JP3551825B2 - 尿分析機能付きトイレット装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、家庭やオフィスその他のトイレットにおいて個人が排泄した尿をその場でサンプリングして尿分析を行うことの可能な尿分析機能を備えたトイレット装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
人々の長寿高齢化に伴い、健康管理に関する各人の関心が高まっている。尿は個人の健康状態に関する重要な情報源であり、尿糖、尿蛋白、ウロビリノーゲン、潜血、その他の尿成分を定量分析することにより、糖尿病のようなすい臓障害や肝臓障害や腎臓障害その他の機能障害を非侵襲方式で検査することができる。そこで、家庭や職場その他のトイレットを利用して尿のサンプリングと分析を行い、個人の健康チェックを支援することの可能な、尿分析機能を備えたトイレットが提案されている。
【0003】
例えば、特開昭59−217844号、特開昭63−184057号、特開昭63−290961号、特開平1−178866号、特開平4−191660号には、洋式便器のボウル面に採尿部を形成し、ボウル面に排泄された尿を採尿部に集めてサンプリングすることが提案されている。採取された尿サンプルは、液体クロマトグラフ法、試験紙法、或いはポーラログラフ法(ボルタンメトリー法)により分析されるようになっている。
【0004】
実開平5−30764号には、便座を改造することにより尿をサンプリングすることが提案されている。このため、コップ状の採尿器を支持するアームが旋回可能に既存の便座に取付けられる。採尿機構でサンプリングされた尿は手動シリンジ又は自動採取シリンジにより測定部に送られ、尿分析に付される。反応液容器やポンプや吸光光度計からなる測定部は便座の側方に配置してある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これらの尿分析機能付きトイレットは、日常的に行われる用便行為により、簡易に尿の分析を行うことができ、健康チェックに役立てることができる利点がある。日常的な健康チェックは、いわゆる生活習慣病など、自覚症状のないまま緩やかに病状が変化する病気に対して、特に有効である。この意味で、尿分析機能付きトイレットでは、過去における分析結果を長期に亘って記憶し、かつそのトレンド等を演算処理可能であることが好ましい。
【0006】
しかしながら、従来の尿分析機能付きトイレットでは、上述の点について十分考慮されていなかった。過去における分析結果を健康チェックに活用できる程、十分な期間に亘って記憶するためには、容量の大きいメモリが必要となる。また、過去における分析結果に基づいて健康状態のトレンド等を演算処理するためには、処理能力の高い演算回路を用いることが好ましい。かかるメモリや演算回路を備えるためには、比較的大きな容積が要求される。さらに、上述のメモリや演算回路の稼動に適した環境条件を確保する必要もある。トイレットが設置される場所は一般に湿度が高く、水滴等が飛散する可能性が高いため、これらのメモリや演算回路を適切に稼動するために、十分な絶縁、防水対策を施す必要があるのである。
【0007】
例えば、特開昭59−217844号、特開昭63−184057号、特開昭63−290961号、特開平1−178866号、特開平4−191660号に記載の装置では、ボウル面に採尿部が形成され、いわゆる特殊便器として構成されている。かかる特殊便器において、上述の容積や環境条件を考慮して、メモリや演算回路を装備すれば、装置全体の大型化を招き、トイレット自体の設置について制約が厳しくなるとともに、装置のコスト増を招く。また、斯る特殊便器は、標準型の便器とは別個に特別に製造しなければならず、従って大量生産によるコストダウンが難かしいので、一般家庭や職場やオフィスに普及させるには余りに高価である。また、通常のボウル形状の標準型の便器を備えた既設のトイレットを改造する場合には、先ず既存の便器を撤去し、次に尿分析専用の特殊便器を設置しなければならないので、工事に多大な費用と手数を要すると共に、既存設備の廃棄を招く。
【0008】
一方、実開平5−30764号に記載の便座を改造することにより尿分析機能付きトイレットを実現する構成においては、装置の寸法に対する制約が非常に大きい。一般にトイレット近傍は、タンク、配管等が配置され、スペースの余裕が少ないため、装置の寸法が大きくなると、標準便器に設置することができなくなるのである。従って、便座を改造する構成においては、前述の容積や環境条件を考慮して、メモリや演算回路を、製造コストの極端な増大を招くことなく装備することが困難であった。
【0009】
本発明は、既存のトイレット設備を活かしつつ、尿分析機能を実現可能なトイレット装置を提供することを目的とする。また、かかるトイレット装置において、健康チェックに有効に活用可能な程度に分析データの記憶および演算処理を可能とし、該装置の有用性を向上する技術を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明のトイレット装置は、
標準型洋式便器に設置可能に構成され、排泄された尿を採取し、該尿の分析を行う尿分析機能付きトイレット装置であって、
前記便器に取り付けられることによって、前記排泄された尿を採取するとともに、該採取された尿を分析して、前記所定の成分の量に関するデータを取得可能な分析手段と、
該分析手段の動作を制御する制御手段と、
前記分析手段と別体として備えられ、複数回に亘って取得された前記データを記憶する記憶手段と、
前記分析手段と別体として備えられ、該記憶手段に記憶されたデータを用いた所定の演算を行う演算手段と、
前記分析手段と演算手段との間でデータの授受を行うデータ授受手段とを備えることを要旨とする。
【0011】
本発明のトイレット装置は、便器本体とは別体のユニットとして構成されているため、既存の便器設備を活かして尿分析機能を実現することができる。本明細書では、トイレット装置とは、このように既存の標準便器に取り付けられることにより所定の機能を果たす装置を指すものとする。
【0012】
本発明のトイレット装置によれば、使用者は、複数回に亘って記憶されたデータに基づいて、分析結果のトレンドを知ることができる。かかるトレンドは、自己の健康チェックに役立てることができる。なお、データの記憶は、種々の態様で行うことが可能である。例えば、分析されたデータ自体を記憶する態様を採ることができる。また、前回の分析結果からの偏差を記憶する態様を採るものとしてもよい。その他、健康チェックに有意義なトレンドを得ることが可能な種々の態様でデータを記憶することが可能である。かかるトレンドを得るためには、容量の大きい記憶手段と、演算能力の高い演算手段とを備えることが望ましい。本発明のトイレット装置では、以下の構成により、適切な記憶手段および演算手段を備えることを可能としている。
