JP3553391B2 - コーティング部材の劣化検出方法及び装置 - Google Patents

コーティング部材の劣化検出方法及び装置 Download PDF

Info

Publication number
JP3553391B2
JP3553391B2 JP30711198A JP30711198A JP3553391B2 JP 3553391 B2 JP3553391 B2 JP 3553391B2 JP 30711198 A JP30711198 A JP 30711198A JP 30711198 A JP30711198 A JP 30711198A JP 3553391 B2 JP3553391 B2 JP 3553391B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating
detecting
deterioration
impedance
frequency
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP30711198A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000131256A (ja
Inventor
哲雄 庄子
実 佐藤
英雄 橋本
保夫 荒木
孝二 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tohoku Electric Power Co Inc
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Tohoku Electric Power Co Inc
Mitsubishi Heavy Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tohoku Electric Power Co Inc, Mitsubishi Heavy Industries Ltd filed Critical Tohoku Electric Power Co Inc
Priority to JP30711198A priority Critical patent/JP3553391B2/ja
Publication of JP2000131256A publication Critical patent/JP2000131256A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3553391B2 publication Critical patent/JP3553391B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Measurement Of Length, Angles, Or The Like Using Electric Or Magnetic Means (AREA)
  • Investigating Or Analyzing Materials By The Use Of Electric Means (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属の耐久性を向上するためにコーティングが施工されたコーティング部材の劣化検出方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
機器を構成する金属を高温雰囲気等から守るためにコーティングが施工されているコーティング部材における劣化発生のメカニズムについて、図6により説明する。
【0003】
図6において、81は機器を構成する金属(ここでは母材と呼ぶ)、82は直接高温雰囲気等に接触するトップコーティング、83は金属81とトップコーティング82の接着性を高めるためにその間に設けられたアンダーコーティング、84はアンダーコーティング83の中に発生したアンダーコーティング材の酸化物(ここでは酸化物と呼ぶ)である。
【0004】
トップコーティング82は、母材81が高温にさらされることからこれを保護するために設けられ、一般的に金属よりも熱伝導率の低いセラミックが材料として使用され、セラミックの粉末が各種の工法で吹き付けられて、コーティング膜を生成したものである。このトップコーティング82については、母材81への接着性を高めるために、近年、母材81との間に金属のアンダーコーティング83が設けられている。
【0005】
通常の状態では、トップコーティング82は、アンダーコーティング83に良好に接着し、アンダーコーティング83は、母材81と良好に接着して、母材81が高温にさらされるのを防ぐ。このトップコーティング82とアンダーコーティング83の併用は、母材81の耐久性を向上する目的で各種工業分野にて適用されている。
【0006】
トップコーティング82及びアンダーコーティング83が施された母材81は機器を構成しており、この機器の稼働中にコーティング材の劣化が発生することがある。
【0007】
この劣化原因の一つは、図6に示した酸化物84の生成によるものである。前述のようにアンダーコーティング83の材質は金属であり、機器の稼働中(一般的に高温雰囲気中)に、コーティング中に存在する酸素もしくは周囲の雰囲気中から入ってきた酸素によって、アンダーコーティング材である金属が酸化され、酸化物84が生成される。
【0008】
アンダーコーティング83の表面に酸化物84が発生した場合、トップコーティング82とアンダーコーティング83の間の接着性が低下し、酸化物84が生じた状態で更に稼働を続けると、トップコーティング82とアンダーコーティング83の間が剥がれ、更に、この状態で稼働を続けると、トップコーティング82に部分的な脱落が発生し、母材81に損傷が発生し、機器全体の運転に支障をきたすことがある。
【0009】
したがって、アンダーコーティング83の中に発生した酸化物84の存在の有無は、このような機器にとっては重要であり、機器の運転が停止されたとき等に酸化物84の有無を何らかの方法で調べることは、機器の寿命延長に大変有効である。
【0010】
また、もう一つの劣化原因としては、トップコーティング82の膜厚の減少が挙げられる。トップコーティング82は、機器の運転時には外部雰囲気等と接触しており、摩耗等によってその膜厚が減少することがある。このトップコーティング82の膜厚の減少は母材81に悪影響を与え、トップコーティング82の膜厚が減少した状態で機器の運転を続けた場合、母材81に損傷が発生し、機器全体に悪影響を与えることがある。
