圧延、鍛造など素材断面積を減少させる加工方法で行われるため、実用化に対して材料の大きさに制限を受けるという欠点がある。
【0003】
ところで、一般に板材を作製するプロセスとしては圧延加工が採用されており、鉄鋼材料の場合、全生産プロセスの97〜98%にも達している。すなわち、圧延は量的に見て板材の代表的な生産方式である。塑性加工の持つ特徴の一つである材質改善も、圧延においては積極的に行われている。特に板圧延においては、高機能板材の製造を目的として圧延工程が導入されることが多い。
特にアルミニウム合金の圧延の場合、材質特性も、自動車等への適用が進むにつれてより重要な課題となり、圧延中の温度を狭い範囲で管理することが要求されるようになった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧延加工の場合には、板幅を拡げ難いという問題がある。また、薄い板材を作製する場合、圧延加工では強度を出すことが難しく、仮に強度を出せたとしても、加工する段階での温度設定が非常に難しい。
また、圧延加工により高い強度の板材が得られたとしても、主に加工硬化による強化のため、組織の結晶粒の微細化が難しく、結果的に延性及び靭性を劣化させることになる。延性や靭性の欠如は、材料の2次加工及び構造材料への適用に大きな障害となる。
【0005】
このような欠点を解消するため実用に供されているのが、加工熱処理(TMT:Thermo−Mechanical Treatment)である。この方法は、熱間加工と同時に進行する加工組織の回復又は再結晶現象を制御し、あるいは冷間加工後の熱処理で回復又は再結晶現象を制御することにより、結晶粒の微細化及び組織調整をして延性(靭性)を確保する方法として、鉄・非鉄など多くの合金に応用されている。
アルミニウム合金材料においては、この延性(靭性)を与えるために加工熱処理(TMT)を行い、若干の軟化を許容し靭性を確保するのが普通である(あるいは、強度を確保する必要がある場合には、靭性の低下を許容するのが通常である)。この処理は、適当な強度と靭性を得るためには有用な方法であるが、厳密な制御が必要であり、またそのための工程が複雑になる。しかも、加工によって材料の断面積が減少することは避けられない。
【0006】
従って、本発明の目的は、圧延加工では困難な幅広い板材を作製でき、しかも1回の押出工程で生産性良く低コスト、短時間にアルミニウム合金板材を製造できる方法を提供することにある。
さらに本発明の目的は、圧延加工のように加工硬化だけにより材料の強度を向上させるのではなく、結晶粒が微細化された組織とすることによって強度を向上させ、延性及び靭性の高い板材を得ることができるアルミニウム合金板材の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、押出工程後にさらに温間又は冷間加工を加えて材料をさらに薄肉化、高強度化できるアルミニウム合金板材の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、アルミニウム合金に、その押出方向を途中で内角180°未満の側方に変化させて剪断変形を加えると共に板状に加工し、その際に、成形される板材の幅よりも長く押出される側方押出方向が1方向又は2方向であることを特徴とするアルミニウム合金板材の製造方法が提供される。あるいは、アルミニウム合金に、その押出方向を途中で内角90°以下の側方に変化させ、その押出過程で200%以上の相当伸びに相当する歪量の大きな剪断変形を加えると共に板状に加工し、ミクロ組織の平均結晶粒径を5μm以下に微細化することによって高強度、高靭性材料を製造する。このような方法により、例えば柱状のアルミニウム合金を幅の広い板材に押出加工することが可能となる。
好適な態様においては、上記押出工程は300℃以下、好ましくは使用するアルミニウム合金の再結晶温度以下の温度で行う。
本発明の他の態様によれば、上記押出工程の後にさらに温間又は冷間圧延加工を行い、さらに材料を薄肉化すると共に高強度化する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のアルミニウム合金板材の製造方法は、側方押出法の原理を採用するものではあるが、側方押出でアルミニウム合金に剪断変形を加えると同時に板状に加工するものである。