【0013】
即ち、本発明のトイレット装置では、記憶手段および演算手段を分析手段とは別体として備える。従って、分析手段を既存の標準便器への設置するための制約に関わらず記憶手段および演算手段を構成することができる。例えば、既存の便器に設置するため、分析手段の寸法に制約がある場合でも、記憶手段および演算手段についてはかかる制約に関わらず十分な容積を確保することができる。また、分析手段の設置場所が高湿等の環境にある場合でも、記憶手段および演算手段については各手段を稼動するのに適した環境に設置することができる。分析手段は標準便器への設置を前提として構成されるが、記憶手段および演算手段を便器から離隔して設置することが可能となる。
【0014】
このように記憶手段および演算手段を分析手段と別体として備えることにより、本発明のトイレット装置では、記憶手段および演算手段に対する構成上の制約を緩和することができる。つまり、装置の製造コストの極端な増加等を招くことなく、機能の実現に適した記憶手段および演算手段を備えることが可能となる。
【0015】
なお、本発明のトイレット装置において、分析手段、制御手段、記憶手段、演算手段は種々の構成態様で実現することができる。一般に制御手段および演算手段はマイクロコンピュータを利用して構成されることが多い。従って、分析手段を第1のユニットとして構成し、制御手段および演算手段を包含して第2のユニットを構成することができる。記憶手段は、これらと別の構成としてもよいし、第2のユニットに組み込むことも可能である。かかる構成態様で実現すれば、トイレット装置のユニット数を最小限に抑えることができ、コスト低減を図ることができる。
【0016】
また、分析手段を第1のユニット、制御手段を第2のユニット、演算手段を第3のユニットとして構成するものとしてもよい。記憶手段は、これらと別の構成としてもよいし、第3のユニットに組み込むことも可能である。こうすれば、第3の演算手段の構成についての自由度がより高まる。例えば、非常に高い演算能力を有する汎用のコンピュータ等を演算手段として活用することも可能となる。つまり、トイレットが設置してある場所と異なる部屋に設置されたコンピュータ等を演算手段として活用することも可能となる。こうすれば、分析データの管理や健康チェックをより適切かつ多彩に行うことが可能となり、本発明のトイレット装置の利便性を大きく向上することが可能となる。もちろん、このように汎用のコンピュータを演算手段として活用する場合には、トイレット装置の使用者に対して、該使用者が所有する汎用のコンピュータを演算手段として活用するために必要なソフトウェアを供給する態様を採るものとしてもよい。
【0017】
また、前記記憶手段も種々の構成を適用することができる。当然、マイクロコンピュータに通常備えられるRAM等のメモリを用いるものとしてもよいが、該記憶手段は、不揮発性の記憶媒体であるものとすることが望ましい。不揮発性の記憶媒体とは、いわゆるフラッシュメモリなど、通電していなくてもデータの記憶が可能なメモリ一般を意味する。かかるメモリを適用することにより、電源が遮断された場合でも分析データを保持しておくことができる。不揮発性の記憶媒体として、フレキシブルディスクなどの携帯可能な記憶媒体を適用するものとしてもよい。
【0018】
本発明のトイレット装置において、
前記データ授受手段は、通信によりデータを授受する手段であるものとすることが好ましい。こうすれば、分析手段により得られたデータを高速かつ確実に記憶手段および演算手段に受け渡すことができる。この場合において、通信は有線で行うものとしてもよいし、電波や赤外線などを利用した無線の通信で行うものとしてもよい。
【0019】
データ授受手段は、必ずしも通信に限定される訳ではない。記憶手段として、フレキシブルディスクなどの携帯可能な記憶媒体を利用する場合には、該記憶媒体へのデータの書き込み、および読み出しを行う手段をデータ授受手段とすることも可能である。なお、データ授受手段は、特定の分析手段と演算手段との間でのみデータの授受を行うものに限定されない。
【0020】
本発明は、尿中の種々の成分を対象とすることができるが、前記所定の成分は、尿糖、尿蛋白、潜血のうち少なくとも一つの成分であるものとすることが好ましい。これらは糖尿病などに代表される生活習慣病と密接に関連した成分である。これらの成分を分析の対象とすることにより、自覚症状のないまま緩やかに進行していく生活習慣病に関する健康チェックに、尿分析機能付きトイレット装置を有意義に活用することが可能となる。
【0021】
また、本発明のトイレット装置においては、ビデ装置、温風乾燥装置、脱臭装置のうち少なくとも一つを備えるものとすることも好ましい。これらの機能は、トイレットを快適に使用することができる機能として、昨今、重宝されている機能である。従って、これらの機能を備えることにより、本発明のトイレット装置を快適に使用することが可能となり、利便性が向上する。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は既設のトイレットに本発明の尿分析ユニットを取付けたところを示し、図2は尿分析ユニットのハウジングを分解したところを示し、図3は尿分析ユニットの便座と尿サンプリング装置との組立体を分解したところを示す。
【0023】
これらの図面を参照するに、トイレット10は水洗便器12を有し、この便器12は床に設置されている。この便器12には、既存の便座(図示せず)を取り外した後に、本発明の尿分析ユニット14が後述するように取付けられる。本発明の尿分析ユニット14は、ヴォルテックス型、サイフォン型、サイフォンジェット型、ウォシュダウン型、その他の形式の市販の標準型の便器に取付けることができる。標準型の便器12は、通常のボウル(便鉢)部16と洗浄水供給部18を有する。図示した実施例では、洗浄水供給部はシスターン取付け部18からなり、この取付け部18には従来型のシスターン20が周知の態様で取付けてある。シスターンに代えて洗浄弁を備えた洗浄管から洗浄水を供給する形式の標準型の便器にも本発明は適用することができる。
【0024】
尿分析ユニット14は、後述するように便器12に固定されるハウジング22と、専用の特製の便座24に尿サンプリング装置26を組み込むことにより予め製作された組立体28(以下、便座アッセンブリと言う)とを有する。便座アッセンブリ28は後述するようにハウジング22に回動可能に装着される。ハウジング22には、また、従来型の便蓋30を開閉可能に装着することができる。尿分析ユニット14を制御し分析結果を出力するための制御ユニット32はトイレット側方の壁に設置することができる。