【0011】
したがって、トップコーティング82の膜厚は、このような機器にとって重要であり、機器の運転が停止されたとき等にトップコーティング82の膜厚を何らかの方法で調べることは、機器の寿命延長に大変有効である。
【0012】
上記各コーティング及び酸化物の電気的な特性について、以下に説明する。トップコーティングの材質はセラミックであり、セラミックは絶縁体であるため、この電気抵抗率ρは母材(金属)の電気抵抗率ρにくらべて1016倍程度大きく、金属の酸化物たとえば酸化アルミ(A1)の電気抵抗率ρはトップコーティングよりも更に10倍程度大きいことが観察されている。アンダーコーティング材の電気抵抗率ρは、アンダーコーティング材が金属であるため、母材とほぼ同一である。
【0013】
また、トップコーティング材及び酸化物のように電気抵抗率が極めて大きい物質では誘電率が重要な特性であり、トップコーティング材については、比誘電率εtが30であり、酸化物たとえば酸化アルミ(A1)については、比誘電率εoは10が観察されている。
【0014】
上記コーティング部材の劣化検出のための従来の装置としては、図7に示したもの(特開平6−273365の例)がある。図7において、1はコーティングを有する被検対象物、1cは図6中の82及び83と同様のコーティング、1mは図6中の81と同様の金属(母材)である。
【0015】
2は検出端である検出コイル、3は検出コイル2を内蔵するプローブ、4は検出コイル2を交流で励磁する励磁電源、5はブリッジ回路、6は検出された信号を処理するコンピュータ、7は検出された信号を増幅する受信用増幅器、8は増幅された信号をディジタルに変換するA/D変換器、9は検出された信号に関係する電圧を発生するD/A変換器である。
【0016】
上記装置においては、検出コイル2が励磁電源4よりブリッジ回路5を介して供給された低周波から高周波までの広い範囲の周波数の電流Iiにより励磁され、ブリッジ回路5が不平衡出力信号Ioを出力し、これを入力したコンピュータ6が不平衡補償信号Icをブリッジ回路5に印加しており、周波数の変化に対応した検出コイル2のインピーダンスの変動を測定することによって、コーティング部材の劣化を検出している。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
従来のコーティング部材の劣化検出装置は、前述のように、励磁電流の周波数の変化に対応した検出コイルのインピーダンスの変動を測定してコーティング部材の劣化を検出するもので、一種の渦電流探傷手法(電磁誘導法)が適用されたものであるが、次のような課題があった。以下にその詳細を説明する。
【0018】
前述のように、トップコーティング及び劣化によってアンダーコーティングに生じる酸化物は絶縁体であり、この電気抵抗率は母材(金属)の1016倍程度と大きい。
【0019】
渦電流探傷法の検出感度は、被検体の中に発生する渦電流の強度によって左右されるもので、被検体中に流れる渦電流の強度は、被検体の電気抵抗率が小さいほど、また比透磁率が大きいほど高くなる。
【0020】
しかしながら、磁性体金属以外の物質では、比透磁率は1(空気と同一)であり、劣化検出対象のトップコーティング及び酸化物は非磁性体のため、比透磁率については論じる必要がなく、被検体中に流れる渦電流の強度が左右される電気抵抗率についてのみ検討すればよい。
【0021】
トップコーティング及び酸化物の電気抵抗率は母材に比べて極めて大きいため、この中を流れる渦電流の強度は母材に流れる渦電流の強度の1016分の1程度しか流れず、酸化物では電気抵抗率が更に大きいため、この中を流れる渦電流の強度はさらに小さくなる。
【0022】
したがって、この渦電流探傷法では、トップコーティング及び酸化物に対する感度が極めて低くなり、検出コイルで検出される検出値には、トップコーティング及び酸化物に関する情報がほとんど含まれないことになる。
【0023】
このことは、この手法を用いた場合、コーティングが電気抵抗率の高いセラミック材等からなるものについては、コーティング部材の劣化に対する検出性が低くなることを示しており、精度のよい劣化状況の検出は困難であった。
本発明は上記の課題を解決しようとするものである。
【0024】
またさらに、上記のコーティング部材の劣化状況の検出を、被測定物が使用条件等に合わせた高温環境下に置かれた状態で測定する必要がある場合に対し、それを可能とすることを課題とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1の発明に係るコーティング部材の劣化検出方法は、一方の表面にコーティングが施工された被検体である母材の他方の表面と上記コーティングの表面とにそれぞれ電極を取り付け、この電極間に周波数を変化させながら電流を流して電極間の各周波数におけるインピーダンスを測定し、各周波数における測定値を実数成分の大きさと虚数成分の大きさにより複素平面に表示して測定値の半円形の軌跡を求め、この測定値の軌跡の大きさから劣化現象の一つである酸化物の生成を検出し、軌跡のゼロ点付近の傾斜角から劣化現象の一つであるコーティングの肉厚の減少を検出することを特徴としている。
【0026】
上記において、コーティング部材を形成する母材は金属であり、良導体であるのに対して、コーティングは極めて電流の流れにくい不良導体であるため、電極間のインピーダンスはコーティングのインピーダンスとほぼ等しく、また、このコーティングのインピーダンスは抵抗と静電容量が並列接続された等価回路と同等とすることができる。
【0027】
そのため、周波数を変化させながら電流を流すことにより測定された電極間の各周波数におけるインピーダンスの測定値を複素平面上に表示した場合、その軌跡は所定の大きさの半円形を描く。
【0028】
上記コーティングが劣化して酸化物を生成した場合、この等価回路は上記コーティングのみのときの等価回路に酸化物の抵抗と静電容量が並列接続された等価回路が直列接続されたものとなる。また、この酸化物はコーティングに比べて更に電流が流れにくくなり、その厚みが薄いため、電気抵抗率が大きく、比誘電率が小さい。
【0029】