ヴイ.エム.シーガル(V.M.Segal)らによって提案された側方押出法(ECAE法:equal−channel−angular extrusion )は、同一断面積を持ち、途中で180°未満の適当な角度で折曲された押出通路を通して材料を押出することによって、材料に側方方向の剪断変形を加える方法であり、この過程で組織の結晶粒が微細化され、材料の強度が向上する。
側方押出法で材料に加えられる剪断変形量は、押出通路の折曲角によって異なる。一般に、この様な剪断変形による押出1回当たりの歪量Δεi は、折曲角が直角(90°)の場合、1回の側方押出で歪量は1.15(相当伸び:220%)、120°の場合、歪量は0.67(相当伸び:95%)で与えられる。従って、断面積を同一のまま直角に側方押出することによって、圧延による圧下率(断面減少率)69%に相当する加工を加えることができる。このようなプロセスを繰り返すことによって、材料中に無限に歪を加えることができ、その繰り返しによって材料に与えられる積算歪量εt は、繰り返し回数をNとすると、εt =Δεi ×Nで与えられる。この繰り返し回数(N)は、理論的には多いほど良いが、実際には合金によってある回数でその効果に飽和状態が見られる。
【0009】
上記のように、材料に側方方向の剪断変形を加えることにより歪を加えることはできるが、押出通路の断面積が変化したときの物性変化については従来充分には知られていない。また、側方押出法は元来、成形方法ではないため、例えば板状に加工しようとする場合、側方押出法によって得られた材料(棒材)に、さらに温間又は冷間圧延加工を施すことが必要となる。
ところが、本発明者らの研究によると、アルミニウム合金の場合、側方押出で剪断変形を加えると同時に板状に加工でき、しかも押出通路の断面積が変化したときでも側方押出法の効果・利点をそのまま保持できることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
以下、本発明のアルミニウム合金板材の製造方法について添付図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1乃至図3は本発明の方法に用いる金型の一例を示している。金型1は、図1及び図2に示すように、内部に垂直方向の円柱状の空洞5を形成した上型2と、上記空洞5の下に位置し、その直径よりも幅広の板形状で、一端が側方に開口されたキャビティ(成形部)6を設けた下型3とから構成されている。
まず、上型2の空洞5内に円柱状のアルミニウム合金からなるビレット10を挿入し、次にラム4によって下型3に向けて押出することによって、図3に示すように、材料に側方方向の剪断変形を加えながら下型3のキャビティ6内に押し出し、板状に加工するものである。
上記のような押出加工法をアルミニウム合金に適用することにより、非常に簡単な工程、つまり1回の押出で幅広い板材の作製が可能である。また、上記方法によれば、結晶粒が5μm以下に微細化され、しかも従来の加工硬化による強度を上回る強化ができると同時に、靭性を大きく改善できる。しかも、そのプロセスは、鋳造材のマクロ、ミクロ的な偏析の均質化にも効果を持っており、アルミニウム合金では一般に行われている高温、長時間の均質化熱処理を省略することもできる。
【0011】
本発明の側方押出による板材の押出加工は、できるだけ低温で行うことが望ましい。しかしながら、アルミニウム合金の変形抵抗は低温になるほど高く、変形能は低温ほど小さくなる傾向がある。押出用工具の強度の関係及び健全な押出材を得るために、通常は用いる合金によって異なる適切な温度で行われる。一般的には、約300℃以下、好ましくは使用するアルミニウム合金の再結晶温度以下、さらに好ましくは回復温度以下で行われる。しかし、この再結晶温度、回復温度は、材料に加えられる加工度によって変化する。押出温度が300℃を超えると結晶粒が成長、粗大化してしまい、側方押出の本来の目的である組織の結晶粒の微細化が達成されなくなる。同様な理由から、材料中により多くの歪を加え、結晶粒を微細化するためには、使用するアルミニウム合金の再結晶温度以下の温度で側方押出を行うことが望ましい。
【0012】