【0025】
尿分析ユニット14のハウジング22は、例えば図2に示したように、フレーム34と、上部ケーシング36と、左右の下部ケーシング38および40とで構成することができる。ハウジング22のこれらの部品は樹脂の射出成形により製造することができ、ビスなどにより互いに一体に締結することによりハウジング22を形成する。図2に示したように、標準型の便器12にはボウル部16と洗浄水供給部18との間において1対の便座取付け穴42が設けてあり、これらの便座取付け穴42を利用して既存の便座(図示せず)が周知の態様で取付けてある。ハウジング22のフレーム34は、既存の便座を取り外した後、実公昭63−6291号に開示されたようにフレーム34の下面に2本のTボルト44をT溝嵌合により取付け、便座取付け穴42にこれらのTボルト44を挿通し、対応するナット46を締結することにより、ボウル部16とシスターン取付け部18との間において便器12の上面48に固定することができる。
【0026】
図2からよく分かるように、フレーム34は便器12に対して横断方向に延長する中央部分とこの中央部分の両端から夫々前方へ延長する側方部分を有し、上部ケーシング36もフレーム34に対応する形状になっている。従って、フレーム34と上部ケーシング36と左右の下部ケーシング38および40は互いに協働してハウジングの中央部分22Cと左側方部分22Lと右側方部分22R(図1)を形成する。図2に示したように、ハウジングの左側方部分22Lには、便座アッセンブリ28によってサンプリングされた尿サンプルを分析する分析装置50と、尿サンプルを便座アッセンブリ28から分析装置50に搬送する電動シリンジポンプ52と、緩衝液タンク54と、較正液タンク56を収容することができる。ハウジング左側方部分22Lには、また、指血圧計ユニット58を配置し、被験者の左第2指に係合させることにより血圧を測定するようにしてもよい。図示した実施例では、ハウジング中央部分22Cには、洗浄ノズル60を備えた従来型のビデ装置62と、従来型の温風乾燥装置64と、オゾナイザーからなる従来型の脱臭装置66が配置してあり、尿分析ユニット14を備えたトイレット10を通常の目的で使用する際に夫々の機能を提供するようになっている。しかし、これらの追加的機能は不可欠ではなく、省略することができる。ハウジングの右側方部分22Rには、ユニット14の電源装置68とビデ装置の操作盤70を収納することができる。
【0027】
主として図3から図8を参照しながら、便座24とそれに組み込まれた尿サンプリング装置26とからなる便座アッセンブリ28を説明する。便座24は尿サンプリング装置26を組み込むことを目的として設計されかつ製作されたものであり、尿サンプリング装置26を組み込むのに適した構造になっている。図3に切欠いて示したように、便座24は耐衝撃性樹脂などからなる上部半体24Aと下部半体24Bとを例えば超音波溶接によって接合することにより形成することができ、便座を温めるための電気ヒーター線72を必要に応じて配線することができる。便座24は任意のヒンジを用いてハウジング22に回動可能に装着することができ、好ましくは実願平5−19341号に開示されたリテーナブロックを用いてそのヒンジ部74をハウジング22の軸受け部76(図2)に係合させることにより装着する。
【0028】
便器12を焼成する際に生じる焼成歪みに適合させるため、従来の便座と同様に、便座24は便器12のリム78の上面に対して4点で支持するのが好ましい。このため、図3に破線で示したように、便座24の下面にはクッション付きの2つの脚部80を従来同様に設けることができる。他の2点においては、便座24は、後述する採尿部ケース82に設けた2つの脚部84によって支持される。図8からよく分かるように、脚部80又は84があるので、便器のリム78の上面86と便座24の下面88との間には約1.5〜2cmの高さの環状隙間が確保される。この環状隙間の一部を利用することにより、尿サンプリング装置26の一部が配置され、かつ、収納される。図3および図8からよく分かるように、便座24の下面には下方に開口する凹み90および92が形成してあり、尿サンプリング装置26の一部が、更に、後述の如くこれらの凹みに収納されるようになっている。
【0029】
尿サンプリング装置26は、便器12のボウル16に排泄された尿のサンプルを採尿容器によりボウル空間内の空中で採取し、サンプリング後には採尿容器を便座24下方の収納位置に収納すると共に、採尿容器を自動的に洗浄するように構成することができる。図3から図8を参照しながら、尿サンプリング装置26の実施態様の一例を説明する。図示した実施例においては、尿サンプリング装置26は、略クランク形状のスイングアーム94と、このスイングアームの自由端に着脱可能に装着された細長い採尿容器96と、スイングアーム94を駆動する駆動部98と、採尿部ケース82とを備えている。スイングアーム94は、図5および図7に示したように、中央エルボ100と、端部エルボ102と、両者を連結するパイプ104と、スピンドル106とで構成することができる。
【0030】
図6および図7に示したように、採尿容器96は、細長い上部開口108および樋状の凹み110を有する本体112と大径の基部114とで構成することができ、Oリング116を用いて端部エルボ102に液密かつ着脱自在に装着することができる。本体の凹み110は基部114に向かって傾斜しており、凹み110内に降り注がれた尿が基部114とエルボ102によって形成された尿溜まり118に集積するようになっている。本体112の外周を金網120などで覆うことにより、被験者から排泄された尿が採尿容器96に衝突して周囲に飛散するのを防止すると共に、尿サンプルを効果的に採取できるようにするのが好ましい。尿溜まり118に集積した尿は、エルボ102の内部通路とスイングアーム94およびそのスピンドル106内を延長する可撓性チューブ122を介して、シリンジポンプ52の吸引と圧送作用によりハウジング22内の尿分析装置50に送られる。気泡を含まない尿のみを吸引して尿分析装置へ送るため、エルボ102には、尿溜まり118の底部に開口するL字管124を設けるのが好ましい。また、尿溜まり118に十分な量の尿が溜まったことを検出するため、上下方向に離間された一対の電極126と128をエルボ102に設けることができる。これらの電極はリード線130を介して側方ハウジング22L内に配置した尿分析装置50の制御回路に接続することができる。