そのため、酸化物を生成した場合のインピーダンスの測定値により複素平面上に描かれる半円形の軌跡は、コーティングのみの場合のものより大きく、この軌跡の大きさの比較により酸化物の生成を検出することができる。
【0030】
上記コーティングが減肉して肉厚が薄くなった場合は、コーティングのみの場合に比べて、静電容量が大きくなり、抵抗は小さくなるため、測定値の軌跡における周波数が高い部分(インピーダンスがゼロに近い部分)での傾斜角が小さくなる。
【0031】
そのため、この傾斜角をコーティングの厚さが正常なものと比較することにより、減肉の状況を検出することができる。
【0032】
(2)請求項2の発明に係るコーティング部材の劣化検出方法は、請求項1に記載のコーティング部材の劣化検出方法において、前記電極として白金等の耐高温材を用い、同電極を白金等を主成分とするペーストで前記母材の他方の表面と前記コーティングの表面とに取付けてインピーダンス測定装置との間を白金等の耐高温材をセラミックス材で覆ったケーブルで接続したことを特徴としている。
【0033】
本発明においては、前記(1)の発明の作用、効果に加えて、被測定物を高温環境下にに置いた状態でコーティング部材の劣化の状態を検出できるものである。
【0034】
(3)請求項3の発明に係るコーティング部材の劣化検出装置は、一方の表面にコーティングが施工された被検体である母材の他方の表面と上記コーティングの表面とにそれぞれ配設される電極、同それぞれの電極が接続されたインピーダンス測定装置、および同装置が測定した各周波数におるけ測定値を入力しそれぞれの測定値を実数成分の大きさと虚数成分の大きさにより複素平面に表示して測定値の半円形の軌跡を求めこの軌跡の大きさから酸化物の生成を、同軌跡のゼロ点付近の傾斜角からコーティングの肉厚の減少を検出する処理及び表示装置を備えたことを特徴としている。
【0035】
本発明においては、インピーダンス測定装置が周波数を変化させながら電流を電極間に供給し、電極間の各周波数におけるインピーダンスの実数成分と虚数成分で示された測定値を測定する。
【0036】
このインピーダンス測定装置により測定されたインピーダンスの測定値は処理及び表示装置に入力され、処理及び表示装置はそれぞれの測定値を実数成分の大きさと虚数成分の大きさにより複素平面上に表示し、この複素平面上における測定値の軌跡を求め、求められたそれぞれの軌跡の比較を行う。
【0037】
そのため、前記(1)の発明と同様、軌跡の大きさより酸化物の生成を検出し、軌跡のゼロ点付近の傾斜角よりコーティングの減肉の状況を検出することが可能となる。
【0038】
(4)請求項4の発明に係るコーティング部材の劣化検出装置は、請求項3に記載のコーティング部材の劣化検出装置において、前記電極が白金等の耐高温材であり、白金等を主成分とするペーストで前記母材の他方の表面と前記コーティングの表面とに取付けられインピーダンス測定装置との間を白金等の耐高温材をセラミックス材で覆ったケーブルで接続されたことを特徴としている。
【0039】
本発明においては、前記(3)の発明の作用、効果に加えて、被測定物を高温環境下に置いた状態でコーティング部材の劣化の状態を検出できるものである。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態に係るコーティング部材の劣化検出装置について、図1及び図2により説明する。なお、本実施形態は、図6に示したように金属(母材)81の表面にトップコーティング82とアンダーコーティング83が施されたコーティング部材の劣化検出に適用されるものである。
【0041】
図1に示す本実施形態に係る劣化検出装置は、その表面にトップコーティング82とアンダーコーティング83が施された母材81の裏面に配設された電極13、上記トップコーティング82の表面に配設された電極14、同電極13,14がそれぞれケーブル15,16を介して接続されたインピーダンス測定装置11、および同測定装置11がケーブル17を介して接続され表示画面21を有する処理及び表示装置12を備えている。
【0042】
上記において、コーティング部材の劣化を検出する場合、インピーダンス測定装置11は、2個の測定端子の間に接続された回路に低い周波数から高い周波数まで周波数を変化させて電流を供給し、各周波数におけるインピーダンスを測定する。
【0043】
この測定結果については、インピーダンスの絶対値及び位相角の値をセットにして、又はインピーダンスの実数成分の値及び虚数成分の値をセットにして処理及び表示装置12に入力され、処理及び表示装置12は測定結果を表示画面21に測定例22のように表示する。
【0044】
図2(a)は、上記処理及び表示装置12の表示画面21だけを示したものであり、この表示画面は、横軸に測定したインピーダンスの実数成分の大きさ、縦軸に虚数成分の大きさが表示され、測定した各周波数のインピーダンスの値が測定点の1点として表示される。図2(a)において、21は表示画面であり、31は各周波数に対応する測定、32は各周波数の測定31の間を結んでできた表示線であり、31と32を総称して、測定結果22と呼ぶ。
【0045】
この処理及び表示装置12については、その表示画面21に、図2(b)に示すような拡大表示もできる機能を有している。図2(b)は、インピーダンスの測定値がゼロに近づく部分を拡大して表示している。
【0046】
次に、上記インピーダンス部材の劣化検出装置を使用して行う、酸化物の生成及びトップコーティングの厚みの減少を検出する方法について、図3乃至図5により説明する。
【0047】
図3は、アンダーコーティング83に酸化物84が生成されていない場合を示しており、その等価回路は図3(b)に示すものである。ここで、Ctはトップコーティング82の部分の静電容量、Rtはトップコーティング82の部分の抵抗である。
【0048】
上記静電容量Ctは、トップコーティング材の比誘電率に比例し、トップコーティング82の肉厚の逆数に比例した大きさになる。同様に、抵抗Rtは、トップコーティング材の電気抵抗率に比例し、トップコーティング82の肉厚に比例した大きさになる。
【0049】
なお、アンダーコーティング83及び母材81は金属であり、その電気抵抗率はトップコーティング材の10−16 倍程度であり、このインピーダンスは極めて小さいため、無視できる。このため、上記等価回路では、アンダーコーティング83及び母材81の抵抗及び静電容量については省略した。