代表的なアルミニウム合金の押出温度について述べると、90°側方押出の時、Al−Mg系のA5056合金では室温〜250℃、展伸用アルミニウム合金の代表であるAl−Mg−Si系のA6063合金では室温〜200℃、Al−Zn−Mg−Cu系のA7075合金では50〜200℃等が代表的な温度である。この押出温度は、押出角度(押出方向の側方曲げ角度)によっても異なり、角度が大きくなるほど低温で押出可能となる。これは、押出力(剪断変形に要するエネルギー)が小さくなることと、材料の変形能による制約が緩くなるからである。
但し、押出温度が低くなる程、押出に要する面圧が大きくなり、また材料に単に歪を蓄積させるだけでなく回復させることが要求されるため、押出温度は約100℃以上とすることが望ましい。
【0013】
側方押出により板状に加工された材料の組織を光学顕微鏡及び透過型電子顕微鏡で観察すると、加工前は200〜500μm以上の結晶粒が、1回の押出で1μm程度まで微細化(転位セル構造、亜結晶、再結晶組織を含む)されているのが分かる。金属材料を加工すると、その塑性変形のエネルギーは、大部分は熱に変化するが、その一部は点欠陥、転位、積層欠陥あるいは内部応力として材料中に蓄積される。これらの格子欠陥の蓄積が硬化(強化)の原因となる。
【0014】
前記図1乃至図3に示す金型1を用いた場合、上型2の空洞5内に挿入された円柱状ビレット10は、ラム4で押し出されたときにその先端部が一旦その円周全方向の側方に剪断変形して拡がり、その後、図面上、右側方に押し出されるが、一方向の側方に幅広に拡大しながら押し出すようにすることもできる。
そのような側方押出加工に用いられる金型の例を図4及び図5に示す。この金型1aにおいては、下型3aのキャビティ6aの閉鎖端部と上型2aの空洞5aの一側面が同一面となるように構成されている。
【0015】
一方、図6及び図7は、二方向の側方押出に用いられる金型の例を示している。この金型1bの場合、上型2bの空洞5bの下に位置する下型3bのキャビティ6bは、空洞5bの直径よりも大きな幅を有し、かつ両端部が金型1の両側部で開口している。従って、この金型1bを用いた場合、ラム4により下方に押し出されたビレット(図示せず)は、一旦全周方向に拡大した後、両側方向に側方押出される。なお、上型2bの空洞5bの直径と下型3bのキャビティ6bの幅は同一でもよい。
【0016】
図8の(A)〜(D)は、前記したような金型を用いて側方押出加工された板材の成形例を示している。
図8の(A)の板材20は図1乃至図3に示す金型1を用いた場合、(B)の板材20aは図4及び図5に示す金型1aを用いた場合、(C)の板材20bは図6及び図7に示す金型1bを用いた場合にそれぞれ対応している。一方、図8(D)の板材20cは、図6及び図7に示す金型1bにおいて上型2bの空洞5bの直径と下型3bのキャビティ6bの幅が同一の場合に得られる成形例を示している。なお、板材の幅及び厚さは、下型のキャビティの幅及び深さを変えることにより任意に変えることができる。
【0017】
前記図1乃至図7に示す金型1,1a,1bにおいては、下型3,3a,3bのキャビティ6,6a,6bの断面積は側方押出方向に一定であり、また押出方向の側方曲げ角度(空洞とキャビティの接合角度)θは90°であるが、側方押出方向にキャビティ断面積を変化させ、あるいは側方曲げ角度を180°未満の任意の角度に設定することもできる。そのような金型の例を図9及び図10に示す。
【0018】
図9に示す金型1cは、側方押出方向にキャビティ断面積を変化させた例を示している。この金型1cの場合、下型3cのキャビティ6cは、側方押出方向に幅は一定であるが、開口されている端部のキャビティ部分7の深さは、上型2cの空洞5cの下に位置する部分の深さよりも浅く、開口端部近傍で断面積が減少している。
このように板成形部(キャビティ)の断面積を側方押出方向に沿って小さくすることにより、押出比が上がり、それにより多くの歪を蓄積することができる。すなわち、板成形部の断面積を押出方向に変化させることにより、材料に蓄積される歪量を調節することができる。
一方、図10に示す金型1dは、側方曲げ角度θが90°未満の例を示しており、上型2d(及び空洞5d)と下型3d(及びキャビティ6d)の接合面が斜めになっている。
【0019】