【0031】
概略的に述べれば、図示した実施例では、スイングアーム94を駆動する駆動部98は、図8からよく分かるように、スイングアーム94に回動運動と並進運動とを与えることにより、採尿容器96を便座前部下方の収納位置からボウル空間内の異なる種々の採尿位置へと(およびその逆に)移動させるようになっている。しかし、スイングアーム94の回転のみにより採尿容器96を移動させるように構成してもよい。
【0032】
より詳しくは、図3から図5を参照するに、駆動部98は便座24の下面にビスなどにより適宜固定された採尿部ケース82に収蔵してある。駆動部98はケース82に摺動自在に装着されたスライダー132を備え、このスライダー132は採尿部ケース82に固定された1対のガイド134によって便器12の長軸にほぼ平行に摺動するべく案内されている。スライダー132にはラック136が固定してあり、このラック136にはケース82に固定された減速ギヤ付きステッピングモータ138の出力軸のピニオン140が噛み合っている。従って、モータ138をいづれかの方向に回転させれば、スライダー132は前後に並進運動を行う。モータ138は側方ハウジング22L内の制御回路(後述)によって制御される。
【0033】
スイングアーム94は回転可能に、かつ、スライダー132と共に移動するようにスライダー132に軸支されている。このため、図5からよく分かるように、スライダー132には1対のトラニオン軸受142が設けてあり、スイングアーム94のスピンドル106を軸支している。スピンドル106には軸孔が形成してあり、可撓性チューブ122やリード線130が通してある。
【0034】
駆動部98は、更に、スイングアーム94の回転角位置を規制するレバー/カム機構144を備えており、モータ138によってスライダー132を前後に変位させる際に採尿容器96の位置を制御するようになっている。即ち、図5からよく分かるように、2つの軸受142の間においてスイングアーム94のスピンドル106にはレバー146が一体回転するべく嵌合してあり、このレバー146の先端にはローラーの形のカムフォロワ148が支持してある。カムフォロワ148は採尿部ケース82にビスなどにより適宜固定されたカムプレート150と協働するもので、このカムプレート150には、2つの段違いの水平カム面152および154と、傾斜カム面156が形成してある。スイングアーム94のスピンドル106にはリターン・コイルスプリング158の一端が固定してあり、このスプリングの他端は軸受142に固定してある。リターン・スプリング158の予荷重は、図8においてスイングアーム94を時計方向に回転付勢するべく設定されている。
【0035】
以上に述べた尿サンプリング装置26のスイングアーム94とその駆動部98が装着された採尿部ケース82はビスなどにより便座24に強固に固定され、尿サンプリング装置組み込み型の便座アッセンブリ28が形成される。図3および図8に示したように、便座24の下面には駆動部98に対応する形状の凹み90が予め形成してあるので、駆動部98の構成要素、例えば、モーター138、ピニオン140、カムプレート150、レバー146、カムフォロワ148は部分的にこの凹み90に収蔵される。このように尿サンプリング装置26を組み込むべく特別に設計された便座24を使用し、便座24内のスペースを有効に利用して尿サンプリング装置の構成要素を収容するので、尿サンプリング装置の構成要素を堅牢な構造に設計することができる。この特製の便座24は成形金型を用いて大量生産することができ、尿サンプリング装置26を組み込むことにより予め便座アッセンブリ28が組み立てられる。標準型便器を備えた既設のトイレットを尿分析機能を有するトイレットに改造するにあたっては、便座アッセンブリ28は、ハウジング22を便器12に固定する前または後のいづれか好都合な時点で、ハウジング22に装着される。
【0036】
次に、主として図8を参照しながらこの尿サンプリング装置26の作動を説明するに、非使用時にはスライダー132は前進位置にあり、カムフォロワ148はカムプレート150の第1水平カム面152に係合している。従って、スイングアーム94はリターン・スプリング158の作用により跳ね上げられており、採尿容器96は便座24の下方において採尿部ケース82内の収納位置(位置A)に格納されている。この状態で便座アッセンブリ28を開閉させ、トイレットを通常の用便の目的に使用することができる。
【0037】
尿のサンプリングと分析にあたり、被験者が便座24に着座し、制御ユニット32に設けられたスイッチを押すと、モータ138が回転してラック・ピニオン機構140/136によりスライダー132を後退させ始め、先ず、採尿容器96をその収納位置から水平に後方に引き出す。カムフォロワ148がカムプレート150の傾斜カム面156に係合すると、レバー146はスイングアーム94の回動を開始する(位置B)。カムフォロワ148が傾斜カム面156に更に乗り上げるにつれて、スイングアームは後退しながら回動し、採尿容器96を図8に示した湾曲した軌跡に沿って変位させる。モータ138が更に回転すると、カムフォロワ148はカムプレート150の第2水平カム面154に係合するに至り(位置C)、それ以後はスイングアーム94の姿勢を維持したまゝで後端位置Dまで並進移動させる。一般に放尿方向には男女差があり、男性の場合には尿柱は比較的前方に落下し、女性の場合には後方に落下すると共に、個人差がある。従って、モータ138の制御スイッチと制御回路は、男性の場合には位置B〜C間で採尿容器96を自動的に停止させ、女性の場合には位置C〜D間で停止させるようにすると共に、被験者が位置を微調整できるように構成するのが好ましい。被験者は適切な位置に採尿容器96が持ち来された時に採尿容器96に向かって放尿することができる。
【0038】
採尿容器96に落下した尿は、樋状の凹み110に沿って流下し、尿溜まり118に溜まる。このようにしてサンプリングされた尿は、ハウジング22内に設けたシリンジポンプ52によりL字管124および可撓性チューブ122を介して吸引し、尿分析装置50に搬送して、定量分析に付される。尿サンプルの吸引は、電極126および128からの信号により尿溜まり118内に電極126のレベルまで尿が集積したことが検出された時に自動的に行うことができる。
【0039】
尿のサンプリングと分析装置への搬送が終わると、スライダー132を前進させる方向にモータ138を回転させれば、スイングアーム94の前進と上方への回動に伴い採尿容器96は位置Bへと戻り、次いでスイングアームの並進運動により採尿容器96は収納位置Aへと復帰し、この位置で待機する。採尿容器96は細長に形成されているので、図8に示したように便座24の下面88と便器リム部78の上面86との間の狭い空間に容易に格納することができる。