【0050】
上記等価回路において、静電容量Ct(トップコーティングの静電容量)のインピーダンスZctは、1/ωCt(ω=2πf、fは各周波数)であり、周波数が低い場合、極めて大きな値になり、抵抗RtのインピーダンスZrtよりも大きくなる。抵抗RtのインピーダンスZrtは周波数に対して一定(Zrt=Rt)である。
【0051】
したがって、周波数を変えて測定した場合、低周波では抵抗Rtによるインピーダンスを主に測定する結果になり、周波数を高くするに従って、静電容量Ctの影響が測定値に現れてくる。更に、高周波にすると、静電容量Ctによるインピーダンスを主に測定することになり、極めて高周波では、静電容量Ctの値に関係せず、インピーダンス値はゼロに近づく。
【0052】
このため、周波数を変化させてインピーダンスを測定した場合、図3(c)に示すように、各周波数の測定点を結ぶ表示線32が半円形になって現れる。この表示線32の虚数成分側の最も大きい点は、抵抗Rtによるインピーダンス値Zrtと静電容量Ctによるインピーダンス値Zctが(ある周波数で)等しくなった点である。
【0053】
図4は、アンダーコーティング83に酸化物84が生成した場合を示しており、その等価回路は図4(b)に示すものであり、Ct、RtにCo、Roが加わる。ここで、Coは酸化物84による静電容量、Roは酸化物84による抵抗である。前述のように、酸化物84の電気抵抗率は、トップコーティング材よりも10倍程度大きく、比誘電率は1/3程度であることがわかっている。
【0054】
一般的に酸化物84の肉厚はトップコーティング82に比べて相当小さい(数十分の1程度)が、電気抵抗率が大きいため、上記の等価回路においてRtよりもRoの方が相当大きくなる。静電容量についても、酸化物の方が比誘電率は小さいが、酸化物の肉厚が小さいため、CtよりもCoの方が相当大きくなる。
【0055】
この等価回路全体としてのインピーダンスは、トップコーティング82による抵抗Rt及び静電容量Ctと酸化物84の抵抗Ro及び静電容量Coが合成されたものになるが、酸化物84の抵抗が大きいため、低周波域でのインピーダンス値(静電容量によるインピーダンスが抵抗によるインピーダンスよりも大きくなる範囲)は、酸化物84が存在しない場合に比べて大きくなる。
【0056】
また、抵抗値が大きいため、静電容量によるインピーダンスと抵抗によるインピーダンスが一致する点の値(虚数成分が最も大きくなる点の値)も大きくなり、各周波数の測定点33及びこの測定点33を結ぶ表示線34の軌跡の半径は、酸化物84が存在しない場合に比べて大きくなる。
【0057】
したがって、この測定点及び測定点を結ぶ線の軌跡の半径の大きさによって、劣化現象の一つである酸化物の生成、存在、厚さを知ることができる。
【0058】
図5は、トップコーティング82の肉厚が薄い場合を示しており、その等価回路は図5(b)に示すものである。ここで、Ctsは減肉したトップコーティング82の部分の静電容量、Rtsは抵抗である。
【0059】
トップコーティング82の肉厚が薄い場合、静電容量Ctsは、通常の肉厚のトップコーティング82の場合に比べて大きくなり、抵抗Rstは小さくなる。静電容量が大きくなれば、インピーダンスは小さくなり、抵抗も小さくなるため、特に周波数の高い部分(インピーダンスがゼロに近づく部分)では、図5(c)に部分拡大表示するように、測定点35を結ぶ表示線36の傾斜角が小さくなる(正常肉厚では、これよりも傾斜角が大きくなる)。
【0060】
したがって、周波数が高い範囲で、測定値の軌跡の傾斜角を観察することによって、劣化現象の一つであるトップコーティングの肉厚の減少を検出することができる。
【0061】
以上、本発明の実施の一形態について説明したが、被測定物の測定条件として実使用条件等の高温環境下での測定を求められる場合がある。
【0062】
この場合は、コーティング部のコーティング表面と母材の裏面の金属面に高温用の電極を高温に耐える材料、方法で取付け、電極とインピーダンス測定装置を高温用のケーブルで接続する。
【0063】
電極13は白金、白金ロジウム、ロジウム等の耐高温材でできたもので高温(1000°程度)に耐えるものとして、白金、白金ロジウム、ロジウム等を主成分とする高温用ペーストで母材81の裏面に取りつけられ、白金、白金ロジウム、ロジウム等の耐高温材でその周囲をセラミックス材の膜が施されて覆われ高温(1000°C程度)に耐えられるケーブル15でインピーダンス測定装置11の測定端子に接続される。
【0064】
電極14も同様に白金、白金ロジウム、ロジウム等の耐高温材でできたものとして、白金、白金ロジウム、ロジウム等を主成分とする高温用ペーストでトップコーティング82の表面に取付けられ、白金、白金ロジウム、ロジウム等の耐高温材でその周囲をセラミックス材の膜が施されて覆われたケーブル16でインピーダンス測定装置11の測定端子に接続される。
【0065】
以上のように本実施の形態において、高温用の電極を高温に耐える材料、方法で取付け、電極とインピーダンス測定装置を高温用のケーブルで接続することによって、被測定物を高温環境下に置いた状態でも、上述した通りのコーティングに於ける酸化物の生成、存在、厚さ、コーティング厚さの減少等のコーティングの劣化の状態を容易に検出することができるものである。
【0066】
本実施形態においては、以上説明したように、処理及び表示装置の表示画面を観察することにより、コーティングの劣化の一つであるアンダーコーティングに生成される酸化物の有無及びトップコーティングの肉厚の減少を検出することができ、また高温環境下における検出も可能であり、実用上の効果は大きい。
【0067】
【発明の効果】
本発明のコーティング部材の劣化検出方法及び装置は、被検体である母材の一方の表面に施工されたコーティングの表面と上記母材の他方の表面とにそれぞれ電極を取付け、インピーダンス測定装置によりこの電極間に周波数が変化する電流を流して各周波数におけるインピーダンスの測定値を求め、この測定値を入力した処理及び表示装置により複素平面上に測定値の半円形の軌跡を描き、この軌跡の大きさからコーティング中における酸化物の生成を検出し、軌跡のゼロ点付近の傾斜角からコーティングの減肉状況を検出するものとしたことによって、従来の方法及び装置の場合には不可能であったコーティングの劣化状況の高精度の検出が可能となる。