上記のような側方押出加工により、約0.3〜9重量%のMgを含むアルミニウム合金の場合、結晶粒又は亜結晶粒の平均粒径が約0.05〜5μmの範囲にあり、約1×10−4〜2×103 s−1の歪速度領域において強度の歪速度依存性を抑制した強靭性アルミニウム合金板材が得られる。例えば、素材合金がMg:4.5〜5.6重量%、Mn:0.05〜0.20重量%、Cr:0.05〜0.20重量%、その他不純物合計1重量%未満、及び残部Alからなる組成を有するA5056合金の場合、結晶粒又は亜結晶粒の平均粒径が約0.25〜5μmの範囲にあり、引張強度250MPa以上、伸び15%以上の機械的性質を有する強靭性アルミニウム合金板材が得られる。得られたアルミニウム合金板材は、結晶粒界が伸長された繊維状、又は等軸状の組織を持ち、さらにその結晶粒の内部が約0.25〜5μmの亜結晶で構成されている。
【0020】
また、素材合金がMg:0.8〜1.2重量%、Si:0.4〜0.8重量%、Fe:0.7重量%、Cu:0.15〜0.4重量%、Mn:0.15重量%、その他不純物合計1重量%未満、及び残部Alからなる組成を有するA6061合金の場合、結晶粒又は亜結晶粒の平均粒径が約0.5〜5μmの範囲にあり、引張強度300MPa以上、伸び10%以上の機械的性質を有する強靭性アルミニウム合金板材が得られる。得られたアルミニウム合金板材は、結晶粒界が伸長された繊維状、又は等軸状の組織を持ち、さらにその結晶粒の内部が約0.5〜5μmの亜結晶で構成されている。
【0021】
上述のような5μm以下(好ましくは1μm以下)の微細な結晶粒(又は亜結晶粒)からなる組織が本発明の側方押出加工法で得られるアルミニウム合金板材の特徴であるが、この組織が材料の機械的性質に特徴を与える。一般に材料の強化法には、加工強化、固溶強化、析出強化、分散強化などがあるが、何れの場合も材料の強度化とともに伸び、絞り、シャルピー衝撃値などの材料のしなやかさの指標は低下し、当然、破壊靭性値も低下する。しなやかさを失わずに材料を強化する方法として、結晶の微細化がある。材料は結晶の微細化とともに強度が増し、これはホール・ペッチの法則として知られている。このように、本発明の前記側方押出加工法で得られる材料組織は非常に微細な結晶粒であり、しかも転位密度が高くないことから、高い強度を有するとともに、伸び、絞り、シャルピー衝撃値も高く、2次加工性にも優れている。
【0022】
前記したような側方押出加工により、アルミニウム合金に伸び200%以上に相当する歪量の塑性変形を与え、5μm以下の結晶粒径に微細化された組織にすると、歪速度約10−5〜100 s−1の成形加工条件で約150%以上の伸びを示すようになる。また、この材料に上記条件で成形加工を施すと、粒界すべりによる変形と粒内(塑性)変形とにより材料が変形し、すなわち超塑性的な変形を生ずる。
そこで本発明の他の態様では、前記のように側方押出加工を経た材料に対して、好ましくは超塑性加工が可能な領域(材料の機械的性質を低下させずに延性を付与するための条件)で、温間又は冷間圧延加工を行うものである。
【0023】
上記温間又は冷間圧延加工は約25〜300℃の温度で行うことが望ましい。圧延加工の際、温度が300℃を超えると、結晶粒が成長、粗大化し、その結果、強度が低下するので好ましくない。なお、この圧延工程では、前記側方押出加工で微細化された組織を維持できればよいので、特定の圧下率に限定されない。また、室温近傍で圧延した場合、加工硬化し、結晶粒内に歪が多く残留してしまう。この状態では、伸びや靭性が低下するので、熱処理によって残留歪を除去することが望ましい。但し、熱処理温度が300℃を超えると結晶粒が成長、粗大化し、その結果、強度が低下するので好ましくない。従って、熱処理条件としては、温度約100〜300℃、処理時間約0.5〜3hrに設定するか、あるいはより高温(約150〜400℃)の温度で短時間(約1〜30秒間)少なくとも1回(必要により数回)の熱処理(フラッシュアニーリング)が適当である。
【0024】
前記した側方押出加工及び圧延加工を施したアルミニウム合金板材は、優れた機械的性質を示す。
例えば、Mg:4.5〜5.6重量%、Mn:0.05〜0.20重量%、Cr:0.05〜0.20重量%、その他不純物合計1重量%未満、及び残部Alからなる組成を有し、結晶粒又は亜結晶粒の平均粒径が約0.25〜5μmの範囲の側方押出板材に圧下率75%以上の温間又は冷間圧延加工を加えると、引張強度350MPa以上、伸び10%以上の機械的性質を有する強靭性アルミニウム合金板材が得られる。また、Mg:0.8〜1.2重量%、Si:0.40〜0.8重量%、Fe:0.7重量%、Cu:0.15〜0.4重量%、Mn:0.15重量%、その他不純物合計1重量%未満、及び残部Alからなる組成を有し、結晶粒又は亜結晶粒の平均粒径が約0.5〜5μmの範囲の側方押出板材に圧下率75%以上の温間又は冷間圧延加工を加えると、引張強度400MPa以上、伸び5%以上の機械的性質を有する強靭性アルミニウム合金板材が得られる。