【0040】
尿サンプリング後には、尿で汚れた採尿容器96を洗浄するのが好ましい。このため、図3および図4に示したように、採尿部ケース82には洗浄室160を形成すると共に、この洗浄室160に臨んで洗浄ノズル162を配置するのが好ましい。洗浄ノズル162にはホース164と電磁弁(後述)を介してシスターン20からの圧力洗浄水を供給することができる。或いは、ホース164をビデ装置62の給水バルブに接続してもよい。図3に示したように、採尿部ケース82には開閉式のカバー166を設け、洗浄中に洗浄室160を閉鎖することにより洗浄水の飛散を防止することができる。この開閉カバー166は適当なリンク(図示せず)を介してレバー/カム機構144に連動させ、採尿容器96が洗浄室160内に出入りする際にはカバー166を開け、採尿容器96が洗浄室内の収納位置に戻ったときにはカバー166を閉じるようにすることができる。図8からよく分かるように、便座24には開閉カバー166に向かって開口する凹み92が形成してあり、この凹み92内のスペースを利用して開閉カバー166に開閉運動を行わせるようになっている。このような凹み92は、便座24を特別に設計することにより形成することが可能になる。
【0041】
使用済みの洗浄水は確実にボウル16内に排出させるのが好ましい。このため、図3および図4に示したように、採尿部ケース82には、洗浄室160から便器の左右のリム78に沿って後方に延長する1対の排水樋168を形成することができる。これらの排水樋168は図8からよく分かるように後方に向かって下向きに傾斜させてあり、これらの排水樋168の後端はケース82に取付けた傾斜した排水管170に連通させてある。従って、便座アッセンブリ28が水平姿勢にある時には、洗浄ノズル162から噴射された洗浄水は排水樋168の傾斜に沿って後方へ流れ、排水管170からボウル16内に排出される。排水管170は傾斜させてあるので、便座アッセンブリ28を跳ね上げた時には、排水樋168内に残留する洗浄水の滴は排水管170からボウル16内に落下する。
【0042】
図3に示したように、採尿部ケース82の後部には切欠き172が形成してあり、スイングアーム94からの可撓性チューブ122やリード線や洗浄水供給ホース164を挿通させたアダプタ174を係合させるようになっている。このアダプタ174があるので、尿サンプリング装置26とハウジング22との間の配管や配線の取り回しを簡素化することができると共に、便座アッセンブリ28の回動時に配管や配線が受け得る破損を防止することができる。
【0043】
次に、図9から図11を参照しながら、電動シリンジポンプ52の実施形態の一例を説明する。図示した実施例においては、この電動シリンジポンプ52は、尿サンプリング装置26によって採取された尿サンプルを尿分析装置50に搬送する搬送系の主要部として作用する共に、尿分析に必要な後述する種々の機能を実行するようになっている。また、図示した実施例においては、電動シリンジポンプ52には電動ロータリバルブ202が組み込んであり、1つの一体のモジュール200を形成しているが、シリンジポンプ52とロータリバルブ202は別体に形成してもよい。
【0044】
シリンジポンプ52はシリンダ孔204が形成された本体206を有し、このシリンダ孔にはシールリング208を備えたピストン210が摺動可能に嵌合してあって、容積可変のポンプ室212を形成している。ピストン210はステッピングモータ214によって往復駆動されるもので、モータ214の出力軸にはリードスクリュー216が連結してあり、このリードスクリューにはナット218が嵌合してある。ピストン210のスカートには直径方向に対向する1対の回り止めピン220が貫通させてあり、これらのピン220の先端はナット218にネジ込まれている。回り止めピン220は本体206に形成された1対の軸方向スロット222に係合している。従って、モータ214をいづれかの方向に回転させれば、ナット218と共にピストン210が上下に駆動され、ポンプ室212内に液体を吸引し、或いは液体を送出する。ポンプ室212は中央ポート224に通じており、液体はこのポートを介してロータリバルブ202に出入りする。
【0045】
ロータリバルブ202は減速ギヤ付きのステッピングモータ226によって回転駆動される円盤形のロータ228を備え、このロータ228はモジュール200の頭部に形成された円柱形の凹み230に回転可能に精密嵌合されている。ロータ228の下面と凹み230の底面は平坦に精密加工してあると共に、ロータ228はコイルばね232によって凹み230の底面に付勢されており、ロータ228の下面が凹み230の底面に液密に接触するようになっている。ロータ228には、シリンジポンプ52の中央ポート224に整列対向した中央ポート234が設けてあると共に、この中央ポート234から半径方向外側にオフセットされた外側ポート236が形成してあり、これらのポート234と236は水平な内部通路238によって互いに連通されている。
【0046】
凹み230の底面には、ロータ228の外側ポート236と同じ半径方向オフセット距離において、円周方向等間隔に離間された例えば6つのポート240A〜240Fが開口させてあり、これらのポート240A〜240Fはモジュール頭部に形成された内部通路242A〜242Fによってニップル244A〜244Fに夫々連通している。これらのニップル244A〜244Fには、図18を参照して後述するように、尿分析ユニット14の構成要素から延長するホースや管路が夫々接続される。
【0047】
ロータリバルブ202はこのような構成であるから、モータ226を駆動することによりロータ228の外側ポート236がポート240A〜240Fのいづれかに整列するまでロータ228を回転させれば、シリンジポンプ52のポンプ室212はニップル244A〜244Fのいづれかに接続される。この位置でシリンジポンプ52を作動させれば、ポート240A〜240Fのいづれかから液体を吸引し、或いはいづれかのポートに液体を送出することができる。
【0048】
次に、図12から図17を参照しながら、尿分析ユニット14の尿分析装置50の実施態様の一例を説明する。図示した実施例においては、尿分析装置50はポーラログラフ分析法により尿サンプル中の尿糖(グルコース)を定量分析するように構成されている。しかし、本発明の尿分析ユニット14には、ポーラログラフ分析装置に代えて、液体クロマトグラフ法、吸光光度分析法、分光分析法、その他の方式による尿分析装置を使用することができ、更に、分析は尿蛋白、潜血、その他の尿成分についても行うことができる。