【0068】
また、上記コーティング部材の劣化検出方法及び装置において、電極を白金等の耐高温材とし、白金等を主成分とするペーストで前記母材の他方の表面と前記コーティングの表面とに取付け、インピーダンス測定装置との間を白金等の耐高温材をセラミックス材で覆ったケーブルで接続したものでは、被測定物を高温環境下に置いた状態でも同様に、コーティングの劣化の状態を容易に検出することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係るコーティング部材の劣化検出装置の説明図である。
【図2】上記一実施形態に係る表示画面の説明図で、(a)はインピーダンスの測定値の軌跡の全体表示の場合、(b)は部分拡大表示の場合である。
【図3】上記一実施形態に係るアンダーコーティングに酸化物が生成されていない場合の説明図で、(a)はコーティング部材の側面断面図、(b)は等価回路図、(c)はインピーダンスの測定値の軌跡の説明図である。
【図4】上記一実施形態に係るアンダーコーティングに酸化物を生成している場合の説明図で、(a)はコーティング部材の側面断面図、(b)は等価回路図、(c)はインピーダンスの測定値の軌跡の説明図である。
【図5】上記一実施形態に係るトップコーティングが減肉した場合の説明図で、(a)はコーティング部材の側面断面図、(b)は等価回路図、(c)はインピーダンスの測定値の軌跡の部分拡大表示を示す説明図である。
【図6】コーティング部材の劣化発生のメカニズムの説明図である。
【図7】従来の装置の説明図である。
【符号の説明】
11 インピーダンス測定装置
12 処理及び表示装置
13,14 電極
15,16,17 ケーブル
21 表示画面
31 測定点
32 表示線
33 測定点
34 表示線
35 測定点
36 表示線
81 母材
82 トップコーティング
83 アンダーコーティング
84 酸化物