【0025】
本発明の方法により得られるアルミニウム合金板材は、建築用材料や、車両、船舶、航空機等の構造用材料などとして、全ゆる分野に用いることができる。
また、本発明の方法により得られるアルミニウム合金板材は、高速飛翔体に対する耐貫徹性に優れているため、耐衝撃性、防弾性に優れた軽量のアルミニウム防弾材として単独で、又は他の金属、セラミック繊維材料、合成樹脂材料等の板材、複合構造材等と組み合わせて用いることができる。例えば、自動車のボディー、バンパーやドアビーム、安全靴やヘルメット、飛行機やヘリコプターのボディー、戦車や装甲車やミサイルのボディー、防弾ドア、防弾窓(サッシ)、防弾チョッキや防弾ヘルメット、スポーツ用品等の種々の保護材や防弾材として適用できる。
【0026】
本発明の方法は、全ゆるアルミニウム合金に適用でき、その代表的なものとしては、例えばJIS A5056、A5083、A6061、A6063、A7039、7N01合金等が挙げられる。代表例として、JISに規定されるA6061合金及びA5056合金の組成範囲を表1に示す。また、本発明の方法は、室温又は加熱領域で均質化熱処理、熱間押出等の中間加工又はその他の方法で製造されたアルミニウム合金だけでなく、鋳造後のアルミニウム合金にも適用できる。また、予め側方押出を1回又は複数回行って得られるアルミニウム合金棒材に対して本発明の側方押出加工法を適用することもできる。
【表1】
【0027】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。
【0028】
実施例1
適用合金として表1に示す組成範囲内のA5056合金を選び、熱間押出によって直径50mmの丸棒とし、得られた丸棒を425℃で16時間熱処理後、水中で急冷し供給材とした。供給材は図1に示すような連結した二つ割金型の上型に挿入し、200℃で90°側方押出加工を行い、厚さ10mm、幅100mm(押出比2)の板材を得た。作製した板材はクラックが生じておらず、厚さにおいてもほぼ均一(t=10mm)であった。
【0029】
金型温度200℃、押出比:r=2(試料厚さ:t=10mm)で作製した板材の側方押出加工後の材料組織の光学顕微鏡写真(倍率:200倍)を図11に示す。図11に示されるように、加工されたファイバー状(繊維状)の組織になっている。ただ、押出後の光学顕微鏡写真からだけでは粒径測定は困難である。この側方押出加工後の材料の透過電子顕微鏡(TEM)像(倍率:1.75万倍)を図12に示す。図12に示されるように、側方押出加工後には結晶粒は1μmまで微細化していることが分かる。
【0030】
側方押出加工前後のアルミニウム合金板材の機械的性質の測定結果を表2に示す。
【表2】
表2に示されるように、試験歪速度1.7×10−3/sの時、A5056溶体化処理材で0.2%耐力が100MPa、引張強さが260MPaであるのに対し、側方押出加工により得られた板材は0.2%耐力が230MPa、引張強さが320MPa以上であり、何れも溶体化処理材の25%以上の改善が見られた。
【0031】
また、90°側方押出加工により作製した厚さ10mmの側方押出板材は、温間圧延だけでなく、冷間圧延においても85%まで容易に圧延できた。ここまで強化された材料がさらに強い加工を受けて成形できることは、微細でしかも転位の少ない組織に負うところが大きい。しかもこの圧延材は引張強度400MPa以上を示し、さらに強化されたことが分かる。