【0049】
図12に示したように、尿分析装置50は、例えば、ハウジング22のフレーム34に固定される取付け基板250と、ビスなどによりこの基板に適宜固定されるソケット部材252と、このソケット252に着脱自在かつ交換可能に嵌合されるポーラログラフ・セル254とで構成することができ、取付け基板250の裏側には尿分析ユニット14の制御回路256を搭載した回路基板258を配置することができる。
【0050】
図13の分解図からよく分かるように、ポーラログラフ・セル254は、プラスチックなどからなる基板260と、電極を担持したセラミック基板262と、シリコーンゴムなどからなるスペーサ264と、プラスチックなどからなる上板266とをビスなどにより互いに一体的に液密に締結することにより構成することができる。セラミック基板262は例えばアルミナセラミックからなり、金属ペーストの印刷と焼成により白金の作用極268と白金の対極270と銀/塩化銀の参照極272とが形成されている。夫々の電極には端子274が形成してあり、これらの端子274には上板266に設けたピン276が夫々電気接触させてある。スペーサ264には電極の領域において開口278が切欠いてあり、図14に示したように電解室280を形成するようになっている。上板266にはこの電解室280に連通する1対のニップル282が形成してあり、電解室に尿サンプルと緩衝液を供給するようになっている。これらのニップル282の外周にはOリング284が嵌めてあり、このポーラログラフ・セル254をソケット部材252に装着した時に、ソケット部材252の接続孔286にニップル282が液密に嵌合し、搬送チューブ288および290を介して電解室280に尿サンプルと緩衝液を通過させるようになっている。ソケット部材252には、また、ピン276に係合するピン穴292が設けてあり、3種の電極268、270、272をリード線294に夫々接続するようになっている。
【0051】
図15に示したように、白金の作用極268は、アルブミンや酢酸セルローズのように過酸化水素を選択的に透過させる物質からなる選択透過膜296と、グルコース・オキシダーゼ(GOD)固定化膜298とで被覆されている。GOD固定化膜298は、GOD(例えば、SIGMA社G7141)とアルブミンを4対1の割合で水に溶解し、溶解液を選択透過膜296上に滴下した後、グルタルアルデヒド雰囲気中に約30分間暴露することにより形成することができる。電解室280内の尿サンプル中のグルコースがGOD固定化膜に接触すると、GODはグルコース(C6H12O6)を酸化して次のようにグルコノラクトン(C6H10O6)と過酸化水素(H2O2)を生成する。
【0052】
C6H12O6 +O2 →C6H10O6 +H2O2 ・・・(1)
生成したH2O2が選択透過膜296を透過して白金の作用極268に達すると、白金の触媒作用によりH2O2は作用極268に電子を与えながら水と酸素に分解される。選択透過膜296があるので、H2O2より大きな分子量の妨害物質が作用極268に到達するのが防止される。
【0053】
図16に示したように、尿サンプル中のグルコースの定量分析に際しては、ポテンショスタットにより、参照極272に対する作用極268の電位が正の一定値(例えば+0.6V)になるように作用極268と対極270との間に印加される電圧が可変制御される。作用極268と対極270との間を流れる電流は過酸化水素の発生量に応じて変化する。従って、作用極268と対極270との間を流れる電流を制御回路256によって検出することにより、過酸化水素の発生量を検出し、これに基づいて、尿サンプル中のグルコース濃度を演算することができる。
【0054】
図17には、制御ユニット32と制御回路256の構成の一例を示す。トイレットの壁に設置された制御ユニット32は、プログラムされたマイクロコンピュータ300と、複数の操作スイッチ302と、ユーザーに対する指示や尿分析結果を表示する液晶表示パネル304と、尿分析結果やデータ・トレンドを出力するプリンタユニット306と、尿分析データを格納するフラッシュメモリ308などで構成することができる。操作スイッチ302としては、男性用尿分析開始スイッチ302aと女性用開始スイッチ302bとを別々に設けることができ、男性用スイッチ302aが押された時には採尿容器96が予め設定された男性用採尿位置(例えば、図8の位置B〜C間の適切な位置)に自動的に持ち来たされ、女性用スイッチ302bが押された時には採尿容器が女性用採尿位置(C〜D間の適切な位置)に持ち来たされるようにすることができる。更に、操作スイッチ302には、予め設定された男性用又は女性用採尿位置から採尿容器96を被験者の操作により個人差に応じて前後に微動させるための微調整スイッチ302cおよび302dを設けることができる。
【0055】
制御回路256は尿分析ユニット14の構成要素を後述のフローチャートの如く制御するべくプログラムされたマイクロコンピュータ310を有する。ポーラログラフ・セル254の作用極268と対極270との間を流れる電流は増幅回路312により増幅された後、マイクロコンピュータ310のA/D変換回路に入力される。尿検知センサ314は採尿容器96の尿検出電極126と128との間のギャップの電気抵抗を検出することにより採尿容器96の尿溜まり118に尿が溜まったかどうかを検知するもので、その出力はマイクロコンピュータ310のA/D変換回路に入力される。マイクロコンピュータ310は、夫々のドライバを介して、スイングアーム駆動用モータ138、ロータリバルブ駆動用モータ226、ピストン駆動用モータ214、および、洗浄ノズル162に洗浄水を供給するための電磁弁316を駆動する。マイクロコンピュータ300と310とは通信ケーブル318によって接続されており、トランシーバ320および322を介してシリアル通信によりデータの伝送を行う。
【0056】
次に、図18の模式図と図19のフローチャートを併せて参照しながら、尿分析ユニット14の作動の一態様を説明する。被験者が尿分析開始スイッチ302a又は302bを押すと、マイクロコンピュータ310はスイングアーム駆動モータ138を回転させ、採尿容器96を予め設定された採尿位置に移動させると共に、微調整スイッチ302c又は302dに応じて採尿容器96を所望位置に位置決めする。採尿容器の位置決めが終わると、被験者は採尿容器に向かって放尿し、尿のサンプリングを開始させることができる。尿検知センサ314からの信号により採尿容器96の尿溜まり118に尿が溜まったことが検知されると、マイクロコンピュータ310はロータリバルブ駆動モータ226を駆動し、シリンジポンプ52の中央ポート224がロータリバルブの第2ポート240Bに整列するまでロータ228を回転させることにより、シリンジポンプ52のポンプ室212を採尿容器96に接続する。この状態で、マイクロコンピュータ310はシリンジポンプ52のピストン駆動モータ214を駆動してピストン210を下降させ、例えば約2mlの尿サンプルをシリンジポンプ52に吸引させる。
【0057】
次に、ロータリバルブを再び駆動し、中央ポート224をロータリバルブの第3ポート240Cに整列させることにより、シリンジポンプ52を排出管路324(図18)に接続する。この位置でピストン駆動モータ214を駆動してシリンジポンプ52のピストンを上昇させ、ポンプ室内の尿サンプルの一部を排出管路324を介して便器12のボウルに放出させる。これにより、ポンプ室のエア抜きが行われるので、尿サンプルと共にポンプ室内に空気が吸引されていたとしても気泡がポーラログラフ・セル254に送られるのが防止される。
【0058】
次に、ロータリバルブを再び駆動し、中央ポート224をロータリバルブの第1ポート240Aに整列させ、ポンプ室212をポーラログラフ・セル254に接続する。この位置でシリンジポンプ52のピストンを更に上昇させ、約10〜20μlの尿サンプルを搬送チューブ288に打ち込む。再びロータリバルブを駆動してポンプ室を排出管路324に接続し、ピストンを上死点まで上昇させることによりポンプ室内の余剰の尿をボウルに廃棄する。
【0059】
尿サンプルの打ち込みが終わると、シリンジポンプ52のポンプ室を洗浄水によって洗浄する。これは、ロータリバルブを回転させてシリンジポンプ52のポンプ室をシスターン20に接続させた上で、ピストンを下降させてシスターンの洗浄水をポンプ室に吸引させ、次に、ロータリバルブを駆動してポンプ室を排出管路324に接続し、ピストンを上昇させることにより行われる。シリンジポンプの洗浄は1回以上行うことができる。
【0060】
次に、ロータリバルブを再び回転させ、シリンジポンプ52の中央ポート224をロータリバルブの第5ポート240Eに整列させることにより、シリンジポンプ52を管路326を介して緩衝液タンク54に接続させる。タンク54内の緩衝液は、ポーラログラフ・セルの安定な作動に必要な緩衝作用を行うもので、KH2PO4やNa2HPO4のようなpH調節剤やKClのような塩素イオン強度調節剤が添加された水溶液からなる。緩衝液は、更に、尿サンプルをポーラログラフ・セル254に搬送するキャリヤ液として作用すると共に、セルに送られる尿サンプルを希釈する役割も持っている。前述のようにシリンジポンプ52を緩衝液タンク54に接続させたならば、シリンジポンプ52を作動させ、緩衝液を緩衝液タンク54からポンプ室212内に吸引させた後、再びロータリバルブを切り換え、ピストン210を上昇させて緩衝液を第1ポート240Aに射出させる。これにより、先に搬送チューブ288内に打ち込まれた約10〜20μlの尿サンプルは、搬送チューブ288内で緩衝液と混合され希釈されながらポーラログラフ・セル254に送られ、混合物はセルを通過しながら搬送チューブ290から便器ボウル内に排出される。緩衝液の射出速度は、尿サンプルが少なくとも約30倍に希釈された上でポーラログラフ・セルを通過するように選ぶことができる。また、緩衝液の射出量は例えば約2〜4mlにすることができる。この量にすれば、尿サンプルと緩衝液との混合物がポーラログラフ・セルを通過した後には、搬送チューブ288とポーラログラフ・セル254は再び新たな緩衝液で満たされる。
【0061】
尿サンプルと緩衝液との混合物がポーラログラフ・セル254を通過するに伴い、作用極268のGOD固定化膜298のところでは上記式(1)に従い混合物中の尿グルコース濃度に応じて過酸化水素が発生し、前述したようにポーラログラフ・セルの作用極268と対極270との間には過酸化水素発生量に応じた電流が流れる。この電流は増幅回路312により増幅され、マイクロコンピュータ310のA/D変換回路に入力され、電流値に変換される。マイクロコンピュータ310は得られた電流値のデータをシリアル通信により制御ユニット32のマイクロコンピュータ300に伝送する。マイクロコンピュータ300は電流値データに基づいて尿糖値を演算し、表示パネル304に表示する。尿糖値のデータは、また、フラッシュメモリ308に格納される。マイクロコンピュータ300には被験者の指示に応じて尿糖値のトレンドを演算させ、プリンタユニット306から出力させることができる。
【0062】
尿分析又は尿のサンプリングが終わると、マイクロコンピュータ310はスイングアーム駆動モータ138を駆動して、採尿容器96を収納位置A(図8)に復帰させる。次に、電磁弁316が開かれ、洗浄ノズル162に圧力洗浄水を供給することにより採尿容器96が洗浄される。
【0063】
尿分析が反復されるに伴い、ポーラログラフ・セル254の酵素固定化膜298のグルコース・オキシダーゼの活性が次第に低下し、セルの出力が経時的に低下することがある。そこで、定期的にセル出力を較正するのが好ましい。このため、所与の既知の濃度のグルコース標準液(較正液)を較正液タンク56内に貯蔵しておき、尿サンプルに代えてこの較正液をセルに送って、グルコース標準液に対するセル出力を定期的に測定し、実際の尿分析に際しては、グルコース標準液に対するセル出力に基づいて尿分析時のセル出力を補正することにより尿糖値を演算することができる。ポーラログラフ・セル254が所定の寿命期間使用されたならば、古いセル254をソケット252から外し、新たなセルと簡単に交換することができる。
【0064】
以上で説明した本実施例のトイレットによれば、尿分析ユニット14等を設置することにより、既存の便器設備を活かして尿分析機能を実現することができる。また、使用者は、複数回に亘って記憶されたデータに基づいて、分析結果のトレンドを知ることができる。かかるトレンドは、自己の健康チェックに役立てることができる。
【0065】
ここで、本実施例のトイレットでは、尿の採取および分析を実行する尿分析ユニット14と、該ユニットの動作の制御、分析結果の記憶、トレンドの演算等の諸機能を果たす制御ユニット32とが別体として備えられている。両者は、通信ケーブル318によって接続されており、データの伝送が可能となっている。このように制御ユニット32を別体として備えることにより、本実施例のトイレット装置は、既存便器への設置に伴う寸法条件、環境条件に制約されることなく制御ユニット32を構成することができる。従って、制御ユニット32を構成するマイクロコンピュータ300の演算能力およびフラッシュメモリ308の記憶容量を十分に確保することができる。この結果、コストの極端な増加を招くことなく、分析結果のトレンドを適切に演算する能力を確保することができる。