Claims (4)

  1. 一方の表面にコーティングが施工された被検体である母材の他方の表面と上記コーティングの表面とにそれぞれ電極を取り付け、この電極間に周波数を変化させながら電流を流して電極間の各周波数におけるインピーダンスを測定し、各周波数における測定値を実数成分の大きさと虚数成分の大きさにより複素平面に表示して測定値の半円形の軌跡を求め、この測定値の軌跡の大きさから劣化現象の一つである酸化物の生成を検出し、軌跡のゼロ点付近の傾斜角から劣化現象の一つであるコーティングの肉厚の減少を検出することを特徴とするコーティング部材の劣化検出方法。
  2. 請求項1に記載のコーティング部材の劣化検出方法において、前記電極として白金等の耐高温材を用い、同電極を白金等を主成分とするペーストで前記母材の他方の表面と前記コーティングの表面とに取付けてインピーダンス測定装置との間を白金等の耐高温材をセラミックス材で覆ったケーブルで接続したことを特徴とするコーティング部材の劣化検出方法。
  3. 一方の表面にコーティングが施工された被検体である母材の他方の表面と上記コーティングの表面とにそれぞれ配設される電極、同それぞれの電極が接続されたインピーダンス測定装置、および同装置が測定した各周波数における測定値を入力しそれぞれの測定値を実数成分の大きさと虚数成分の大きさにより複素平面に表示して測定値の半円形の軌跡を求めこの軌跡の大きさから酸化物の生成を、同軌跡のゼロ点付近の傾斜角からコーティングの肉厚の減少を検出する処理及び表示装置を備えたことを特徴とするコーティング部材の劣化検出装置。
  4. 請求項3に記載のコーティング部材の劣化検出装置において、前記電極が白金等の耐高温材であり、白金等を主成分とするペーストで前記母材の他方の表面と前記コーティングの表面とに取付けられインピーダンス測定装置との間を白金等の耐高温材をセラミックス材で覆ったケーブルで接続されたことを特徴とするコーティング部材の劣化検出装置。
JP30711198A 1998-10-28 1998-10-28 コーティング部材の劣化検出方法及び装置 Expired - Fee Related JP3553391B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30711198A JP3553391B2 (ja) 1998-10-28 1998-10-28 コーティング部材の劣化検出方法及び装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30711198A JP3553391B2 (ja) 1998-10-28 1998-10-28 コーティング部材の劣化検出方法及び装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000131256A JP2000131256A (ja) 2000-05-12
JP3553391B2 true JP3553391B2 (ja) 2004-08-11