以上のように、従来の加工法(圧延加工)では得られない高いレベルで強度と靭性のバランスが取れ、しかも2次加工性に優れた材料を作製できた。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法によれば、アルミニウム合金を比較的低い温度(200℃以下)で側方押出加工することによって、通常考えられる加工法では難しい幅広い板材に加工できる。それだけではなく、5μm以下の結晶粒径を持つ組織とし、強度、靭性ともに従来のアルミニウム合金材料の値を改善し、高いレベルでバランスの取れたアルミニウム合金材料を提供することができる。また、本発明により得られるアルミニウム合金材料は、強度、靭性、加工性などに優れている。しかも、従来の板材作製(圧延加工)のように厳密な制御と多くの時間を費やす工程が不要となるため、前記のような優れた機械的特性を有するアルミニウム合金板材を低コスト、短時間で製造できる。さらに本発明のプロセスは、鋳造材のマクロ、ミクロ的な偏析の均質化にも効果を持っており、アルミニウム合金に一般的に行われている高温・長時間の均質化熱処理を省くことができ、この点においてコスト的にも極めて有利である。また、本発明の方法によれば、側方押出加工後に温間又は冷間圧延加工を加えてアルミニウム合金材料をさらに薄肉化、高強度化することもできる。従って、本発明の方法は、あらゆる部材の軽量高強度化に貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の側方押出加工に用いる金型装置の一実施例を示す概略縦断側面図である。
【図2】図1に示す金型装置の平面図である。
【図3】側方押出加工の状態を示す図1に示す金型装置の概略縦断側面図である。
【図4】本発明の側方押出加工に用いる金型の他の実施例を示す概略断面図である。
【図5】図4に示す金型の平面図である。
【図6】本発明の側方押出加工に用いる金型のさらに他の実施例を示す概略断面図である。
【図7】図6に示す金型の平面図である。
【図8】本発明の方法により作製された板材の成形例を示す斜視図である。
【図9】本発明の側方押出加工に用いる金型の別の実施例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の側方押出加工に用いる金型のさらに別の実施例を示す概略断面図である。
【図11】本発明に従って側方押出加工した後のアルミニウム合金A5056板材の組織の光学顕微鏡写真(倍率:200倍)である。
【図12】本発明に従って側方押出加工した後のアルミニウム合金A5056板材の組織の透過電子顕微鏡写真(倍率:1.75万倍)である。
【符号の説明】
1,1a,1b,1c,1d 金型
2,2a,2b,2c,2d 上型
3,3a,3b,3c,3d 下型
4 ラム
5,5a,5b,5c,5d 空洞
6,6a,6b,6c,6d キャビティ
10 ビレット
Claims (9)
- アルミニウム合金に、その押出方向を途中で内角180°未満の側方に変化させて剪断変形を加えると共に板状に加工し、その際に、成形される板材の幅よりも長く押出される側方押出方向が1方向又は2方向であることを特徴とするアルミニウム合金板材の製造方法。
- アルミニウム合金に、その押出方向を途中で内角90°以下の側方に変化させ、その押出過程で200%以上の相当伸びに相当する歪量の大きな剪断変形を加えると共に板状に加工し、その際に、成形される板材の幅よりも長く押出される側方押出方向が1方向又は2方向であることを特徴とするアルミニウム合金板材の製造方法。
- 柱状のアルミニウム合金を幅の広い板材に押出加工する請求項1又は2に記載の方法。
- 押出過程の途中において、押し出されている板材の断面積を変化させる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
- 1回の押出により200%以上の相当伸びに相当する歪量の剪断変形を加える請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
- 押出工程を300℃以下の温度で行う請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
- 押出工程を、使用するアルミニウム合金の再結晶温度以下の温度で行う請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
- 押出工程の後にさらに温間又は冷間圧延加工を行い、さらに材料を薄肉化すると共に高強度化する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
- 成形されるアルミニウム合金板材が保護材又は防弾材である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
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