【0066】
本実施例では、尿分析ユニット14と制御ユニット32の2つの大きなユニットで構成した例を示した。尿分析ユニット14の動作の制御およびトレンドの演算はいずれもマイクロコンピュータを利用して実現することができるため、本実施例のように両者を兼用して構成することにより、トイレット装置のユニット数を最小限に抑えることができ、コスト低減を図ることができる。
【0067】
マイクロコンピュータを利用した装置では、高速処理を実現するため、各機能ごとにCPUを設けることが多い。このような考え方を適用し、尿分析ユニット14の制御を行う機能と、分析データの記憶およびトレンドの演算を行う機能とを別のユニットとして構成することも当然可能である。つまり、実施例の制御ユニット32と同様の構成からなる演算ユニットを更に設け、演算ユニットにおいて、分析データの記憶およびトレンドの演算を行うものとしてもよい。この場合には、トイレットが設置してある場所と異なる部屋に演算ユニットを設置することも可能となる。また、演算ユニットとして、非常に高い演算能力を有する汎用のコンピュータを利用することも可能となる。これらの態様によれば、分析データの管理や健康チェックをより適切かつ多彩に行うことが可能となり、装置の利便性を大きく向上することが可能となる。
【0068】
本実施例では、フラッシュメモリ308に分析データを記憶する場合を例示した。通電していなくてもデータを保持可能であるという観点から、フラッシュメモリ308を始めとする不揮発性の記憶媒体にデータを記憶することが好ましい。不揮発性の記憶媒体の一種として、フレキシブルディスクなどの携帯可能な記憶媒体を適用するものとしてもよい。
【0069】
本実施例のトイレット装置によれば、尿分析ユニット14と制御ユニット32とを通信ケーブル318によって接続し、データの伝送を行うため、分析データを高速かつ確実に制御ユニット32に受け渡すことができる。データの伝送は、その他種々の周知の通信手段を適用することが可能であり、設計変更の範疇として、有線で行うものの他、電波や赤外線などを利用した無線で行うものとしてもよい。また、フレキシブルディスクなどの携帯可能な記憶媒体を利用してデータを受け渡すものとしてもよい。
【0070】
以上には本発明の特定の実施例を記載したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の設計変更を施すことができる。例えば、尿分析装置50はポーラログラフ・セル254を有するものとして説明したが、液体クロマトグラフ法、吸光光度分析法、分光分析法、その他の方式による尿分析方式を採用することができる。更に、尿分析は尿グルコース以外の尿成分についても行うことができる。また、尿サンプリング装置26はスイングアームを有するものとして記載したが、便座24に組み込むことができる限り、異なる採尿構造にしてもよい。また、シリンジポンプ52に代えて、ロータリポンプその他の尿搬送装置を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】尿分析ユニットの取り付け状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した尿分析ユニットのハウジングの分解斜視図である。
【図3】図1に示した尿分析ユニットの便座アッセンブリの1部切欠き分解斜視図である。
【図4】便座アッセンブリの尿サンプリング装置の平面図である。
【図5】スイングアーム駆動部の1部の1部切欠き拡大分解斜視図である。
【図6】スイングアームに装着した採尿容器を上から見たところを示す説明図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った断面図である。
【図8】図4のVIII−VIII線に沿った模式的断面図である。
【図9】ロータリバルブ付きシリンジポンプの分解斜視図である。
【図10】図9のX−X線に沿った断面図である。
【図11】図10のXI−XI線に沿った平面図で、ロータを取り外したところを示す説明図である。
【図12】尿分析装置の1部切欠き分解斜視図である。
【図13】ポーラログラフ・セルの拡大分解斜視図である。
【図14】図13のXIV−XIV線に沿ったポーラログラフ・セルの断面図である。
【図15】図13のXV−XV線に沿った作用極の拡大断面図である。
【図16】ポーラログラフ・セルの電極にポテンショスタットと増幅回路を接続したところを示す配線図である。
【図17】制御ユニットと制御回路のブロック図である。
【図18】尿分析ユニットの搬送系統を示す模式図である。
【図19】尿分析ユニットの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…トイレット
12…標準型便器
14…尿分析ユニット
16…便器のボウル
18…便器の洗浄水供給部
22…尿分析ユニットのハウジング
24…便座
26…尿サンプリング装置
28…便座アッセンブリ
50…尿分析装置
52…尿搬送ポンプ(シリンジポンプ)
96…採尿容器
Claims (4)
- 標準型洋式便器に設置可能に構成され、排泄された尿を採取し、該尿の分析を行う尿分析機能付きトイレット装置であって、
前記排泄された尿を採取する尿サンプリング手段と、該採取された尿を分析して、前記所定の成分の量に関するデータを取得可能な分析手段と、前記採取後に前記尿サンプリング手段を洗浄する洗浄手段とが組み付けられた便座と、
該分析手段の動作を制御する制御手段と、
前記分析手段と別体として備えられ、複数回に亘って取得された前記データを記憶する記憶手段と、
前記分析手段と別体として備えられ、該記憶手段に記憶されたデータを用いた所定の演算を行う演算手段と、
前記分析手段と演算手段との間でデータの授受を行うデータ授受手段とを備えるトイレット装置。 - 該記憶手段は、不揮発性の記憶媒体である請求項1記載のトイレット装置。
- 前記所定の成分は、尿糖、尿蛋白、潜血のうち少なくとも一つの成分である請求項1記載のトイレット装置。
- ビデ装置、温風乾燥装置、脱臭装置のうち少なくとも一つを備えた請求項1記載のトイレット装置。
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JPH11326317A (ja) | 1999-11-26 |
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