Family

ID=17965174

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP30711198A Expired - Fee Related JP3553391B2 (ja) 1998-10-28 1998-10-28 コーティング部材の劣化検出方法及び装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3553391B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3173801A4 (en) * 2014-07-23 2018-01-24 R&D Center Of Shanghai Institute Of Ceramics High-temperature test fixture

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8398603B2 (en) * 2006-02-28 2013-03-19 Coloplast A/S Leak sensor
JP4802064B2 (ja) * 2006-08-22 2011-10-26 株式会社ブリヂストン ゴム組成物−金属複合体の接着界面評価装置と接着界面評価法
JP6842851B2 (ja) * 2016-07-13 2021-03-17 株式会社荏原製作所 膜厚測定装置、研磨装置、膜厚測定方法、及び、研磨方法
BE1025688B1 (nl) * 2017-11-08 2019-06-11 D&D Isoltechnics Nv Verbeterde inrichting en werkwijze voor het meten van condensvorming en/of corrosievoortgang
JP2022123435A (ja) * 2021-02-12 2022-08-24 三菱重工業株式会社 接合部評価方法及び接合部評価装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3173801A4 (en) * 2014-07-23 2018-01-24 R&D Center Of Shanghai Institute Of Ceramics High-temperature test fixture

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000131256A (ja) 2000-05-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4496900A (en) Nonlinearity detection using fault-generated second harmonic
US20030038628A1 (en) Self reference eddy current probe, measurement system, and measurement method
US20090206830A1 (en) Sensor for detecting surface defects of metal tube using eddy current method
EP1062522A2 (en) Apparatus for fast measurements of current and power with scaleable wand-like sensor
JP2009539086A (ja) 導電性基材上の導電性被膜の膜厚の決定方法
JP3553391B2 (ja) コーティング部材の劣化検出方法及び装置
JP2003028900A (ja) 非接触電圧測定方法およびその装置
GB2527835A (en) Apparatus and circuit
CN102692524A (zh) 一种基于原子力显微镜的纳米热电塞贝克系数原位定量表征装置
WO2001042764A2 (en) Method and apparatus for measuring accumulated and instant rate of material loss or material gain
JP2004184303A (ja) 外乱除去機能を備えた電線検査方法及び検査装置
JP4532357B2 (ja) 濃度測定装置
WO2006059497A1 (ja) 超電導体の臨界電流密度測定方法及び装置
KR100523686B1 (ko) 와이어로프의 비파괴검사장치
Belloni et al. On the experimental calibration of a potential drop system for crack length measurements in a compact tension specimen
JP3176335B2 (ja) 部分放電測定装置
CN112666395B (zh) 非接触式的金属材质电导率测量方法及系统
JPS6180039A (ja) 構造監視方法および装置並びにこれに使用される測定ヘツド
JPH04551B2 (ja)
WO2020049883A1 (ja) 電流測定装置および電流測定方法
JPH0815229A (ja) 高分解能渦電流探傷装置
CN207379978U (zh) 一种基于脉冲涡流的电导率仪
CN113608154B (zh) 一种原位磁导率检测探头、设备和检测方法
JP4007484B2 (ja) 抵抗率測定方法及び固有抵抗率計
JP3223991U (ja) 非破壊検査装置

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040106

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040113

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040315

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040413

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040428

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees